「向こうに見える丘に、とっても気持ちの良い公園があるらしいわよ。海も見えるんだって。ベッツィーが言っていたの。今度、皆でランチボックスを持って行きましょう」
助手席に座るママ、ルシールの声は明るい。
「それは良いな。土曜の昼はそこで決まりだね」
ステアリングを握るパパのポールは愛想良く頷く。この家族は、ママが上機嫌だと、だいたいうまい具合に収まる。
「私、土曜はアマンダと映画に行く約束があるんだけど………。時間確認しなきゃいけないわ」
リアシートの左側に座っている、姉のエミリーは少し面倒くさそうな声を出す。ダニエルは、というと、特に気にするような予定も無いので、頬杖をついたまま、何も言わずに窓の外の景色を見ていた。
日差しが眩しい。南カリフォルニアの空は抜けるように青い。3か月前までダニエルたち家族が住んでいたニュージャージーのくすんだような空の色とは大違いだ。その空の面積がまた、ズドンと広く感じる。家と家の間が離れているからかもしれない。ここオークカウンティは、ロサンゼルスの郊外にある、比較的裕福な家庭が暮らしているベッドタウンだ。そんなゴージャスと言っても良い景色を見ながら、ダニエルの心は対照的に晴れない。クルマの窓から、ジョギング中のカップルが笑い合っているのを見ると、ダニエルは反射的に目を逸らして、キャップのつばを引っ張り下げた。楽しそうな通行人を見るだけで、暗くしている自分がより惨めに感じるように思えたからだった。
「ダニー。学校はどう? もうお友達は出来たのかしら?」
ママが気を遣って声をかけてくる。その甲高い声も、鬱陶しく感じてしまう。
「別に…………」
ふてくされたような姿勢と口調を崩さないダニエル。パパとママが視線を交わす。パパが両肩をすくめて見せた。
「慌てることはないさ。ダニエルのペースがあるからね」
気を遣われている空気が車内に充満したように感じて、ダニエルはウィンドウボタンを押して、サイドウィンドウを少し開ける。カラッとした風が中に吹きこんできた。
いつもはダニエルと姉のエミリーが通う高校までは、ママが運転して送ってくれる。けれど月曜日は、パパが職場まで遠回りして、ダニエルたちとママの3人を送ってくれる。家族の時間を少しでも大切にしたいという、パパの希望でこのルーティーンが出来上がった。その気持ちは良くわかる。けれど、素直に家族の会話に明るく入り込めない理由が、ダニエルにはあった。パパの仕事の都合で、ニュージャージーからカリフォルニアへ引っ越してきてからもう3か月余り。ダニエルはその間、全く新しい環境に馴染めずにいるのだ。もともと、友達が多い方ではなかったが、彼は小学生の頃はもう少し、明るくて屈託のない性格だった。その頃から仲良くしていた幼馴染が、ニュージャージーの学校には、5人はいた。それが、高校生(15歳)になってから移り住んだ、このオークカウンティでは、友達と呼べるような存在は、近所に住む、トミー・ヒルという、小太りのオタク少年だけ。明るくて人当たりが良い、姉のエミリーがすぐに新しい友人に囲まれて生活しているのとは対照的に、ダニエルの新生活はパッとしないものだった。
「着いたよ。2人とも、今週も頑張るんだよ」
「ローウェル先生とステイトン先生によろしくね。ダニーは先生に当てられたら、大きな声で発言するのよ。自信を持ってね」
学校のロータリーで降ろされると、お節介なママが大きな声で授業態度についてまで指摘してくるのを遮るように、ダニエルは慌ててドアを閉める。近くを通り過ぎる女子生徒2人が、顔を合わせてクスクスと笑っている。ダニエルはさらに一段、キャップを深くかぶった。軽く手を振るエミリーに対して、ママは窓を開けて投げキッスしている。陽気な両親から急いで距離を取るように、ダニエルは校内へと早足で歩いた。
「よう、ダニー。昨日のガ○ダム・シード、見た?」
廊下を歩いていると、無邪気な声をかけられる。ダニエルに積極的に声をかけてくれるクラスメイトはこの、トミーくらいだから、邪険には扱えないけれど、高校生にもなって、堂々とアニメの話に、月曜の朝から付き合わされるのか、と思うと、思わずため息と一緒に返事をしてしまう。
「うん。見たよ。一応………」
「凄かったよな。あれが日本では2000年代に放送されたって、信じられる? 作画もキャラクター造形も、メカのデザイン1つ取ったって、全然古びてないよ。だいたい…………」
トミーの言葉を一応きちんと追っていたはずなのに、すぐに話の内容を見失ってしまった。彼とダニエルとの間にはオタク度の大きな乖離がある。けれどダニエルが、トミーという貴重な友人の話を、上の空で聞き流し始めてしまったのは、それだけが理由ではない。今、ダニエルとトミーの横を、クラスメイトのステファニー・マイルズが、教室へ向かって歩いていくのが、ダニエルの視界に入ったからだ。
少し茶色がかったブロンドヘアーを肩までなびかせて歩いていくステファニーは、肌が透き通るように白くてスムーズ。目はビー玉のように綺麗な青色。顔の造りは人形のように整っている。そのステファニーが友達とお喋りをしている時は、屈託なく笑う。その笑顔は、美人なのに気取りがなくて、顔をクシュッと変化させて、さも楽しそうに笑顔を見せる。その表情から、性格の良さまでも、存分に伝わってくる。
友人と談笑しながら歩いていくステファニー。彼女が完全に自分の前を通り過ぎて、後ろ姿になってからも、ダニエルは彼女の様子を凝視していた。友人トミーの話をほとんど聞き流して。
「…………っていう訳で、トミノの信念はガンダムシリーズ全体に浸透しているって思うんだ。シードなんかも、その典型例さ………。………君とこうして語り合っていると、時間がいくらあっても足りないな。………もうそろそろ、行かないと。1時間目の授業が始まっちゃうよね」
気のない相槌だけ返していても、白熱のトークを展開しているトミーだったが、始業時間のことを思い出して、話を切り上げてくれる。ダニエルはまだ、少し小さくなったステファニーの後ろ姿を両目で追っていた。
「おう、新入りのチビ。お前、空手やるって、意気がってたらしいな。今度、俺と勝負しろよ。俺の兄貴はブラウン・ベルトだ。俺はイエロー・ベルト。お前がそんな細い腕でどれだけやるかしらないが、この街で最強の空手ドージョーは、コブラ会だ」
ダニエルは柄の悪いガナリ声を聞いて、始業時間ギリギリまで廊下にいたことを後悔した。9年生(フレッシュマン)の中ではイジメっ子で通っている、ジョニー・ロブソン。クセの強い赤毛とソバカス。太り気味だけど同年代の中では群を抜いて体が大きい、ガキ大将だ。
「何なら、今だって良いんだぜ。どうだ?」
ニヤニヤしている連れを前にして、ジョニーが勢いづいている。ダニエルは曖昧な笑顔を浮かべて首を横に振ろうとした。そのダニエルの肘を、横から突いてくる奴がいる。
「ダニー。我慢しなくたって良いんだぜ。こいつにわからせてやれよ」
トミーが小声で囁いてくる。ダニエルは視界が暗くなるような思いだった。
「ジョニー。何回も言ってるだろ? 僕が中学の頃にちょっと習っていたのは、伝統派空手。綺麗な型を見せたりするだけさ。君たちのはフルコンタクト空手なんだろ? どっちが強いかなんて、わかりきってる。僕には勝てっこないよ」
「そうやって、理屈をこねるところからして、気に食わねぇ。俺が興味有るのは、お前が強いか弱いか、それだけだ。いっぺん勝負したら、わかることだろうが」
ジョニーの鼻息がダニエルの顔にかかってくるようだった。
「貴方たち、いつまで廊下にいるつもりなのかしら? 授業を始めるわよ」
毅然とした大人の女性の声を聞いて、ジョニーは小さく舌打ちをする。ため息をつきながらダニエルのキャップに手をかけると、乱暴にその角度をズラした。「またな、偽物(フェイク)野郎」という毒づきとともに。ジョニーの後を追う、彼の連れ2人は、最後までニヤニヤしながらダニエルを見下ろしていた。
いじめっ子たちが教室に入っていくのを確認しているのは、数学担当のカレン・ステイトン先生。若い女性だけれどスタイルが良くて背が高い。そして何より胸が大きくてゴージャスな外見。性格や行動も、自信に満ち溢れていた。
ダニエルはステイトン先生の助け舟に感謝しつつ、教室へ向かおうとする。
「ダニエル・ランバート。…………教室では帽子は脱ぎなさいね」
「はい。ミス・ステイトン」
ステイトン先生の声は、さっきジョニーにかけたものよりは柔らかいトーンだったが、それでもダニエルへの注意も忘れない。そのホットな外見と比べて、授業態度は厳しめの先生だった。
「ダニー。今度、ジョニーに絡まれたら、スピニングバードキックをお見舞いしてやれよ」
トミーはまだ、妄想と現実の間を行ったり来たりしながら、能天気に話していた。
ステイトン先生の幾何学(アルジェブラ)の授業はなかなかに緊張感がある。それでも、ダニエルは時々、先生の言葉を上の空で聞き流してしまうのだった。彼の席からは首を伸ばすと、3つ席を跨いで、斜め前に座っているステファニーの横顔が見えるのだ。横から見た彼女の顔はまた、その端正な造形の美しさが際立つ。高く通った鼻筋。カールした金色の睫毛。真っ直ぐホワイトボードを見つめるピュアでノーブルな目。先生の声も、周りの生徒たちが立てる音も、ダニエルがステファニーの顔を見つめるだけで、遠ざかっていってしまう。それくらい、ステファニーのルックスは人を惹きつける、魅力を放っていた。
授業が終わると、ダニエルは分厚いテキストブックを閉じる。数学は全く得意ではないけれど、今は授業終了のベルが恨めしく思えるほど、彼はタップリとステファニーを眺めて過ごす時間を堪能したのだった。次の授業は物理。ステファニー・マイルズとは別のクラスだ。まだ未練がましく彼女の後ろ姿を目で追いかけているダニエルの肩を叩いたのは、トミーだった。
「ステイトン先生は厳しいけど、あの胸、あのスタイルは最高だよな。…………俺、今日の夜、家で思い出しながら、たっぷりシコれるくらい、目に焼きつけて置いたよ。あのダイナマイトボディと、キツめの美貌には、ちょっとやそっとのアニメキャラじゃ勝てないな」
興奮して話すトミーを否定するのも面倒くさくて、ダニエルは曖昧に頷きながら、教室を出る時に紺色のキャップをかぶった。物理の教室は少し遠い。あまりノンビリしている暇は無いが、あのジョニーのグループからは出来るだけ距離を置きながら2階の物理教室まで進む必要があるのだった。
物理、世界史、英文学と授業を終えて、カフェテリアでランチを食べている時も、ダニエルは視界のどこかでステファニーを探していた。彼女と一緒になる授業以外で、何回彼女を見ることが出来たか、それがダニエルにとってはとても重要なことだったからだ。もちろん、トミーは友達だ。この街でほとんど唯一の友達と言っていい。そして数学のカレン・ステイトン先生は綺麗で巨乳でスタイルも良い。叱られることさえなければ、見ているだけでも気持ちが上がる、ありがたい存在だ。後のことは、大体がゴミのようなものか、良くも悪くもない、どうでも良いようなものばかり。それがダニエルの新しい学校生活だった。もちろん、これは彼の歪んだものの見方だろう。それでも、他人がどれだけダニエルの悲観的な見方や被害妄想を訴えかけてきたとしても、そのことで彼の生活が明るくなる訳ではない。彼の今の生活に光を当ててくれるもの、それは、ステファニー・マイルズとすれ違うこと。彼女を心置きなく眺めていられる時間だった。ダニエルの正直な気持ちだ。
午後の授業も終えて、学校が終わる。ロッカーから必要なテキストブックを取り出して、リュックに突っ込むと、ホールを出たダニエルはロータリーに出る。仕事を早めに切り上げてくれたママが、車で迎えに来てくれる。姉のエミリーと一緒に、その車に乗って、家に帰るのだ。エミリーは友達2人と楽しそうにお喋りしながら、ロータリーでママの赤いヒュンダイを待っていた。
ママの車に乗り込むと、「学校はどうだった?」、「先生には叱られなかった?」、「嫌なクラスメイトに意地悪されたりしなかった?」と、運転中のママから質問攻めにあう。3つめの質問に関しては、言いたいことも無い訳ではなかったが、ダニエルは朝の車内と同じような様子で、不貞腐れたように窓の外を見ながら、適当な返事を返すだけだった。時々、自分でも情けなくなったりはする。もう引っ越して3ヶ月にもなるのに、未だにダニエルはこうした態度を取ることで、親に、親の都合で東海岸から移り住まなければならなかったこと、新しい生活に馴染めていないこと、その他モロモロをまとめて親のせいにして、抗議として表しているのだ。それらを全てパパやママのせいにして糾弾するのは、理不尽だということが、頭でわかる程度には、ダニエルは成長していた。けれどまた、だからと言って、気持ちをすっかり入れ替えて新生活に飛び込むしかない、と、気持ちをコントロールするほどまでには、心は成長しきっていなかった。イジメっ子に目を付けられていることを、母親に伝えてアドバイスを求めるとうことは、彼のプライドは許さない。けれど、全て自分の問題として受け止めて、家族には笑顔を見せる、というほどの度量はない。自分の中途半端な状況は良くわかっている。だから余計、母親の言葉の一つ一つに、苛立ってしまっている自分がいた。仕方なくダニエルは、朝の数学の授業の間に眺めていた、ステファニーの様子や仕草のことを思い出す。そうしている間だけ、嫌なことを忘れることが出来たのだった。
ダニエル・ランバートには、自宅に帰っても、することがない。テレビとソファーは姉のエミリーに占領されてしまったし、リビングにいると、またママからの質問攻めにあうかもしれない。そうなると、自分の部屋に閉じこもっているしかない。ベッドに寝そべって、仰向けの姿勢で、ボールを天井へ向けて投げて、落ちてきたボールをグローブでキャッチする。そんなことを繰り返しながら、ボンヤリと、これから自分がどうすべきなのか、考えていた。
自分が今、何を一番したいかと聞かれれば、「ステファニーと付き合いたい」というのが本当に正直な気持ちだ。けれど、今、彼女を急にデートに誘っても、来てもらえるだろうか? それよりは、何人かの友達同士で、一緒にスポーツ観戦に行ったり、ダイナーに行ったりして、少しずつ、ダニエルのことを知ってもらうようにした方が、警戒されずに済むかもしれない。けれど、男女の友人同士で出歩くといっても、ダニエルの友達は、ここではトミーしかいない。オタクのトミー・ヒル………。彼が、学校の女の子たちに、一緒に遊びに行く相手として「引き」があるかどうかくらいは、転入生のダニエルにも答えがわかりきっていた。トミーはとても良い奴だけど、他にももうちょっと、女の子たちと自然な感じで遊びに行けるような、キャッチ―な奴が必要だ………。ダニエルは、ステファニーとデートに行く前に、男友達を作ることから始めなければならないと想像すると、その道の長さにため息をつくしかなかった。
男の子の間で友達を増やすには、一緒にスポーツをやるとか、対戦ゲームで強くなるとか、楽器が出来るとか、何か特技や趣味を通じて、認めてもらうのが手っ取り早いだろう。けれど、年齢と比べると小柄で、取り立てて運動神経が良い訳ではないダニエルは、バスケットボールやフットボール、ベースボールなどで急に自分がポピュラーな選手になれるとは思えなかった。楽器はからっきし駄目だ。ゲームにはちょっとは自信があるが、ここで学校中のゲーム好きを集めて仲良くなったとしても、ステファニーとのグループデートに持ち込めるかというと、ちょっと遠回りになるような気もする。
「…………ショートーカン………カラテ………」
2年くらい、週に1回やっていただけだけれど、ダニエルの近所のセンセイに、教えてもらっていたのは確かだ。小児喘息があったダニエルの体を健康にしたくて、ママが近所のママ仲間に推薦されて、ダニエルを通わせたのだ。あまり上手にはならなかったけれど、他にスポーツの覚えがある訳でもないダニエルは、仕方が無い、とばかりに両肩をすくめて、ベッドから体を起こした。ダウンタウンまで自転車で行くと、小さなスポーツショップがあったはずだ。そこでは運動用具以外にも、格闘技のグッズも売られていた。ドーギを買いなおしても良いし、何かトレーニングに役立つものを見繕っても良い。空手でもまた始めれば、少しはダニエルを見る、周りの目も変わるのではないだろうか? 何しろ、大体の男子ときたら、心の底では「強い奴が偉い」と思っているのだから………。
ママにはディナーまでには帰ると伝えて、ダニエルは自宅を出ると自転車に乗ってダウンタウンへ向かう。スーパーマーケット、本屋、いくつかのファーストフードチェーンを通り過ぎて、レンガ造りの路地に入ると、小さな店が増える。雑貨屋、花屋、バー。ポルノショップまである。スポーツグッズ店はそうした一角にあった。郊外のショッピングモールには、アウトドアグッズ店と一体になった、もっと巨大なスポーツショップもある、けれどダニエルがここを覚えていたのは、ママが「せっかくカリフォルニアに来たんだから、マリンスポーツも楽しまないと」と言って、ここも含めたスポーツショップを家族でいくつか回ったからだ。敷地は広くないが、店内にぎっちりと商品を並べているこの店の2階に、格闘技グッズのコーナーがあることを、その時に記憶したのだった。
店は賑わっているとまではいかないが、寂れている感じではなかった。狭い店内に1階、2階と各フロアに3~4人はお客さんがいる。ダニエルは2階の格闘技グッズのコーナーに行く狭い通路、棚と棚の間の空間で、アジア人の老人とすれ違った。頭が半分禿げて、残りが白髪。口の周りには白い髭をたくわえていた。カリフォルニアでは、アジア系の人たちを良く見る。
「うーん………。この店の格闘技グッズは、………フェイカー(かっこつけ)だな………」
ダニエルは、ボソッと独り言をつぶやいた。どこのスポーツショップにも、格闘技コーナーがあるところはドーギや帯や、プロティン、鉄アレイやトレーニングチューブにミット、メットといった、基本的なグッズは陳列されている。ではその店が、ハードコアな正統派格闘技寄りの品揃えをしているのか、それとも、ムード優先というか、サブカルチャー寄りの品揃えをしている店なのか。それを見分ける商品がある。これはダニエルだけの持論ではない。以前通っていたカラテ・ドージョーのセンセイも、笑って言っていた。目立つところに、ヌンチャクが堂々と掲げられている店は、ムード優先だ。そういう店には、三節棍や、下手をすると手裏剣(ニンジャースター)まで置かれている。本当にトレーニングに役立つ道具よりも、ブドー・カルチャーに酔うためのグッズが重点的に並べられてしまっている場合が多いのだ。
「…………フェイクばっかりだな」
ダニエルがもう一度口にすると、今度は後ろから聞いたことのある声が響いた。
「へぇー。お前は本物(リール・ディール)って訳か」
嫌な予感を感じて振り返るダニエル。後ろには、今朝も学校で会った、ジョニー・ロブソンが両手を腰に当てて、両足を肩幅まで開いて立っていた。いつもはもっと癖のある巻き毛が、汗に濡れているようで、ペタッと頭に貼りついている。トレーニングか、ヘルメットをかぶっていたのか、あるいはその両方だろう。最悪なところで、最悪な奴に合ってしまったと、ダニエルは思った。
「ジェイク、こっち来てよ。こないだ話してた、ムカつく転校生がいるよ」
狭い棚の横から、ジョニーよりももっと大きな影が覆いかぶさる。最悪な奴が、もっと最悪な奴を連れてきていた。
「………お前と同い年なのか? …………小学生みたいだな」
ジェイク・ロブソンも、ジョニー・ロブソンも、同じデザインの大きいリュックを片方の肩にだけ下げていた。2人とも、きっと彼らが通うドージョーでトレーニングをして、帰りにこの店で何か買うものを見に来たようだった。ジョニー・ロブソンと言えば、オークカウンティ・ハイスクールで一番のワルだと、トミーも言っていた。12年生(シニア)のジェイクの悪名もあって、9年生(フレッシュマン)のジョニーが自分の学年でイジメっ子としてのさばっているという側面もあるようだった。
「ジェイク、こいつがこの店にいる奴らはフェイカーばっかりだってさ。俺たち、コブラ・ドージョーのことも馬鹿にしてんだぜ。いっぺん、しめときたいから、付き合ってくれよ」
ジョニーは兄といると、より気が強くなるようで、ダニエルに馴れ馴れしく肩を組んだ。ダニエルは何か、言い訳しようとしたのだが、怖さと緊張とで、口がうまく動いてくれなかった。
「こんな弱そうな奴をシメて、お前の自慢になるのか?」
ジェイクが面倒くさそうに、ジョニーに聞く。
「いや、こいつもカラテをやってたんだってさ。それも、俺たちみたいなフェイクじゃなくて、伝統ある本物のカラテだそうだ」
「ほーぅ、そうか。カラテカ同士だったら、クミテくらい、問題ないな。………ちょっと裏の駐車場まで来な」
ジェイクがアゴで、ジョニーとダニエルに指示をする。ダニエルは口を半分あけたまま、首を横に振っていたのだが、肩から首をガッチリとジョニーにロックされて、引きずられるようにして、1階へ、そして店の外へと連れ出されてしまう。レジのオジサンはジェイクとジョニーのラング兄弟を見ると、小さく首を横に振りながらも何も言わない。ダニエルはレジでバンデージを買おうとしていた、さっきすれ違ったアジア系の老人を見た。本当は助けを求めたかったが、有無も言わさずに店の外へ引っ張られる。老人は、ダニエルの顔を、マジマジと見つめていたが、顔の表情は変化しなかった。東洋人はもともと表情が読みづらい。そして、そのおじいさんは特に、哀れみとも警戒ともとれるような視線で、ダニエルを見ていた。
「ジョニー。聞いてくれ。僕が習っていたのは、伝統派のカラテで、実戦はほとんどしない。君たちがやっているものとは、違うんだ。だから比べても意味が無い。僕は自分のカラテだけが本物だなんて、一度も思ったことないよっ」
店から5フィートも引きずられたところで、ダニエルは本当の危機を感じてやっと声を絞り出した。ジョニーが理解できなくても、兄のジェイクならわかってくれるのではないかと、精一杯、大きな声を出したつもりだ。
「俺はとにかく、お前が嫌いだから、ぶっ飛ばしたいだけだ。カラテの流派がどうとか、どうでも良いんだ」
ジョニーがダニエルの首を腕で締めるくらいに力を入れる。
「おい、ジョニー。………放してやれよ」
ジェイクが振り返って、近づいてきた。ジョニーの腕の力が緩む。ダニエルはホッとした。
そうしてダニエルが緊張を緩めた瞬間に、みぞおちの真ん中に、ジェイクの膝がドスッと入る。ダニエルは再び息が出来なくなって、路上に転がった。衝撃の後から激痛がやってくる。のたうち回りたいような痛みだけど、体が動かなくて、ただ丸まって道端に寝そべることしか出来なかった。
「お前がどこのドージョーで何をやってようと、どうでも良いけど、そんな腰抜けみたいな態度しかとれないんだったら、カラテカを名乗るな。俺たちまで甘く見られるだろうが」
ジェイクが上からダニエルに、軽蔑するような言葉を投げかける。ダニエルはまだ顔をしかめたまま、うずくまっていることしか出来なかった。
「そうだっ。わかったか? ………チキン野郎っ」
道端にうずくまっているダニエルをジョニーが容赦なく蹴る。力はあったが、さっきのジェイクの膝蹴りよりはだいぶんマシだと思えた。
「…………もう、そのくらいにしておいたらどうだね」
訛りのある英語。ダニエルが助けを求めて振り返ると、そこに立っていたのは、さっきのスポーツショップにいた、アジア系の老人だった。さっきと同じく、読み取りにくい表情をしているが、乱暴な若者2人を前にしても飄々とした物腰を崩さない。
「ジイサンは怪我したくなかったら、引っ込んでな。………オウッ…………ウゥウウウウッ。………ウォッ!」
肩をいからせて老人に近づいたジェイクの背中で、小柄な老人が見えなくなったと思ったら、ジェイクの大きな体が衝撃を受けて折れ曲がる。そのまま一回転。凄いスピードで宙を舞ったのだった。
「ジェイク! …………なんだこのジイサン………」
学校一の暴れん坊と噂される自分の兄が、レンガの地面に叩きつけられて気を失うのを見て、後ずさりするジョニー。そのジョニーにヒョイヒョイと、身軽に近づいてきたジイサンは、ほとんど間合いの無い距離から、チョンッと軽くジョニーの胸元を小突く。それだけで、ジョニー・ラングは膝から崩れ落ちて、地面に伏せた。気を失ってしまったようだ。
「…………ワン・インチ・パンチ?」
「…………ただの中段突きだよ………。だが、君たちがやっているよりも、肩の力を抜いた方が、威力が増すこともある。…………ブドーとは、そういうものだ。……………大丈夫かね? 少年」
老人は、温厚そうにダニエルに手を伸ばした。ダニエルは老人の手を掴み(思っていたよりもずっと分厚くて硬い手だった)、みぞおちを押さえながら立ち上がる。御礼を言って、ダニエル・ランバートと名乗ると、老人は自分の名前をパット・ミヤグニだと、教えてくれた。ミヤグニ・サンと、ダニエルはこうして出会い、知り合ったのだった。
。。
ミヤグニさんはダウンタウンから歩いて15分ほどのアパートメントに住んでいるというので、ダニエルは自転車を押して、歩きながらついていくことにした。このあたりで、ダニエルのような子供ではなく、大人でありながら徒歩で移動する人は珍しい。ジョガーか犬の散歩をする人以外で、それなりの距離を歩いて帰る大人を、ダニエルは久しぶりに見た。ミヤグニさんは、現在、独りで暮らしていて、アパートの管理人兼便利屋のような仕事をしているらしい。
「ミヤグニさん、僕はもっと強くなりたいんです。僕にカラテを教えてくれませんか?」
ダニエルは、思い切ってこの、白髪の老人にお願いしてみた。蹴られて地面に転がっている姿を見られたからか、何度も会ったことがあるクラスメイトに対するよりも、思い切ってお願いごとをすることが出来た。それはもしかしたら、この老人の飄々としていて包容力の有りそうな、独特の佇まいがそうさせたのかもしれない。
「私が師匠から教わったものはね、ダニエル。君たちが知っているモダンなマーシャル・アーツとは違って、もっとこう、英語では説明しづらい、ものなんだ。なかなか、ロジカルで合理主義のアメリカ人青年にきちんと伝授できるものでは、ないかもしれない」
アジア人というのは、どうしてこう、もったいぶった言い方をするのだろう? けれどダニエルにとっては、渋られるほど、さっき見た、神業のような身の捌きが、魅力的なものに感じられるのだった。
「ミヤグニさん、お願いします。一切文句を言いません。僕を強くしてください。センセイ。お願いします」
ダニエルは立ち止まって自転車を止めて、きちんとお辞儀をしてみせた。沖縄生まれの日系アメリカ人だというミヤグニさんは、きっとこの、ダニエルの精一杯の折り目正しいお辞儀に、好印象を抱いてくれるはずだ。そう思って、声をかけられるまで、頭を上げなかった。
「…………明日また、学校が終わったら、私の家に来なさい。宿題を終わらせてから来るんだよ。ちょっとした雑用を手伝ってもらおうかな。まずはそこからかな」
ダニエルはミヤグニさんの言葉を頭で反芻してやっと意味を理解して、ガッツポーズを取った。ようやく、みぞおちの痛みは治まりつつあった。
。。。
その日から、ダニエルの、ミヤグニさんのもとでの修行が始まった。修行といっても、やっていることは雑用そのもの。彼が管理しているアパートの柵のペンキを塗りなおしたり、壁にワックスをかけたり、断線してしまった配電盤や電気プラグを直したり、古くなったマットを運び出して入れ替えるのを手伝ったり。カラテとは全く関係ない、彼の仕事の手伝いばかりさせられた。あえて言うなら、その日の仕事が終わったあとで10分くらいミヤグニさんと2人でする、深呼吸の練習。武道っぽいことといえば、これくらいで、突きや蹴りの練習は1つも指導してもらえない。こんな日々が何週間も続いた。
1月近くもこんな雑用だらけの日々を我慢できたのは、ダニエルの学校生活がほんの少しだけ、マシなものになったからだ。「ダニエルが日系人のジイサンの家に出入りして、カラテを学んでいるらしい」そんな噂を聞いたのか、イジメっ子のジョニー・ラングはダニエルに絡んでくるのを控えるようになってきた。もちろん、取り巻きたちの目も気にしているのか、ダニエルたちに対しての強気な態度は崩さない。けれど、ダニエル1人を集中的にからかったり、喧嘩を求めてくるようなことは、めっきり減った。それだけで、ダニエルにとって学校に行くストレスがずいぶんと緩和された。
雑用をこなしている間、ミヤグニさんはよく、ダニエルに聞かせるともなく、カラテの源流や沖縄文化、日本やアジアの歴史のことをつらつらと話していた。ペンキ塗りやワックス塗り替えの単調な作業に飽きていたダニエルは自然とそれらを聞いて覚える。世界史の授業でアジアの近代史を学んでいる時に、何度か、先生からの難しい質問にダニエルが手を挙げて答えることが出来た。先生に褒められた以上に嬉しかったのは、ステファニー・マイルズがダニエルの席を振り返って、感嘆したような表情を見せたことだ。口を「ワオ」という形に動かしながら、小さく首を横に振るステファニー。地味で陰気な転入生が、初めて学年屈指の美少女に認知してもらえた瞬間かもしれない。性格の良いステファニーは、それから、ダニエルとホールや廊下ですれ違う時、軽い挨拶の言葉を交わしてくれるようになった。その瞬間だけ、ダニエルは天国にいるような気持になれるのだった。
そうしたスクールライフの改善で、ダニエルは雑用の日々を1か月までは我慢してこなすことが出来た。けれど、1月を過ぎたあたりで、流石に痺れを切らしてしまう。
「ミヤグニさん。一体、いつになったら僕にカラテを教えてくれるの? もういい加減、僕の心構えもわかってくれたでしょ? これ以上のただ働きは、勘弁してよ。お願いです。僕にカラテを教えてください。センセイ」
ペンキの缶とハケを地面に下ろして、自分も芝生に座り込んだダニエルが、不満を漏らしながら懇願する。先月の出来事の印象が薄れてきたのか、記憶力が弱いのか、最近また、イジメっ子のジョニー・ラングがダニエルにちょっかいを出してくるようになっている。ダニエルは、早くミヤグニさんにカラテの稽古をつけてもらって、強くなる必要を感じていた。その焦燥感に耐えかねて、雑用ばかりの放課後の生活に不平を言ってしまったのだ。
「………ダニエル。最初に言っただろう。君たちの思う、モダンでロジカルなマーシャル・アーツとは、私が身につけたものは違う。教え方も、少しばかりこみいったものに、ならざるを得んのだよ」
1ヶ月も一緒にいるうちに、ダニエルはすっかりこのおジイサンに心を許していたので、自分のグランパにねだるように、お願いを続ける。
「こみいったものでも、何でも良いから、いい加減、教え始めてもらわないと、僕、また、あのジョニーにイジメられるようになっちゃいます。僕、早く強くなりたいんです。お願いですよ。センセイ」
ミヤグニさんは少し遠い目をして大きなため息をついた後で、ダニエルに手のひらを見せて制した。
「やれやれ………。わかったよ。ダニエル、私についてきなさい」
ミヤグニさんはそう言って、アパートの敷地の角まで歩いていく。柵の向こう側には歩道があり、ジョギングや犬の散歩をしている人々が時々、彼らの前を横切っていく。
「ダニエル、だましたようで悪いのだが、私は君に、カラテを教えるつもりはない」
ミヤグニさんの言葉は鉄のハンマーのように、ダニエルの頭を叩きのめした。
「えぇっ? …………そんな………。ひどい……………」
「すまんが、現実のカラテは万能のニンジュツのようなものではない。自分より体格の大きな相手を確実にねじ伏せることが出来るようになるには、長い年月の鍛錬が必要なんだ。ましてや、相手がこの前の、ジェイクとかいうチンピラのように………。そもそも空手をやりこんでいて、君より1フィートも大柄な力自慢という場合。そうした相手を倒せるようになるには、不意打ちのような一撃に賭けるか、数年かけて君の地力を上げるしかない。どちらの方法も、君の学校生活を安心なものにするには、効率が悪いんだ」
「じゃあ、今までの雑用が、実は、カラテの受けや捌きに繋がる動きの鍛錬になっていた、とか、そういうこともないの?」
ダニエルは微かな望みをかけて、質問する。ミヤグニさんは何を質問されているのかわからない、といったくらい、キョトンとした表情を見せた。
「そんなことをするくらいだったら、始めから、受けや捌きの練習をさせるよ。相手の動きがあって、タイミングを合わせてこその、防御だろう? 雑用は雑用。カラテの稽古は稽古。別物だ。だいたい、ワックス職人がみんな一流の空手家になるんだったら、空手道場なんて、そもそもいらんだろう」
ミヤグニさんの言葉は、とても説得力があるけれど、そのことがまた、余計に腹が立った。
「じゃ、その単なる雑用をなんで何週間も、僕にさせたんだよっ。そもそもどうして僕を助けてくれたの? 僕を強くしてくれるんじゃ、なかったのかよ!」
「ダニエル」
ミヤグニさんの喋り方は穏やかだけれど、ダニエルの強い剣幕を一気に制するだけの迫力があった。
「よく聞きなさい。私はあの日、君を助けたのではないよ。…………あのチンピラども、ジェイクとジョニーと言ったかね? 助けたのはあの2人の方だ。君からあの2人を助けたんだよ。君には力がある。特別なものだ。だから、私は君が、それをうまく制御出来るようにしてあげたいと思って、これまで君と付き合ってきたのだよ」
「特別な力? …………いったい、何のことで……」
「右か、左か」
ミヤグニさんは柵から歩道を眺めながら、ダニエルの顔も見ずにそれだけ言う。
「はい? ………さっきから、あなたが何を言っているのか……」
「良いから、右か、左か、どちらか君が決めるんだ。ダニエル」
ミヤグニさんは右手の指を伸ばした状態で、手のひらを前に見せるように、胸の高さまで掲げていた。何かに集中しようとしているのか、ダニエルへの言葉のトーンが、少し厳しめになっている。ダニエルは気圧されるように、仕方なく答えた。
「………じゃ、右で……」
一体何が始まろうとしているのか、ダニエルがミヤグニさんの真横まで歩み出ると、彼は右手を胸の高さに挙げたまま、薄っすらと両目を閉じていた。彼の手のひらが向いている方向を目で追ってみる。ダニエルの口がポカンと開いた。こちらに向かってくる、ローラーブレードをはいたサングラスの男性が、右手を高々と上げながら、滑走している。左手には馬鹿デカい、ステレオを持っていた。あっという間に通り過ぎていくローラーブレーダーのお兄さん。ダニエルは口を開けたまま、その後ろ姿を追っていた。
「次は、右か? 左か?」
ミヤグニさんが尋ねる。3人くらい試しただろうか? 向かいのダイナーに入っていくオジサン、犬の散歩をしているオバサン、アイスクリームを舐めながらキックボードに乗っている女の子。皆、ダニエルが指定した方の腕を、ミヤグニさんから何のサインも受け取ることなく、綺麗に上に掲げて、ダニエルたちの前を通り過ぎて行った。
「どういうことですか? …………僕の頭がおかしくなってる? ………それとも日本流のオリエンタル手品か何かですか?」
「………チーだよ。『氣』と呼んでいる。元々は古代中国の武術や東洋医学が発達するなかで、整理されていった概念だ。人間の生のエネルギー。魂の構成要素のようなものかな?」
ミヤグニさんは自分の顎髭を撫でつけながら、ゆっくりと、そう言った。ずいぶん昔に学んだことを思い出すような目をしている。もしかしたら日本語で思い出した言葉を、一語一語、英語に直しながら話しているのかもしれない。
「………カラテでなくて、これを僕に伝授するっていうんですか?」
「んん………。君は既にこの氣をずいぶんと練りこんでいる。もっともそれはネガティブな、『邪氣』としてだったがな………。いずれにしても、正義でも悪でも、素養は素養。ダニエル。私は、君がその素養を、自分を壊す方向に行かないように、導くことが出来れば良いな、と思っただけだよ。この氣を扱うには、多少の精神力が必要だ。最低限の雑用に耐えられるくらいの、自制心は不可欠だ。そうでなければ、自分が自分の氣に、振り回されて終わる」
ミヤグニさんが顔をしかめると深い皺が寄る。その様子を見て、ダニエルは不吉なことを想像して、生唾を飲んだ。
「けど、僕にこんなこと、出来っこないですよ。こんな力があるんだったら、最初から、ジョニーにイジメられたりしない」
「修練を経ていない、素養だけ持っている氣使いは、一番危険な存在かもしれない。本人も知らないうちに、他人を害してしまうのだから。もちろん、その力の効果は、目で見てわかるようなものではない。短期間に効果を現すようなものでもない。時間をかけて、恨みに思う相手の、運命を狂わせ、人生を徐々に徐々に破損していくもの。それが邪氣だ。私は君に、うまく邪氣を抜いて、心身を流転する氣の流れを良くして、心のバランスを取るための技を授けようと思う。そうすることで、君は間違いなく強くなる。そして多少の悪戯や人生のズル(チート)も、経験することになるだろうな………。やむを得ない。陰があって陽がある。氣使いだけが聖人であることなど、望めないことだ………」
ダニエルはミヤグニさんの言っていることの半分も意味を理解出来なかったけれど、それ以上質問したりすることも出来ないような空気に飲まれていた。とりあえずこの日系の老人が、冗談や人生に役立つ比喩として話をしているというのではないことはわかる。この人は、何というか、本物だった。
「ダニエル。そこで両足を肩幅に開いて、腰を少し落として呼吸を整えなさい。タンデンを意識した呼吸法だ。綺麗な空気を取り込むと同時に、自分の体の中をエネルギーが循環するところを想像しながら、呼吸を深く、強くしてみなさい。………あの女性に向けて右手を出して、自分とあの女性の意識が接続されるところを強く想像しなさい。断線したコードを直して、ソケットに端子を入れなおす作業を何度もやっただろう? あれを思い出せばいい。彼女の後頭部あたりにソケットがある。自分の手のひらから端子のついたコードが伸びる。端子が少し錆びついているかもしれない。回転させて接触が良くなる場所を探る。必ず接続出来るはずだ。これまでもそうだっただろう?」
沖縄古来の武道にしては、ずいぶん生活じみたイメージを与えられたと思ったが、ダニエルは集中する。呼吸のリズムが特殊で、一瞬、酸欠のような現象が起きるのか、確かに自分の体の周りに、チカチカと光のようなものが見える気がした。そのチカチカしたものが体の周りと廻っていく様子を思い浮かべると、僅かにネットリとした粘り気のような感触すらおぼえた。
(ミヤグニさんの年齢だと中腰の姿勢が辛いからって、配線を直す作業は良くやらされたな………)
ダニエルは少しだけ恨めし気にここ1カ月の雑用のことを思い出しながら、自分の手からコードが伸びて、彼の前の歩道を軽快に走り去っていこうとする、スポーツウェアのお姉さんの後頭部、赤い髪を縛ったポニーテールが左右に揺れる、後頭部を狙って、想像上のコード端子をグイッと差し込んだ。相手の体の周りにも、ネットリとした光の循環のようなものがあるので、僅かな抵抗があった。それは、ミヤグニさんが口にしていないけれど、ダニエルが勝手に感じた手応えだった。接触の良い角度を探りながら、端子を回し入れる。手に感覚がハッキリと残っているほど、やり慣れた作業だ。
………ブツッ…………ボボボッ………。
始めは断続的に、やがて安定して、何かの接続が発現したような感触を得た。特殊なリズムの呼吸をしながら、意識していたエネルギーの流転が、本当に走っているお姉さんも介して、一体の流れが出来たかのような、感覚を覚える。
「これが、『氣の道』が繋がった状態だ。よく覚えておくこと………。立ち止まって、右手を挙げさせてみなさい。自分の体を動かすのと、それほど変わらない。ただ、心の中で念じて接続された相手に氣を送るだけだ」
やったことのないことばかり、指示されるので、ダニエルは眉をひそめながらも、集中力を切らさないように、言われたとおりのことを念じる。それまで一定したペースで走っていた、タイツとスポーツトップスを身に着けているジョガーのお姉さんが、ふと足を止めた。迷いながら、ゆっくりと右腕を上げる。
「こっちを向いて、近づいてくるように念じてみなさい。最初のうちは遠くの相手に氣を送り続けると、消耗してしまうから」
『こっちを向いて。………こっちへ来て』
ダニエルがそう念じて、自分の足を動かす時と同じように(止まったままで)足を動かすことを考えていると、ジョギング中だった、黒髪ポニーテールのお姉さんは、ゆっくりとこちらを向いて、一歩一歩、少しギコチないようにも思える動きで、ダニエルとミヤグニさんがいる場所まで、戻ってきたのだった。それも右手をピンと空へ向けて挙げたままでだ。その表情を見ると、夢でも見ているかのように、ボーっとしている。顔はとても綺麗な、ラテン系のお姉さんだった。
「他の動きも、試させてもらいなさい」
ミヤグニさんにそう言われても、ダニエルは急には、動きのバリエーションなんて思いつかない。とりあえず、左手も上に挙げてもらった。両手を上に挙げたまま、右足も浮かせて、片足立ちになってもらう。運動好きと思われるお姉さんは、均整のとれたとても綺麗なプロポーションをしていた。片足のまま、ピョンピョンと飛び跳ねてもらう。体のバネがあるので、15センチくらいは簡単に宙を飛ぶ。両手を鳥が羽ばたくように、伸ばしたままで上下させる。思い通りに動いてくれる大人の女性。ダニエルは思わず、口から笑みを漏らしていた。ゲームのキャラクターやラジコンを上手に操作出来た時の快感を何倍にもしたような嬉しさだ。表情こそボーっと前を眺めているが、ここにいるのは活動的で綺麗な成人女性。そんなお姉さんが、ダニエルが念じたままに動いてくれるのを見ていると、なんだかムズムズするような妖しい快感が、心の底から湧き出てくるのだった。
少し慣れてきたダニエルが、心の中で命じると、綺麗なお姉さんは腰を落として、頭を前後に突き出しながら、ニワトリの物真似を始める。ダニエルはいつの間にか、声に出して笑っていた。そのお姉さんが無表情のまま、ニワトリの動きを止めてその場に両足で立つ。直立の姿勢から、両手が腰の高さまで持ち上がると、運動用のトップスの裾に手をかけた。
「ダニエル………」
ミヤグニさんが何か言おうとした時には、ジョギング姿のお姉さんはトップスを鎖骨のあたりまで、両手で捲り上げてしまった。スポーツブラも一緒に、だ。ダニエルの目の前に、大き目のオッパイが、ブルンッと、ダイナミックに零れ出た。揺れるオッパイの中心にある、肌色の乳輪ともう少し色の濃い肌色の乳首も、ダニエルの目の中に飛び込んできた。
「うわっ………。本当にやった………」
ダニエルは驚いて、2歩ほど後ずさってしまった。ミヤグニさんは両目を閉じ、15度ほど顔を上げてため息をついた。
「ダニエル、この人に、服を戻すように伝えなさい。心の中で」
「は………はい。………ゴメンなさい」
ダニエルは、恥ずかしそうに、ミヤグニさんに謝った。目の前で大きなオッパイを放り出しているお姉さんだけが、無表情で前を見据えながら、両手でトップスを掴んで静止していた。その両手が、ダニエルが心で念じると、スルスルと下がっていって、胸を隠す。ダニエルもやっと安心の一息をつくことが出来た。
「………本当にあんなことするって思わなくて………。その………どこまで、………念じたままに動いてくれるのか、試してみようとか…………。ゴメンなさい。もうしません」
「彼女を解放しようか」
ミヤグニさんは穏やかに言う。今度は彼の指示に従って、『氣』で作ったプラグとコードを、ジョガーのお姉さんの後頭部から抜く、という動作をやってみた。急に、お姉さんの表情に生気が戻る。我に返ったお姉さんは、左右を見回す。気がついた時、急に目の前にいた少年と、アジア系の老人に小さく「ハーイ」とだけいうと、振り返ってまた軽快に走り出した。少し首を傾げながら、走り去っていくお姉さんの姿を、ダニエルは呆然として見送っていた。
「君が色んな思いを悶々と抱えるティーンエイジャーだということは、私も良くわかっている。このような技術を今の君に教えて、良からぬことには絶対使うな、とは言っても無駄だろう。………それでも、人を不要に辱めたり、傷つけたりしないように、多少の配慮を付け加えることは、君なら出来るはずだ。その点を良く考えて欲しい」
「………はい。忘れません」
「いや…………忘れるだろう。…………それでも、時々は、思い出して欲しいんだ。陰と陽のバランスが大きく崩れては、皆が健康に幸せに生きられない。陰を完全にシャットダウンする、なんていうことは求めないで良い。しかしバランスと調和。これを時々、思い出すようにして欲しい」
ミヤグニさんは、何かを思い出すように、一つ一つの言葉を噛みしめながら、ダニエルに伝えてくる。ダニエルはミヤグニさんを真っ直ぐ見据えて、「押忍」と返事した。
ミヤグニさんは、今、ダニエルに教えた氣の使い方を『イの壱』と呼んだ。
「氣を1人の相手と繋いで、接続を維持する。その間、自分の意思を相手に一方向で送る。それが『イの壱』。便宜的な整理だが、何の名前も無いよりも、あとになって混乱しにくい。そう呼ぶようにしよう。後は、実生活で実践して、使いこなせるようにしていきなさい。相手の動作を操作するだけではない。氣を練りこめば、感情も、信条や性格も、あるいは記憶にも影響を与えることは出来る。但し、まだ氣が不安定な時期にあまり大勢の人に同時に接続しようとしないこと。まずは最大で5人。1週間に1人ずつ増やしていって、今年の間は最大で12人までの接続としなさい。何事も節度は重要だ」
「押忍っ。センセイ」
ダニエルは先生を心配させないように、真剣な表情を作ってお辞儀をしてみせた。しかし、ミヤグニさんの心配そうな思案顔は、変わらなかった。
。。。
次の日の学校で、ダニエルが最初に探したのは、学年でも指折りの美少女、ステファニー・マイルズだった。『イの壱』という学んだばかりの技で、最初に『氣』を使って影響を与えたい相手は、イジメっ子のジョニーでもなく、美人教師のステイトン先生でもなく、ダニエルの片想いの相手、ステファニーだったのだ。むしろ、彼女と恋人同士になることさえ出来るなら、他の全ての些細なことは、どうでも良いとすら思えた。
その愛しいステファニーは、ホールで友人たちと談笑していた。ダニエルの目には、彼女の周りだけ、輝いているように見える。昨日見た、氣で言いうなら、彼女は魅力という氣を迸らせているようにすら感じられた。ダニエルは2度ほど深呼吸をして心を落ち着かせて、呼吸法を変化させる。いつもミヤグニさんと一緒にやっていたことを、学校の騒音の中で1人で行おうとすると、少し違和感もあったけれど、集中するとそのことも気にならなくなる。目を薄っすらと閉じていても、自分の周りで流転するチラチラする光とその集合体の、やや粘り気のある感触は、昨日と同じように戻ってくる。自転車に一度乗れるようになると、次からはスムーズに乗りこなせるように、『氣を使う』ということにも、コツのようなものがあるらしかった。
自分の手のひらから、光るプラグとコードが伸びていくイメージを強固に持つ。氣は可変的なエネルギーで、強いイメージに従って形を変えるらしい。軽く閉じていた目を開けても、今のダニエルにはそれが見えている。コードを、優雅に友人たちとのお喋りに興じているステファニーに少しずつ近づける。そして彼女の頭に挿入する。彼女がまとっている薄い氣のヴェールを感じるだけでも、それは心地良い感触だった。そこにさらにグッと力を入れて、光るヴェールの抵抗を押しのけて、想像上のソケットへ差し込む。端子同士が氣を交流させる時、ダニエルはあまりの心地良さに、ほんの少しだけ、ジーンズの中で射精してしまったような気がした。
『ステファニーは、ダニエル・ランバートのことが大好きになる。彼への愛は何よりも強大で、彼と一緒にいるためなら、どんなことだって喜んで出来るようになる。ダニエルのことを考えるだけで、最高に幸せになる。ダニエルのことが好きで好きで、仕方がなくなる。ステファニーはダニエルのことが大好き。デートの誘いも断らない。彼と一緒にいるのが一番楽しいこと。身も心も彼に捧げられる。それは最高の幸せだ。』
絶対に失敗したくなかったダニエルは、昨夜ベッドの中で考えてきた言葉を全部、氣に練りこんでステファニーの頭の中に流し込んでみた。念を入れて、重要だと思うフレーズは何回か繰り返して押し込んでみた。
「ステファニー? …………あなた大丈夫?」
彼女の友人の1人が、声をかけて彼女の肩を揺すっている。ダニエルが集中を一旦止めて彼女たちを見てみると、ステファニーは夢でも見ているかのようなボーっとした表情で、わずかに口を開いて、立ったまま、まどろんでいた。友達に肩を揺すられると、首から上は力なくユラユラと左右に揺れている。ダニエルの想いが溢れすぎて、急に氣を送り込みすぎてしまったのかもしれない。そう思ったダニエルは、少し心配になって3フィートほど、ステファニーたちのいる場所の方へ駆け寄った。
ダニエルが氣の急激な注入を止めたからか、ステファニーが寝起きのような顔つきで正気を取り戻す。『氣のコード』は繋がったままでも、きちんと正気にはなれるようだ。そんなステファニーの様子を注意深く伺っていたダニエルと、彼女と、目が合う。その瞬間、ステファニーの両目が大きく見開かれて、両手が感電したかのように開いた。
「ダニエルッ!」
ステファニーがまるで、生き別れの家族を見つけたかのような激しい様子でこちらに駆けてくる。その様子を、彼女の友人たちも呆然と見守っていた。いつもの上品な物腰と対照的に、飛びつくようにしてダニエルに抱きついたステファニーは。一度、じっくりと彼の顔を凝視した後で、おもむろに、彼の唇に自分の唇を重ねてきた。その勢いのせいで、彼女の髪の毛が横から、2人の唇の重なりの間に紛れ込んでしまった。それを気にするでもなく、舌を入れてくるステファニー。ダニエルは、驚きつつも、至福の時間を過ごさせてもらっていた。
「ぷはっっ!」
息が続かなくなったステファニーが、泳ぎの最中のように口を離して息継ぎをする。少しだけ呼吸を整えた後で、ダニエルと目が合った彼女は、まだ荒い呼吸のままで、一言だけ言う。
「ダニエル。私の全部は貴方のものよ」
それだけ伝えると、満足したかのように口元に笑みを浮かべて頷き。また熱烈なキスを始めるステファニー。ホールにはいつの間にか、人だかりが出来つつあった。
「ウォウ、ウォウ、ウォウ。ステファニー。ちょっと落ち着いて。………2人でゆっくり話そう。ちょっと場所を変えて、冷静に話をしようよ」
ダニエルが彼女の口から自分の口をズラして、それだけ伝える。その間も、ステファニーはダニエルの頬に、オデコに、と、繰り返しキスの応酬を見舞うのだった。
「ちょっと………、2人で話してくるよ」
ダニエルが、やむを得ない、という表情をしながら、ステファニーの頭を指さしつつ、彼女の友人たちにも目と表情で伝える。友人たちは両手を腰に当てたり、腕組みして立ち尽くしながら、「納得はしていないが、仕方がない」といった表情でこちらを見つめるか、首を横に振っていた。移動中、少し冷静さを取り戻したようで、ステファニーは顔を赤くして周りの目から逃げるように、ダニエルの手を掴んで後ろをついてきた。
「この部屋は誰もいないね。ステファニー。一体、急にどうしたの?」
ダニエルが空き部屋に入ったところで振り返って聞いてみると、ステファニーは両手で自分の両頬を、挟み込むように覆っていた。
「わからない。自分でも変なことを言っているっていう気はするけど、でも我慢できないの。ダニエル、貴方のことが好きすぎて、この気持ちを抑えておくことなんて、絶対に無理。それくらい、貴方のことが好きで好きで、仕方がないの。例え貴方がうちの隣に住んでいるオジイサンと同じ柄のシャツとズボンを着ていたって、貴方が好きだって言うわ」
「じゃぁ…………。僕が、君を、学校の後で、僕の家においでよって誘ったら?」
ステファニーは当たり前のことを力説するかのように、両手を広げて身振り手振りもつけて回答した。
「そんなの、行くに決まってる。私にとっては大好きなダニエルの家は、ディズニーランドよりも素敵な場所よ。一生、貴方の家の部屋の片隅に住まわせて欲しいくらいっ」
両手を胸の前で拝むように組んで、嬉しさで興奮するステファニー。その表情の動きの1つ1つが、どれも可愛くてダニエルをドキドキさせた。
「…………じゃ、今日はママのクルマに、僕と姉のエミリーとで帰宅する予定だったんだけど、君も一緒に、直接僕の家に行く?」
「…………あ……………」
その時初めて、ステファニーが浮かない顔をした。目を伏せて、少し考え事をする。
「いや、あの、君がそうしたくなければ、自由にしてもらっていいんだけど。………そもそも、いきなり自宅に、っていうのが急な感じだったら、最初は二人で、どこかのダイナーでポテトでも食べながら………」
ステファニーは、まだ迷いながら、少し恥ずかしそうに、はにかみながら答えてくれた。
「……うんん。ダニエル。貴方のおうちには、是非、行かせてもらいたいの。………けれど、一旦、私の家に帰って、準備をしてからでも、良いかな?」
「準備? …………全然良いけど………」
ダニエルは、ステファニーの意図が読めずに、両目をパチパチさせながら、言った。ステファニーは、覚悟を決めたかのように、上目遣いでダニエルに応える。
「おうちで充分にシャワーを浴びて、全身綺麗になってから、貴方のところへ行きたいの。一番…………お気に入りの下着も着ていたいし………。もし…………その…………、貴方が、私のことを………求めてくれるなら…………。一番、可愛い自分の状態で、貴方のものになりたいの…………。ゴメンなさい。ワガママ言って………。次からは、こちらサイドで、きちんと準備しておくから………ね」
ダニエルに、断る理由などなかった。
学校が終わるまで7時間ほど。とんでもなく長い1日に感じられそうな予感がした。
<2話につづく>
お久しぶりです。
まずはエピローグ話ですね。
舞台が海外なのは久しぶりで、ガイジンさんのお名前は把握が難しいですが今後の展開にワクワクしてます。
ダニエルさん、ワックスかける!ワックスとる!
こちらのダニエルさんはベストなキッドになれるのでしょうか?
まさかのアメリカ舞台!
好きですよ、アメリカ。EMCSAをつまんで読んでたあの頃を思い出しますw
スクールカーストとか、カラテマスターから技を習うとか、どことなくB級映画っぽさを感じる展開。プリティ・クール。
この辺の独特の雰囲気の出し方は、永慶さんの持ち味ですね。
ここにコメントすることなのか分からないのですが、永慶さん作品をメニューのNOVELSから作者名で追いかけるとスパイラルトラベラーズ以降の作品へのリンクが無いですね。
一応このページの『テキサスキッド 1』の下にある「永慶」(永慶の全ての投稿を表示)からのリンクで飛べば全ての作品を読むことは出来ます。
読ませていただきましたでよ~
まずテレパスキッドというタイトルからパッと思い浮かんだのは「きまぐれオレンジ☆ロード」の主人公の従兄弟の一弥くんでしたでよ。
ああいう小学生前後の悪ガキがなにかするのかと勝手な想像をしてたら全然そんなことはなくてベスト・キッドだったw
早速力に目覚めだしたダニエルくんはもうやる気満々のステファニーと見事にベッド・インできるのだろうか?
そして、ジェイクやジョニーに痛い目を見せられるのだろうか?
次回を楽しみにしていますでよ~。
・・・それにしても種に空手と随分と日本に偏った文化の街でぅねw
ジャパニーズタウンなんだろうか?