第十二話
田中は、玲子に確認する。
「さて、本番始めたらカメラは止めないから、台本はちゃんと覚えてる」
「はい……」
玲子の顔を覗き込むようにして田中は言う。
「あのさあ、気が入ってないようなら止めたっていいんだよ」
「田中さん何度も言わなくてもわかってます。ちゃんとできますから」
言われなくてもわかっている。
私がちゃんとやれなければ、娘が犠牲になるってことは。
「じゃ、始めようか」
田中のその言葉で、玲子のこれまでの人生を終わらせる悲劇的な撮影が始まった。
※※※
「ここからは有料動画ですね。わざわざ貴重なポイントやお金を使って、こんな三十四歳の変態おばさんOLの痴態を見てくださって本当にありがとうございます」
玲子は、ビデオカメラに向かってペコリと頭を下げる。
「皆さんに楽しんでいただけるように、今日はたっぷりサービスしますね。まずは邪魔な服を脱いでしまいます」
そう言いながら玲子は、スーツを脱ぐ。
ゆっくりと胸を締め付けていたブラウスのボタンをして脱いでいく。
パンツと上下で合わせた紫色の綺麗なレースの付いたブラジャーのホックを外して落とすと、ボカンと百センチHカップのロケットおっぱいがむき出しになる。
「今日は協力者を呼んでいます」
そう言いながらスーツのスカートも落としてしまうと、玲子は裸になる。
「どーもどーも」
頭を下げて、田中がカメラの視界に入っていく。
「はい、この方は近所に住んでる田中さんです。」
「精子をためてこいって言われたんだけど、玲子さん。今日は何の用事なんですか?」
「はい、今日は田中さんに私とセックスして欲しいと思ってお呼びしたんです」
「えー、なんだってー!」
棒読みで驚いた振りをする田中に、玲子はイラッとする。
自分でこんな酷い台本を書いておいて、なんだってもなにもあったものではない。
「驚くようなことじゃないですよ。しかも、今日の私は排卵日ですからちょうどいいでしょ」
そう言って、さっきの妊娠検査薬を見せる。
「排卵日にセックスって、妊娠してしまいませんか?」
ほんとわざとらしいにも程がある。
しかし、田中さんに言わすと、こういうわかりやすい確認がお客さんには大事だそうだ。
「そうですね。もちろん避妊具なんか使わずに、生で中出ししていただいて構いませんから、もしかしたら田中さんの精子で受精してしまうかもしれませんね」
なるほど。
玲子にこういうクドクドと説明をさせているうちに、田中さんは興奮してズボンの前を膨らませている。
言っている方はバカみたいなのだが、見てる男の人は興奮するのかもしれないなと玲子は思った。
「でも、妊娠してしまうかもしれないセックスのほうが興奮するでしょ」
「そりゃ俺は興奮するけど、玲子さんは本当にいいんですか?」
玲子は、カメラに向かって嫣然と微笑んで言う。
「いいからお願いしてるんです。もちろん、妊娠したとしても、田中さんは責任なんか取らなくていいですからね。私の責任で勝手に孕んで産みますから」
「でも……」
「ほら、服をお脱ぎになってください」
そう言って、玲子は田中の上着を脱がせながら語る。
「私ね、十五年前に女の子を出産してずっとシングルマザーをやってきたんですが、そろそろ子供にも手がかからなくなってきたんです」
「はい」
玲子は、田中さんのズボンとパンツをゆっくりと引き下ろす。
「それでね。そろそろまたドスケベセックスして、赤ん坊産んじゃおうかなーって思うんですよ」
「玲子さんだったら、別にそんなことしなくても普通に結婚したらいいんじゃないですか」
それは、田中さんのその通りなのだ。
亡くなった主人に操など立てず、そうしておけばよかったのかもしれない。
でも、こうなってしまった。
「そりゃ、こんな私に、私の子供も自分の子供だと思って育てるから一緒になろうって言ってくれた誠実な男性はたくさんいたんですけど、みんなつまんない男だったんですよね」
「つまらなかった?」
「ええ、私はここ十数年シングルマザーやってますけど、一人で子供を育てるのはとても大変だったんだけど、その一方ですごく興奮してたんですよ」
「子供を育てるのに、興奮してたんですか?」
「ええ。だって、考えても見てください。たった数回のセックスの快楽で、その後女が出産や育児に苦労して十数年を棒に振るんですよ。こんなリスキーなセックス他にないじゃないですか」
「はあ」
「私は、そういうのに興奮するんです。きっと本物の変態女なんでしょうね。それが面白くて、一度やったらやめられなくなったんですよ」
田中さんが書いたシナリオを朗読しているだけなのだが、玲子の演技は真に迫っていた。
それはどこか、真実が含まれていた部分もあったからなのかもしれない。
夫を亡くして、シングルマザーとして唯花を育てる悲劇的な自分に酔っていたところがあったのかもしれない。
そうだとしたら、これはそんな玲子への罰なのかもしれないな。
そう思いながら玲子は、むき出しになった田中さんの赤黒い陰茎を手で弄んで言う。
「せっかく溜めていらしたのにこう言うのはなんなんですが、最初はお口で抜いておきますか?」
「あ、お願いします」
「ふふ、いいですよ。新鮮な精液の方が妊娠しやすいっていいますから、最初はお口で……はむ」
そう言いながら、玲子は田中の陰茎を頬張り長い舌でベロベロと舐め回す。
「ジュルジュル……ジュルルルルッ」
嫌らしい音を立てながら、タコのような口にして下品に玲子の唾液まみれになった太い陰茎を啜る。
「おおおっ! 玲子もう出る!」
口の中で、これは出るなという肉棒の脈動を感じる。
もう何度もしてきたフェラチオだが、今日は特に早い射精だ。
びゅるっ! びゅくっ! びゅるるるるっ!
勢いよく玲子の口の中に粘っこい白濁液が吐き出された。
飲み込まないように注意しながら、頬を膨らませてそれを口内に溜め込む玲子。
そして、カメラの前に行って、ベロッと白い粘液まみれになった舌を出し、ちゃんとお口の中に大量射精されましたと見せつけてから、ゴックンと喉を鳴らす。
「ふう……」
なんとも言えない気持ち悪さ。
飲み込みにくいエグみのある精液が、玲子の喉を通っていく。
田中さんが溜めてきたせいか、それとも玲子の排卵日を目の当たりにして興奮状態にあるせいか。
今日の精液は、いつもよりずっと粘っこい気がした。
読ませていただきましたでよ~。
いよいよヤラナイカーさんの性癖、妊娠に突入しそうでぅね。
この先、親子丼はあるのか。あるにしても娘に手を出されないように従ってる彼女をどうごまかしてやるように仕向けるのか。
そして、この動画は流出してしまうのか。
であ、次回をたのしみにしていますでよ~
みゃふさん感想ありがとうございます!
なんかこう、この作品ちょっとミスってしまったかなあという感じがあります。
それで止まってしまってたかもしれません。
もうあと数話で終わりにしようかと思いますが、切りのいいところまでがんばります!