三日目
チュン、チュンチュン。
遠くに雀の鳴く声が聞こえる。
「ん・・・・・・」
いつもと違う寝心地に僕は寝ぼけた頭で目を開いた。
その瞬間、一瞬で僕の頭は覚醒する。目の前にみゃーの顔があったからだ。
叫びそうになるのを必死に堪える。みゃーの寝起きは最悪だからだ。いや、寝ぼけるわけじゃないんだけど、いつも一人で目を覚ますみゃーは起こされるのをひたすら嫌う。前にたま姉ちゃんに言われて起こした時は逆に僕が眠ることになった・・・みゃーに殴られて。
そんな訳で、僕はみゃーを起こさない様にそっと布団から抜け出した。何とか布団から抜け出したものの、みゃーはちょっとの物音でも起きる事があるから、迂闊に動けない。
さっさと自分で起きてくれればいいんだけどな。
何もできないので、何となくみゃーの顔をじっと見る。
すやすやと気持ちよさそうに眠るみゃー。僕はその真っ赤な唇に目を奪われた。口紅とか塗っていないのに鮮やかな赤をしているその唇は昨日のキスを思い出させる。
柔らかかったな・・・
昨日、そして一昨日にも重ね合わされた唇の感触を思い出す。僕はみゃーの唇を見てゴクリと唾を呑んだ。
だいじょうぶ・・・だよね?
何が大丈夫なのかよくわからないけれど、僕はそっと指をみゃーの唇に伸ばす。
そして、つ、と口の端に触れた指で、みゃーの上唇をなぞっていく。
「んん・・・」
指が半分を超えたあたりでみゃーはぴくっと反応する。僕は慌てて手を引っ込めた。ドキドキしながらみゃーを観察するが、みゃーはそれだけでまだ起きる気配はなかった。
「ふぅ・・・」
僕は安堵の息を吐き、再びみゃーにチャレンジしていく。そっとみゃーの口の端に指をつける。触れるか触れないか程度の接触のまま、そっと、今度はみゃーの下唇をなぞっていった。
「んぅ・・・」
今度は残り四分の一と言った所でみゃーはごろんと寝返りを打った。当然、僕は慌てて指を離したが、やはりみゃーに起きる気配はない。
再びみゃーが寝返りを打ってこちらを向く。無防備な顔が曝され、軽くはだけたタンクトップの隙間から白い体が見えた。
ドキンドキンと胸が高鳴る。僕はそっとタンクトップを直してやると、みゃーに唇を近づけた。
三センチ。目の前にはみゃーの可愛い寝顔が広がり、ドクドクと僕の鼓動が早くなる。
二センチ。すうすうというみゃーの寝息が僕に吹きかけられた。僕の呼吸でみゃーを起こさないように必死に呼吸を止める。
一センチ。もの凄い緊張が僕を襲う。ここでみゃーが起きないことを神様に祈るばかりだ。
チュ。
僕とみゃーの唇が重なる。それとみゃーの瞳が開くのは同時だった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
唇を重ね合う至近距離で僕とみゃーの視線が交錯する。数秒、互いに何も言えなかった。
ボッと火がついたかのようにみゃーの顔が真っ赤に染まる。ぶるぶるとみゃーの体が震え、前兆を感じ取った僕は恐る恐るみゃーに声をかけた。
「お、おはよう・・・みゃー」
だけど、その挨拶に対する返答は拳だった。
「きしゃぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐはぁっ」
みゃーの拳が僕を下から掬いあげる。綺麗にもらった僕は大きく仰け反って、仰向けに倒れた。
「な、な、な、なにやってんのよっ!? きしゃーっ!!」
みゃーは立ち上がり、僕に向かって奇声をあげる。そんなみゃーを僕は殴られた顎をさすりながら見上げた。まるで茹で蛸のように顔を真っ赤に染めたみゃーはハアハアと呼吸を荒げて僕を見下ろしていた。
「え、と、なにって・・・キス?」
「きしゃーーーーっ!?」
「あ痛ぁっ!」
正直に答えたらみゃーに蹴られた。痛い。
「そんなこと見ればわかるのよっ、このバカミケッ!! エロミケッ!! きしゃーっ!!」
「ちょっ、みゃー。エロミケって酷くない?」
「きしゃーっ! ミケなんかエロミケで十分よっ」
僕はみゃーに抗議をするが、当然取り合ってはもらえない。みゃーは奇声を発するとふんっと顔を逸らした。
「はぁ・・・もういいよ」
全くよくないけど、どうせみゃーに言ったって聞きやしない。せめて、みゃーが飽きるまでは諦めて、他の人には定着しないようにしないと。
「でもさ、僕がエロミケだったらみゃーもだいぶエロいよね」
それと、みゃーに言われっぱなしと言うのも嫌だからここらで仕返しをしておこう。
・・・最終的には殴られるかもしれないけど。
「きしゃーっ!?」
狙い通りに僕の言葉に反応するみゃー。こっちを向いてぎろりと睨んできた。
怒気をはらんだみゃーの視線を受け流して、僕は言葉を続ける。
「だってそうでしょ? 昨日も一昨日も僕の入っているお風呂に後から入ってくるんだから。それに昨日のことだって・・・」
「き、き、き、きしゃーっ!?」
僕の言葉を聞いた途端、みゃーは真っ赤になり、ピンと癖毛を立てて慌てだす。そんなみゃーの反応に、僕はにやにやとしながら続きを話していく。微妙に下がって殴られても大丈夫な体勢をとりながら。
「あんな”えっちなみゃー”、始めてみたよ」
「・・・・・・」
僕がそう言った途端、みゃーはカクンと俯いた。ピンとたっていた癖毛もぺたりと倒れる。
あれ? どうしたんだろう? なんかいつもと反応が違う。
「みゃー?」
僕がみゃーの顔を覗き込むと、みゃーはくすりと笑いながら顔を上げた。そして、僕にしなだれかかってくる。
「ちょ、みゃ、みゃーっんむぅ!?」
いきなりの行動に驚いた僕にみゃーはさらに唇を重ねてきた。先程も感じた暖かい、柔らかい感触が唇に伝わる。
数秒そのままでいた後、みゃーから唇を離す。僕に向かって微笑むみゃーを僕は呆然と見ていた。
「みゃー・・・」
「ふふっ、驚いた? でもね、あたしがえっちになるのはミケにだけなんだよ」
そう言って、みゃーは僕の手を取って自分の胸に押し当てる。ドキドキと速い、みゃーの鼓動が僕の手を伝わってくる。みゃーはふふっと頬を赤く染めて笑った。
「ね、ミケ。わかる? あたしのドキドキ。あたし、ミケといるだけでずっとドキドキしてるの。ミケの事を考える度に胸が熱くなるんだよ」
そう言ってみゃーは僕をぎゅっと抱きしめる。ふわりとみゃーの匂いが漂い、僕はみゃーに負けないほどにドキドキと胸が高鳴った。
「あたし、ミケとエッチしたい」
耳元でみゃーが囁く。それは僕の願いでもあった。
「うん、僕もみゃーとしたい」
耳元なので静かにだけど、はっきりと僕は言う。その言葉を言った瞬間、みゃーの抱きしめてくる力が強くなった。
「ありがと、ミケ・・・・ん」
「んむぅ・・・ふぅ・・・ん」
僕達は抱きしめあいながら唇を重ねる。僕はそれだけでは足りないと舌を伸ばしてみゃーの唇の中へと侵入していった。
「ちゅぅ・・・ん・・・ちゅる」
「ちゅあ・・あ・・・ちゅ」
僕の舌に応えるようにみゃーの舌も伸びてくる。絡み合った僕達の舌は互いに唾液を交換していやらしい音を立てていった。
たっぷりと一分近く唇を重ねていた僕達は空気を求めて唇を離す。つぅと僕とみゃーの薄く開いた唇に銀色の糸が橋を架けた。
「みゃー・・・」
僕はみゃーが寝間着代わりに着ているタンクトップをたくしあげる。昨日見たものとは違うブラジャーがみゃーのささやかな胸を守っていた。
「外すよ?」
僕の言葉にみゃーはこくんと頷く。僕はみゃーの背中に手を回し、ぷちんとホックを外した。弛んだブラジャーの縁に手をかけタンクトップと一緒に持ち上げる。
ぽろんっ。
なんていうのはもちろんなく、ささやかなみゃーの胸はちんまりとその存在を表した。みゃーは恥ずかしそうに頬を染める。
「ごめんね、ミケ。お姉ちゃんみたいに大きくなくて」
「何で謝るのさ。みゃーの胸、可愛いよ」
僕はそう言ってみゃーの胸に舌を伸ばす。舌先がみゃーの乳首に触れた瞬間、ぴくっとみゃーの体が震えた。
「みゃーにはみゃーの良さがあるんだよ。僕はみゃーの胸も好きだよ」
「んっ・・・ミケッ・・・ありがと」
みゃーは僕を迎えるようにぎゅっと抱きしめる。みゃーのかすかな胸がふにっと僕の顔を圧迫してきた。その中で僕は舌を動かす。僕の舌の動きにあわせて、みゃーの体がぴくっぴくっと震えた。
「ぁっ、はぁっ・・・ミケッ、そこっ」
僕は弛んだみゃーの腕の隙間から手を差し入れ、もう片方の胸を揉みしだく。僕の手に収まるささやかなみゃーの胸はふにふにと柔らかかった。
「ひぁっ・・・ミケェッ、い、いいっ」
みゃーは切なそうな声を上げて、体を反らす。僕はみゃーの頭をぶつけないようにして、そっと体を布団に横たえた。つつ、と蛞蝓のように舌をみゃーの体に這わせていく。唾液がみゃーの体に舌の動いた後をつけていった。胸から臍に唾液の道が続いていく。
その先へと行こうとした僕はみゃーの短パンに道を阻まれた。昨日のみゃーのあそこを思い出す。みゃーを気持ちよくさせてやりたいと思った僕はみゃーの短パンに手をかけた。
「みゃー、腰を上げて」
みゃーは僕に言われるままに腰を上げる。みゃーの短パンごと下着を下ろし、みゃーのあそこを外に曝した。みゃーのそこは既にしとどに濡れており、ひくひくと蠢いていた。
「みゃー・・・もう濡れてる」
「うん・・・ミケがしてくれたから」
僕は再び臍に舌をつけると、みゃーのあそこへ向かって道を作っていく。みゃーの体がぶるるっと震え、とろっとあそこから汁が零れた。
「みゃー、ひくひくしてる」
「ん、んんぅっ、ミケェ・・・」
僕がみゃーのあそこに口を付けるとみゃーの体がびくぅっと大きく震える。途端にみゃーのあそこから出てくる汁の量が増え、とろとろと洪水のようになった。
「ミケェ・・・あたしも・・・あたしもぉ・・・」
みゃーの言葉に僕はみゃーの上に折り重なった。ずるりとみゃーにズボンを脱がされる。ぽろんと空気に触れた僕のあそこが暖かいものに包まれた。みゃーの舌に触れられて、僕のあそこにぞくっとした刺激が走る。僕もみゃーに負けまいとみゃーのあそこに口づけした。
「ひゃぁぅっ」
びくっとみゃーの体が震える。とろとろと零れている汁を吸い上げていく。ぴりっとした刺激が舌を走る。ややしょっぱいみゃーの汁を僕は昨日と同じように飲み下していった。
「ひぃぅぅっ、ミケッ、飲んでるっ」
気持ちいいのか、みゃーの体が弓なりに反らされる。飲み干すどころか、汁は飲んでも飲んでもみゃーのあそこから止めどなく溢れてきた。
みゃーには僕のあそこを舐める余裕なんてなく、僕にされるがままに体を踊らせている。
みゃーが感じてくれている。その事実に僕のあそこははちきれんばかりになっていた。
「みゃー、いくよっ!」
みゃーに叫んで、僕はみゃーのあそこに舌を伸ばす。止めどなく溢れてくる汁を舌にまぶし、みゃーのあそこを僕は舌で丁寧に解していった。
「あ、あ、あぁぁっ」
びくっ、びくっ、とみゃーの体が痙攣する。僕は汁をまぶした指でみゃーのお尻の穴を丁寧に解しながら、みゃーのあそこの上にある小さな突起を舌で潰した。
「あああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
頭と足でブリッジをするみゃー。数秒間、その状態で固まっていたと思ったら、がくんと力が抜けて崩れ落ちた。
ハアハアと荒い呼吸をしながら、みゃーは時折、思い出したかのようにびくっと痙攣をする。
昨日もこんな感じになってたけど、これがイクというやつなのだろうか?
「みゃー、大丈夫?」
「はぁ・・・はぁ・・・う、ん・・・大丈・・・夫」
「本当? みゃーもいつも無理するから。超絶”人間のみゃー”もちゃんと休まないとだめだよ。」
みゃーははあはあと大きく息をつきながら、僕に向かって笑いかける。僕はみゃーに笑い返すと、体を半回転させて体勢を変えた。みゃーの顔が僕の目の前にくる。
超絶人間というのは勉強や運動など、全てに於いて一二を争うというとんでもない成績を残してたみゃーに中学時代につけられた二つ名だ。僕はそのみゃーと子供の頃からずっと一緒にいたし、みゃーよりも輪をかけて超スペックなたま姉ちゃんを見てたから、超絶人間と言われてもぴんとこなかったのだけれど、周りのみんなはそうでもなかったらしい。
「・・・・・ふん」
みゃーは頬を赤く染めて顔を逸らす。と、みゃーは何かに気づいたらしく、ぴんと癖毛を立て、赤く染めた顔をさらに真っ赤にした。
「き、き、き、き・・・」
「?」
あれ? 何赤くなってるんだろ? まあいいや。とりあえず、みゃーは大丈夫そうだ。
僕ははちきれんばかりに大きくなったあそこをみゃーのあそこに擦りつける。それにあわせて、ぴくっぴくっとみゃーの体が震えた。
「き、きしゃぁっ」
「ね、みゃー。大丈夫そうだし、入れるよ?」
じっとみゃーを見つめて言う。
「き、きしゃぁ・・・・」
みゃーは顔を真っ赤にしながら、きょろきょろと周囲を見回し、数秒考え込んでいたかと思うと、こくんと頷いた。
「じゃあ、いくよ」
僕はみゃーに言って、そっとみゃーの中へと差し込んでいった。昨日の今日だからか、みゃーの顔が苦痛に歪む。
「大丈夫? みゃー?」
「き、きしゃーっ」
みゃーは痛そうに顔を歪めながらもこくんと頷く。そして、ぎゅと僕の体を抱きしめてきた。
痛いけど、我慢する。
そんなみゃーの想いが伝わり、僕もみゃーを苦しめまいとゆっくりすることにする。
「みゃー、ゆっくりするから。僕を感じて」
「きしゃっ、きしゃぁっ」
コクコクと頷くみゃーに僕はそっと腰を引いた。ぶるぶると震えるみゃー。僕はみゃーの胸に手を伸ばした。
「ぁっ、ああぅっ」
みゃーの胸をふにふにと揉んでいく。手を動かす毎にみゃーの体が震え、ぎゅっと僕を抱きしめる力を強くした。
僕はみゃーの耳を甘噛みする。
「きしゃっ、ぁっ」
びくっとみゃーの体が震えて、僕のあそこを包み込んでいるみゃーのあそこが蠢く。とろとろと熱い汁が溢れてきて、僕のあそこをヒクヒクと刺激した。
「みゃー、気持ちいいよっ」
「んっ・・・ぁっ・・・」
僕はみゃーの耳の中へと舌を入れる。縁をなぞるように舌を動かし、ピンとたったみゃーの乳首をこりこりと転がした。
「ああっ、きしゃっ、あぁ!」
びくんとみゃーの体が跳ねる。きゅっとみゃーのあそこが締まった。ぞくぞくと僕の背中を快感が上ってくるが、みゃーをもっと気持ちよくさせるため、僕はその快感を我慢する。
「きしゃぁっ、ああっ、ひぁぁっ」
つつと、撫でるように指を滑らせていく。ぴくっ、ぴくっと震えるみゃーの顔を見ながら、指をみゃーの脇腹へともっていった。
「きしゃあぁっ!?」
みゃーの脇腹をつんとつつくとみゃーの体がびくっともの凄い勢いで跳ねる。どうやらここでも感じるらしい。
「みゃー・・・口開けて」
「ミケ・・・んむぅ」
僕の指示に従い、軽く口を開けたみゃーと口づけを交わす。みゃーはぶるっと震え、熱に浮かされたように僕を抱きしめる力を強くした。
僕はみゃーの口の中へと舌をのばし、口内を蹂躙していく。差し出されたみゃーの舌に快感を刻み込んでいった。
ちゅぷ、ちゅぷと唾液を交換しあい、いつの間にか自分からも舌を動かしてきているみゃーと競うように舌を絡めあう。
「ミケ、ミケェ・・・んっ、むぅ・・ちゅぅ」
「みゃーっ・・・むっ、ちゅっ、んんぅ」
無意識のうちなのだろうか。きゅ、きゅっとみゃーのあそこが僕のあそこを締め付けてくる。みゃーのあそこは汁が溢れてるし、みゃーもキスに夢中になってるし、大丈夫だろうと、僕はみゃーに苦痛を与えないようにそっと腰を動かしていく。
途端にみゃーのあそこが締め付けてきて、みゃーもびくっと体を震わせる。ぎゅっと体を抱きしめて、一層強く舌を絡めてきた。
一瞬で気付かれたが、みゃーは大丈夫だと態度で示す。我慢するから、と言外に言ってくるみゃーに僕も態度で示した。
ず・・・ず・・・
僕は静かに腰を動かしていく。みゃーの体がその動きにあわせてぶるっと震え、きゅぅっとみゃーのあそこが締め付けてくる。みゃーと絡めた舌を何度も動かし、みゃーの胸を揉んでいった。
「きっ、しゃぁっ、ぁぁっ・・・っ!!」
びくびくっとみゃーが体を震わせる。みゃーのあそこの締め付けがさらに強く、僕のあそこを呑み込んでいく。そこから伝わってくる快感は凄く、気付いたら僕の腰の動きが速くなっていた。
「き、きしゃっ、あああぁっ!!」
僕の腰の動きにみゃーの体が跳ね上がる。
ぞくぞくと寒気にも似た快感が僕の背中を走り抜け、凄い勢いで脳に体当たりをかましてきた。
「みゃ、みゃーっ!!」
「き、きしゃっ、きしゃっ!!」
僕達は布団の上でぎゅっと抱き合う。僕はみゃーの奥深くに進むと同時に限界を超えた。
「ああああぁぁぁっ」
部屋にみゃーの声が響く。うねうねと蠢くみゃーの中へドクドクと精子が送り出される。みゃーはぴくっ、ぴくっと体を震わせ僕のものを受け入れていた。
たっぷりとみゃーの中へと注ぎ込み、僕は脱力してみゃーへと崩れ落ちる。そんな僕をみゃーはきゅっと抱きしめてくれた。
「みゃー」
「・・・きしゃー」
僕がみゃーに笑いかけると、みゃーは頬を赤く染めてそっぽを向く。そしてそのまま数十秒の間、僕とみゃーは抱きしめあった。
僕がみゃーの中から抜こうと思ったその時、みゃーがごろんと僕と位置を入れ替える。
「みゃー?」
突然の出来事に僕はみゃーを見上げた。みゃーは顔を真っ赤に染め、そっぽを向いたまま、ぼそぼそとしゃべり始めた。
「ふ、ふん・・・ミケにやられっぱなしなんて、気にくわないのよ・・・き、きしゃーっ!!」
みゃーはいきなり奇声を上げたかと思うと、顔をしかめて腰を動かし始める。さっきみゃーの中に出した精液ととろとろと溢れ出すみゃーの汁のおかげか、みゃーの中はぬるぬるとよく滑り、僕のあそこはすぐに硬さを取り戻した。が、みゃーは顔をしかめたまま、ギリと歯を噛みしめていた。
「みゃー、大丈夫?」
顔をしかめて腰を動かすみゃーに僕は声をかける。みゃーはこくこくと頭を動かし返答した。
ぴくっ、ぴくっ、とみゃーの体が震える。その時に伝わってくる刺激が僕のあそこから快感となって体を駆け抜けた。
ずっずっずっずっ。
リズミカルにみゃーの体が僕の上で跳ねる。その度に僕の体に快感が走り、みゃーの口からは短い声がこぼれ出た。
「あ、あ、あ、ああっ、ああぁっ」
みゃーの口から声がこぼれでる度にみゃーのあそこが締まっていく。うねうねと蠢くみゃーのあそこが僕のあそこをきゅ、きゅっと締め上げ刺激してきた。
「みゃー、僕もっ、動くよっ」
ぞくっとした感覚が走り、僕は終わりが近いのを感じる。みゃーの動きにあわせるように僕も腰を使っていった。
「きしゃっ!?」
ずんっ。ずんっ。
僕はみゃーが降りてくる時に腰を突き上げる。
「きしゃぁっ、あぁっ、ひぁぅ!?」
こつん、こつんとみゃーの奥に僕の先がぶつかり、みゃーは僕の上で体を跳ねさせた。
「ミケェッ、どうっ? いいぃっ?」
「うん、いいっ、いいよっ、みゃーっ!」
僕が答えると、みゃーは嬉しそうに体の動きを速くする。ぴこぴこと癖毛が動き、みゃーの顔が悦びに染まっていった。
僕はさらにみゃーの胸に手を伸ばしていく。片手でみゃーの腰を支え、もう片方の手でみゃーの胸をしたから押し上げた。
「きしゃっ、ぁぁあっ」
みゃーの体が仰け反る。ぶるぶるっと震えたかと思ったらがくっと前に崩れてきた。ハアハアと呼吸を荒くするが、それでもみゃーは腰の動きを止めない。みゃーは僕に縋りつくかの様に体を倒したまま腰だけ上下に動かしていた。
「みゃーっ、みゃーっ」
「ひぃぅっ、ミ、ミケェッ」
僕の呼びかけにみゃーは叫びを持って応え、僕達は互いに限界が近い事を理解する。僕達は自分の限界を我慢しながら相手の限界にあわせようと腰を動かしていた。
「みゃーっ、い、イクよっ」
「きしゃぁっ、あぁっ!」
僕はみゃーに宣言して、みゃーの奥深くへと突きこみ、みゃーの胸と脇腹を同時に刺激する。瞬間、みゃーのあそこがきゅぅっと一気に締まった。
「~~~~~~~っ!!」
「きしゃぁぁぁぁっ!!」
僕はみゃーのあそこに促され、またもみゃーの中へと射精する。みゃーも手を僕の胸に突きながら、奇声と共に大きく仰け反った。数秒間、みゃーはその体勢で硬直していたが、がくんといきなり僕の上に崩れ落ちる。はあはあと僕の胸で荒い呼吸を繰り返し、その存在を僕に確認させた。
「大っ、丈夫? みゃーっ、はぁっ」
僕も荒い呼吸を繰り返しながら、みゃーに声をかける。
「・・はぁっ・・・っは、はぁ・・うん」
みゃーは辛そうに呼吸をしていたが、僕の言葉に答える。僕はそんなみゃーを優しく見下ろし、その頭を数分、ゆっくりと撫でていた。
みゃーはぶんぶんと頭を振り、嫌がって体を離そうとする。だけど、なぜかみゃーの体は僕から離れることができなかった。
「・・・・腰が抜けた」
みゃーが憮然として呟く。手を突っ張って、必死に僕のあそこを抜こうとしているみゃーが可愛かった。
「ほら、みゃー。動かないで」
僕はごろんと転がり、再びみゃーとの位置を入れ替える。そして、僕はゆっくりとみゃーの中からあそこを引き抜いた。
ぶるっとみゃーの体が震え、みゃーのあそこがヒクヒクと動いている。軽く開かれたままのあそこからとろりと白い汁が溢れてきた。
もしかしなくても・・・あれって・・・
「き、きしゃーっ」
みゃーの奇声に僕は我に返る。一瞬だけど、みゃーのあそこに魅入ってしまった。
「なに見てるのよっ、この、エロミケッ!」
みゃーは必死に腕を伸ばし、ボックスティッシュを手繰り寄せると、何枚か引き抜き自分の股間へと押しつけた。じわじわと溢れてくる汁に、どんどんティッシュが滲んでいく。みゃーは次から次へとティッシュを引き抜き、あそこへと押しつけていった。
「きしゃーっ! だから見るなーっ!!」
「痛ぁっ!?」
みゃーが投げつけたティッシュの空箱が僕の顔に命中する。
確か、僕の部屋にあるのはこれ一つだけだったはず。仕方ないなぁ。
このまま動くのは恥ずかしいけど、拭いてもないのにズボンを履く訳にも行かず、僕は舌を脱いだまま隣の部屋へとティッシュを取りに行った。
自分達の体を拭いて服を着直した僕達は、重大な問題に直面した。布団の上でしていたので、僕やみゃーの汁が布団に盛大な染みを作っていたのだ。
今日は母さん達、ブチシマコンビが帰ってくる。二人が帰ってこない内にこれを何とかしなければならなかった。
「ミケッ、布団干してっ。あたしはシーツを洗うから」
みゃーはシーツをひっぺがすと、どたどたと下の階に降りていく。僕はみゃーに言われた通り、布団をもってベランダへと出ていった。
パンパンと布団を叩き、恥ずかしいけど染みの側を外に向けて干した僕が一階に降りると、ごうんごうんという洗濯機の低い音をBGMにみゃーが料理を始めていた。
「あ、ミケ。ご飯には中途半端だから、お昼まで我慢して。何か欲しかったら、そこの味噌汁と適当にパンでも摘んでよ」
そう言ってみゃーはてきぱきと台所を駆け巡る。僕はそんなみゃーの後ろ姿を見ながら、お椀に盛った昨日の残りの味噌汁をずずっと啜った。時刻は十時を回ったところだ。
やっぱり邪魔なのかな?
ここはあたしの城とばかりに動き回るみゃーの姿に、僕はテレビでも見ようかと背中を向ける。その瞬間、僕の後頭部に何かが飛んできた。
「痛いっ」
僕の頭に当たった、球形の何かはゴンという音を立てて床に転がる。
「じゃがいも?」
それはどこからどう見てもじゃがいもだった。それを拾いみゃーを見ると、みゃーはちらりとこっちを見て頬を赤く染めている。みゃーはふんと小さく鼻を鳴らして、ぼそぼそと呟いた。
「いくらミケでも皮剥きぐらいできるでしょ・・・き、きしゃーっ、ミケがいつも物欲しそうな目で見てるからよっ」
それだけ言うと、みゃーはまたせかせかと調理に移る。僕は嬉しくなってうんと大きく頷いた。
みゃーの邪魔にならないように陣取り、僕はみゃーによって洗われた野菜の皮剥きを始めていく。一つ、また一つと次々に皮を剥いて、ボウルの中へと放り込んでいった。
「きしゃーっ! ミケ、じゃがいもは芽もちゃんとくり貫きなさいよねっ」
「え、芽?」
突然のみゃーの言葉に僕は戸惑いの声を上げる。それはみゃーの怒りに火を注いだようで、みゃーの怒気は一層強くなった。
「きしゃーっ! ミケ! 学校でなに習ってるのよっ!」
「ご、ごめん」
どがんと蹴られるのを覚悟したが、流石に調理中は自重したのか、起こられるだけですんだ。僕はみゃーに言われた通りに野菜の皮剥きを続けていくが、積み上げられた野菜はまだまだある。
「ねえ、みゃー。これ、野菜多くない?」
並んでいる野菜とみゃーが下拵えしている肉、そしてなにより流しの隣に鎮座している固形ルーの存在で何を作っているのかはいくら僕でもわかる。でも、二人で食べる分にしては野菜が多いように思えた。
「お昼だけじゃなくて夕飯もこれなのよ? それに夜になればお母さん達だって帰ってくるんだから、問題ないわよ」
みゃーは僕がボウルに積み上げた野菜を横からひょいひょいと拾い上げ、手際よく切り分けていく。それが終わったかと思ったら、フライパンを取り出して野菜を炒め始めた。
「ミケ、ありがと。こっちはもういいから」
みゃーはそう言って炒め物に集中する。僕はみゃーの邪魔をしては悪いと、今度こそ居間へと移動した。
「ミケーッ、ご飯できたよーっ」
僕がバラエティ番組のナンパ師密着ドキュメントをみていたら、台所からみゃーの声が響いてくる。僕はテレビを消して、台所へと入っていった。
さっきから匂ってきていた香しい香りがさっき予測した僕の考えを肯定する。台所に入っていった僕をみゃーとカレーが待っていた。
「うわぁ、おいしそう」
「まだ、完璧じゃないけどね。本番は夕飯」
そう言いながら、みゃーは福神漬けのパックから大量の福神漬けをかけていく。福神漬けが好きなみゃーはカレーになると大量の福神漬けをかけるのだった。
「ふーん。これでも十分美味しいんだけどな」
僕はスプーンで掬ったカレーをひょいと口に放り込む。ぴりっと辛く、それでいて辛すぎない絶妙な辛さだった。
「まだ、煮込みが足りないのよ。煮込んでないからルーも水っぽいし」
ポリポリと福神漬けを噛みながらみゃーが不満そうな顔で言う。そう言えばみゃーはとろとろのルーが好きなんだっけ。
「じゃあ、夜には完璧なカレーが食べられるんだよね? これ以上に美味しいなんて楽しみだな」
「き、きしゃーっ。バカなこと言ってないでさっさと食べなさいよねっ。この後は洗濯物を干して、掃除もしなきゃならないんだからっ」
僕が笑いかけると、みゃーは顔を真っ赤にして顔を逸らす。僕はみゃーに蹴られる前にさっさとカレーを食べて逃げ出した。
「ミケは掃除。あたしも洗濯物を干したら、合流するから」
「うん」
昨日ずぶ濡れになった洗濯物も入って昨日以上に満杯の洗濯籠を持って、みゃーは階段を駆けあがっていく。僕はみゃーに言われた通り、家の中の掃除をする。昨日みゃーに言われた手順で掃除をしていくと、大分効率的に掃除が進んだ。
「どう、ミケ?」
「あ、みゃー。見てよ、随分進んだでしょ?」
洗濯物を干し終えたのか、からになった洗濯籠を手にみゃーが降りてくる。僕は両手を広げてみゃーを迎えた。
みゃーは降りてくるなり、周囲をぐるっと見回す。なんか、桟をつつっとやりそうな雰囲気だ。
つつ・・・
「って、やるの!?」
僕はみゃーの動きに思わずつっこみを入れてしまう。みゃーはそんな僕のつっこみににやりと笑みを返した。
くそ、みゃーの罠だったか。
「うん、ミケのくせにちゃんとできてるじゃない。じゃ、この調子で二階とうちの方もやっちゃお」
みゃーのお墨付きをもらった僕はみゃーと一緒に手早く二階を終わらせる。そして、この三日、みゃーが着替えを取りに来たくらいで誰もいなかったみゃーの家へと入っていった。
僕たちは普段通りに窓からみゃーの部屋へと入っていく。見慣れたみゃーの部屋。みゃーの性格を表しているような簡素な部屋はいつ見てもみゃーの部屋だと納得するけれど、女の子の部屋だとは思えない。でも、実はこっそり可愛いものを収集している事実をたま姉ちゃんから聞いてたりもする。もし見つけようものなら、僕の命が危なそうだけど・・・
「き、きしゃーっ! 何見てるのよっ」
みゃーの奇声に追い立てられるように、僕達は掃除を始めていく。昨日はみゃーに殴られて結局あまり役に立ってなかったから、今日はちゃんと役に立とうと思った。
それにしても、たま姉ちゃんは何でもない顔してよくこんな事をやってたなぁ。いや、母さん達もだけど。
「あ、みゃー。これはこっちでいいの?」
僕は目に付いた辞書を本棚のがたついている所に差し入れようとする。
「あ、き、きしゃーっ!!」
何かに気がついたみゃーが慌てて叫び出すが、それは後の祭りだった。
「・・・・・」
本棚に辞書を入れようと隙間を空けた僕はその奥にあるものを見てしまった。いや、目が合ったというのが正しいのかもしれない。何故ならその奥にあったものはつぶらな瞳でこっちを見ていたからだ。
「き、きしゃーっ!?」
みゃーが叫び声とともにお馴染みのアッパーを繰り出してきた。当然、僕が避けられるわけもなく、綺麗に入れられた僕は一瞬のうちに意識を断ち切られた。
ね・・・・こ・・・?
「ん・・・・つつ・・・」
僕はみゃーのベッドの上で目を覚ました。ズキズキとみゃーに殴られた顎が痛む。それで、どうして僕がここで寝ているのかを思い出した。
「あー、みゃーに殴られたんだっけ」
僕はさっきまでがたついていた本棚をみる。そこのがたつきは既に辞書で埋められていた。
猫・・・だったよね。
最後に見たものが脳裏に浮かぶ。
本棚の奥に隠れていたのはどこかで見たような猫のぬいぐるみだった。確か、昔魔女の映画にでてきた黒猫でぬいぐるみのふりとか言葉をしゃべるとか結構すごい猫だったはず。あと、かすかに寅縞の化け猫のぬいぐるみも見えたような気がした。そっちはバスなんだっけ? もしかしたら、スーツを着た猫の男爵やでっぷりと太った猫のぬいぐるみもあるかもしれない。
あの奥を調べたい気分だけど、みゃーに調べているのを知られたら、また殴られるだろうし、既に場所を移動しているかもしれない。仕方がないので、僕はみゃーを探して部屋を出た。
「あ、みゃー」
みゃーはすぐに見つかった。隣のたま姉ちゃんの部屋にいたからだ。
僕がみゃーに近づくと、みゃーはふんと頬を赤く染めて顔を逸らす。そんなみゃーの態度に僕は苦笑を浮かべ、たま姉ちゃんの部屋を見回した。
みゃーの部屋とは違う女の子っぽい部屋。だけど、本棚にはまるで女性の読まないであろう本がひしめきあっている。『催眠術入門』、『好きに人を動かす方法』、『機械工学』、『エレガントな宇宙』、『五輪の書』。ちらりと見ただけでここは本当に女性の部屋なのだろうかと思ってしまう。
たま姉ちゃん何読んでんだ・・・
そして、さらに本棚を見ていたら、そこにふつうに差し込まれていた本のタイトルに目がいってしまった。
『男性を悦ばせるセックステクニック~これで彼氏はあなたの虜~』
たま姉ちゃん何読んでんだーーーーっ!! せめて、本棚の奥とかに隠しておいてよ・・・
僕は思わず心の中でつっこみを入れて、たま姉ちゃんがいない事に思い至る。
「たま姉ちゃん・・・いないんだよね」
「・・・ん」
僕の呟きにみゃーが答える。今まであのたま姉ちゃんにひっかき回されていたけれど、いなくなってしまうと途端に寂しく思えた。それはみゃーも同じなのか、さっきまでは微塵も感じなかったみゃーの寂しさを感じる。
「でも、仕方ないよ。たま姉ちゃんはたま姉ちゃんのやりたいことがあるんだから。それに、僕はずっとみゃーと一緒にいるよ」
「っ」
僕がいうと、みゃーの顔がぼっと真っ赤に染まる。ぶるぶると体が震え、ぎりぎりと拳が固められた。
え? なに?
「き、きしゃぁぁぁぁぁっ!?」
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
なんでーーーーっ!?
僕はみゃーの必殺アッパーを顎に食らう。そして、またも僕の意識は闇の彼方へと飛ばされていった。
「ただいまー」
ガチャと玄関のドアが開いて、母さん達の声が響いてくる。あの後、目が覚めた僕がみゃーを手伝おうと思ったら掃除は終わっていて、仕方がないのでみゃーと一緒に洗濯物を取り込んだのだった。
母さん達はわいわいとにぎやかに居間へと入ってくる。そこにいたのは母さん達だけじゃなかった。
「父さん? 父さんもクロさんも帰ってきたの?」
「おう、旅先でとらにあって、ミケとみゃーが二人きりで留守番って聞いてな。こいつが戻る戻るって聞かないのを押さえてたんだが、結局戻って来ちまった」
はっはっはとクロさんは豪快に笑う。クロさんは風景カメラマンで年がら年中いろんな所へと飛び回っている。今回も撮影旅行で京都に行ってたんだっけ?
「ミケ。お前、みゃーちゃんに何にもしてないだろうな?」
父さんが僕を睨んで威圧してくる。父さんは昔からみゃーがお気に入りで、いつも僕よりみゃーの味方をしていた。ちなみにそんなでもエリート会社員らしく、クロさんと同じく年がら年中仕事で飛び回っている。確か父さんは大阪に行ったとか聞いたけど、どっちかが会いに行ったのかな?
それはともかく、三日間の間に僕とみゃーの間で起こった事は隠し通さないとならない。もしも、そんなことが知られたら父さんは当然として、クロさんにもボコボコにされるかもしれない。
「おいおい、ミケを脅すなよとら。お前、自分の息子なんだから信じてやれよな」
「万が一という事もあるからな。クロ、お前こそ自分の娘の貞操を心配してやれよ」
なんか父さん達はちょっと怖い話をしているけど・・・ごめんなさい、父さん、クロさん。僕はみゃーとやってしまいました。
心の中で父さんとクロさんに謝る。口に出しては言えないけれど。
「ほらほら、クロちゃんもとらちゃんもミケちゃんが困っているじゃないの。そんな話はしないしない」
パンパンと手を叩いてしまさんが言う。しまさんはふふふと笑ってがさがさとビニール袋から何かの箱を取り出した。
「私達からのお土産。食べ物だから早く食べないとね。ほら、みゃーちゃんもこっち来て」
くすりと笑って、母さんが後ろから言う。僕はなんだか嫌な予感がした。
僕とみゃーが居間のソファーの上に並んで座らされる。左右と後ろを父さん達に陣取られ、僕とみゃーに逃げ場はない。
なに、この尋問スタイル。いじめ?
「じゃあ、御開帳~」
楽しそうに母さんがお土産の箱を開ける。その中には真っ赤な赤飯がぎゅうぎゅうに詰まっていた。
って、赤飯・・・っ!?
何ともいえないプレッシャーが周囲から来ている気がする。
僕とみゃーのことを知られているんじゃないのか?
僕は周囲の大人達の顔を見ることができなかった。
「あ、と、か、母さん・・・何で赤飯?」
僕は恐怖と戦いながらぼそぼそと母さんに聞く。
「そりゃあもう、大人になった記念日だからに決まってるじゃない」
「き、きしゃーっ!?」
「な、なに!? ぶち、それは本当か!?」
あっはははとぱんぱんと僕の背中を叩きながら母さんは言う。何かを飲んでいたら盛大に吹いていたことだろう。僕の隣ではみゃーが盛大に奇声をあげていた。そして、父さんからの威圧感が増大してきた。
もう逃げ出したい。
「ただいまー」
そこへ玄関からあり得ない人の声が聞こえてくる。
「あ、おかえり~」
母さんが玄関へ行ってあり得ない人物を迎え入れた。
「た、たま姉ちゃん!?」
「お姉ちゃんっ!?」
僕とみゃーは居間に入ってきた人物に驚きの声を上げた。
何でたま姉ちゃんがここにいるんだ?
そんな風に僕とみゃーはたま姉ちゃんを見ていたのだろう。たま姉ちゃんはあははーっとなんとも悪気のなさそうな笑みを浮かべた。
「いやね、下宿先に行って手続きはしてきたんだけどね。考えてみたら、この先数日間は飛び石連休が続くんだし、だったら、この際全部休んじゃえって思ってね。取り合えず授業やゼミの申し込みを済ませて、代返頼んだんだけど・・・むこうでやることもなかったから帰って来ちゃった」
てへ、なんてたま姉ちゃんは見ているこっちが力の抜ける笑いを浮かべる。
「あ、そうだ。お土産あるよ?」
「・・・お姉ちゃん」
たま姉ちゃんはごそごそと持っていたバックを漁っていたが、お土産を出す前にみゃーの声がたま姉ちゃんの動きを遮った。
「みゃー?」
「お姉ちゃんじゃないっていってたよね。企んでないって」
「ああ、うん。そうよ。今回は私じゃない。電話で言ったじゃない」
みゃーの静かな声にたま姉ちゃんはけろりと答える。ふふふんと余裕さえ持っている感じだった。
「じゃあっ」
「だーかーら、言ったでしょちゃんと。今回のことは私じゃないって」
「そうよ、みゃー。今回のことはたまじゃなくて私達なのでした~」
たま姉ちゃんがそう言った時、ふふっと笑ってしまさんがみゃーの肩に手を置いた。
「たまも家を出るって言うし、クロちゃんもとらちゃんも出かけるし、丁度いいと思ってぶちと相談したんだよね~」
「ね~。しまちゃんから洋平とみゃーちゃんの仲を進展させたいって来たんだもんね~」
母さんとしまさんはぱんっとハイタッチを交わした。
「と、いうわけで、私はそれに便乗しただけなの。楽しかったでしょ? っと、そうそう、これお土産」
たま姉ちゃんはみゃーに向かってウィンクすると、どこかで見た箱を取り出した。っていうか、数分前から目の前に鎮座している箱じゃないか。
「はい、お赤飯♪」
極上の笑みでたま姉ちゃんは言う。僕はそれを目の前にどうしていいのか、固まってしまった。
そんな僕の肩をクロさんがぽんとたたく。びくっと震え、おそるおそる振り向いた僕を待っていたのはにかっと爽やかな笑みだった。
「ミケ、みゃーのことをよろしく頼むよ。ミケならば俺もしまもみゃーのことを安心して任せられる」
クロさんがぐっと親指を立てて、にかっと白い歯を見せる。僕は拍子抜けというか、何というか、呆然としてしまった。
だけど、別の方向から意味の分からない障害が舞い降りた。
「待てぃ!」
声が響いてきた方を見ると、父さんがなんか奇妙なポーズを取っていた。
・・・もしかして空手か何かの拳法のつもり・・・なのかな?
「許さんぞミケ。みゃーちゃんと付き合うなんて、クロが許してもこの俺が許さん! みゃーちゃんを奪っていくというのなら、その前にこの俺を倒してからにしろっ!」
・・・父さん、意味が分からないよ。
その瞬間、みゃーが奇声を上げた。
「きっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「うわーっ、みゃーがキレたーっ」
「逃っげろ~♪」
「あははははは~♪」
みゃーの奇声を合図として、取り囲んでいた大人達が方々に逃げ出す。みんな楽しそうなのはやっぱり問題なんじゃないだろうか?
「きしゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
どたばたと家の中で鬼ごっこを始める大人達とみゃー。僕ははぁと溜息を吐いて、赤飯をもって台所へと入っていく。赤飯とカレーを見比べて、試しに赤飯にカレーをかけて食べてみた。
「・・・・」
カレーと赤飯、それぞれの味がそれぞれを主張してまずいともうまいともいえない微妙な味が口の中に広がる。
カレーの方が日持ちするので赤飯だけを食べていたら、たま姉ちゃんが台所に入ってきた。
「あれ、カレー?」
「うん、みゃーが作った」
コンロにかかっている寸胴鍋を見てたま姉ちゃんが聞いてくる。僕が答えると、たま姉ちゃんはひょいとお玉から小皿に移して味見していた。
「ふぅん、よくできてる」
「へえ、たま姉ちゃんもそう思うほどなんだ」
たま姉ちゃんの評価に僕はちょっと驚いて聞いてみた。僕なんかとは違ってたま姉ちゃんは舌もすごくしっかりしている。いくらみゃーでもそんなたま姉ちゃんの評価が得られるとは思ってなかった。
「うん、これ美味しいよ。この分なら三日間のご飯も変なものはないでしょ」
「うん、ご飯は美味しかったよ。でも味より何かと騒がしかった覚えしかないんだけど・・・」
「あはははは。ミケ君とみゃーらしいねぇ。ね、ところで、みゃーとのえっちどうだった?」
「っぐ!?」
耳元で囁かれるたま姉ちゃんの言葉に僕は喉を詰まらせる。慌ててどんどんと胸を叩く僕に、たま姉ちゃんは落ち着いて水を渡してくれた。
僕はそれを飲んで、何とか一息吐く。そうしてから、僕はたま姉ちゃんを見た。
「ちょ、て、あ、そ、な、何で知ってっ」
「しぃ」
叫びそうになった僕にたま姉ちゃんは口に手を当て、ボリュームを下げることを促す。
「何言ってるのさ、たま姉ちゃんっ」
ぼそぼそとたま姉ちゃんにとぼける僕。だけど、たま姉ちゃんはくすっと楽しそうに笑って、再び耳元で囁いた。
「隠さなくてもいいのよ。みゃーにも言ったけど、たま姉ちゃんは何でも知っているのだ」
「だ、だから知らないってっ」
やばい、全然動揺を隠し切れていない。絶対バレてる。どうしよう、どうやって逃げよう。初めての感想なんて言えるわけがない。
僕が逃げる算段を必死に考えてる中、たま姉ちゃんはくすりと天使のような微笑みを見せた。だけど、僕は知っている。それはたま姉ちゃんが楽しいことを考えた時にでる笑みだ。間違いなく、たま姉ちゃんは碌でもないことを考えている。
「ね、ミケ君。教えてくれないかな? ”ミケ君に命令、私の質問にちゃんと答える”」
「あ、う、ん・・・」
たま姉ちゃんの言葉に僕は自然と頷いてしまった。口がすっと動き、たま姉ちゃんの知りたいことを―――
「きしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
言う前にみゃーによって倒された。みゃーの跳び蹴りを食らった僕はのけぞってその場に倒れる。
僕が持っていた赤飯は床に落ちる前にたま姉ちゃんに回収されたらしい。
※
「もう、みゃーったら。あとちょっとで面白い話が聞けたって言うのに」
玉緒が足下でひくひくと痙攣している洋平を見て、風と肩を竦めた。その言葉に引き寄せられるように家中に逃げていた大人達がぞろぞろと台所に入ってくる。
「お、ミケの奴。みゃーちゃんにノックアウトされたのか。やはり、みゃーちゃんをミケになんて任せられんなっ」
「まーったくぅ、みゃーももうちょっとおしとやかにしなさいよ。女の子なんだから」
「はっはっはっ、元気で結構。いいことだ」
「洋平も洋平よね。男の子なんだからみゃーちゃんに倒されちゃだめよね」
大人達は口々に色々な事を言う。それを聞いていた美弥の体がぶるぶると震えた。そんな美弥の肩に玉緒がぽんと手を乗せる。
「大丈夫、私は美弥の味方だよ」
そう言って、玉緒はもう片方の手でぐっと拳を作る。正確には拳ではなく、親指が人差し指と中指の間からちょこんと頭を見せていた。
「き、き、きしゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
茹で蛸のように顔を真っ赤に染めた美弥が再び奇声を発した。それを合図に屋内鬼ごっこが再開される。
それから二時間後、二つの家族は遅い夕食にありついた。玉緒に捕らえられて、椅子にくくりつけられた美弥と目を覚ました洋平の前にはカレーではなく、赤飯が並んでいたのだった。
< 了 >