第5話
「それじゃあみんなで一度、ゲームってどんなものか、体験してもらおうかな。そうだな、2つのチームを作って、対抗戦でもやってみようか。」
可児田樹が嬉々として、ホワイトボードに水性ペンでチーム分けと課題を書いていく。キュッキュッと音がする他、生徒会役員たちは直立不動で全裸のまま、無言になっていた。沙耶や栞が何を考えているのか、様子を探ろうとして陸が視線を動かすのだが、視界に親友の裸が映りこむと、赤面してしまう。目を合わせることすら、すべきでないと感じた。樹の催眠術などに乗じて、女友達の裸を見るようなことはすべきではない。陸は自分たちが男女交互に並ばされていることを恨んだ。しかし、自分の股間は素直な反応を見せてしまっている。これも、他のメンバーと顔を合わせられない理由でもあった。
「7人だから、人数は合わないけれど、3人のチームの方には、必要に応じて僕がサポートに入ろうかな? ・・・とりあえずこんな感じ。沙耶さんチームは女子Aが栞さん、女子Bが沙耶さん。男子Aが湯川君で、男子Bが佐倉君ね。」
陸は駿斗、澪、優奈、そして樹で構成される相手チームと対戦することになるわけだ。
「澪さんチームは、女子Aが澪さん、女子Bが優奈ちゃん、男子A、Bとも駿斗君ね。運動神経抜群だし・・・。でも必要があれば、僕もサポートします。」
樹の考えを必死で陸は推し量る。確かにこのチーム分けだと、体力勝負なら駿斗、澪のいる、相手チームが、頭脳勝負なら栞、沙耶のいる自分たちのチームが有利だと思われた。問題は、どんな課題に挑まされるかだ。
「課題は、ほら、この通り。
『今のチームメンバーのことをお互いにもっと良く知るために、以下の数式の答えを求めなさい。先に正解を答えたチームの勝ちです。
(女子Aの体にあるホクロの数 + 女子Bが体を男子に胸を弄られて両乳首が立つまでの秒数 - 男子Aがセックスをした時の挿入から射精までの秒数) × 女子Bの肛門のシワの数 =
負けたチームは、別途、可児田樹が指示する罰ゲームを実行』
みんな、『気をつけ』の姿勢を崩して、ゲームに『真剣参加』しよう。それじゃあ、始めっ。」
床に半分打ちつけられた釘のように、ピンッと直立不動の姿勢を維持していた7人の生徒会メンバーが、体の緊張を一気に解す。お互いに体を隠しながら、視線で相談をしていた。
全員で逃げ出して助けを呼ぶ。樹を押さえ込んで懲らしめる。女子に先に服を着させて、男子がその壁になる。色々な建設的な選択があるはずだった。それなのに、7人の胸のうちに、掻き立てられる様な焦燥感がムクムク浮かんできて、大きくなりつつある。ゲームは始められているのだ。負けたくない・・・。全員から、迷いと苦渋の表情が読み取れた。
「BGMでもかけてみよっかな?」
樹が呑気な声を出しながら、リモコンを操作する。型落ちした大型のCDラジカセから、「天国と地獄」というクラシック曲が流れ始めた。中等部の体育会で使われたCDだろうか? 曲に煽られるて、いっそうの焦燥感が増す。沙耶と陸と栞が、赤い顔のまま、首から上だけをお見合いしている間に、澪と駿斗と優奈の3人は、裸も気にせずに円陣を組んでいた。
「ど・・、どうする? 俺たちも、やらなきゃ行けないのか?」
「他に道があると思う? 例えば逃げ道。」
赤い顔をしながらも冷静な栞が、両腕を胸の前で交差させたまま、顎で示す。陸の視線が壁際に向かうと、不思議なことが起きていた。窓と扉があるはずの、生徒会室北側。一面が完全な白い壁になっていた。この部屋からは出入り口が消滅してしまっている。壁の重厚なリアリティに、陸は近づいて確かめてみる気にもならなかった。
「みんな、恥ずかしいし、嫌だと思うけれど、・・・今は、ゲームを頑張ることしか、ないと思う。樹君に変な逆らい方をしたら、かえって危険だと思う。・・・・私は、みんなを信頼してるから、大丈夫だよ。」
沙耶が、意を決したように告げると、自分の震える両手をおずおずと下におろしていく。隠されていた胸のプクッとした膨らみが、倫太郎と陸に晒された。リーダーの沙耶が、死ぬほど恥ずかしい思いを押し殺して、みんなを先導するようにゲームに参加する意志を固めた。それを見て、倫太郎も陸も生唾を飲み込みながら、心を決めてチームで向き合った。栞も両手を下していくのだが、心なしか、倫太郎の立っている方には背中を向けていた。
「え・・えっと、女子Aは・・。」
「・・・・私・・・。」
栞がポツリと答えて、手を小さく上げる。
「・・・じゃ・・・、ゴメンね、栞ちゃん。その・・・、床に寝そべろっか? ・・・効率的なのは、みんなで同時に、栞ちゃんの体の部分を分担して数えていくことなんだけど、・・・普段水着とかから見えないようなところは、・・・私が数えようと思うの。」
沙耶が困惑しながら提案していくが、陸と倫太郎は黙っている。男子が口を出すには、あまりにも敏感な問題だと思われた。倫太郎が隣のチームをチラ見している。既に動き出しで先行している澪チームは、澪が床に堂々と寝そべって、エアロビクスの講師のように、右足をピンっと上に上げていた。頭から湯気が上がるほど顔を赤くしながら、澪の体に指先を触れて数を数えていく駿斗。その駿斗に裸のまましがみついて、両手で駿斗を目隠ししたり、目隠しを解いたりしている優奈。優奈がどれだけ有効に手伝えているかは疑問だが、このチームは思い切りが良い。ホクロも半分ほど数え終えているようだった。
「おい、あっちの体力自慢チーム、ずいぶん進んでるぞ。もうホクロは数え終わりそうな雰囲気。」
「私たちも・・・さっさとやろうっ。ほら、倫太郎も陸も、男でしょっ。早くしてよっ。」
栞がため息を一つついた後で、床にゴロンと寝そべる。陸と倫太郎は両手を合わせて、一言「スマン」と告げると、指差し確認をしながら、栞の体を、ホクロを探して調べ始める。脇腹やお尻、股間の辺りは沙耶が独占的に調べたが、時折男子の指先が栞の体に触れてしまうと、栞は「ヒャッ」と声を出して体を固くする。そのたびに、お尻や胸が揺れた。
禁じられた実験を進めるグループのように、ヒソヒソとホクロチェックを行っていく沙耶チームと比べて、澪チームは3人でも騒がしい。
「おっ。おい。これってホクロに入るのか?」
「うー、どっちかな? ・・・これはまだ、ホクロじゃないと思う。澪ちゃん、夏は日焼けもするから、これは、まだ、ちっちゃいシミ。」
「でも、周りの皮膚の色と比べて、どうだ。」
「周りの皮膚って・・・、小峰君! あんまり見ちゃ駄目っ」
右足の内腿あたりにある小さな点をホクロと取るべきかどうすべきかで、駿斗と優奈が揉めている。足を開かれて、2人の友人に顔を近づけられている澪が、イライラした声を出す。
「お前ら、イチャツイテるんじゃねえっ。早く決めて、次の場所行けよっ。」
「おっ、おう・・・。うあっく、ヤバイ。」
「きゃっ、小峰君。鼻血・・・。可児田君っ! あの、鼻血が出ちゃった男子がいます。ゲームは中止出来ますか?」
「駄目です。」
「どうしよう・・・。ハンカチ持って来るね。」
「優奈っ。エロ駿斗は放っておいて、早く数え続けろっ。」
澪が足を大股開きにしながら、叱咤する。小峰と優奈は裸のまま顔を見合わせる。お互いに呆けたような顔をしていた。
「スマンっ。芹沢。鼻血の件で慌ててるうちに、今まで何個数えたか、忘れた。」
「私も・・・、小峰君が澪ちゃんのエッチなところを見ないように気をつけてたから、小峰君・・・けっきょく鼻血だしちゃったし・・・。」
「もうっ・・・。バカども2人、早く数え直してよっ」
先行していた澪チームが振り出しに戻る。1名流血があることを考えると、数の面でも大きな不利。その間に、沙耶チームはぎこちなくも冷静に、栞の体中を隈なく調べていた。
「これ・・・、さっき数えたホクロなのか、新しいものなのか、途中でわからなくなるかも・・・。マーカーでもつけとく?」
「余計なこと、言ってなくていいから。」
「湯川君っ。栞ちゃん、恥ずかしいのを我慢して協力してくれてるんだから、早く終らせましょ。」
「栞の肌、真っ白だからホクロ数えやすいよね。」
「だから、無駄口、叩かないで、さっさと数えきってよ。」
小声ではあるが、倫太郎や陸たちもボソボソと無駄口を叩いては栞に叱られ、沙耶にたしなめられる。だが陸たちの無駄口にも、事情はある。無言で美少女の裸を検分していると、おかしな空気になりそうなのだ。それが恐くて、実は必死で無駄口を叩いている。あとから冗談で済むようなことにしておかないと、ゲーム中に大切なものを壊してしまいそうで恐いのだ。
「澪ちゃん、ホクロ12個! ・・・次に行きましょうっ・・・次は・・・あ・・・、やだ・・・。」
一度振り出しに戻ったはずの澪チームが、凄い勢いで盛り返す。威勢よく叫んだ優奈が、次に算出すべき数字に気がついて、声を萎ませる。自分の胸を、男子に弄らせて、乳首が立つまでの秒数を計らなければならない。そのことを自覚した優奈が、顔からすっかり血の気を失ってしまった。お嬢様は今にも失神しそうな様子。
「ごめん、澪ちゃん・・・。私、ちょっと貧血気味で、気持ち悪いよう~。」
「もうっ、鼻血の次は、貧血かよっ! ・・・さっさとゲーム終らせたいなら、覚悟決めて大人しくしろよっ。」
澪が優奈を後ろから羽交い絞めにする。腕を優奈の脇から通し、小柄な優奈を押さえこんでがっちりガード。澪の大きな胸は優奈の背中にギュッと押し付けられた。
「やだやだ~。こんなの、お母様に怒られるよ~。澪ちゃん、許して・・・。小峰君、あっち向いてて~。」
「男子の手が足りなかったら、手伝おうか・・・」
「てめえは引っ込んでろ。そこで大人しく審判しとけよっ。」
ニヤニヤしながら近づこうとした樹に、澪が歯切れの良い啖呵を切る。小峰駿斗は羽交い絞めになった裸の優奈の前で、両手を腰に、天を仰いで両目を閉じて悩んでいた。筋肉質な体でギリシャ彫刻のようなポーズを取っているが、顎から胸元まで鼻血が垂れている。
「小峰っ。男だったらお前も覚悟決めろっ。優奈だって、可児田に手伝われるより、お前に胸を触られたいと思ってるよ。そうだろ?」
「あ~ん。こんなところで・・・こんなふうには・・・。え~ん。澪ちゃん許して~。」
ギャーギャー泣き喚く優奈を、澪が力づくで押さえつける。小峰が両目をきつく閉じて、両手を前に出す。パーにした両手の指の関節を僅かに曲げて、ソフトボールを握るような仕種のまま静止した。澪が頷く。暴れる優奈を後ろから抱き上げて、2歩、3歩と前に出る。清橋優奈のプリンとした両胸が、自ら小峰駿斗の両手に押し付けられた。優奈が瞬間にハッと息を飲んで泣き止む。両目をしばたかせながら、はにかんだ。
「そら、1、2、3、4、・・・・あれ? ・・・審判。もう優奈の乳首、立ってないか?」
「ほいほい。審議に入ります。」
澪と樹の妙にコンビネーションの良い連携を、恨めしそうに優奈が見る。駿斗は1ミリも動かないという覚悟で両手のひらに優奈の胸を押しつけられたままでいた。その腕を下させて、樹が優奈の乳首をチェックする。
「うーん、もうちょっとだけ、固さが足りないかな? ・・・でも、・・・ま、こんなもんかな・・・。」
駿斗が両手を1ミリたりとも動かすことなく、遠慮を重ねて触れた優奈のオッパイ。そのオッパイを、澪チーム全員が唖然とするほど、樹が無遠慮に掴んでギュッと握る。人差し指と親指の間からムニュッとハミ出た乳輪と乳首。それを我が物顔で咥えて見せた樹。
「チュパッ・・・。よし、おまけだっ。これで良し。優奈ちゃんの乳首、ちゃんと立ってます! ・・4秒半? 早かったね。」
優奈が口をパクパクさせて、澪と駿斗が目を丸くしている前で、樹が優奈の乳首を甘噛みする。舌で転がしながらコメントをして、最後はお嬢様の乳首が勃起していることを宣言した。澪も駿斗も抗議したかったが、ゲーム途中での審判への抗議はご法度だという思いが高まって、思わず口をつぐんでしまう。
「わ・・・・私も、あれ・・・やるんだよ・・ね・・・・。」
隣のチームの悲劇を見て、沙耶が絶句している。栞の体のホクロを数える作業も中断してしまっていた。
「沙耶・・・。あの、早くしてくれるかな?」
顔を赤くして、脇の下を倫太郎に調べられている栞が、苦渋の声を出す。沙耶は我にかえって謝るが、手は進まない。アンダーヘアーを掻き分けてホクロを探す沙耶の作業はすっかり滞りがちになってしまった。青ざめた沙耶の素肌には、鳥肌が立っている。
沙耶チームがまだホクロの数で手間取っている間に、澪チームは3番目の数字を確かめようとしていた。男子Aは小峰駿斗。彼のセックス持続時間の計測・・・。このチームも、難題を突きつけられて、思わず立ち止まってしまっていた。
「どうする? 優奈がこれ以上は無理だったら、私が駿斗の相手をするしかないんだよね?」
髪をかきあげながら、困った顔で駿斗を見る澪。庶務の小峰駿斗は、明らかに澪の勢いに飲まれていた。
「お・・・おう・・・。でも、俺、初めてだぞ? 自慢じゃないが、上手くいく自信すらない。大体、お前はいいのか?」
「あたしは別に、初めてって訳じゃないし、・・・このままギブアップしたら、罰ゲームだよ? 優奈の頑張りも無駄になっちゃう。」
きっぱりと割り切って足を進めるあたりは、後輩女子からも絶大的な人気を誇る、アネゴらしい澪だった。豊満な胸とクビレた腰まわり、そして迫力あるヒップ。抜群のプロポーションを持った芹沢澪が、駿斗に近づこうとしたその時。誰かが下から、澪の手を引っ張った。
「・・・優奈? アンタ、いけんの? みんな見てる前でだよ?」
駿斗もドギマギしながら澪と優奈のやり取りを見守る。優奈は起き上がって、まるでむくれるように下唇を突き出しながら、澪の前に立ち塞がった。
「・・・どうしても、小峰君が、今、初めてエッチしなきゃいけないんなら、・・・私、頑張る。お母様も、女は度胸だって言ってたもん。」
泣きそうな顔のまま小峰の胸に飛び込んでくる優奈。どうやら駿斗には、選択権や拒否権はないようだった。
「き・・・清橋、大丈夫か?」
「頑張るっ・・・。小峰君は私とじゃ嫌?」
学園のマスコット的存在として愛される、お嬢様。生徒会書記の清橋優奈が涙を溜めた目を上目遣いにして駿斗を覗き込む。駿斗もここで逃げるわけにはいかなかった。
「・・・じゃ・・、よろしくお願いします。」
まるで武道の試合前のように、正座した駿斗が手を太腿の上で拳にして、頭を下げる。優奈も神妙な顔つきで両手を床について、深々とお辞儀した。澪が困ったように咳払いをする。
「こほんっ。あの、2人ともあんまり固くなると上手くいかないから、リラックスしろよな。駿斗は優しく、優奈に触れること。女の子はか弱いんだから・・・。」
「お、おう。」
「や、優しくお願いします。」
また小さくお辞儀をしあう、優奈と駿斗。なかなか本番までスムーズには進まなさそうな様子であった。
「まず、その、気分を盛り上げていくために、キスとかしていったら? ・・・いきなり入れようとしても、優奈の方がちゃんと受け入れられるようになってないと、痛いだけだし。」
「あ、あの、澪ちゃん・・・・。大丈夫・・・。もう、私・・・。大丈夫になってるから・・・。」
鎖骨から頭まで真っ赤になりながら、優奈が澪に伝える。心配した澪が、遠慮なく優奈の股間にスッと手を入れて、意外な顔になった。
「あ、・・・ほんとだ。優奈、もう大丈夫みたい。駿斗も・・・キャッ・・・。も、もう、大丈夫みたいだな。・・・じゃ、コホン。あとは若い2人で・・・。」
同い年の澪が、お見合いをセットした叔母さんのような口調で、咳払いしながら数歩下がる。正座したままの駿斗の太腿の間から顔を出した、立派なイチモツは澪も慄かせたようだ。初心な優奈も駿斗も、全裸でお互いの前に向き合っているだけで、挿入に十分なほどお互いの股間が潤っていた。澪が2人から背を向ける。駿斗が優奈にゆっくりと手を伸ばす。奥襟を取るような仕種で抱きついて覆いかぶさった。
「キャーッ・・・。優しくしてっ!」
悲鳴を上げる優奈の上に駿斗の分厚い胸板がかぶさって、声がくぐもる。押し倒されながらも優奈が駿斗の背中に手を回す。しばらくすると、駿斗の腰にまで両足を回していた。少し体勢を微調整しながら、ぎこちなく、力漲る動きで駿斗の腰がグラインドを始める。優奈の、泣き声のような呼吸音が部屋に響き始めた。
「何回数え直しても、23個だね。・・・確定だと思うよ。」
言いにくいことだったけれど、陸が沙耶に伝える。沙耶はすっかり顔色を失って、震えながら頷いた。何か思いつめたように考え込んでいる表情。ギブアップした方がいいのか。栞の反応を見てみる。鶴見栞は、何か思い当たる節があるような表情で、沙耶の様子を伺っていた。
栞と沙耶の、空気を読みあうようなこの雰囲気。何か今、2人だけが感づいている、回答でもあるのだろうか?
陸が倫太郎を見てみると、湯川倫太郎はポカンと口を開けて、隣のチームで繰り広げられている激しい性行為を見物していた。倫太郎は何もわかっていないのか? この後、こちらのチームの「女子B」、つまり生徒会長の高倉沙耶が、倫太郎か陸か、もしくはその両方に、胸を弄られなければならないというのだ。しかも、相手チームと同じ展開になるとしたら、審判の可児田樹が、後からノコノコやってきて、沙耶の乳首の勃起具合を口に含んで吟味する。それを沙耶が、あの高倉沙耶が、されるがままに、身を任せないといけないというのだ。
何と声をかけていいのかもわからずに、佐倉陸は無力に立ち尽くしていた。倫太郎は野次馬のように、駿斗と優奈のぎこちなくも情熱的な睦み合いに見入っている。その2人の様子を見た沙耶が、意を固めたように顔を上げて呼びかけた。
「みんな。私に考えがあるの・・・。多分、これが一番、私たちの失うものが少ない方法だと思う。清潔なことじゃないから、みんな嫌かもしれないけれど、・・・手伝ってくれるかな?」
沙耶の問いかけに、陸と倫太郎は一も二もなく頷く。陸は、頷いた瞬間に自分の視界に沙耶のオッパイと股間のアンダーヘアーが入ってしまい、慌てて目を反らした。
「沙耶ちゃんの考えに従うよ。今、辛いのは女子たちだと思うし。何でも言ってくれればいい。」
陸が答えると、沙耶が顔を寄せてくる。全裸の4人がヒソヒソと作戦を話した。
「はい、1分経過。・・・駿斗、プライドとかこだわらずに、イケる時はさっさとイケよっ。」
「わかってる! ・・・・悪いが、あれこれ、喋りかけないでくれ。」
「小峰君・・・・・っ・・・・もっと強く・・・、抱きしめてっ・・・・」
澪チームがエキサイトしている。汗と鼻血を垂らしながら、懸命に腰を振る駿斗。優奈も、華奢な体で必死にそのピストン運動を受け止めていた。もう少しで3番目の数字が計測し終わるのでは・・・と思われた頃、隣の沙耶チームから鶴見栞が手を上げて審判を呼ぶ。
「可児田っ・・・。私たちのチーム。正解が出たと思うっ!」
「・・・えっ・・・もう?」
樹も意外な表情を隠せない。沙耶チームは、1番目の数字である「女子Aの体のホクロの数」を数え終わったばかりだったはず。これから「女子B」の乳首勃起判定だと、楽しみにしていた樹は狐に摘まれたような顔になっていた。澪も、優奈も、目を丸くして、栞の言葉の真意を探る。駿斗にいたっては、あっけに取られて腰の動きを止めた瞬間に、熱い精を優奈の内部に放出してしまった。優奈が肩をすくめてはにかむ。
「どういうことかな? まだ、君たちのチームは、女子Bの乳首勃起も、男子Aの持続力チェックも・・・あ、・・・もしかして?」
樹が近づいて、様子を察し始める。沙耶チームの「女子B」、高倉沙耶は髪の毛が顔を覆って床にかぶさるほどにオデコを床に押し付け、四つん這いになっていた。高々と突き上げられたお尻。そこに栞と倫太郎、陸の両手が伸ばされていた。両手を沙耶のお尻に押し付けたまま、栞が顔を上げて回答する。
「『(a + b - c) × d』の解は、もしdがゼロだった場合、必ずゼロになる。bの数もcの数を調べるまでもなく、dさえゼロなら正解はゼロ。どうですか? 審判の可児田さん。」
栞の回答は滑らかで無駄が無い。いつもの秀才の答え方だった。
「で、でも最後の数字って、『女子Bの肛門のシワの数』でしょ? ・・・ゼロってありえなくない?」
澪が不思議そうな声を上げる。可児田樹はその疑問に対しては答える素振りもなかった。
「澪、ちゃんと課題の最初に『今のチームメンバーのこと』って書いてあるでしょ? いつもそうじゃなくっても、今、この瞬間。お尻の穴が、シワ1つないくらい広がって、伸びていたら、ゼロで正しいの。これ、可児田は最初から正解の一つとして想定していたんじゃない?」
栞は自信満々。樹は栞にも答えない。沙耶チームの背後まで行くと、引き締まった生徒会長のお尻は限界まで開かれて、男子たちの指で周囲から四方八方に引っ張られている。そして大事なお尻の穴には、栞が自分の指を3本も突っ込んで内側から開いていた。沙耶は突き出したお尻を震わせながら、耐え忍んでいる。
「・・・・正解。・・・本当に自分からこれを申し出るとは思わなかったな。・・・このゲームは沙耶ちゃんチームの勝ちです。」
「よしっ。」
陸は思わず小さなガッツポーズを取る。高倉沙耶の恥かしさを我慢した献身が、可児田樹の予想を上回った。そのことが嬉しく、誇らしかった。慎重に指を抜いた栞に、倫太郎がハイタッチを求めようとする。・・・が、沙耶にも遠慮して、2人はハイタッチ直前で手を止めて、おずおずとその手を自分の背中に回した。沙耶は少しずつお尻を下げながらも、まだ四つん這いで頭を床につけている。痛みと不快感、そして火が出るような恥かしさと戦っている。今、この瞬間は、誰とも目を合わせたくないらしかった。
「・・・何ていうか・・・、スマン。」
イチモツを抜き取りながら、小峰駿斗が謝る。自分と優奈の、人前での結合が無用だったとわかると、さっきまでいきり立っていたモノも心なしかシュンとうなだれているようだった。2人の股間には血が混じっている。駿斗には果たしてこれが、自分の鼻血が垂れたものなのか、優奈の初めてを奪ってしまった証拠なのかは、判断出来なかった。
「俺、ちゃんと責任を取るつもりだ。清橋さえ良ければ・・・その、俺と」
「小峰君と・・・・?」
目を潤ませて、優奈が体を起こす。小ぶりなオッパイがまたプルンと揺れた。
「はい、ゲームは終了! 負けた澪ちゃんチームは罰ゲームです。」
大事な話を横から切られて、珍しく優奈がふくれっ面になる。
「おい、もう十分だろっ。時間も遅いし、みんなを解放し・・・」
何か不平を述べようとした澪の前に歩み寄った樹が、右手の指先でチョンっと澪のオデコに触れた。それだけで、澪は両目を閉じて、立ったまま脱力してしまう。日本人離れしたスタイルの裸を晒したまま、芹沢澪が立ちながら眠りに落ちてしまった。その両肩を樹が掴んで、円回転させるように揺らす。
「澪さん・・・。貴方は罰ゲームでこれから、とーっても従順で献身的な、性奴隷に変身します。ご主人様は、勝ったチームの男子。そう、佐倉陸君と、湯川倫太郎君です。貴方は自分が2人のご主人様を、性奴隷として十分に満足させられたと感じたら、この暗示から解放されます。その時には、奴隷だった時の記憶も無くしていますよ。目が覚めると必ず僕の言う通りになる。3、2、1。はい起きてー。」
「澪ちゃん! 目を開けちゃ駄目っ!」
生徒会長の高倉沙耶が、悲鳴に近い声を投げかける。それでも、選挙管理委員長の芹沢澪は、睫の長い、大きな両目をゆっくりと開いて、沙耶の方を見てしまう。そして沙耶の両脇に、陸と倫太郎の姿をとらえた。とたんに、慎ましい笑顔を見せる。
「ご主人様。どうぞ、澪を可愛がってください。精一杯ご奉仕します。」
まだ四つん這いになっていた沙耶と向かい合うように、澪が駆け寄って、恭しく土下座する。倫太郎と陸に向かって、1回ずつ、丁寧に床に這いつくばる。優奈は姉のように慕っている澪の、一瞬での変貌ぶりを目にして、全身に鳥肌が立っていた。
「澪、目を覚ましてっ。私たちみんな、友達でしょっ。」
栞が平伏している澪の体を揺する。それでも澪はウットリとした表情で倫太郎と陸を見上げている。ようやく栞に顔を向けた澪は、母親が駄々っ子に言い聞かせるように、優しくたしなめた。
「栞。友達だったら、ちゃんと私に性奴隷の勤めを全うさせてよ。これから私は、ご主人様たちにしっかりご満足頂くの。邪魔しちゃ駄目でしょ? わかるわね?」
栞と沙耶が、助けを求めるように倫太郎と陸を見る。男子は2人とも不覚にも、裸のまま勃起してしまっていた。思春期の男子が澪ほどのダイナマイトボディの美女に全裸でかしずかれたら、無理もないことだった。
「隣の会議室が使えるよね? ゲームの勝敗がついたんだから、それなりのご褒美が無いといけないからね。まずは佐倉君と芹沢さんが隣の部屋で楽しんで来たら?」
可児田樹がヘラヘラしながらティッシュ箱を手渡す。当然のように受け取りながら、澪が陸の手を引いて、隣の会議室へと足を進める。仕方なく連れていかれようとしている陸に、背後から生徒会長の声がかけられた。
「陸君、・・・信じてるから。」
四つん這いの体勢で頭を上げてこちらを見ている沙耶。振り返った陸は、小さく頷いてみせた。髪を乱して、床に這いつくばっていても、高倉沙耶は美しい。親友、澪を思う沙耶の表情には、普段の高潔な学園リーダーの強さが戻っていた。ついさっき、友人たちにお尻の穴を引っ張られ、シワが無くなるまで広げられていたのが嘘のよう。裸で床に転がっていても、沙耶は沙耶。真面目で清らかな存在だった。
澪がなんのためらいも見せずに、生徒会室の扉を開く。全裸のままで、同じく裸の陸の手を引いて、廊下に出る。隣の会議室に入ると、扉を両手で閉め、陸の方へと振り返って笑顔でひざまずいた。
「ご主人様、なんなりとお申しつけください。」
いつも勝気で、男勝りな澪。今は随分と落ち着いて、「大人のオンナ」ぶってはいるが、中等部にいた頃の彼女は、よく男子生徒たちに突っかかって、騒ぎを起こしていた。お嬢様学校に集う、優奈のようなか弱い女子生徒たちの、守護者のような役割を自認していたのかもしれない。優等生ぞろいの生徒会メンバーの中でも澪は・・・、澪と倫太郎は、少しだけ、ヤンチャっぽいオーラを持つ。そんな彼女がいるからこそ、生徒会は多様な学生たちから求心力を保っていたのだろう。
そんな澪が。「秀泉学園一のイイオンナ」、「アネゴ」と慕われる芹沢澪が、布一つ体を隠すものがない、生まれたままの姿で、陸と2人っきりになっている。佐倉陸は、男としての強烈なまでの動物的欲求と、親友同士の信頼関係との狭間で、翻弄されていた。
「いや、澪ちゃんは友達だから、男女の関係とか求めてないんだ。・・・その、何か奉仕しないと気が済まないなら・・・そうだな、肩でも揉んでくれる? 僕は、それで満足なんだ。」
陸が満足するような奉仕が出来たと思わなければ、きっと澪にかけられた樹の暗示は解けないのだろう。そう察した陸が、せめて性的なニュアンスの少ない奉仕を求めてみる。澪は笑顔のまま素直に頷くと、陸の後ろに回って肩に手を伸ばす。肩甲骨に張った筋を親指の腹でグッ、グッ、と押してくれる。握力も適度にある。いかにもスポーツマッサージなど、経験か知識があるような手つきだった。
「あ・・・、なかなか、上手いね。ありがと、澪ちゃん。とっても満足だよ。これで、終わりで・・。」
言いかけた陸の声が震えた。澪が耳元で息を吹きかけるように囁く。耳たぶから首筋にかけて、ゾワゾワと快感が走った。
「澪ちゃんなんて、よそよそしい呼び方はお止めください。澪って呼んでください。澪はご主人様の奴隷なんですから。」
軽いウェーブのかかった髪が、陸の首筋をくすぐるように撫でる。肩から脇にかけて、澪の両腕から両肘までがピッタリとくっつけられる感触があると、そのあとで背中にムニュッと、2つの固まりが押しつけられた。弾力とボリュームのある、柔らかい女性らしさの固まり。今、陸の背中と澪のオッパイが、素肌で押しつけられてた。
「ご主人様に、遠慮されてしまうと・・・、性奴隷の澪は、とっても悲しいんです。ほら、こんなに胸がドキドキしてるのに・・・。お願いです。もっと自由に、お好きなことを命令してください。」
美女に胸を押しつけられて、耳元で囁かれる。いつもの澪の声なのに、か細く媚びる、女の声になっている。陸の決意があっけなく揺らぐ。澪が胸を押しつけたまま、円を描くように体をこすりつけてくると、背中に彼女の胸の突起が陸の背中の上でクネるのを感じた。振り返る。上目遣いで微笑む性奴隷。陸は彼女と向き合う体勢になって、少しずつ震える腕を伸ばした。
(自分は従順な性奴隷だ、って信じきっている澪ちゃんを、正気に戻す。それには、奉仕をやりきったって思わせるしかないんだ。彼女を少しでも傷つけずに、損なわずに、元に戻してあげるためには、ちょっとだけ・・・。)
自分に言い聞かせながら、選挙管理委員長のオッパイに手で触れてみる。嬉しそうに、誇らしそうに、背中を反らせて胸を突き出してくる澪。右手だけのつもりが、いつの間にか両手で鷲掴みにしていた。
「澪ちゃん・・・、その・・・澪って、何カップ?」
隣の生徒会室には聞こえないように気をつけながら、陸が必要以上に小声できく。
「Dカップが、最近ちょっとずつキツくなってきました。小学校の5年生くらいから急に大きくなって。運動するには不便で、いつも困ってました。・・・でも・・・。」
澪が素直に何でも答える。いつもの少し斜に構えた彼女の面影もない。それでも彫りの深い顔立ち、ハーフのような美貌はまぎれもなく澪のものだ。
「・・でも、今日ご主人様に興味を持ってもらえて、良かったです。おっきなオッパイつけて生きてきて、本当に嬉しいです。」
小声で会話をしていると、より親密な空気が増すような気がする。陸は自分が抑えきれなくなるような気がして、この高まりを早くリリースしたくなった。このまま我慢し続けていたら、なし崩し的にさっきの駿斗と優奈ちゃんのように最後まで行ってしまう。
「・・・じゃ、澪。その大きくて良かったオッパイで、僕のおチン○ンを挟んで、奉仕してくれる?」
「ンフンッ」
澪が鼻から笑いを吹き出すように息を抜く。
「もう、ご主人様。澪は奴隷なんだから、きいてばっかりいないで、ちゃんと命令してください。」
陸もため息を漏らす。
「しょうがない・・・。澪、その自慢のオッパイで、パイずりをしろ。」
「かしこまりました、ご主人様っ。」
嬉しそうに膝を揃えた芹沢澪が、両膝を床について跪く。俯きながら呟くように一言、「失礼します」と言って、いきりたった陸のアソコを豊満なオッパイで包み上げるように挟み込んだ。さっきの「失礼します」は、陸に言ったのだろうか、それとも陸のアソコに対して言ったのだろうか?
弾力ある胸が形を変えながら陸のモノを包み、しごきあげる。オッパイの中には脂肪分と乳腺が詰まっていると聞いたことがあるが、タプンタプンと中が動きながら素肌が触れ合う感触は、他で代えようのない、独特の心地良さだと感じられた。陸は、今初めて女性と肌を合わせている訳ではない。それでもこれほどの巨乳の女友達から、日も暮れた校舎で受ける奉仕は、想像もしたことがないものだった。変形しながら陸のモノを愛撫する、オッパイを凝視する。ふと目線を上げると、陸を見上げる親友、澪の整った笑顔。目が合った瞬間に陸は射精してしまっていた。勢いが良すぎて、白い精が澪の高い鼻と唇の間まで飛び散る。
「キャッ・・・。ご主人様。いっぱい出ましたね。・・・ご満足頂けたみたいで澪は嬉しいです。」
悪戯っぽく笑った澪が、顔についた精液を、細長い指でぬぐって口に入れる。さきほど手渡されたティッシュ箱から紙を2枚抜き取って、陸のモノと自分の体を拭っていく。
「うん、とっても満足したよ。」
陸が答えると、澪のいじらしく媚びた視線に変化が現れた。
「・・・あれ? ・・・陸・・・。・・ここって、会議室・・・だよね? ・・・・あ、・・・私、罰ゲーム・・・。これから?」
髪を? きあげながら、キョロキョロとあたりを見回す澪。一応申し訳程度に、自分のオッパイを左腕で隠す。ティッシュを持った右手で股間も押さえる素振りをみせた。
「いや、・・・もう・・・終わったよ。・・・可児田が何を考えてるのかはわからないけど、澪ちゃん本人には記憶を残させないみたい。でも最後までいってたりしないから、安心して。・・・その手前で、ごまかした。」
澪は陸の裸の体を上から下まで見る。ちょっと疑うような視線もあったけれど、振り返って陸に背中を向けると、自分の体をチェック。最後にティッシュを顔に近づけて、高い鼻でクンクンと匂いを嗅いだあとで、一人、微妙な表情を作った。
「ふーん。。・・・陸を信じる。サンキュ。」
オッパイを触らせてもらい、パイ擦りまでされて、御礼を言われてしまった佐倉陸は、少し面はゆい思いになる。それでも、生徒会メンバーたちの信頼はギリギリ裏切らずに済んだのではないかと、胸をなでおろした。
裸の高校生2人が、足早に廊下を歩いて生徒会室に戻る。本校舎から渡り廊下で繋がった、普段生徒会メンバー以外にはこのあたりへ来ることがない場所だとわかっていても、放課後の学校を全裸で出歩くのは奇妙な緊張感と背徳感だった。
「終わったよ。・・・澪も無事・・・だよ・・・ね?」
先に生徒会室に入った陸が振り返ると、澪の表情はまた、男に媚びる従順で献身的な奴隷の顔つきに戻っていた。
「ご主人様。お待たせして大変申し訳ございませんっ。澪はいっそう頑張って勤めますので、お許しください。」
倫太郎の足もとまで駆け寄って土下座すると、頭を下げて、生徒会の同僚の足の甲に唇をつける。
「澪っ、やめてってば。」
栞が声をかけるが、澪は自信満々の笑顔で制する。倫太郎に体を密着させるようにして起き上がると、そっと手を取って、生徒会室から連れ去ろうとする。
「倫太郎。俺はギリギリ踏みとどまったと思う。お前も仲間を裏切るなよ。」
「・・・うーん、ゴメン。・・・自信ない。」
眉をハの字に曲げて、湯川倫太郎がみんなに謝った。そのまま手を引かれて扉の向こうに姿を消す。
「おいっ、・・・倫太郎・・。」
陸が腹を立てて呼び止めようとするが、沙耶が陸の手首を掴む。
「大丈夫。湯川君を信じましょう。陸君だって大丈夫だったし。」
沙耶が微笑んでいる。掴まれている手を見ようと視線を落として、思わず沙耶の胸の膨らみやヘソ、そしてその下を見てしまう。再び固くなる陸の体と股間。沙耶は慌てて陸から手を離し、自分の体を隠した。
「ゴメンね。・・・私が可児田君のこと、提案したばっかりに、こんなことになっちゃって。」
身をよじるようにして体を隠しながら、なおも謝る沙耶。陸は抱きしめたくなる衝動と戦った。
「大丈夫。倫太郎だって、沙耶ちゃんの言う通り、仲間を裏切らないよ。」
「アンッ・・・アンッ・・・・ハアンッ・・・ご主人様、すごーい。」
沙耶と陸の会話を遮るように、隣の部屋から、澪のあられもない喘ぎ声が漏れてくる。栞が溜息をついた。
「想像の上を行くのが倫太郎なんだよね・・・。仲間云々より、男としての自分を裏切れなかったんじゃないの?」
栞は、ガムを捨てるように冷徹に言い放つ。陸が栞を見ると、裸の秀才少女は、しゃがみこんで体を隠しながら、親戚の残念な叔父が酔って大醜態を晒しているのを見せられている時のような、死んだ顔をしていた。
「ご主人様~ん、あ~ん、あ~ん、ナカで・・・、ナカにお願いしますぅ~。」
澪にあるまじき、媚び媚びの嬌声が響き渡る。
(せめて外に出せっ)
陸が願う。芹沢澪のゴージャスな極上ボディ。あっさりと倫太郎に味わいつくされていることに対する嫉妬が1%も無いと言えば嘘になるかもしれない。しかし陸はそれ以上に、澪と、信頼を裏切られた沙耶のことを気遣っているつもりでいた。
しばらくの静寂。生徒会室の中では、みんな一言も話さなかった。隅で体操座りをしている駿斗と優奈は手を握ったまま、体を寄せ合っている。
「ぃやー、みんな、ほんっとゴメン!」
扉を開けた倫太郎はこれ以上ないくらいにスッキリとした表情で帰ってくる。
「陸って澪ちゃんのあんなダイナマイトボディの誘惑に耐えきったの? 凄いよねー。本当に、俺も我慢しようと思ったんだけど、何でもしてくれるっていうでしょ? 何にも覚えてないって言うでしょ? 勝てなかったよ、誘惑に。」
ヘラヘラと生徒会室に舞い戻ってきた倫太郎を見て、生徒会長は頭を抱えてうずくまった。倫太郎の後ろから、申し訳程度に体を隠しながら、芹沢澪が戻ってくる。ティッシュで股間と舌を一生懸命拭いていた。
「私が何をしたか、教えなくて良いからね。・・・覚えてなくてホッとするよ。・・・ったく、アンタみたいな女ったらしとだけは、したくなかったのに。」
澪が毒づきながらみんなの元に戻る。樹の言った通り、2人の男子を満足させたと思った瞬間、澪はいつもの澪に戻ったようだ。・・・これで制服に身を包めば、完全に元の澪なのだが・・。
本来は駿斗に任せて起きたい場面だが、一応、陸から倫太郎へ、腹に一発。指導を入れておく。いつもは暴力反対の生徒会長も、こちらに目を合わせないままでコクリと頷いていた。栞も倫太郎をはたきに来るかと思ったが、彼女は手で、「触るのも汚らわしい」という仕草をしてみせただけだった。
「さて、澪ちゃんの罰ゲームは見事完了。あとは優奈ちゃんと小峰君だよね。2人には、ごく定番の罰ゲームにチャレンジしてもらおうかな。」
みんなの注目が集まると、慌てて繋いでいた手を離して後ろに回す2人。樹が2人を立ち上がらせると、裸のまま従順に2人は立ち上がる。すでに両目は遠くを彷徨っている様子。早くも催眠状態に落ちているような、素直な2人だった。その2人の間、後ろから手を伸ばした樹が2人の肩に手を置く。
「今から優奈ちゃんと小峰君は、隠しごとの出来ない正直な性格になって、みんなに宣言します。定番の罰ゲーム。好きな人の名前を言っちゃいましょ・・・」
「小峰駿斗君が大好きですっ!」
「・・う・・」
樹が言い終わらないうちに、優奈は大きな声で隣の男子のフルネームを答える。フライングまでして好きな人を告白してしまったことに気がついたあとで、優奈が両手を頬にあてて恥じらう。女の自分から先にこんなことを・・・。また一つ、お母様に知られたらこっぴどく叱られることが増えてしまった。
「俺も、清橋が好きだ。あと、ウェイン・シャムロックと藤岡弘と宮本武蔵が好きだ。・・・付き合うなら清橋がいい。」
小峰駿斗は一言ずつ噛みしめるように、腹の底を明かしていく。優奈は外人の名前も出てきたところで怪訝そうな顔で横の駿斗を見上げたが、最後の言葉を聞いて嬉しそうに、照れくさそうに身をクネらせた。
「あら、2人は相思相愛だったんだ。びっくり。大ニュースですね。」
樹が他のメンバーに問いかけるが、全員、微動だにしない。生徒会書記、清橋優奈の小峰駿斗への思いは、あまりにもわかりやすすぎるほど明らかだった。自分が恋心を秘めていると思っているのは、少し天然の入った優奈だけだったであろう。駿斗の不器用な反応もメンバーたちは熟知している。中等部3年の時にバレンタインデーで3段重ねのチョコケーキを手作りで準備した優奈に対して、駿斗はホワイトデーに「闘魂」と刺繍されたタオルを渡した。学園一のお嬢様が「闘魂タオル」を肩にかけて体育の授業に臨んでいる姿は、しばらく校内の話題になったものだった。
「じゃあ、2人の相思相愛ぶりがわかったところで、僕からもお祝いにゴニョゴニョゴニョ」
樹の声がくぐもって、内緒話のように駿斗と優奈の耳元に囁かれる。2人とも目を見開いて、ボンヤリとその言葉を聞いていた。
「ちょっと、何話してるの?」
栞が噛みつく。しかし樹は内緒話をやめない。駿斗も優奈も、裸のままボンヤリ立ち尽くして話に聞き入っていた。
「なんでもないよ。2人とも奥手みたいだから、ちょっと背中を押して、進展させてあげるだけだよ。」
樹がほくそ笑む。栞、沙耶、陸は樹をなおも疑うが、それでも樹がゲームの終了と、生徒会メンバー全員に服を着てもいいことを伝えると、内心ホッと安堵の息をついた。
先ほどまでの全員全裸だった時間もお互いを意識すると顔から火が出るほど恥ずかしかったが、今のように、全員が下着や服を着ようとしている瞬間も、なかなかにぎこちない。服を着ている間中、今まで裸だった自分たちのことをより強く意識させられるからだ。非日常から日常に戻ってくる。その着衣の時間を、生徒会役員たちは、全員背中合わせになってやり過ごした。
「しかし、今日の沙耶ちゃんチームの勝利は鮮やかだったなー。お尻のシワをゼロになるまでおっぴろげるんだもん。さすがは高倉会長だよね・・・。」
腕組みしながら、わざとらしい独り言を樹が聞かせる。シャツのボタンを留めている沙耶の手が止まり、顔から耳までまた赤くなる。唇を噛む。陸も、罪悪感を噛みしめながらも、沙耶のお尻と、小豆色の肛門。そして見え隠れした彼女の内部。体の内側を、少しだけ思い出してしまっていた。チラリと栞を見る。自分の体のホクロの数を数えさせるために両手両足を開いていた華奢な体。白い肌。優奈にも目をやってしまう。駿斗と付き合い始める直前に、駿斗の「持続時間」を計測するために挿入を受け入れたパステルピンクのモチ肌。駿斗に触れられて4.5秒で勃起した、可愛らしい乳首。それぞれ生徒会役員として尊敬し、友人として大切にしてきた女友達の美しい記憶の上に、今は、生々しく鮮烈な性のイメージが塗りつけられてしまっている。陸はそのことを意識せざるを得なかった。
そして芹沢澪。スカートについた埃をパンパンとはたいている彼女の、はち切れそうな体。弾む胸。色気が匂い立つような発育の良い体を、ついさっき、全部目の当たりにして、密着させた。大迫力のバストを直に触って揉みしだいた。彼女がいつか子供を産んだら育てていくために与えるべきオッパイで、陸は自分のチン○を愛撫させた。彼女を見るたびに、そのことを思い出してしまいそうな自分が腹立たしい。横の倫太郎のスッキリとした笑顔を見ると余計腹立たしい。
「じゃあもう、遅いし。そろそろ帰ろっか? 最後にみんなに、『生徒会のシエスタ』をあげるよ。」
樹がそう言った瞬間に、陸の意識がはるか彼方に遠のいていった。その後で、可児田樹が何を言ったのかも覚えていない。思い出そうという気にもならない。ただ陸と、尊敬する生徒会の仲間たちは茫然と、目をガラス玉のようにして、脳をスポンジのようにして、立ち尽くしていた。樹の言葉を自分の奥片隅まで響き渡らせる。一言一句を深く、強く刻み込む。何も考えずに空っぽで、完全に受け身でいることが、これほど気持ちがいいとは思わなかった。
「はい、目を覚ましたら家に帰ろうか。もう日も暮れちゃったし、部活の人たちももうとっくに帰っちゃったみたいだからね。」
可児田樹が両手をパチンと叩いた音で、陸の意識が霧が晴れ渡るように急速に明晰になる。自分が制服を着ていることを確かめて、みんなで頷きあって、下校する手筈になった。
高倉沙耶、湯川倫太郎、鶴見栞、芹沢澪。全員と目配せをして、これからのことを考えているということをお互いに意思疎通するのだが、言葉には出さない。樹もバス停まで、同じ道を帰ろうとしている。彼にあれこれ聞かれるのは得策ではないと思われた。
「・・・あの、俺たち、ちょっと用事を思い出したから、ちょっと別行動するよ。」
「ご・・ゴメンね。・・・沙耶ちゃん、栞ちゃん、澪ちゃん・・・。また明日。」
小峰駿斗と清橋優奈が、何かモゴモゴと口にしながら、2人で校舎へと戻ろうとする。
「お前らちゃんと避妊しろよ。・・・って、・・・そもそも、持ってんの?」
小声で澪が呟いた。
体力自慢の駿斗と、長年の片思いを募らせた優奈が、2人で姿を消して、どうなるのかは、大人な澪には容易に見通せたようだった。
「ば・・・馬鹿なこと言うな芹沢。俺はちょっと清橋と道場の控室に忘れものを取りに行くだけだ。なぁ? 清橋。」
「・・・優奈って呼んで。駿斗君。」
馬鹿ップルのようにくっつきながら、2人がいそいそと校舎へ戻っていく。小さくなっていく2人の背中を見送った澪が、しれっと呟く。
「優奈って呼んで・・・だってさ。あんな感じで、堂々と可愛い子ぶれると、もうちょっとモテるのかね?」
陸と倫太郎が、同時に吹き出していた。さっきの媚び媚びだった「奴隷」の美女を思い出してしまったのだ。
「いいから、早く行くよ。」
栞が言う。下校中の生徒会メンバーは、傍から見ると、いつもと同じ、完全無欠の美男美女エリート集団に見えていた。
。。。
「優奈・・・。本当にいいのか?」
「お願い。思いっきり来て。私、全部、駿斗君にあげたいの。」
道場の更衣室は剣道部の部室を兼ねている。汗の匂いの染み込んだこの部屋で、清橋優奈は駿斗に全てを捧げて、本当の彼女になりたいと頼み込んでいた。やっと着ることが出来た夏服をまた脱ぎ捨てて、頬を赤らめたまま熱に浮かされたような潤んだ目でお願いする優奈。駿斗は少しだけ戸惑っていた。
(さっきこの子の大事なところに俺のモノを入れちゃったばかりなのに、・・・こっち側にも入れるって、普通なのか?)
体技にはそれなりに自信がある小峰駿斗も、女性と交際した経験がない。そのせいで、急に女の子の「お尻」に入れてくれと言われても、狼狽えるばかりだった。
「これってさ・・・、普通なのかな?」
「ふ、普通じゃ・・・ないと思う・・・。」
「優奈の親御さんとかに、叱られないか?」
「お母様は・・・・すっごく怒っちゃう・・・・。どうしよう・・・。」
良家の令嬢が、あからさまに困惑し始める。お尻を突き出したまま、プルプルと震え始めた。
「でっ・・・でも。普通じゃ駄目なの。私、女の子の初めてを小峰君にあげたかったのに、可児田君にあげちゃったの。・・・凄く嫌だと思っても、可児田君に、これが『レディーの嗜み』だよって言われると、私、何でもしちゃうの。だから、もう、・・・綺麗な体でいられないの。早く駿斗君にあげないと、全部、可児田君に汚されちゃう。」
優奈の表情は真剣だった。ノホホンとしたお嬢様育ちだと思って見てきた友人だが、いざとなると女は強いな。・・・強さを純粋に尊敬する駿斗は、優奈にも敬意を払った。
「だけど、さっきの高倉も、凄く痛そうで辛そうだったぞ。無理に痛いことをする必要はないだろ? 俺は清橋を・・・、優奈を大切にしたいんだ。」
「嬉しい・・・。私、幸せ。・・・でも、優奈を大切にしたいなら、可児田君や他の男子は絶対しないような、変態なことをして。優奈と駿斗君は、変態なことをするほど、強い絆で結ばれるのよ。」
雷に打たれたように、感動した。駿斗は自分の耳を疑った。さっきから駿斗の脳裡に浮かんでは消えていた、恋愛のテーゼのようなものとピッタリ合致したではないか。「優奈と駿斗は、変態なことをするほど、強い絆で結ばれる。」これは本当に偶然の一致だろうか? 一言一句、言い回しも完全に違わず、駿斗が考えていることと優奈の言葉が一致する。運命の結びつきとしか思えなかった。
「そ・・・そうだな。・・・・高倉に出来るんだから、優奈に我慢出来ないはずがないよな。・・・俺たちの愛の力は・・・、最強だ。」
駿斗がズボンを下ろしながら近づいてくると、優奈は満面の笑みで迎え入れた。柔らかいお尻をグッと開くと、菊の門と呼ばれる穴が顔を出す。駿斗の彼女が普段は排泄に使っている穴。まだどんな男もモノを入れていない、清橋優奈が自信を持ってお届けする、彼氏を迎え入れる穴だった。
肛門の下には、さっき駿斗のモノがお世話になった、割れ目が口を開いている。恋人の再訪を乞うように、潤い、アンダーヘアーまで濡れそぼっていた。その粘液を指で拭って、締まったアナルの口に塗ってみる。駿斗の指先が触れただけで、敏感な肛門がヒクっとすぼまり、優奈の腰が前後にヒクついた。
「大丈夫?」
「お願い。来て、駿斗君。2人で変態カップルになりましょうっ。」
優奈の愛の力と勇気に魅せられて、駿斗も腰を据える。軽い体を抱きかかえるようにして、グッと自分のモノを押しつけた。優奈の方は、精一杯力を抜いて、後ろから恋人を迎え入れようとする。
「それっ、どうだっ。こんな変態カップル、誰もかなわないぞ!」
力強く声を出して、一気にモノを押し込む。優奈は痛みに耐えるべく口を大きく開けて、声にならない息を出しながら受け入れる。ズズッ、ズズズッと男のモノが肛門を押し分けて逆行する。優奈は思わず、床に脱ぎ捨てられていた、誰かの黴臭い胴着を噛みしめていた。根本まで入った駿斗のモノが、今度はズリズリと先っぽまで出ていく。退行的で背徳的な快感は、優奈をドロドロに溶かしてくれていた。彼女の全身を揉みしだいて舐めまわし、好き勝手弄んだ可児田樹。彼の指紋や体液、優奈を汚した成分が全てお尻の穴から体外に出て行ってくれるような爽快感。自分の愛する男だけに、自分の全てを投げ出す喜びに打ち震える。自分も駿斗も、もっともっと変態になりたい。優奈は弾けたように大胆に、我を忘れて喘ぎ声をあげ始めた。
「それっ! せいやっ! ・・・どうだっ。この変態娘っ!」
「あぁああああ、ガンガンくるぅ・・・・。ガンガンするのぉおおお」
駿斗は優奈の両手を掴んで、プロレス技のような体勢でアナルを犯す。優奈は頭をガクンガクンと揺すって喘いだ。
「しゅっ・・・駿斗君。・・・写真撮って・・・。2人の、変態なところ、・・・見てもらいましょっ」
あどけないお嬢様のように見てきた優奈が、彼女になってからはいつも駿斗の先を行く。彼氏として情けないと思った駿斗が快く同意した。
「そうだっ。俺たちが誰にも手を付けられないような強い愛で結ばれてる姿を、可児田に見せつけてやろうっ。あいつも観念して、催眠術なんて軟弱な遊び、すぐに諦めるぞっ。」
と言いながら、自分では携帯もカメラも持っていないことに気がつく駿斗。ウサギの耳をかたどったカバーがついた優奈のスマートフォンを借りて、写真を撮る。アナルに挿入したままの自画撮りだ。優奈も駿斗も、痛みや恥じらいに耐えて、精一杯のドヤ顔をしてみせた。駿斗がまたも熱い精液を勢いよく、何回にも分けて優奈の腸に放出した後、2人は完全に脱力して、更衣室の床に転がった。お互いの体を、特に脇の下など、汗ばんだ部分を集中的にぺロぺロと舐めあって労わりあう。美しいカップルの姿だった。
気だるい放心状態のなか、クスクス笑いあいながら舌を伸ばして互いに愛撫をしていると、優奈の携帯がブルルっと震えて、メールの着信を告げる。可児田樹からのメッセージが返ってきていた。
「ほいーっす。お疲れ様。今週分、確かに受け取りました。罰ゲームはあと3週間続くから、体を壊さないように気をつけながら、変態カップルライフを満喫してね。繰り返すけど、体を傷つけたり、痛すぎることは避けながら、ド変態な自分たちをアピールしていってね。」
「なんだこれ? どういう意味なんだ? ・・・可児田の奴、きっと俺たちの愛の力に叶わないとみて、負け惜しみを返してきたんだな。」
駿斗が言うと、優奈が彼の太い腕に抱きつく。
「そうね・・・。嬉しい。こうして駿斗君と変態なエッチを繰り返していれば、可児田君なんて怖くないわっ。」
幸せそうに駿斗の二の腕に頬ずりする優奈。熱愛カップルそのものだった。
。。。
「おい、昨日の夜・・・。それから朝・・・。」
「言わないでっ。・・・・思い出したくないし、貴方たちの状況とか想像したくないの。」
翌日早朝、生徒会室に集合した生徒会役員たち。陸が思い切って話そうとしたところを鶴見栞が遮った。
「さっき沙耶とも澪とも話したの。・・・みんな同じよ。絶対に可児田の催眠術のせいだと思う。後催眠暗示って、本で読んだことある。」
陸は全員の顔色を見て、自分の推測が正しかったことを確かめる。女子も全員、同じ目にあっていたということか。
昨夜の陸は、誰かに可児田樹の暴走のことを伝えようと知恵を振り絞ったが、どうしても行動に移せなかった。電話を取る手は止まり、家族の前では、その話題に移ろうとした時だけ舌が痺れてまともな言葉が出なくなる。手紙を書こうとした時にも、重要な部分に入ろうとした瞬間に、ペンを握る手が勝手に暴れだし、自分の顔に髭を書いたところでようやく止まってくれた。生徒会メンバーと話そうとしても、携帯からは何度も時報のサービスに電話をかけてしまう。自分の体が自分の思い通りに動かないというのは、想像したことのないストレスだった。
栞も陸と同じ状況。何度も自分の顔に髭を書いてしまったので、洗顔を、いつもの3倍もする羽目になった。
沙耶も陸や栞と同じ。そして諦めて、翌日冷静に対策を考えようと、睡眠を取ることにした。沙耶がパジャマに着替えてベッドに入ったのが11時頃。しかし、11時半には、完全に覚醒してしまっていた。体が火照ってしかたがない。何度も寝返りをうって、ベッドのタオルケットを直して、ついに我慢できなくなってパジャマの襟元とズボンに手を入れて、自分を慰め始めてしまった。体が熱くて、刺激を求めて、疼いて疼いて仕方がなかったのだ。脳裡に浮かぶのは、今日の放課後、生徒会室での屈辱の催眠術ショー。嬉しそうに服を脱いで、裸で跳ね回っていた自分。親しい男子たちの裸。ホクロを数えさせる友人。胸を揉ませて乳首を立たせていた友人。友人たちに肛門を広げてもらってゲームの勝利を求めていた自分。指を突っ込んでくれた友人。全て忘れ去りたい、学生生活最悪とも思える汚辱を、思い起こしては沙耶は悶え狂った。こんなに激しい、こんなに気持ちいいオナニーは経験したことがない。沙耶は今すぐ止めたいと思っているのに、ベッドの上を転がりながら自分の性器と乳首を弄りまくり、汗と涎と恥ずかしい液とで、ベッドを万遍なくグッショリ濡らしてしまった。あまりにもその時のオナニーが気持ち良かったせいで、昨日の放課後のことを今思い出すだけでも、股間が湿ってくる感じがするほどだ。最悪の自己嫌悪と、同時に気が遠くなるような悦楽が湧き出てくる。昨日のオナニーとオルガスムのせいだろう。
澪も全く一緒であった。Tシャツとコットンのハーフパンツがグショグショになるほどオナニーに励んだ後は、ぐっすり寝た。眠りが深かったせいか、6時過ぎに目がパッチリと覚める。妙な強迫観念に掻き立てられて、澪はベッドを飛び起きると、机の上にあるPCオーディオ機器をいじって、ラジオの選局をした。
「ラジオ体操第2。よーい。」
いつも聞きなれたラジオ体操第1とは微妙に違う、短調のような地味めな曲に合わせて、思いっきり体操をする。なんで自分がこんなことをしているのか、よくわからなかったが、とにかく朝は体操だ。ベッドの上に立ち上がって、ハーフパンツを蹴り捨て、ショーツまで脱ぎ捨てると、真剣な表情で手足を曲げたり伸ばしたり。体育教師の模範演技のように体操をこなした。両手を握って勢いをつけて肘を曲げて力こぶを作る。同時に両ひざをパックリ開けて、ガニ股気味にスクワット。Tシャツを着ている他は何も身に着けていない澪は、下半身が完全に無防備に、パクッと割れ目まで開いてしまう。他に誰もいない部屋、一人で顔を赤くしながら、澪はぶつくさ、文句をこぼしていた。
「誰だよ、この体操考えたの・・・。恥ずかしいんだってば。」
テンションの高いアナウンサーの指示に丁寧に従いながら、大真面目な顔でラジオ体操第2をやりきった澪。ベッドにそのまま倒れこんで、悔しさに寝返りを打つ。
「くそっ・・・一日たっても、全然効果が弱まってない。・・・私、本当にあの、可児田樹なんかに、玩具にされて、遊ばれてんじゃんっ!」
ベッドをボンボンと叩いて悔しがる澪。あまりに暴れるので、隣の部屋の弟が様子を見に来て、Tシャツ一丁で暴れる姉のお尻をハッキリと目に焼きつけてしまった。
「や、やあ。みんな、お、おはよう。昨日はどう? ぐ、ぐっすり、眠れた? ・・・け、健康的な生活が、一番だよね。・・・よく寝て、溜まっていたら、発散して、・・・早起きして・・・。ねぇ?」
生徒会メンバーよりも一足遅く、元引きこもり生徒だった可児田樹が、我が物顔で生徒会室に入ってくる。樹を毅然とした眼差しで睨みつけようとした高倉沙耶だったが、「溜まっていたら、発散して」と言いながら見返してくる樹の視線から、思わず赤面しながら逃げてしまう。同じく赤面しながら机を見ている清橋優奈は、椅子に真っ直ぐ座らず、体を傾けるような「お姉さん座り」をして、微妙にお尻を横に浮かしている。まるでお尻を座面に真っ直ぐ下ろせない理由でもあるようだったが、隣の小峰駿斗に寄りかかって、それを誤魔化している。
「可児田。お前、本当に俺たちをこのまま玩具に出来ると思ってるのか? 昨日のことはみんなで忘れる。お前の変な催眠術を、今すぐ解くんだ。」
陸がきつい口調で樹に言う。このまま、樹を調子に乗せておくと、とんでもない、後戻り出来ないようなことまでされそう、させられそうな気がしていた。
「陸君っ。」
優しい優奈が陸を止めようとする。陸が樹に酷い目に合わされるのを避けようとしているのだろう。それでも、陸の推測では、すでに生徒会メンバーがしたてに出ようが上から話そうが、事態はあまり変わりがないというところまで来ていた。
「お前、いくら催眠術が上手い、暗示の力が強いっていっても、無敵じゃないだろ? 俺たち7人を常に敵に回していたら、いつか破られるぞ。今のうちに引いておきなよ。」
端正な容姿の佐倉陸が凄みのある声を出すと、それなりに迫力が出る。女子の会長を補佐して生徒会副会長の仕事をしていくには、優しい顔ばかりしてきた訳ではない。陸が樹の前に立ちはだかった。
「陸君の言う通り。私たちは負けない。可児田君。貴方は一時は私たちを陥れることが出来ても、それは長続きしないの。私たちは、本物の絆で繋がった仲間なの。この学校を良くしていくために、真剣に戦ってきたの。私たちは絶対に負けないわ。」
陸の本気を読み取って、高倉沙耶が味方すべく毅然と言い放つ。みんなを導く存在。圧倒的なオーラを纏っていた。
「べ、・・・別に僕、敵対ばかりするつもりじゃ・・ないよ。ほ、ほら。・・・沙耶ちゃん。」
可児田が、誤魔化すように笑みを浮かべて、口をすぼめる。目をうっすら閉じて、口を生徒会長に向けて突き出す。申し訳ないが、醜いキス顔だった。
「・・・うっ・・・」
肩をすくめて伸びあがった沙耶。怖気がおそったのだろうか、陸や澪の方を、助けを求めるように振り返る。しかし引き寄せられるように、沙耶の足がトコトコと可児田樹のもとへと歩み寄っていく。
「沙耶ちゃん? ・・・沙耶っ」
生徒会メンバーたちが制止しようと声をかけるも間に合わず、沙耶は樹の元へ歩み寄ると両手を大きく横に開いて、そのまま樹の胸元に飛び込んでしまった。
「い・・・、いや・・・・。こん・・な・・・の・・・ムゥウウウ」
樹は動いていない。沙耶が嫌がりながら、自分から樹を抱きしめて、唇を突き出して重ねている。いやだいやだと肩を揺すりながら、キスを繰り返しているのは高倉沙耶だった。
「僕から愛情表現が送られていると感じたら、どんなに嫌でも、3倍返しでお返しするようにって、暗示をかけてあるんだ。こんなに簡単に、深くかかってくれるんだね。沙耶ちゃん。ほら、ぺロッ。こっちもどう? オッパイつんつん。」
「むーっ・・・んっ・・・ん・・・。」
樹が舌を少し伸ばして、軽く沙耶の唇を舐めると、沙耶は首を左右に振りながらも、大きく舌を伸ばして樹の口に捻じ込んでいく。膨らんだ胸の先を指先でツンツンと触られると、その手を小さくはたいた、・・・はずが、その直後に、はたいたばかりの手首をグッと掴んで引き寄せる。掴んだ手を自分の胸にグリグリと押し当てる。まるで沙耶が自ら無理やりディープキスをせがみ、強引に自分の胸を揉ませているようだ。
「沙耶ちゃんは、・・・ムグッ・・・、愛情表現に関しては・・・ワッ・・・。とことん負けず嫌いなんだよね・・・。こんなところが、・・・・生徒会室の外でも…見つかったら、・・・・・困っちゃうんだろうけど。」
陸たちに顔を向けながら、喋ろうとする樹。その樹の口に、舌を入れようと、沙耶の口が何度も追ってきて唇を重ねる。舌を入れる。絡ませる。なかなか樹は話し終えられなかった。いつの間にか、沙耶は夏服のベストもシャツも捲り上げて、ブラジャーの隙間から樹の手を自分のオッパイへと導こうとしている。こんなことしたくない。目でそのように仲間たちに訴えかけながら、舌を絡める沙耶の口の端からは涎が垂れる。ブラジャーの中に入れた樹の手を、上から指を重ねてオッパイを揉みまくらせている。こんな高倉沙耶の姿が他の生徒たちの目に晒されたら、それこそこの学校が崩壊してしまうのではないだろうか。あまりにも理想化され、神格化されてしまったリーダーの醜態が晒された時のことを、生徒会メンバーたちは心底恐れた。
「バッドエンドにならないように、ちゃんとみんなで最後までやりきろうよ。この生徒会のゲームは、始まったばっかりなんだから。ね? 生徒会役員のみなさん。・・・ね? 沙耶ちゃん? ・・・もう自由になるよ。」
樹の言葉を聞くと、沙耶の舌は樹の口から解放される。樹を突き飛ばすようにして体を離した沙耶はそのまま床に座り込み、嫌悪感にえづきながらも慌てて制服を整えた。このまま嘔吐してしまうのではないかと思われるほど、長く続く、沙耶のえづき。生徒会の仲間たちは茫然と樹の前に立ちすくんでいた。
< 後半へつづく >