「あははははっ! なにそれーっ」
「でしょー? 最高だよねーっ」
トイレの中に大きな笑い声が響く。利用していた女子生徒はうんざりとした表情で大声を発している二人を見ながら、手を洗う。
その仕草が気になったのか、和泉 千尋(いずみ ちひろ)はじろりと女子生徒を睨んだ。
「何見てんのよ。痛い目に遭いたいの?」
突きつけられる視線とその言葉に、女子生徒はそそくさとトイレを出て行った。
そんな女子生徒の後ろ姿を眺めながら二人は一層大きな声で笑い出しす。
そうして、そのトイレの中に千尋ともう一人、美咲 怜(みさき れい)以外の姿がなくなった。
昼休み。特別棟のあまり人の来ないトイレとはいえ、出入り口に二人が陣取っているせいで、このトイレには他に誰の姿もない。
そんなことには頓着せず、二人は再び話し出した。
「それでさー、遼君が言う訳よ。オレにはお前しかいない。お前にもオレしかいないってさ~」
「あー、熱い熱い。今彼氏いないのに、のろけないでよね」
千尋ののろけに怜はうんざりとした表情で答える。その視界の端に一人の男子生徒の姿が入った。
その男子生徒がにやりと笑った様な気がして、怜は軽いいらだちを覚えた。
怜は男子生徒をじろりと睨む。その視線に気づいた千尋も男子生徒の方を向いた。
「ちょっとあんた。なに見てんの?」
千尋は男子生徒へと近づき、胸ぐらをぐいと掴む。
突然の千尋の行動に男子生徒はやや慌てた様に首を振る。
「い、いいぇ。見てないですっ・・・」
「イズミー。虐めちゃ可哀想よ。一年じゃない」
千尋の後ろから、クスリと笑いながら怜が近づいてくる。
「何よ、ミサキ。あんたが睨んでたんじゃな――」
文句を言いながら、怜の瞳を見た千尋の言葉が止まる。その瞳に浮かぶ悪魔に気づいたからだ。
「さ、こっちに来て」
優しげに言いながら、怜は男子生徒をトイレの中へと誘い込んでいく。
「あ、あの・・・そっちはトイレなんですけど・・・」
「いいからいいから・・・・・」
ふふっと笑いながらも強引に怜は男子生徒をトイレへと引きずり込んだ。その後に続いて千尋もトイレへと入っていった。
「ちょ、ちょっ、先輩!?」
「ふふっ、お姉さんといいことしましょ」
怜は男子生徒の後ろに回りこむと手を伸ばし、ズボンの上から男子生徒の股間をすりすりと撫でていく。
にやにやしながら怜は手を動かす。しかし、男子生徒の反応は怜の予想とは違うものだった。
「いいこと? いいですよ。元々それが目的でしたし」
そう言うと、男子生徒は怜の腕の中でくるりと半回転し、怜の胸へと手を伸ばした。
「きゃぁっ!」
「はい、あなたはもう動けない!!」
怜が怯んだ瞬間に合わせて、男子生徒は声を重ねる。その断定的な言葉の通りに怜の体は動きを封じられた。
「なにしてんだてめぇ!」
男子生徒が怜の胸に触ったことに気づいた千尋が男子生徒を殴ろうと飛び込んでくる。
その眼前へと手を伸ばし、男子生徒はパチンと指を鳴らした。虚を突かれた千尋はギュッと急ブレーキをかける。
「はい、あなたももう動けない!」
狙い澄ました男子生徒の言葉。その言葉はするりと千尋の中へと入っていく。
「なっ・・・なにっ!? なにしたんだよ、てめえっ!」
急に体が動かなくなった事に戸惑いながらも、千尋は男子生徒を睨み、声を荒げる。そして、なんとか体を動かそうと体を揺らしていた。
「体を動かそうとすればする程、体がどんどん固まっていく。もう全く動かすことが出来ない」
罠にかかった獲物を見る様な嗜虐的な目で怜と千尋を見る男子生徒。その視線を受けて、千尋が男子生徒を睨み返す。
「なにすんだよ! てめえ、アタシにこんな事して、ただですむと思ってんのか!!」
「思ってますよ。だって、先輩方はこれから僕に逆らえなくなるんですから。さ、抵抗して疲れたでしょう? 今から指を鳴らすと先輩方は体の力が抜けてしまい経っていることが出来なくなります」
そう言って、男子生徒は指をパチンと鳴らした。
瞬間、カクンと操り糸が切れたかの様に怜と千尋は床へと座り込んだ。そんな二人へと男子生徒は近づき、その頭へと手を伸ばす。
「やっ・・・」
「くぅぅ・・・」
瞳だけで男子生徒の手から逃れようとする二人。しかし、全く力の入らない体は本人の意志とは関係なく、男子生徒の手を受け入れていった。
「さあ、二人とも僕の手を感じて下さい。僕の手が触れている部分から、あなた方へと力が流れ込んでいきます。ほら、どんどん何も考えられなくなっていく。何も考えられないのが気持ちいい」
「あ・・・・・・あ・・・・・・」
「ぅ・・・・んん・・・・・・」
二人の表情が段々と緩んでいく。睨んでいた顔から力が抜けて、自然に目が閉じようとしていた。
「さあ、気持ちいい。ずっとこのままでいたい。聞こえてくる声に従っていれば、ずっとこの気持ちよさの中にいられる」
男子生徒は二人の頭をゆらゆらと揺らしだす。その動きに逆らおうともせず、なすがままに二人は揺らされていった。
「とても気持ちいい。何も考えることが出来ない。もう僕の言葉以外は何も聞こえない。僕の言葉に従っていればとても幸せ、とても気持ちいい。あなた方の幸せは僕に従うこと。それはとっても気持ちいい。さあ、立って。僕に付いてきて下さい」
「はい・・・・」
「はい・・・・」
男子生徒は二人を立たせると、そのままトイレの個室へと連れ込んだ。トイレの個室に三人は狭く、ぎゅうぎゅう詰めになりながらも男子生徒は蓋をしたままの洋式トイレに座り込んだ。
その瞬間に昼休み終了のチャイムが校舎に鳴り響く。しかし、個室の中にはその音に反応する者は誰一人としていなかった。
「じゃあ、まずは自己紹介からですね。では名前を教えて下さい」
「いずみ・・・・ちひろ・・・・」
「みさき・・・・れい・・・・・」
男子生徒の質問に抑揚のない声で二人は答える。そんな二人の反応を見て、男子生徒はにやりと口の端をつり上げた。
「いずみさんとみさきさんですね。わかりました。じゃあ、ちょっとキスをしてみましょう。っと、その前に服かな? とりあえず、シャツのボタンを外して、胸を出して下さい」
男子生徒の言葉。しかし、二人は何か葛藤している様な苦渋の表情を浮かべ、ぷるぷると震えたまま腕を動かそうとはしない。
そんな二人の反応を見て、男子生徒は軽くため息を吐いた。そして、そっと二人の頭へと手を伸ばす。
「さあ、よく聞いて下さい。あなた方は今、何も感じません。とても気持ちいいだけ。それ以外は何も感じない。恥ずかしくもない、悲しくもない、悔しくもない。ただとても気持ちいい。それは僕の言葉を聞いているからです。僕の言葉を聞いていればとても気持ちいい。何も考えられません。さあ、シャツのボタンを外して、胸を出して下さい」
「「はい・・・」」
男子生徒の言葉に二人は同時に答える。そして、ゆっくりと手が伸びて一つずつシャツのボタンを外していった。まもなく、二人の胸が現れる。その光景に男子生徒は笑みを深くした。
「さあ、じゃあキスをしましょうか。いずみさん。いずみさんは彼氏がいるんですか?」
「はい・・・・遼君・・・・」
「そうですか。では、その遼君にする様なキスをしてください」
「はい・・・・んんっ・・・・む」
そう言って男子生徒は千尋の唇を塞いだ。重ねられた唇に対し、千尋は言われた通りに唇を、そして舌を動かし出す。
男子生徒の首に手を回し、甘える様に体を預ける。そして、伸ばした舌を男子生徒の舌へと絡ませた。
ぴちゃりと水の音がする。男子生徒と千尋は抱きしめあって数秒、恋人の様に濃厚なキスをした。
「ぷはぁ・・・ありがとうございます。いずみさん。もういいですよ」
そう言って、男子生徒は千尋から体を離す。そして、今度は怜の方へと体を向けた。
「さあ、みさきさん。今度はあなたの番です。みさきさんは彼氏はいますか?」
「いえ・・・・今はいません」
「そうですか。では、僕を恋人だと思って、熱烈なキスをしましょう」
男子生徒の問いに淡々と答える怜。その怜の唇をペロリと舐めた後、男子生徒は唇を重ねた。
千尋の時とは違い、今度は男子生徒の方から舌を伸ばす。体を擦りつける様に押しつけて、舌を絡ませていく。
その舌の動きを受け入れながら怜も負けじと舌を動かしていった。
「ん・・・・ぅ・・・・」
舌が絡み、唾液が流されていく。流し込まれた唾液を飲み込み、怜は更に体を押しつけた。
男子生徒の体によって、怜の豊満な胸が形を変えていく。男子生徒も怜もその感触を楽しみながら千尋の時よりも長い時間、唇を合わせていた。
「は・・・・ぁ・・・・」
「ふぅ・・・・」
一分以上に及ぶ口づけを終え、二人は離れていく。二人の唇には名残惜しそうに唾液の橋が架かっていた。
それがきれる瞬間を見届けた後、男子生徒は再び便器へと座った。
「さあ、せっかく胸も出ていることですし、二人にはパイズリをしてもらいましょう。さ、ブラジャーを外して下さい」
男子生徒の言葉に従い、怜と千尋は無表情のままブラジャーを外す。それを確認すると、男子生徒は次の指示へと移った。
「いいですか。あなた方はトイレです。そう、男の性欲を発散するための専用トイレです。だから、どんな相手とでもエッチをします。それはトイレだから当然です。当然のことなので何も感じません。わかりましたね。さあ、僕のズボンを下ろして、パイズリをして下さい」
「「はい」」
怜と千尋は大きく拡げられた男子生徒の足の間に座り込むとそっとズボンに手を伸ばし、共同作業で男子生徒のズボンと下着の中から男子生徒の肉棒が取り出した。
既に硬くなっているそれを二人で挟みこんで胸で圧迫する。そして、男子生徒の指示を待たず、怜は胸で擦り始めた。
怜が動いたので慌てて千尋も動き出す。ちょっとずれていた動きも往復運動を続けていくうちに重なっていった。
「そう、どんどん続けて。亀頭を舐めながらこっちもみるんだ」
男子生徒の言葉の通り、四つの胸の隙間から飛び出してくる亀頭をむしゃぶりつく様に舐め、男子生徒を窺う様に見上げる。
動きこそ単調だが、先程まで威圧的に接してきた上級生。その上級生の従順な姿と実際に擦りつけられている快感は男子生徒の興奮を限界値まで押し上げていく。
「く・・・・ぅ・・・・・」
苦悶に歪む男子生徒の貌にビクビクと震える肉棒。前兆を気にすることもせずに、言われた通りに体を動かす怜と千尋。
胸を下に下ろし、ペロリと二人で包む様に亀頭を舐めた瞬間、男子生徒は限界を超えた。
「んんんっ!!」
男子生徒の肉棒から飛び出した精液が二人の顔はおろか、茶色に染まった髪の毛にまでもふりかかる。
それが合図だったかの様に二人は男子生徒から離れ、床に座ったまま、男子生徒の次の言葉を待っていた。
その顔にこびりついた精液が頬を伝い、顎から床へと落ちていく。
そんな二人に男子生徒から声がかけられた。
「お疲れ様でした。これでトイレとしての役割を果たせましたね。今回、僕はパイズリだけでよかったのですが、本番を求める人もいますので、その時はちゃんと本番もしてあげましょう。それと、もうひとつ。トイレは用を足した後に洗い流しますね。それと同じようにあなた方も綺麗にしなければ成りません。それも当然トイレの役割です」
男子生徒はズボンをはきながら立ち上がると、二人の頭を抑えて向かい合わせにした。
「さあ、互いに付いた精液を舐めとって綺麗にしましょう。綺麗にするまでがトイレの仕事です。わかりましたね」
「「はい」」
男子生徒の言葉に答えると、二人はすぐに互いに付いた精液を舐め取り合う。そんな二人を跨ぎ、男子生徒は個室から抜け出した。
くるりと二人の方を振り向き、更に言葉を続ける。
「いいですか。あなた方はトイレです。なので、いつでもどこでも男性の性欲を発散させなければなりません。ですが、男性がいつ性欲をもてあましているか分かりませんね。なので、それがわかる言葉を教えましょう。『トイレ』です。あなた方は『トイレ』という言葉を男性から聞くと、トイレの仕事を思い出し、『トイレ』と言った男性の性欲を発散させます。いつでもどんなときにでも必ずそうなりますよ」
男子生徒はそこまで言って、時刻を確認する。休み時間まで後十分くらいだった。
「次のチャイムが鳴るとあなた方は目が覚めます。目が覚めた後、あなた方は自分がトイレだというのを自覚していますが、僕の顔とそして今あった事は全て忘れてしまい思い出せなくなります。わかりましたね。絶対にそうなりますよ」
そういって、男子生徒はトイレを出ようとして、思い出した様に個室へともどった。
「そうそう。トイレだけではなく、ちゃんと回りも綺麗にしないと駄目ですよ。垂れた精液も舐め取って下さいね」
「「はい」」
一旦、舐めるのをやめてまで帰ってきた二人の返答にうんと頷いて、男子生徒はトイレを出て行った。
< 了 >