第9話
この世の魔法を全て手中にしたと僕は過信していた。
だから高校生活もきっと退屈なものであるに違いないと、疑いようもなく、毎日決まった登校ルートを歩くのと同じくらい当たり前に思っていた。
その道に花が咲いていたとしても、当然目に留めるはずもない。しかし間違いなく誰の通る道にも花は咲くことはあるし、不意に「きれいだ」と心に引っかかることもある。
僕はそれに気づくのが他人よりも遅かったみたいだ。魔法使いだから、周りの人間に惹かれることなんてなかった。誰かの瞳に心が揺らいだことなんて一度もない。心なんて、僕が魔法で作り出すものだと思っていたくらいだ。
自分の隣に誰かがいることの幸せを実感する。自分と同じ言葉を話す女性の存在に安心する。
生まれて初めての高揚感に浮かれている。
僕は、この高校に来て初めて『恋』という魔法を知った。
普通の高校生と同じようにだ。
「素敵だったよ、私のウィザード。君のセックスは最高だ」
南の海に浮かぶ孤島で、その砂浜で僕とカヅラ先輩は汗に濡れた体を寄せ合う。
太陽は燦々と輝き、風は暖かく甘い匂いを運び、白砂はベッドのように心地よく僕らの体を包み込む。
もちろん、それは互いの魔法で見せ合っているただの幻で、ここは四階の“魔女の教室”で、僕らは裸で冷たい床に横たわっているだけ。
客観的にこの光景を眺めた場合の事実はそうだが、しかし僕らが見て触れているのは、愛し合う魔法使いと魔女の作った、現実以上の実感がある仮想空間だ。
僕たちだけの甘い逢瀬の巣。魔法使いたちのセックスに柔らかいベッドも甘い香水もいらない。言葉だけで十分なんだ。
「ホラ、私たちのセックスの匂いにあてられて、“妖精たちが集まってきた”」
カヅラ先輩の指先がくるくる回ると、そこからキラキラと星くずが飛び散り、羽を持つ小さな妖精に変わる。妖精たちはクスクスと笑いながら僕のペニスにまとわりつき、その幼い肉体を擦りつけ、小さな舌で僕の先端をしゃぶりだす。
幻想的な光景と快楽に、僕は喉をひきつらせる。カヅラ先輩は、にたりと微笑んで僕の耳を舐める。
「可愛いウィザード。私のトーマ。食べてしまいたいよ」
妖精たちの正体はカヅラ先輩の指だろう。だが、僕の肌に触れる感触も囁くような笑い声も、現実としか思えない実感を持って僕を愛撫する。
魔法のセックスは、あらゆる出鱈目を駆使して真実の快楽を教えてくれる。若い僕らが溺れるのも当然だ。このままどこまでも堕していきたい。
妖精たちが、むくむくと起き上がっていく僕のペニスに、可愛らしい歓声を上げる。
「僕の素敵なウィッチ。この手を見て」
彼女のぶ厚いメガネの前に、ひらひらと手をかざした。
そしてそれを、軽く握って開くを繰り返す。
「“手が落ちていく。あなたの肌の上に、僕の手がいくつも落ちて、這いまわる。砂浜を駆けるカニのように。あなたに住み着きたいヤドカリのように。全身を這いまわる”」
「あぁ……ッ!」
肌の上に指を軽く滑らせるだけで、カヅラ先輩はその刺激を全身への愛撫として受け取り、手足をばたつかせる。
カヅラ先輩の平べったい胸は、肋骨の感触でごりごりとしている。頼りなげで、強く抱きしめると折れてしまいそうで、僕は優しくしてあげたくなる。
だから、甘く優しく触れて、魔法で彼女の快楽を導く。
魔法は快楽増幅装置。
想像力の起動スイッチ。
考え付くあらゆるシチュエーションと道具を言葉で作り出し、セックスの翼にする。
妖精たちの舌と僕の指が絡まり、南の島に淫靡な夜が訪れた。
「私のウィザード」
「僕のウィッチ」
「一つに交わり合おう」
僕の瞳に映る彼女の姿と、彼女のメガネに映る僕の姿が、入れ替わり、混ざり、溶け合い、恍惚の顔になっていく。
僕らのセックスに限界はない。
ただ、果てがあるだけだ。
快楽の終着点が。
あれは、4月のこと。
その入学式の日、僕はこの高校を支配した。
ただし中学のときのように、階級的に統制したわけではない。
『僕は魔法使いのトーマ』
この言葉がどれほど重要かをみんなに教えてあげただけ。無意識下に僕の命令を置いただけだった。
自分用のヒエラルキーもピラミッドも築くことなく、表面上は普通の高校生として過ごすことを、高校3年間の目標としたためだ。
ただ、思いどおりにはならなかった。
この高校には、すでに“魔女”が棲んでいて、彼女が支配していたから。
3年生の奥山カヅラ先輩。
学校を支配しておきながら、存在そのものを無いものとしていた僕の先輩魔法使い。
この出会いが、お互いにとってどれほど衝撃的であったか言うまでもないだろう。僕と彼女の最初の出会いから数日は、学校を舞台にした魔法戦争といってもいいような有様だった。初めて外敵というものを知った僕たちの焦燥と必死さは、ほとんどパニックと言ってもいいくらいだった。
その中で僕たちは、あの噂を真実を知ることになる、
“この街には魔法使いが住んでいる”
“それは子供の姿をしている”
“竜に乗って空を飛び、炎と水を操って、不思議なカードで未来を語る”
“魔法使いに出会ったら、願い事が叶う代わりに、大事なものを奪われる”
“この街には、とても強くて怖い魔法使いが住んでいる”
僕という孤独な魔法使いを語るにしては、妙に大げさな言葉や身に覚えのない現象が並ぶと思っていたけど、何のことはない。
噂となっていたのは、僕とカヅラ先輩の両方だった。お互いの噂が広まってどこかでかち合った結果、出来上がった都市伝説だった。
僕らが出会うよりも先に、僕らの噂が街のどこかですれ違い、交じり合い、強大で邪悪な魔法使いのイメージが出来上がって、それぞれ帰ってきたという滑稽な話だ。
戦争中の僕たちは、そのことに気づいて二人で笑った。もちろん戦いつつとはいえ、同時に交渉も行われていた。互いの技量を量りながら、協調と棲み分けが可能かどうかの落としどころを探るための作業だ。
ただ、僕らはどっちも、自分以外の魔法使いと出会うのは初めてだった。
不器用な外交だったと今なら思う。それまでのカヅラ先輩と交わされてきた数々の魔法バトルと言葉の応酬は、恋に落ちるための手順でしかなかったと、僕らはセックスをするまで気づかなかった。
とことんまで互いの脳をいじり合った結果として、その果てとして、僕たちは初めての恋を知る。
そうして四階の魔女は僕のウィッチに作り変えられ、エリの魔法使いだった僕も、カヅラ先輩のウィザードに洗脳された。
僕は、初めて出来たカノジョに浮かれるただの高校生になったわけだ。
カヅラ先輩に気に入られることなら何でもしたい。彼女の願いなら何でも叶えたい。彼女の小さく尖った目も反り返った鼻もそばかすだらけの頬も僕の永遠の花。この女性と暮らしていきたいと、本気で考えていた。
なんといっても、セックスが最高だった。
今までにどんな女性を抱いても得られなかった心と体の満足を、カヅラ先輩は完璧に与えてくれる。
そして僕も彼女の快楽を無限に掘り起こせる自信がある。最高のカップルなのだから、僕らは永遠に結ばれるべきだった。
「トーマ、イきそうだ。イク。私はイクぞ」
「僕もっ。僕もイきます。あなたの中でイクッ」
「あっ、あっ、あっ、あぁぁぁ~ッ!」
ただ、僕たちが共に暮らしていくためには障害があった。
彼女は、自分を“死人”だと定義していた。
「―――では、君の記憶を奪うぞ」
ドロドロになるまで交わったあと、制服とマントを羽織ったカヅラ先輩は、いつものようにタロットを取り出した。
『魔術師』のカードを置いて、その下に『運命の輪』を置く。
その配置と並びに未来への暗示などない。記憶を奪うための催眠装置だ。
「こんなことはやめて、僕と生きてくれませんか?」
何度目になるかわからない懇願をする。
カヅラ先輩は、いつものようにニヤリと笑うだけだ。
「トーマ。私は現し世より“滅びた魔女”だ。魔女の亡霊(ファントム)なんだよ。民衆に肉体を燃やされたあと、魂だけを教室に縛られた敗北者なのだ。生きる、などという選択はそもそも存在しない」
拳法の形のように腕を交差させ、そして両手を合わせて魔女に似つかわしくない礼をする。
「負けを受け入れること、即ち死を学ぶことは死から解放されることだ。このことが理解できれば、もっと自由に、理と調和していくことができる。もっとも私は、この教室よりどこにも流れることなど出来ない魂だがな」
敬愛するブルース・リーの引用で、いつものように僕の真剣な願いを茶化して受け流す。
僕のことを、ただの年下の男の子みたいに扱う。くやしい。
「君にはもっと可愛い女の子たちがいるだろう」
そういってカヅラ先輩はタロットの山から一番上をめくり、『恋人(ラバーズ)』のカードに描かれた天使を、くるりと回転させて僕に見せる。
「例えば、君のこの芸能人の恋人は元気かな?」
僕の知り合いで思いつく芸能人といえばルナかジュリくらいだけど、カヅラ先輩が言っているのは、女優をやっているルナの方だ。
わざとらしくため息をついて、僕は答える。
「ルナとはたまにメールするくらいですよ。それに、恋人なんかじゃありません。僕の恋人はあなただけです」
カヅラ先輩は表情を緩め、引きつったように笑う。
「つれないことを言うものじゃない。君の運命は3人の天使で作られていると私は予言した。いくら君が『魔術師』であっても、運命の下にいることには変わりないのだ。君の未来の伴侶は、太陽を冠した天使で、月の名を持つこの女性だ。私のカードはすでにそう告げている」
カヅラ先輩はタロット使いに相応しい意味ありげな微笑みを作り、『恋人』を『魔術師』の隣に並べる。
山からさらにカードを抜き取り、そして現れた『審判』を置く。
「君に転機を与える女性もすでに決まっている。君を魔法使いの『世界』へ導き、そして次なる『世界』へ繋ぐ扉になる女性だ。今は遠くにいるが、いずれ必ず君は彼女と再会する」
最後に『節制』を置いて、これで完成と彼女はニタリと笑う。
このカードを彼女はもっとも大事にしている。
僕の守護天使だと。
「魔術師の周りには常にこの3枚が並ぶ。3人の天使だ。これが君と、その運命の女性たちだ」
もちろん僕は、彼女のカード捌きが単なる手先の技術であることを知っている。魔法は他人の運命を操れるが、未来を定めることなど出来ない。いくらこの世で数少ない魔法使いでもそのくらいの謙虚さは持っている。
だから、先輩がどうしていつも『運命』だの『カード』だのという戯言なんかで僕との将来を拒むのかが、わからなかった。
「君の『世界』はこれでもう完成している。私が入り込む余地などないよ」
「僕の世界を満たしているのは、あなたへの想いだけです」
「そうやって甘いことを言わないでくれ。私は、あまり慣れていないんだ。真っ直ぐな言葉というものに」
「愛してるんです。僕の前にいるあなたは、世界一美しい女性だ。僕の花だ」
「クククッ、どうも君の前だと、上手くタロットを手繰れなくなるから困るよ。調子を狂わせないでおくれ」
どれだけ想いを言葉にしても、茶化し、はぐらかし、ほだされる。
彼女の願いを全て叶えたいと思う気持ちはウソじゃないけど、こうも誤魔化されてばかりだと、意地悪もしたくなった。
僕は、カヅラ先輩とずっといたいと言っているだけなのに。
「君の記憶は、ここで奪われる。回る車輪に奪われる」
回り始める運命の車輪。
僕の視界は徐々に回転する車に支配されていく。
やがて僕は彼女に関する記憶を封印され、恋を知らない高校生魔法使いに戻るのだろう。
「――“トーマは、私のことを忘れる。ここの教室でのことも、校舎に戻ってきたことも忘れる。そして、『いつものように過ごした放課後』を思い出し、すぐに『たいしたことじゃない』と忘れる。君は家に帰るだけだ。ここには来なかった。君はこの教室に入ったことはなく、また、行ってみようとも思わない”」
いつもと同じ魔法の言葉がすんなり僕の中に入っていく。
緊張していく僕の手に、カヅラ先輩の骨ばった手が重なる。
「“君は私のことを忘れる。私に恋していることも、そして愛し合っていることも忘れる。いつもの日常へ還るんだ。君は君の生活を続けたまえ。私の存在しない日常を”」
「――でも、“カーテンが閉まったとき”」
「あぁ、そうだ。“トーマはそのとき、私のことを思い出す”」
そして、カヅラ先輩のことはただの『学校の怪談』となり、この四階の教室で起こったことも消えていく。
次に彼女に呼ばれるまで、僕は彼女のことを忘れる。
僕の意識が消えるまでカヅラ先輩は僕の手を握ってくれていた。
「トーマ……私は……」
ぼんやりとした頭の中に声が響く。
“知らない誰か”の手が僕のに重なっている。
細く枯れた指だった。
年寄りのように。
「……私みたいなブスが、君と生きていけるはずないだろ」
ひきつったような短い笑い声とともに、僕の記憶に優しくベールがかぶせられる。
この教室であったこと。ここで会った人の全てを忘れて、今日も僕は家に帰るのだろう。
「お兄ちゃん、お帰りー」
妹のミチルが、2階の手すりから顔だけ出して僕を出迎える。部活も何もしてないミチルが、僕より先に家にいるのはいつものことだ。
そして、今日は彼女の友だちが大勢来ていることも、玄関の靴の賑やかさから明らかだった。
「おかえりなさい、トーマ様!」
ミチルが顔を見せた2階の手すりに、ふんどしのお尻が3つ並ぶ。顔を見ずとも誰のお尻かは一目瞭然だ。
今は中学2年生になった、去年の1年生王族トリオ。
ミナモ、シイナ、コノハのイタズラっ娘たちだ。
「きゃははは!」
そして、ミチルとその同級生の新1年生3人組が、2年生たち悪ふざけに、けたたましい笑い声を上げる。
うちの妹の面倒をみてくれていることには感謝しているが、後輩に悪い影響は与えないで欲しいものだ。
「お兄ちゃん、ミナモ先輩たち来てるんだよ。一緒に遊ぼー」
「トーマ先輩、遊んでー」
「私たちのお尻で遊んでくださーい」
ミチルを抜かして、総勢5名か。
これは体力を使う遊びになりそうだ。
「お兄ちゃん、みんな待ってたんだよー」
ミチルの部屋に上がると、中学生女子の匂いでいっぱいになっていた。2年生が3人、1年生が3人。女子会というより女子房といった感じだ。
「先輩、お久しぶり!」
2年生になったコノハが僕に抱きついてきた。
この中でも特に発育の良い彼女は、自慢の胸を僕に押し付け、色気を感じさせる瞳で僕を見上げる。
「トーマ先輩、全然中学に来てくれないんだもん。そんなに高校生の体の方がいいの? コノハよりも?」
制服越しにもわかるほど中学生離れした胸が、僕の胸に圧迫されて歪む。これでまだ2年生とは驚きだ。最近、ジュリが所属していた事務所にモデルとして登録されたっていう話だ。あそこの社長、ロリ巨乳好きって噂は本当っぽいな。
「そうだよ。せんぱい、最近ちっともかまってくれないんだもん。シイナとも遊んでくれなきゃダメ!」
ぎゅ、と手を握られる。
シイナの妹属性を全開で瞳をうるうるさせられると、思わず「ごめん」と謝りたくなる。
実の妹にこんなこと言われてもウザいだけだと思うけど、シイナにやられると僕のお兄ちゃん本能にズキズキくるんだ。
「…………」
そして最後にミナモが、もう片方の手を握り、じっと僕を見つめる。コノハとシイナをぶら下げたままの僕を、ベッドまで誘って座らせる。
友だちを僕の両側に座らせ、自分は床に座って、膝に寄りかかってくる。ますます美少女に磨きのかかった微笑みは、言葉以上に雄弁に僕に対する愛情と安心を伝えてくる。
男勝りな拳法少女からお淑やかな美少女に、たった一年で変貌したミナモ。さらなる進化を続ける彼女は、この年頃らしいイタズラな表情も、大人顔負けのミステリアスな微笑みも、自分の魅力として完全に使いこなしているように見えた。
「久しぶりにトーマ先輩に会えて、嬉しいです」
にっこりと、下から見上げるその笑顔のなんて眩しいことか。
「お兄さん、私たちとも遊んでください」
「私たちもお兄さんとせっくすしたいでーす!」
ミチルの友だちのクルミちゃんとヒナタちゃん。
容姿的にはまあまあっていうか、貴族くらいかなって感じなんだけど、ミチルと仲良しでよく家に来ているし、セックスにも興味あるみたいだったので、中学に遊びに行って新1年生に魔法をかけて楽しんだついでに、処女を奪っていた。それからたまに家に遊びに来たときに、ミチルの部屋で抱いたりしている。
ミチルや家族には僕がセックスをしているところを目撃しても『気にしない』という魔法をかけていたが、さすがに目の前で友だちを抱いたり、友だちや先輩がその話題で盛り上がっているところも『気にしない』というのも仲間外れでかわいそうなので、最近は『みんなお兄ちゃんの恋人』で、『みんな仲良しだからセックスもオープン』という、世間の常識的はどうかと思うが、まあ、自分の親友たちが兄に抱かれても当然だと納得できる程度の設定に作り直していた。
小さい頃から『気にしていなかった』だけで、僕の豊富なセックスフレンドとの交流を見てきたミチルは、このような現場にいても普通の状態で溶け込んでいた。
しかし、それはそれで倫理上の弊害もあった。
「えー、みんなセックスして遊ぶの? 私は何してればいいのー?」
一人クッションを抱えて、退屈そうに唇を尖らせる。
当たり前だが妹はこういうときは見学のみなので、しばらくはヒマさせちゃうことになる。
「マンガでも読んでろよ」
「つまんないー。私もせっくすしよっかなー、お兄ちゃんと」
「できるわけないだろ。学校で彼氏でも見つけろよ」
「お兄ちゃんのケチー」
妹もセックスに興味を持つようになったしまった。しかも、友だちはみんな兄である僕を相手に楽しんでいるの見て、だったら自分もと彼女は考えるようになってしまった。
もともとお兄ちゃん子で、初恋相手ですら適当に僕で済ませようとしたこともあるミチルは、手短なセックスの相手も兄でいいかと思ってるフシがある。
いいかげんなヤツだと思ってたけど、そこまでいいかげんだったとは。妹に見せびらかすようにセックスしてきた僕が悪いにしても、悪のりしすぎだ。
まあ、実の妹に発情するほど僕も女に不自由はしていないので、放置しているけど。
ミチルには小さい頃から魔法の実験台としてイタズラしてきたせいか、僕に対する依存心も強い。思春期以降はあまり不必要に魔法をかけない方がいいだろう。前に間違って本気で僕に恋させちゃったこともあったし、そのことは反省している。
自然に成長していくうちに、ミチルだって勝手に彼氏を見つけてくるさ。
「兄妹でそんなことしてるヤツいないの。ミチルは見学してろよ」
「ごめんね、ミチル」
「あとで遊ぼうね!」
「はーあ。兄妹じゃなきゃよかったのに……」
ぶちぶちと文句を言うミチルに謝りながら、女の子たちは僕の服を脱がせていく。
キスと愛撫。僕が教えたとおりに、あるいは彼女たちの工夫で全身を優しく気持ちよくしてくれる。
ミナモは足の指を舐めている。反対側はクルミちゃんが指を咥えている。シイナとコノハはペニスを両側から舐めている。子猫みたいにぴちゃぴちゃと音を立てて。
ヒナタちゃんは僕の右乳首を舐めていた。小さい手で僕の腕を掴み、懸命に舌を動かし、時々チュッとキスをする。
そしてミチルは反対側の乳首に、チュッチュと小鳥のようなキスをしていた。ヒナタちゃんの見よう見まねって感じだけど、なかなかに大胆で可愛い音まで立てている。
「ていうかミチル! お前はやんなくていいの!」
「いいじゃん、いいじゃん。ちょっとだけ。ちょっとだけ参加させて!」
ぺろぺろと僕の乳首を舌でなぶりながら、頭の上で両手を合わせる。もちろん僕はそんなお願いを聞くはずもなく、ベッドの端までミチルを追いやる。
「つまんない、つまんなーい!」
両足をバタつかせ、駄々をこねるミチル。パンツ見えてるぞ。
仕方ないやつ。まあ、さっさと終わらせてツイスターゲームでもしてやるか。ミチル、あれ好きだもんな。
「それじゃ、みんなお尻出してベッドに手をついて」
「はーい!」
「やった、挿入だ、そーにゅー!」
「ふんどしINでお願いしまーす!」
「私もー!」
ふんどしINとは、ふんどしを穿いたまま、横ずらしでインサートすることだ。発音は限りなく「ふんどしーん」に近い。
ふんどしマニアの現中学2年生は好んでこれをして欲しがる。また、ふんどしはパンツよりもそれをやりやすい。
じつは優れた下着だよね、ふんどし。
「それじゃ、ミナモから」
「はい、先輩」
自分でふんどしをめくりながら、くいっとお尻を持ち上げて僕の挿れやすい角度に合わせてくれる。
ミナモの張りのある丸いお尻は、すべすべしてとてもきれいだ。水玉模様のふんどしの下で、もう濡れているアソコが露わになる。
中学生のきついアソコへ、少し強めに押し込んでいく。セックスの上手なミナモは、挿入されながら僕のに角度を合わせて尻をくねらせる。
「あぁ、あぁん、先輩、気持ちいい……」
そして、僕の動きに合わせて尻を振る。そのさいも、ただ前後に揺らすだけではなく、微妙に上下にも調整して僕が動きやすいようにしてくれる。
地味だけど、難しい動きだ。体幹とリズム感の正確な身体能力があってこそだ。まだ少林寺拳法は続けているそうだが、見た目に反してかなり鍛えこまれた下半身が、僕に強い締め付けとリズムで快楽を与えてくれる。
「あっ、あっ、トーマ様、トーマ先輩っ、気持ちいいっ、気持ちいいっ、あぁぁーっ!」
ぎゅううと一際強く締め付けて、ミナモのお尻から力が抜ける。
彼女が達したことを確認して、僕はその中から引き抜く。
「次はコノハ」
「待ってました♪」
ぷりっとお尻を持ち上げる。
ギャルっぽいスタイルでモデルデビューしたばかりの彼女の肉体は早くも成熟の色気を発し始めていて、黒ふんどしという大胆なのか地味なのかわからない生地に日焼け跡も生々しかった。
「あん、あっ、トーマ先輩の硬いの、コノハの中にくるぅ!」
にゅるりとスムーズに僕のを飲み込んでいく。
中1の頃から何度も僕に入れられている彼女たちは、見た目のわりにアソコはもう出来上がっている。
入れてすぐに荒々しく動いても、全然平気だ。子宮口を降ろしてきて、僕の先端にチュッチュとキスをしてくる。
「んんっ、あんんんーっ、いい、先輩、いいよぉっ、コノハ、イッちゃうぅ!」
ちょろっと潮を噴き出して、コノハの膝がガクガク震える。
特に感じやすいこの子は簡単にイッてしまうので、あまりしつこくヤリすぎるとおしっこ漏らしたり気を失ったりで大変なことになる。
抜いてやると、コノハは床に崩れ落ちた。真っ赤になった濡れた瞳が、大人の女性みたいに色っぽかった。
「シイナ」
「はいっ!」
お尻をこっちに向けたまま、元気に手を上げる。
ミナモやコノハに比べて小さいお尻が、子犬みたいにぷりぷり揺れる。
「じっとして」
「はーいっ」
そのお尻を握ると、もうしっとり濡れていた。ふんどしにも染みが出来ていて、無邪気な振る舞いのわりに体はスケベな期待に反応しまくっていた。
「せんぱい……てへへっ」
恥ずかしそうに微笑み、ふんどしを指にひっかけて自分でめくる。まだ無毛に近いワレメは、ピンク色に濡れて光っていた。
「んん…っ、熱いよぉっ」
そういう彼女の中も、かなり熱くなっていた。
小さい体のわりに彼女の中は深くて、そして絡みつくような中身になっている。体を揺さぶるようにして腰を動かすと、まるでよく出来たラブドールを抱いてるみたいに軽くて扱いやすい。
セックス用の人形みたいに、可愛くて気持ちいい。
「せんぱっ、せんぱいっ、シイナのそこ、熱いのっ。熱くて、溶けちゃいそうなのっ。せんぱい、せんぱ、い…ッ!」
ピクンピクンと小さなお尻が痙攣する。
思わず一緒に達してしまいそうになったけど、なんとか我慢して寸前で引き抜く。
ちゃんと、1年生たちも抱いてあげないとね。
ミナモたちに比べればいくらか顔やセックスのランクが落ちるとはいえ、可愛い1年生たちだ。ミチルとも仲良くしてくれてるみたいだし、OBとしていっぱい可愛がってあげないとね。
「じゃあ、クルミちゃん」
「は、はい。よろしくです」
緊張気味にお尻に力が入る。
彼女たちはこないだ処女を失ったばかりで、セックスを楽しみたい気持ちと同じくらい、まだ痛みに対する警戒心も残っていた。
「大丈夫?」
「少し、緊張しちゃうけど……せっくす、してください」
ぷりっと、小ぶりなお尻を突き出す。ちゃんと先輩たちを見習ってて良い子だ。
ご褒美に、その恐怖感を取り除いてあげよう。
「“僕は魔法使いのトーマ”」
とろんと、クルミちゃんの瞳から色が落ちる。
「僕とのセックスは甘くて美味しいケーキだ。苦手なものなんて何も入ってない。僕のオチンチンを入れられたら、まるでアソコでケーキを食べたみたいな満足感と甘さが体中に広がる。期待して待ってていいよ」
そして、解除する。
クルミちゃんは目をパチクリさせたあと、うっとりと微笑んだ。
「お兄さん、早く早く! クルミにエッチしてください!」
お腹ぺこぺこって感じで、お尻を振ってアピールしてくる。すっかり欲しがり屋さんになってしまった彼女のパンツをずり下げ、さっそく挿入してあげる。
「あぁぁぁんっ、嬉しいよぉ!」
ギュッときつく締め付け、全身を震わせる。
ケーキのように甘い快楽に、中学1年生はアッという間にハマったようだ。
「や、好き、これ、大好き、セックスっ。あぁん、気持ちいい、気持ちいいよぉ、ミっちゃんのお兄さん、大好きぃ!」
浅い膣内をコツコツ突いてやったら、ぶるぶるお尻を震わせて喜んだ。
すっかりセックスに馴染んでくれたようで、積極的にお尻を振る姿は、まるで僕が学校支配していたときの貴族の子たちみたいで、すごくスケベでエロかった。
妹と同い年かと思ったらちょっと引くけど。
「あ、変な感じですっ。なんか、すごい甘いの来ますっ。これ、アレですかっ。先輩たちがよく言ってる、『イク』ってやつですかっ?」
「そうだね。たぶんイクんじゃないかな。クルミちゃんはイクの初めてだっけ?」
「はい、そうです、初めてですっ。初めての、来ます! すごいの来そうです!」
そういや、この子たちの処女は奪ったけど、ちゃんとイかせてはあげてなかったかも。
セックスに慣れすぎちゃって、適当になってきたよな僕も。昔はそれなりに女の子にも気を使ってあげてたのに。
まあ、今からすごい体験させてやればいいか。
「いくよ、クルミちゃん。君に最後まで体験させてあげるからね」
スピードを上げて腰を動かす。そして服の中に手を入れて、ちいちゃなおっぱいの先を撫でてあげる。
「あっ!? あっ、あっ、あっ、くるっ! イクっ、イキますっ、イキます! あぁぁぁぁッ!?」
ぶるるっと腰を震わせ、ピクンピクンと全身を痙攣させ、クルミちゃんは初めてエクスタシーを体験する。
少し刺激が強すぎたのか、だらしなく白目を剥いて舌を伸ばしている。まあ、これくらい強烈な体験の方が、すごいことをしたっていう思い出にもなるだろう。
将来どんな男に恋して抱かれても、中1で体験した僕のこと思い出して比較しちゃうに違いないから、それはちょっと気の毒なような気もするけど、魔法使いに抱かれるってのはそういうことだからね。セックスよりも大事だって思えるような、良い恋と出会えることを祈ってるよ。
「さて、次はヒナタちゃんだね」
「…………」
緊張しているのか、黙って身を縮こまらせている。
でもセックスに期待はしているのか、すでにパンツも脱いでお尻を丸出しにしていた。
つるつるのお尻とアソコがキュートだ。この子にはどんな趣向で快楽をプレゼントしてやろうかな。
まるで処女みたいにぴったりと閉じ合わさっているアソコに先端を当てる。ピク、と緊張したお尻が震えた。
ふふっ、本当に処女みたいだよ。
ぐいぐいと先端を擦りつけると、少しずつアソコが開いていく。ちょっと強めに押し込んでやると、きつい肉が少しこじ開けられ、僕の先端をわずかに飲み込む。
でも、ぴったりとその先は閉じられていて、簡単には入っていかない。なんだろう、本当に処女みたいに硬いな。
でもまあ、中1だもんな。1回や2回のセックスですぐに女の体にはならない。処女を奪った回数なら千を超えてる僕には、この程度の狭さなど朝の通学電車みたいなものだ。淡々と体をねじ込んで「今日も人がゴミのようだ」とせせら笑ってやるだけだ。
「い、いたっ!?」
ヒナタちゃんが悲鳴を上げる。なんだよ、本当に処女みたいな痛がりようだ。
逃げようとする尻を強めに握って、引き寄せる。逃げるなよ。レイプしてやりたくなるだろ。
なぜか妙にムラムラとくるお尻だ。強めに揉みこんで、感触を確かめる。
なんていうか、いろんな感情を込めて犯してやりたい尻の形だ。
僕のよく知っているような、ちょっと憎たらしいような。
まるで身内のお尻みたいだなと思いながら、めりっと先端をめり込ませたところで、隣でお尻を突き出し、茫然と僕らを見つめるヒナタちゃんと目が合った。
「ちょ、ちょっとタンマ、お兄ちゃん……マジで、痛いよぉ」
「ミチルかよ!?」
慌ててお尻から手を離し、入りかけていたペニスを引き抜く。
いや、入りかけていただけだ。入ってないぞ。断じて入ってない。
「うぅ…っ、噂以上の衝撃だったよぉ」
ちょっと血が出てるみたいだけど、絶対に入ってない!
「ミチル! 何やってんだよ、お前!」
「せっくすぅ……せっくすだよぉ。ていうか、ひどいよお兄ちゃん。鬼畜じゃん。うぅっ」
「ひどいのはお前だろ! いいから、あっち行って一人で遊んでろよ!」
「あーあ。もうちょっとだったのになぁ……って、血が出てる!? お兄ちゃんが私の処女奪った! お兄ちゃんとせっくすしちゃった!」
「違う! それはまだ未遂だっ。まだセックスじゃない!」
「えー、そうなの? 血が出てるんだからセックスしたんじゃないの? ミナモ先輩たちはどう思います?」
「ダメ。全体が入ってないからノーセックス」
「そう? コノハ的にはアフターセックス。シイナ的には?」
「シイナ的には、ハーフセックス」
「え、つまり結論として私はバージンですか、ノーバージンですか?」
「どっちでもないかな」
「ただのノーパン」
「ノータリン」
「ひどーい」
「だから、お前はまだしてないんだよ! ミチルはマンガ読んでろ、マンガ!」
「お兄ちゃんのケチーっ。けちけちけちー!」
何がケチだよ。まったく。
どう考えても妹なんかとセックスするような男の方がドケチだろ。
ミチルのことはほっといて、ヒナタちゃんともあらためてセックスして、全員と乱交する。
中学生5人を一度に相手にするのは結構疲れたけど、若い子たちと元気に戯れるのも楽しくて、ついつい時間を忘れてしまう。
「ミチル、そろそろ暗いからカーテン閉めろよ」
「自分で閉めればー」
ベッドの上で、パンツ脱いだまま寝そべってマンガを読んでいるミチルは、不機嫌そうに答える。
まだ痛いからパンツ穿きたくないそうだ。
「今、忙しいんだよ。こんな暗いとこでマンガ読んでたら目を悪くするぞ。カーテン閉めて電気つけろ」
「うっさいなぁ……忙しいとか言って、ヒナタっちゃん犯してるだけじゃん」
「あんっ、あっ、お兄さんっ、ミっちゃんのお兄さんっ! 気持ちいいですぅ!」
ヒナタちゃんを正常位で犯しながら、下半身裸のミチルを叱る。
まあ、確かに妹の部屋で妹の友だちと乱交して妹を仲間外れとか、イライラする気持ちもわかるけどさ。
「ふんだ」
お尻をぷりぷりさせながら、それでも言ったとおりにミチルは電気をつけてカーテンを閉める。
その瞬間、僕の記憶にスイッチが入った。
―――誰だ?
僕が知らなかった女性の顔と、その肉体と、言葉と、感触と、セックスと、会話と魔法が、カレイドスコープのように断片を重ねてグルグルと巡り、僕の記憶のモザイクが正しい配置に戻っていく。
頭の片隅で固いロックのかかっていた部分が、“カーテンを閉じる”というパスワードで、一気に解凍されていった。
「……あぁ」
ビキビキと音を立てて凍結された記憶が開いていく。
完全に思い出した。
今日、僕が放課後に会っていた人のことを。愛しい彼女を。
そしてイジワルをするつもりで、彼女の魔法に口を挟んで細工したことも。
いつもの暗示を繰り返しているつもりで、彼女はついつい聞き落してしまった。僕が“カーテン”のくだりを奪ってしまったとこに気づいていなかった。
僕は、魔女の魔法を、ただのカーテンを見ただけで解けてしまうような簡単な暗示にしてやったんだ。
「あんっ、お兄さん?」
ヒナタちゃんの中から抜いて、カーテンの前に立つ。四階のカーテン。僕の記憶を閉ざすカーテン。今日、初めてその帳から解放された。
「みんな、聞いてよ」
半分失神していた2年生たちも、セックスに目覚めて忘我している1年生も、ふてくされた妹も。
「僕には、恋人がいるんだ。心から愛し合う恋人が。誰も知らない秘密の魔女がいるんだ」
何を言っているのかわからない風の彼女たちの反応に、ますます僕は愉快になっていく。
「はははっ!」
なんて気持ちの良い事実。
僕には、愛する女性がいる。
さあ、彼女の魔法の檻から出して、二人の世界へ連れて行こう。
< つづく >