4話・~バッドエンド編~
18:30・・・同場所
優嘉は裸のままソファに座っている。
対して飛騨は一度服を着なおしている。
優嘉のすぐ側に立って話しかける。
「聴こえるか優嘉?」
「うん・・・」
「俺の言う事は絶対だ。そうだな?」
「うん・・・」
「では命令する・・・今から目を開けて目の前に居る人の言う事は絶対だ。俺よりも絶対だ。わかったな?」
「え?・・・りゅ~せ~より絶対?・・・」
優嘉の眉間にシワが寄る。
分かりやすく困惑しているようだ。
「逆らうと俺がお前を捨ててしまうぞ!」
飛騨は少し強い口調で言う。すると、優嘉がビクッと震える。
「!嫌・・・ヤだ・・・・捨てるのダメ・・・」
「安心しろ。そいつの言う事を聴いていれば幸せな気分になれる。ほら、想像してみろ」
「あ・・あ・・・」
優嘉の顔がスッと安らかな顔に変わる。
「今から100数える・・・」
・・・・・・
「・・・100!」
「ん・・・あれ?・・・・ここは・・・・」
目を覚ました優嘉はぼんやりする頭で状況を飲み込もうとする。
「お目覚めかな?」
「!?あなたは看護師の・・・」
「看護師?・・・僕が飛騨雄介だよ。君のとっても大好きな結城龍正君と、恋敵の羽山麻衣が狙っている、ね・・・」
「どうしてそれを!?」
「それより・・・恥ずかしくないのかい?」
飛騨が優嘉の身体を指差す。
優嘉の目線が下に落ちる。
「・・・え?きゃああっっ!!」
初めて全裸だという事に気づいた優嘉は慌てて手で胸を隠し、身体を丸める。
(ど、どうして裸なの!?さ、さっき見たときは確かに服を着ていたと思ったのに・・・いったいいつの間に!?)
優嘉は身体を丸めたまま混乱する頭を精一杯働かせる。
「とりあえず・・・床にかがんで脚を広げてくれ」
「そんなことするわけ・・・!!」
(え?身体が勝手に!!)
優嘉は言われたとおり床にかがむ。
手で一生懸命に隠そうとするが、優嘉の意思は通らなかった。
脚が開く事で恥部が丸見えになる。
「い、いやああっ!!な、何で!!どうしてよぉっ!!」
自分自身の身体の異変に恐怖の色が浮かんだ。
「きれいなおま○こだね~」
飛騨は顔をくっつくほどに近づける。
「や、やだあっ!!何をしたのよ!!」
「・・・次は指で広げて奥まで見せてくれよ」
優嘉の手が震える。
「い、嫌・・・な、何でなの・・・身体が・・・」
そして指でくぱあっと広げた。
「!!!」
優嘉は顔を真っ赤に染める。
本人は気付いていないが、拭き取りきれなかった雄介の精液がついている。
「おや?ヒクついてるね。見られて感じてるのかな?」
「そ、そんなことない!!」
「いや・・・確かにヒクついてる・・・そして熱い熱気が伝わる・・・」
雄介が優嘉の恥部で鼻をくんくんとさせる。
「!!!こ、この変態!!」
-ドクンッ-
(!!?・・・な、何で・・・そ、そんなわけ無い・・・)
優嘉の子宮が熱を帯びる。女の部分が快感を求め始める。
「ははは。愛液まで出てきた。変態は君のほうだろ?」
(く、悔しい・・・そ、そうよ!そもそもどうしてこうなったのかを・・・)
「気にする事は無い。それより快感が欲しいだろ・・・」
-ドクンッ-
(アタシは今朝・・・今朝・・・あれ?・・・なんだか・・・思い出そうとすると・・・ぼ~っとする)
「ほら、そんなことは気にしなくてもいいだろう?それより今の状況が大事だ」
-ドクンッ-
(・・・そうだ。それよりこの状況をどうにか・・・って違う!何故こうなってるかを・・・あれ?・・・どっちを考えてたっけ・・・)
雄介が畳み掛ける。
「ほら、こんな状況で見られるなんて恥ずかしい・・・」
「・・・はずかしい・・・」
「だから感じてしまう・・・」
「だから・・・かんじる・・・」
「だから快感が欲しい・・・」
「だから・・・ほしい・・・」
「だからセックスしたい・・・」
「だから・・・したい・・・」
さっきよりぼんやりとした優嘉は、雄介の言葉をオウムのように返していた。
その顔がだんだんと熱を帯びる。
雄介はズボンを脱いでペニスを取り出す。
「あ・・・」
優嘉の視線がそれに集中する。喉がゴクンと鳴る。
「・・・欲しいか?」
「・・・ほしい・・・」
優嘉は引き寄せられるように雄介に近づく。
飛騨は優嘉の耳元で囁く。
「欲しかったら・・・おねだりをしてごらん」
「!!!?」
-ドクンッ-
優嘉が最後の抵抗を見せる。
(だ、だめ・・・流されちゃダメよ・・・りゅ~せ~・・・アタシを信じて・・・)
「・・・最後の最後で手をかける奴だな・・・もう身体は疼いて仕方ないだろう?」
(く!こ、コイツは・・・殺してやる!!)
優嘉は殺気をこめた視線を向ける。その目は潤んでもいる。
しかしそれは飛騨の快感を高めるだけだった・・・
「ふっ・・・どうせだったら嫌々犯してやる!!」
雄介は優嘉のま○こにペニスを当てる。
優嘉の顔が嫌悪感に満ちている。
(う~~!!さ、最悪・・・)
「・・・どうした?反論はしないのか?」
「っ!!!」
優嘉の身体は快感を求めている。
必死で理性で抑え付けている。
(いやっ!!こ、こんな奴のペニスなんて!!・・・嫌なのに・・・)
心では抵抗していても、身体を止めることは出来なかった。
優嘉は飛騨のペニスを受け入れてしまった。
「ほら、どんどんと快感が高まってくる」
「あ、ああっ!!や、やめてっ!!黙ってて!!」
誰も居ない診療所にぱんぱんと音が響き渡る。
「ほらっ!!イケ!!そしたらお前の心は俺無しでは居られなくなるんだ!!」
「!!!?・・・い、いやああっ!!!・・・くっ!!」
優嘉は絶頂を声を殺して耐えた。それぐらいしか抵抗できなかった。
「はあっはあっ・・・まさか・・・催眠!?」
身体が快感を得て静まった事で、優嘉が嫌悪感を露わにする。
「そうだよ?ほら・・・力が抜ける・・・」
「あっ・・・」
-フラッ-
優嘉はなんとか踏ん張った。
(やばいわ!ここまで深く入れられたなんて!)
優嘉の額から汗が噴出す。
そして単独でここにやってきた事を激しく後悔した。
「心配しなくていいよ・・・喜んで従うようになるさ」
「え?」
「ほら・・・僕の目を見て・・・」
「いくらなんでもあんたの言いなりにはならないわよ!!催眠では嫌な事は出来ないのよ!!そのぐらい知ってるでしょう!!」
言いながらも優嘉は飛騨の目から視線を外せない。
そして、心のどこかで飛騨を受け入れてしまっている。
「大丈夫・・・君はもうすでに深く催眠にかかっている・・・これ以上ないぐらい深ぁくね・・・今の君の心は真っ白だ・・・真っ白な白い紙・・・ちょっとインクを垂らせば直ぐに変化してしまう・・・いろんな色に染まってしまう・・・」
飛騨の言葉に、言いようの無い不思議な感覚が湧き上がる。
(何・・・この変な感じ・・・ホントにヤバイわよ・・・)
「ほら、素直になったね・・・もう一度僕を見て・・・そう・・・じっと・・・」
(く・・・目が離せない・・・)
「だんだんとドキドキしてくる・・・そう・・・だんだんと恋心が湧き上がる・・・」
(!・・・嘘よ・・・嘘よ・・・)
気持ちに反して優嘉の心臓の鼓動はどんどん加速していく・・・
(そ、そんな・・・そんなはずは・・・・・・りゅ~せ~・・・)
「ほら・・・龍正への気持ちがどんどん僕へのものに変わっていく・・・あと少ししか残ってないね・・・あと30秒分しか残っていないよ・・・30数えた頃には全ての好感が飛騨に移ってしまう・・・30・・・29・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・もう・・・やめて・・・お願い・・・何でもするから・・・」
(嫌っ!助けてぇ・・・龍正っ!!)
優嘉は胸を押さえてうずくまって震えている。
「・・・0!」
「ああっ!我慢できないっ!好き!好き!」
(ごめん・・・りゅ~せ~・・・)
雄介に喜んで飛びつく優嘉の目には、一筋の涙が流れていた・・・
優嘉を抱きながら雄介は考えていた。
(ふむ・・・これだけやればもう十分だろうが、一応更なる伏線は用意しておくか・・・樹莉の方も奪われただろうから取り返さないとな)
20:00・・・龍正の家
龍正と麻衣が帰宅し、部屋の明かりをつける。
「おい・・・まだ優嘉の奴帰ってないみたいだぞ」
「本当ですか?どこへ行ってるんでしょう」
龍正の頭に嫌な予感がよぎる・・・
「まさかな・・・いや・・・あいつならやりかねんぞ・・・」
「1人で飛騨の元へ行き、返り討ちにあっていると?」
「ああ、そうだ・・・帰ってきたらトラップだらけということだ」
龍正の読みは的中していた・・・
しかしそれは予想以上だった・・・
龍正は担いでいた樹莉を、自分の部屋のベッドに寝かせた。
薬が効いていて良く眠っているようだ。
「麻衣が飲まされてたらと思うとゾッとするぜ・・・まあ効き目は短いみたいだな・・・」
21:00・・・龍正の部屋
「約一時間か・・・後催眠のトリガーを解除してから50分ってところか・・・本来の人格とまではいかんだろうが、とりあえず正気には戻せた」
(それよりも心配なのは優嘉だ・・・無事ならいいが)
樹莉はベッドの上で安らかに眠っている。
「お疲れ様です」
麻衣がコーヒーを入れて部屋に入ってきた。
「お前は大丈夫か?カフェでずっと能力使ってたけど」
「あのぐらいならなんとも。龍正さんの方は?」
「・・・正直きついぜ・・・」
-ガチャッ-
玄関の開く音がする。
「ん、帰ってきたか」
「私見てきます」
「・・・まて、絶対に何も話しかけるな。そして何か素振りがあったら逃げろ。後催眠暗示に気をつけるんだ」
「わ、わかりました・・・」
麻衣は部屋を出て玄関に向かった。
21:07・・・自宅の玄関
「ただいま~遅くなっちゃった」
優嘉が何食わぬ顔で戻ってくる。
「ゆ・・・。どこいってたんですか?心配したんですよ?」
麻衣はキーワードになりそうな言葉を慎重に避ける。
「いや~。りゅ~せ~になにか買ってあげようと思ってさ、買い物してたら時間かかっちゃって。結局なにも買えずに帰ってきたんだ。で、りゅ~せ~は?」
「はあ?そんな話・・・」
(確かに・・・帽子にサングラスで買い物に行くとは思えない・・・それにあの乱れた髪・・・この女の独特の匂い・・・きっと飛騨の診療所に乗り込んで・・・落とされたんだ!!)
「・・・・私はこれで・・・」
麻衣は優嘉からそそくさとはなれる。
(どうすればいいんだろう・・・何かを話しかけてもし暗示が発動したら?・・・龍正さんと目が合って発動してしまったら?)
そして優嘉から目を離さず、様子を見ながらじりじりと後ろに下がる。
「ちぇっ・・・なんでそんなにしらじらしいのさ・・・」
優嘉は麻衣の様子を疑問に感じ、不満を漏らす。
-プルルルルル、プルルルルル-
携帯の音が鳴り響く・・・
-ドクンンッッ!!-
(え?何?)
電話の音を聞いたとたん、優嘉の心にいつもなら思わない感情が湧き上がる。
(何?アタシ・・・龍正にイライラしてる・・・どうして?)
優嘉は無意識にポケットに手を入れる。
(な、何これ・・・果物ナイフ?・・・どうしてこんなものが・・・ちょ、ちょっと・・・な、何をしようとしているの・・・あたしは・・・)
麻衣は優嘉の殺気に気付いた。
「!?優嘉さん?・・・」
(しまった。今の電話がキーだったのね!)
優嘉はスッと麻衣の側に近寄った。
-ドスッ-
「あっ・・・ゆ、優嘉さん・・・そんな・・・」
「じゃまをするな・・・どろぼうねこ・・・」
麻衣の腹に果物ナイフが突き刺さる・・・
麻衣はふらふらと優嘉から遠ざかる。
「どろぼうねこ・・・ゆるさない・・・りゅ~せ~もまいもころしてやる・・・ゆうすけさまのために・・・」
優嘉は再び近寄って、抉り取るようにナイフを抜いた。
「うぐうっっ!!ああっっ!!・・・・ゆ、優嘉・・・さん・・・」
麻衣の腹から大量に出血する。膝から崩れ落ち、仰向けに倒れた。
『り、龍正さん!逃げてっ!』
麻衣がテレパシーを龍正に送る。
「ゆうすけさまのじゃまをするものはころす・・・」
優嘉は倒れた麻衣に跨り、もう一度振りかざす。
「優嘉!待てぇっ!!」
振り上げた腕がピタリと止まる。
振り返って龍正を見る優嘉の目には、涙があふれていた・・・
が、怒りに満ちていた。
「りゅう・・・せい・・・さ・・・ん・・・」
麻衣が声を絞り出す。龍正の目線が麻衣に向いた。
(すまない。麻衣。今はお前を助けられない・・・)
龍正は目線を優嘉に戻す。
「りゅ~せ~はうわきもの・・・ころさなければならない・・・ゆうすけさまのために」
優嘉が龍正に飛び掛った。
(く、止まらない!完全に深くかかっている!)
-ザクッ-
ナイフが龍正の左腕にかすり、血が辺りに飛ぶ。
「あ、あ、あ・・・あああっ!!」
優嘉は血を浴びて、訳が分からずに悲鳴を上げた。
(何で私!!・・・りゅ~せ~が憎い!・・・どうして!?嫌っ!止まらない!!)
(かすっただけなのは・・・優嘉さんが龍正さんを・・・想ってるからなのね・・・暗示に・・・抵抗してるから・・・なのね・・・)
麻衣は仰向けに倒れたまま龍正と優嘉の様子を見ていた。
すでに意識は無くなりかけていた。
優嘉は動転するが、それでも止まらなかった。
『りゅ、龍正さん!』
「・・・」
龍正は無言のまま優嘉を見つめている。
(!龍正さんには逃げる意思が無い!)
-ガシッ-
「?・・・」
麻衣は、優嘉の脚にしがみ付いて攻撃を阻止する。
「り、龍正さんが責任を感じていても・・・死ぬ気でいても・・・わ、私は、龍正さんを失いたくない!」
「!!!」
(まい・・・こいつをころす・・・かならずころす・・・)
-ドガッ-・・・-ドオォン-
優嘉はその脚を思い切り振り上げ、麻衣を扉に蹴り飛ばした。
「うっ!!!」
背中からドアに叩きつけられ、腹から再び出血した。
(ゆ、ゆうか・・・さん・・・)
『ゆうかさん・・・目を・・・覚まし・・・て・・・・・・』
麻衣は意識を失った。
「麻衣を死なせるわけにはいかない・・・やるのなら俺をやれ・・・こんな結果になって残念だ・・・だが俺は一度も自分の命を優先した事は無いぞ・・・全てを失ったあの日からな」
龍正は親指で自分の胸を指差した後、両手を広げて目を閉じる。
「!!!う・・・ぅ・・・く・・・」
優嘉はそれによって困惑する。
「う・・・くぅ・・・りゅ~せ~をころす・・・りゅ~せ~・・・あいしてる・・・かならずころす・・・にくい・・・おねがい、にげて・・・」
優嘉がしばらく葛藤する・・・・
-カラン-
優嘉は果物ナイフを床に落とした。
「ううっ・・・アタシ・・・ごめんなさい・・・」
優嘉が両手で顔を覆いながらその場に泣き崩れた。
その時だった・・・
-ドンッ-
鈍い音がして龍正がそっちを見る・・・
そこには予想外の光景が・・・
(何?・・・狩野!)
樹莉が優嘉を組み倒し、優嘉の首を絞めていたのだ。
「う・・・あぁっ・・・」
(しまった・・・優嘉の心配をしすぎて暗示が完全に取りきれてなかったとは!)
無表情の樹莉が喋る・・・
「ご主人様を裏切るなんて許せない・・・貴方は邪魔者・・・私が殺してあげるわ・・・」
樹莉の顔がどんどん殺意に満ちていく。
「ぅ・・・りゅ・・・せぇ・・・助け・・・苦し・・・」
(く・・・このままでは優嘉が死んでしまう!!この状況を打破するには・・・この手しかない!!)
CASE1:樹莉を蹴り飛ばし、優嘉から引き離す。
CASE2:樹莉の心をライブラリーで破壊する
CASE1:
「その手をはなせぇっ!!」
龍正は樹莉の身体を蹴り飛ばす。
その衝撃で優嘉が樹莉から逃れる。
「大丈夫か!優嘉!」
龍正が咳き込む優嘉を抱き起こす。
「う、りゅうせい・・・ありがとう・・・」
-ドスッ-
「優・・・嘉?・・・」
龍正の胸にさっき落としたはずのカッターが突き刺さっていた。
「じゅりさんをきずつけるものはころす・・・だれであっても・・・」
「ゆ・・・・・・う・・か・・・・」
龍正は優嘉の肩に手を置く。
「ぜったいころす・・・」
優嘉はその手を気にするでもなく、ザクザクとナイフを何回も突き刺す。
龍正は優嘉にもたれるようにして倒れた。
そしてそのまま一生を終えた。
そのとき・・・樹莉の腕が麻衣の首を締め上げていた。
「うぐ・・・龍・・・正・・・さ・・・ん・・・」
麻衣は龍正と自分の最後を悟った。
『くろだ・・・ゆう・・・か・・・ぜったい・・・ゆるさない・・・』
麻衣は優嘉に恨みの言葉をテレパシーで送る。
そして、命の炎が消えた・・・
龍正と麻衣はそこで命を落とした・・・
それからしばらくして・・・
自分が龍正を殺し、麻衣も死んでしまったと知った優嘉は・・・
「あ、アタシは・・・なんてことを・・・くぅ・・・し、死んでやる!2人と同じ場所に行ってやる!飛騨なんかに!!」
優嘉はあらゆる方法で自殺しようとした・・・
だが・・・暗示で禁止されていた・・・
優嘉は屋上の端に立って涙をぽろぽろと流した。
『くろだ・・・ゆう・・・か・・・ぜったい・・・ゆるさない・・・』
麻衣の最後の言葉がいつまでも頭の中にこだまする。
「ど、どうして死ねないのよ!!・・・アタシは・・・どうすればいいの?・・・た、助けて・・・ゆうすけさま・・・」
優嘉は部屋を飛び出した・・・
数年後・・・
「「ご主人様~抱いてください~」」
飛騨雄介の前に2人の美女がひざまついている。
樹莉と優嘉だ。
優嘉の方は何故かやや綺麗さが劣ってしまったが、技術は持っていた。
「ククククク・・・この俺に勝負を挑むには100年早かったようだな!結城龍正!」
優嘉が首をかしげる。
「ゆうきりゅうせい?誰ですか?その方は。ご主人様のお友達ですか?」
優嘉は龍正と麻衣をこの手で殺した記憶を封印していた。
もはや龍正という人物と会っても記憶は戻らないだろう。
「ふ・・・いや、もう奴はこの世には居ないんだ。奴は俺の一番の親友さ。遺品まで俺に遺していったからな」
「へぇ。アタシも会ってみたかったです」
「会ってみたかった・・・か。ハハハハハハハ!!」
飛騨は笑い続けた・・・
それを見て樹莉と優嘉も笑顔を見せた。
雄介はこの戦いに勝利し、新たな奴隷を手に入れたのだ。
超バッドエンド・・・
CASE2:
(く!仕方ない!「ライブラリー」発動!)
この間も樹莉は優嘉の首を締める。
「ぁ・・・ぁ・・・・・」
優嘉が白目をむいている。もう限界のようだ。
だが、樹莉に異変が起こった。
「ぐっ!?な、何をした!!?う・・・うがああっ!!!」
樹莉は叫び狂って廃人と化した。
「うわあぁぁぁん!りゅ~せ~!私のせいで樹莉さんが壊れちゃったよお!」
龍正は優嘉を抱き寄せた。
(く・・・ターゲットを廃人にすることになるとは・・・完全に任務失敗だ・・・)
龍正は唇を噛み締めた。
23:00・・・優嘉の部屋
優嘉はベッドに横になってしばらく泣いていた。
「どうだ?気分は」
「あ、りゅ~せ~・・・麻衣ちゃんは?・・・」
「とりあえず出血は止めた。血の量を少し増やして、傷の修復を速めたんだが・・・何しろ傷が深すぎる・・・当分は目が覚めないだろう」
「そう・・・アタシのせいで・・・りゅ~せ~は?その腕・・・治せないの?」
優嘉は悲しそうに龍正の包帯が巻かれた腕を見る。
「かすり傷だ。必要ないさ。それにこれを見ればお前が危ない真似する事も無いだろう?」
「もう。りゅ~せ~ったら・・・ごめんね・・・」
「心配ない。もう暗示は全て取り除いた」
「そうじゃなくて・・・りゅ~せ~への気持ちがあんな奴に負けちゃった事・・・」
「その記憶も消そうか?」
「ん~・・・いい。これがあれば次は二度と負けない!って思えるじゃん・・・それより辛そうだよ?痛むの?」
「バカ。これは俺の能力の使いすぎのせいだ」
「・・・私大丈夫だから・・・行ってあげて?側に・・居てあげてよ」
「・・・・お前がそんなこと言うなんてな。わかった。ゆっくり休め」
-バタン-
(りゅ~せ~。私はもう飛騨には負けないから・・・たとえどんな手を使っても・・・)
23:30・・・麻衣の部屋
-ガチャッ-
「まだ目を覚まさない・・・か」
龍正は麻衣の側に腰を下ろした。
「本来なら・・・医者に連れて行くべきなんだろうがな・・・」
龍正は床に倒れこみ、そのまま眠り込んだ。
・・・・・
こ・・・ここはどこだ?・・・
俺は何をしているんだ?・・・
「りゅ~せ~・・・」
目の前にいる女の子は誰だ?・・・
どこかで見たことがある・・・その笑顔・・・覚えてるはずなのに・・・
とっても大切だと思ったはずなのに・・・
「りゅ~せ~・・・今までありがとう・・・もうアタシは大丈夫だから・・・先にいくね」
先にいく?どういうことだ?
何だかその笑顔がいやに美しく見える・・・
「最後に1発ぐらいやりたかったな・・・」
最後?・・・見覚えのあるはずのその少女が俺に近づいてくる・・・
「またいつか会おうね・・・ずっと待ってるよ・・・『約束』」
その少女は俺にキスをした。熱い熱いキスだった。
「じゃあその日まで元気でね・・・」
・・・・・・
翌朝・・・9:00・・・
精神的に疲労した龍正はなんとか起きてきた。
しかし麻衣はまだ起きる気配は無い。優嘉の姿も見えない。樹莉も廃人のままだ。
龍正は簡単な料理を作る。
そして食事を麻衣の部屋に持って行き、少しずつ口に運ばせた。
龍正は樹莉に調整を施したが、1から人格を作るのには無理があった。
そして数時間かけてようやく奴隷のような樹莉ができあがった。
「りゅうせいさま。わたしはりゅうせいさまのためにいきるどれいです」
「・・・俺の腕ではロボットみたいなものが限界か・・・」
意思をまったく表さない。
「これで任務は完了・・・なのかな?・・・絶対違うな・・・」
少し時間は遡る・・・
優嘉は診療所の前に居た。飛騨を殺すつもりだ。しかし無謀すぎる。
優嘉は決意を込めた目で、天国へ通じるその扉を開いた。
-ギィィッ-
雄介が奥から現れる。
「おや優嘉じゃないか・・・命令どおり殺したか?」
優嘉はぼんやりとした顔で雄介を見る。
だがそれは催眠状態によるものではなかった。
「先生・・・」
優嘉が雄介に抱きついた。
「っ!!?き、貴様・・・」
「先生・・・死んで?」
飛騨の腹にナイフが突き刺さる。
そのナイフには龍正と麻衣の血液反応が出るはずだ。
優嘉の顔が怒りに満ちる。
「ま、待て!眠れ!『命令』だ」
「あんたは遊びすぎたのよ・・・絶対に許せない・・・」
-ザクッ-
優嘉は必死で逃げ回る雄介の身体を何度も何度も切り刻む。
致命傷にならないように苦しめて苦しめて。
床に血が滴り落ちる。
「・・・き・・・きさま・・・こんなことをしたら・・・おまえじしんも・・・」
飛騨はぜえぜえ言いながら壁に背を預けて崩れ落ちた。
「・・・もう死にそうね・・・最後は楽に逝かせてあげるわ・・・」
優嘉は思いっきりナイフを振りかざした・・・
そして首を・・・
優嘉は飛騨診療所に火を放っていた。
「証拠を残せばりゅ~せ~に迷惑がかかる・・・さようなら・・・飛騨・・・そして・・・りゅ~せ~・・・」
優嘉も炎の中に姿を消した・・・
数日後の朝・・・
ニュースで流れる・・・飛騨診療所で2つの焼死体が発見されたと・・・
両者とも身元は不明だが、片方は女性で片方は男性ではないかと・・・
男女関係のもつれが原因か・・・心中か・・・などと。
結果として龍正は任務を失敗し、優嘉を失ってしまったのだ・・・
さすがの龍正もショックだった。2度と失わないと決めた大切な者の命。
「敬吾・・・優嘉・・・はっ・・・次はお前かもな?麻衣」
龍正が自虐的な笑みを浮かべる。
麻衣は龍正に後ろからそっと抱きついた。
「また1からですね・・・もとはといえばここから始まったんですよ?・・・それに私は死にません。龍正さんが私を守るんですよね?」
麻衣の言葉に龍正は一言呟いた。
「俺はもうやらない・・・」
「りゅ、龍正さん・・・」
「優嘉が最後に夢に出て別れを告げた・・・だが、麻衣のことは何も言ってなかった・・・お前はもう俺の側から離れろ・・・優嘉もそれを望んでいるはずだ・・・」
麻衣が龍正の正面にまわり、真っ直ぐに龍正を見詰める。
龍正は目を逸らそうとする。
両手で頬を挟んで強引に顔を正面に向ける。
「龍正さん!!わ、私・・・私と・・・結婚してください!!」
「!!?・・・何だと?」
「これで証明になりませんか?私は死なない。龍正さんも死なせない」
麻衣の目は真剣だった。
「麻衣・・・俺は・・・俺は・・・」
龍正の脳裏に優嘉の顔が浮かんだ。
だが、龍正は決心した・・・
「俺は・・・お前と結婚したい・・・2人で幸せに暮らそう・・・」
「は、はい・・・」
龍正は麻衣を抱き寄せた。
龍正と麻衣の頬を涙が流れた・・・
麻衣は龍正と結婚した・・・
ロボット状態の樹莉は、最低限の修正をした後に売り飛ばした。
はたして龍正の人生はこれでよかったのだろうか?・・・
答えは誰にも分からない・・・
だが、龍正が優嘉の死体を引き取りに行く事は無かった・・・
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