********** exhibition 『TEST』 4 **********
【晴海『Zton(ゼットン)』店内 地下 観覧個室2-C10ブースの中】
「な、な、な、なにこれ。わたし、なにをっ」
紀香は口を腕で拭い、腕についた糸を引くような粘ついた液体をみて愕然とする。
「くくくく、やぁ、伏見クン。ご無沙汰だな、それは私の精液だよ」
「きっ、きりやまっ!うっ、うえっうえぇぇぇぇーっ」
霧山に背を向けて紀香は一気に嗚咽をもらす。
紀香にとってこの男の精液を口にするなどあってはならない、文字通り唾棄すべき屈辱だった。
自分が全裸であるのに気づきあわてて両手で胸と秘部を隠し、身を小さく丸めてもっとも霧山の椅子から離れた劇場のバルコニーの壁にもたれ燃え上がるような敵意を霧山に向けた。
「霧山!おまえは国を、警察を、裏切る反逆者だ!この俗物!奇妙なチカラで私をいい様にもてあそんだ罪は必ずその体で償わせるからな!!」
怒りを口にするものの、屈辱の上に最も憎むべき男に裸体を晒す羞恥に、紀香は身をかがめ、両足を抱え込むようにして胸と秘部を隠して身動きが取れないでいた。
「ははは、素っ裸でオレの精液にまみれで言うセリフじゃないな。まあ、これでも貸してやろう。ないよりはましだろう、オレの好意だ。お○んこくらい、それはいて隠せ」
霧山はウキウキしながら敵意の塊となった紀香にフェラをさせるときに彼女自身が脱がせてくれた自分のパンツを投げた。
「ふざけるな!汚らわしい!ち、ちくしょうっ!」
紀香は放られた霧山のパンツを手で弾く。悔しくて悔しくて涙があふれた。
「汚らわしい?さっきまでのお前なら、私のパンツなどもったいないと涙でも流して恭しくはいただろうなぁ」
いいように霧山の思い通りに扱われていた自分が何をしてきたのか全く思い出せないものの、想像するに容易なだけ悔しさは大きい。
紀香は以前自分が不思議な力で霧山の奴隷にされる瞬間までの記憶と、今、異臭とぬめりを放ってライトに照る全裸の自分を見て悟っていた。
(私はコイツの人形となって、性欲の捌け口にされていたのかっ!クソっ!)
それは自分に対してあまりにも残酷な想像だった。
思わず悔しさに視界が滲み始める。
そして、すでに自分の頬に涙が流れていた形跡があるのに気がついた。
下顎についた雫は霧山の精液などではなく、自分の涙ではないのかと紀香は思った。
(わたし・・・・泣いてた・・・まさか・・)
頬の下に残った涙の雫と頬を湿らせる幾つもの落涙のあとに気づいた。
「ほう、気がついたか。さっきまで、元の伏見紀香に、今のおまえさんに戻されるのを嫌がって泣き狂い、オレの牝奴隷のままでいさせてくれと号泣したお前の涙の跡だぞ、ハハハハハ。雌奴隷のお前とても健気で、愛しくて、何度お前を抱いたか、数え切れん」
「きっ、きさま!この人でなし!お前は国の治安を、女性の安全を守る部署の幹部でありながら、それを裏切って、部下さえも慰みものにする鬼畜だっ!」
紀香はすでに霧山への反転攻勢に思いをめぐらせ周囲に何かないか目を走らせていた。
「言うだけは好きに言わせてやろう。私に反抗的で敵意むき出しの以前のお前のその顔を久しぶりに拝むのもいいもんだ。その均整のとれた裸体、突き上げるようなバスト、くびれた腰にマッチしたヒップ、長くて魅力的な足、すべて芸術品だよ。さぁ、しっかりと立って隠すことなく見せてくれ」
霧山はブランデーグラスを片手に、空いた手で立つように手のひらを上に向け手首をくいっと軽く押し上げた。
「ふざけるな、もとの私に戻った以上、誰がキサマの命令なん・・・・か・・・が・・・えっぇ!な、なぜ、い、いや、やだ、いやだ、なんで、なんでなのーっ!」
反抗的な言葉で霧山に毒づいた紀香は、自分の意思に反して、霧山のたったひと動作の手の動きであえなく体が霧山の思うとおりに起立した。
バストも、秘部も隠すことができず、腕はまるで人形のように脇へと移動し、整然と腿に指が着くかつかないか程度に開いている。
「自分自身で鑑賞できないことが残念だな、紀香。美しいぞ、オレが開発してやってさらに美しくなったじゃないか?フフフ」
霧山は舐めるような目つきで紀香を上下に眺め、ブランデーを優雅に口にする。
「うるさい!クソっ、私を自由にしろ!」
「フフ、わかってないな。お前さんに与えた自由は自ら考えること、そしてしゃべることだけだ。さぁ、こっちへおいで」
霧山はいやらしげな指使いでくいっと自分の方へ人差し指を2度ほど伸縮させると、紀香の体は何のためらいも、抵抗すらなく霧山の前へと近づいていく。
「い、いやだ。だめっ!と、とまらない、止められない!自分の体なのにっ!なんでぇっ!きりやまぁーっ!私はお前を絶対許さないからな」
「ほう?どう許さんのだ?私はお前にとって、セクハラとパワハラの対象でしかないのだったな。だったら、その私がこんなことをすることはまさにセクハラかね」
そう言って、霧山は目の前に来た紀香の秘部にゆっくりと指を突っ込んでいく。
「ひっ」
指が入った瞬間、紀香の体に電気が走るような強烈な刺激が走った。
霧山の指がいやらしく紀香の中をなぞり、撫でまわし、摘まみ、濡れそぼった中をツルツルと這わせるように刺激していく。
「あっああ、んんん、や、や、やめ、ろぉ、ひ、ひゃん、ふ、ふ~ん、はふ、は、はっ、は、あぁぁあぁぁぁぁぁ」
自由にならないはずの体が駆け抜けるような快感と刺激に小刻みに痙攣するように震えている。
「どうした、さっきの威勢は。自分でもびっくりするくらい感じているんじゃないのか?悦べ、オレが開発してやった。貴様の忌み嫌うオレのセクハラのおかげでお前は女の悦びの感度を高めることができたのだからな」
「い、いあやぁーっ。やめてぇ。お、お前なんかに、お前なんかに好きにされてたまるかぁーっ。抜け!霧山、お前のその薄汚れた指を私の体から早く抜けっ!」
「上官の私に命令か?えらくなったものだな、紀香。だが、オレの指が与えている快感をお前は悪くは思っていないはずだ。体は正直に反応している、それが証拠に私が指を抜いた瞬間に、その刺激だけでお前はオルガズムに襲われる」
その時、霧山の顔に唾が飛んだ。
「キサマのようなゲスのやからにイカされてたまるか!いくらお前が私の体を支配していようとも私は―――――」
霧山は紀香から唾を吐きかけられた瞬間に表情を一変させて、殺気立ったように睨みつけたかと思うと紀香が言い終わらぬうちにいたずらに刺激を繰り返していた指を紀香の内壁をえぐるような刺激を与えつつ引き抜いた。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあーっ」
絶叫と共に、小刻みに体を震わせ、紀香の目は上向きに白眼をみせ、秘部からは潮を勢いよく噴き出した。
「どうせだ、恥ずかしいほどに漏らして見せろ。お前の潮吹きはいつ見ても見事なものだからな」
「ははははは、上司の前でエクスタシーの極みでお漏らしか。なってない部下をもつと苦労が絶えんよ、紀香」
「う、うう、キサマのせいだ。全部、全部、キサマの、キサマのっ!」
紀香は涙を浮かべながらも、なおも敵意を失うことなく霧山を自由にならない体のまま睨みつけた。
「貴様に唾を吐きかけられるとは思わなかった。とんだ興ざめだよ。レディのとるべき態度じゃないな」
不機嫌そうに霧山はブランデーグラスをテーブルにおき足を組むと、自らの膝の上に手を重ねた。
補佐官室でよく目にした霧山のお決まりの説教前のポーズだと紀香は思い出した。
そしてそれは決まって霧山が苛ついた時に見せる態度だ。
(フン、霧山も自分の職を追い詰めた私に少なからず畏怖をしている。ヤツの冷静さを欠けば、何か突破口が開けるかもしれない)
紀香は極力自分にクールであろうと、動揺する心を必死に抑えながら霧山を揺さぶろうと思った・
「それは、それは、喜んでもらえて光栄ですよ、補佐官殿。私の唾を尊んで美味しく味わってくださるのはあなたぐらいでしょうからね」
そう言って紀香はこれ見よがしにもう一度唾を吐きかけた。
霧山の鼻っ柱にかかる。
「貴様という女はっ!」
霧山の表情が怒りに変わる。
「今までさんざん私を好き放題にしたんだろう、霧山!これぐらいで怒るな、ゲス野郎!」
紀香は精一杯の悪態をついて霧山に反抗する。
しかし、紀香の期待とは裏腹に霧山は一呼吸おくと椅子にどっかりと身を沈めた。
「まぁ、いい。吐いた唾はお前自身に綺麗に舐めとってもらわんとな」
「誰がするか!バカ!」
「フフ、それがするんだよ」
そう言うと霧山はパチンっと指を鳴らす。
「は・ぁっ・・・・・」
その瞬間、悪態をつき挑戦的な敵意を向けていた紀香の顔から感情というものがあっという間に消えてなくなった。
霧山の目の前には無表情のまま、直立不動に立つ伏見紀香がいる。
「フン、もとに戻してどうなるものかと思いきや、何の進歩のかけらもない女だな、お前は」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
何をいわれてもすでに紀香には何も聞こえていないかのように霧山に視線さえ向けずに前を見たまま動かぬマネキンと化している。
「さぁ、キサマのおかげで私の顔が穢れたんだ。しっかりと舐めとって綺麗にしてもらおうか。紀香、心を込めてな」
霧山はそう言ってまた指を鳴らした。
「はい。ご主人様、紀香はご主人様の顔についた唾を舐め取らせていただきます。心をこめて、優しく」
「ついでに私が感じるようにお前の全身で私を刺激してくれないか」
「はい。紀香は紀香のカラダでご主人さまが感じてくださるようにご奉仕します」
無表情のまま、紀香は腰をおとすと霧山に抱きつくように顔を近づけると自らが吐き捨てた唾を自らの舌で愛撫するように舐めとっていく。
全身を上下に揺らすように舐める仕草は、同時に霧山のカラダに乳首と乳房をなすりつけ、秘部を霧山の膝に摺る合わせて甘い吐息を霧山の耳元に囁く。
「貴様も反抗的でなければ本当にいい女なんだがなぁ」
そう言いながら霧山は無表情のまま自分を舐めまわす紀香の豊満な胸を両手で愛撫していく。
「この胸も、申し分ない、揉みがいのあるいい乳房だ。若い、まだまだ開発しがいのある体なんだよ、お前は。さぁ、もういいぞ」
「はい、ご主人様」
霧山に促されて紀香はまた彼の前に直立不動のまま正対した。
「さぁ、私からの礼だ。受け取れ。カーっ、ぺっ!」
霧山は紀香の足元に唾を吐きかけた。
その唾をあえて自分の足で床に引き伸ばした。
「紀香、舐めとれ。私の唾だ。お前にとって私の唾は何だ?」
「紀香にとってご主人様の唾は聖なるお水。ご主人様の、精液、お小水に次ぐ紀香の大事なご主人様の心の贈り物です」
紀香は無表情のまま、四つんばいになり、精一杯舌を伸ばして犬のように床になすりつけられた霧山の唾を舐めとっていく。
「さて、次はどう楽しませてくれるかな?紀香。無表情で従順なお前もいいが、もう少し、お前の気高いプライドと正義感に付き合ってやろうじゃないか。今度は体にも自由をくれてやるよ」
そう言うと霧山は再び指をパチンと鳴らした。
ゆっくりと無表情だった紀香の顔に精気が戻ってくる。
目の前に広がる床とそれを舐めていた自分の舌に残る味の味覚、それが人間の唾であることを瞬時に紀香は悟った。
「よくやってくれた、お前が私に吐きつけた唾は、今、お前自身がしっかりと舐めとってくれたぞ。礼を言うよ、それは私からの礼代わりの私の唾だ。ハハハハ」
「くっ、き、霧山ぁーっ」
悔しさに紀香はすぐさま立ち上がり拳を握りしめ、はっとした。
(か、体が、体が自由に動くっ!)
紀香の表情からそれに気づいたところを見計らって霧山は紀香に声をかけた。
「ホラ、オレに復讐したかろう。殴るか、殺すか?局長とはいえ貴様だって元はレディスワットの最前線でならした猛者だ。好きにするがいい。素っ裸のまま蹴りでもどうだ?あん?」
けらけらと笑いながら事態を楽しむ霧山に紀香の復讐心は一気に燃え上がる。
殺してもいい、私自身がこれほど辱められたのだ、人間として決して許されない一線をこいつは超えた、悪魔だ。
紀香は全身にみなぎってくる怒りを力に変えて一気に霧山へと殴りかかる。
鼻の下、上唇との間にある人中(じんちゅう)、そこを打ち砕いて殺してもいいと思った。
「そのエヘラエヘラした顔を一撃で粉砕してやるっ!」
紀香の意思は決まっていた。
自分の地位を利用して、部下を性欲の捌け口に使い、組織を裏切っているこの男の所業はすでに万死に値する。
「ほう、さすがだな。素っ裸も非常事態においては女としての羞恥心よりスワットとしての誇りと威厳をとる、か。美しい、実に美しい肉体美だ、惚れぼれするぞ。これからもその力を私のために使って欲しいものだ」
霧山は逃げるどころか微動だにしない。
紀香の怒りの拳は俊敏な勢いで霧山の人中目がけて正拳として打ち抜かれていく――――はずだった。
「おっホホホホオ~、いいのかそれぐらいで、お前の私への憎しみと復讐心とはこの程度でよかったのか」
鋭い正拳は霧山の鼻先でいきなり失速、ちょんっと小突くような程度に触れて目の前で蚊も殺せないようなソフトタッチになった。
「なんだ、洒落か?伏見。お前でも茶目っ気があるんだな。本当に殺されるのかと思ったよ。目障りだから拳をどかせてくれ」
霧山は含み笑いを浮かべる。目の前にある紀香の正拳をやさしく握り両手で押し戻す。
「ど、どうしてっ・・・・・!」
信じられないといった様子で拳を押し返された紀香はその場でバランスを崩して尻餅をペタンとついた。
「こんな程度の仕返しならどんどんやってくれ。それ以上に、おつりがくるくらい、今までお前の体を楽しませてもらったからな」
「くっ!きっさまぁーっ。私に何をしたっ!」
「お前のナイスバディも、アナルもヴァギナもみんなオレのち○ぽまみれにさせてもらったぞ。それでこの程度の報復でいいのなら、これからももっと楽しませてもらおうか」
言い終わらぬうちに再び紀香の「やめろーっ」という声と共に回し蹴りが側頭部に迫るが寸前で勢いを失いなでるような足の甲がぺろりと霧山の頬をなぞる様に這っていった。
「こ、こんな、こんなはず、こんなはずは・・・」
紀香は信じられずに肩を震わせている。
「フフ、全裸での回し蹴りか、美しい。鍛え上げた体術の動作は無駄のない動く美術品だな。まぁ、ヌレヌレのパックリま○こが拍子抜けするところだが・・」
「き、貴様が私に危害を加えられないようにしているのかっ!私はまだお前の呪縛から解き放たれていないんだなっ!」
「くくく、もうひとりの牝奴隷のお前のココロが、大事なご主人様である私を気づけまいとお前の力を必死で抑制してるのさ。けなげだぞ、雌奴隷の紀香は」
「ふ、ふざけるなぁーっ!だれが貴様なんかの奴隷であるものか!お前には、お前は、警察組織を裏切った者として断罪され、裁かれる運命しか残っているものかっ!」
「言うねぇ。だったら、私を取り押さえ、連れて帰ってさっさとブタ箱にでもぶち込んだらどうだ。お前の仲間はすぐそこの先の舞台にいる。協力を頼め」
「な、なにっ」
霧山に言われて紀香はバルコニーから階下の舞台を見下ろす。
「奈那!小雪!涼子!瞳!チーム6のみんな・・・祐実もっ!なぜ、どうなっている、霧山。ここは何処だ、いま何が起きている!」
霧山はニヤけたまま黙っている、紀香の動揺を楽しんでいるかのようだ。
「今日は私の所属するもうひとつの組織のクリスマスパーティーでね。新しい商品として女たちのお披露目がされている最中だ。彼女たちはセルコンの壊滅作戦のつもりだがね、オークションも終わり、エキシビションとしてお出ましてワケだ」
「き、霧山。ま、まさか、貴様もセルコンの一人なのか・・・。お前が彼女たちを罠に嵌めたのかっ!」
紀香は刺すような冷たい視線を霧山に向けた。
「私はメンバーとして招待されただけだよ。そしてお前は私の牝奴隷として喜んで同伴すると申し出てくれたし。パーティーは『コーディネーター』と呼ばれる能力者がお膳立てをする。今回はそれに我々レディスワットのチームが舞台装置の一つとして呼ばれたわけだ。チーム内に『仔猫』を飼わせて手引きをさせてな」
紀香の悔しげな表情を楽しげに眺めて霧山はブランデーを口にする。
憎々しいほどくつろいだ様子に紀香は苛立った。
「私を、私を、スパイに仕立てたのか!私に、私に組織を裏切らせるようなマネをさせてっ!腐れ外道!」
「誤解するな。お前は私の牝奴隷として同伴させたのだと言ったろう。そして『仔猫』はチーム内で飼っていると・・・」
「な、なにっ!あ、あの中に私のように操られ、本意ではなく組織を、仲間を裏切らせるようなマネをさせているというのか」
「見たまえ、わが組織のイベントを事前にキャッチした明智祐実指揮下のチーム6は見事に場内を制圧、今まさに首謀者と客の身柄の拘束へと事件の終局を迎えている」
(明智祐実指揮下・・・・・?)
紀香は妙なことに気づいた。
部屋の壁にかけられたモニターのスイッチを霧山がリモコン操作でONにする。
モニターに映し出された舞台の上で女子校生らしき少女と対峙している祐実の実戦スーツの襟袖の徽章や文様は他の仲間たちと明らかに違う。
エーススーツと呼ばれるチームのリーダーであるチーフが着用するスーツだ。
「ど、どうして祐実がエーススーツを・・・彼女はまだそんな・・・・」
「フフフフ、困るな、伏見局長、君が進言したんだぞ私に。卒業配属も間もないのにいきなり数々の功績を立て続けに上げた明智君をチーム6のチーフに推挙したいと」
「ちがう!ありえない!彼女はそんな経験も技量も伴っているはずがない!私はそんなことを進言したことも・・・・ああっ」
紀香は再び憎しみの涙目を霧山に向ける。
「お前かっ!霧山!貴様がが私を操ったんだなっ!」
「さあて、私は明智君の直属の上司である紀香、君のたっての進言を受け入れて稲葉参事官に申し入れしたまでだ。かつての君が私の左遷か更迭を進言したように、ね」
「ち、ちくしょう!貴様というヤツは。一体何を企んでいるっ!」
「明智祐実のすべてを認めたわけではないが、彼女を周囲が補佐しながら若きリーダーとして育てていきたい、お前はそう言った」
「・・・覚えているもんか!」
紀香は怒鳴りつける。
紀香の怒りが大きければ大きいほど、霧山はむしろ落ち着いた態度でその感情の高ぶりを楽しみ、鑑賞していた。
「いや、驚いたよ。私はお前が命令どおりにもろ手をあげて祐実を褒めまくって推挙すると思ったが、あの言葉にはお前の自我の必死の抵抗があったのだと、ね」
ずうずうしくブランデーを口にしながら霧山はゆったりと腰掛けて紀香と対峙している。
「あのコは、他の訓練生より精神的にも技能的にも見劣りした。スワットとしての自覚が足りないと教官の奈津美がつきっきりで指導したんだ」
「あぁ、兼任教官の伊部奈津美か。そういえば君は彼女をこの作戦の管理監査官として任命したのだが、いないところを見ると、もう仲間に殺られたかな。可哀想に」
「なんだとっ!それも貴様の思惑あってのことかっ!人でなしーっ!」
「いいや、予想外だ。あの推挙の言葉も君の私への不服従を貫きたい必死の無意識の抵抗だったと分析したよ。君の精神力は強くてね、牝奴隷にするにもブリーダーが大変苦労した獲物のひとりだそうだ」
困ったもんだ、これほど完堕ちない女も珍しいとブリーダーが言っていた、と霧山は付け加えた。
「私がこの手で殺してやる、霧山!それしか私も助かる道がないのなら、共倒れにしてでも覚悟を決めてお前を殺るしかないっ!社会のために、組織のためにっ!」
ほうっと驚いた様子で霧山はブランデーグラスをテーブルに置いた。
「今のうちにそこから助けを呼んだらどうだ。素っ裸のまま部下たちに?」
「うるさい!貴様は私が叩きのめす!」
紀香が判断する限り階下の作戦はチームのペースで収拾が近いと判断できた。
屈強な男たちが倒されおり、主要出入り口はおさえてある。少なくとも無抵抗の階下の客をチームで抑え込んでいるように見て取った。
今はそのオペレーションを無事に進ませてやるべきだ。それに、このまま事態が進めば霧山の立場は危うい。かえって助けを呼ぶことで動揺を誘ったり、防備が手薄になり首謀者に逃亡されては元も子もない。
霧山が何をたくらんでいるのかはわからないが自分が自分でいられるうちにこの場を離れることなく、拘束しておきたかった。
(少なくとも、私が霧山の呪縛から自由にされている間に私自身が霧山を拘束し、あわよくば彼にこれ以上操らないために彼を気絶させるくらいしておかないと・・・・)
紀香の思考は自らも生き残りを賭けた最善の策、霧山からの呪縛から逃れるすべを必死に模索していた。
(コイツを殺してしまうのは容易い、だけど、それでは私の呪縛は解けずに代わる誰かに再び操られるかもしれない。それに、セルコンが警察組織にまで入り込んでいる証拠がこの霧山!唯一の手がかりを消すことはできない)
「いい心がけと適切な判断をしているようだな、紀香。いいだろう、貴様にわたしから大きなプレゼントだ。貴様に自由に殴られてやろう、許してやる」
そういうと霧山は立ち上がった。
「私を完膚なきまでに叩きのめし、気絶させるか、足を折るでもしてここにとどめ置けばお前は晴れて自由だ。それだけの度胸があるならな」
「なにをっ!」
紀香の拳に力がこもる。
だが再びその勢いが急速に落ちる危惧をはらみながらも紀香の怒りはそれをしないではいられなかった。
その拳は今度は止まることなく一気に霧山の左頬に強烈なフックとなって炸裂した。
その威力に霧山はソファに倒れこんだ。
(あ、あたった!臆するな、気絶させればいい。その上でコイツの制服を使って後ろ手に縛ってしまえば・・・・で、でも、な、なんなの、この胸の痛みは・・・)
紀香は霧山を殴り倒した時に胸に降ってわいたような切なげな心痛さに戸惑った。
「伏見ぃ~、それで終わりかぁ~?いいパンチだが、全然効かんぞぉ。フフフ」
口内が切れたのか口の端から鮮血を垂らして再び霧山がゾンビのようにふらりふらりと近づいてきた。
痛々しげな鮮血のこぼれる口元を見て紀香は再び胸のキュンとする異様な高鳴りに襲われていた。
【晴海『Zton(ゼットン)』店内 地下舞台】
瑠璃子は石原を気遣って気もそぞろで祐実のことなどまるで眼中にないように相手にもしていなかった。
「さぁ、『仔猫』は誰。喋らない気?だったら覚悟することね、ひとおもいになんか殺してあげないから」
祐実は銃口を石原の足に向けた。
「待ってよ」
瑠璃子の声にも祐実の銃口はぶれることなく石原に向けられている。
「なによ、人が楽しんでるのに。自分から早く殺されたい?だったらその願い、聞いてあげてもいいわよ」
絶対的優位に立つ祐実は不敵に微笑んで瑠璃子を睨んだ。
「『犬』さんは殺させない。ボクが守るんだ」
「馬鹿も休み休みいいなさいよ。この状況であんたに何ができるって言うの?べそまでかいて、あなた顔ぐしゃぐしゃよ、いい気味」
その顔が見たかったのよ、もっと泣き喚いて命乞いをしてくれれば嬉しいけどねと言って祐実は含み笑いを浮かべた。
「しばらくぶりに涙が出た。『犬』さんがボクのココロを少しあたためてくれた。ボクのために命までかけて親身になってくれた」
瑠璃子は制服の袖で涙と鼻水を拭う。
「なに言ってんだか。選ばせてあげる今殺されたい?コイツのあとがいい?」
「馬鹿はあんただ。あんたにボクは殺せないよ」
「えらい自信じゃない。なら死んでみる?」
祐実はゆっくりとトリガーに指をかけなおして銃を持ったまま腕組みをする。
いつでも身構えて撃てる、そんな自信の表れのように仁王立ちで祐実は微笑んでいる。
それに対して瑠璃子は自分の前に手に持った音叉をかざした。
「あん?なにそれ?音叉じゃない。馬鹿ね、あんたまさかその音叉で私の銃弾を防ごうとでもいうの?」
「この音叉はね、こうして共鳴させてチューニングに使うんだよ。お姉さん知らないの?」
そう言って瑠璃子は音叉を膝で叩いて見せた。
共振音がかすかに周囲に響く。
と同時に祐実は空いていた左手で瞬時にサイドベルトから引き出した伸縮式警棒で瑠璃子の手から弾き飛ばした。
さながらフェンシングの試合でもあるかのような俊敏さだった。
音叉は舞台の床へと弾かれていった。
「馬鹿にしないで。それぐらい知ってるわ。ただ、あなたの事だからそれが何か人を操る道具だったら困るの。あなたの思い通りにはさせない」
「痛っ、タタタタタタ、ひっどぉ~い。どこまで私を苛めれば気が済むのよぅ!」
瑠璃子は警棒で弾かれて赤くなった右手を左手でかばう。
祐実は警棒をその場に置いて再び銃を手に腕を組んで仁王立ちになる。
「『犬』さんがボクをあんたの前から隠してくれたおかげで、身動きできなかったボクはスカートのポケットから運命のキーをとり出すことができた」
「そう、それはよかったじゃない。で?それであんた私に勝てるとでも思っているの?音叉はもうないし、アンタをかばってくれるバカもいないのよ」
「ふふん、そうだね。でもボクはもう一人じゃない」
瑠璃子は困った様子もなく微笑んだ。
「アハハハ、それが何だって言うのよ。たとえ助っ人がいるにしたって私の銃には間に合わない。時間稼ぎしても無駄よ、死になさい」
そう言ってとうとう祐実が銃を瑠璃子に構えて照準を瑠璃子の眉間に合わせた瞬間だった。
視界の右から腕が伸びてきたかと思うと、いきなり鷲づかみに銃身を握られる。。
一瞬の出来事に無理に掴まれた手を振り払いトリガーを引いたものの銃弾は瑠璃子からは外れて舞台の非常口サインの照明を破壊した。
不安定な発砲は反動の大きさであろうことか祐実の手から銃を取り落とす結果となってしまった。
「チッ!ぬかった」
祐実は襲ってきた敵から距離を置くように横っ飛びに回転して即座にホルスターから出した自分の銃で身構えた。
「みんな、作戦続行!構わないわ、抵抗するものには発砲を許可する。陣内瑠璃子も致命傷にならない程度に痛めつけてやりなさ・・うっ!!!!!!」
次の瞬間、再び背後と側面からいきなり銃口を頭部にあてられて、祐実は息を止めた。
銃口と祐実の側頭部まで密着状態の0センチ、すでにどうすることもできなかった。
条件反射的にゆっくりと手を上げるしかなかった。
だが指はトリガーにかけ、銃は握ったままだ。
しかし銃を突きつけている見えざる相手からは銃を取り上げられることもなく、動くなとも、手を上げろとも言ってこない。
「なっ!なんで!どこに敵がいたっていうの!」
緊張したまま、首さえ動かすことができなくなった祐実の前に瑠璃子が近寄ってきた。
「ね、言わんこっちゃないよねぇ~。形勢逆転ってトコかな?」
祐実は銃口の先の腕の主にゆっくりと視線を移して愕然とした。
「奈那!あなた一体どうしてっ!」
祐実はこめかみに銃を突きつけられたまま両腕を腰の前で施錠させられた。
施錠したのは雪乃だった。
「雪乃・・・・・あなたまで・・・」
側頭部と背後から銃口を突きつけられては抵抗すらできないし、いちかばちかの行動は賢明ではない。
「雪ちゃん、しっかりときつくかけてね」
「はい、お姉さま・・・・・・」
両腕に重い手錠がかけられる感触と独特の拘束音が聞こえた。
(まだ、まだ私には銃がある)
祐実の手錠をかけらた手が汗ばむ、銃はまだ撃てる。
(どんな窮地に立たされてもあきらめない。よく考えなさい、本当に何も手はないのか)
「よりによって、また、なんで・・・・」
脳裏に浮かんだ奈津美のチーフ時代の言葉を思い出して祐実は失笑してひとり言を口にした。
「瑠璃子お姉さま、明智祐実はまだ拳銃を持っています。取り上げたほうがよいのでは」
後ろからの聞きなれた声に思わず祐実は銃を突きつけられているのも忘れて振り向いてしまった。
「ま、麻衣子まで、そんな。な、なんで・・・・」
祐実の背後には祐実を守っているはずの、雪乃や樹里、麻衣子が無表情のまま銃口を祐実に向けて立っていた。
「いいよ、ちょっとそのまま麻衣ちゃんが腕おさえてて」
「はい。瑠璃子お姉さま」
瑠璃子の指示で麻衣子は銃を奪わずに祐実の腕をおさえつけた。
麻衣子の表情も、祐実がレディードールを飲ませて洗脳した(1st-day)あの時と同じ無表情の意思のない目をしていた。
「あぅ!チクショウ。なぜ、なぜなのっ!なぜ私の命令が効かない!」
祐実は周囲の部下たちを見渡して一様に瑠璃子の支配が及んでいることを目の当たりにした。
「紹介するよ。みんな、ボクのかわいい妹たちだよ。そしてボクが危険に晒される時、彼女たちはすべてのことに優先してボクを守る。あんたの暗示と同じじゃないかな」
瑠璃子は祐実を見下ろして冷たく言い放つ。
祐実の拘束を確認して瑠璃子は舞台そでに立ちつくすママを呼びつける。
「ママ!ママったら!ママ!聞こえてんの!ケツ蹴り上げられたい?」
威圧的な声に電気に触れたように舞台の袖にいたママが恐々と顔だけ出した。
「あ、わたし?わたしのこと?」
「怖がんないでよ!今すぐ『犬』さんを病院へ連れてって。絶対死なせないで」
「わ、わたしが?犬を?」
「ママの召使達に命じればいいじゃない!早く!早くしてよ」
「は、はい。さあ、言われたとおりに犬を運んで」
ママの命令にまだ隠れて残っていた黒服の男達が4人がかりで犬を舞台裏へと運び出していった。
「まさか!そ、そんな、全員だなんて!やめて!奈那!雪乃!しっかりして!敵はあのコなのよ!」
「・・・・・」
雪乃の表情は冷たく無表情だった。
祐実は驚きの表情から一転して諦めに近い深いため息をついた。
「フッ、所詮は・・・・操り人形か」
すべてを悟って祐実は言葉をこぼした。
(薬なんかより、あの娘のチカラの方が上だった。しかもチームを全員支配していたなんて・・・)
祐実の体から力が抜けていく。
瑠璃子はスキップを踏むように小躍りしながら京香に近づいた。
「京ちゃん、踊るのを止めてあなたの妹を捕まえて」
「はい、おねえさま」
瑠璃子の声に京香は振り向きざま小雪に抱きついた。
「ね、姉さん!いやっ!放して!」
後ろから羽交い絞めにされて小雪はまったく抵抗ができないまま瑠璃子の前に晒された。
「さっきから姉さん、姉さんってうるさかったんだよね。そんなに姉さん想いなら、私があなたの願い聞いてアゲル」
「な、なに?」
「怯えなくていい。別に殺そうってワケじゃないもの、仲のいいお姉さんと一緒にいられるようにしてしてあげるんだよ」
「あ、あなた!一体みんなに何をしたの!」
小雪は自分の身にかかる恐怖に抗いながら毅然と瑠璃子に言い放った。
「ちょっとお話ししただけだよ。そして彼女はボクのことをとても好きになってくれた。今はボクの方が京ちゃんのお姉さん」
「ウソ!人がこんなふうになるはずないじゃない!」
「なるよ、簡単さ。樹里、瞳!、もうその女を拘束したからいいよ、二人で楽しんで見せて欲しいな」
「はい、おねえさま」
「はい、瑠璃子おねえさま」
二人の顔に安堵と安らぎのような平常勤務の時にみせる優しい表情が戻り、頬を高潮させる。
奈那は銃を放り投げるとプロテクトスーツを脱ぎ始めた。
「ジュリ、来てぇ」
「ひとみぃ~」
瞳も急くように全裸になると2人は祐実のいる目の前で濃厚なキスをしたあと、まるでへびのように絡み合いお互いに愛撫して悩ましげな声をあげ始めた。
「あん・・・・あ~っ、きもちいいぃぃぃ」
「ヒトミ、ヒトミ、スキよ。だから感じて、もっと感じて」
「あん、うれしいぃぃぃ。ヒトミさいこぉぉぉお」
目の前に絡み合う樹里と瞳の姿を見て祐実は苦しげに目をそらした。
「さあ、瑠璃ちゃんの命令だよ!みんな、自分を解放するの、楽しいこと、Hなことしてごらん。そしてみんなに見せたくて仕方なくなる。見られるとゾクゾクしちゃう。もっともっと燃えてくるよ!」
瑠璃子の声が言い終わらぬうち麻衣子を除く全員が一人残らず服を脱ぎ始めた。
お互いに抱き合って激しくレズに酔いしれるもの、オナニーに喘ぎ声を響かせるもの、舞台の上は血まみれの惨劇から一変した。
「ホラ、ね、京ちゃんの妹であるあなたは、当然、瑠璃子の妹になるんだよ」
瑠璃子は祐実に打ち払われた音叉を拾い上げて小雪に不敵に微笑んでみせた。
「ちがう!何が『ホラ、ね』よ!みんな、あなたが・・・・・・・・・えっ」
耳につく音叉の共鳴音、敵対心剥き出しで小雪が瑠璃子を睨んだ瞬間、目と目があったとき、小雪はすべての集中力を失い霞がかったような気だるい倦怠感に襲われた。
(な、なに・・・からだ、ふんわりして・・わたし・・・・きもちが・・かるくなる・・・なんか・・きもち・・いい)
視界の中には不敵な笑みより、むしろあたたかな可愛い少女が小雪に優しく微笑んでいた。
「大丈夫よ、もう周りに危険はない。あなたと私の2人だけ。あなたと私の2人だけ。なんの不安もない、緊張は緩やかにひいていく。こころはさざなみのたつ春の海のように穏やか。全身の力はぬけ、とてもリラックスできる。もう自分がだれなのか、どこにいるのかもわからない。さあ、体をゆだねて。あなたは大好きな人に抱かれているのだから・・・・」
小雪を羽交い絞めにしていた京香に小雪の体はゆっくりと崩れていく。
京香の手を離れ、小雪はその場に眠るようにへたり込んだ。
なにか瑠璃子ささやいている。
それが何なのかはぜんぜん気にならないのに、その言葉が小雪のココロを解きほぐし、えもいわれぬ多幸感に包まれていく。
(なんだろう、とっても・・こころがおだやかで・・しあわせなきぶん・・蕩けてちゃ・・う・・いい、ずっとこのままでいたい・・)
すでに少し前の危機迫る緊張感は消し飛んでいた。
周囲に対して何の関心もない。
自分でも周囲に多い尽くした緊張感という鎧をやさしく脱がされて軽くなっていく。
顔が、体が、弛緩していくのがわかる。
でもそれは恐怖でも、なんでもない、受け入れいい自分のためにも。
瑠璃子の言葉がココロに染込んでくるが、何を言われているのかはなぜかわからないのに、なにを言われても受け入れられる奇妙な至福の感覚。
(あぁ、わたし、何でこのヒトを警戒していたんだろう。このヒトのためなら何でもしてあげたい。いいえ、しなければいけない。それ、わたしの生きがいなんだもの・・)
気持ちが穏やかに、そして瑠璃子のためならば自分は何でもしなければいけない使命感とそうすれば得られるはずの幸福感があると思えてくる。
(あぁ・・・きもち・・・いい)
頭の中はそれだけで満たされた。
「フフフフフフ、それでいいんだよ。とってもいい顔してる」
瑠璃子は小雪の頬を優しくなでる。
小雪はすでに弛緩しきった表情で子供のように微笑んだ。
ただ、褒められたことだけで歓びが全身を暖かく包み込む。
相手を信じきって身を任せている幼児のような表情だ。
「あなたの名前、教えて」
「こ・ゆ・・き、ちいさい・・ゆき・・で・・小雪」
「フフ、小雪ちゃん。私は瑠璃子。京香のお姉さんだよ。だから瑠璃子は小雪ちゃんのお姉さんでもあるんだからね」
「・・・瑠璃子・・・おねえちゃん」
「そう、わたしは瑠璃子。あなたのお姉ちゃん。小雪ちゃんは瑠璃子の言うことを素直に聞いてくれる可愛い妹だからね」
「は・・い・・、わた・・し、るりこおねえちゃんの・・いうこと・・きく・・」
「いい子・いい子だね、私の小雪」
瑠璃子に頬擦りされて小雪は蕩けるような笑顔をみせた。
全身を溢れんばかりの幸福感が襲い、体が歓びに小刻みに打ち震えた。
「こゆきーっ!ダメよーっ!目を覚ましなさぁーいいい!堕ちてはダメ!しっかりするのよ!」
両手両足に枷を嵌められ、身動きのとれない祐実が精一杯の大声で小雪を覚醒させるため叫んだ。
「はっ!」
祐実の声に我を取り戻した小雪は反射的に飛び起きると京香から迫る手を振りほどいて、瑠璃子の前で身構えた。
目の前に陣内瑠璃子を見据えながら体は重く、頭の芯がはっきりせず霞がかり朦朧としている。
禁断の甘美な感覚を打ち払うように、正気を取り戻すべく小雪は大きく頭を振った。
(ちがう、違う、ちがう、違う!みんな、ああやって絡めとられたんだ。自分を失くしてあの娘の操り人形に・・・。きっとお姉ちゃんも!)
目の前の瑠璃子はいたいけな女子校生なんかじゃない。
女子校生の姿に身を包んだ魑魅魍魎!
「まったく、あの女は人の邪魔ばかりするよね」
そういいながら、瑠璃子はまるで友達でもあるかのように小雪に歩み寄ってきた。
「来ないでっ!それ以上近づいたらただじゃおかないっ!!」
瑠璃子には小雪の警告などまったく耳に入らない。
「せっかく、これから私が気持ちいいコトしようとしてたところを邪魔したんだよ、あの女」
音叉の共鳴音が再び小雪の耳に届くと体は再び反応して弛緩して頭の中に霞がかかる。
「あっ」
一瞬、頭から足へ電流が走るように痺れる。それも快い震えが。
(いけない!だめ!だめ!お姉ちゃんを取り戻す・・の・・・・っ・・・て・・・わ・・たし・・なに・・しようと・・して・・あ・・れ・)
共鳴する音叉を手に瑠璃子は小雪ににじり寄って耳元で囁いた。
小雪はうつろな表情で瑠璃子の言葉を復唱してしまう。
「・・・・せっかく、わたしがきもちいいコトしようとするの・・・邪魔した女」
小雪はうわ言のようにつぶやいて身構えたまま視線を祐実に向けた。
「あの女が京香姉さんを苦しめたんだよ、フフフ」
小雪の耳に手をかざして内緒話のように瑠璃子は囁いた。小雪の視界には瑠璃子の存在は入っていない。
霞がかった小雪の思考はすでに瑠璃子を受け入れ始めていた。
「あの・・・おんながお姉ちゃんを・・・」
その言葉で小雪の顔に憎しみに燃え盛る激情の夜叉のような表情が浮かび祐実を睨みつけた。
今度は瑠璃子に囁かれた京香がふらふらと小雪に近づくと小雪の服を脱がせ始めた。
「コ・ユ・キ、お姉ちゃんと楽しもうよ。小雪もきっと気に入るよ」
「あぁぁ、おねえちゃん、京香ねえちゃん」
京香に唇を吸われあらわになった胸をゆっくりと愛撫されると小雪は身構えをといて京香に抱きついた。
「小雪!ダメ!しっかりして!しっかりしなさい!私を自由にするの!ここから脱出して体勢を立て直すのよ!」
だらしなく脱がされて半裸になった小雪は京香との重ねた舌をゆっくりと離すと祐実へと歩み寄った。
「小雪!早く、この手錠を!鍵はそこに!その奈那が脱いだスーツに・・・・・・こ、小雪?」
小雪は眉間に縦じわを寄せて祐実を睨みつけていたが、鼻っ柱を思い切りなぐりつけた。
「っ!」
祐実は苦痛に声を漏らす。
鼻から鮮血が流れて止まらない。
「言ってやんなよ、小雪ちゃん。『うるせえんだよ、このメスブタ野郎!』」
瑠璃子が2人の前に立って言った。
「うるせえんだよ、このメスブタ野郎」
眉間に深い憎悪のしわを寄せ、目をつる上げて本気で怒りの表情を顕わに小雪がいきり立つように叫んだ。
「アハハハ、そうそう。『人が楽しんでるときにガタガタ言ってんじゃないよ、ガキ!』」
瑠璃子はそれを楽しんでいる。小雪の感情をさらに昂ぶらせる台詞を復唱させる
「人が楽しんでるときにガタガタ言ってんじゃないよ、ガキ」
すでに小雪の中に魔が入り込み、瑠璃子の言うとおりに小雪は祐実をなじりながら血がほとばしるように瑠璃子に言われるまま頬を平手で何度も左右に叩く。
「ホラ、小雪はこのオンナを傷つけるとワクワクする。身震いするほど感じちゃうよ」
小雪に妖しい喜悦の表情が生まれる。
「感じる、すごく感じてきちゃう。嬉しくて嬉しくてお漏らししちゃう。でも気にならない。見下した相手には何をしても許される」
小雪は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、瑠璃子が囁くとすぐに祐実に自分のモノをかけ流した。
「フフフ、どう小雪ちゃん!あなたとても気に入ったでしょ。誰があなたに悦びをあたえてくれたのかなぁ?」
「・・・・あなた・・」
「えーっ?きこえなぁ~い」
「あなた・・です」
「だーめっ!瑠璃子お姉さまよ、そう呼ぶの!」
「はい、瑠璃子おねえさまです。わたしに悦びを与えてくれたのは瑠璃子おねえさまです」
「ボクの言葉は絶対よね」
「はい、絶対です」
「ボクの言うことには従いなよ」
「はい、瑠璃子お姉さまのいうことに従います」
「どんなことにもね」
「はい、どんなことにも」
「ホラ、話をしただけで小雪も目が覚めたよね、ボクと一緒にいる世界の方がすばらしいよね」
「はい、お姉さまと話をしただけで私も変わりました」
「ボクの言ったことは正しいよね」
「はい、おねえさまの言ったことは正しいです、全部」
「京香ちゃんが呼んでるよ、もっと感じあうの。姉妹なんだもの遠慮しないでいいんだよ」
「はい。おねえさま、ウフフフフ」
小雪は目を妖しく潤ませて淫乱な微笑でうなづいた。
瑠璃子のピンマイクを通して周囲に流れる小雪の服従の言葉。
目の前で新たな獲物を堕として見せた瑠璃子に周囲の客からはどよめきと感嘆の声が漏れる。
すでにさっきまでの緊張を強いられたレディースワットの突入劇は指揮官である祐実を残して全員が瑠璃子の支配に身をまかせ淫靡なレズショーを繰り広げている。
「こゆきぃぃ、しよ、キモチいいことしよォーっ」
京香が小雪を呼ぶ。
「おねえちゃん。京香おねえちゃん。小雪をかんじさせてぇぇ」
2人はまた絡み合った。
「さて、と」
瑠璃子は祐実の前まで来る。
「ケガしちゃったね、ちょっと血出てるよ」
さきほどとはうって変わって瑠璃子は急に優しげに祐実を心配する。
「・・・さぞ満足でしょうね」
祐実は唇を噛みしめて瑠璃子を睨んで言った。
「別に・・・・。ちょっとだけお姉さんに仕返しだけしちゃった。だってお姉さんボクにキツくあたるんだもの。大人げなかったかなぁ、でもホラ、ボク女子校生だから」
「やるんだったら、早くなさいよ!わたしもあのコ達みたいにするつもりなんでしょ!」
祐実の眼は悔し涙で潤んだようにも見える。
銃はあるのにわざわざ手にしたまま麻衣子がしっかりと掴んでいて使うことが出ない。
それが悔しさをさらに増幅させていた。
そして瑠璃子の力を目の当たりにしておそらくは自分も抗いきれないかもしれないと、半ば、弱気にもなっていた。
「それでもいいけどね。ただ、虚しいだけなんだけど」
瑠璃子の答えは案外素っ気なかった。
「耐えてみせる!絶対に言うとおりになんかなるもんですか!体の自由が奪われたってココロまで犯させやしない。いざとなったら舌を噛んで死んでやる!」
最後の強がりだった。正直、チームの全員、一人残らず堕として見せた力に抗いきれる自信は全くない。
ほんの少し前まではチームの全員が自分のいいように使える操り人形として死なせても構わない消耗品としか見ていなかった自分が。
「気高いこと、ご立派」
強がってるくせに、そう言いたげな表情で瑠璃子は言った。
「つくづく最後までイヤなヤツね、陣内。でも私は最後の最後まで決して諦めない」
手負いの野獣のように祐実はまだ牙をむくように意気込んで見せた。
「こうなったら、もうあんたに何言われてもいいんだ。疲れたし、コレでやっと終われる」
瑠璃子はもう祐実に興味も失せたように取り合わなかった。
「何のこと?何が言いたいの!」
「ボクね、最後の最後になってなんとなく仕掛けが見えてきて・・・・。だからあんたのことが可哀相になってきたのさ」
「だから、何が言いたいの?言いなさいよ、はっきりと」
祐実はそう言って瑠璃子に噛みついた。
「ママ!もういいでしょ!これで終わりにしてよ!ボク、もう疲れた!もうお開きだよね」
周囲を見渡したがすでにママの姿はなかった。
「なんとなく・・・・、やっぱりね、かな」
その瞬間、照明が切り替わって舞台だけが照らされて瑠璃子とその周囲で思いおもいに淫蕩に耽るレディースワットの隊員達にスポットライトがあてられた。
その中でもひときわ瑠璃子に強いライトが向けられている。
舞台脇の赤い回転灯が消え、得点表の周囲のネオンがチカチカと光り始めた。
投票を促す合図だということは瑠璃子は知らないが客席は固唾を呑んで瑠璃子の評価がどうなるのかを見守る静寂が流れた。
「識者会は先刻の評価を取り消し、再評価を行うことを決定しました」
感情のない女性のアナウンスが劇場内にコ響く。
数字のインジケータ最下段の[1]が音を立てて点いたかと思うとその数はプルルルと小気味よい上昇音とともに一気に[30]まで瞬間的に昇りつめ点灯しファンファーレが鳴り響いた。
会場内からスタンディングオベーションの拍手喝さいへと包まれていった。
場内アナウンスが流れ始める。
『陣内瑠璃子 POINT:30、パーフェクト。審査課題、現役LS隊員の篭絡をコンプリート。採点課題 1.他人への成りすまし、2.ブリード手法の複数の行使、3.道具を使用した篭絡、4.想定外実戦能力 すべてクリアー! 判定:AAA』
【晴海『Zton(ゼットン)』店内 地下舞台 】
照明が切り替わって舞台だけが照らされて瑠璃子とその周囲で思いおもいに淫蕩に耽るレディースワットの隊員達にスポットライトがあてられた。
その中でもひときわ瑠璃子に強いライトが向けられている。
舞台脇の赤い回転灯が消え、得点表の周囲のネオンがチカチカと光り始めた。
投票を促す合図だということは瑠璃子は知らないが客席は固唾を呑んで瑠璃子の評価がどうなるのかを見守る静寂が流れた。
「識者会は先刻の評価を取り消し、再評価を行うことを決定しました」
感情のない女性のアナウンスが劇場内にコ響く。
数字のインジケータ最下段の[1]が音を立てて点いたかと思うとその数はプルルルと小気味よい上昇音とともに一気に[30]まで瞬間的に昇りつめ点灯しファンファーレが鳴り響いた。
会場内からスタンディングオベーションの拍手喝さいへと包まれていった。
場内アナウンスが流れ始める。
『陣内瑠璃子 POINT:30、パーフェクト。審査課題、現役LS隊員の篭絡をコンプリート。採点課題 1.他人への成りすまし、2.ブリード手法の複数の行使、3.道具を使用した篭絡、4.想定外実戦能力 すべてクリアー! 判定:AAA』
やがてアナウンスとはちがう重々しい男の声が流れる。
『オメデトウ!陣内瑠璃子クン!いや、コレから授けるキミのコードネームで呼ぼう『SNOW』』
「ん、納谷悟○さん?」
「控えなさい、『SNOW』!声のお方は我われ『セルコン』識者会の長よ」
舞台の脇にいるのは装いも新たに煌びやかなチャイナドレスでひざまづいて控えるあのママの姿だった。
「あ、ママ」
「『SNOW』!控えなさい」
命令口調のママに瑠璃子はむっとする。
「控えるかどうかは私が決める!」
瑠璃子はきっぱりと言い放った。
『フフフ、まあ許してやろう。今回のお前の働き見事としか言いようがない。識者会としても最終判定までのあらゆるクレームは、提出された数々の作品の出来によって全て払拭された。LSの1名どころかその1チームほとんど全てを堕とした手腕は今後の働きにも十分期待が持てそうだ』
「よく言うよ、舞台装置はすべて周到にお膳立てしてたくせに。それに1名だけ堕せばイイなんていわれなかった」
『フフ、そこまで見抜くか、お前は。『メデューサ』、お前が張り巡らせたシナリオの伏線をこの『SNOW』は読み解いたようだな』
識者会の長の言葉に反応したのは『メデューサ』と呼ばれたママだった。
「恐れ入ります、長。私も今の『SNOW』の言葉を聞き、驚いております。今まで発掘した素材の中でも5本の指に入る逸材かと」
ママがかしこまって実体なく声しか聞こえない長に言葉を返した。
「『メデューサ』、それがママの正体なんだ。ママもただの下っ端じゃなかったわけだよね、役者だね、でも下手な芝居、プンプンだよ。このスワットの人たちに情報リークしてたのもママの差し金だよね」
「言うじゃない、でも褒めてあげる。私が今回の事件を演出してたのに気づくなんて、今までの受験者の中でもあなたが初めてじゃないかしら」
「よく言うよ。一体、ひとつのTESTを組み上げるのにどれだけの時間を使ってるの?」
「言ったでしょ、『遊び』だって。これは会員の皆様にも楽しんでいただくためのショーにまで演出を高めて仕上げてなくてはならないの」
「ご立派、そのためにこの明智祐実まで手駒に仕立て上げたんだ」
「あら、そう?」
「すっとぼけないで、バレバレなんだよ」
瑠璃子はぷーっと膨れっ面になった。
会場から失笑と驚きの声が漏れる。
『フフフ、『SNOW』、お前は利発な娘だ。ますます気に入った。お前の判定はパーフェクト、組織の中で与えられたお前の地位は『ハンター』だ』
識者会の長の言葉に会場が騒然とする。
おおっと観衆がどよめいた。
『いきなりか』、『はじめてだ』、『あんなに若い娘が』などの声が舞台へと聞きもれてくる。
「ハンターってなんなの?」
「あなたはね、最初のTESTでいきなりパーフェクトをとって、『ブリーダー』ではなく『ハンター』に指名されたのよ。身に余る光栄だわ」
いなくなった司会者のマスクマンの代わって『メデューサ』と呼ばれた、ママが瑠璃子に教えた。
「だからハンターってなに?」
『ハンターは『ブリーダー』の支配者にして死刑執行人、組織の人間の裏切りを咎め浄化する神に等しき存在だ』
「ふ~ん、じゃあ誰の指図も受けなくていいわけ?」
『識者会の命を受け行動してもらう。指図なきときは自由だ、報酬もある』
「おこずかいくれるの?」
「バカ!長になんて口のききかたなの!」
慌ててママがたしなめる。
識者会の強大な力を知っているからなのか、ママでさえ声の主に緊張している。
「しばらく、やってみてもいいよ」
瑠璃子は自分の態度を崩さないまま、気ままな返事を返す。
『おめでとう、『SNOW』、新しいハンターの誕生だ。ようこそ、我がセルコンへ』
声の主は祝福の言葉をかける。
再び劇場内から喝采が起きる。
瑠璃子は周囲の喝采を制して声の主に叫ぶ。
「ちょっと待ってよ。最後にこの明智祐実のことが残ってる」
すでに識者会の長である声の主からの返答はなかった。
「その女の役目は終わったわ。あとは私が適当に処分するだけよ。調製してオークションに出てもらうわ。きっと高グレードのドールになれる」
瑠璃子の言葉にママが冷たく言い放つ。
祐実の顔がまるで少女のように怯えて蒼白になった。
「チクショウ!放せ!私はお前達を絶対許さない。たとえ何をされたっていつか、きっといつかお前達の組織を殲滅してやる」
祐実は全身を激しく震わせながら大声で叫んでママと瑠璃子を睨みつけた。
「はぁ~、なにもわかってないね」
疲れた表情でため息をつくとで瑠璃子は祐実の前に歩み寄る。
「な、何ですって!」
祐実の声に怒気を込め、祐実は瑠璃子に聞き返した。
「あら?じゃあ、あなたはわかってるっていうの?」
タネを知るママが興味深々で背後から瑠璃子に聞いた。
「途中で気づいたよ。気づいたら虚しくなった。可哀想なことするよ!」
「まぁ、ステキ。あなたって長の言うとおり本当に利発なコね、生意気だけど。でも私こういうイタズラ大好きよ」
「一体なんだっていうの!わたしがどうしてあんたたちに空しく思われなきゃならないのよ!」
ヒステリックに祐実が騒いだ。
「そんなに言うんだったら教えてあげるよ、明智祐実さん。あなたは以前からそんなに勝気で自己中な偏った性格だったの?」
瑠璃子はネタバラしでもするように祐実に問いただす。
「なんですって?なにが言いたいの」
「ボクがこのコたちを堕として好き勝手にHなことさせて操っているように、このママ、『メデューサ』にあなたもすでに堕とされているんだよ」
「ま、まさか!そんな」
祐実の表情に驚きの色は浮かぶ。
「おそらく、あなたはココロをこのママに弄られて相当偏った人格に作り変えられたんだ」
「ちがう!そんなコトない!私は今だって過去だって変わりのない明智祐実、私自身よ!」
否定する祐実の姿には真実を知らされることへの恐怖感が漂っている。
「あなたは組織が新たに『ブリーダー』をTESTする機会が訪れたときのために、課題をお膳立てするための手駒として狙われて作り変えられたんだよ。きっと」
おおっと観衆が感嘆の声を漏らす。
「信じない!そんな話、信じるわけないじゃない!私は私以外の何者でもない。自分自身の上昇志向を否定するつもりはない。でもそれだけよ」
「じゃ、ストレートに言うよ。あなたが自分のチームの中に『仔猫』というスパイがいると疑っていたけれど、おそらく『仔猫』はあんた自身なんだ」
「な、何ですって!」
祐実はそれを聞いて愕然とする。
< To Be Continued. >