・6月13日(土)
今日は出勤日だった。
午前中で現場の仕事は片付いたので、事務所に戻って報告書をまとめる。たいした業務ではないので2時にはだいたい片付いていた。
休日出勤は振替もあのるで、早く上がれるときには退社してもよいことになっている。
周りの先輩も早上がりするって言っているし、僕もこれを終わらせたら帰ることにしよう。
『貴司さん現場終わった?もう帰り?』
そう思ってたとこで小田島からメールが来た。
経理課は最初から土日は休みだ。おそらくまた飲みの誘いだろう。
でも佳織さんと過ごせる時間はあとわずかなんだ。時間は大切に使うべきだろう。
小田島には『事務仕事が溜まってて無理』と返事をして、上司に早上がりを申し出る。
そして、思いきって佳織さんにメールしてみる。
『今日は何か予定ありますか?』
『魚を焼くつもりだよ。何か食べたいのある?』
『じつは早く上がれそうなので、いつものお礼に食事を奢りたいのですが』
心臓がバクバク鳴った。
前にスーパーまで一緒に買い物へ行ったことはあるけど、そのときの比ではない。
人妻を食事に誘ってしまったぞ。
『前に食材おごってもらったからいいよ。魚でいい?』
でも、やっぱりというか佳織さんは簡単には奢らせてくれない。すぐに返ってきた返事はやっぱりつれないものだった。
当たり前だ。彼女はそんなに軽い女性じゃない。
間男のような真似をしている僕が言うのもなんだけど、身持ちの固さも佳織さんの魅力だと思っている。
安心したようながっかりしたような変な気持ちになった。
でも、佳織さんとデートしたい。めっちゃくちゃデートしたい。そんな気分になってしまったんだ。
催眠でどうにかしようと思えば、きっと出来ると思う。
それをしてしまうと、タガが外れて彼女に対する欲求はきっととんでもないことになると思うけど。
でも、一度舞い上がってしまった気分はなかなか下げることが出来なかった。デートだけ。それだけだ。
僕は会社のトイレにこもって佳織さんに電話してしまっていた。
『はい?』
「僕の催眠人形」
電話口の向こうが沈黙した。
はたして電話で催眠術が使えるかどうかってハラハラしたけど、一発で成功してしまった。あらためてこの力の凄さに自分でも驚いてしまう。
ケータイを握ったままお人形さんになった佳織さんを思い浮かべる。
軽く勃起していくのを感じながら、努めて冷静に指示を出す。
「今、僕に送った佳織さんのメールは消去してください」
お人形さんの遠隔操作だ。僕はどこにいても佳織さんを操れるんだ。
そんなことを思うともうズキズキと勃起を始めていた。
「次に僕に『行きたい』とメールを送ってください。あなたは日頃の家事と1人暮らしにあきていた。たまには外でご飯を食べたいと思っていた。僕に誘われて嬉しい。ちょうどいい。久しぶりの外食にワクワクした気持ちになる」
そして忘れずに、彼女の中のガードを軽く突き崩す言い訳を与える。
「だって独りぼっちは誰だって寂しい。先輩だって許してくれる。食事をするだけだし、誰でも外で食事くらいはする。友だちと会うのと同じだ。悪いことじゃないし、わざわざ先輩に報告することでもない。先輩には黙っているべきだ。もし聞かれてもいつもどおり家で食べたというべきだ。せっかくの楽しい外食なんだから、大事に過ごしましょう。じゃあ、電話を切ります。あなたはまず直前の僕に出したメールを消して、あとは指示どおりにする。可愛いお人形さんだからそうするんだ。いいね?」
電話を切って数秒待った。
僕にはかなりの時間に思えたんだけど、佳織さんからの返事はすぐだった。
『行きたい!』
トイレの個室で、僕はガッツポーズした。
『何か食べたいのあります?』
『え~。いいよいいよ貴司くんの食べたいもので』
『いつものお礼なので。遠慮なく』
『ええ~。じゃあイタリアンかしら?』
『○○の○○って店わかります?』
『ごめん、あんまり詳しくないから』
『それじゃ5時30分に同時に玄関を開けましょう』
『うん!』
店は職場からも自宅からも離れたところにした。
同僚が来そうな店や、先輩と食べに行きそうな近場は避ける。万が一のことも考えて繁華街ではない隠れ家的なところ。前に近くの現場で作業してて、気になってた店だった。
「えへへー」
時間どおりに玄関を開けると、佳織さんも同時に顔を出していた。
薄手のロングカーディガンの下に花柄のワンピース。僕がまだ見たことのない服を着てきたことにドキドキしてしまう。しかも、ハッキリとメイクしていた。いつものナチュラルな感じとは少し違う。
僕との食事を楽しみにしていてくれたことは丸わかりだ。催眠術のせいだとわかっていても、やっぱり舞い上がってしまう。
「外食って本当に久しぶりだから緊張するかも」
僕の隣でニコニコと機嫌良く歩く佳織さんは本当に可愛い。
彼女は料理が上手だし、品数も彩りも言うことなしだから先輩が家で食べたい気持ちもわかる。だけどこうして外を歩く彼女もすごく可愛いしきれいだし、もっと連れ出して自慢するべきだと思うんだ。
気のせいか、視線も彼女に集まっているように思える。
薬指にはいつもの指輪をしているから、僕は少しだけ居心地が悪いけど、きっと僕の奥さんに見えているんだろうなと思ったら自慢してやりたい衝動が沸いてくる。
先輩。
こんな優越感を独り占めしてたなんて、やっぱりずるいですよ。
「ええ~、いいの? こんなオシャレな店じゃなくてもよかったのに」
店に案内すると、まず佳織さんは僕に申し訳なさそうな顔をした。
だけど僕は「全然高い店じゃないですよ」と余裕の笑みを浮かべる。もしも今日で破産したとしても後悔はしないし。もちろん、そこまで高い店でもないし。
初めてのデートに連れていく場所としては、ちょうどいいと思える店だ。
「あ、このクロス可愛い。キャンドルも。可愛いお店だねー」
昼間かけた催眠のとおりに、佳織さんは僕との食事を楽しんでくれてたし店の様子も気に入ってくれた。
ハシャいでいる佳織さんって本当に可愛い。年上の女性なのに、守ってあげたいその笑顔って思っちゃう。
食事もとても美味しかった。ネットで評判とか調べでもなかなか出てこない店だから不安だったけど、当たりだったみたいで本当によかった。
佳織さんとの会話も弾む。
まるで本当のデートみたいに、付き合いだしたばかりのカップルみたいに話に花が咲く。
「あははっ。貴司くん、おかしい」
笑顔で美味しそうにご飯を食べる佳織さんを見ているとこっちまで嬉しくなる。
そしてふと会話が途切れた拍子に、ちょっとイタズラもしたくなる。
「僕の催眠人形」
パスタをすくいかけた格好のまま、佳織さんの時間が止まる。
お客さんの会話や動き回る店員さんの足音で賑やかな店内で、マネキンをそこに置いたように沈黙している。
「きれいだよ、カオリちゃん」
どれだけの人が行き交おうと、今、佳織さんに見えているものはない。聞こえているのも僕の声だけ。
今この瞬間、佳織さんは僕だけの佳織さんなんだ。
停止を続ける佳織さんを見ながら、僕はラム肉にナイフを入れて口を運ぶ。
美味しいワインと料理と美しい人形。
至福が僕の目の前に並んでいる。
ニマニマと舌鼓を打っていたら次の料理を運んできた女性店員が佳織さんを見て目を丸くする。
「パントマイムです。彼女はパフォーマーなんですよ」
僕は彼女にイタズラっぽく微笑んで言う。
「へえー。すごいですねえ」
店員さんは固まったままの佳織さんを賞賛して、「ごゆっくり」と下がっていった。
佳織さんは微動だにしない。
でも、このまま目立ってしまうのも僕たちのデートの邪魔だ。
僕は身を乗り出して小さな声でささやく。
「佳織さん。足を前に出してください」
テーブルの下で彼女の細くてきれいな足がスッと伸びる。
僕の足と交差するように。
「あなたは食事や会話を楽しんでいる間、僕と足を擦りあわせている。そのことを意識することはない。あなた自身はそのようなことをしている認識はない。でも、この店を出るまであなたは僕と足を擦りっこして楽しむ。恋人同士がするみたいに」
そして僕は催眠を解除する。
「ん、美味しい~」
食べかけのパスタをようやく口にして、佳織さんは満面の笑みを浮かべる。
そして自分の好きなパスタの種類について、たくさんのおしゃべりで僕を微笑ませてくれる。
僕は、その間もずっと佳織さんと絡めて遊ぶ足の感触に興奮している。
「前に鎌倉で食べたパスタも――」
傍から見ればイチャつく新婚カップルにしか見えていないと思う。
佳織さんの足が僕に甘えるようにすりついてきて、優しく挟む。スカートの下は生足で、彼女の素肌を綿パン越しに感じる。
僕もハーフパンツで来るべきだった。
クリームを絡めたパスタよりも柔らかいふくらはぎの感触が僕を欲情させる。なのに佳織さんときたら自分のしていることの自覚もなくて、無邪気に美味しいものの話なんかしている。
テーブルの上と下でコントロールの違う体。今は、佳織さんの下半身が僕のお人形さんなんだ。
「飲み物のおかわりはどうしましょう?」
「えーと、もういいかな」
「あと一杯くらい、いいじゃないですか。同じ物を」
「あ、ちょっと、いいってば。飲み過ぎだよ」
「そんなこと言わずに、一杯だけ。これで終わりにしますから」
「んー……じゃあ、一杯だけ」
可愛く人差し指を立てて注文する佳織さんに店員さんも可愛く微笑んだ。さっきの人形化を見ている彼女は、しげしげと佳織さんを見ながら下がっていく。
佳織さんはそんなことにも気づかず、遠慮がちに「これで最後ね」と軽く僕に頷いてみせた。
先輩がいないときに外であまり飲むのは気が引けるのだろう。『食事』についてしか僕も後押ししていない。
彼女は身持ちの固い女性だ。
でも、そんな店員さんとのやりとりの間も僕と足を絡め合っているのだけど。
ふくらはぎが僕の足を挟んでゆっくりと上下する。愛撫するような動きにゾクゾクする。
テーブルの上で手を握りたい。いやむしろハイヒールを脱がせてキスしたい。
もう一度何か催眠しちゃおうかなって気分になった。
「ねえねえ、貴司くん」
「はい?」
緩みそうになった顔を引き締め、佳織さんの話に集中する。
佳織さんは、わざとらしくメニューで顔を隠し、ヒソヒソ話をするように乗り出してくる。
「あの店員さん、さっきからこっち見てない?」
「え、あぁ、注文取りに来た子ですか」
こっちのテーブルを見て他の店員とコソコソしゃべっていたらしく、チラリと目が合うとニコっと微笑んだ。
「貴司くんに気があるのかも」
嬉しそうに言う佳織さんに、僕はきょとんと首を傾げてしまう。
「……え?」
「絶対そうだよっ。さっきからこっち見てるもんっ。可愛い子じゃない。ちょっと声かけてくれば?」
瞳をキラキラと輝かせて、まるで自分のことみたいにわくわくして。
でもあの店員さんはさっきのパフォーマンスを期待しているだけだ。そして僕たちのことだってカップルか夫婦だと思っているに違いないのに。
「それともお姉さんが代わりに連絡先聞いてあげよっか~?」
だけど佳織さんは頭の片隅にもそんな考えはないんだ。
夫以外の男と二人きりで出かけることに躊躇はあっても、僕と何かが起こるなんて可能性はまったくありえないと思っているんだ。
こんなに楽しい時間を過ごしているのに。彼女の足元はこんなにも僕にすり寄っているのに。
お酒のせいもあるのか、少しハイになってる佳織さんはしつこく僕に店員さんを勧めてくる。
だから僕は、努めて何でもない風の笑顔を作って答える。
「そんなわけないですよ。それに僕だってそのつもりはないです」
「え、好みじゃないの? 可愛いのに」
「可愛いとは思いますけど、ナンパとかはしない方なんで」
「あんなに美味しい美味しいって羊を食べてたくせに、草食系なんだねー」
「自分ではわからないけど、僕は草食ではないと思いますよ」
食べるときはがっつり食べる。
あなたにそうしているように。
「そっかー……あ、ひょっとして付き合ってる子いる? 前に聞いたときはいないって言ってたけど」
「今だっていませんよ。でも、焦ってるわけじゃないんで」
「あ、ひょっとしてー」
「なんですか?」
「気になる子がいるんでしょ?」
「いや、そういうのもないですけど」
佳織さんは「え~」とお酒で赤くなり始めたほっぺたを挟む。僕は意味がわからなくて首を傾げるけど、佳織さんは「どうしようかな~」と1人でニヤついている。
「酔ってるしぃ、奢ってもらったから言っちゃうかな。でもあの人には私から聞いたって言わないでね? あのね、あなたたちの職場に小田島さんっているよね?」
「いますね」
「へへー。その子、じつは貴司くんのことちょっと気にしてるみたいよ。うちの人にたまに探り入れてくるって言ってた。可愛い子なんだって? モテモテだねー。やっぱり貴司くんはイケメンだもんね。あ、言わないでね。今の話、絶対に私から聞いたって言わないでね」
……あぁ。
なんだ。
先輩が「小田島は可愛いよな」って言ってたのはそういうことか。言われてみれば、飲み会のときも僕と小田島を近くに座らせるように誘導していたフシもある。
先輩まで使うなんて小田島はやっぱりあざといなっていうのが正直な感想だけど、僕が佳織さんにしていることに比べたら全然悪いことじゃない。
ただ、佳織さんの口からは聞きたくなかったなっていう気持ちにしかならなかった。応援なんてもっての他だ。
それなのに、佳織さんに「イケメン」って言われたことがちょっと嬉しいっていう、どうしようもない自分に軽くイラついた。
「貴司くんはー。小田島さんこと、どう思ってるの? 付き合ってみようかなーとか、ある?」
佳織さんはウキウキで身を乗り出してくる。
女の人ってこういう話が本当に好きだよね。
そして、「なんとも思ってない」って答えたらきっと「えー?」ってガッカリしちゃうんだ。
佳織さんの期待に応えられなくて申し訳ないけど。
でも僕は、僕には本当に好きな人がいるから。
「可愛いとは思いますけど、僕の好みじゃないんです」
「えー、なんだ。そうなんだ。じゃ、貴司くんはどういう子が好きなの?」
「僕の好みは……」
佳織さんが真っ直ぐ僕を見ている。
大きな瞳をキラキラさせて、お酒で少し赤くなった頬で。
そして僕の足を優しくさすりながら。
ゴクンと唾を飲み込んで、僕は笑みを作ってから言う。
「まず、めちゃくちゃメンクイです。顔ですね。美人でかつ可愛いタイプの子じゃないと好きになれないです」
「うわ、きっぱりしてるねー。可愛かったらもうOKって感じ?」
「いえいえ、顔はあくまでスタート地点ですから。もちろんスタイルだって見ますよ。外見が本当にマネキンかってくらいに完璧じゃないと僕はまず無理です。それからようやく内面にも目を向けますけど、もちろんそこにもこだわりがありますし」
「待って。スタート地点にすっごい難関を置いちゃってるけど、さらにこだわっちゃうの? SASUKEみたいな話してるよ?」
「ええ、かなりハードにこだわりますね。まず優しくて気がつく人。明るくて笑顔のきれいな子。料理も上手で働き者で、甲斐甲斐しく尽くしてくれる人。他人にも優しく出来るけど、もちろん身持ちは固い人です」
「……あのさ。ハッキリ言わせてもらうけど、それクリアできる人なんていないよ? 優勝者なしだよ?」
「やっぱりそう思います?」
「そうだよー。なんだ、ウソかー」
楽しそうに笑う佳織さんに胸が締めつけられる。
僕の理想は幻なんかじゃない。
だったら、こんな想いに苦しんだりしない。
「……でもいるんですよ」
「え?」
「僕の理想の人。じつは知っているんです」
「えっ、そうなんだ。いないとか言ってごめんね? その人にはもう言ったの?」
「いえ、まだ」
「告ってみればいいよ。そこまで好みのうるさい人に認められたのかって、ちょっと嬉しいかもしれないよ、貴司くんの告白。ふふっ」
「いや、おそらく嫌がられますよ」
「わかんないよ、そんなの。当たって砕けてみないと」
可愛く拳を作って「がんばれ」という佳織さんに苦笑しか浮かばない。
何も知らないくせに、「貴司くんなら大丈夫」と太鼓判まで押してくれる。
「絶対に断られるのわかってるんですよ」
「どうして? そんなの気持ちを伝えてみないとわからない」
「だってその人、結婚しているんで」
僕は佳織さんの顔を見つめてハッキリ言った。
顔が熱くなっていくのを感じた。
佳織さんも目を丸くして少し固まった。僕の足をさするのも止まった。
「……そ、そっかぁ。それは残念だね」
笑って、そして佳織さんは目を逸らした。
僕の足をゆっくりと挟み込んで撫でて、ワインのグラスを揺らして。
別の話題を探そうとして彼女の視線が泳ぎ出すのを、僕は止める。
「佳織さん」
自分でもどうしてこんなときに言ってしまったのか後から考えるとわからないし、美味しい料理とワインと、きれいな佳織さんに舞い上がってしまっていたとしか思えない。
後悔しているし、バカだったとしか思えない。だけど、このときの火の点いた僕の情熱は、勝手に唇を動かして止まらなかった。
絶対に言ってはいけないことを。
言えば全て台無しになるとわかっていたことを、僕は口走っていた。
「僕はあなたが好きなんです」
・6月14日(日)
――下着姿にした佳織さんを四つんばいにして、そのお尻に陰茎を擦りつけている。
「はぁっ、はぁっ、気持ちいいよ、カオリちゃん!」
小花柄の上下の下着。
四つんばいにさせるとお尻がぴっちりと浮かび上がり、そこに直に陰茎を擦るとまるでバックで彼女を抱いているみたいで興奮した。
ソファの上で僕はカオリちゃん人形と擬似的なセックスを楽しんでいる。
いや、僕はカオリちゃんを犯しているんだ。
「好きだッ。あなたが好きなんだっ。僕は、あぁ、他の女じゃダメなんですよ、もうっ。あなたが完璧な理想だからっ。愛してるっ。愛してるんですっ!」
腰を掴んで見下ろす背中のラインの美しさ。
短い髪の間に見える耳の形と白いうなじ。
大きくて張りのあるお尻も最高だ。最高のプロポーション。
ほわほわとして見えるけど、学生時代はずっとバレー部の体育会系だったそうだ。今でも早起きしたときは走るって言ってた。
すらりと引き締まった太ももやウエストは主婦になっても運動を怠らない賜物だ。その支えの上にある豊かなお尻は、適度な運動と肉のつきやすい体質の生み出した芸術だ。
僕はそれを抱きしめて腰を振る。陰茎にたっぷりと佳織さんを堪能させる。
理想の女性を抱く喜びを疑似体験しながら、こみ上げてくる精子の塊を思いきり彼女の体にぶちまける。
「あぁッ!」
昨夜からずっとこうしている。眠気も忘れてカオリちゃん人形を抱いている。
もう何回目の射精になるかわからない。
最初の方に出した精液はもう彼女の背中と髪で乾き始めている。そこにもう一度僕の精液を重ねてネトネトに汚してしまった。
佳織さんを。先輩の妻を。
だけど歪んでる僕の愛情はその光景にますます興奮する。
精液の匂いのする髪をすくいあげてキスをする。陰茎でお尻を擦る。
反応を見せないカオリちゃん人形が愛おしくて仕方ない。僕のはまだムクムクと大きくなっていく。
昨夜の佳織さんはとびきり美人だった。デートは最高に楽しかった。
そして二人きりになったとたんにお人形さんにされちゃう無防備なカオリちゃんが、最高に可愛くて仕方ない。
「カオリちゃん…ッ!」
精液に濡れた下着を引っ張って、その隙間に固くなった陰茎を挟む。
下着と生肌に包まれて、僕のはますます興奮する。
「あぁぁっ、カオリちゃんっ!」
擦ると精液がぬちゃぬちゃと滑って、お尻の形がくっきりと先端に伝わってくる。強引な挿入でめくれあがっていく下着が、彼女のヴァギナもあらわにしてしまう。
「あぁっ、佳織さん、ごめんなさいっ。オマンコまで見せちゃって、ごめんなさいっ。愛してますっ。愛してます!」
にちゃっ、にちゃっと下着を突き上げて佳織さんのお尻を擦る。
割れ目に挟まった陰茎が堪えようのない快楽に包まれる。
佳織さんのアヌスまで先端に感じながら、僕はまた射精を遂げる。
「あぁぁ……カオリちゃん……最高だよ……」
なのに僕の性欲は全然収まりようがなくてギンギンに立ち上がる。
「カオリちゃんっ、カオリちゃんっ」
背中のホックを外してブラをその場に落とす。
カップから解放されたボリュームのあるおっぱいがズシリと沈む。
このおっぱい。この感触。
他の女でもう満足できるわけがないじゃないか。
それを両手で持ち上げて、指の間に溢れる肉と先端の柔らかい乳首の感触を楽しみながら揉みしだく。
「あぁぁぁっ!」
どぷっと下着から精液がしみ出て、お尻の谷間を埋めていく。
白く濁った茶色いアヌスの姿に僕はまた勃起していく。
止まらない。佳織さんを味わい尽くしたくって興奮が引かない。
きっと僕はおかしくなってるんだ。
人妻を愛しすぎて頭も体もおかしくなってるんだ。
「佳織さんっ、カオリちゃん!」
またアヌスにたっぷりと精液をぶつけて僕は達する。
そして、彼女の体に覆い被さるようにして息を吐く。
「はぁー、はぁー、佳織さん……」
べとべとに汚れた体。汚れたソファ。
僕は佳織さんの乳房を揉み続ける。
これが佳織さんのおっぱい。カオリちゃん乳首。
指でころころ転がして、手のひらでゆっくり揉む。
僕の手も汗でベトベトだった。
「カオリちゃん……一緒にお風呂に入ろっか?」
シャワーの温度を確かめて、ゆっくりと足からかけていく。
後ろから支えて床に座らせて、楽な姿勢になるようにして。
「佳織さん。あなたは今、シャワーを浴びています。温度はどうですか? 熱いとか冷たいとかありませんか?」
「……ありません……」
「そのままじっとしていてください。僕がきれいにします」
目にシャンプーが入らないように慎重に洗って、トリートメントまでして、全身をきれいにする。
本当に見事な体だ。
おっぱいはたぷんと揺れながらも垂れすぎたりはせず、乳首も前を向いている。お腹だって柔らかいけど決して肉が付きすぎているわけじゃない。
足が本当に長くてきれいで、モデルのような体型をしていた。
僕のお人形さん。
自慢のお人形さんだ。
だけどそのとき、佳織さんのお腹がくうと鳴って、そういえば何も食べていなかったことを思い出す。
それにトイレもだ。
僕は自分だけ何度かトイレを使いながら、佳織さんには一度も使わせてないことを思い出した。
人形になりきっている脳に自覚はなくても、体に無理をさせているのかもしれない。
僕は佳織さんの陰毛の上を優しくさすりながら言う。
「佳織さん、あなたは今、トイレに座っています。おしっこをすごく我慢していた。早く出したい。もうここは出していい場所ですよ。ここを緩めて、好きなだけ出してください」
シッ、と股間から水流が吹きだして弧を描いた。
指示した途端に堰を切ったように吹き出した。
おしっこだ。
佳織さんのおしっこ。
申し訳ない気分になると同時に、陰茎にズキンとくるほどの興奮を覚える。
「もっと出して。どんどん。ここはトイレですよ。遠慮なんてしないで、もっといっぱいおしっこしましょう」
小さい子にするみたいに膝を持ち上げてあげると、佳織さんのおしっこはさらに勢いを増してチョボチョボ音を立てながらアーチを高くする。
やはり溜まっていたのか色も濃い。匂いもする。
だけど、もちろん嫌な気持ちになんてあるはずがない。佳織さんがおしっこしているところなんて、先輩だって見たことないに違いないと思うと嬉しくなってしまう。
僕の陰茎を股間の下から突き出し、おしっこに触れさせる。
先端に当たって飛び散る金色のおしっこは、生ぬるくて、彼女の体温を感じさせる。
「あぁ、可愛い。すごく可愛いよ」
耳たぶに囁きながら、最後まで彼女におしっこをさせる。
「……しーしー出来ましたね」
そしてちょろちょろと最後の数滴をこぼす佳織さんの頭を、幼児にするみたいに撫でてあげる。
赤ちゃんになった佳織さんのお世話をしてあげるのもきっと楽しいに違いないなと思った。
僕はもう興奮を抑えきれない。
佳織さんの体をお湯で暖めた壁に預けて、僕は立ち上がる。
濡れた髪の佳織さんはなんだかいつもよりも幼く見えて、それでいて色っぽくてますます勃起してしまう。昨夜は何回佳織さんに出させてもらったかわからないっていうのに。
ゴクリと喉を鳴らして、僕は言う。
「僕の催眠キス人形」
佳織さんの舌が伸びて回転を始める。
昨日、一緒にイタリアンを食べたピンク色の舌。僕はそこに彼女のおしっこに濡れた陰茎を近づける。
そして、ぴとっと先端に触れただけで電流が流れてあっという間に果ててしまった。
「あぁッ!?」
急いで腰を引いたけど、佳織さんの唇と舌、鼻のあたりにまでべっとりと精液はこびりつく。
精液が舌に絡まり、糸を引くようにして佳織さんの唇にまとわりついていく。
僕はいったんキス人形だけ解除して、彼女の顔をシャワーと手で洗った。
一晩中イタズラした佳織さんの体には、あちこちに僕の吸ったあとが残っていた。
傷つけないように丁寧に洗って、流して、ピカピカになった佳織さんの乳首が少し固さを増して色を濃くしている。
「佳織さん……」
舌を伸ばしてそこに吸いつく。
「カオリちゃん……はぁ、カオリちゃん……」
気のせいかミルクの味がしてまるで母親に甘えているような気分になる。
シャワーを頭にかぶりながら、僕は夢中になって佳織さんの乳首を転がす。
◇◇◇
「――冗談やめてよ~」
昨夜、いきなり告白を始めた僕に佳織さんはグラスを揺らしてはぐらかそうとした。
だけど僕は、「本気です」と彼女に告白する。
「ずっと前から好きだったんです」
佳織さんは、頬を赤くして驚いたような顔をしたけどすぐに真顔になって答えた。
「本気で言ってるなら、なおさらやめてよ」
聞かなかったことにするね。と、お姉さんのように優しい作り笑顔を浮かべて、佳織さんはグラスを置く。
「ご馳走さま。今日はとっても楽しくて美味しかった」
僕は彼女の顔を見つめる。
佳織さんも、僕の顔を真っ直ぐ見つめてニセモノの笑顔をキープする。
「……もう、2人だけで会わない方がいいね」
そのまま店を出たあと、佳織さんと帰り道では一言二言程度しか会話もなく、そして「おやすみなさい」と少し急ぐように扉を閉めようとした佳織さんに僕はささやいた。
「あなたは、僕の催眠人形」
部屋に連れ込んで服を脱がせて、そして「愛してる」って言いながら何回もキスをして陰茎を擦りつけて精液をぶっかけて愛し続けた。
朝になっても、止まらずに僕は彼女に愛情をぶつけ続ける。
◇◇◇
「僕の人形だ……僕だけの催眠人形。カオリちゃん……カオリちゃんの乳首、美味しいよ……」
気持ちの通わない人形は僕の愛情を受け止めてくれた。
その優しい体で何度も僕を射精させてくれて、ガラス玉みたいな瞳で僕を見つめてくれた。
佳織さんが好きだ。カオリちゃんを愛している。
乳首を吸いながら自分で陰茎を擦って僕は何度も告白する。
「愛してる。愛してます。あなただけを愛してるんだ」
舌の上で佳織さんの乳首が踊る。
濡れた陰毛を伝ってシャワーの水が床を流れ、おしっこしたばかりのヴァギナを洗っていく。
この体を僕は愛している。あなたの優しさと美しい顔と料理とキスとおっぱいとオマンコを愛している。
『もう、2人きりで会わない方がいいね』
例えば僕がここで告白を忘れろと言えば彼女は忘れる。
告白を受け入れて先輩のことも忘れて僕を愛せと言えば、おそらく彼女はそのとおりにする。
どうにでも出来るからお人形さんなんだ。
彼女はいつでも僕のモノになる。
『本気で言ってるなら、なおさらやめてよ』
あのとき、一瞬だけ見せた軽蔑の視線だって僕は忘れさせることが出来るんだ。
彼女の記憶ごと消して、僕も忘れたい。
初めて僕に見せた幻滅の表情。
彼女は本気で僕を拒絶していた。
あれは、絶対になかったことにしたい顔だった。
「佳織さん……お風呂を出て体を拭きましょう。そのあと、あなたは睡眠を取る。昨日は僕と食事を終えたあと、シャワーを浴びて眠った。あなたが昨夜、玄関を開けてから記憶にあるのはそれだけです」
だけど佳織さんは僕をフッたんだ。
ちゃんと真っ直ぐに見つめて断った。
あれだけ良好な関係を築いていたはずの僕を、きっぱりと拒絶した。
「好きです。あなたの、その正直さが僕は大好きです」
彼女は先輩だけを愛している。
家庭を何よりも大事にしている。
そんなあなただから、僕は憧れたんだ。
人妻だから、好きになったんだ。
「……好きなんです……」
涙はすぐにシャワーに流される。
佳織さんのおっぱいに告白しながら僕は泣く。
好きです。
死にたくなるくらいあなたが好きです。
大好きです。
「……もう一度言います。あなたはずっと1人だった。ここに僕はいなかった。あなたは、僕をフッたから。あとは、ゆっくり眠って……休んでください」
だけど、僕らの時間はもう終わったんだ。
読ませていただきましたでよ~
身持ちの固い佳織さん。だけど、催眠はそんな人こそ狙われる。
真面目に先輩を愛して貴司くんを拒絶したけど結局人形にされて犯されてしまった。
振った事実はそのままで犯されたことだけなくされた佳織さんはこの先どうされるのか?
貴司くん次第ではありますね。すっぱりと諦められるのかどうなのか?
続きを読みますかー