- 1 -
濡れた肉の音。熱気を伴った、淫らな匂い。
「ああっ!い、いいっ、いいのぉっ!」
悦びに咽び泣く、美久の声。
「だめっ!あ、あはっ!また、いっ、いっちゃうぅ!!」
狭いモノレールの車内。乗客で7割ほど埋まった車内。目の前の窓からは、青く澄み切った空と、太陽光を反射する海が見えている。一枚の絵の様に、視界の中で動かない景色。そして・・・まるで何も考えられない私の頭。何も感じない私の心。ただ、吊り革につかまって、ぼうっとしているだけ。
くちゅ。じゅぷっ。
しん・・・とした車内に、どこかいやらしい音が響く。
「あ、あはぁああ・・・」
「ふふ、そんなに気持ち良かったんですか、美久さん?」
揶揄するように美久に訊ねる声の主は、まだ若い男のようだった。何の気無しに、声の方へ目を向ける。そこには、吊り革につかまって立っている美久と、その背後に立って美久に密着している高校生ぐらいの男のコが見えた。
女性警官の制服を着た美久は、胸をはだけてブラを見せている。男のコは、左手を美久の胸に、右手をお尻の方からスカートの中に入れて、悪戯をしているようだ。
美久は、スカートの限界近くまで足を開いているが、身長が低いから、吊り革には指先がぎりぎりかかっている状態だ。顔を赤くして、絶頂の後の余韻に浸っているのが判って、私の身体の奥が少し疼いた。心は何も感じないのに、身体だけが反応している。まるで、心と身体が切り離されたように。
「こんなの・・・はじめてなの・・・」
「それは良かったですね。それじゃあ、明さんにもしてあげなきゃいけないから、一人でシテてもらえますか?」
そう言われた美久は、えっちな顔で上目遣いに男のコを見上げた。
「見てて・・・くれる?」
もともと実年齢以下に見られる傾向がある美久は、そういう態度を取ると、とても可愛い。とても自然に、あどけない少女のように媚びている。男のコは特に引っかかったようではなかったけど。
「ええ、僕だけじゃなくて、他の乗客も見てくれますよ。その座席に座って、たっぷり見せて下さいね」
「うん・・・うれしい・・・」
どこか熱く澱んだ笑みを浮かべて、美久は海を背にして座席に腰掛けた。座席に座っていた乗客達は、美久に席を譲ると、反対側に立った。
美久はボタンの外れた胸元を大きく開いて、ブラを上にずらして小振りな胸を晒した。明るい陽射しの中で、それはあまりにも非現実的な光景だったが、今の私には何も感じられない。
「ね・・・みんな、見てね・・・」
そう、熱に浮かされたように呟きながら、美久は胸を弄り始めた。最初は優しく、だんだんと荒々しく。可愛い形の胸が、美久の指に捏ねられて歪に形を変える。小さく喘ぎながら顔を赤くした美久の胸の頂点は、そこだけまるで別の生き物みたいに、不思議なくらい大きく勃起していた。
「あ、ああっ、いいの・・・むね、きもちいいのっ」
「胸だけでいいんですか?」
男のコのからかうような言葉に、美久はもどかしげに顔を歪めた。
「やっ!これだけじゃ、たらないの!もっと・・・もっとほしいのぉ!」
美久はそう言うと、片足を座席の上に乗せて、スカートを大きくめくった。濃紺の制服から覗く、白いパンティ、紅潮した肌。普通なら他人の前では出来ないポーズを、美久は他人に見せる為にしている。
「んぅっ!あ、ああっ!はっ!すご、いぃっ!いいのぉっ!あぁんっ!」
美久は右手をパンティの内側に潜り込ませると、周りに聞かせるように激しく喘いだ。快楽に打ちのめされたように仰け反り、細い喉をさらす。パンティが濡れそぼっているせいで、指がどう動いているかがはっきり見える。その激しい指遣いに美久のアソコが濡れた音を立てて、車内に響き渡った。
「”お待たせしました”、明さん」
男のコが私の耳元でそう囁くと、まるでスイッチをオフからオンに切り替えたように、自分の心が自分のものに戻った。今まで何も感じられなかった世界が実感を取り戻す。悪夢というべき現実を。
「え?・・・あっ、美久っ!一体何をっ!」
「”静かにして下さい”ね。他のお客さんの迷惑になりますよ」
その瞬間、私の声が出せなくなった。気が付くと、身体もまともに動かせなかった。別に何かに拘束されている訳でも無いのに、首から下が自由にならない。恐怖のあまり、目に涙が滲むのが感じられた。
必死に周りを見渡した。他の乗客に助けてもらえれば・・・でも、視界に入る範囲の乗客は、全員どんよりとした目で美久を見ている。明らかに普通じゃない。
「美久さん、気持ち良さそうでしょ。明さんも今から気持ち良くしてあげますからね」
そう、邪気の欠片も無く微笑みながら囁く男のコが、私の目にまるで悪魔のように映った。なんでこんな事になったのか・・・私は必死に思い出そうとした。
確かこの男のコとは昨日・・・。
- 2 -
今日も私と美久はミニパトで巡回に回っている。なんだかこのままドライブにでも行きたくなるような、ものすごくいい天気だ。
「ねぇ、明先輩。このままサボって遊びに行きません?」
助手席の美久は、どうやら私と同じ事を考えてたらしい。配属されてから1年近く経つというのに、困ったヤツだ。
「出来る訳、ないだろ?今は勤務中なんだぞ」
先輩としての威厳を保つ為に、少し強めに言った。美久はただでさえ甘えがちな性格なんだから、たまにはこれくらい言っておくのもいいだろう。うん、私はいい先輩だ。
「でもぉ、センパイだって、外を見ながら欠伸してたじゃないですか~」
「う・・・」
先輩の威厳は、春先の雪よりもあっさり溶け去ったらしい。
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私は結城明。24歳。明なんて名前のせいか、かなり男っぽい・・・らしい。私だって、普通に恋する乙女だとは思うのだが、周りの友人に言わせると、『バレンタインのチョコを、あげるより貰う方が多い時点でダメ』だそうだ。顔やプロポーションには自信があると言うと、『外見はともかく内面がダメダメ』との事。男と付き合った事はあっても、大抵長続きしないのはそう言う訳かと思わず納得してしまったのは、悔しいから秘密だ。
助手席で惚けてるのは、私の後輩の桐生美久、21歳女性独身。でも、童顔で背が低い為に、一つ間違えると高校生以下に見える。美久は自分の特性を良く把握していて、甘え上手だ。それに、私ほどじゃないが、プロポーションが良い。・・・と言うか、全体的に縮小したような身体は、ある意味アヤしい魅力に満ちている。騙される男は結構いるだろう。困ったものだ。
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「先輩先輩っ!喉が乾いちゃったし、一息いれません?」
美久が言った言葉に、私は頷いた。今日は陽射しも強くて、車内は結構熱くなっている。クーラーを入れても、陽射しを浴びてる肌が乾燥するような気がするぐらいだ。今は駐車禁止区画なので、区画外に出てからなら一休みするのもいいだろう。
「この先の公園まで行こうか。ジュースの自販機もあるし」
「先輩のえっちー。あそこの公園って、野外えっちで有名なとこですよぉ。そんなに覗きたいんですか?」
馬鹿な事を言って、美久は笑いながら私の左肩を突っつく。私は運転中だっていうのに。やっぱり、先輩として尊敬されてないな、これは。
「昼間からやるヤツがいる訳ないだろ!それより、運転中なんだから、肩を突つくなっ!」
「はーい」
ちろっと舌を出して、コケティッシュに笑った。私に愛想を振り撒いても仕方ないだろうに、とか思ったが、同時に私には出来ない仕草だなと感心もした。ただ、私には無理とは思う。別に、羨ましくも無いし。
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安全運転で公園まで辿り着くと、ミニパトから降りた。やっぱり、座りっぱなしだと身体に負担がくるようで、身体を伸ばすと疲れが取れるのが感じられた。爽やかな風が気持ち良い。このままぼーっとできたら、もっと気持ち良いだろう。
「美久、ご馳走したげるから、ジュース買ってきて。私はアイスのレモンティーね」
100円玉を3枚取り出すと、美久に渡した。自販機のある所まで二人で行くと、ミニパトが見えなくなる。悪戯されるのもいやなので、私は人目の無いところでは、なるべく目を離さないようにしている。
「はぁい」
弾むように返事して、美久は奥にある自販機に向かって歩き出した。私はその間、ひなたぼっこを満喫する事にする。
この公園は、すぐ近くに何も無いから、昼間でも人通りが少ない。ましてや、夜になればそれこそえっち目的以外の人間は近付かないと言って良い。今私が腰を掛けているベンチも、恋人達のえっちに使われたかも、とか思うとげんなりしてしまう。
暫く待っていると、美久がジュースを手に戻って来た。ただ、おどおどしたり、しきりに振り返って背後を見たりと、完璧に挙動不審人物になっていた。もし美久が見知らぬ他人だったら、迷わず不審尋問していたかも知れない。
「どうした?痴漢でも出たか?」
からかうように言うと、美久の顔が桜色に染まった。まるで何か恥ずかしい事を思い出したように。
「先輩っ!居たんですよ!」
「・・・痴漢?」
「違いますっ!あっ・・・高校生がえっちしてたんです!」
思わず大声を出した後で、急に小声になって美久は続けた。
「女のコは半裸になって、もう入れてるのがまる判りなんですっ!」
「はぁ・・・」
「もう、びっくりしちゃって・・・」
さて、どうするか。勿論、こういう場所でするのも、高校生という年齢も問題がある訳だけど、若い男女がイタシてる最中に踏み込むのもどうかと・・・。なにしろ、警官とはいえ、私はまだうら若い乙女なのだ。でも、見て見ぬ振りというのも・・・。
「美久、その場所に案内してくれ」
「えっ、行くんですか?まだ終わってないと思いますよ?」
美久のその一言に、全身から力が抜けていくのが実感できた。
「いや、別に終わってるかどうかが問題じゃなくて、他の一般人に見られる前に止めさせるのが目的だから」
「じゃあ、声を掛けるんですよね」
「まぁ、そうだな」
「私、先輩のやり方を今後の参考にさせて頂きますねっ!」
胸の前でにぎりこぶしを作って体を前に乗り出させてるけど、どう考えても『私はイヤだから、先輩ヨロシクっ!』って言ってるよな、これは・・・。
私はため息をついて、「判った判った」と言うと、その場に案内させた。
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現場に着くと、幸いな事にもう終わっていたらしい。公園の奥まった所にあるベンチで、男のコにもたれて女のコがまどろんでいた。勿論、どちらも服を着て。女のコは、うっすら汗ばんだ顔に至福の表情を浮かべている。シタ後だからか、とても可愛らしい。
男のコの方は・・・不思議な、としか言えないコだった。私達の顔を見ても落ち着いているし、凄くカッコイイという訳でも無いのに、何故か視線が引き寄せられる。カリスマ性・・・と言うのだろうか。
「僕達に、何かご用ですか?」
自信と余裕が伺える、とても静かな声。私の隣で美久が、柄にも無く緊張する気配が伝わって来た。
「ああ、こういう場所での性行為は、やって良い事かどうかの区別ぐらいはつくだろう?」
「ええ、つきますよ、もちろん」
カレの言葉に、焦りは感じられない。照れも気負いも無く、まるでそれが当たり前のように自然体だった。
「きょ、今日は注意だけにしておいてあげるから、今度から気を付けるんだ」
「それはありがたいですね」
そう余裕を持ってカレは答えると、ポケットから耳栓を出して自分に付けた。あの、騒音をカットして声は通すっていうタイプのやつだ。手際良く自分に付けると、まだ惚けてるカノジョにも嵌める。これは、私に対する『うるさい』っていう意思表示なんだろうか?
「・・・そのお礼に・・・」
そう言いながら、カレは脇に置いてあった小型のラジカセをこちらに向けた。一連のカレの行動が読めなくて固まってると、カレはプレイボタンに指を乗せて、こちらを向いた。その顔に、にこやかな笑みを浮かべて。
「・・・気持ち良くしてあげますね」
カレの指がプレイボタンを押すと、流れ出した音の奔流に私の意識は飲み込まれた。
- 3 -
目を開けると、私は公園の中に立っていた。身体がだるくて、まるで寝起きのように、思考がまとまらない。なんでここにいるんだっけか・・・。
「・・・んん・・・、あれ?」
隣で美久の声がした。やっぱり、今起きたばかりのような声。
「何があったんだっけ・・・」
そう言いながら、私は美久の方を向いた。丁度美久も私の方に顔を向けて・・・私達の視線が交錯した。その瞬間、私の頭の中から、美久以外の全ての事が消え去った。美久が小さく「あ・・・」と声を漏らし、頬を紅潮させた。それでも私から視線を逸らさずに、逆に私に近付く。美久の瞳に映る私が大きくなった。きっと、私の瞳に映る美久の姿も。
気が付くと、私達は相手の吐息を感じるぐらい近い所で見詰め合っていた。私の方が頭一つ分背が高いので、美久は窮屈そうに首を曲げて、私は自分の胸を見下ろすように。
「だめ・・・」
こんなに近くにいても、聞こえるかどうかぎりぎりの美久の声。少し震えて、願っている事と言っている事がまったく逆と、誰にでも判る言葉。だって、美久の目はこんなにも私を求めている。だから判る。それに私も、こんなにも美久を求めているから。
「美久・・・」
そう呟いて、顔を下に降ろして行く。私の小さく開いた唇が、美久の甘い吐息を感じてわなないた。
「すき・・・」
そう呟いたのは、どちらだったろう。気が付くと、私と美久の唇が重なっていた。今まで体験した事の無い、魂が揺さぶられるような、甘い甘いキス。先に舌を使ったのは、美久の方からだった。精一杯伸ばした舌で、私の上顎を優しくくすぐる。
「んっ!」
腰が砕けそうになる程の快感を堪えて、私も舌を伸ばした。美久の柔らかい舌を捕らえて、吸いながら絡ませる。舌の裏側をくすぐる。今攻めてるのは私なのに、目の裏側に光りが瞬くような快感を感じてる。口移しで送られる美久の喘ぎが、美久も悦んでる事を伝えてくる。たまらなかった。
ちゅぷ、ちゅぴ、ぺちゃ。
舌が動く度に、唇と唇の隙間から、ネコがミルクを啜るような音が漏れる。その連想から、自分の腰を落して、美久の顔が上になるようにした。そのまま吸い出すように、美久の口にたまった唾液を啜る。口の中で租借して喉に流すと、頭がずぅんと痺れるような甘さが感じられた。
美久の舌の先が私の舌の先を突ついた。不思議と、美久が何を求めているかが判った。中腰気味からまた立ち上がると、口の中にたまった唾液を美久の口に流し込む。今度は美久が、悦びと共に私の唾液を嚥下した。重ねた唇から、「んっ」という美久の声が伝わってくる。私の唾液を飲み込んでくれた事が、すごく・・・嬉しい。
「はぁあ・・・」
息が苦しくなって、どちらからとも無く、唇を離した。名残惜しげに舌だけが触れ合っていたけど、それも離して至近距離から見詰め合う。濡れたような美久の瞳は、宝石のように美しかった。
「先輩、脚・・・開いて・・・」
そう言われて、期待と共に脚を開いた。肩幅よりも、少し広目に。何をするにも邪魔になりそうだったので、濃紺のスカートをたくし上げた。視線を落すと、美久の右手が私の下腹部に伸びて来るのが見えて、待ちきれずに身体が震えた。
「触るね、明さん」
そう宣言すると、美久の中指が私の秘裂に沿って、押し当てられた。濡れた下着越しに敏感な所が刺激されて、背筋に感電したような快感が走った。腰から力が抜けそうになって、必死に美久に抱き付く。膝が内側を向いて、がくがくしているのが自分でも判った。
「ふふ・・・明さん、こんなに濡れてる」
そう耳元で囁かれて、恥ずかしくて身体中が熱くなった。それなのに、もっと色々言って欲しくてたまらない。まるで、美久の声が私の鼓膜を性感帯にしたみたいだった。
「ふぁっ・・・んっ・・・!」
美久が、パンティの脇から中指を挿入して来た。反射的に閉じた目の裏側で、指の動きを実際に見ているように、リアルに感じられた。入り口付近で弄うように掻き混ぜる動きや、少し深く入れて、天井側を擦る動き、ゆっくり入れてから、抜けそうになるほど戻したり・・・。指が1ミリでも動くと、その都度身体中が快感に痺れた。
「つっ!」
突然襲いかかった痛み・・・というか衝撃に、思わず腰が引けた。美久の指が抜けるのが、ちょっとした喪失感と一緒に感じる。美久が身体を離して、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「・・・明さん・・・もしかして初めて?」
美久は、自分の中指に目を向けたが、そこに血は付いていなかった。多分、強く当たって私の身体がびっくりしただけなんだと思う。
「うん・・・でも、もう痛く無いから、続けて欲しい・・・」
「でも、明さんが痛いのはヤだから・・・そこの木に、寄り掛かって貰えますか?」
そちらを見ると、ベンチの脇に木が植えられていた。ベンチにさっきの高校生が座っているのに気が付いたけど、特に気にならないので、そのままふらつきながら近付いて、木に背中を預けた。制服越しに、木の感触が背中に当たる。
「明さんの胸、見せて下さいね」
美久はそう囁くと、私の制服のボタンを外し始めた。そのまま腕を拘束するように、後ろにはだける。もともと抵抗する気は無いけど、したくても出来ない状況にぞくぞくした。
「うふふ・・・抵抗しても、無駄ですからね」
美久だって、私が抵抗するはずが無い事を知っているのに、わざとからかうように言った。今度は、白いワイシャツのボタンを外し始める。ネクタイはそのままなので、胸の谷間に青いネクタイがぶら下がっているのは、ヘンにいやらしい光景だった。
美久はブラを露出させると、ブラの上から乳首のあたりを爪で掻く様に刺激し始めた。スポーツブラなので、かりかりと掻かれる感触が直に伝わって、切なくなった。見ていると、ブラを押し上げて、乳首が勃起して行くのが判った。その浅ましい様子に、恥ずかしさが増した。それでも気持ち良いのは止まらない。
「あ・・・ああ・・・ふぅ・・・ん・・・」
美久はブラを上にずらすと、両手と唇、舌で私の胸を愛撫した。美久の手に余るサイズの私の胸は、美久が捏ねる毎にいやらしく形を変えた。先端だけでなく、胸全体が熱を持って気持ち良く感じた。乳首を甘噛みされて、思わず喘ぎ声が大きくなる。
「はぁ・・・んっ・・・だめぇ・・・ち・・・ちくび、かんじゃ・・・」
「でも、気持ち良いんですよね?だって、ほら・・・」
かり。
さっきよりも強めに噛まれた乳首から、全身に快感が走った。思わず達しそうになった。私の腿の内側を、溢れた愛液がつぅっと滴る。
「ぅあ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「明さん・・・かわいい・・・」
美久は足元にしゃがみ込むと、私のパンティを下ろした。膝のところで止めて、片足を持ち上げて片方だけ抜く。私の身体は力が入らなくて、美久の操る通りに動いてしまっていた。でも、それは自分から積極的に脱ぐのと、美久に脱がされるという違いだけだっただろうけど。
私の濡れたアソコに外気が当たって、熱が拡散して行くのを感じる。でも、それは表面だけの事で、私の中は熱い泥濘のようになって、快楽を求めていた。
「お・・・おねがい・・・がまん、できない・・・」
「ふふ、明さんのおねだり・・・かわいい・・・」
美久は、私の秘裂に手を添えて、指で慎重に割り開いた。
「明さん・・・綺麗・・・」
美久は呟くように言うと、私のアソコにキスをした。最初はチュッと音を立てて・・・私が嬌声を上げると唇を押し当てて、舌で中までねぶるように。美久の舌が踊って、私の大事な所からぺちゃぺちゃと音がする度に、激しい快感に打ちのめされるようだった。
「あ、あっ!ひぅ、ん、んぅっ!」
止まらなかった。美久が何かする度に、頭の中まで真っ白になるような悦楽が襲って来る。私の身体は壊れたみたいにがくがくして、身体中が快感で一杯になった。視界が光りで埋め尽くされて、巨大な波がぐぅんと身体を押し流す感じがして・・・今まで、感じた事の無い絶頂感に、私は悲鳴を上げる事しか出来なかった。
「あ、ああ・・・」
身体中から力が抜けて、意識も半分無い状態で、私は倒れていった。その時には上下の感覚も無かったから、倒れる事すら判らなかった。ただ判ったのは、誰かが優しく受け止めてくれたという事。さっき抱き締めあった美久の身体とは違う、身体も心も依存してしまいそうな、逞しい身体。今度こそ安心して、私は意識を放棄した。
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『今日ここであったエッチな事は、全部忘れて良いよ。汗をかいた身体は拭って、あとはいつも通りに過ごすんだ。それから、明日は15時に東京モノレールの天王洲アイル駅に来る事』
『・・・はい・・・』
『今日は愉しませてもらったから、明日はもっといい事をしてあげる。もっと、ね』
そう、私達はカレに命じられて、このモノレールに乗り込んだ。
- 4 -
全て思い出した。何かの音楽を聴かされて、言うなりになってしまった事を。それまでの価値観を覆されるような、圧倒的な快感を。さっきまで感じていた恐怖に、甘美な色が加味された。それはまるで、麻薬の中毒患者が麻薬を希求するような思い。いけない事と判っているのに、目が離せない魅力。
「私達に、何をした?」
それでも、私は女性警官としての責務を果す為に、言葉にした。カレの暴走を止めなくては・・・それだけを考えて。少し冷静になったせいか、先程出なくなった声は、元通りに出るようになっていた。首から下は動かなかったけど。
「メインはこれからなんですけどね。一言で言うと、催眠術の強力なもの、という感じです。僕が暗示を掛けて、レズ行為を自主的にしてもらったり、」そう言って、カレは美久の方へ目を向けた。「露出癖の淫乱になってもらったりしてる訳です」
今は、警察だって新興宗教がらみで、洗脳などの知識を持つようにしている。それでも、これほど強力なものがあるとは、聞いた事も無い。
「これから・・・どうするつもりだ?」
この質問は、それなりにカレに受けたらしい。さも可笑しい話を聞いたというように、体を折り曲げて笑いの発作にとらわれている。まるで普通の高校生のように、無邪気と言っていい表情で。
「あははははっ・・・面白いことを言うね。それとも、もっと深い意味で聞いたのかな?」
それから、カレは私の目を覗き込むように顔を近付けた。私は、目に力を込めて見返した。身体が動かない以上、出来る事はそれほど無いから。
「取り敢えず、痴漢ってしてみたかったんだ。それで、それ以降としては、二人には僕のものになってもらおうと思ってる。二人とも可愛いし、昨日は結構手間を掛けて刷り込んだからね。・・・さらにその後は・・・ふふ、考えてないや」
無邪気さと余裕を持って話すカレを見て、私達をモノ扱いしているのに・・・憎しみは感じなかった。諦観と言うより、スケールの違いに圧倒された、そんな気がする。それとも、これも催眠術のせいなんだろうか?
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「ふっ・・・んんぅ・・・あっ・・・」
ワイシャツの上から、私の感じる所を這いまわる指。それとも、指が這いまわるから感じるのかも知れない。私は両手で吊り革に掴まって、抵抗できないままに嬲られていた。はだけられた制服の間から、ワイシャツに包まれた胸が突き出している。
「はぁん・・・あ、ああ・・・」
だんだんと、頭が朦朧としてくる。意識していないのに喘ぎ声が漏れて、自分自身で一層熱くなって行く。熱に浮かされたように、考えがまとまらなくなる。いけない、私は警官なのに・・・。
「・・・め・・・」
「?・・・なんですか?」
私の背後から、耳に息を吹きかけるように、カレの声がした。それがまた刺激になって、私の身体を震わせる。背中に密着したカレの身体も、それだけでも気持ち良い。だけど・・・。
「だめ・・・わ・・わたし・・・けいか・・・ん・・・だか・・・ら・・・」
「・・・へぇ、明さん、凄いね。今まで、ここまで刺激されて我慢出来たひとって、一人もいなかったよ。・・・でも、悔しいから、止めてあげない」
カレの右手が、脇の下を経由して、お尻に回った。左手の指は、ワイシャツのボタンを全て外すと、鎖骨や喉、顎や唇、胸の付け根や腋やお腹などを這って、直接的な場所は触れないようにしていた。触れられる度に、切ない快感ともどかしさが駆け巡る。
「んぅ!、あっ、そこはっ!!」
カレの右手は、紺色のスカートを捲り上げていた。そのままお尻の表面をさするように撫でると、人差し指を下の方に・・・私の大事な所の方に、下ろして行った。パンティの上からなのに、その指の感触はとても生々しく感じられた。
「あ、ああっ!・・・え?」
カレの指は、そこに辿り着く直前で立ち止まり、またお尻の割れ目をなぞる様に戻って行った。思わず戸惑いの声を上げてしまった私は、自分の声の物欲しげな響きに恥ずかしくなった。
「ち、ちが・・・ひぁっ!」
否定しようとした声を遮るように、再びカレの指が下へと動き始めた。目を瞑って指の動きに集中していると、濡れたパンティ越しに秘裂の端に触れて・・・また戻って行った。さっきよりも強い快感と、さっきよりも激しいもどかしさが残る。
「うぐ、あ・・・ぃ・・・」
また下りて来る指。また触れてくれない指。無意識のうちに突き出したお尻は、カレの指の動きを変えることが出来なかった。さらに激しいもどかしさが、炎のように全身を包んだ。
「・・・ぃ・・・や・・・」
また下りて来る指。また触れてくれない指。まるで涙のように溢れ出した愛液が、役に立たなくなったパンティを越えて、足首まで滴る。頭の中が、いやらしい事で一杯になった。
「・・・や・・・いやっ!もう、しんじゃう!さ、触って!めちゃくちゃにしてっ!」
一度たがが外れると、言葉は止まらなかった。昨日の破滅的な快感が思い出されて、欲しくて欲しくて堪らなくなる。もう、それさえ貰えれば、どんな事だってしてしまいそうだ。視界の片隅で、こちらを見ながらオナニーに耽る美久にも、激しく嫉妬すら感じてしまう。
「ふふ、じゃあしてあげますから、スカートとパンティを脱いで、そちらのドアの所に立って下さい。もう、”身体は自由に動きます”から」
「あ、あは・・・」
もう、私は壊れているのかも知れない。カレの声が私の頭に染み渡ると、何の躊躇も無く従った。もう入れてもらえると思うと、自然に悦びの笑みが浮かんで来るようだった。
海側のドアは、中央がガラス窓になっている。もしかしたら、見られてしまうかも知れないというのに、下半身は丸裸・・・上半身も全てのボタンを外してはだけた姿で、ガラス窓の部分に両手を突いて、お尻を突き出した。
「は、はやく・・・おねがい・・・」
もう、入れてもらう事しか考えられなかった。あるだろう破瓜の痛みや、こんな所でえっちをする事なんかは、まったく気にもならない。お尻を上下に軽く振って、恥ずかしげも無くおねだりした。
「明さん、皆に見られてますよ。女性警官が恥ずかしい所を晒してる姿を、ね」
その声に振り返ると、反対側の窓際やドアの前にぎっしり立っていた乗客が、どんよりとした目に欲望を湛えて、私の方を・・・私の濡れてカレを欲しがってるアソコを見詰めていた。
「ひ・・・いやぁ・・・あ・・・」
その瞬間、羞恥と・・・それを上回る快感に、身体が燃え上がるように感じた。サラリーマンが、主婦が、子供が、女子高生が、お年寄が、みんなが私のアソコを見ている。
「んっ、ああっ!ぅあぁあああぁっっ!!」」
乗客全員がいやらしい女性警官のアソコを見ている、その現実に、触られてもいない身体が絶頂に達した。まるで、視線に犯されたように、物理的な快感すら感じた。何度も何度も絶頂の波が押し寄せて、意識が無くなりそうだった。
「あはっ、せんぱいって、やらし~」
私が荒い息を吐いていると、すぐ傍から美久の声がした。目を向けると、肘掛にアソコを擦りつけながら、私を見詰めている美久と目が合った。いつの間にか、革靴以外何も身にまとっていない。背は低いけど、身体のバランスの取れた綺麗な裸身を惜し気も無く晒している。
欲情してきらきらと光る濡れた瞳に、私の目は引き寄せられて行った。美久の瞳に映った私の瞳も、同じ光りを放っているのが見える。気が付くと、美久と私は舌を絡ませ合う、ディープなキスを交わしていた。注がれる乗客の視線の中、ぴちゃぴちゃと濡れた肉の音が響いた。
「さ、二人とも、座席に重なって横になってよ。一緒にシテあげるから」
カレの言葉に、私と美久は嬉々として従った。例え絶頂を迎えても、身体が・・・心がもっと欲しがっていたから。もし、この場に美久が居なかったら、カレの足元に跪いてでも哀願していたかもしれない。
私は座席の方へ行くと、既に脚を開いて仰向けに横たわった美久に覆い被さる様に、四つんばいになった。あまりに狭くて、置き場所の無い左足は床に伸ばしたけど、意外とその姿勢は楽だった。
美久と素肌で触れ合っている部分が、しっとりとした汗と、きめ細かい肌の感触で気持ち良い。もっと一杯触れたくて、体重を掛けないように気を付けながら、抱き締めるように密着する。美久も私の背中に腕を回して、精一杯しがみ付いて来た。
「明さんは初めてだから、明さんから入れてあげるね」
そうカレの声がすると、私のお尻に手を置かれた。熱いものが私のアソコに当てられたのが感じられて、快楽への期待に身体が震えた。まだ誰も受け入れた事が無い部分に、ゆっくり押し入って来る感覚に、思わず目を閉じる。でも、恐怖も、苦痛も感じられずに、ただ圧倒的な質感だけが伝わって来た。
濡れた壁を押し開き、途中で詰まってから、ぐっと奥まで突き進む。私は女になったのだと、素直に受け止められた。奥までびっしりと埋め込まれたそこは、まるで麻酔をかけられたようにジンとして、痛みは感じない。その代わりに、心の中に悦びと幸せが溢れかえった。頬を伝う歓喜の涙を、美久が舐め取ってから「おめでとう、せんぱい」と祝福してくれた。
「痛く無いですよね。少し、動きますよ」
その声と一緒に、中のものが抜けるぎりぎりまで戻って、また入って来た。それを、何度も繰り返す。私の身体は、その一突き毎に感覚を変化させていった。圧迫感から快感に・・・ただの快感から身も心も、魂までも支配されるような悦楽に・・・。今まで、こんな幸せな事があるなんて、想像したことも無かった。
「ひあ、あっ、いいっ、いいのっ!あぁん、あ、ひぅっ!!」
喘ぎ声が止まらなくなった。昨日の美久とのエッチとは、比べ物にならないほどに圧倒的な快感だった。この快感無しには生きていけないんじゃ、なんて甘美な恐怖すら感じた。
「あっ、ああっ!・・・え?」
急に喪失感を感じた。カレが、私の中から抜き出したらしい。
「一緒にするって約束だからね。でも大丈夫。”例え抜けても、貫かれる快感が持続する”から」
「ひっ、あ、ああっ!!」
本当だった。もう、私の中から抜かれたのに、さっきと同じ快感が全身を貫いた。頭の中が、真っ白になりそうだった。
「うぁあっ!いい、きもちいいっ!すごいよぉっ!」
目の前で、美久も快楽に咽び泣いている。紅潮した頬に、口から垂れた涎がいやらしく伝った。アソコからの快感に突き動かされて、無意識のうちに舌を出して舐め取る。美久の耳の下から、頬を登って唇の端へ。
「んっ、んんぅ!」
そのまま、唇が重なる。お互いの舌が絡まり合う。また、カレが私の中に入って来て、その気持ち良さに美久の口の中に、喘ぎ声を吹き込んだ。お返しとばかりに、美久からも声にならない喘ぎが、私の口の中に送られてきた。美久も、貫かれなくても快感を感じていると、気が付いた。さっきの私みたいに。
「んむぅ、う、んぁっ!」
「うんっ!あ、あぁん」
私達の喘ぎが、口の中で混ざり合う。身体も、触れ合った部分から融けて一つになってしまいそうだ。それに、心だって。なにしろ私達は、同じ快楽を共有しているのだから。
カレが、また美久に入れたのが、密着した下腹部の感触から伝わって来た。それでも、私の中を掻き混ぜて、全身を焼き尽くすような快感は途切れない。そして、何度か突くとまた私に。途中から、どちらに入れられてるのかなんて、判らなくなった。あるのはただ、麻薬のような快感と多幸感だけ。私の魂まで縛り上げるような、甘美な鎖。
「んむ、はぁっ!ああっ、だめ、い・・・いっちゃうよぉ!いっちゃ、いっちゃうぅっ!!」
美久が、私が絶頂の声を上げる。もう、どちらが叫んだかなんて、判らなくなっていた。身体の奥に熱い液体が注ぎ込まれると、大きな波が何度も何度も押し寄せて、身体がバラバラになりそうな絶頂感に打ちのめされた。頭の中が真っ白になって、意識が遠くなって行った。
- Epilogue -
『本日のニュースをお送り致します』
ここは諒一の家の居間。今日は両親がいないので、諒一は綾香を呼んで晩御飯を作ってもらっていた。今は食後でまったりしているところ。テレビではニュースを流していて、二人はそれを見ていた。
『本日、東京モノレールが占拠されるという事件がありましたが、異常を察知した女性警官2名の働きにより、占拠2時間後の17時27分に容疑者が現行犯逮捕されました。一部乗客が軽い怪我を負いましたが、重傷者は出ませんでした。逮捕されたのは、愚次山容疑者、43歳で、職業は高校教師です。詳しい動機などは、現在判明してはいません。それでは次のニュース・・・』
ニュースを見ていた綾香は、自分の高校教師の名前が出てきて驚いた。愚次山は、学校内では、生徒から嫌われてる先生のNo.1だ。綾香も嫌っているので、別にショックは受けなかったが。
「あ、これ愚次山よね。へー、捕まったんだ、いい気味」
「だってコイツ、綾香に手を出そうとしたからね」
さらっと言った諒一に、綾香は驚いた顔を向けた。綾香も頭は悪くないから、諒一が言わなかった事も想像できた。それは、『海の記憶』を使って、愚次山を陥れたという事。でも・・・自業自得だと納得してしまうのは、しょうがないことだろう。
「女性警官2名って言ってたよね。昨日の二人?」
「そうだよ。どうせ手柄を立てるんだったら、男に上げるのは勿体無いだろ」
「でも、ずいぶん思いきった事をしたんだね。モノレールを『海の記憶』で占拠するのって、大変だったんじゃない?」
そう綾香が言うと、諒一はにやりと笑った。
「まぁ、愉しむ為には、苦労もするって事。それに、愚次山は社会的に死んでもらおうと思ってたしね。はでな方がいいから。ふふ、今の報道には無かったけど、あの場には愚次山に強姦されたって女性もいるし、もうダメだね、ホントに」
「うわぁ、そこまでしたんだ。でも、なんで?」
諒一は、綾香の方に顔を向けた。どこと無く真剣に見える顔を。
「僕は、独占欲が強いんだよ。・・・多分ね」
そう、愚次山は綾香にちょっかいを出した。勿論事無きを得てるが、それは、諒一を激しく怒らせた。愚次山は、自分の死刑執行にサインをしたも同然なのだった。
言葉の意味を正しくとらえた綾香は、頬を赤く染めた。
「私に、執着してくれてるんだよね?」
もし、綾香以外の女性達に何かあったら、諒一はここまでするだろうか。そう思って、綾香は幸せを噛み締めた。
「綾香は僕のものだからね」
「うれしい・・・。いいよ、ものでも。諒一の傍にいられるんだったら・・・」
・・・ずっと・・・。そう続けようとした綾香の唇を、諒一の唇が塞いだ。
そして、室内に濡れた音が響き始める。終わる事無く、いつまでも・・・。
< 終わり >