中華怪談腹嬢虫
ああ、感激だなあ。
ここが僕の職場だ。
超越医学研究所―――。
世のため、人のためになりたいと医学をこころざし、苦学を重ねて、国家資格を取り、僕はようやく医者としての第一歩を踏み出したんだ!
みなさん、初めまして。
僕の名前は猿楽一郎といいます。
1週間ほど前から、ここ超越医学研究所に研究員としてお世話になっています。
新人で、まだまだ不馴れですが、先輩達に負けないようにがんばります!
さて、今日は仕事がてら研究所内をご案内したいと思います。
そもそも超越医学研究所は、エリノア財団という海外の財団法人から資金援助を受けて設立された研究機関だそうですが、詳しいことは僕みたいな新人にはよくわかりません。
研究だけでなく、臨床治療もやりますが、特別なルートで回ってきた難病患者さんが多いようです。
所長の水道橋正宗先生は、すでに白髪の、年配の医学者ですが、昔は日本国内より、海外で活躍されていたそうです。詳しいことはよくわかりませんが、凄腕の医師であることは確かのようです。
え~と、ここが所長室です。
コンコン!
「猿楽です」
「入りたまえ」
所長室にしては、飾り気のない、質素な部屋だ。
普通に病院の受付か事務室みたいだな。
「どうだね? 猿楽くん、仕事の方は慣れたかね?」
「はい! とてもやりがいのある職場で、皆さんにもよくしていただいています!」
水道橋所長が、分厚い本に目を通している。
あれ? 本かと思ったら、写真がベタベタ貼られているのが見える。アルバムだな。
「猿楽くん、まあこっちへ来てみたまえ」
所長のアルバムをのぞいてみると、
おお! 当研究所の女医さんや看護婦さんたちの顔写真が貼りまくられている。
いや~~、ここの研究所は美人ばかりなんだよな~~。
しかし、何なんだ? このアルバムは?
「どうだね? 猿楽くん」
どうって言われてもなあ……。
やっぱり一番の美人は神保主任かなあ?
でも、単に綺麗だってことなら、こっちの髪の長い女性が……。
「と、ところで所長、このアルバムは何のために?」
「うむ、当研究所は常に顧客に対するサービスを第一に考えている。お客様から顔の見える医療を心がけているということだよ、君!」
顧客って、患者じゃないのか?
顔が見えるって、なんかスリー・サイズまで書いてあるけど。まあ、いいか。
「今日のこれから仕事の指示は神保くんがしてくれる。それじゃあ、元気でな」
所長室の隣が主任研究員の研究室になっています。
「猿楽です! 入ります!」
「どうぞ」
主任研究員の神保美紀先生。
この研究所のナンバー・ツーです。
さっきも触れましたけど、美人だし、頭もいいし、とても優れた医師なんですけど……。
あれ? 机の上に写真立てが置いてあるな。もしかして彼氏の写真かな?
え~と、あれは……水道橋所長の写真だな。
「何ですの? 猿楽先生!」
「いえ、あの……所長の写真ですね? それ」
「それがどうかしまして?! 私たちがここで世のため人のために仕事をさせていただけているのも、すべて所長のおかげですわ!」
でも、写真立てのガラスにルージュがついているような。これって、ちょっと……。
「何か言いたそうですわね?! 猿楽くん!」
神保主任の眼鏡がキラリと光った。
「い、いえ、別に」
どうも機嫌が悪そうだな。早く退散した方が良さそうだ。
「あのう、主任。なにかご指示をいただければと」
「それでは猿楽くんにはこれから、103号室のキャシー竹橋さんの午後の回診をお願いしますわ。最近症状は安定していますけれど、気をつけてくださいね! それから、江錦華先生のところへこの書類を届けていただけますこと!」
何に気をつけるんだろう?
僕は神保主任から、書類袋を受け取ると、研究室を後にした。
さて、次は病棟の方に回ってみましょう。
なぜか最近、一般病棟で寝起きしている、キャシー竹橋さん。
身長180センチはあろうかという大柄な女性です。
もともと神保主任が担当する患者さんだそうで、経過を見ながらリハビリをかねて、所内の看護業務の補助をやってもらっています。
ということで、肩書きは見習い介護士ということになっています。あまり熱心に働いているようには見えませんが。
とても健康そうなんですけど、どこが悪いんでしょうか?
背も大きいんですが、たいへんグラマーな女性で、無造作にタンクトップと軍服のズボンみたいなものを着てベッドの上でくつろいでいるんですけど……。
ブラつけてないんじゃないか? 乳首透けて見えるし、目のやり場に困るなあ。
「なにジロジロ見てんだよ!」
「すっ、すみません!」
この人の機嫌をそこねるとこわいんだよなあ。この間も殴られて鼻血出したし。
「あの、検温記録をお願いしたいんですが」
「熱なんざねえよ! 美紀には平熱だったって言っといてくれや」
「そういうわけには……」
次の瞬間、僕はいきなり胸倉をつかまれて、引き寄せられた。
うぐぐ……苦しい。
「どうだいにーちゃん、熱なんかねえだろ?」
キャシーさんは、自分のおでこに僕のおでこを密着させて……熱がないと言いたいらしいんだけど、彼女の怪力で締め上げられて、く、苦しい。
「は……はい、はいぃ!」
どん! と、突き放され、僕は床に尻餅をついた。
ゲホ! ゲホ! ら、乱暴だなぁ。
「なんか文句あんのかよ?!」
僕は逃げるように部屋を飛び出した。
ああ、苦しい。彼女のところに回診に行くと毎回こうだもんな。医者の仕事も楽じゃないよ。ちょっとおっぱい触っちゃったけど。
おっと、思い出した。
江先生の研究室に書類を届けることになっていたんだ。
さて、これからお話しするのは、その日僕が経験した身の毛もよだつような、おそろしい出来事についてです。
・
・
・
そこはまるで迷路のような研究所の、最も奥深い一角にあった。
「江錦華研究室」
そう表札の出ているドアを僕はノックした。返事がない。いないのかな?
ノブを回すとドアはあっさり開いた。
「江先生、猿楽です。入ります」
この部屋は、入ってすぐのところから、書棚やら荷物がぎっしりと置かれていて、非常に狭苦しい。
すり抜けるようにして、部屋の奥へと進んだ。すると……。
電球が切れかかっている薄暗い部屋の中央で、丸イスに腰かけた二人の人物が、抱き合っているのが目に入った。
「?!」
背中が見えるのが、淡いピンク色の看護衣に、ナースキャップをかぶった若い女性。
看護婦さんだな。
その看護衣の腰に、白衣を着た腕が回されている。
ほっそりした指で看護婦の腰を抱きとめているのは、これも若くて長い髪をした女性だ。
お、女同士で抱き合っている?
それに、2人の顔が密着して悩ましい動きをしている。
キ……キスしてるのか?!
せつなそうなうめき声がもれてくる。
その看護婦のありさまを見ていると、蜘蛛の巣にからめとられた獲物のようなイメージを抱かせる。
僕が思わず後ずさりをすると、うっかり山積みにされた本につまづき、バサッ! と、本が崩れ落ちる音がした。
「何や?」
白衣の女性が立ち上がった。
江錦華―――。
切れ長の目の整った顔立ち。長い黒髪に、透きとおるような白い肌。
ちょっと冷たい印象を与える女性なんだが、思い切りスリットの入ったサテン地の真っ赤なチャイナ・ドレスに、白衣をはおるという色っぽいいでたちで、僕の方をじっと見つめている。
今のを見ていませんでしたというわけにはいかないよなあ。
「いま、何を?」
「なあ~に、看護婦さんが目ぇにゴミが入ったちゅうから、取ってあげたったんや。なあ、悦っちゃん?」
「はあ……い」
誰かと思ったら、看護婦の須田悦子さんか。何だかトロンとした目をしてるけど、熱でもあるんじゃないのか?
「あんたこそ何ぞ用かいな?」
「あっ、あのっ、神保主任から書類をお預かりしてまいりました」
「主任からぁ?」
錦華先生は、書類袋を受け取ると、特に興味もなさそうに、それを机の上に置いた。
「おっかないやろ? 神保主任。あんた怒られたんとちゃうか?」
「えっ? はっ、はいっ……い、いえっ、べ、別に」
「うちは優しいさかい、まあ、こわがらんとゆっくりしてき」
そうなのか? どっちもどっちだと思うが。
「神保の姉御はな、男ひでりや」
うわっ! ずいぶんと露骨な言い方。
「うちにゆうてくれたら、ええ男の1人や2人、すぐに紹介したるのに。 せやなあ……いっそのこと5、6人男雇って輪姦させるっちゅう手もあったなあ」
「いったい何の話を?」
江錦華先生は、中国はニュー香港の出身の女医さんだが、関西の大学に一時留学していたとかで、流暢な日本語を話す。
しかし、いつ来ても錦華先生の研究室は不気味だな。
漢方薬に使うと思われる薬草類が山積みにされているのはまだいいとして、やけにリアルな男女の人体模型だとか、蛇や蛙のフォルマリン漬けだとか、牙を持った得体のしれない小動物の剥製だとか、気味の悪いものが所狭しと置かれている。
「漢方医学はうちの重要な研究テーマやさかいな」
おや、標本ばかりかと思ったら、これは生きてるんじゃないか?
机の上に置かれた、細長いいガラス製の筒の中に、液体が満たされており、その中に何か生き物らしきものが蠢いている。
蜘蛛かな? それとも蟹の仲間かな?
長い足と、触手のようなものを持った、エビぐらいの大きさの生物が、細いガラス管いっぱいにつまってヌルヌルと身体を動かしている。
ひどく窮屈そうに見えるけど、こんなところに詰めておいて大丈夫なのか? 日陰に棲息しているのか、ずいぶんと生白い色だな。
「こ、これは何です?」
「ほお、やっぱりこれが気になるんかいな? 猿楽君も目が高いなあ」
錦華先生は、謎の生物が入ったガラス容器を、見やすいように僕の方に向けた。
「よう見てみ。何に見える?」
「エイリアンみたいですね」
「アホ、何ゆうてんねん。そんなもんおるかいな。あんた中国に古くから伝わる蟲術(こじゅつ)って知っとるか?」
「聞いたことはありますね」
「蛇、蟇、蜘蛛といった蟲を使役する魔法とか言われとるが、まあひらたく言うと、蟲の持つ毒を利用して、人様の神経系を麻痺させて自由に操るっちゅう、一種のマインド・コントロールやな。それに蟲の持つ毒素をうまいこと利用すると、不思議な力も得られるし、シアワセな気分にもなれるもんや」
「はあ」
なんか、恐ろしげなことをさりげなく言っているような。
「これはな、中国蟲術の中でも秘術中の秘術に用いる『腹嬢虫』や」
「ふくじょーちゅー?」
「ま、一種の寄生虫やな。サナダムシみたいなもんやと思っとき」
き……気色悪い。
「よう見てみ、君がガラス容器に近づいたもんやから、虫が宿主を求めて動き出したんやわ」
虫の口とおぼしきあたりから、触手のようなものが伸びて、外界への出口を探しているのだが、ガラスを破ることはできず、むなしく溶液の中でゆらゆらしている。
「猿楽君、君ちょっとこの腹嬢虫を寄生させてみいへんか?」
「えっ? 遠慮しときます!」
僕はプルプルと首を振った。冗談じゃない、こんな気味の悪いもの!
「見てくれは悪いけどなあ、不老不死、精力増強、家内安全によく効く縁起モンや。 昔の金持ちは、大金を払い争って自分の体内に腹嬢虫を住まわせたもんやけどなあ。 いまならサービス期間やさかい、君にはタダで1匹分けたるで」
いくらご利益があるとか言われても、あんなグロテスクなものを、腹の中で飼う、というか、寄生させる気にはなりません! 腹を破って出て来そう!
「そぉかあ。しゃーないなあ」
彼女は、あまり気のない様子でポリポリと頭をかいた。
「ところでなあ。ちょっと、猿楽君に頼みがあるんやけどなあ」
僕は警戒した。
錦華先生の声が急にぞっとするような色気を帯びたのである。
そして彼女は、さりげなく僕の背中にしなだれかかってきた。
ギク! 白衣とドレスの奥のふくらみが、僕の背中に触れた。
「な、何でしょう?」
「実はな、ここからワンフロア降りた地下実験室に、実験用の動物を閉じ込めてあんねんけど、それをぼちぼち連れて上がってこなあかんねん。猿楽君にも手伝ってほしいねん」
「須田さんと、お二人ではできないようなことなんですか?!」
「だってぇ、噛まれたらどないしょ?」
「か、か、噛むような動物が?」
「あはは、冗談や。噛んだりせえへんがな。ただなあ、うちも悦っちゃんもかよわい女やんか? こーゆうことは男の人にしかよう頼めへんねん」
「そ、そこまでいわれたら断るわけにはいきませんね」
「助かるわあ」
彼女が、書棚のひとつに手をかけ、横滑りにぐいと押すと、棚はゴロゴロとスライドして、コンクリートの壁にドアが姿を現した。
なぜか錦華先生の書棚の裏が入口となっていて、そこから地下への階段が続いている。
錦華先生を先頭に、僕、そして須田看護婦の3人は、地下実験室へと続く、暗く、湿っぽい階段を下って行った。
「あの、江先生。実験動物ってなんなんですか?」
「さあ――。羊やったかいな? それとも猿かな?」
怪しい……。
地下実験室は、まるで地の底のように、不気味な静けさをたたえていた。
実験器具や、医療器具が、無造作に片隅に押しやられており、部屋の中央には大きな空間がぽっかりと空いている。
何だこれは?
部屋の中央、自然石を敷きつめたと思われる石畳の床に、おかしな紋様と、見たこともないような文字を書き連ねた円陣が白く浮かび上がっている。
オカルト映画によく出てくる魔法陣ってやつじゃないか?
そして、円陣の中央に、施療用と思われる方形のベッドが、薄明かりに照らし出されている。ダブルベッドぐらいの大きさだが、飾りも何もなく、クッションもきいていないようで、寝心地が悪そうだ。
しかし変だぞ。どこにも実験動物らしき影はない。逃げられたのか?
「まあ、ちょっとここに腰かけて休もか」
江錦華先生に誘われるようにして、施療ベッドに腰をおろすと、彼女も僕の隣に腰をかけて、身体を僕の方に密着させてきた。
すると看護婦の須田悦子が、僕の背後から首っ玉を抱くようにして、しなだれかかってきた。
な、なんなんだ? この怪しげな雰囲気は?!
「こっ、こっ、江先生! どこに実験動物が?」
「ああ、あれか。あれは嘘や」
「う、う、嘘って?!」
「まあ、怒りないな。実はこういうことや。 うちと悦っちゃんで、さいぜんから今度入ってきた新人の猿楽っちゅう研究員は、ごっつうええ男やなあ……そうですねえ、先生……と、噂しとったところなんや。 そしたらどうや? まるで呼ばれたみたいにあんたがやって来よった。 うちらすっかり嬉しゅうなってしもうてなあ。 この地下の実験室やったら、邪魔も入らんし、ゆっくり話ができる思てな。 なあ、悦っちゃん?」
「はあい」
嘘だ! 絶対嘘だ! なにか魂胆があるに決まってる!
「まあまあそう固くならんと。固くするのはここだけでたくさんやで」
江先生は、僕の股間に手を伸ばしてきた。
「ひっ!!」
き、き、き、錦華先生の指使いが、微妙に僕のアソコを刺激して。
「や、や、やめてください……!」
「女に恥かかせるもんやないで」
淡々とささやきかける江錦華先生の口ぶりが、しだいに淫らな調子を含んできた。
こうなると男としては、Hな期待を抱いてしまうものなのだ。
しかし彼女の肌触りに、爬虫類を思わせるような冷たい感触があって、僕はとっさに身をよじって逃げようとした。だけど、後から須田悦子が僕の肩を抑えていて逃げることができない。
そこに、錦華先生の顔が近づいてきたかと思うと、彼女の真っ赤な唇が僕の口をふさいだ。
「んんっ……!」
それはぞっとするような冷たいキスだった。
強引に僕の口を割って舌を入れてきた。
彼女の唇が僕の唇を吸い、ぬらぬらとした舌が口の中をまさぐる。
んぐ、んぐ、んぐ……。
ぷはあ!
僕は振りほどくようにして、彼女の抱擁から逃げた。
ドキ! ドキ! ドキ! ドキ! 僕の心臓が早鐘のように鳴っていた。
「うふふ、純情やな。なあ、うちの乳触ってえな」
彼女は僕の右手を取って自分の胸にみちびいた。
チャイナ・ドレス越しの胸の感触!
も、もしかしてノーブラ?!
「き、き、錦華先生! これってすごくイケないことでは?!」
「イケないこと? なにゆうてんねん、イケないことはこれからするんやないか。 なあ、悦っちゃん?」
「はあい、先生」
僕の背中に回っていた看護婦の須田悦子さんが、おもむろに看護衣の前ボタンをはずして、服を脱ぎ始めた。
止める暇もあらばこそ、ブラもパンツも取っちゃって、やっぱり全部脱ぐのか?!
ナースキャップだけは、お約束でつけたままだけど。
お、お、同じ看護婦でもロリ体型の小川もと子と違って、大人の雰囲気が売りのグラマー看護婦、須田悦子の――もちろん裸を見るのは初めてだけど、極上ボディが目の前に……って、ああああああ! 説明的なセリフ! 僕は何を言ってるんだあああ!!
「一郎さん……抱いて……欲しいの」
「ど、どうしたんです?! 須田さん!」
「いやぁん、悦子って呼んで」
須田さんは、僕の白衣を脱がせ、ネクタイをはずし、シャツのボタンをはずし……。
ああああ! 彼女の巨乳が迫ってきて、鼻先でたぷんたぷんと揺れている。
僕のムスコはすでにギンギンのギンに固くなって、おさまりがつかない状態になっているぅ!!
もう、どうなってもかまわないいい!
「悦子さあ――――ん!!」
「ああんっ! 一郎さあん……!!」
僕は須田悦子を押し倒した。
たちまち、お互いにキッスの嵐を浴びせかける。
んちゅ……むちゅ……ぶちゅ!
彼女のふくよかなおっぱいを、乱暴に揉みしだき、コリコリしている乳首をちゅっぱちゅっぱと吸った。
「いやああんッ!」
悦子が鼻にかかった喘ぎ声をあげた。イヤだって言って、全然いやがってないんだよなあ。
彼女は僕の首っ玉を抱きしめて、自分の乳房に僕の顔を押しつけた。
す、すごいボリューム! 息がつまりそう……!
「いいっ! そこ、いいっ! おっぱい吸ってえ!!」
身をよじって、そり返り、暴れるものだから、彼女のおっぱいは、僕の唇の下で、ぶるんぶるんと揺れた。
ナースの巨乳をわしづかみにして、乳首を口にふくみ、舌先でれろれろところがす。
「ひいぃああんっ! あふうん!!」
悦子がいやいやをするように、首を激しく左右に振った。
「ええなあ、悦っちゃん。キモチよさそにして、下の方も濡れ濡れやんか」
天の声みたいに錦華先生の間延びした声が聞こえた。
美人医師に見守られながら、美人ナースとセックスするという、刺激的なシチュに、僕は人間らしい羞恥心も忘れて、すっかりコーフン状態におちいっていた。
「たくましいなあ、猿楽。うちも代わって欲しいわぁ……。ほれ、はよ挿てれおやり。 悦っちゃんがガマンできひんて泣いとるわ」
代わってって……。
美女2人との3Pの予感……。僕はそんなあまりにもオイシイ展開を妄想して、すっかり前後の見境を忘れていた。
「ああンッ! してぇ! 早くしてえぇ……!」
僕は、大きく股を開いた須田悦子の、ぐちょぐちょに濡れた部分をえぐるように、思い切り腰を突き入れた。
「あああああンッ……!!」
「ううっ!!」
いきなりスゴイ締め付けがきたあ!
お互いの性器の粘膜がこすれ合い、ねっとりとして快感を倍加する。
「いいのぉ! 一郎さんの、おっきいいぃ!!」
須田悦子の悦ぶ声が、ますます僕のコーフン度を高めた。
僕が激しく腰を突き動かすと、悦子もそれに合わせて腰を振る。
荒い息の下で、悦子がせつなげな瞳で、僕の顔をじっと見上げているのに気がついて、僕は、彼女のことがたまらなくいとおしくなった。
腰を使いながら、ディープ・キスをかわす。
「んんんッ!」
「ふむッ! うふんッ!」
このままでは、あっという間に絶頂に達してしまう。
でも、もう止まらない!
「イクぅ! イッちゃうよぉ! 悦子さあん!」
「イッていいのぉ! いいのぉ!!」
猛烈な射精感がこみ上げてきて……ドプ! ドピュ! ドク!
一気に彼女の膣内に、セーエキを吐き出した。
外に出している余裕はなかった。
射精の瞬間、須田悦子が、両脚で僕の腰をからめとって、放さなかったからだ。
僕はぐったりとして、彼女の上に折り重なって喘いだ。
はあ、はあ、はあ、はあ……!
頭の中が真っ白になって、激しいセックスの後の余韻に、僕はひたっていたのだが……。
異変が起こったのはその時だった。
急にプ~ンと、生臭い匂いがあたりにたちこめた。
それに、何か、僕のお尻のあたりでもぞもぞした感覚が?!
こっ……! この、未知の感覚は?!
これは、人間の肌の感触ではない!
僕は正常位で結合したままの体勢から、事態を把握するため、振り返ってみてガク然とした!
エビぐらいの大きさで、白っぽくて血の気のない、得体の知れない生き物が、触手をざわざわさせて、僕のお尻の穴をまさぐっている。
その気味の悪い虫は、どうやら、須田悦子の肛門内から顔をのぞかせて、僕と彼女の性器の結合部あたりをはいずり回り、長い脚と、触手を伸ばしているのである。
ぼ、ぼ、僕の中に入って来ようとしている?!
「は、は、は、放してくだ……くだ」
だけどその時、僕の身体は、下になった悦子の両腕と豊満なバストと、腰にからめた両脚でおさえつけられて、身動きがとれなかった!
それに、膣圧で……ペニスが抜けない!
そして、僕はあることに気がついてぞっとした。
さっきから、江錦華が、僕と須田悦子が愛し合っているのを、冷たい眼差しで観察するように見おろしているのをである。
「悦子さん! 放して! 錦華先生! これはいったい?! た、た、助けてくださいぃ!!」
「もう遅い。さっきあんたも部屋で見たやろ。それが腹嬢虫や。 悦っちゃんのお腹の中に寄生し、繁殖しとった腹嬢虫を、猿楽君にも一匹わけてあげようちゅうわけや」
「いっ、いっ、いっ、いいですぅ! 遠慮しときますぅ!!」
その時、須田悦子のアヌスから、ずるりと這い出した一匹の虫は、新たな宿主である僕を求めて、突き入ってきた。
うわあああああ! 入ってきたあああああ!
気持ち悪ううううぅい! 僕のお尻の処女があああああ!!
ようやく僕を締めつけていた須田悦子の力が抜けて、僕の身体は解き放たれた。
しかし、虫が腸内に侵入した、そのあまりに異常な感覚に、僕の下半身はしびれ、起き上がることすらできなかった。
そこに錦華先生が、冷たい口調で、言葉を浴びせてきた。
「腹嬢虫は、寄生した人間の神経系に侵入し、宿主を操って繁殖のための行為を代理さすんや。なんでかわかるか?」
「わかりません! わっかりませ~~~~~んっ!!」
「腹嬢虫はな、雌雄同体とゆうて、ふだんはメスばかりなんやが、人間の男に宿った時だけオスに擬態して繁殖が可能になるんや。 見ててみ、宿主といっしょに交尾した腹嬢虫は、やがて卵を孕むさかい。 半月もすれば猿楽の腹の中で、ベビーが誕生っちゅうわけや。めでたいなあ」
「いやだ! いやだああ! 人殺しぃ!!」
「心配せんかて死んだりせえへんわい。腹の中の虫が増えるだけや。けっこうかわいいもんやで」
かわいくない! かわいくない!
「あんなあ、うちはな、子宮に虫を飼うとるねん。 男は肛門から直腸に入れるしかないけど、おなごはもう一つ穴があるさかいな。 実んとこ、これがほんまの通の飼い方やねん」
錦華の口調が湿り気を帯びてきて、息づかいが荒くなってきた。顔が赤いな。様子が変だ。
「ときどき身体ん中で虫が暴れだすとな……うち、気ぃが狂いそうになるねん。 男が欲しゅうて欲しゅうて、たまらなくなるねん……。 なあ、猿楽……! うちもうガマンできん」
須田悦子が道を譲るように、ベッドから下りると、白衣を脱ぎ捨てた、チャイナ・ドレスの江錦華が立ち上がり、悩ましく腰をくねらせた。
僕を見下ろすようにして。
長い黒髪を、両手でかきあげると、それはまるで羅紗のようにサラサラと波打ち、艶々と光って見えた。
肌にぴったりと密着した真紅のチャイナ・ドレスの、あわせのボタンをはずし、肩から肌脱ぎになると、ドレスは彼女の身体からすべり落ち、足元に折り重なった。
僕は思わず息をのんだ。
江錦華の、ドレスの下は全裸だった――。
きゅっと引き締まったウェスト。
日本人にはありえないほどの、細く、長い脚。
看護婦の須田悦子ほどの巨乳ではないが、おわん型の形のよいバストに、乳首がツンと上を向いている。
ムダなぜい肉のいっさいついていない、スレンダーな肢体だ。
彼女のアソコは、虫を飼うことと何か関係があるのか、キレイに剃毛してあった。
ムダ毛のいっさいない彼女の肌は、ひどく無機質な感じがした。
まるでサイボーグのような、彼女の肉体には、しかし男を欲情させる怪しい魅力があった。
裸の江錦華は、虫に取りつかれて苦しがっている僕の上に、容赦なくのしかかってきた。
たとえは悪いけど、和式のトイレにしゃがむように。
僕の下半身をまたいで、股を開きつつ、お尻をおろすいやらしいかっこうだった。
前かがみになって、僕の顔を真上から覗きこむ、錦華の黒髪が、僕の鼻をくすぐった。
そして、波打つ豊かな髪の合い間から、発情した女の目がじっとこちらを見おろしている。
彼女は、自分のワレメにそって、僕のペニスをこすりつけた。
「ええねん……! 猿楽、ええねん……! もう固うなっとる! うち欲しいわあ! 欲しいわあ! 猿楽のちんちん!!」
「やめて……やめて……」
僕は力なく抵抗したけど、イチモツは彼女の言うとおり、すっかり固くなっていつでも挿入可能になっている。
先走りのおツユが、彼女の愛液と混ざり合って、ヌチャヌチャといやらしい音をたてる。
錦華は、手を使わずに、器用に腰をくねらせて、膣口に僕の肉棒をあてがうと、ずぶずぶと身体の中に呑みこんだ。
「うひゃああああああああ!!」
僕は思わずえび反った。こ、この脳天直撃の快感は?!
ミミズ千匹とか、カズノコ天井とかいうけど、きっとこんな感じなんだろう。
錦華の膣内で、僕のペニスにやわらかく、ねっとりとした何かがからみついてくるぅ!!
これは、彼女の肉襞が締めつけているのか?!
それとも、彼女の子宮内に寄生している腹嬢虫が無数の触手を伸ばして僕の肉棒にからみついてくるのか?!
グロテスクな妄想と、めくるめく快感が、僕の脳内でごちゃまぜになってスパークした。
その時、僕が見たものは幻覚なのだろうか?
ベッドの周囲に描かれた魔法陣が、怪しく輝き出し、僕たち二人がつながっているベッドを中心にして、ゆっくり回りだしたのである。
象形文字のような記号が青白く浮き上がって、僕の視界の中で、乱舞しているように見えた。
目、目が回るぅ……!
記号と記号が、結び合って、空中で文字になって飛びかっていくのがわかった。
「惑」「蕩」「乱」「悩」「猥」「悶」「淫」……。
彼女は「うふふ」と、笑って舌なめずりをした。
騎乗位の体勢から、尻を浮かせると、僕のそそり立ったペニスがぬるりと膣からはみ出した。
しかし、錦華は完全にはペニスを抜ききらさずに、腰を止めて、カリのところを肉襞で締めつけている。
そこから、さらに深く尻を、一気に沈めると、ヌブリッ……とした感触があり、異常に粘っこい体液が、ドプッとあふれ出た!
「ひやあッ!!」
「あはぁんんッ!!」
そして、彼女は激しく腰を使いはじめた。くびれたウェストから下が、信じられないほどに、うねうねといやらしく動いて、僕のペニスをこすり上げた。
そのあまりに強烈な刺激に、僕の頭の中は瞬時に真っ白になり、あっという間にこみ上げてきたものが、一気に爆発のヨカ―――――ン!
ああああああああああああ!!
……と、思ったんだけど。ど、ど、どうしたんだぁ?! 射精できないぞぉ!!
「どや? イキたくてもイケないはずや。 あんたの自律神経系は、すでに虫に操られとる。いくら快楽を感じても、射精には待ったがかかっとるのや……。 うちがイクまで……イカさへんよう……あはんっ! お互いの、虫が……コントロールして……んんっ! これが、究極の閨房術っちゅうわけや!」
そんなあ! イキたいのに、射精できないなんて、これではまるで生殺し!
とてつもない快感が脳天を突き抜けるんだけど、このままではおかしくなっちゃうよおおおお!!
「イヤだっ! イヤだっ! 死んじゃうっ! 助けてぇ! あひっ! あひっ! 気が……ヘンになっちゃいますぅッ!!」
「猿楽! イこ! イこ! いっしょにイこ……! イイッ! イクッ! イクぅッ!!」
あの、人形のような錦華先生の、快感に悶える表情が、とっくに限界を超えている僕の欲情に火をつける。
「ハヒッ! ハヒッ! ハヒッ! もう、ダメだああああ!!」
「猿楽! あんたも、こ、腰使うて!」
言われなくても、僕の下半身は、見えない力に操られているかのように、ガクガクブルブルと、彼女の肉体を下から突き上げていた。
肉と肉がぶつかり、粘膜と粘膜がくっつきあって、いやらしい音をたてている。
汗が飛び散り、僕と錦華の結合部からは、信じられないくらいの量の体液があふれ出ていた。
「うちもイクッ! イッてええで! イッて! イッて! イッてえ――――ッ!!」
「で、出るうゥ~~~~~~ッ!!」
「中に、うちの中に出してぇ~~~~~~~ッ!!」
魔法陣の回転が、勢いを増し、天井までが、ぐるぐると回って見えた。
その無限のループの中で、僕の性感は、極限まで高まっていった。
あとから考えてみると、それは腹嬢虫の毒に侵された、僕が見せられた幻だったのかもしれないが……。
僕の下半身は、上になった錦華にがっちり抑えられているんだから、こみあげてくるザーメンは、彼女の体内に出すしかなかった!
錦華の膣内にいる虫が、精液を吸い出しているイメージが、頭をよぎったが、脳内で何かがプツンと切れるような感じがして、堰を切ったように、僕は大量のザーメンを彼女の中に吐き出した。
き、気持ちイイ~~~~~~~ッ!!
ほとんど同時に、錦華もけだもののような叫び声をあげて、絶頂に達した。
射精は、まるで1分近く続いたような気がした。
錦華は、魂が抜けたようにがっくりと僕の上に倒れこんだ。
僕と彼女は、ぜえぜえと喘ぎながら、しばらくベッドの上に折り重なってころがっていた。
しかし、惨劇はまだ、終わっていなかった。
目に涙を浮かべ、快楽の余韻にひたっていたかに見えた江錦華は、小刻みに身体を震わせ始めた。
「腹嬢虫はな、男の精の匂いにひかれて暴れよる……。ときどき、虫が落ちるとゆうて外に出てくることがあるねん」
彼女は、ベッドに爪をたてて、必死に何かをこらえている。
「ああんっ! うふんっ!」
錦華の様子がおかしい。
自分の性器をかきむしるようにしながら、身体をよじっている。
せつなげな息が漏れて、それがまた色っぽいんだけど、どうもそんなのん気なことを言っていられる情況ではないらしい。
「あふん! 暴れんといて! うちの中で暴れんといてぇ!!
錦華の細い指が、自分の膣口をヌプヌプと出たり入ったりしていた。
「あはんっ! で、出てくる! 出てくるぅ!!」
江錦華は何かから逃げるように、腰を浮かせようとしたが、見えない力に引っ張られるかのようにして、ドッと腰から崩れ落ちた。
ベッドの上に素っ裸のまま腰をぬかして、大きく股を広げた江錦華が、上半身をエビのようにのけぞらせた。
僕の方から、丸見えだ。
「ああ――――ん!!」
ドピュッ……! それと同時に、彼女の陰部から白く濁った液体がほとばしり出た。
失禁したわけでも、潮を吹いたわけでもない。もっと濃厚な液体だ!
あれは……ぼ、ぼ、僕がさっき彼女の中に放ったザーメンじゃないか?!
まるで内側から何かに押し出されるようにして吐き出された。
そ、それだけじゃない!
ザーメンのあとから、黄色っぽい、ゲル状の液体がどろ~~りと、流れ出してきた。
「ひいやあッ! あはッ! あはッ! あはッ!」
江錦華は全身をぶるぶるふるわせ、頭を左右に激しく振った。
ドプッ! グプッ! ブボッ!
粘性のあるその液体は、気泡を生じ、ぶくぶくとあぶくになって、彼女の陰部から湧き出してくるぅ!!
きっ、きっ、気色悪う~~~~っ!!
「いいッ!! いい―――ッ!! んああッ!! 気持ちイイ――――ッ!!」
江錦華の女性器の肉襞と、クリトリスが腫れあがったようになっていたのが、僕の目にもはっきり見えた。
彼女の悶え苦しむ声が――いやそれは歓喜の淫声だったのかもしれないが――最高潮に達した瞬間だった。
ブバッ……!!
体液をあたりに撒き散らして、そしてその、長い足と、いびつな触手を持った汚らわしい虫が、彼女の秘裂を割るようにして飛び出してきた。
「ひぎゃあああああ――――っ!!」
最後の絶叫を残し、精魂を使い果たした錦華先生は、ベッドの上に崩れ落ちて、今度こそぐったりとして、動かなくなった。
そして、粘液でどろどろになったベッドの上では、羊水にまみれ、胞衣につつまれたかのような一匹の腹嬢虫が、うねうね、うねうねといつまでも蠢いていた……。
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その、あまりに凄惨な光景を目撃して以来、僕は精神に変調をきたしてしまい、研究所付属の隔離病棟に収容されるはめになってしまったのです。
僕の腹の中に巣くった腹嬢虫が、いつまた異性との交合を求め、暴れだすかと思うと、僕には一瞬たりとも心の休まる時間などありません。
助けてください。助けてください。助けてください……。
(後日談)
「猿楽くん! あなたこのあいだ研究所内で、いやらしいことをしてましたわね! フケツですわ! フケツですわ!」
「で、でもっ! 神保主任! ぼ、ぼ、僕は、虫に操られてしまっているんです! このままだと僕、虫に精気を吸い取られて、死んでしまうかもしれないんですよぉ!」
「寄生虫なら虫下しを使えばよろしいではありませんこと?! 猿楽くん!」
こんにちは、みなさん。私、超越医学研究所・主任研究員の神保美紀です!
今回は、私とっても怒っていますの!
人騒がせな虫のおかげで、とんだ不祥事ですわ! セクハラですわ!
こんど錦華ちゃんには、きつく言ってあげなければいけませんわね。
「わかりました! それでは、とっておきの薬を……。 ジャ――ン! これが座薬タイプ・超強力腸内洗浄剤、名づけてローリングサンダー7000! 便秘にも効きますわよ!」
「あのぅ……主任、そんな臨床実験も済んでいないような薬品を?」
「あら、心配なさらなくとも臨床実験なら済んでいますわ!」
「え? いつのことです? それに、どのような臨床結果が?」
「ムカ! 私の言うことが信用できないとおっしゃるんですか?!」
虫のいどころが悪いとは、このことですわ。
このガキ! もう勘弁しませんわ!
「あの、もしかして座薬タイプということは、お、お、お尻に?! ぼ、僕恥ずかしいです!!」
「いいから早くお尻を出しなさい!!」
「やっ、やめてください! 神保主任! 僕、一生虫とともに生きていく決心を……!」
「やかましいですわ!」
「いやだああああああ! うぎゃあああああああ!!」
< 終わり >