なみのおと、うみのあお 第2話 -陽子-

第2話 -陽子-

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 最近、鈴崎さんの様子がおかしいのに気が付いた。なんていうのか、ヘンに色気過剰というんだろうか?別に、意識しているワケじゃないんだろうけど、時々たまにえっちな表情を浮かべることがある。大体、こういうコトって夏休み明けに多いんだけど、”経験”したばかりのコによくあるような気がする。
 やっぱり、お相手は”ダンナさん”なんだろうか?”ダンナさん”・・・相川くんって、顔が美少年系で、私の職場・・・保健室でも、女の子達がよく話題に上げてる。弟にしたい男子生徒でトップクラスらしい。でも、私の趣味じゃないのよねぇ。私はもっとこう・・・。

「田代せんせっ」

 そう、もっと頼り甲斐があって、身も心も包み込んでくれるような・・・。

「田代せんせーってばっ」

 それで、私を優しく拘束してくれるの。やん、陽子ってばぁ、恥ずかしー。うふふ。

「田代陽子先生っ!こんな所でくねくねしないっ!」
「へっ?」

 気が付くと、目の前に鈴崎さんがいた。なんだか怖い顔をしてる気がする。ちょっと気圧されながら、それでもにこやかに挨拶した。鈴崎さんも、ほっぺたを膨らませてる今の顔は、結構子供っぽくて可愛いわねー、とか思いながら。

「おはよう、鈴崎さん。どうしたの?・・・コワい顔して」
「せんせー自覚ないんだもんなぁ・・・」
「何が?」
「せんせーさっき、通学路の真ん中で、へらへらしながら一人でくねくねしてたんですよぉ?何ていうか、もぉ、ヘンなヒト全開でした。」
「えぇっ!私、ヘンなヒトだった?」
「バリバリに、です」
「そんなぁ、バリバリだなんて・・・。バリバリって、死語じゃないの?」

 私が冷静にそう指摘すると、鈴崎さんは顔を真っ赤にして怒った。・・・鈴崎さんってば、怒りんぼ。

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 放課後、私は屋上に向かって歩いてた。そろそろ校内に残ってる生徒の数も少なくなって来た頃だし、タバコを吸いたくなってたし。私は保健室ではタバコは吸わない主義だから、自然と人気の無い所を探す癖がある。
 屋上の直前の踊り場で、ふと私は立ち止まった。なんだか、声が聞こえる・・・もっと正確に言うと、セックスしてる時の喘ぎ声が聞こえて来た気がした。私の聴力は、自慢じゃないけどかなりいい。だから、今も聞き間違いとは思わなかった。声は、屋上から聞こえてくるみたいだった。
 困ったちゃん達がいるみたいだね・・・。ちょっと期待しながら、足音を殺しつつドアに近付いた。軋む音をたてそうなドアにどきどきしながら、苦労して隙間を作って除き込んだ。そこから見えてきた光景は、私にとって、少し意表を突いていた。

「んぅ・・・ふっ・・・ん、・・・ふあ・・・んふっ・・・ん!」
「自分だけ気持ち良くなってないで、もう少しがんばってよ・・・綾香・・・」
「んんふっ・・・うふん・・ふっ・・・」
「ふふ。そうそう、がんばってね」

 鈴崎さんが、スカートの端を口に咥えて、座っている相川くんの腰に向かい合わせに跨っていた。足首に絡まったパンティと、その腰の動きが、彼女達が何をしているかを知らせていた。
 それにしても・・・。私は二人の動きを観察しながら、驚いていた。・・・最近の若いコってば、激しいのね・・・。鈴崎さんってば、あんなに激しく腰を動かすと、ひざがすれて痛いでしょうに・・・。

「いいよ、綾香・・・そろそろイクよ」
「ふんん・・・ふあっ・・・んっ」
「くっ!」
「ふぅうっ!・・・んああああっ!」

 鈴崎さんはスカートの端を咥えたまま、仰け反るようにして相川くんを受け止め、激しくアクメに達したみたいだった。荒い息をつきながら相川くんに抱き付くと、そのまま腰をひくつかせていた。

「んんっ・・・。あぁ・・・ん・・・」

 鈴崎さんはゆっくりと自分の中から相川くんを抜くと、快感の余韻でうまく動かない身体を、相川くんの足元に移動させた。あ、ゴムしてないじゃない、ダメよぉ相川くん。あら?もしかして鈴崎さん・・・。

「きれいにするね?」
「うん。お願い」
「ん・・・はむん」

 え~?自分のと相川くんのがついてるのに、そのままご奉仕できるんだ・・・やっぱ、最近の若いコってば、すごいわねぇ。・・・はふ。なんだか熱くなってきた身体を意識しながら、私は保健室に戻ることにした。だって、身支度を終えた二人にばったりっていうのも、恥ずかしいしね。・・・こんなとき、独り身って辛いのよねぇ・・・。

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 家に帰る途中、本屋に立ち寄った。なんだかいつも眠そうな、まるで日向ぼっこしてるねこみたいな可愛いおんなの子が店番してる本屋さん。えっちな本が多いのと、いつ行ってもお客さんがいないのが、なんだかちょっぴりキケンな香りのするお店。でも、私が本を買うと、いつも”にこぉっ”と、・・・もう少し崩れると”にへらぁ”っていう感じの笑顔で挨拶する店員さんが、なんだかお気に入りで、しょっちゅう買いに来てる。

「あ~、いらっしゃいませ」
「これ、お願いね」
「はい、いつも、ありがとうございます~」

 なんだか、声も天然な感じなのよね。間延びして。でも、そういうのがいいっていう男の人もいるから、きっと問題無いんだろうと思う。私は、店員さんの声を背に、本屋さんを後にした。

「あれ?・・・田代先生?」

 急に名前を呼ばれて、ちょっとびっくりして振り返ると、鈴崎さんの”ダンナさん”・・・相川くんが立っていた。

「あら、相川くんね。本屋さんに用事かな?」
「ええ。コンピュータ関係の雑誌を買いに・・・先生は?」
「私は、医学関係の雑誌を、ね。・・・鈴崎さんってば、私がヘタなんて言うんだもの、ひどいよねぇ」
「・・・そうですか?」
「・・・今の間って・・・まぁ、いいけどね。ふふ。それにしても、この本屋さんって、私以外にもお客さんっているのね。今日、初めて見たわ」
「・・・実は、僕以外の客って、今日初めて見たんですけど・・・」
「・・・」
「・・・」

 なんだか、聞いちゃいけない事のような気がするかも。沈黙する私達の間に、気まずい空気が流れた。・・・そういえば、私は相川くんに話しておきたい事があったのを思い出した。

「ね、相川くん。雑誌を買った後って、ヒマある?」
「ええ。ありますけど?」
「じゃ、ちょっとお話ししない?コーヒーくらいならご馳走するから、ね?」
「いいですよ。じゃあ、雑誌を買って来ますので、待っていてもらえますか」
「うん。ごゆっくりどうぞ」
「はい」

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「・・・せんせー?」
「なぁに?遠慮しないで、好きなの選んでいいわよ」
「この中から、ですか?」
「うん。あ、私これにき~めたっと」
「プリンシェイクですか・・・」
「おいしいのよ~。相川くんもこれにする?」
「・・・僕は、ホットコーヒーのブラックにします」

 私達は今、公園に来ていた。もう、夕方というより夜に近い時間なので、周りには人影は見えなかった。缶コーヒーを手に持って、なんだか釈然としない顔の相川くんと一緒に、公園中央のベンチに座った。

「・・・お話しってなんですか?」

 私がプリンシェイクを5回振って、滑らかな舌触りを満喫していると、相川くんが聞いてきた。口の中でふるるん、と震えるプリンシェイクを、名残惜しくも飲み込んでから、相川くんの方に向き直った。なんだか口調が冷たい気がするのはなんでだろう?

「うん、鈴崎さんとの事なの」
「綾香の?」
「そう。・・・今日ね、屋上でシテるのを、見ちゃったのよね、私」
「・・・そういうのって、生活指導の先生がいう事だと思いますけど?」
「あ、別に学校には報告する気はないの。私、保健医だし。ただ、2つほど言っとかなきゃっていうのがあるのよね」
「なんですか?」
「うん。場所と避妊なの。やっぱり、他の人に見つかるようなところはマズイでしょ。それに、今日はナマでしてたみたいだけど、コンドーさんは着ける事」
「そうですね・・・。保健室を使わせてくれます?」
「そうねぇ、高いわよ・・・って、違うでしょ」

 学校に報告される事がないと判って安心したのか、相川くんの口調に余裕が出てきた。でも、このコってば、見た目ほど可愛い性格じゃなさそうね。

「ふふ。ご指摘、ありがとうございます。お礼といってはなんですけど、コレ、聞きます?」
「なにかしら?」

 相川くんが取り出したのは、丸い形をしたMp3プレイヤーだった。なんでコレがお礼になるのか判らなくて、聞き返した。

「コレ、僕が作った曲で、『海の記憶』っていうんです。交感神経をリラックスさせてくれる効果があるんです」
「あら、すごいのね。じゃあ、聞かせて」
「はい、どうぞ」

 そう言ってMp3プレイヤーを渡す相川くんは、なんだか嬉しそうだ。お礼といいつつ、実はこの曲の評価がして欲しいだけなのかも知れない。まぁ、保健医としても興味があるし、良い出来ならダビングさせてもらおう。そう思いながら、プレイボタンを押した。

- 3 -

 私は、寄せては還る波の音に身を任せ、遥か海の底を想う。一定のリズムを繰り返す音は母親の心音、この身を包む暖かい海水は母親の羊水。それは遠い記憶、胎児の夢。
 まるで太陽の光が海の底を照らすように、からっぽの私の心に届く言葉があった。その言葉は私を満たし、今まであった私と混ざり合って、新しい私を創り出す・・・。

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「・・・んせい、田代先生、起きて下さいって」
「ふぁあ、あれ?私寝ちゃってた?ごめんごめん」
「しっかりして下さいよ。これから、先生の家に行くんですよね?」
「えっ?・・・えぇ、そうだったわね。私はもう大丈夫だから、そろそろ行きましょう」
「先生の家、ここから近いんですか?」
「歩いて5分くらいよ。大丈夫、すぐ着くから」

 私はなんだかヘンな気がしたけど、疲れてるし、考えるのも億劫だったので、相川くんを伴って帰宅する事にした。
 私が住んでいるマンションは、駅や繁華街から外れている事もあって、意外と人通りが少ない。今日は相川くんが一緒なので、痴漢とかの心配はしなくてよさそうだった。ところが・・・歩いているうちに、身体の変調に気が付いた。家に近付くにつれて、身体が熱くなってきてる。なんだか、歩く度に、振動が・・・その・・・あそこに響いてるような・・・。

「先生、大丈夫ですか?」
「えっ・・・えぇ、大丈夫よ」
「なんだか顔が赤くて、呼吸も辛そうなんですけど・・・」
「ほら、あのマンションの2階だから、ホントにすぐなの・・・大丈夫よ」

 そう言ってはみたけど、かなり辛い状況かも知れない。下半身からの熱が、今は頭の中まで犯してるようで、だんだん自分が何をしてるのかも判らなくなってきてる。頭を占めるのは、快感と部屋に戻ることだけ。相川くんがなにかを話し掛けてるみたいだけど、適当に相槌を返すのが精一杯だった。
 マンションの階段を上る時には、もう、パンティは用を為さない程濡れきっていた。足を踏み出す度に、湿ったぐちゅ・・・という音を立てて、よれた部分から熱い蜜が太腿を伝う。隣には相川くんがいるのに、もう恥ずかしいとも思えなくなっていた。
 はぁ・・・。熱い吐息を洩らして階段を上る。早く・・・早く部屋に戻らなくちゃ・・・戻って・・・あれ・・・なにをするんだっけ・・・。歪む視界に、自分の部屋のドアが見える。もう少し。震える手で鍵を取り出し、ドアを開ける。耐えきれなくなって、玄関に倒れ込むと、今までの快感が、身体の敏感さはそのままに、焦燥感に転化した。

「ああっ!・・・はっ・・・だ・・・だめっ・・・っ!・・・欲しい・・・欲しいのっ・・・入れてっ・・・いれてぇっ!!」
「ふふ。可愛いですよ、先生。シテあげましょうか?」
「お・・・お願いぃ・・・ヘンに・・・なっちゃう・・・」
「じゃあ、パンティを脱いで、足を広げて下さい。入れやすいように、ね」
「はっ・・・ふぁい・・・」

 入れてもらえる・・・。もうそれだけで、身体中が歓喜に震えた。焦って上手く動かない手を必死で操って、パンティを脱ぎ捨てる。うつ伏せになって、お尻を高く掲げる。足を開いて、自分のあそこを手で広げる。入れてもらえるのなら、なんでも・・・する。

「バックが好きなんですか?いやらしいですね、先生」
「あぁ・・・そうなの・・・後からが好きなの・・・くぅっ・・・だから、お願いぃ」
「あ、でも僕、コンドーさん持ってないんですよ。さっきダメって言われたばかりなんですよね、避妊しないと?」
「いやっ・・・ごめんなさい、お願いだから苛めないで・・・気が狂っちゃう・・・」
「しょうがない先生ですね・・・じゃ、行きますよ」

 体中が、燃え上がるようだった。一気に突き入れられた熱いペニスが、体も心も蹂躙する。それまで餓えさせられていた私の身体は、貪欲に快感を貪った。

「ふぁっ・・・イ・・・イクっ!・・・あっ・・・またっ・・・またイクのっ・・・とまんないっ・・・!」
「くっ。凄い激しいですよ、先生。僕もそろそろイキます」
「来てっ・・・この、このままっ・・・お願いっ」
「うっ」
「あぁっ!イクっ・・・イクぅぅうっ!」

 力を使い果たして、玄関に倒れ伏す私の耳に、相川くんの声が聞こえて来た。まどろむ私に、その声は心地良かった。

───良かったですよ、せんせい。今日は時間が無いからこれで帰ります。
───暫くしたら、今日のことは忘れてしまいますから、安心して下さい。
───明日・・・暗示が発動しますから、楽しみにして待ってて下さいね。

 沈み行く意識の中、明日が楽しみ・・・その言葉が寄せては返す波のように、いつまでも響いていた。

- 4 -

 なんだか今日は、頭が重たい。私ってば、昨日はお酒を飲んだんだっけ?えっと、確か学校を出てから本屋さんに行って・・・それから?やだ、健忘症かしら・・・。ん~まぁ、いいかぁ・・・なんだか考えるのが億劫だし・・・。
 そういえば、今日は鈴崎さんに会わないなぁ。いつも大体これくらいの時間なんだけど・・・。別に、朝約束してる訳じゃないのに、会えないとなんか寂しい気がする。ふぅ。無意識のうちに溜息をついてるし・・・。なんか、憂鬱だなぁ。・・・ふぅ。

「先生、おっはようございまーすっ」

 あ、なんだか鈴崎さんの幻聴まで聞こえてくるし・・・。

「先生?せんせーってばっ」

 なんだか、恋する乙女みたいよね、今の私ってば・・・。

「せんせーっ!また意識が飛んでるって!」
「あっ!鈴崎さんだ~。おはよ~」
「また自覚が無いよ・・・」
「ん?どうかしたの?」
「いえ・・・もぉ、いいです」
「そーお?ならいいけど」

 一人で頭を抱える鈴崎さんを見てて、今までの憂鬱な気分が吹き飛ぶみたいだった。やっぱり、朝はこうじゃなくちゃ。だって、今日は楽しい事がある筈だし、ね。

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 そして、またも退屈な放課後。タバコでも吸いに行こうかな、とか思ってるのに、なんだか体を動かす気にならない。お客さんもいないし、たまにはぼ~っとするのもいいかも知れない。
 しばらく本当にぼ~っとしてたら、あっという間に夕方になってしまった。時間の経過が意識に残ってなくて、本当は寝てたんじゃないか、とも思ったぐらいで、意識が戻って来たのは、ノックの音のおかげだった。

「せんせー、いる?」
「あら、鈴崎さん?どうしたの、こんな時間に・・・」
「えへへ。諒一連れてきちゃった。今、いい?」
「ど~ぞぉ。今、ヒマだったんだ」
「先生がそんなコト言ってもいいのかなぁ?」
「あら、保健室が忙しかったら、結構問題よ。・・・相川くん、いらっしゃい」
「おじゃまします。・・・なんかヘンな挨拶ですね」
「ふふ。私の部屋も同然だから、別にいいわよ」

 そういって、二人に丸椅子を勧めてから、インスタントコーヒーを用意した。鈴崎さんは、ちょっぴり硬派にブラック。相川くんは好みが判らないので、砂糖とミルクを添えて出した。

「はい、どうぞ」
「いただきま~す」
「ありがとうございます」
「それで、今日はなんの用事なの?ふふ、彼氏を改めて紹介しに来たとか?」
「違いますよ、先生」

 相川くんの口調が微妙に変わる。それに伴って、この部屋の温度が下がったような気すら、した。でも、私は相川くんから目が離せなかった。この身体の震えは、恐怖から・・・それとも期待から・・・?

「先生が今、好きな人がいなくて寂しいって聞いたから、心の底から好きになれる人をプレゼントしようと思いまして・・・。『ショータイム』の始まりですよ、先生」
「えっ・・・あっ・・・ああっ!」

 その瞬間、何も見えなくなった。たった一つ、私の心の底から愛する・・・綾香ちゃん以外は。艶やかな髪、綺麗な瞳、少し厚目の唇、私の心に、綾香ちゃんを愛する幸せが満ちた。いつの間にか私は立ち上がって、綾香ちゃんに近付いて行った。私に向かって微笑む綾香ちゃんに、万感の想いを込めて、囁くように、祈るように、すき・・・そう、かすれた声を出した。
 ゆっくりと、私を誘うような唇にキスをする。柔らかく、繊細な感触に、背筋に快感の電気が流れた。舌を指し込んできたのは、綾香ちゃんのほうからだった。唇をこすりつけ合い、舌を絡め、甘噛みし、唾液を交換しあう。こんなに気持ちのいいキスは、生まれて初めてだった。これだけで達してしまいそうになった。
 しばらくキスを楽しんで、もっと欲しくて我慢できなくなった。我慢する必要なんて無い。だって、私と綾香ちゃんは愛し合ってるんだから。幸い、ベッドもここにある。

「さぁ、綾香ちゃん、服を脱いで・・・私に見せて・・・」
「・・・うん、陽子ちゃん」
「嬉しい・・・ね、もっと名前を呼んで・・・」
「陽子ちゃん・・・陽子ちゃんも、脱いでよ・・・」
「うん」

 私は、興奮で息を荒げながら、服を脱ぎ捨てていった。メガネだけ、躊躇して外すのを止める。だって、綾香ちゃんの身体を、隅々まで良く見たかったし。先に全裸になってベッドに横たわる綾香ちゃんに、ゆっくり近付く。仰向けになっても、小振りな胸は潰れずに綺麗な稜線を保っている。アソコにはうっすらと陰毛が生え、夕日に蜜が反射して、きらきらしてた。
 綾香ちゃんに体重をかけないようにして、身体中を擦り合わせるように抱き締めた。乳首同士が当たって、相手の胸に埋まる。少し汗をかいた足が絡まり合う。少し立てた腿が、お互いのアソコを擦り立てる。目が眩むような快感だった。

「あっ・・・あっ・・・ようこちゃんっ・・・んっ!」
「あん・・・あやかちゃん・・・すごい・・・とけちゃうぅ・・・」

 舌を絡ませてキスをする。何度も、何度も。身体の触れている部分が、全て性感帯になったみたいに感じる。私達の喘ぎは、止まること無く室内を漂った。でも、気持ち良ければ良いほど、もっと、アソコへの刺激が欲しくなった。
 私は身体を起こすと、綾香ちゃんの片足を抱え込んだ。確か、いつか見た本では、こうしていたハズ。自分の腰を突き出すようにして、アソコとアソコが当たるようにする。・・・ぐちゅっ・・・。思わず赤面するようなイヤらしい音を立てて、唇同士が甘噛みするように擦れ合う。

「ひっ!」
「あんっ!・・・よ・・・ようこちゃんっ!」

 その瞬間に感じた快感は、思わず腰が引けてしまう程、激しいものだった。舌とも、指とも、もちろん、ペニスとも違う快感。もう一度腰を前に出すと、綾香ちゃんも私の足を引っ張るようにして、腰を引きつけた。・・・ぐちゅっ・・・じゅぱっ・・・。二人の蜜が混じり合い、卑猥な音を立てる。

「だっだめっ!・・・コレ、すごいのっ・・・あんっ・・・はっ・・・よ・・・ようこちゃん・・・」
「あっ・・・わたしっ・・・イクっ・・・イクのっ・・・はぁっ!」
「ひっ・・・あんっ・・・アタシ・・・アタシもっ、イっ、イクぅ!」
「あぁあああっ」

 二人で同時に絶頂に達して、カラダ中がバラバラになるほどの快感を味わった私達は、そのまま意識が暗闇に飲み込まれていった。幸福と快感に満ち溢れた、優しい暗闇に・・・。

- 5 -

 しばらくして、海の底からゆっくり海面に浮上するように、私の意識が鮮明になって行く。さっきまでの狂騒状態が嘘のように、落ち着いた心理状態。でも、自分の心に、命よりも大事な人がいるのが判る。愛する人がいるだけで、こんなに満ち足りた気分になるなんて、今まで知らなかった。文字通り、世界が変わった様に感じる。

「綾香ちゃん・・・えっ?」

 身を起こして、綾香ちゃんに抱き付こうとして私が見たのは、裸で相川くんにもたれかかって、うっとりとした表情で愛撫に身を任せている綾香ちゃんの姿だった。相川くんの右手でやわやわと胸を揉まれて、幸せそうに喘いでいる。
 私の心に、絶望が広がった。それは、今まで相川くんの存在を忘れていた事よりも、相川くんの愛撫を受け入れている綾香ちゃんの姿にだった。

「いや・・・いやよ・・・あやかちゃんを取らないで・・・おねがいっ・・・」
「先生、愛する人が目の前で、別の男と愛し合う姿を見て、どうですか?あまり、一般的には味わえない気分ですよね?」
「やめて・・・おねがい・・・そんなの、ひどいよ・・・」
「あふっ・・・りょういち・・・きもち・・・いいよぉ・・・」
「あやかちゃん、おねがい・・・やめてっ・・・」
「だめぇ。アタシ、りょういちのモノだもん。りょういちが喜ぶなら、なんでもするんだよ・・・だから・・・」
「いやっ・・・言わないでっ」
「だから・・・せんせいとえっちしたの」

 私の目から、涙が溢れ出した。絶望に私の心が砕け散る、そう思った。

「先生。そんなに綾香が好きなら、一つ提案があるんですけど?」
「・・・提案?」
「ええ。綾香は僕のモノなんです。先生も僕のモノになれば、同じ立場ですよ」
「あなたの・・・モノ?」
「そうです。僕のモノになれば、綾香と遊んでもいいんですよ?」

 私は綾香ちゃんを見詰めた。顔を上気させていた綾香ちゃんが、私の視線に気が付いて艶やかに微笑みかける。その笑みは、なによりも雄弁に、相川くんのモノになる幸せを物語っていた。綾香ちゃんが私に手を伸ばす。

「陽子ちゃん、一緒に行こうよ。楽しいよ?」
「綾香ちゃん・・・」

 私の震える手は、綾香ちゃんの手を握り締めた。愛する人の手を。そして、私の新しい日々が始まる・・・絶望と、喜びと、苦痛と、快楽に満ちた日々が・・・。

 「綾香ちゃん・・・愛してる・・・」

< 続く >

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