名もなき詩-シーソーゲーム- 第2話

2.

 そして私達は居酒屋にやってきた。
 いつものようにお酒からトークが始まる。
 そしていつものように樹莉は盛り上げ役をする。
 樹莉にとって私達は気を許せる友達ではないのだろうか。
 それとも・・・

「・・・はぁ・・・」
 樹莉がこっそりとため息をついた。

「樹莉~。あんた最近元気ないわよ」
 美咲が仕掛け人だ。上手く乗せてよね。
 私はトークでどうこうってのは苦手だから。

「え?そ、そう見える?そんなことないけど」

 む。樹莉が認めない・・・
 こんなときは朱里、あなたが一押しするのよ。
「そうだぞ。お前が作り笑いしてるのは分かってるんだからな。何かあるんなら言ってみろよ。ん?私たちには言えないか?」
「い、いや、ホントになんでもないのよ。心配かけてごめんね」
 樹莉が笑う。
 ほら、それが作り笑いだって言ってるのよ。

 そんな時、美咲が私に話しかけてきた。
「そうだ。琉璃、アレやってあげたら?」
 よし、いいタイミングよ。美咲。
「ん?おお、アレか?そりゃあいいな。やってもらえよ」
 これもいいタイミングよ朱里。みんな樹莉を心配してるんだから。

「・・・私は別にいいけど。樹莉が元気になるなら」
 私はあたかも仕方なくというように言う。

 とりあえず樹莉が聞いてきた。
「あ、アレって何?」
 まだ興味があるとはいえないわね。

 美咲が説明してくれる。
「琉璃はね。催眠療法ってのが出来るのよ」
 私から言ったら嫌らしいからね。

 再び樹莉が食いついてきた。
「催眠療法・・・あの医学の?」
 そう。催眠療法は医学。でも私は催眠術。
「・・・まあ。大学の頃やってたし」
「・・・・へぇ」
 あれ?あんまり食いつきが良くないな。

 どうしよう・・・そんな時は朱里の出番。
「私も美咲も琉璃のおかげでストレスなく仕事してるんだぜ」
 そうそう。樹莉に有効な言葉はストレス。
「そうなんだ・・・どうしようかな・・・」
 効いてる効いてる。

 ここで私の演技の見せ所だ。
「・・・ま、私はどっちでもいいんだけどね。嫌々やっても無理だし」
「あ、別に嫌なんて言ってないわよ。じゃあ・・・お願いできる?」
 よしよし。さっそく樹莉に催眠を・・・

 ん?私、いつのまにか樹莉に催眠をかけたがってる・・・
 危ない危ない・・・樹莉は親友なんだから。
 樹莉のためにかけるのよ。樹莉のため。

 何か私が話から置いてかれてる・・・
 催眠療法?
 琉璃が樹莉にかける?
 そして美咲と朱里はごひいきにしてるって?
 ふうん。私もしてもらおうかな。
 でも樹莉が元気がないのは事実。
 最近いろいろあったからね。

 でも・・・隣で見ている私はわかる。
 最近やけに疲れすぎてる。
 何があったんだろ。

「・・・じゃあ脚を崩して座りなおして」
 あ、始まったみたい。
 琉璃が樹莉の身体を支えている。
 そして左右に少しずつ揺らしてる。
「こうやっていると気持ちがいいよね?だんだん力が抜けていきます・・・」

 ・・・ええっ!?もう倒れちゃったよ!?
 こんなにあっさりしているものなの?
 い、いや・・・やってる琉璃もびっくりしてる。

「・・・うそ。いくらなんでも早すぎる・・・何でこんなにかかりがいいの?」
 琉璃がぼそっと声に出した。
 あのおとなしい琉璃が大きな声で独り言。
 そして樹莉の耳元でぼそぼそと何かを呟いている。

 あ~あ~。口も開けちゃって。
 いつも明るいあの顔が、すごく無防備な顔をしてる。
 -とくん・・・-
 え?・・・何・・・この感じ・・・

 しばらくして琉璃が樹莉の身体を支えて起こした。
「樹莉・・・私の言う質問はあなた自身の心の声・・・いいわね?」
「・・・はい・・・」

「・・・私は以前にもこんな状態になったことがあるかしら?」
 琉璃が樹莉の口調を真似してる。
 そうか。琉璃の声が自分の声だと思ってるんだ。

「・・・・・・」
 樹莉の顔が苦しそうな顔になる。

「・・・どうして苦しんでるの?私自身なのに。誰に聞かれてるでもないし、安心して喋れるわね」
「・・・・・・あ・・・り・・・・・・ま・・・す・・・」
 詰まりながらようやく答えた。
 ねえねえ。私たちにはよく状況が飲み込めないんだけど。
 どういうことなの?

 琉璃は私達に構わず続ける・・・真剣そのものだ。
「・・・それは何回かあったかしら」
「・・・・・・た・・・く・・・・・・さ・・・ん・・・」
「・・・そう。沢山されたわね」

 え~っと?
 実は既に他の人の催眠療法とやらを受けてたってこと?
 それでかかりやすかったってこと?

「・・・じゃあその時のことを思い返してみましょう。だって覚えてるからこそまたかかることが出来るのよ。忘れてるなんてことはありえないわ。思い出せなかっただけ。忘れてると思ってただけ・・・・・・今の状態の私なら簡単に思い出せるから」
 そう言って琉璃は樹莉を机に伏せさせた。
 そして私たちに近寄ってきて・・・

「いい?今からその状況を再現するから。気づかれないようにしてね」
 とりあえず私が返事する。
「う、うん・・・わかった」
 美咲が不安そうに尋ねる。
「それが疲れの原因なのね?」
「・・・それはわからないけど。その可能性はあるわ」

 私は樹莉の上体を起こした。
「十分思い出せたわね。じゃあ一度目を覚ましましょうか。だけど目を覚ましたら私は夢の中にいるのよ・・・・・・そして最後に催眠をかけられたときの状況が蘇るわ。夢の中だから動けるわね」

 樹莉の表情は・・・明らかに嫌な顔。
 きっとストッパーがかかってるのかも。
 でもまあ、かけた奴より私の腕のほうが上のようね。

「確認しながらやりましょう。この後どうするか聞くから、答えてね」
 樹莉が頷いたのを確認して、私は樹莉の肩を強めに叩いた・・・

 琉璃の催眠を間近で見られるとはな。
 私や美咲もあんなにだらしない顔をしていたんだろうか。
 いつも笑ってる樹莉からは想像できないな。

 樹莉が目を開けてぼ~っとしている。
 そしてその目が琉璃に向けられた。
「・・・あ、先生・・・」
 その視線には熱っぽいものも含まれている気がする。

「質問。私は男?女?」
「・・・おとこです・・・」
「質問。これから俺は何をするんだ?」
「・・・わたしと、せっくすします・・・」
「質問。何故セックスするんだ?」
「・・・ごしゅじんさまのどれいだからです」
「質問。俺とはいつ出会った?」
「・・・すうしゅうかんまえ・・・いつものばーで」
「質問。そのとき俺は何を言った?」
「・・・しんりょうじょにきたくなる・・・」
「質問。その診療所とは?」
「・・・ひだ・・・しんりょうじょ・・・」
「っ!?・・・なるほど。もういいぞ」

 琉璃も結構男キャラが似合ってるかも。
 それにしても樹莉が男に飼われてたとはねえ・・・
 催眠って怖いな。
 まさか琉璃は私に何かしてないよな?
 う、もうかけてもらいたくないかも・・・

 樹莉がふらふらと熱のこもった目で琉璃に近づく。
「・・・先生。今日もお願いします」
「わかった。さあ、いつものようにおいで」
「・・・はい。ご主人様ぁ・・・」

 う、樹莉の顔が一気に女になった。
 いや、もともと女だけどさ。
 いつもの明るいイメージがない。
 妖艶な・・・悪く言えば淫乱・・・
 ここまで変わるものなのか・・・

 樹莉が琉璃の目の前に擦り寄ってきて・・・
 そして琉璃を見上げて・・・
 手を伸ばして・・・

「ス、ストップ!!眠りなさい!!」
 琉璃がそう言って掌で視線をさえぎると、樹莉が倒れた。
 琉璃の奴、かなり慌ててる。

 あ、危ない危ない・・・
 あの顔で迫られたら私でもドキッとしちゃった・・・
 それより・・・
 まさか樹莉が飼われてる相手があの飛騨だったなんて・・・
 あいつ、催眠の腕は私より下だったのに・・・
 やるじゃん。

 まずいわね・・・皆が唖然としてみている・・・
 どうしよう・・・
 樹莉を気持ちよくするだけだったのに・・・
 とんでもない収穫をしちゃった。
 あの樹莉が奴隷・・・

「どうする?解いちゃう?」
 私の質問に皆が黙る。
 何故?

「・・・別にいいんじゃない?そのままで」
 柚恵が自分で言った言葉に驚いている。
 そうだった。柚恵は樹莉に嫉妬してたっけ。
 あらあら、柚恵は自分自身の気持ちが分からなくなってるみたい。
 どうしよう~。樹莉は友達なのに~。何でこんなふうに思ってるの?って顔。

 沈黙を破るのは朱里。
「ま、美人薄命って言うからな。放っておいていいんじゃないか?別に私たちがそいつの手助けするわけじゃないんだ。見てるだけだ」
 美咲もそれに続く。
「そうよね・・・それよりも樹莉の気分を良くするのが先決よ」
 ふうん。朱里と美咲も賛成か・・・
 美人は僻まれるから可愛そうよね。
 ・・・性格は凄くいい子なのに・・・

 やばい・・・あの試合の感情が・・・
 私・・・また嫉妬してる・・・ズルイ奴だ。
 樹莉が怒らないことをいいことに・・・
 ダメ・・・私には出来ない・・・
 これ以上は・・・
 だから・・・ストレスを取り除くだけだってば・・・

 数日後、私たちの選択は失敗だったと思い知らされた。
 私は結局とんでもない手助けをしてしまった・・・
 ストレスがなくなったことも、飛騨のおかげだと思い込んでいるようだ。
 余計に飛騨に依存するようになってしまった・・・
 ついには仕事中までぼんやりするように・・・

 い、いけない・・・
 このままではまた樹莉を陥れてしまう・・・
 私は皆と相談し、また催眠をかけることにした。

 私はまたどこか気持ちいいところを漂っていた。
 全ての感覚が無い・・・とても気持ちいい場所・・・
 ずっとここに居たい・・・

「樹莉。起きて」
 どこかから声が聴こえた。
 起きなきゃ・・・
 まだここに居たいけど。起きなきゃいけない。

「ん・・・」
 ようやく目が開いた。
 頭がぼうっとする。まだ気持ちいい場所にいるみたい。
 ぼんやりとした視界に、誰かが映っている。

「樹莉・・・私はあなたの何?」
「・・・ごしゅじんさまです・・・」
 そう。彼は私のご主人様。飛騨雄介。
 彼は私を気持ちよくしてくれる。

「そう。ご主人様ね。私の名前は?」
「ひだ・・・ゆうすけ・・・」
「違うわ。もっとよく見て・・・次第に本当の姿が見えるから」
 え?飛騨雄介じゃないの?私のご主人様。
 よく見て?そんな。ご主人様を見間違えるなんて・・・
 ご主人様。あなたは誰?
 ・・・え?女性?
 見たことがある・・・あなたは・・・

「る・・り・・・にしおか・・・るり・・・」
「そうよ。私があなたのご主人様。どう?飛騨とどっちが気持ちいい?」
 どっちが?雄介様と・・・琉璃・・・
 琉璃のほうが気持ちいい・・・
「るり・・・」

「そうね。だから私のことは琉璃様と呼びなさい」
「るりさま・・・」
 私のご主人様は・・・琉璃様?
 え?じゃあ雄介様は?

「飛騨との関係は今のままよ。だからあなたには2人のご主人様がいる・・・良いわね?」
「・・・はい・・・」
 ごしゅじんさまがふたり・・・ゆうすけさまと・・・るりさま・・・

「私のほうが気持ち良いでしょ?」
「・・・きもちいい・・・」
「だから飛騨よりも私の言葉のほうが大切だからね」
「・・・はい・・・」
 ゆうすけさまより・・・るりさまのことばが・・・たいせつ・・・

「本当のご主人様は私だからね」
「・・・はい・・・」
 るりさまがわたしにきすをする・・・
 わたしはただきすされる・・・

「これであなたは私の心と繋がった・・・いつでもこの状態に戻ってこれる」
「・・・はい・・・」
「『ジュリア嬢の真実は私の中に』・・・私にこう言われたらいつでもこの気持ちいい場所に戻ってくるのよ」
「・・・はい・・・」
 いつでも・・・このきもちいいばしょに・・・

 ついに・・・私が樹莉を支配してしまった・・・
 そんなつもりはなかったのに・・・
 樹莉が私をご主人様と認めている・・・
 きっと私が言えば飛騨だって殺す。
 そんなに私を信頼してるの?

 ・・・ごめん・・・やっぱりあんたには嫉妬してる・・・
 だから・・・たまには遊ばせてもらっても・・・良いよね?
 大丈夫・・・私達はずっと親友・・・

「樹莉・・・飛騨とどんなことをしてるか実践してみて」
 琉璃がそう言って私の前に樹莉を連れてきた。
 ぼんやりとした目が私を捉える。

「お、おい・・・どういうことだよ」
 私は状況が飲み込めず、琉璃に聞いた。
「朱里が一番飛騨に似てるのよ」
 琉璃がまるで当然だというように言い切った。
 おいおい、それは私が男っぽい性格だって言いたいのかよ。

「あ・・・雄介様・・・」
 樹莉がしだれてきた。
「お願いです・・・ご主人様の大きなち○ぽで・・・淫乱な雌奴隷のおま○こを気持ちよくして下さい・・・」
 おいおいおい!こんなこと言わせてるのかよ!
 最低だな!飛騨って男は!
 女の敵だ。女の。

 樹莉が胸を押し付けてきた。
 心臓が凄くドキドキしてる・・・
 いや、樹莉のじゃなくって。この私が。
「き、今日はどうして欲しい・・・」
 私はすっかり状況の力と言うものに支配されていった・・・
「い、虐めてください・・・」

 い、虐める?樹莉を?
 SMプレイみたいなものか?
 だけどここは居酒屋・・・
 そんな道具はないし、そんなことをすれば騒ぎにならないか?

 やばい・・・そんな顔を見せないでくれ・・・
 整った綺麗な顔・・・潤んだ瞳・・・
 わ、私は女だぞ・・・女同士なんて趣味はないって・・・

「・・・わ、私の家・・・行く?」
 柚恵が喋りかけてきた。
「・・・いえ、ホテルにしましょう。皆で出し合えば安いもんよ」
 美咲がホテルを提案する。
 確かにそのほうが良いかもしれない。

「じゃあせめて樹莉に払わせようよ」
 柚恵が提案する。即座に反論したのは美咲だ。
「・・・だめよ。私たちが樹莉を裏切ってるってだけで十分でしょ。これからやることを考えたらそのぐらいいいでしょ?」
 そうだそうだ。樹莉は何も悪くない。
「それにお金が減ってたら怪しむだろ」

「・・・そうね。少し調子に乗っちゃったかも・・・せめて私たちが払わないとね」
 柚恵が乗ってきてくれた。良かった。
 そこまでやっちゃうと歯止めがきかないからね。
 せめて金ぐらいは払ってる気分で居ないと。

 さて・・・樹莉に伝えないとな。
「樹莉。ホテルに行こうか?」
「・・・は、はい・・・」
 そんなわけで私は飛騨になりきったままホテルに行くことになった。
 ま、ホテルならアイテムもあるしな!
 おっと・・・ちょっと乗り気になってるかも。

 私と樹莉がホテルの部屋を選ぶ。
 う・・・やっぱり女同士は恥ずかしいな・・・
 しかも樹莉は私にべた惚れ中・・・

「雄介さま・・・」
 樹莉が怪しく笑った・・・
 他人を和ませる明るい笑顔ではなく・・・とても厭らしい・・・
-ドクン・・・-

 ええいっ!こうなりゃヤケじゃあっ!!
 どうどうとレズビアンの振りをしてやるわい!!

 後ろを見たら柚恵と琉璃と美咲が距離を開けて歩いている。
 お前ら・・・さては恥ずかしいんだな?
 私にはさせるくせに・・・自分は恥ずかしいんだな!?
 ったく・・・後で2発ずつぶん殴ってやる。

 ふむ。結構いい部屋を選んじまった。
 どうすっかな。SMだろ?
 とりあえず鞭だな。

 美咲が止めに入る。
「ま、待って!鞭は痕が残る!飛騨にばれちゃうわよ!」
 む。それもそうか。
 じゃあとりあえず目隠しするか。

「あ、いや・・・怖いです・・・」
 樹莉が視覚を失うことに怯える。
「俺に逆らうな!!」
 樹莉の頬に平手打ちする。
 手に心地よい感触が残る。

「す、すみません・・・」
「お前にはお仕置きが必要だな・・・」
 私は目隠しした後に耳栓をした。

「・・・」
 樹莉はかなり怯えているようだ。
 これで樹莉の触覚がかなり増すはず。

 指で喉元を撫でてみる。
「ん・・・」
 樹莉がぴくっと反応した。
 これなら堕ちるのも早いかもしれない。

 感度を高める暗示を入れる前からこれだ。
 きっと今暗示を入れたら・・・
 どうなるだろうか。気をやってしまわないだろうか。
 まあいいや。今日はこのままやろうか。

 ・・・今日は?
 やばい。かなりはまってる。

「ちっ。もじもじと動くなっ!」
 胸を強引につかむ。
「うっ・・・」
 今の声は恐らく痛みだろう。

「ええいっ!!服ぐらいとっとと脱いでおけよ!!」
 私は手際よく樹莉の上着を脱がせる。
 そしてブラを取る。

 ・・・す、すげえ。何だよこの身体は・・・
 形のよい大きなおっぱい。横になっても自然に流れるだけであまりたるまない。
 大胸筋がしっかりしてる証拠だ。
 そのくせウエストはしっかりしていて、余分な肉が少ない。
 そう言えばバレーでプロの誘いまで受けたことがあるって言ってたな。

 言ってたのは琉璃だ。樹莉は自分では自慢するような話はしないからな。
 ・・・その跳躍力を証明するようなすらっとした脚・・・
 強力なスパイクが放たれたであろう腕・・・
 モデルでもやりゃあいいんだよ。
 グラビアでも脚モデルでも腕モデルでも。
 何だって出来ちゃう魔法の身体・・・よし、そう命名する。

 私が固まっていたので、樹莉が怪しんで声をかけてきた。
「・・・ご主人様・・・」
 ご主人様・・・
 その言葉に得体の知れない欲望がわきあがってくる・・・

「煩いっ!エロい身体つきしやがって!!」
-バチィィン!!-
 そのお尻を思いっきり叩く。
 大きな音が響き渡る。
「ああっ!ごめんなさい!!」

 樹莉の唇が艶かしく湿っている・・・
 こんな樹莉の一面が見られるなんてな。

 私は樹莉の首元から鎖骨にかけてをじらすように撫でる。
 樹莉が不安から声を出す。
 こんなの、まだまだ始まったうちにも入らないぞ。

「おい。声は出すな。出したらぶん殴るぞ」
 私は声を出さないように脅しをかけた。
 正直言って無理な話だ。
 突然来る刺激に耐えるなんてな。

 まあ上から順にやっていけば予想は出来るだろ。
 私の指が胸に下りる。

 さすがに少しは声を出して欲しいな。
 じゃあ・・・これならどうだ?
「ぅん・・・」
 私が舌を這わせると、突然変わった触覚に声を上げた。

「声を出したな?バカ奴隷がっ!!」
 今度は指で乳首をつまむ。
 それにしても綺麗な乳輪。
 おっぱいは大きいのに乳輪はそれほどでもない。
 興奮してこの大きさなら通常時はもっと小さいのだろう。
 同じ女として嫉妬する・・・

「い、痛いっ!!」
 はっ!つ、つい爪でつまんでしまった。
 そ、そうだよ。
 樹莉は私たちに弄ばれていることを知らない。
 だったらそれでこっそりと遊べば十分じゃないか。

 嫉妬することなんてない。
 だって裏ではこんなことをしているんだからな!
 お前ら知ってるか?憧れの樹莉は淫乱女で雌奴隷なんだぞ?

 私は樹莉のレースの入ったパンツを見る。
「何だよ。もうこんなにしてるのか」
 ふ。ぐちょぐちょだ。

 私のおかげで興奮している・・・
 私の指で感じている・・・
 心配するな。傷つけることはしない。
 気持ちよくしてやるさ。

 樹莉の息が荒い。
 息を吐くたびに艶かしい声が漏れる。
 ちくしょう・・・私もドキドキしてきた・・・
 いや、最初からドキドキはしてたけど。
 完全にエッチなスイッチが入った。

「おらっ!これが気持ち良いんだろ!!」
 私はおっぱいに舌を這わせる。
 歯で乳首を掠め、微妙な刺激を与える。
「んあっ!・・・あっ!・・・はうっ!!」
 本格的に愛撫し始めたら樹莉の声が格段に大きくなった。

「我慢しろって言っただろうが!!」
-かりっ-
「うああぁっ!!」
 乳首を噛むと、樹莉が大きく身体を反らした。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
 これは私の吐息。
 ダメだ。もう私もしたくてしたくてたまらない・・・
 だ、誰か・・・変わってくれ・・・
 すぐにでも自慰がしたい・・・

「ん・・・んん・・・ふっ・・・」
 くそっ!柚恵の奴・・・自分だけ自慰しやがって!
 後で・・・膝蹴り入れてやる・・・

 琉璃が声をかけてきた。
「・・・私、変わろうか?」
 な、何だよ。なんでお前もそんな色っぽい顔してるんだよ・・・
 だ、ダメだ・・・みんなやられてる・・・
 この異常な空気にやられてる。

「た、頼む・・・」
「ええ・・・」
 すれ違いざまに見た琉璃の顔が酷く頭に焼きついた。
 私の先には・・・熱のこもった目で樹莉を見ている美咲がいた。

「あ、かり・・・」
 名前を呼ばれただけなのにドキッとした。
 吸い寄せられるように美咲に抱きつく。
「私で良いのか?」
 私は・・・何を言ってるんだ?・・・
 断れ・・・断るんだ・・・

「うん・・・我慢できない・・・」
 美咲が許可した・・・
 私の身体が弾かれるように動く。

 私は美咲と熱いディープキスを始めた。
 きっと正気に返ったら私もお前も混乱して大変なことになる・・・
 だから・・・今は夢の時間・・・

 ふう・・・ダメね。
 やっぱり樹莉の身体がエロ過ぎるのかしら。
 それとも普段と違う樹莉がみんなを興奮させたのかしら。
 はたまた樹莉をこうさせた催眠術の力に酔いしれてるのかしら。

 かろうじて動けるのは私・・・
 私はその・・・性欲があまり強くないみたい。
 ・・・といっても凄くドキドキしてるけど。

「樹莉・・・聞こえる?」

「うあ・・・はぁ・・・琉璃さまぁ・・・」
 樹莉が甘ったるい声で私の名を呼ぶ。

「!!ぅ・・・」
 私もスイッチが入ってるのに・・・やめてよ。犯しちゃう・・・
 今の私にはその力があるもの・・・催眠術。
 飛騨のどんな暗示も私の命令の前には無力。
 樹莉の全てを私が・・・いえ、私たちが握っている・・・

「じ、樹莉・・・わ、私の手は、魔法の手・・・触れられたところが・・・飛騨の、何倍も感じる・・・何十倍も感じる・・・」
 私は酷くドキドキしてる。

 今の樹莉にこれをすれば、壊れるかもしれない。
-ドクンッ!ドクンッ!-

 ダメだ・・・私まで状況に飲まれてる・・・
-ドクンッ!!ドクンッ!!-

 私の震える手が樹莉の震える身体に伸びる。
 同じ女なのに・・・これほど違う身体・・・
-ドクンッッ!!!-

「うあああぁぁぁぁああぁぁっ!!!」
 樹莉があまりにも感じちゃった。その大声にさすがに私もびっくりした。
 それでも痙攣が治まった頃には樹莉は惚けた顔になる。

「樹莉っ!!」
「はあぁぁぁああぁあぁぁっっっ!!」
 私が樹莉の身体に触れるたびに樹莉が絶頂に達する。

「かああああぁぁぁあぁあぁぁっっ!!!」
 そろそろ・・・限界かもしれない・・・
「さ、最後よ樹莉!!私が両手であなたの乳首に触れる。そしたら今まで感じたのとは比べ物にならないぐらいの最高の快感が襲うのよ!!」

 私は意を決して樹莉の乳首をこする。

「うあぁぁぁっっ!!?んん~~~~~~っ!!!!」
 最後はあまりの快感に声を発することが出来なかったようだ。
 ただ歯を食いしばって長いオルガスムスを耐え続ける。
 唇から血が出てる・・・
「んっ・・・」
 樹莉を操ったという快感に、私も軽くイッてしまった。

「み、みんな・・・お、起きて・・・」
 私は何とか皆を起こす。
「ほ、ほら・・・明日も仕事があるのよ・・・」
 仕事と聞くと皆が嫌そうに起き上がった。

「はあ。樹莉は私が後始末しておくから・・・この汚れた下着を洗ってくれる?」
 私は下着を美咲に渡した。
「え?か、乾くの?」
「・・・乾いたと思い込ませる。なるべく水気を切ってね」

 翌日・・・
 いやあ。昨日は凄かった。
 樹莉ったらすっごくエロかったんだから。
 あの顔・・・忘れられないよ。

「ん?柚恵?どうしたの?」
 樹莉が私の顔を覗き込んできた。
 いつもの明るくて綺麗な顔だ。
「・・・え?べ、別に!!どうして?」
「何かぼうっとしてたから・・・大丈夫?」
 樹莉の催眠顔のほうがぼうっとしてたって。
 ・・・なんて絶対言えない。
 これは私たちの秘密の遊び・・・

 樹莉がいつものように挨拶をする。
「おはようございます」
「お、おはよう狩野くん!!今日も綺麗だね!!」
「ふふふっ。ありがとうございます!!」
 久しぶりに樹莉が本当の笑顔を見せた。
 よかった。成果があったみたいね。

 今日も樹莉がちやほやされてるけど・・・
 私たちが樹莉をおもちゃにしてるんだよ。
 ふふふっ。それに美人さんにも裏の顔があるしね。
 2人のご主人様かぁ・・・

「柚恵~?」
「あ、ごめんごめん!ぼうっとしちゃった!」
「んもう・・・無理しちゃダメよ」
 ・・・てっきり「しっかりしなさいよ」って言うのかと思った。
 やっぱり樹莉はいい子だわ。そして私は樹莉が大好き。
 ごめんね。私は樹莉をおもちゃにして嫉妬心を消してる。
 そんなずるい奴だけど。樹莉は大事な親友だからね。
 それだけは本当だからね。

< つづく >

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