なみのおと、うみのあお 第3話 -沙織-

第3話 -沙織-

- 1 -

 ヴ・・・ィィィ・・・ン。微かに聞こえてくる音。それでも、大して広くも無いこの本屋中に伝わってしまうのではないかと気になってしまう。もしも今、お客さんが入ってきたら、どう思うだろう。私の事を、イヤらしい女って、気が付いてくれるだろうか。
 私は柳井沙織・・・本屋の店員、という事になっている。実際には父の資産の一つで、趣味でやっている採算度外視の遊びのお手伝いである。父はとんでもない資産家で、しかもお遊びが好きで、時々こういった訳の判らないことをする。だから、店員は私一人。気が向いた時に店を開け、気が向かなければお休みが続いたりする。本が売れなくても問題無いし、やることといえば、在庫の整理と入荷の確認、レジ打ちくらいで、退屈な毎日を過ごしている。
 余りに退屈だったので、最初は雑誌を読む事から始まって、次第にマンガ、小説と幅を広げていった。なにしろ、時間と本は売るほどあったし、私は読書は好きだから。
 そんな時、つい手にしてしまったえっちな小説が、その後の私を変えた。いつお客さんが来るかもしれない時間帯に、レジの向こう側で秘めやかに自分の熱くなった秘所を擦り、今まで感じたことのない興奮を味わった。それ以来、少しずつ行為はエスカレートしていき、私は自分の淫蕩さを自覚させられた。他者に対して、積極的に淫らに振舞う事は出来なかったけれど。

 ・・・ヴヴ・・・ヴゥ・・・ン。

「はぁ・・・ん」

 溜息とも吐息ともつかないかすれた声を出して、自分のそのイヤらしい声に少しドキっとした。とっさに壁にかかっている鏡で自分の顔を映して、不自然な顔になっていない事を確認した。
 今、私の秘所にあてがっているローターは、最弱にしているにもかかわらず、少しでも気を抜くと、喘ぎ声が洩れてしまいそうになるほどの快楽を与えてくれる。少し前までは、パンティが愛液で濡れるのが気持ち悪かったけど、今ではそれさえも快感になっている。自分の淫らさ自覚する・・・自分を心理的に堕落させる、暗い快感というか・・・。

 カラン・・・。

 私がぼうっとして、自分の感覚に集中していると、お客さんが入って来た。歳は大体20歳前後だろうか?少しきつめの顔だけど、とっても美人な女の人だ。背が高くて腰の位置が高いから、きっと足が長いんだろう。暫く見入っていた私は、お客さんが私を見詰めている事に気が付いた。見られることに不愉快感は感じていないようで、少し唇の端に笑みを浮かべている。

「こんにちは。雑誌を探してるんだけど、いいかしら?」
「いらっしゃいませ~。何をお探しですか?」
「コスプレ天国っていう雑誌なんだけど、マイナーだから、どこ行っても無いのよね」
「うちでも扱ってませんね~。お時間を頂けるようでしたら、取り寄せ致しますけど・・・いかがなさいますか~?」
「じゃあ、お願いするわね」

 なんだか、話してるうちに、お客さんの顔が険しくなってきた気がするけど、これはいつものことだ。私は、思考する速度に比べて喋る速度が著しく遅いから、気の短い人は、結構ストレスが溜まるらしい。私はにこやかに営業スマイルを浮かべて、連絡先などを確認しておいた。

「それじゃ、お願いね」
「はい。ご利用、ありがとうございました~」

 すごい美人だったなぁ・・・買うのは『コスプレ天国』だけど・・・。でも、今の人・・・相馬恵さんっていう名前らしい・・・は、気付かなかったろうか?動きっぱなしだったローターに・・・。もし、気付かれたら、私はどうなっちゃうんだろう?レズっ気は私はないけど、もしかしたら相馬さんはあるかも知れない。脅されて、おもちゃにされたりして・・・。私はその妄想に興奮して、ローターの振動のレベルを、ゆっくりとMAXに上げて行った。激しい快楽に、視界が歪み、身体が汗ばむ。店中に、淫靡な香りが漂うようだった。

「ふ・・・あっ・・・だめぇ・・・わたし、もう・・・」

 身体から力が抜けて、レジカウンターに突っ伏してしまう。内股気味に足に力を込めると、圧迫されたローターが、ますます強く私を刺激する。

「ひっ・・・んっ・・・ふぅっ・・・うあぁ・・・」

 勃起した乳首が、ブラ越しにレジカウンターで潰れ、新しい刺激を送ってくる。もう、立っていられなくてカウンターに倒れ込んだのか、胸に刺激を与える為に倒れ込んだのかも判らなくなる。震える腰が、誰かに入れてもらうのを期待するみたいに、ゆっくり振りながら、後ろに突き出される。

「あっ・・・す・・・すご・・・あと・・・すこしっ・・・ひんっ・・・」

 私の右手が、パンティの中に潜り込む。ぐしょぐしょになったそこで、愛液にまみれながら激しく振動するローターを摘んだ。
ヴヴヴヴヴッ。 そう激しい音をさせながら暴れるローターに、ごくっ・・・と咽喉を鳴らして、ゆっくりと上に・・・一番感じる所にあてがう。

「ひあっ!・・・ふっ・・・あああ・・・イクっ・・・イクのっ・・・だめ・・・あああ~っ!!」

 身体中を震わせて激しく絶頂に達すると、今度は本当に身体から力が抜けて、カウンターに倒れ込んだ。荒い息をつきながら、まだ震えているローターをパンティから引きずり出した。愛液に濡れて光るのを見詰めて、私は舌を出して、ゆっくりと顔を近付けて行った。チーズにも似た独特の匂い・・・私はゆっくりと愛液を舐めとっていった。

- 2 -

 今日は、この間注文を受けた雑誌を、記載された住所まで届けに行ってきた。お客さんに届いた事を電話連絡したら、届けて欲しいと言われたから。本当は、そういうサービスはやってないんだけど、まぁヒマだし。当然、そうなると店を閉める事になるけど、別に困る人がいる訳じゃないから、問題は無いと思う。
 言われた住所に行くと、そこはコスプレ喫茶らしかった。入るのは初めてだけど、そういう店があるっていう事は知っていた。中には・・・ううん、詳しく言うのは避けた方が賢明かも。ただ、平日夕方にもかかわらず、店は結構繁盛しているみたいだった、とだけ言うに留める事にする。

「あれ?本屋さんですか?」
「はい?あ、こんにちは~。いつもご利用頂き、ありがとうございます~」
「こんにちは」

 急に声を掛けられて振り向くと、うちのお店の数少ない常連さんがいた。可愛い顔の高校生だ。主に、コンピューター関係の雑誌を買いに来てくれる。時々、私がレジにいなければ、えっちな本も買ってくれるのかな、とかも思うけど、こればっかしはしょうがない。私の方は、何を買ったって気にしないのにね。そんな事を考えていると、彼の方から言葉を続けてきた。

「今日は、どうしたんですか?」
「え~っと、ここのお客さんが注文して下さった雑誌を、お届けに来たんですよ」
「ココ・・・ですか?」

 彼はそう言って、コスプレ喫茶の看板を見上げた。少し、引いている気もするけど、なんでだろう?

「そうです~。さっき中に入ってお届けしたんだけど、すごかったですよ~」
「ど・・・どういう風にですか?」
「うふふ、ひ・み・つ、です~♪」
「はぁ、ひみつですか・・・」
「そうですよぉ、今度、自分で見てきて下さいね~」
「はあ・・・」

 脱力したようなその返答の後で、彼はまた店の看板を見上げた。先程と違って、今度はなんだか、目付きが違う気がした。まるで、獲物を見つけた肉食動物のような。その瞬間、私の脳裏に『肉食動物の彼に蹂躙される小動物の私』という妄想が涌き出てきて、身体が熱くなるのを覚えた。

「そう言えば、今は本屋さんって開いてるんですか?」
「閉じてるわよ~。だって、店員さんって、私一人ですもの」
「買いたい本があるんですけど、お姉さんが戻ったら売ってくれます?」

 そう心持ち上目遣いで私を見上げて、少し甘えた口調で問い掛ける彼に、先程の目付きとのギャップに違和感を感じた。彼は、意外と2面性を持った人格なのかも知れない。それとも、自分の顔の効果的な使い方を知っているのかも。なにしろ、私の呼び方がいつの間にか『お姉さん』に変わっているくらいだし。

「はい~。今から戻って、そしたら本屋を開けるから大丈夫です~」
「じゃあ、一緒に行きませんか?僕も他に用事は無いですから」
「そうですね~。一緒に帰りましょうか~」
「はい」

 ・
 ・
 ・

「あ、今鍵を開けるから~、ちょっと待っててね」
「はい。お待ちしてます」

 ここの入り口は、実はいまだに手動だったりする。カウベルを付けたかったので、わざと自動ドアにはしなかったのだけど、こういう風に出かける時は、自動ドアよりもこの方がやりやすい。私は、ドアにかかった『本日お休み』の札を外して端に置くと、店内の電気を点けた。

「はぁい、お待たせしました~。何をお探しですか~」
「あ、自分で取ってきますから、大丈夫ですよ。それに、今日はちょっと、いろいろ買うつもりなんです」
「そうなんですか~。それは、ありがとうございます。それじゃあ、レジの所に居ますね」
「はい」

 いくら採算度外視だからって、本を沢山買ってくれるというのは、それなりに嬉しい。何を買うのかワクワクしながら私はレジに待機した。
 暫くして彼が持ってきた本は、驚いたことに、全部えっちな本だった。種類も、過激な写真集や小説、マンガなど、多岐に渡っている。しかも、全ての本を表紙を上にして置いていた。

「・・・あ、今からレジ打ちしますね」

 さすがの私も少し動揺して、言葉に詰まってしまった。1,2冊を恥ずかしげに置くならともかく、ここまであからさまにすると、かえって私の方が恥ずかしくなってしまう。そんな私に、彼は少し顔を近付けて囁いた。

「今日は、ローターを使ってないんですか?」
「・・・えっ!」
「いつも、ローターで遊んでるじゃないですか。イヤでも気が付きますよ、アレじゃ」
「・・・」

 瞬間、目の前が真っ暗になった気がした。彼は、獲物を捕まえた獣のように、ギラギラした瞳で私を見詰めて、顔を寄せるようにして囁いた。

「取り敢えず、店を閉めましょうか。お姉さんとゆっくり話したいですし」
「は・・・はい・・・」

 私には、逆らう事なんて、考えられなかった。入り口に鍵をかけて、窓に遮光カーテンを閉じると、彼に向き合うのが怖くて、振り向けなくなった。後ろに近付く彼の気配。怖かった。彼も・・・自分も・・・。私の淫らな妄想の中には、誰かに脅迫されて、身体を差し出すというシチュエーションもあった。もし、現実にそういう状況になった時、私はどうなってしまうんだろう。

「そういえば、お姉さんのフルネームって、聞いた事が無いですよね」
「柳井・・・沙織です」
「いつも、あんなえっちな事、一人でしてたの?」

 そう言いながら、後ろから私を抱き締める彼に、私の身体はびくっとした。ワザとなのだろうけど、お尻に押し付けられた彼の熱くて固い感触に、頭が沸騰しそうになる。コレが男の人のアレ・・・信じてもらえないかもしれないけど、私は処女だから、布越しとは言え、触れるのはこれが最初だ。

「教えてよ・・・沙織お姉さん・・・」

 私の首筋に顔を埋めるようにして、腰に廻していた手を上に・・・胸に廻された。彼の吐息が首筋を愛撫して、身体が震える・・・。それは、嫌悪の為では無かった。これから起きる事に対する期待が、身体を震わせていた。彼に体重を預けると、私の唇は、おもねるように言葉を紡いだ。

「そう・・・なんです・・・。わたし・・・こいびと・・・いないから・・・ひとりでぇ・・・んっ・・・してるんです・・・」
「ヤラシイんだ、沙織お姉さんって。・・・どれくらいヤラシイのか確かめてあげるから、スカートを自分でめくって、足を開いてよ」
「・・・こ・・・こうですか?」

 私は、彼の要求通りの格好をすると、改めて恥ずかしさに襲われた。既にパンティに染みができるくらいに濡れているのが、肌に触れる感触で判る。彼がそっと指でなぞると、電気が流れるような感じに、身体が震えた。

「どうしようかな・・・。このまま最後まで行っちゃってもいいんだけど・・・こんなにイヤらしい沙織お姉さんに、面白い事、教えてあげようか?」
「え?」

 私の愛液がたっぷりついた指を、わざと私の目の前で見せびらかしながら、耳元で彼が囁いた。耳に彼の息がかかり、その都度鼓動が速まる。私から身体を離すと、彼はリュックの中からMp3プレイヤーを取り出した。黒い卵型のそれのイヤホンを私に差し出して、無邪気に微笑んだ。

「これを耳にはめて下さい・・・楽しませてあげるますから。・・・もう、忘れられないくらいに、ね」
「これは・・・?」
「僕が作った音楽で、『海の記憶』っていう名前です。なぜかは判らないけど、聞いた人が催眠術にかかってしまうのが特徴で、もう、2人ほど、知り合いに試してみました」
「どう・・・なっちゃうの?」
「その時々で、いろいろな暗示を掛けれるんですけど・・・そうですね、もの凄い快楽が味わえるんです・・・普通では絶対に味わえないような、ね」

 ・・・催眠術で、もの凄い快感・・・。確か、前に読んだ小説で、そういう内容のものがあった。こきゅ・・・そう、はしたない音を私の喉が立てる。なんだか、すでに催眠術に掛かってるように、ふらふらと彼に近付き、イヤホンを手に取った。
 私の中で、今まで夢想していた状況が、現実になろうとしている。自分以外の誰かに、この身体を蹂躙される事...。私はずっとソレを望んでいたのかも知れない。もう、私は彼の命令には逆らえない、それどころか、喜んで従ってしまいそうだった。期待に震える指で、イヤホンをそっと耳に嵌めた。微笑んで私を見ていた彼は、手の中のMp3プレイヤーの再生ボタンを押した。

- 3 -

 静かに・・・寄せては還す、波の音・・・。ゆっくりと、私の心を侵食していく・・・。まるで、砂のお城が波に崩されて行くように・・・海岸線が、波に侵食されて、形を変えて行くように・・・。
 蒼い海の底で、少しずつ、侵食された私の心に染み込んでくる声が聞こえた。今、私を支配する彼の声。悦びに震えながら、声が全身に浸透するのを感じていた。

 ・
 ・
 ・

 だんだん意識がはっきりしてくると、周りの状況が目に入って来た。そうだ・・・私は目の前の彼に、催眠術を掛けられた。意識と共に、先程までの記憶がよみがえる。確か、彼の言った事が全て本当に感じられる、そんな暗示だ。今、私の胸は期待と興奮で高鳴っている。早く・・・いろいろな事をして欲しかった。

「ふふ。たまには催眠術師みたいなのも、面白いよね。それじゃあ、椅子に座って・・・そう・・・じゃあ、これから暗示をかけるよ。『僕が手を叩く毎に、快感がどんどん湧き上がる』・・・さぁ、これで沙織お姉さんはこの暗示の通りになるよ」

 彼は私の額に手を当てて、そう言った。私は、彼が手をゆっくりと目の前で構えるのを、期待を込めて見上げていた。そんな私を見て、彼は笑って・・・手を叩いた。

「ひあっ!」

 それは、あまりに激し過ぎて、快感というより衝撃と感じられた。まるで、剥き出しの神経を直接刺激されるような。椅子に座ったままで、身体が仰け反り、瞬間的に汗が噴き出すのが感じられた。
 暫くして衝撃から立ち直ると、私は身体の力を抜いて、椅子に深く座り込んだ。犬のように口で荒い呼吸をしながら、ニコニコ笑っている彼を見上げた。

「どうだった、お姉さん?気持ち良かった?」
「す・・・凄かった・・・です・・・。・・・こんなの・・・初めて・・・」
「ふふっ。じゃあ、もっとしてあげますね」
「あ・・・ちょっと、まっ・・・」

 ぱんっ!

「んあっ!」

 ぱんっ!

「あぁんっ!」

 ぱんっ!

「ひんっ!」

 手を叩く早さが加速を増して、私は息を付く間もなく、激しい衝撃に翻弄された。すでに、快感と苦痛の区別も付かずに、ただ喘ぎ悶える事しか出来なかった。
 そうして、彼は何回手を叩いただろう・・・汗と愛液にまみれて、息も絶え絶えな私は、心も身体も蕩けて、椅子にかろうじて引っかかっていた。

「どう?気持ち良かった?」
「あぁ・・・だめぇ・・・ヘンなの・・・ヘンに、なっちゃうの・・・」
「ふふ、まだまだこれからですよ、お姉さん」

 彼は、私の額に手を置くと、目を覗き込みながら囁いた。私は目を逸らす事も出来ずに、彼の目を見詰めた。

「次は・・・そうだね・・・別の暗示をかけるよ。『今からお姉さんが読む本の女性の感覚・・・快楽を、お姉さんも味わう事ができる』・・・さぁ、楽しもうか」

 そういうと彼は、さっき持ってきた本の一冊を選んで、ビニールを剥がした。カバーには、ぷにぷにした可愛い女のコが、縄で縛られているイラストが描かれていた。ごくっ・・・私の喉が、物欲しげに音を立てる。確か、このマンガはSM色が強くて、縛られたり、叩かれたりした女のコが、それらを快感として受けとめて、悦ぶお話だったはず・・・今まで味わった事の無い快感の予感に、疲れた私の身体が熱くなった。そんな私の思いを読みとったのか、彼は期待する様に微笑を浮かべた。

「僕って、こういう系統のプレイはした事が無いんです。だから・・・楽しませて下さいね」
「だ・・・だめ・・・」
「お姉さんって、うそつきなんですね。こんなにイヤらしい身体なのに、駄目なはず無いじゃないですか」

 そう言いながら、彼はマンガを開いて、いろいろなページを見ていた。すぐに気に入ったページが見つかったのか、私にマンガを開いて差し出した。
 それは、女のコが縄で胸を強調する様に縛られ、お尻を叩かれながらも快楽に咽び泣くシーンが描かれていた。目を離せずに食い入る様に見詰めていると、私の身体に変化が感じられた。最初は胸に、まるできゅっと付け根から絞られるような、息苦しい感じが生まれた。それなのに、苦しいような、痛いような感じすらも、新鮮な快感だった。

「はぁんっ!」

 次に訪れたのは、お尻が瞬間的に衝撃と共に熱い炎で炙られたような感覚だった。衝撃が薄れて行くにつれて、その熱がじわじわと身体中に広がって行く・・・。初めての感覚に戸惑っていると、次々と同じ感覚に襲われた。

「ひっ!んあぁっ!あっ・・・あつっ・・・!」

 それは、お尻を叩かれた時の感覚なのだろう・・・きっと、マンガの女のコが味わっているのと同じ・・・。そして、その感覚が私に与える影響も、3回、4回と繰り返されるうちに、だんだん変化してきた。

「あぁん・・・ふあぁ・・・」

 叩かれるお尻の感覚が麻痺してくると、衝撃がそのまま快感になって、クリトリスや子宮がずんずん刺激されてるみたいだった。オナニーの時と違って急に性感が高まることは無く、イク寸前の高みをたゆたう、意識が朦朧となるような快感だった。

「あ・・・んぁあ・・・あ・・・ん・・・」
「凄くイヤらしい顔してるよ・・・お姉さん・・・興奮しちゃうね・・・」

 彼は、ズボンのチャックから彼自身のものを引きずり出して、椅子に座ったままの私の口元に近付けた。微かに漂う不思議な香り・・・私の快楽に蕩けた頭は、なんの疑問も無く、彼のものを口に咥えた。そのまま首をぎこちなく動かし始めた。口を犯される快楽に、胸やお尻やアソコの快楽が混ざって、もう、自分が何をしているかも判らなくなる。

「んっ・・・んっ・・・んぐっ・・・あむ・・・は・・・」

 彼の手が私の後頭部を押さえ、だんだん早く動かし始めた。荒々しく喉の奥まで突き入れられて、苦しさに目に涙が滲んでくる。でも、それすらも快感だった。もう、何をされても快感に感じるのかも知れない・・・快楽に爛れた頭の片隅で、一瞬そんな思考が生まれ・・・すぐに快楽の渦に流され、消えた。

「・・・んむぅ・・・はぶっ・・・んっ・・・んぐぅっ・・・」
「そろそろ・・・イクから・・・全部飲んでね・・・んっ!」

 彼のものが震えると、熱い精液を大量に喉の奥に噴き出した。数度に分けて打ち出される精液が、その度に小さい絶頂感を私に与えた。飲み切れなかった精液が、唇の端からツ・・・と滴った。

- 4 -

 次に悦楽の余韻に浸る私の目の前に差し出されたのは、えっちな小説だった。アニメ調のイラストが、ファンタジックな雰囲気を撒き散らせている。今開かれている頁は、猫耳が付いてる全裸の女のコが、ゼリーみたいな怪物に身体中包み込まれて、快楽に咽び泣くイラストと文章が書かれていた。

「読んで見てよ・・・今まで味わった事の無い快楽を・・・あげる」
「・・・あぁ・・・」

 彼に言われるまでもなく、私の目は食い入る様に文章を追っていた。普通では有り得ない快楽を求めて・・・。
 最初に感じたのは、身体中をナメクジが這い回るような、本来なら背筋に悪寒が走るような感触だった。でも、そのぬめっこい感触が、瞬時に全て快感に転化した。

「ひっ!・・・うあっ・・・んっ!」
「どんなカンジ?気持ちいい?・・・ねぇ、教えてよ、お姉さん」
「あぐっ・・・ぬるぬるが体中に絡み付いて・・・触れてるところが熱いの・・・はぁっ・・・た・・・たまらないんです・・・あぁっ!」

 身体を這う感触が、身体を包み込む感触に変わって行き・・・アソコも、お尻にも、何か───熱くて、柔らかくて、ぬめっこくて、蠕動する、”何か”としか表現できないモノ───が入ってくるのが感じられた。快楽にのたうつ私の身体は、椅子から滑り落ちて床に倒れ込んだ。打ち付けた肘と膝が、苦痛という名の快楽を頭に伝えて来た。

「うっ・・・あっ・・・あっ・・・んあぁっ!」

 それまでぬるぬるの”何か”に包み込まれていた胸に、新しい刺激が追加された。最初は圧迫するだけだったのが、リズミカルに強弱を付けて揉まれ、先端を噛み、舐め、吸い、つまみ・・・下半身からくる刺激と混ざり合って、頭の中が快楽でどろどろに溶かされる気がした。

「だっ・・・だめっ・・・死んじゃ・・・あっ・・・死んじゃう・・・かはっ・・・こんなの・・・はぁん・・・あ・・・ああぁ!」
「ずるいなぁ、お姉さん・・・一人で楽しんじゃって、さ」
「も・・・もうっ・・・だめなの・・・はっ・・・んぁあんっ!」
「だ~め」

 彼は、床に這いつくばる私のスカートをめくり、膝のところまでまでパンティを下ろした。外気に触れて、濡れた下半身が一瞬ひやっとした。彼の手が私のお尻を掴んで、熱いモノを私のアソコにあてがい、ゆっくりと押し入って来た。処女膜にあたり、すぐに突き破って奥まで進む。

「あああぁっ!は・・・はいってくるぅ・・・はいって・・・ああっ!」
「あれ?沙織お姉さん、初めてだったんだ?でも、痛くないでしょ?」
「いいっ!いいのっ!こんなの・・・はじっ・・・はじめてっ!」
「僕も気持ちいいですよ。んっ・・・動きますね」
「ひあっ!」

 彼の熱いものと、ぬるぬるした”何か”が、それぞれ別の動きをして、気が狂いそうになる程の甘美な旋律を奏でる。まるで身体中が快楽に溶かされていくようだった。そこから更に、身体を包み込む感触も変化した。触れているだけでも気持ち良かったのが、明らかに快楽を送り込もうとする感触に・・・。手足の指を舐めたり、吸ったり、背中も、お腹も、足の裏さえも・・・身体中が官能の渦に巻き込まれ、快楽の悲鳴を上げていない部分など、どこにも無かった。もう、私は自分の状態を認識する事も出来ずに、何度も何度も絶頂を味わった。

「あくっ・・・またっ・・・ああっ!・・・はっ・・・だめ・・・と・・・とまらないよぉ・・・ひっ!・・・あんっ・・・ま、またっ・・・!」
「ふふ、凄いね。さっきからイキっぱなしじゃない?そろそろ僕もイクね・・・出すよ・・・んっ」
「あっ・・・ああぁあああぁっ!」

 彼の熱い精液を身体の奥で感じた瞬間、今までで一番大きな波が私を襲って、私の意識は焼き尽くされた。目から悦びの涙が頬を伝うのを最後に感じて、私の意識は白い闇の中に溶けて行った・・・。

 ・
 ・
 ・

 ヴ・・・ィィィ・・・ン。静かな店内に、微かに音が聞こえて来る。私はどこから聞こえるか、もちろん判っている。それを求めたのは私、それをしているのは私・・・あの日から、変わってしまった、私。

「んっ」

 姿勢を変えた瞬間、私の中で動いているローターが敏感な部分に触れて、思わず声を上げてしまった。そう、ローターが動いているのは、私の中。あの日からローターは2つに増えて、膣内とお尻を刺激してくれている。日を追う毎に、快感を求める私の身体は、焦燥感を増して行った。あれ程の快感をしってしまった以上、普通の刺激では、物足りないから。
 物憂げにドアの外を眺めた。私はあの日から、ドアが開くのを待っている。私に別の世界を教えてくれた、たった1日で私の身も心も支配してしまった、あの人が来るのを待っている。
 カラ・・・ン。ドアのカウベルが鳴る。私の心を弾ませるように。

「いらっしゃいませ~」

 そうして私は、自分でもそれと判るぐらい淫蕩な笑顔を浮かべ、立ち上がった。彼を迎え入れる為に。

< 続く >

感想を書く

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.