スパイラルサークル 第5話

 本当は学校に来て、朝一番に親友たちと話をしたかった。けれど結沙が教室に着いたのが始業ギリギリというタイミングだったので、1時限目が終わってからの休み時間まで、4人での状況確認はお預けになってしまった。遅刻しなかっただけ、良かったと思うことにする。昨日の夜は深夜まで眠れなかった。といっても、昨日起きた出来事がショックで、ベッドに入っても寝つけなかったという訳ではない。吉沢結沙は宿題を済ませた後、深夜1時半まで、1人エッチに励んでいたのだ。

 

 奈緒美先輩のアドバイスに従って、破瓜を済ませたばかりのヴァギナは出来るだけ触れないようにして、クリトリスだけを弄って快感を得る。結沙にとってはオナニー自体、それほど手慣れた作業ではないので、手鏡を使って慎重に、最初は試行錯誤を繰り返した。どうして自分がここまでして、色々あった昨日のその日、オナニーに没頭しなければならなかったのか、結沙自身、説明が出来ない。それでも、自分はこの行為が好きだということ、今日もすべきだということ。その2点には確信があった。触るべきところを確かめるために、両足を出来るだけ広く開いてみる。このポーズ。その日の午後にも既に何度か取らされたことを思い出す。恥ずかしさと情けなさに1人で呻く。ベッドに転がって、クリトリスをそーっと触れてみる。夕方にも彼女のここを弄った男子の顔を思い出す。イタズラ好きで意地の悪い、でも笑顔の可愛い、結沙の彼氏………。今度は手鏡で自分の顔を隠しながら、「ギャーッ」と叫んでベッドの上を転がる。包皮を剥くということをしなくても、弘太の声、彼のタッチを思い出すだけで、結沙のクリトリスはムクムクっと起立してくれた。そーっと触れて、右手の人差し指で円を描くようにこねくる。「………ンッ………」と独りでに吐息が漏れた。気持ちいい。………やはりそうだ。確信していた通り、結沙はこの感覚、この行為そのものがとっても好きなんだと、自分で実感した。

 

 クルクルと円を描くように自分のクリトリスをこねくっていると、結沙の頭の中では、その指の動きと、あの学校の教室で見せられた、大型の渦巻き模様の道具が回転する様が結びつく。スペシャルなハーブが入った紅茶を飲んだら、妙にフワフワした気持ちになったこと。その気持ちのまま、渦巻き模様の回転を見せられたら、アッと言う間に、不思議な意識の状態へと導かれたこと。気がついたら、そのサークルが企画するショーに参加することになっていたこと。そして、その後の、色々な出来事。思い出すと、お腹のナカの奥の方がキュッとする。心臓の鼓動が激しくなって、頭がボーっとしてくる。体がより、敏感になるように感じる。………ようするに、その日の出来ごとを思い出すと、オナニーがはかどるのだった。

 

 ショーの中、皆に見られているなかで、自分のプライベートな秘密を、挙手で暴露させられたこと。暑いとか寒いとか言われるがままに制服を脱いで下着を知らない人たちに見られてしまったこと。そしてもっともっと恥ずかしいこと………。一部はセピア色だったり、ボンヤリとした記憶になってしまっていたが、どれもが恥ずかしくて、どれもにドキドキさせられた。あの、自分で自分がコントロール出来ない感じ。他人に思うがままに操られてしまう感じ。自分が、なにか別のものに変わっていってしまう感じ。そのどの感覚も、あとから1人で自分の体を慰めながら思い出すと、妙な興奮が、嫌悪感よりも先に立ってしまうのだった。

 

 最初のうちの試行錯誤が嘘のように、途中から結沙の1人エッチは、驚くほど、はかどる。トロトロと溢れ出してきた愛液を指で拭って口に含むと、口の中が、頭が、全身が、天国に飛んでいく。絶対に癖になる。こんなことが、止められるわけない。結沙は心の中で、両親に謝った。『ゴメンなさい。貴方たちの娘はおサルです』………と。

 

 3回も絶頂に達したあとのことは記憶にない。気がついたら朝だった。オナニーをしたまま、果てたままの姿で、ベッドで眠ってしまっていたようだ。目覚まし時計をセットしていなかったので、少しだけ、いつもよりも遅めの時間に目が覚めたのだった。

 

(朝ご飯を急いで食べたら、大体いつもの時間に家を出られる………)

 

 夜、寝る前にスキンケアを出来なかったので、ニキビが出来ていないか心配だったが、お肌の調子は良かった。良すぎるくらい、肌が潤っていた。シャワーを浴びると、昨日の女子シャワー室のことを思い出して、1人で顔を赤くする。また奈緒美先輩に体を洗ってもらえると言われたら、結沙は犯罪だってホイホイとしてしまいそうな自分が、ちょっと怖くも感じた。

 

 体を拭きながら、準備したショーツに足を通す………ことを考えたところで、ピタッと結沙の動きが止まった。考え直す。…………今日、チェック柄の下着を着ようと思ったのは、結沙のチョイスだ。…………けれど、本当にこれは、結沙だけで決めてしまって、良いものだっただろうか?

 

(……………もう私一人の体じゃ、ないんだしね…………。恥ずかしいけど…………。ゆ、勇気出して、聞いてみるか?)

 

 スマホを出すと、結沙はチャットアプリを立ち上げて、ヤツへメールする。いつ登録したのかも覚えていないが、弘太のアドレスはきっちり登録されていた。『小湊弘太(マイ・ダーリン)』という登録名を入力した馬鹿は、一体誰だ。

 

「…………おはよ………。こちら貴方の昨日の被害者女子」

 

「おはよう! 僕の結沙ちゃん!」

 

 前回の笑顔の絵文字と共に、即レスが帰って来た。

 

「あの、一応…………。一応、念のために、聞いとくけど………。その、インナーの、好みとか………あるの?」

 

「結沙ちゃんの下着なら、どれでも見たいけど、もし今日、結沙ちゃんが着ていく下着を、僕に選ばせてもらえるっていうなら、候補を全部並べて写真撮ってよ。いつも結沙ちゃんがどんな下着のレパートリーを持っているのか、知れるのが嬉しいな!」

 

 返答を読んだ結沙は「………スケベ」と小さく呟いて、棚の中から下着のセットを取り出し、ベッドに並べる。プライベートなセットリストの写真を送らさせられた。それでも、彼氏に興味を持ってもらえているということには、まんざらでもない気分にもなる。ところが、そこから弘太が調子に乗ったようで、「一通り、来たところの自撮り写真を送って頂戴」とか「念のために下着をつける前の結沙ちゃんの写真も送ってよ」とか、ずうずうしい要望を出してくる。結沙はだんだん時計を気にしながら焦り始めた。

 

 結局、何度も下着を身につけたり脱いだりさせられて、「よりイメージが湧くように」などという謎の理由で、あれこれポーズまでつけた写真を送らされて、やっとのことで、水玉模様のブラとショーツが選ばれた。慌ててそれらの上から、昨日のと違う、予備の制服を着こんだ結沙は、ほとんど朝ご飯も食べられずに、家から飛び出した。走ってバス停に向かったので、なんとか出発間際のバスに飛び乗ることが出来たのだが、あのバスも逃していたら、完全に遅刻していたところだったろう。

 

 

「今朝、結沙ちゃん、HRギリギリに教室に入ってきたよね」

 

 休み時間にやっと4人で落ち合えた時、野乃が心配顔で口にする。結沙は大したことではないと、首を横に振って笑顔を見せてみた。1時限目の授業中にも実感したが、実は彼氏に選んでもらった下着を身に着けてする生活は、悪くはない。先生の授業に退屈した時など、ふと妄想に入りこむことが出来る。念入りに選んでもらったこの下着、胸と結沙の大切な部分を守ってくれている。この感触、まるで愛しの彼氏の手に、オッパイとお尻とアソコを、ずっと触ってもらっているような気分にならないか………。そんな妄想を思い出すと、今もまた、結沙はウットリと恍惚の表情を浮かべてしまう。

 

「結沙ちゃん…………、涎、出てるよ………」

 

 野乃が、キョトンとした表情で結沙に指摘する。我に返った結沙は、慌てて自分の口元を拭った。周りの視線を気にする。いつもと違う彼女の様子に、首を傾げている野乃以外の、2人。咲良と梨々香は、今、結沙がどんな妄想に浸っていたのか、何となく感づいたようで、意味ありげな視線を送ってきていた。

 

「………ゴホンッ。あの、私はその、今日の放課後も、皆にかけられた、変な暗示を解く、糸口を探るために、崇泉院学園、行ってみようと思うの」

 

「………解決の糸口を探るっていうのね? ………彼氏とイチャつきたい目的じゃなくて」

 

 咲良が、ジーっとこちらを見つめてくる。結沙は思わず目を逸らして、もう一度、咳払いをした。

 

「アタシも行くっ。今日はいざという時のために、明人も連れていくよ。結沙1人じゃ心配だよ。また裸で行進しながら、愛の告白連呼させられるのがオチだよ」

 

 梨々香の言葉が、グサッと胸に刺さる。あまり有効な反論が思いつかなかった。

 

「私も行くよっ。こうなったのも、私が最初に皆を崇泉祭に誘ったからだし………。あと、5人も彼氏がいると、電話の時間が長くなって睡眠時間が無くなっちゃうから、ちょっとでも面着でお話ししておかないと……」

 

 梨々香と野乃が結沙への同行表明をしたところで、3人が咲良を見る。メガネをかけた優等生少女は、少しだけ眉をひそめて考えた後で、溜息をついて言った。

 

「…………しょうがないなぁ…………。貴方たちだけじゃ、昨日とおんなじことになりそうだから、私もついていくよ。………………一応、私の生徒になった男子たちもいる訳だから、何かあったら、私が一喝するよ」

 

「入場券は入口で買う?」

 

 梨々香の質問に、結沙が答える。

 

「ダーリ………、ゴホンッ。………弘太に私から、連絡しておくよ。多分、追加で購入しなくても良いと思うから」

 

 4人の、今日の放課後の予定が、こうして最初の休み時間に決まった。

 

 

 結沙の事前連絡が功を奏したのか、それとも前日の催し物が何かの評判になっていたりするのか、崇泉院学園の入り口に4人と梨々香の彼氏である広瀬明人が着いた時、学園祭の実行委員は結沙たちを「顔パス」で通してくれると言った。

 

 開ききった状態の鉄の校門。昨日と変わらない、歴史ある雰囲気の校舎が人で賑わう声。結沙は、今日は昨日のように男子たちの思い通りにはさせない。うまくスパイラル・サークルのメンバーたちを油断させておいて、催眠術を解く方法を入手しようと、心に決めていた。

 

 

「やぁっ。『スパイラルの旅行者』の皆さん、昨日はありがとうございましたっ。今日も来てくれたんですね。ゆっくり楽しんでいってください」

 

 校内の教室を使った模擬喫茶店で結沙たちを迎え入れたのは、藤村君彦だった。そして彼の最初の一言を聞いただけで、結沙たち女子4人は、完全に無力な状態に陥っていた。キョロキョロしながら、梨々香の様子を気にしている明人君。彼も含めて、5人用のテーブルが用意され、案内されると、女子たちは皆おとなしく、そして従順に席に着く。成り行きに任せた明人が、出されたハーブティーを飲む。渦巻き模様の描かれた装置が出てくる。見る間に、梨々香の彼氏、啓文高校2年の広瀬明人君も、彼女の梨々香と同じ状態に陥った。さすが、仲の良いカップル同士、と言うことも出来るかもしれない。

 

「今日は文化サークル連盟の出し物プログラムがちょっと昨日と違っていてね、もうショーは始まってるんだ。だから、ショーマンやスタッフが戻ってくるのを、部室で待っててもらえるかな?」

 

 君彦の言葉に、誰も疑問を持たず、ボンヤリとした表情のまま頷く。結沙が先頭になって、昨日歩いた文化サークル棟までを、5人でフラフラと移動していくのだった。

 

 

「じゃ、『スパイラルの旅行者』さんたちは、シャワーを浴びて待っておこうか?」

 

 部室でバスタオルを4枚渡されると、結沙たちは、「はい、わかりました」とだけ答えて、今度は、昨日使った女子シャワー室へと移動する。

 

「あっ、君は良いよ。ここにいて」

 

 呼び止められたのは明人だった。大人しく、椅子に座って真っ直ぐ前を向いたまま待つ。彼もすっかり、『スパイラルの旅行者』たちの一員になっているようだった。

 

 

「結沙ちゃんはさすが、よく道を覚えてるね。………私だけだったら、昨日行った場所でも、迷っちゃってたかも……」

 

 野乃が制服を脱ぎながら結沙を褒める。気持ちはありがたいが、まだ頭の中がモヤモヤした状態で服を脱いでいる結沙は、曖昧な表情で答えた。

 

「なんか………。催眠状態っていうか、意識がパカ~ッと開いちゃったような状態って、自分では主体的にあれこれ考えられないんだけど、周りの状況とかはスルスル入ってくる感じがするんだよね。………私も、別に道を覚えるのとか、得意じゃないけど、トランス状態で歩いた道とかは、すぐに思い出せた………。まるで、体が目的地に呼ばれてるみたいな感じ」

 

「わかりみ。アタシも思ってたこと、結沙はすっごい的確に言ってくれるよね」

 

 梨々香が同意してくれた。咲良はスカートを下ろしたあとで、メガネを外しながらボヤく。

 

「でも、それってさ。怖いことでもあるよね。私たちが催眠状態にある時にされたこととか、させられたこととかが、どんどん自分の深い部分に染みこんでくるっていう意味にもとれるじゃない? このまま、私たちが今の状態を受け入れてたら、すぐにそれが私たちの本当の当たり前に、変わっていっちゃうっていうことかもしれないよ」

 

「………こんな風に?」

 

「あんっ! ………………ちょっと、止めなさいよ」

 

 ふざけて咲良の耳に息を吹きかけた梨々香も、咲良が急に出した、妙に色っぽい声を聞いて、気まずそうな表情になった。それでも今の一音が呼び水になってしまったようで、いざシャワーを浴び始めると、誰からということもなく、4人の女子は1つのシャワー個室に皆で入ってお互いの体を触り始める。結沙も我慢出来なくて、野乃や咲良、梨々香の体を触る。彼女たちはお互いの体を洗いあっこするのが、大好きなのだ。いつまでも我慢出来るものではなかった。

 

「咲良ちゃん、お肌プルプルで羨ましい」

 

「………野乃の肌だって、ムニムニしてて、ほら、赤ちゃんの肌みたい。………もっと触っていい?」

 

「良いけど…………はんっ…………咲良ちゃん………、ちょっとエッチになった」

 

「………純粋な、学術的な興味だってば………。あぁんっ」

 

「いっつも思うけど、梨々香の胸の大きさって、遺伝? 何か特別なこと、やってるの? その………豊胸体操とか」

 

「…………へぇ。………結沙もそういうこと、興味あるんだ………。胸、もっとおっきくなりたいとか、思う? …………弘太君のためとか…………」

 

「きっ……………急に変な名前、出さないでよっ…………。別にダーリ………、弘太は関係なくて、ちょっと気になっただけだってば」

 

 数年前まで男子校だったはずの、歴史ある校舎の一角で、結沙たち4人は他校からやってきて、女同士でシャワーを浴びながら、お互いの体を触り合い、いつもよりもずいぶん踏み込んだ、プライベートな女子トークを交わしあう。トーク7に対して喘ぎ声3くらいだった比率が、やがて逆転して、最後は無言になってお互いの体をまさぐり合うようになる。最初は遠慮がちに、ソープの泡を乗せた手でお互いの体を触り合い、洗い合っていたはずの4人は、途中から体と体を直接擦り合わせて、そして最後には舌まで使って、女同士のネットリとした愛撫に興じるようになる。誰からともなく、4人で同時にお互いのオッパイを押しつけ合い、左右のオッパイが互い違いになるようにして擦り合わせた。ムニュムニュと変形しながら動くオッパイ。石鹸で滑りやすくなっている、その丸くて柔らかい物体は、まるで別の生き物のようにお互いを挟み合った。次はオシリ同士が密着され合って、洗われていく。タイルが貼られたシャワールームの壁からは、4人のいつもとは違う、狂おしげな喘ぎ声が反響して響き渡った。

 

「………そ…………そろそろ出ようか………」

 

 このまま続けるとイキそうだという感覚を得た時に、急に結沙は僅かながらに正気を取り戻す。皆、欲求不満なカラダの疼きを抱えて、悶々としながらシャワールームを後にする。体にはバスタオル1枚を巻いただけの姿で、手にはさっき脱いだ制服を綺麗に畳んで、運んでいく。部室に戻ると、さっきよりもグッと人が増えていた。ショーが今、終わったばかりのようだ。

 

「あ、結沙たち来てたんだー。ヤッホー」

 

「あら、昨日の皆さん………。こんにちは。今来られたの? 残念………。こちらの小湊君が、とっても面白いショーをしてくれていたんですよ。音楽室に皆さんも来られたらよかったのに……」

 

 部室には、既にバスタオルを体に巻いた、奈緒美先輩と詩織先生、そして圭先輩が、男子たちと一緒にいた。ついさっきまで、音楽室でのショーに付き合っていたようで、女性は3人とも、興奮気味だった。

 

「ねぇ、私たちっていつまで服の上からこんなタオル巻いてないと駄目なの?」

 

「そう、私も気になった。………もう良いよね? 詩織先生もそう思わない?」

 

「はい、奈緒美先輩の仰る通りです」

 

 3人は、少し邪魔くさそうに、バスタオルを解いて備品棚へ持っていく。タオルの下には何も着ていない全裸なのに、彼女たちが「服の上から」等々言っているのが、結沙には気になった。いま彼女たちは、素っ裸なのに、平気な顔でさっきのショーについて、まだテンション高く話し続ける。

 

「弘太君の催眠術って、本当に凄いんですよ。会場のお客さん全員に、催眠をかけちゃったの。そうしたら皆が、本当は服を着たままの私たちが、裸になったと思いこんじゃって、ハシャイだりして………。あれはちょっと恥ずかしかったなぁ………」

 

 柔和な笑顔の詩織先生が思い出したように顔をポッと赤らめて、両手で頬っぺたを挟みこむ。大人だけれど、可愛らしい性格の先生なんだということが伝わってくる仕草だった。

 

「でも詩織先生、結構、大胆なイタズラしてましたよ。男子たちが図々しいリクエストしてきたら、それに従って、セクシーなポーズとかとっちゃって」

 

 栗毛色の髪で、ハーフみたいな顔立ちの圭先輩が、詩織先生をイジる。先生はキャーキャー叫びながら、首を左右に振った。

 

「あれは、本当にその場のノリで………。なんだか、あのステージにいると、皆のリクエストが断りづらくって、つい……………。でも、私はちゃんと服を着てるのに、皆がまるで、私が裸になって、きわどいポーズを取っているようなリアクションをするものだから、おかしくって…………」

 

「確かにあのノリっていうか、グルーブ感、凄かったよね。私らもダンスとか、ヨガのポーズとか…………結構、はしゃいでた………。最後はちょっと、AVみたいなエロ動画まで見せられるし。あれはヤバかった……」

 

「そうよね…………。あの時は、つい笑って済ませちゃたけれど、学園祭中といっても、ここは学校なんだし、あんなビデオを上映することは、私、教師として許すべきじゃなかったわ………。反省しなきゃ………」

 

 

「はーい、今日の出演者の皆さん。お疲れさまでした。僕が指を鳴らすと、完全にショーの催眠が解けますよ。はいっ。ティック。……………すいませんね。催眠術にかかっていたのは、『裸に見えてた観客』の皆さんじゃなくて、『服を着てると思ってた』皆さんです。あと、エロ動画の上映なんてしていませんよ。皆さんがステージと客席で実演してたんです。あれ全部、自分が『乱交パーティものに出演しているポルノ女優』だと思ってた皆さんが、さっきまで自分の体で披露していた、ライブパフォーマンスですよ」

 

 3人の美女たちが顔色を失って、お互いの体を見合わせる。股間の大切な部分、そしてお尻から、あるいは口の端から、白い液体が随分な量、垂れていた。絶叫しようと息を吸った瞬間に、また弘太が指を鳴らす。

 

「はい、今日、ショーに出演してくれた『スパイラルの旅行者』さんたち、おとなしくシャワー浴びて戻ってきてください。打ち上げをしっかり盛上げるお仕事が残っていますからね」

 

 微妙に膨れっ面を作りながら、奈緒美先輩がバスタオルを体に巻き直して、ドシドシと足音大きく、シャワールームへと去っていく。詩織先生、圭先輩が後に続く。ここまでのやり取りで、今日の「催眠術ショー」も昨日に劣らず、いかがわしいものだったことが、結沙にもよくわかった。

 

 

 打ち上げは昨日と同じようなフォーマットで、最初は皆が部室に集まって始まった。明日は学園祭ウィークのなかでも、スパイラルサークルの催眠術ショーが最終日となるらしく、打ち上げをしながらも、その話題が出てくる。女子たちは裸のまま男子の膝の上に座らされて、体を弄られたり、ジュースを口移しで飲まさせたりして、部員たちの手慰みのようにされていた。結沙も、指名してくる男子たちの指示に逆らうことが出来ずに、胸を揉ませているところだ。結沙は今年のショーマンである弘太が独占指名をしたので、他の部員とセックスをすることはない。けれどそれ以外は、平等にサービスをさせられるらしかった。男子たちは女の子を好き勝手に弄びながら、明日のショーで使う演目の話をする。すでに2回ショーを成功させて、自信がついてきたのか、ショーマンもスタッフも、新鮮味のある暗示について提案を交わしていく。

 

「…………こういうのどうだろ? …………野乃ちゃん、君は風船だよ。ここから空気入れます。…………フーーーーッ」

 

 君彦が、膝に座らせた野乃の親指を口に含み、空気を吹き込む仕草をしてみせる。見る間に、野乃の顔が膨らむ。頬っぺたの限界まで空気を包みこんで、まるで欲張りなリスのように真ん丸の顔を見せる。首から上が本物の風船になったかのように、首をユラユラと揺らして腰を浮き上がらせる。もともとパッチリとした両目が、限界まで丸く開かれている。

 

「ぷっ………可愛いな……。序盤のくすぐりには、いいかもしれないな………。でも、野乃ちゃんの可愛さありきの暗示のような気もするから………。じゃ、これはどうよ?」

 

 結沙の愛しのダーリン………いや、弘太が、今は膝の上に乗っている梨々香の耳元に何か囁きかけた。

 

「ほら見て。梨々香ちゃんの左右の乳首がアメリカンクラッカーになります。僕が指を鳴らすと、カチカチと当たりますよ。ティック」

 

 耳元で指を鳴らされた梨々香はおもむろに立ち上がって、豊満なバストを両手で掴むと、ボヨンボヨンと左右のオッパイを打ちつけるようにして寄せたり離したりする。斜め後ろ2メートルくらい離れ、皆の輪の外に裸で正座している明人が、悔しそうな顔を見せながらも勃起している。

 

「いや、弘太のネタの方が、梨々香ちゃんのオッパイありきになってんじゃん」

 

 君彦が言うと、男子たちが笑う。軽いジャレ合いのように見えるが、その遊びのために玩具にされている梨々香は悔しそうだ。後ろの明人はもっと悔しそうな顔をしていた。けれど勃起していた。

 

「………じゃ、こういうのはどう?」

 

 夏原保が膝の上に座らせている結沙の耳元に囁きかけてきた。

 

「結沙ちゃんは僕が手をパチンと鳴らすと、可愛いカニさんに変身するよ。ここは大好きな浜辺だ。チョッキン、チョッキンと両手のハサミを鳴らしながら、カニさんダンスを披露しよう」

 

 結沙はちょっとムッとして、言い返そうとする。昨日はダーリ、………弘太の催眠術にかかって、散々に弄ばれたが、彼はいまや、彼女にとっては、特別な存在でもある。けれど同じサークルの部員だからといって、保にまで同じように遊ばれるいわれは………。

 

 パチンッ

 

 保が手を叩く音を聞くと、結沙の体がビクンッと弾かれたように立ち上がる。目を大きく見開いた、驚いたような表情のまま、足を肩幅まで開き、膝を曲げて中腰になると、頭の高さまで持ち上げた両手で「Vサイン」を作って、人差し指と中指を閉じたり開いたりしながら、体を右に左に、ヒョコヒョコと揺らし始めた。

 

「チョッキン、チョッキン、チョッキン、チョッキン」

 

 口でハサミの音を表現する。普段は落ち着いた雰囲気の、真面目な美少女が全裸で懸命に再現する「カニさんダンス」の、幼稚さも混じった滑稽さに、皆が笑った。スパイラルサークルの男子たちだけではない。サポーターの先輩たちや、結沙の友人たちまで、笑いを堪えられないでいる。

 

「結沙ちゃん、カニさんの求愛ダンスだ。好きな人の前で、気持ちをアピールしよう」

 

 横歩きで結沙の体が弘太の席へと近づいていく。薄っすらと状況を理解出来ている結沙は、心の中で悲鳴を上げていた。

 

「スッキッ、スッキッ、スッキッ、スッキッ、スッキッ」

 

 顔を真っ赤にして両手のVサインを開閉させながら、右に左に、ヒョコヒョコと飛ぶ結沙。オッパイもユッサユッサと揺れる。目の前の弘太も、結沙のストレートでコミカルな求愛を受けて、照れ笑いするしかなかった。

 

「カニさんの繁殖期が近づいてきたよっ。逃しちゃったら大変だ。好きな相手には、もっと大胆に迫ってみようっ」

 

 保の声が聞こえると、結沙は僅かに首を「イヤイヤ」と左右に振りながらも、体を反転させて、弘太と梨々香に背を向ける。

 

「シッテッ、シッテッ、シッテッ、シッテッ、シッテッ」

 

 自分からクルッと体を反転させて、今度は弘太に体の正面を向ける。

 

「スッキッ、スッキッ、シテッ、シテッ、スキッ、スキッ、シテッ、シテッ」

 

 クルクルと体を回転させながら、煽情的にオッパイを揺すったり、お尻を振って見せたり、結沙のカニさんダンスはコミカルな動きから、次第にセクシー要素を拡大させていく。恥ずかしさで顔から指先まで、全身赤く染まってきた彼女の肌は、本当に蟹さんになろうとしているかのようだった。首から上は、眉をひそめ、困った表情を見せながらも、恥じらいを全て捨ててしまったかのような滑稽なダンスを披露する結沙の様子に、部室内は爆笑に包まれていた。弘太の肩越しに、梨々香の彼氏、明人までが笑いながら勃起している様子が見える。

 

「もう、結沙………。あなたが弘太のこと好きなのは、分かったってば…………。ひーっ、苦しい………。可愛すぎる」

 

 眼に涙を浮かべて、奈緒美さんが笑っている。

 

「やべぇ、腹痛い………。タモツ、これもやっぱり、結沙ちゃんの被暗示性と素直さに頼りすぎの暗示だよ。………他の被験者だったら、こうはいかないって…………」

 

「はー、笑った………。だいたい、蟹って求愛ダンスとかしたっけ? ………鳴き声も違うと思うし…………。結沙ちゃんの、受け入れる器が段違いだな………」

 

 部員たちが口々に、感想を述べる。保は肩をすくめて、結沙に呼びかけた。

 

「じゃ、結沙ちゃん。こっちに戻ってきて。僕の膝に座ると、人間に戻るよ」

 

 結沙は、まだ皆が笑いの余韻を噛みしめているなか、保のところまで戻る時にも生真面目に横歩きで、指をチョキチョキと開閉させながら移動する。保の膝の上に座った瞬間に、恥かしさのあまり、突っ伏するように丸まった。

 

「もうやだっ…………。誰もこっち見ないで………。何も言わないでっ。………知らないっ知らないっ。私のせいじゃないっ」

 

 皆の笑いが落ち着いたところで、弘太が声を出した。

 

「もうそろそろ、バラけようか? これ以上、自分の彼女を玩具にさせちゃってたら、彼氏失格になっちゃうから………。ねぇ?」

 

 弘太の声が最後に少し遠ざかる。どうやら、後ろで正座している明人に同意を求めたのかもしれない。

 

「結沙ちゃん。今日は僕たち、別室でしようか?」

 

 結沙の彼氏が、デリカシーのない提案の仕方をする。結沙はまだ、ムクレていた。

 

「…………しないっ………。行かないっ」

 

「…………じゃぁ、僕のあとをカニさん歩きでついてきても良いよ。僕が指を鳴らしたら……」

 

「うそ、うそっ。…………もうっ………。言う通りにすれば良いんでしょっ」

 

 結沙が本能的に両腕で胸と股間を隠しながら、慌てて弘太の背中を追いかける。弘太に置いていかれた格好になった梨々香と明人は、2人で居心地悪そうに視線を交わし合っていた。そんな2人も、明人ごと、梨々香の「セフレたち」に呼ばれる。昨日出来たカップル同士での濃密な時間が、今日も始まるようだった。

 

 

「結沙ちゃん、まだムクレてるの? …………みんな、君の被暗示性の高さとか、素直な性格とか、予想を上回ってくる、かかりっぷりとかが、大好きなんだよ。悪気のないイタズラだと思って、許してよ」

 

「…………全然、褒められてる気がしない。………気がついたら、梨々香にも野乃にも笑われてて、私が皆の玩具になったみたいじゃん…………。ダーリンだけの玩具ならまだしも………。…………ん? …………私、今、最後に何か言った?」

 

 部室の隣の部屋で2人きりになった結沙は、マットの上に両膝で座り込んで、プリプリと怒っていた。

 

「………仲直りのキス………しとく?」

 

「…………仲直り……しない。………キスは、するかも、だけど……………ん………」

 

 弘太の顔が近づいてくると、結沙も反射的に「キス顔」を作って迎え入れてしまう。大好きな彼氏を前にして、いつまでも自分がムクレたままではいられないことは、結沙も本心ではわかっていた。それでも、不快感だけは一応、伝えておきたくて、精一杯、好きな気持ちに抗っているのだ。弘太の舌が入ってくると、結沙の口の中が、そして次に頭の中が甘く痺れる。そして蕩けていく。ジュパッとおおげさなくらいに音を立てて、弘太の口が離れる。

 

「仲直りエッチもしないの?」

 

「…………わかんない………。仲直りするかどうかは………まだ、考え中」

 

「エッチは?」

 

「………………する」

 

「さっきも、シテッ、シテッ、って、オネダリしてたもんね。踊りながら」

 

「大っ嫌い」

 

 イジワルでデリカシーのない彼氏を、結沙が押し倒すようにして抱き締める。胸を密着させると、すぐに弘太の手がオッパイに引き寄せされる。この、ヤラしくて、女子たちを玩具にして喜んでいる性格悪い、変態で、笑顔だけやたら可愛い、結沙の彼氏を、結沙は全力で愛撫して、頬ずりして、舐めまわして喜ばせる。こんな行為を大好きだと感じるのが、今日の結沙にとっても不思議ではあった。

 

「今日、後ろからヤッテもいい?」

 

「…………弘太がしたいなら………。なんでもする………けど、………教えてくれないと、わかんないよ」

 

 結沙は弘太の手ほどきを受けながら、後ろを向いて、両手と両膝をマットにつく。さっきカニさんになって交尾を誘っていた自分は、このポジションを要求していたのかと、自覚して、また顔が赤くなる。制服を脱ぎきった弘太が、結沙のお尻の肉を開いて、恥かしいところに指を入れる。トロトロのヴァギナが、あっさりと弘太の指を咥えこむ。つい反射的に、侵入者の指をギュッと締めつける。帰さない、これ大好き、というシグナルを出してしまう。その貪欲な反応。こんなエッチなカラダの持ち主である結沙は、今、弘太と目を合わせないで済んでいるこの体勢に、少しだけホッとしていた。そして、そんな複雑な気持ちも、弘太が指を奥に入れた時の摩擦の刺激と快感とで、すぐに真っ白けになる。

 

「………血はもう、出ないみたいだね。………痛みは、まだある?」

 

「…………ちょっとだけ、ジンジンするけど………。でも………大丈夫だから…………、欲しい……………」

 

 顔を合わせていないのをいいことに、結沙は少し子供がえりしたようなあどけない口調で、ポツリと本音を漏らした。弘太の両手が結沙の腰を掴む。意外と力強いそのホールド感。全身を抱いて守ってくれるような感触に気持ちを委ねていると、大事なところにグッと、結沙のアソコが大好きなモノが、入ってきた。まるで帰宅した飼い主に舌を出して涎を垂らして飛びつく子犬のように、結沙の腰が、ヴァギナが、膣のなかが、弘太のオチンチンを全力でお出迎えする。性器が擦れ合うと、昨日と同じ快感が、喜びが、多幸感が、溢れ出して、結沙の理性を簡単に飲み込んでいく。嬉しさに震えながら、結沙が腰を振った。

 

「弘太………好きっ…………。大好きっ………………」

 

「………僕もだよ。結沙ちゃん」

 

「ダーリンのオチンチンが大好きっ。美味しいのが、ナカでわかるのっ…………」

 

「…………ダーリンって、………僕、呼ばせるような暗示入れてないよね………。それ、結沙ちゃんオリジナル?」

 

「…………知らないっ。なんにもわかんないっ。…………気持ち良すぎるっ………」

 

 結沙が背中を弓なりにして、お尻と頭を突き上げながら悶え狂う。正常位で抱いてもらうのも、抱っこの延長みたいで甘い快感がジュワーッと広がるのが好きだが、今のようにバックで突き立てられるのも大好きだ。体勢の違いからか、より深く、奥まで弘太が入ってきてくれるような気がする。このポーズが思い起こさせるからか、結沙も理性を捨てきって、発情した動物のように本能のままに快感を貪ることが出来る。その貪欲な結沙の性器のナカで、弘太のオチンチンがもう一段階、膨らんだ気がする。………もうすぐイキそうなのだ。大好きな彼氏のことは、まだ2度目のエッチでも体を繋げるだけでだいぶわかるようになってきた。

 

「…………ここ………、ブラの跡がついてる…………。セクシーだよ」

 

 弘太が上ずった声で、冷静を装った指摘をしてくる。すぐにイカないように、他ごとを考えようとしているのかもしれない。

 

「…………せっかく、弘太が選んでくれた下着を着てたのに。………あんっ………。部室に来たらすぐに、裸に剥かれちゃった。…………あんっあんっ…………」

 

 結沙は恨めしそうに愚痴る。水玉柄のブラとショーツは、今頃、部室の棚に、素っ気なく重ねられている。今日、学校の授業中、ずっと弘太の分身のように感じて、恥かしい部分を触れてもらい続けてきた、大事な下着なのに………。

 

「結沙ちゃん、あの下着を着て、今日、何かエッチな妄想とかした? …………君の発想、時々こっちの期待を超えて来るから、面白いんだよね。………ぜんぶ、正直に話してよ」

 

「はっ………はっ……………。あぁぁん、もうっ………………。妄想したわよっ。ずっと悶々してたってば。…………あんっ………………。弘太が選んだ下着だから、弘太の手で私の裸を触ってもらってるみたいって思ってたら、………今日、3回も野乃に、私が涎、垂らしてるって、指摘されたよっ……………。やんっ………………そこ、いいっ…………。やっ………休み時間にトイレで、ブラの上から、自分で胸を揉んだら………、ダーリンの手で揉まれてるみたいに感じて、…………ショーツの上からも、アソコをクチュクチュ、弄っちゃって………………あんっ………………。現国の授業に………、遅れちゃったっ…………。気持ち良すぎたからっ…………………。はぁんっ……………」

 

「………結沙ちゃん、すっごいロマンチックな妄想力…………。尊敬するわ………。…………そろそろ、出すよ。………君も一緒にイク」

 

 結沙の奥深くで、弘太が射精する。結沙も頭のなかが真っ白にスパークして、全身をピンッと張り詰めさせてイッた。四つん這いになっていた体が、マットの上に崩れていく。

 

「その発想力…………。何か生かせる暗示がないかな? ……………あ……………ポエム………とか……。面白いかも………」

 

 射精後の余韻に浸りながら、結沙の彼氏が、まだ下半身を繋げたまま、ブツブツと独り言を言っている。結沙はエクスタシーの衝撃で朦朧としているので、ただただ、マットに顔を突っ伏して、涎の染みを作ってしまっていた。

 

 

 

「先生、起きてください。…………朗読会が始まりますよ」

 

 大好きな声を聞いて、ラブリー吉沢は目を覚ます。朗読会と聞いて、意識が鮮明になる。手を見ると、さっき書き上げたばかりの、詩人ラブリー吉沢の集大成とも言えるポエムが記された紙が、収まってた。

 

「あ、ゴメンなさい。ちょっとウトウトとしていたの。………皆さん、お揃いかしら?」

 

 ラブリー吉沢が見回すと、彼女の愛すべきポエム仲間にしてライバルでもある3人が、それぞれアーティスティックなたたずまいで椅子に座っていた。ティティー真壁、ラブラブ城崎、ヴァギナ井関だ。

 

「今日の朗読会は、私からの順番だったかしら? …………聞いてください」

 

 ティティー真壁が立ち上がって、1つ咳ばらいをした。

 

「…………オッパイ。

 

 普段は重くて、鬱陶しい時もある、私のオッパイ。

 夏場は汗もかくし、谷間に汗が溜まったりもする。下乳のところに汗疹が出来たりすることもある。めんどい。

 

 けれどこのオッパイのおかげで、私には彼氏が出来た。セフレだっていっぱい出来た。

 エッチをする時、オッパイが踊る。胸が踊る。心が踊る。

 これからもよろしくね。私の右大臣と左大臣。

 

 ボインって、ボインボインッて揺れるから、ボインって言うんだよね? やっぱり。

 ……………クラムボンは笑ったよ。

 

 以上です」

 

 ラブリー吉沢たちが拍手を送る中、詩人のティティー真壁は余裕の表情で着席した。次にラブラブ城崎が起立する。

 

「…………野乃には彼氏が5人います。みんな大好きです。

 

 月曜日はマコちゃんとエッチ。

 火曜日はシューさんとエッチ。

 水曜日はユウマさんとエッチ。

 木曜日は君彦君とエッチ。

 金曜日はタモツ君とエッチ。

 野乃は今週も幸せです。

 

 5つのオチンチン。5通りのエッチの仕方。5種類の性癖。

 全部大好物。野乃は今日も、頑張ります。もっと素敵な彼女になりたいです。

 

 …………ご清聴、ありがとうございました」

 

(予定と感想言っただけかよ………)と頭の中で思ったラブリー吉沢だったけれど、マナーとして、笑顔で拍手を送る。

 

 ヴァギナ井関が立ち上がって咳払いをした。

 

「遺伝子の船。

 

 私たちの存在が皆、遺伝子を次世代に運ぶ船のようなものだとしたら、目指す港は性行為そのものということになるだろう。

 羅針盤は性欲。私は好奇心が強いし、人には知られないように気をつけてはいるものの、性欲も割と強い。つまり推進力が強い船。そういうことなのかもしれない。

 航海の途中、私は性の海に飛び込む。きっと溺れるまで泳ぐだろう。

 海のなかなら、またオシッコが漏れてしまうことがあっても、バレにくい。

 それは明確な利点。

 私は今、近い将来にまた、自分がオシッコを漏らすであろうという予感を持っている。

 あの時、私は、恥かしくも気持ちが良かったからだ。

 それすらも受け止めてくれるのが性の海だというのなら、もしかしたらそれは

 私が溺れる価値があるものなのかもしれない。

 

 以上です」

 

 ヴァギナ井関のポエムはいつもの散文的なスタイル。毅然としていて、男らしく潔い。けれどどこか少し、左脳で考えすぎているようにも、ラブリー吉沢には感じられた。順番が来たので、吉沢が立ち上がる。

 

「聞いてください。

 

 マイダーリン、弘太。

 

 オー、マイダーリン。弘太の名前を口にするだけで、お腹の下のあたりがキュンッてするの。口の中に、甘い貴方の精液の味が広がるの。

 私が大好きな味。もしも成城石井に弘太の精液味というシロップが売っていたら、私は箱買いするでしょう。けれど、商品化の過程で、私の彼氏の精液の味を沢山の開発担当者に知られてしまうのなら、私はそんな商品を望まないことでしょう。私の彼氏なんだから。

 だからお願い。そんな商品の開発に、協力しないでほしいの。彼女の私からのお願いよ。

 

 貴方は未来から来たの? ………それとも宇宙から?

 まだ私がしたことも無いことなのに、私が好きになるって、教えてくれる。

 その通りになる。

 

 マイ・ダーリン。タッチミー。エッチミー。………オー、サンキュー。

 

 気がつくと、貴方が言う通りに、私は動いている。私の気持ちも、思うことも、性格も、体質までも、貴方の言う通りになる。それは不思議だけど、こんなに気持ちがいいことなの。私は貴方のために用意された、真っ白なキャンパス。貴方が思う色に私は変わる。貴方が描く通りに、私はなる。それがすっごく、嬉しいことなの。もっと貴方の色に、私を染めてください。

 

 プリーズ・スタンド・バイ・ミー。

 マイ・スタンバイ・イズ・オーケー・フォー・エッチ。

 オー。サンキュー。

 

 イエス。アイアム・エッチ。アンド・ユー?」

 

 身振り手振りをつけて、一人舞台を演じる女優のように、自信作を読み上げた、ラブラブポエム詩人のラブリー吉沢。周りを見回すと、男子たちが痙攣するお腹を押さえながら床を這い、悶絶していた。急に詩人としてのプロ意識も、アートな世界に包まれた表現者としての陶酔感も、霧が晴れるようにして薄れていく。正気に戻った結沙は、確かに自分の字で書かれている、尋常ではないロマンチックポエムを見て、愕然とした。

 

(…………これ、ホントに私が書いたの? …………ヤバすぎ…………。オエッ。)

 

 自分の中から出てきたポエムだとはまだ信じられずに、結沙は膝から床に崩れ落ちながら、呆然とその駄文を読み返す。もっと英語の勉強をしようとも思った。

 

「ひーっ。苦しいっ。結沙ちゃん、勘弁して…………。タッチミーも聞いてて、恥ずかしかったけど、エッチミーはもう、無理だって…………」

 

 涙を流しながら、君彦が笑い転げている。サポーターの先輩たちも笑いを堪えきれずに、肩を震わせていた。

 

「ちょっと結沙、見せて…………。キャハハハハッ。『オー・サンキュー』ってなに? ポエム書いてる間も、弘太とシテるとこ、妄想してんじゃんっ」

 

 梨々香が笑う。聖クララの制服を着た、いつもの女子高生だ。

 

 

「あ………あんただって、『オッパイのおかげで彼氏が出来た』って、正直者かよ。自己評価ヤバくない?」

 

「野乃のは、これ、希望のスケジュールと感想だけじゃん。詩って、ちゃんとわかってる?」

 

「う………。……スケジュールって言われたら、そうかもだけど…………。咲良ちゃんだって、これ、宣言じゃん。…………また漏らしますっていう宣言。………まぁ、結沙ちゃんのポエムほどは、恥かしくはないかもだけど………」

 

 顔を真っ赤にした4人が、自分の恥ずかしさから目を背けようと、お互いのポエムを弄る。結沙は膝立ちになったまま、両手で顔を隠して身悶えしている。自分がもし武士だったら、恥辱に耐えかねて、切腹してしまっていたかもしれなかった。そう思ったあとで、こういった自分の想像力の飛躍が今まさに、笑われているのだと気づき、もう一段、恥ずかしさが増した。

 

「弘太、これ全部、結沙ちゃんの素のポエム?」

 

 笑いの落ち着いたユウマさんが、質問している。

 

「いやー、すっごいラブラブポエムの世界に没入させたあとで、IQをちょっと………いやちょっとじゃないけど、そこそこ落としてみたら、一気に書き上げてくれました」

 

「面白かったけど…………、こっから、次の企画に繋がりそうなネタとか、拾えた?」

 

「………えぇ、一応………はい。………まぁ、宇宙人とか、好きな色に染めるとか…………良いのかな? って………………。あの、運動場の、コスプレ・コンテストって、今日、夜まで続くんですよね?」

 

 また嫌な予感がして、険しい目つきで彼氏を見上げる結沙。けれど弘太が右手の指をパチンと弾くのを見たのが最後、視界がブラックアウトしてしまった。

 

 

 

「さっ、もうあんまり時間ないよ。…………ボディ・ペインティングって、全身にすると、こんなに時間がかかるんだね」

 

 急かすように弘太の声が、4人を起こす。目を開くと、ここはスパイラルサークルの部室。床には新聞紙が敷き詰めてある。ペンキの缶や刷毛が、所せましと並べられていた。ここは部室………というか、崇泉院学園の校舎の中…………。いや、正確には地球という星の、日本という国のはずだった。そこまでスコープを広げると、ユイサの意識はやっと、ハッキリする。

 

「…………時間が無いって、…………地球人は本当にせっかちね。…………それで、そのコスプレ大会に、今から出場すれば、この星との友好は強まるのね?」

 

 結沙が腰に手を当てると、目には真っ青な自分の腕が映る。真っ青な肌とオレンジ色の髪。結沙の母星では当たり前のコントラストでも、この星では珍しいらしく、男子たちは結沙の頭から足先までを、何度も繰り返し見まわしていた。この少年たちはスパイラル・サークルという、意識学を志している子たちと、美術部の男子たちだったはずだ。

 

「友好を強めることは我々の目的と合致します。行きましょう。ユイサ」

 

 振り返ると、肌が眩しいほど黄色一色で、髪の毛が銀色の、リリカが立っている。その隣にいるのは、肌がパステルピンクのノノ。彼女の髪の色は紫色だ。

 

「時間を気にしているなら、さっさと我々を案内せよ、地球人。諸君らの寿命の短さは理解している」

 

 肌が緑色のサクラは真っ赤な髪の毛をショートカットに整えている。この3人はユイサの母星と同じ星系からやってきて、地球を訪問している、友好外交団なのだ。

 

 小湊弘太という、笑顔がとびきり可愛い地球人の後を追いながら、ユイサたちは廊下を進む。反対方向から歩いてくる生徒たちは誰もが、立ち止まってユイサたちを驚きの表情で見た。きっと異星人に慣れていないのだろう。

 

「サクラ、多くの地球人は、我々が服を着ていないことに違和感を感じているようだ。我々も、彼らの習慣に習って、地球の衣服を着てから行くべきだろうか?」

 

「…………そこまで現地の習俗に全て合わせる必要もないだろう。我々の星の在り方を見せるのも、交流の一環だと思おう」

 

「理解した」

 

 サクラとユイサがボソボソと話す。完全な全裸の彼女たちは肌の色が地球人と決定的に異なっているため、一見すると「ボディスーツを着ている状態」にも見えるようで、弘太という少年はしきりにそのように、周囲の通行人に説明していた。

 

 ユイサたちを見た運動場の男子生徒たちは、驚きの表情か、「地球人の発情の兆候」を見せる。生物としての構成や習俗が異なっているため、彼らが「発情する」ことはユイサにとって不快感を感じることではない。弘太という少年が「興奮は星間交流の第一歩だよ」と、とても良いことを言ってきたので、その通りだと思った結沙は、手を伸ばして来た一人の少年に、自分の胸を触らせてみた。ユイサを触った、彼の手のひらが、青く色が変わる。まるでペンキが移ったような青。地球人の肌の不思議な反応に、ユイサは少しだけ小首を傾げた。

 

「コスプレ大会」というイベントは、どうやら終わりがけだったようだ。ユイサたち4人は運動場のステージに、時間ギリギリに飛び込み参加をし、喝采を浴びる。4人で地球人たちへ友好の意を示すダンスを披露したり、宇宙遊泳の仕方を実演したりしてみせた。地球人たちは大いに沸いてくれた。

 

 しかし、途中から客席がザワザワと、それまでとは違う騒ぎ方をし始める。「あれ、裸?」とか、「素肌にボディペインティングしてないか?」とか、口々に地球人たちが疑問を投げかけ合っているようだった。弘太が「そろそろ潮時かも、皆で部室に戻ろう」というので、ユイサたちはやむを得ず、ステージを降りた。

 

 

 

「はいっ。お疲れさまでしたっ。最後、ちょっとヤバかったね。…………あと、参加チーム名は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーズ』だって、ちゃんと運営に言ったのに、『アバターズ』って紹介されちゃったね……………。ま、無事帰って来れたから、いっか? …………みんな、催眠解けるよ。3、2、1っ」

 

 弘太が数を数え終えると、結沙たちはお互いを見てギョッとする。ケバケバしい色に全身を塗りたくられた自分たちは、まるで本当に地球の生き物ではないようだった。その色の印象が強すぎて、全裸でいることが逆にそこまでは目立たない。なんだから、海外の奇抜なファッションショーのモデルになったような気分だった。

 

「うわっ…………何? これ…………。梨々香は…………ちょっとスタイリッシュかも………だけど…………」

 

「裸で外を歩かせないで、って言ってるでしょっ。私たち、本当に捕まっちゃうよっ」

 

 口々に不満を言い出す4人の美少女だったが、保の言葉を聞いて、シーンと静まってしまう。

 

「まぁまぁ、これだけ全身にペンキ塗られてたら、裸って目立たないから大丈夫。それよりこのあと、ペンキを落とすためにシャワー浴びないとね。………みんな、シャワー室で女の子同士で洗いっこするの、好きでしょ? ………全身ベッタリ塗られてるから、じっくり洗わないといけないよね。………楽しみじゃない?」

 

 それを言われると、結沙たちは急にモジモジし始めて、女友達同士、チラチラとお互いに視線を交わし合うようになる。確かにこのあとのシャワーは、ハードな長期戦になりそうだった。そのことへの期待で、胸がドキドキしはじめると、もう怒りをまた呼び起こす気持ちにはなれなかった。

 

 

 

 ペンキを全身から洗い流すには、予想以上に時間と根気が必要だった。隅々まで塗りたくられた強い色の塗料を洗い流している途中、結沙たちは、自分たちのアンダーヘアーが無くなっていることに気がついて、悲鳴を上げる。………これもボディペインティングという1つの企画のために、これだけ手の込んだイタズラが仕組まれたのかと思うと、恥じらいや怒りよりも、脱力感が襲ってきた。美少女たちは無毛になったお互いの下半身を慰め合うように、手で丁寧に洗ったり、舌で丹念に愛撫しあったりして、シャワーに勤しんだ。

 

 絶対に一言は、文句を言ってやろうと、意気込んで帰ったはずの部室だったのに、彼女たちの剣幕は、弘太の合図1つで、霧散してしまう。記憶も曖昧になっていた。

 

「私たち、なんで怒ってたんだっけ?」

 

 口々に不安そうに疑問を口にする結沙たちに、弘太が「たしか、下の毛を剃る作業からボディペインティングまで、全面的に協力してくれた美術部のメンバーに、御礼も言えていない、自分たちに対して、怒ってたんじゃ、なかったっけ?」と言われると、急にそのことをハッキリと思い出す。4人で慌てて美術部のある3階へ、バスタオル1枚を体に巻いただけの姿で駆けあがると、学園祭中、フル稼働している美術部の男子たちへ、バスタオルを外して、綺麗に剃毛されている股間を見せながら、心をこめて御礼を言った。やっと心のつかえがとれる。ホッとしてスパイラルサークルの部室へ戻ってきた4人は、それぞれの彼氏や共同研究者。セフレの元へ戻る。気がついた時には、梨々香の彼氏、明人はもう、1人で家に帰ってしまっていた。きっと色々とサークルの部員たちに、暗示を刷り込まれての帰宅だったことだろう。

 

 

「結沙ちゃん、美術部への御礼はうまくいったの?」

 

 弘太に肩を抱かれて、結沙は自分の体を委ねるようにギュッと密着しながら、彼氏に答える。

 

「あの…………。弘太………、私ね、美術部の人たちに………、今日の御礼に、…………今度、絵のモデルになるって………約束しちゃった…………。なんでか…断れなくて…………。ゴメンなさい……………」

 

 自分は覚えていない間のこととはいえ、既に全身隅々までペンキを塗られたり、恥かしい部分を広げて毛を剃られたりと、散々自分の体を弄った美術部員たちだ。いまさらヌードが恥ずかしいから嫌だとは、言葉が喉まで上がってきても、口にすることは出来なかったのだ。けれど、愛しのダーリンの前でそのことを話す結沙は、恋人に対する罪悪感で、シュンとしょげかえってしまった。

 

「……………僕の可愛い、結沙ちゃんの裸が、別の部の奴に見られちゃうのか~。嫌だけど…………、結沙ちゃんからのお詫びとして、今、なにか追加でエッチなご奉仕してくれたら、許してあげよっかな?」

 

 弘太が度量の大きなところを見せる。よくよく考えると、すべて彼のイタズラが発端のような気もするが、結沙はダーリンの器の大きさに、改めて惚れ直した。

 

「ほんと? …………ありがとうっ…………。………………あの、私…………、昨日、奈緒美先輩たちがしてたみたいに……………。その…………お口で………、弘太のオチンチンを、喜ばせることが出来たら、…………ヌードモデルの件、許して欲しいな………」

 

 結沙が迷いながら、赤面しながら伝えてみると、弘太は返事をする代わりに、立ち上がってズボンのベルトを外し始める。ご主人様に呼び出してもらえた愛犬のように、結沙は喜び勇んで弘太の前に膝立ちになって控えた。

 

 弘太がズボンを下ろし、トランクスも下ろす。さっきお世話になった、結沙の大好きなオチンチンが、顔の前にボロンと出てくる。思わず反射的に、生唾を飲みこんでしまった。

 

「………あ…………あの…………。お願いがあるんだけど……………。口に入れてるところ、あんまり顔を見ないで欲しいの。変な顔してるかもしれないから………」

 

 結沙が赤い顔で目を潤ませて、彼氏を見上げながらお願いする。弘太に幻滅されて、嫌いになられたりしたら、結沙はこの先、どう生きていけば良いのか、わからないとまで、思っていた。

 

「…………一生懸命、フェラしてみて………。気持ち良かったら目を閉じておくから」

 

「あ…………はい………。弘太…………。本当にありがとうね………。ワガママばっかり、ゴメンなさい」

 

 溢れる感謝の思い、恋人への愛情、申し訳なさと同時に最高のご奉仕をしなければという義務感。色んな思いが結沙の頭の中を駆け巡る。結沙はひとまず、あれこれ考えることをやめて、無心に弘太のオチンチンを口で愛撫するのだと決めた。最初は恐々、舌を這わせる。甘い快感が口一杯に広がる。唇を大きく開いて、弘太のオチンチンを奥までパクっと口に収めた。昨日の先輩たちのテクニック。ウェイトレスを務めながら、チラチラと見てしまっていたその技を思い浮かべながら、結沙も思い切って唾液で弘太のオチンチンをコーティング。その上で頭を前後させてみると、ジュポッと生々しい音がして、オチンチンが結沙の口の中を出入りするようになる。舌を頑張って酷使して、オチンチンの下側を舐めまわした。

 

「…………なかなかイイ感じだよ。………ちょっとギコチないけど、心がこもってる感じがする。…………気持ちいいよ。…………ヨシヨシ」

 

 弘太が結沙の頭を撫でてくれる。結沙はそのまま昇天しそうになってしまった。口の中に幸せがある。頭の上からも幸せがやって来る。結沙は大好きな弘太の、大好きなオチンチンを口に入れさせてもらっていながら、大好きな手で頭を撫でてもらっているのだ。それを思うだけで、嬉しすぎて涙が出そうだった。毛を失ってツルツルになった、彼女のオンナノコの部分も、一緒にキュンキュンと鳴いているような気がした。

 

 アゴと頬っぺたがクタクタになる頃、弘太はユイサの口の中に、さっきのナカダシよりは気持ち少な目の量の精液を出した。喉の奥に当たるその粘液を、結沙は大事に大事に飲み干す。喉にベタっと貼りつく感じまでも、結沙が大好きな感触だった。

 

「なんか、お詫びのご奉仕っていうよりも、結沙ちゃんへのご褒美みたいになっちゃったね」

 

 弘太がそう言うほど、結沙は二マーッと幸せそうな笑みを浮かべて、口の中の天国の余韻に浸っていたのだった。

 

「エへへ…………。バレたか………。ご馳走までした~」

 

 結沙は、2度の射精を済ませて、今日も眠くなった様子の彼氏をマットの上に寝かして、彼のオチンチンを綺麗にするためのフェラを始めた。芯を失ったように柔らかくなっていく弘太のオチンチン。結沙はその大好物のオチンチンの、いろんな顔を見たり、味わったり出来ることを喜んだ。丁寧に、丁寧に。結沙は無くしてしまったアンダーヘアー、弘太は生やしているアンダーヘアーの一本一本を綺麗にするように、口と舌とでお掃除した。タマも、表から裏から、舌で転がすようにして舐める。弘太はもう、本格的な寝息を立て始めていた。

 

 いつまでも名残を惜しむように弘太のオチンチンやタマを舐め、綺麗になっているかを確認していた結沙。急に「あっ」と声を上げた。弘太を起こしてしまっていないか、確認する。

 

 もういちど、玉袋の裏側、陰毛を掻き分けてよく見る。ゴマ粒くらいの大きさの、ホクロを見つけた。

 

(ダーリン、ここにホクロがあるって…………。もしかして、自分でも知らなかったり、するかもしれない…………。もしもこのホクロが、毛が生えてからできたものだったら………。ダーリンのお母様だって、知らないかも……………。もしかして、小湊弘太のここのホクロのこと、知ってるのって、私だけかもっ。)

 

 そう思うと、ゾクゾクが止まらない。愛しい愛しい、可愛い可愛い彼氏の弘太。その彼のことで、世界中で結沙だけが知っているかもしれない情報がある。そう思うともう、嬉しくて嬉しくて、昨日に引き続き窓を開けて外の世界へ絶叫したくなるほどだった。

 

「うふふふ。…………ふふふふふっ……。私を思い通りに何にでも変身させて、思い通りに弄んじゃう、悪い催眠術師さん…………。貴方の秘密、1つだけ、私だけが知ってるぞーっ。…………どうだ…………。寝顔の可愛い、万能の催眠術師さん。……………私の秘密は、何でも貴方の思い通りになっちゃうみたいだけど、私だって、貴方の秘密…………。ふふふふっ。………コノ、コノ…………」

 

 満面の笑みを浮かべた美貌を左右に揺らしながら、ご機嫌の結沙は、裸で眠る彼氏の股間に顔を被せるよな姿勢で、いつまでも弘太の玉袋にある可愛いホクロをツンツンと触っていた。

 

 結沙だけが知っているかもしれない、弘太の秘密がある。そのことを胸にしまっておくだけで、これから彼にどれだけ自在に操られようと、弄ばれようと、結沙の本当の自分の芯のようなものは、失わずにいけるような気がした。

 

 玉袋の普通の皮膚と、ホクロの境界線。そのあたりを円を描くように、クルクルと指で押してみる。やがて結沙はルンルンとハミングしながら、ホクロへ向かって渦を描くように、指をクルクルと回し始める。何回も、何重にも。こうしているのが大好きな自分をじっくりと実感する。贅沢な時間だった。

 

 吉沢結沙は改めて、自分を女の子として産んでくれた、お母さん。そしてお父さんにも、心の中で、本当にありがとう、と伝えたのだった。

 

 

<おわり>

6件のコメント

  1. ありがとうございました。
    そして、すみませんでした。
    感想のやり取りを見ると、
    今回は「ショー催眠」を書きたいと伝わってきました。
    「タクマ学校 その3」でロリータで歩かせたり、
    「中2の血脈 後編」で夏休みをブルマーで過ごさせたりと、
    結構やりたい放題だったので、
    ショーと対極のがっつり準備する感じの話を頼んでもいいかなと思っていたのですが、
    負担かけちゃいましたかね。
    カラフルな4人を見られて嬉しかったです。
    次回もがんばってください。

  2. はじめまして、
    夏のMC創作の書き上げ、お疲れ様です。
    (珍しく投稿ほやほやのものを読む機会に恵まれました)

    ショー催眠もの最高ですね!
    毒牙にかかった各人各様な美少女たちが
    認識をおかしくされながらどんどん深みにはまり、
    次々辱めを受けていく様が
    かわいいやら色っぽいやら情けないやらで、
    色んな見方でゾクゾクしました。

    また新たな作品も読めたら嬉しいです。

  3. 読ませていただきましたでよ~

    結沙ちゃんが可愛い。所々本音がダダ漏れな所とか大好きなダーリンに関する妄想逞しい所とか、怒っててもデレは忘れないところとか
    もっとイチャイチャしたり二人きりでいろいろ操ってほしかったところなのでぅが、ショー催眠が主軸っぽいので仕方ないでぅね。
    うう、これで終わりなのがもったいないのでぅ。

    ユウマさんあたりが花蓮さんや奈緒美先輩あたりを落とした話も読みたいところでぅ。

    であ、今度は冬を楽しみにしていますでよ~。

  4. あー!
    本当にもう操られてる女の子の描写にさらに磨きがかかってる……
    ねえ、自分だけが知る秘密を見つけてしまって興奮したりとかね……うん。
    女の子に産んでくれた両親に感謝するシーンは、分かる一方で心にダメージが来る……!

    あとポエムはやめて……その術は私に効く……!(共感性羞恥)

  5. 全部一気に見たい派なので完結後に読ませていただきました!

    どの話でも前半部分の悪戯チックの周りが一番性癖に刺さります……
    平常心っぽい状態のみんながしれっとシャワールームに入っていってプレイし始めるような、そういうくらいのが大好物なのでごちそうさまです。
    ショー催眠系のっていいですよね……被験者(被害者?)の心境描写が相変わらず上手でとてもよいものです。語彙力が足らず評価できません……

    半年後も楽しみに待っています!

  6.  うわあロックヴァアスがらで起きてるじゃないかあすまねえそれでもわたしわこの程度この時期にそして忘れられるもまたしあわせ。
     さあともらよ、あるいわおなじじきを選ぶが良い。
     89のしょうねつよおしゃうどだあん。

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