・6月25日(水)
僕の腕の中で愛しい人が身悶えている朝。
彼女の乳房も僕の手中で柔らかく形を変えて、心地よい感触と暖かさで楽しませてくれる。
「あっ、んん、はぁ……」
色っぽく開かれた唇。
僕は吸い込まれるように顔を近づけてそれに重ねる。
「ん、ちゅ、んん、ふっ、んん……」
彼女も夢の中で僕の唇を吸い返し、コクリと喉を鳴らす。
そして、ゆっくりとまぶたを開いた。
「……え?」
「おはようございます、佳織さん」
「ちょ、ちょっと、何して、んんっ、もう、エッチ!」
慌てて僕の手を胸から引き抜くと、乱れた髪を直して真っ赤になって僕を睨む。
「どんな夢を見てたんですか?」
「知らない、そんなのっ。もう起きるっ」
ベッドから降りるときに見せた下着のお尻が少し濡れていた。
それだけで僕は朝から気分がよかった。
一緒に朝食を食べて、部屋に戻って着替えて、出勤する前にもう一度佳織さんの部屋による。
そして、いってきますのキスをする。
「ん……」
隣の人妻に見送りとキスをさせるなんて、先月までの僕なら考えも出来なかったことだ。
髪に触れ、背中を撫でて、時折顔の角度を変えて長いキスをする。
僕たちはずっと前から恋人同士だったみたいに互いのやり方に慣れつつあった。
「ちゅ、ちゅ、ん、ちゅ、ふぅん……」
腰を撫でるとくすぐったそうに鼻を鳴らす。そして胸に触れた手をやんわりと押し返す。
「だーめ。遅刻しちゃうよ?」
遅刻だろうと欠勤だろうと、彼女と一緒にいられるならそれでいいなんて考えがよぎるけど、そんなこと言えば真面目な佳織さんはきっと怒るだろう。
「僕の催眠人形」
だから、せめて彼女にも僕と同じ気持ちを少しは味わってもらう。
僕が帰宅するまでの時間、僕はあなたのことを、あなたも僕のことを考えていて欲しいんだ。
「今のキスの感触は、ずっとあなたの唇に残る。僕にいってらっしゃいのキスをしたこと、ずっと頭の中に残っている。柔らかく甘いキス。あなたはまたしたくなる。キスのことを考える。期待する。キスしたい。疲れて帰ってくる僕に甘いキスをしてあげたい。癒やしてあげたい。とびきり優しく情熱的なキスで――と、そのことばかり考える」
僕を見送ったら、開始。
そう指示をして彼女の催眠を解く。
「じゃあ、そろそろ行きますね」
「あ、うん。いってらっしゃい」
「晩ご飯楽しみにしてます」
「ふふっ、美味しいの作っておきます」
扉を閉めて、にやりとする。
さあ、仕事に向かうか。
「……なんか、やつれてね?」
「え、そう?」
同期の北山と昼を食べていたら、そんなことを言われた。
「忙しいのか? 最近、付き合い悪いし」
「いや、そんなことないけど」
自分の顔がそんなに変わった気はしないし、疲れている感じもない。
むしろ、毎晩素敵なことばかりで充実していると思っている。
「女でも出来たか?」
北山のゲスい顔に、僕は肩をすくめて「別に」と答えた。
でも小田島のことは言っといた方がいいのかな?
まあ北山だからそのうちでいいか。
「そっかー。合コンでも企画する? おまえ、知り合いに女いねえ?」
「おまえが企画してくれるんじゃないのかよ」
「俺に出来るわけないだろー。ったく、小田島も最近付き合い悪いし。最近の同期、俺に冷たくね?」
「同期だから言うけど、おまえの軽さに原因があると思うぞ」
「はっ」
友人のせっかくの忠告を軽く聞き流し、北山はケータイをいじりだす。
そういうとこだぞ。
「つーか、小田島が付き合ってくれねー」
メールの返事も戻ってこないと、北山は愚痴りだした。
誘っても断られるし、休みの日にデートしたいと言っても無視だと。
「もういいかな、アイツ。軽そうだから簡単かと思ったけど、キスから以上はなかなかさせてくんねーし」
「キスはしたんだ?」
「おう。花見んとき。まあ、ノリだったけど」
少し複雑な気分になったけど、でもそれも僕が文句を言える話でもなかった。
むしろ、気持ちは楽になったと言ってもいい。
「そういえば、小田島には男が出来たんだよ」
「マジ? どこの誰?」
「僕。こないだそういうことになった。まだ誰にもナイショな」
「うっそ、ウケる」
マジでキスしかしてねーから、と北山は愉快そうに言った。
そして、適当な感じで「おめでとー」と笑う。
「つーか早く言えよ。無駄な時間使っちゃったじゃん」
本当にそういうとこだぞ、と僕は内心で思いながら「悪いな」と適当に謝っておいた。
同期の巡り合わせ、わりと最悪に近いな僕。
「あー、俺も女欲しー。どっかにいい女いねえ? 小田島みたいなぺちゃぱいじゃなく」
最悪発言を普通に更新しながら北山はため息をつく。
早く帰りたいなと思いながら、僕も息をついた。
佳織さんに会いたいと切実に思う。
「そういや、関川さんってまだ出張中?」
「うん、まだ。週末帰ってくるけど」
「あの人のデスクに奥さんの写真貼ってるだろ。俺、あれカラーコピーしたいんだよな」
「……なんで?」
「めっちゃ美人でおっぱいでかいだろ。オカズに使わせてもらいたいなーって」
「おい」
目の前の男の軽さが、途端に許せなくなった。
お腹の底が、どろっと重くなるのを感じた。
「言っていいことと悪いことあるだろ」
「は? なんだよ、急に。俺は言っていいことしか言わねー男だよ」
「ふざけるのもいい加減にしろって言ってんだ。気分悪いな、おまえ」
「んだよ。なんか文句あんのか? あ、なに? 小田島に先に手ぇ出されたことやっぱ恨んでるのか?」
「そんなのはどうでもいい。佳織さんに失礼なことを言うな」
「誰だよ、佳織って? あー、奥さん? つーか、別に関係ないだろ誰の奥さんだろうと妄想で犯すのはよ」
「やめろ。殺すぞ」
「……なんかおまえ、調子に乗ってね? めっちゃつまんねーんだけど」
「つまんないのはおまえだ。佳織さんのこと妄想するな。口にするのもムカつく」
「いや、マジでおまえおかしいって。普通じゃねえぞ、おい。大丈夫か?」
深呼吸して、気持ちを落ち着ける。
そして、北山に「悪かった」と謝る。
「疲れてるんだと思う。最近眠れなくて」
「おう。病院行っとけよ」
「悪かったよ」
「いいって。気にすんな、俺は優しい男だから」
「そういや、小田島のすごい写真あるからお詫びに見せるよ」
「マジ? 全然許してるけど、一応見せて?」
ケータイの画像フォルダを開いて、「どこかにあるよ」と適当に覗かせる。
もちろん佳織さんの画像はとっくにPCに移してある。つまらない風景とか飲み会の写真ばかりだ。
「あと、お詫びに肩でも揉ませてもらうよ」
「あ? 別にいいけど、画像どこ?」
「どこかにあるよ」
エロ画像を探して血眼になる北山の首をゆっくり押す。
姿勢が悪いせいか、かなりこっている。
「いってー」
「我慢しろ」
男の肩を揉むなんてあまり経験はないけど、ツボらしきものを押していけば徐々に体を任せるようになる。
北山みたいに単純な男は、なおさら簡単だ。
「うっはー、効くぅ……」
やがて僕のマッサージにハマり始めた北山に、僕はゆっくりした口調でささやく。
「おまえの記憶から、関川さんの奥さんが消える。写真を見ても認識から消える。彼女の姿はおまえの記憶に残らない。汚らわしい記憶から消える。彼女は――先輩のものだ」
「――おかえりなさい!」
仕事帰りに僕を出迎えてくれたのは、すでに下着エプロンの姿になっていた佳織さんだった。
そろそろ帰ってくるかと思って、とベージュの上下をいつものエプロンの下で揺らして、佳織さんは嬉しそうに微笑む。ポニーテイルに結んだ髪も弾んでいる。
ゴクリと喉を鳴らし、僕は平静を装って「ただいまです」となんとか返した。
ドキドキさせてくれる。やっぱり佳織さんは最高だ。
「…………」
佳織さんは僕の顔をじっと覗き込む。期待に瞳がきらきらしている。彼女が見つめているのは、僕の唇だった。
いつもなら、僕が強引にただいまのキスを奪うところ。だけど、それも何とか我慢した。
だって佳織さんが我慢出来なさそうにしているから。つやつやの唇が、つんと僕を狙っているから。
「お、お腹すきましたね」
「あっ、すぐ食べる? ていうかその前に貴司くんも脱がなきゃ」
「そ、そうですね」
2人きりのときはお互いに下着姿になる。うっかり見とれて忘れたけど、僕も脱ぐのが2人のルールだ。
「はい、手を上げて」
「え、自分で脱ぎますよ」
「仕事でお疲れでしょ。手伝ってあげる」
「で、でも」
「お姉さんの言うこと聞きなさい。はい、ばんざーい」
「子どもじゃないんですから……」
佳織さんは楽しそうに僕の服を脱がせていく。
なんだか恥ずかしいというか、くすぐったいというか。
正直言うと少し興奮する。人妻に服を脱がされて興奮しないわけがないけど、まさか佳織さんがそんなことしてくれるなんて。
そういう店でするサービスみたいなこと、してくれるなんて。
ズボンを脱がせられて彼女の目の前にトランクスを晒したとき、僕のそれは軽く勃起していた。
佳織さんは、「…………」と傍点を打つみたいにしばし沈黙したあと、ニコリと微笑んで僕を見上げた。
僕は、自分の顔が熱くなるのを感じた。
「じゃ、ご飯にしよっか」
僕の服は佳織さんが畳んでくれた。
そしてテーブルの用意をして、僕の隣の椅子を引く。
「こっちの席のほうが、おしゃべりしやすいよね」
下着姿の彼女を隣に置きながらの食事は、興奮したし盛り上がった。
佳織さんはよく笑ったし、僕の体にも頻繁にタッチしてきた。
僕も会話しながら彼女の背中に触れたり、髪を撫でたりもしたけど、全然嫌がるそぶりもないし、さりげに椅子を近づけると彼女も体を寄せてきた。
ふざけて「あーん」なんてしても面白そうに食べてくれたし、むしろ彼女の方が僕に食べさせたがって、最後の方がずっと佳織さんに食べさせてもらっていた。
美味しく彼女の料理を味わう僕の唇を、彼女は美味しそうに見つめていた。
食事が終わったあとも会話は続く。僕らは互いの太ももの上に手を置いていた。
佳織さんは、僕の膨らんでいる股間にしばしば視線を落としてきたし、胸の谷間に鼻の下を伸ばす僕の視線も余裕で受け止めてくれる。
軽くくすぐってくる佳織さんの手を握って、「そろそろマッサージしましょうか?」と言うと、彼女は頬を染めてコクリと頷く。
キスをして欲しそうに僕を見上げる佳織さんを、ここでもあえて気づかないふりをして立ち上がる。
きゅっと僕の手を握り返して、ソファの前で彼女は言った。
「いつも貴司くんにしてもらってばかりだから……今日は私がしてあげようかな」
もちろん僕がしたいし、遠慮したんだけど、佳織さんは「お仕事で疲れたでしょ?」と優しく僕を座らせる。
今日はなんだかすごく甲斐甲斐しい。そして今朝の暗示の内容を思い出してハッとする。
キスばかり強調していたけど、仕事で疲れた僕を癒やしてあげたいという気持ちも何度も反復するように命じた。佳織さんは、特にそういう気持ちが強い女性だ。相手のことを心配するのが得意だ。
まるで妻みたいに着替えを手伝ってくれたり、「あーん」で食べされてくれたのもそうなんだろう。僕を労ってやりたいという気持ちが、今日はすごく強いんだ。
だったら肩のマッサージくらいはしてもらおうかと思ったけど、でも、佳織さんはさらに僕の想像を超えてきた。
僕の膝の上に、跨がってきたんだ。
「……ちょっと恥ずかしいね」
照れくさそうに笑って、僕の両手を握って股間をさらに近づけてくる。ペニスとヴァギナが下着越しに完全に触れたとき、佳織さんはピクって眉を寄せてまた笑った。
「貴司くんみたいに上手には出来ないと思うけど」
ゆっくりと腰が動き出す。
僕の股間を擦るように。僕がいつも彼女にしているように。
「はぁ……」
思わず吐息が漏れた。
感触というよりも、佳織さんが僕の上で腰を前後に揺すっているという光景にしびれた。そして、その不器用さが胸がつまるほど嬉しくなった。
「えっと、こ、こんな感じ? よくわかんない、ごめん」
真っ赤になって照れを笑ってごまかしてる佳織さんが、愛しくてたまらなくなる。
きっと彼女は、この夫婦は、こういうセックスの経験があまりない。ひょっとしたら、まったくない。彼女が上になって腰を振るような大胆でスケベなことを、やったことがないし先輩もやらせないんだろう。
聞かなくてもわかる不器用さだった。そのことがかえって僕を興奮させ、勃起ははち切れそうになる。
「あんっ」
ピクンと反応した僕の陰茎を下着越しに感じ取り、佳織さんも同じように反応した。
僕は彼女の手を外して、腰と背中を撫でながら言った。
「すごく気持ちいいです……疲れも吹っ飛びます。もっとしてもらっていいですか?」
佳織さんは嬉しそうに目を細めて、「もちろんだよ」と僕の頭に腕を回す。
そして、体を寄せて腰の動きをさっきよりも少し大胆にする。
「気持ちいい?」
「はい、すごく」
「本当に? おせじなんかいいよ?」
「本当に気持ちいいです……あぁ、腰が蕩けそうです」
「よかった。私もね、んっ、貴司くんにこれしてもらうと、腰から下が溶けちゃいそうなくらい気持ちいいの。今日は、んんっ、貴司くんがたくさん気持ちよくなってね?」
そして大胆になるにつれ、彼女自身も感じているのか、「んっ、んっ」と甘い息を吐く。
元スポーツ少女だけあって体幹の筋肉もしっかりしているし、運動勘がいい。徐々にこの動きにも慣れてきて、腰をなめらかに効率的に僕のペニスに擦りつけてくる。
いつもの微笑みで僕を見つめながら、下半身だけ肉食の獣みたいに僕から快楽を奪っていく。
「あぁっ!」
裏筋を彼女のヴァギナに撫で上げられ、僕はみっともなく声を上げた。
佳織さんは、そんな僕をうっとりした顔で見つめると、子どもにするみたいに優しく前髪をかき上げて撫でる。
「かわいい……」
その表情にいつもの彼女にはない妖艶さを感じて僕はぞくぞくする。
腰は絶え間なく動き続けてペニスを刺激する。
佳織さんは熱っぽく目の回りを赤くして僕を優しく見つめる。
「か、佳織さん……」
「んっ、なぁに?」
「僕……」
キスがしたい。して欲しい。
すっかり立場は逆転して、彼女の濡れた唇を僕が欲しくて仕方なくなった。
口をぱくぱくさせて、舐めて、やっとの思いで声を振り絞って言う。
「キスしてください……」
佳織さんは瞳を輝かせると、「しょうがないなぁ」と薄く微笑む。
僕の髪をくしゃっと掴んでもう片方の腕を回して引き寄せ、僕の唇をその柔らかい唇で軽く挟む。
すぐに離して、もう一度。僕をついばむように何度か軽いキスをくれたあと、むちゅっと口を重ねて吸ってくれた。
頭がくらくらした。
下半身も唇も気持ちよすぎて、射精しているのかどうかもわからないくらい全身が蕩けていた。
でも、もっと。
もっと佳織さんに甘えたい。
僕は、舌を伸ばした。ディープキスは嫌がっていた彼女に、僕の舌を差し伸ばして懇願した。
「舌を吸ってください……舌も、マッサージして」
だけど佳織さんは嫌がるどころか、「しょうがないなぁ」とまた目を細めて笑ってくれたんだ。
「ちょっとだけだからね?」
舌が生暖かくて柔らかい唇に挟まれる。
そして、ちゅっと軽く吸われる。
ビリビリと背中を電流が走っていき、口の中に一気に唾液があふれて溶けそうになる。
「んっ、ちゅるっ」
佳織さんはその唾液まみれの舌を舐めてくれた。
粘膜同士が擦れ合う感触に、また電流が走って股間がしびれる。
じつはもう何回も射精しているのかもしれない。感覚がトンじゃってもうわからない。
夢中になって舌を伸ばして、佳織さんの口の中に突っ込んで、彼女の舌を求めて蠢く。抱きしめて、すがりつくようにしてキスを求めた。
「ん、あむっ、もう、ちょっとだけって言ってるのに……ちゅぷっ」
佳織さんは優しく舌で答えてくれた。僕のわがままを口の中で抱きしめてくれた。
柔らかく慰めるように動く舌は、人妻の包容力と母性を象徴するように大人の男も蕩かしてしまう。
これが佳織さんのキス。本気キス。ディープキス。
「んっ、ふっ、はぁ、あっ、貴司くん…ッ!」
夢中になって抱きしめ、僕も腰を動かしていた。
佳織さんに合わせて、大人の男らしく大胆に力強く。
彼女も腰をぶるぶる震わせてしがみついてくる。下着姿の素肌を夫以外の男に預けて、キスと抱擁で応えてくれる。
「だめっ、私が、してあげるから、あんっ、そんなに、ガツガツしないの、ねえ、あんっ、もう、ちゅっ、してあげたいから、んんっ、あっ、あっ、ちゅっ、だめよ、ねえっ、あんっ!」
お互いの気持ちいい部分を擦り合って、キスもして、抱きしめ合って何度も「気持ちいい?」って確認し合う。
佳織さんの腰が自ら絡みついてくる。気持ちよくないわけがない。
僕は下着の中で暴発するみたいに射精した。
「あっ、あっ、熱いの、出てるっ、マッサージのオイル、出てるっ、あぁぁぁぁ!」
彼女のそこに僕のを擦りつけ、夢見心地で何度も何度も射精した。
「――ん、んっ、あっ」
その後もシャワーに入った佳織さんを、またステルス催眠でイタズラしている。
佳織さんのアソコは火照って僕の指を簡単に飲み込む。
1人きりだと思って自慰しているときと、ベッドの中で僕に手淫されているときの締め付け方の違い。
今夜もしっかり確かめようと思う。くねくねとお尻を悶えさせる佳織さんのおっぱいを握りながら、僕はその可愛い耳たぶにキスをする。
「寝る前に、軽くマッサージしますか」
「……はい」
やや緊張ぎみに、照れくさそうに佳織さんはパジャマを脱いで、セミダブルのベッドに横たわる。
僕がその上に覆い被さっても、赤い頬をして少し視線をさまよわせるくらいで、嫌がるそぶりはなかった。
キスをして、舌を入れても。
「ん、ちゅ……や、舌は……ん、もう……ちゅ、ちゅるっ」
彼女の内部に舌をねじ入れるという行為に夢中になる僕を、困った弟のように優しく髪を撫でて抱きしめてくれる。
佳織さんの吐息と口内の温度。唾液の味。抱きしめる体の柔らかさはどこまでも僕を包み込むようだ。
首筋に舌を這わせて降りていく。そして手をパジャマの中へ入れて乳房を直に触れる。
布越しに、彼女の乳首に口をつけた。
「やぁ…ッ!」
ぐい、とシーツをよじるように体は背中を反らせた。
だけど僕はすでに口の中に乳首を捕らえていて、舌でころころと転がしている。そうしながら、パジャマのボタンを外す。大胆に胸を開いて、白い肌と丸い乳房と、そしてぷくっと起立を始めている乳首に直接キスをした。
「だ、だめっ、貴司くん、くぅ…ッ!」
佳織さんは抵抗を見せたけど、乳首が僕の口の中に入ると諦めたようにあっさり力を抜いた。
口の中で転がす。痛くならないように吸う。
人妻のおっぱいを吸ってしまった。いつか先輩の赤ちゃんが吸うはずの乳首を、僕が先に吸った。
夢中になって口の中で転がす。佳織さんは、どんどん甘い声になっていく。
「だめぇ……」
僕の頭を優しく抱きしめて。
まるで本当のママみたいに撫でていた。
「佳織さん…ッ!」
下着の中に手を入れた。
そこはもうぐっしょりと濡れている。
「あっ、やっ、貴司くん…ッ!」
乳首を吸われてヴァギナに指を入れられて、佳織さんは大きく息を吐き、強く指を締め付けてくる。
「だめっ、はっ、はぁっ、だめぇ、あっ、んんっ、やあっ、あっ、指、そんなに動かさないで、あぁ!」
僕らのしている行為はほとんどセックスと言っていいけど、それが本物ではないことを免罪符にして、エスカレートしていく。
人妻と隣人。同じベッドでもつれ合いながら性器を弄って肉欲をぶつけ、淫らな喘ぎ声を響かせているのは絶対に交わってはいけない2人だ。
それでも、求める気持ちを抑えつけることは出来ない。ぎりぎりまで彼女を知りたい。許されたい。
自分勝手な欲望を、その豊満な肢体の敏感な反応で楽しみ発散するという、この遊びはやめられそうもなかった。
タイムリミットがなかったら、絶対にハマり狂っている。
「好きです、佳織さん……」
「あっ、あっ、だめっ、もう、だめ、あっ、あっ、あ…ッ!」
「イッて、佳織さん。僕の指でイッて。あなたをイかせてあげたい」
「やだ、そんなこと言わないで、私、私は……、あっ、あぁっ」
「……佳織」
僕はもう一度「好きだよ」とささやいて、彼女の乳房に潜って乳首を甘噛みした。
「あぁぁぁぁぁ!」
佳織さんは、ぎゅっと強く僕の締めて体を突っ張らせて、大きな声を上げて絶頂した。
口を離すと、僕の唾液に濡れた佳織さんの乳首がぷるんと震えた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
そして呼吸に合わせて上下するそれを見ていると、また口に含みたくなってくるけど、視線を察した佳織さんが恥ずかしそうに両手で隠した。
「えっち」
拗ねている佳織さんを、後ろから抱きしめる。
ごめんなさいと、髪に顔を埋めながら言う。
「絶対反省してないから、許してあげない」
胸と一緒に肩を抱き、密着するように引き寄せる。
彼女の甘い匂いと胸の音。すごく落ち着いた。
「だって佳織さん、可愛いから」
「そういうこと言ってごまかそうとしてもダメ。やだって言ったのに」
「ごめんなさい。でも、好きだって気持ちが抑えられないんです。佳織さんが好きなんです」
「…………」
腰や太ももを撫で、お尻に僕の股間も当てる。
固くなっていることを彼女もわかっているはずだ。
「今だけでいいんです。佳織さんと恋人同士がするようなことしたい。でも、本当にしちゃいけないことは――」
「……うん。我慢してくれてるんだよね」
お尻を少し緊張させて、佳織さんはつぶやいた。
「好きだって言ってくれてる気持ちも、本当なんだと思ってるよ。たくさんえっちなことしてくるけど、一番大切なことは我慢してるんだってとこも、信じてる。だから、私もどっか安心してる。貴司くんにキスされても怖くない。本当はよくないことだけど……悪いことしてるって気持ちが、だんだん薄くなってる感じなの」
佳織さんが緊張しながら言っていることを聞きながら、僕は心の中で詫びる。
催眠術でそのブレーキも外していることを、彼女は知らない。
「恋人にはなれないけど……私の特別な人だよ、貴司くんは」
彼女の体にイタズラを続ける僕の手に指を絡ませて、佳織さんは「あっち向いて」と言う。
どうして、と尋ねても「どうしても」と僕に背中を向けさせた。
そして、背中にぴったりと体を重ねて抱きついてくると――僕の下着の中に手を入れてきた。
「か、佳織さん!」
「何も言わないでっ! ……言わないで、お願い。私、今から悪いことするから。でも、いつものお礼だからっ。貴司くんが、我慢しながら私が寂しくないようにしてくれてることのお礼。ただのお礼なのっ。今夜だけ、私がすること誰にも黙ってて」
佳織さんの指が、僕の陰茎に絡みついている。
僕は驚いて硬直してしまったが、それ以上に彼女が緊張しているのも伝わる。
確かめるように僕のを上から下へと触れて、ぎこちなく僕の下着を脱がせていく。
僕も緊張しながら腰を浮かせた。そして結局、もどかしくて自分で脱いだ。
裸になったお尻に、佳織さんの腰がくっついてくる。そして、僕の陰茎にまた細い指を絡ませてくる。
「はぁ……」
佳織さんの胸がすごいドキドキしている。顔のあたりがすごい熱くなってるのもわかる。
不器用な指の動きは、愛撫というよりも戸惑って彷徨っているだけのようにも感じられた。
さっきの座位での腰使いもそうだったけど、佳織さんは人妻のわりに積極的なセックスをあまり知らないような気がする。
先端の部分をひたすら触ってみたり、根元の太さを確かめるように握ったり、まるで男のを初めて触わるみたいだ。
「た、貴司くんって、大きくない?」
「え?」
「その、違ったらごめんね。これ、本物? すっごく大きくない?」
僕は彼女が言っていることが一瞬わからなくてポカンとしてしまった。
大きい? 僕が?
「えっと……それは、先輩のと比べてってことですか?」
「うん」
僕の背中に顔を埋めたまま、さわさわと僕の陰茎を上下に撫でる。
くすぐったさに呻きそうになるのを堪えながら、「そうなんですか?」ともう一度尋ねた。
「大きいよ。太さも1.5倍って感じ」
なるべく平静に聞こえるように腐心しながら「他と比べたことないのでわからないです」と答えた。
「あ、そうだよね。ふふっ」
内心ではミラクルガッツポーズしている。
先輩に勝ったということよりも、そこの大きさはナイーブな話題だというぐらいの知識というか礼儀すら知らない佳織さんのウブさが可愛くて、舞い上がっている。
ペニスを握る佳織さんの手に、自分の手を重ねた。
「固さは、どうですか?」
「固さ? うん……貴司くんの方が固いと思うよ」
「形はどうです? 僕の、変じゃないです?」
そのまま佳織さんの手を上下に擦らせる。握ったまま、僕の先端の形や根元までの太さもわかるように。
「……変とか、聞かれてもわかんないけど、でも、んっ、貴司くんのは、刀みたいな形してるね。反り返ってるっていうか、ぐいんって、背伸びしてるみたい。固くて、しっかりしてて……んっ、ちょっと恥ずかしいけど、か、かっこいいって思うよ……」
僕に従って握った上下をさせながら、佳織さんは時々息を詰まらせるように言う。
胸の音ももっと大きくなって、呼吸も乱れ始めていた。
ペニスの形について語っている自分を、夫ではない男のペニスに興味を持っていることを恥ずかしがって、彼女は語尾を小さくしている。
「佳織さん……」
「う、うん」
「そのまま上下に擦っててもらえますか?」
「いいよ……気持ちいい?」
「はい」
僕も息を乱しながら言う。
「大好きな人にしてもらえて、すごく嬉しいです」
「…………」
何も言わず、だけどギュッて佳織さんは後ろから抱きしめてくれた。
そして、僕のを擦る速度をほんの少し速めていく。
「はぁ、はぁ、んっ」
佳織さんの吐息が僕の背中にかかる。
時々何か堪えるみたいに、僕のペニスを握る手に力が入る。
自分の大胆さに戸惑いながらも、僕に気持ちよくなってもらおうと頑張ってくれていた。
キスと癒やし。
今朝のキーワードはまだ佳織さんの中に根付いて行動を支配している。普段の彼女だったら絶対にこんなことしない。
だけど、この数週間で僕は彼女の心にここまで接近している。僕のペニスですら彼女は癒やしてくれる。
もっと甘えたい。可愛がられたい。
佳織さんの赤ちゃんにだってなりたいと僕は思うんだ。
「……佳織さん、もう……」
「えっ、ど、どうしよ。どうしたらいい?」
「ティッシュ……」
「そ、そこに」
自分でティッシュを取って、先端に当てる。
そして佳織さんに少しスピードを上げてもらうようにお願いする。
「もっと速く擦って」
「う、うん。これくらい?」
「もっと」
「は、はいっ」
本当はもっと激しくしてもらいたいと思ったけど、佳織さんに命令して擦らせていることに興奮してしまって、簡単に絶頂は訪れた。
僕は射精している間、佳織さんに握っているように言ったら、また「はい」って恥ずかしそうに言うとおりにしてくれた。
最後まで出しきって、ティッシュを捨ててトランクスを穿いて、後ろで恥ずかしそうに背中を向けている佳織さんをそっと抱く。
「すごく良かったです」
「そ、そう。よかった。お礼だから、お礼」
「またして欲しいかも」
「だめ。1回だけ」
「ケチだな……」
「もう、そういう問題じゃないでしょー」
「僕の催眠人形」
満たされた気持ちで、カオリちゃん人形を抱く。
今日は最高だった。
だから明日は、もっと素敵な佳織さんに会える。
「あなたは、今夜も僕の夢を見ます。僕に抱かれる夢。自分から奉仕して、自分から上に乗って腰を振る夢を。あなたは僕に甘くディープなキスをして、僕の全身にキスの雨を降らせて、そしてチンポをねっとりと舐める。旦那よりも大きく固くてかっこいいチンポを喜んで舐める。そして僕の上で足を開いてオマンコを広げ、チンポを飲み込んでお尻を振る。気持ちいい。すごく気持ちいい。僕に奉仕できて嬉しい。そんなセックスにあなたは夢中になっている」
彼女の可愛い耳たぶに、ぺろりと舌を這わせながらささやく。
また勃起してしまうけど、せっかく彼女に手でしてもらった余韻を消すのはもったいないので今夜は挿入しない。
思い出しながら寝たい。
「夢の中で、あなたは僕のことが自分の赤ちゃんみたいに可愛い。キスしてあげたい。おっぱいを吸わせてあげたい。おちんちんが気持ちいいって言わせたい。あなたの体を使えば簡単です。僕をきっと喜ばせることが出来る。だから、たっぷり愛してあげましょう」
パジャマのボタンを外して胸に手を入れる。
佳織さんの夢の中でも逢瀬を続ける。
僕もきっと、彼女と同じ夢を見るだろう。
<続く>
〇〇よりも大きいというのはNTRものの常道かつ王道なわけでぅが
MCものなら小さいのに認識いじってこれが最高と認識させるのとかもみたいでぅ(自分で書け)
あとはこれ以外が入ると気持ち悪くなったりとか?(だから自分でry)
小田島とキスしたという情報についてはほぼスルーなのに、佳織さんをおかずにするという発言に関しては催眠術をかけてまで記憶をいじるとかw
佳織さんに関しては沸点が限りなく低い男。それが貴司。
>みゃふさん
小田島の扱い、いくらエグくてもいいよな…という気持ちで書いてます。
たしかに催眠術を使えばち●の大きさなんてどうでもいいんですよね。そういうとこの勘が悪くなってるな…というかみゃふさんが書け…