催淫師 妖染 崩山(2)

妖染 ─ 崩山(2) ─

「もう良いぞ」
 啓人は不意に、腰を引いた。
「あ・・・」
 一心不乱に舐めていた真梨江は、不満げな顔をした。それを見た啓人は、例の笑みを浮かべた。
「そんなに気に入ったのか?」
 からかう言葉を気にもせず、真梨江はじっと啓人の股間を見ていた。
「まず服を脱げ」
 啓人の指示を聞くと、真梨江は立ち上がる。ためらいもなく制服や下着を脱いでいく。だが流石に恥ずかしいのか、胸と股間を両手で隠した。それを見ると、啓人は軽く眉をひそめた。
「隠す必要ないだろう」
 それだけ言うと、腕組みをした。
「わ、分かったわ・・・」  
 逆らえない真梨江は、声を絞り出すとおずおずと両手をどけた。その頬は赤くなり、視線も下を向いている。
「やっぱり恥ずかしいんだな・・・」
 全裸で異性の前に立っていれば当たり前なのだが、啓人は大きな溜め息をついた。
「ま、仕方ないか」
 そう言うと、啓人は掌を真梨江の方を向けた。  
「良いか、よく聞けよ」
 その言葉を聞くと、真梨江の胸がドクンと鳴った。
「俺の言う事とする事は全て正しい」
(冴草君の言う事とする事は全て正しい・・・)
 啓人の言葉はすんなりと真梨江の中に入ってくる。 
「裸を人に見せるのは当たり前だ」
(裸を人に見せるのは当たり前・・・)
 反芻が終わると、両手がどけられて胸と股間が露わになった。
(ふ~ん・・・)
 女性の裸を見慣れている啓人は、真梨江のヌードを見ても冷静そのものであった。大きくはないが形の良い胸にピンク色の乳首、くびれた腰に美しい尻や太腿のライン・・・啓人以外の男なら、まず間違いなく見惚れていただろう。
(思ったよりスタイルが良いねえ・・・)
 啓人の感想はそれだけである。
「それじゃあここに座って脚を開け」
 啓人はそう言うと、近くの机を叩いた。真梨江はその机に腰を下ろすと、言われてもいないのに啓人の方を向いて脚を開いた。
「どれどれ・・・」
 啓人は液が溢れた真梨江の部分を覗き込んだ。真梨江は恥ずかしがるどころか、むしろ見せつけるようにしていた。
「思った通り処女か・・・」
 男性経験どころか、使った事もほとんどないと啓人は判断した。
「グショグショになっているけどな」
 そう言ってなぞると、流石に恥ずかしいのか真梨江の頬が少し赤くなった。
「澄ました顔になったり、赤くなったり・・・忙しい奴だな」
 元凶のクセに啓人はそう言つつ立ち上がると、掌を真梨江の額に当てた。
「俺の許可がないとイク事は出来ない」
 それだけ言うと手を離した。
(自我を奪う必要はないだろう・・・人形はつまらなかったし)
 啓人にとっては反応があった方が良いので、人形化するのは止めにする事にしていた。
(取り敢えず‘植え付け’は済ませてあるからな・・・)
 啓人が真梨江へ目を遣ると、物欲しそうな顔があった。今まで散々お預けを食らっていた為だろう。
「どこからして欲しい?」
 啓人は今の真梨江に一番残酷な質問をした。
「どこでも良いから早くして」
 抵抗がなくなったのか、それとも欲求が上回ったのか。いずれにせよ縋るような口調になっている。今と反対の性格なら、あるいは啓人に飛び掛っていたかもしれない。そんな真梨江を見て啓人はニヤリと笑った。
「嫌だね」
「・・・・・・え?」
 真梨江が啓人の言葉に反応するまで、かなりの間があった。声は出ても、真梨江は体は固まったままであった。
「い、今なんて・・・?」
 真梨江がそう言うのがやっとであった。
「嫌だって言ったんだよ」
 そんな真梨江に対し、啓人は相変わらずの笑みを浮かべながら答えた。
「ど、どうして・・・?」
 この状況に置かれたのなら、恐らく全員が同じ質問をするだろう。
「嫌だから」
 そう言う啓人はニヤニヤしている。誰がどう見てもこれは嫌がらせとしか思えない。
「優等生が朝から教室でしちゃうのかな~?」
 啓人は小学生が友達をからかうかのような調子であった。
「そ、そうよ・・・」
 真梨江は顔を反らしながらも、あっさりと認めた。
「ダメだろ、そんな事をしてちゃ」
 真梨江を嬲りたいらしく、今度は教師みたいな口調になった。
「ほら、さっさと服を着ろ」
 そう言われた真梨江は、仕方なく服を着始めた。その事を確認すると、啓人は清華の方へ目を遣った。清華は服も着ず、二人の動向を見守っていた。
「清華、お前も服を着て教室へ戻れ」
「はい」 
 清華は素早く服を着ると、啓人に一礼して教室を出ていった。
「ほら、早くしないと誰かが来るぞ」
 その脅しに、真梨江も動きも速くなった。
(まだ七時四十分だけどな)
 啓人は自分の席に着くと、真梨江の方へ目を遣った。
(欲求不満って感じだな・・・)
 表情を見なくても、気配だけでそう感じ取れた。時折切なそうな顔で見てくる真梨江に対し、啓人は知らぬ振りを決め込んでいた。
(後一時間くらいは楠町で遊べるな・・・)
 真梨江の後ろ姿を見ながら、啓人はそんな事を考えていた。

「楠町さん、おはよー」
 時間が経つにつれて、クラスメート達が登校してくる。
「お、おはよう・・・」
 真梨江はぎこちない笑みを浮かべ、クラスメートに挨拶をする。
(頑張るねえ・・・)
 啓人はそんな真梨江の様子を、誰にも気付かれないように観賞していた。
(この分だと授業が始まっても大丈夫だろうな)
 いつも挨拶程度しかしてない人間がほとんどなので、真梨江から違和感を感じる事は出来なかった。辛うじて分かったのは、真弓と真梨江ファンの男子連中くらいだろう。
(退屈な学校生活は、今日で終わりにしてやろう・・・)
 啓人が友人と談笑しながらそんな事を考えているとは、数人以外は想像すらしていない。

 チャイムが鳴ると、教科担当の教師が入って来た。
「お前等、席に着けー」
 その声で何人かは慌てて自分の席に着いた。既に教室内には妖気が漂い始めていたのだが、誰もその事には気付かなかった。
「よーし、出席を取るぞ・・・」
 そこで教師の口が止まる。それを疑問に思うべき生徒達も、全員石になったみたいに動こうとはしなかった。
「さてと・・・」 
 啓人は立ち上がると、教壇へ歩いていった。
「もう出席を取る必要はないんだよ、せ・ん・せ・い」
 そう言って硬直して動かない教師の肩をポンと叩いた。
「楠町」 
 啓人が呼ぶと真梨江の呪縛が解け、彼女は我に返った。
「あ、あら・・・?」
 真梨江は何が起こったのか理解出来ず、周りをキョロキョロと見回した。
「み、皆?どうしたの?」
 状況が飲み込めない真梨江は、不安げな声を出した。そんな真梨江の側に、啓人はゆっくりと歩いていった。
「大丈夫だ」
 不意に聞こえた声に驚き、真梨江は啓人の方を向いた。
「さ、冴草君・・・?これはどういう事なの?」
 真梨江の明晰な頭脳は、これが啓人の仕業だという答えを瞬時に導き出したのである。
「そう驚くなよ。俺が言う事もする事も正しいだろう?」 
「それはそうだけど・・・」
「なら黙って俺に従え」
「え、ええ・・・」
 真梨江はやっと首を縦に振った。
「それに・・・かなり欲求不満なんだろう?」
 そう言ってニヤリと笑われ、真梨江は真っ赤になった。そんな態度が啓人が嬲りたくなる原因なのである。
「ちゃんとしてやるからな」
 啓人が少し優しい感じで言うと、真梨江はこっくりと頷いた。今が授業中だとは、頭に浮かぶ事さえなかった。
「それじゃあこっちだ」
 啓人が歩き出すと、真梨江も立ち上がって後をついていく。二人は日生真弓の前で立ち止まった。
「日生さん・・・?」
 相手が自分の数少ない友人であった事に、真梨江は驚きを隠せなかった。
「ちゃんと手伝えよ」
 啓人が念を押すと、真梨江はもう一度頷いた。驚きはしたが、啓人の言葉に従うという気持ちに何ら変わりはなかった。
(ま、ほとんどその必要はないんだが)
 啓人は真梨江に気付かれないよう、そっと笑みを浮かべた。
「服は脱いでおいてくれ」
 抵抗がなくなってきたのか、真梨江は何のためらいもなく制服を脱いでいった。
「下着も?」
 真梨江は落ち着いた顔で尋ねる。
「勿論だ」
 答えを聞くと下着をこれまたあっさりと脱ぎ、しかも今度は前を隠そうともしなかった。但し、息が少し荒くなっている。
(学習能力は流石にピカイチか)
 啓人は心の中で真梨江を賞賛した。
「そんなにして欲しいのか?」
 真梨江の呼吸の乱れを、興奮の為と見た啓人が例の質問をした。
「ええ・・・そうよ」
 その答えに迷いは感じられない。
「優等生かと思ったら、とんでもない淫乱なんだな」
 啓人はそう言ってまた真梨江をからかったが、真梨江は動じる素振りを見せずに切り返した。
「こうする事が正しいんでしょう?」
「ま、まあな・・・」
 啓人は真梨江は恥ずかしがるだろうと思っていたので、他に答えようがなかった。
(やれやれ・・・案外とんでもない奴かもしれないな)
 啓人は肩を竦めると、指をパチンと鳴らした。すると直ぐに真弓に変化が訪れた。
「う・・・ん・・・あれ?」
 表情に生気が戻っていき、二・三度瞬きをした。その後で目の前に立つ二人に気が付いた。
「あれ?真梨江と・・・冴草君・・・?」
 真弓はわけの分からないという顔をして、二人の顔を代わる代わる見た。
「どうしたの?・・・て言うか、何で真梨江は裸なの?」
 疑問は山程あるのだが、取り敢えずは友人が裸で立っている理由を本人に尋ねる事にしたらしい。
「冴草君に脱げって言われたから」
 生真面目な美少女は、正しい答えを述べた。当然真弓の顔色は変わる。と言うか、ますます真弓は混乱した。
「ま、真梨江・・・あなた何言ってるのよ・・・」
 そう言う声は、微かに震えていた。
(どうしちゃったのよ?何で冴草君が言ったら裸になるのよ?) 
 頭の中に幾つもの疑問と、何とも言えない不安が湧き上がってくるが、それに怯む真弓ではなかった。立ち上がって真梨江に近づくと、いきなり頬に平手打ちをお見舞いした。
「真梨江!」
 啓人は無視する事にしたらしく、頬を抑えて茫然とした友人の肩を揺さぶった。
「どうしたの?しっかりして!」
 悲痛な声が脳に届くと、真梨江は真弓の手を振り払った。そして驚く友人の顔を、済んだ目で見つめた。
「貴女こそどうしたの?」
 あまりにも落ち着き払った真梨江の態度に、真弓は恐怖を感じた。
(違う・・・!いつもの真梨江じゃない!)
 真弓は目の前が暗くなった気がした。真梨江はいつも物静かで冷静だが、いきなり叩かれればそれなりの反応を示した。
「・・・・・・冴草君、あなたね?」
 真弓は混乱しながらも、先に示されていた答えを見失わなかった。
「答えて」
 感情を押し殺された声は低く、目には炎が見えた。
「正解♪」
 真弓の神経を逆なでしたいのか、啓人はおどけて答えた。
「・・・何をしたの?」
 啓人の挑発には乗らなかったが、真弓の全身は震えていた。
「ちょっと操ってみました♪」
 そう言って啓人は、何とピースをした。
「ふざけないでっ!!」
 真弓は遂に怒号を発した。夜叉のような顔で啓人を睨みつける。端整な顔立ちだけに、怒ると迫力がある。
「やれやれ・・・大声は出さないで欲しいな。ま、俺の妖気は防音効果もあるから、教室の外に聞こえないんだがな」
 そう言って肩を竦める姿からは、さっきまでの軽さは消えていた。
「そう興奮すると、お前の為にならないぞ」
 打って変わった冷淡な目で、真弓の顔を一撫でする。その瞬間、真弓の背中に冷たいものが走った。
「な、何が言いたいのよ・・・」
 言い返しはしても、さっきとは別人のような視線を浴びて、真弓は本能的に後ずさりをしてしまった。それを見ると、啓人の雰囲気から冷たさが消えた。
(な、何なのこの落差は・・・?)
 別人かと思うような、落差に真弓の頭は冷え、さらには戸惑いを覚えさせられた。それを感じた啓人は、いつもの笑みを浮かべた。
「興奮すると、熱くなるぞ~」
 おどけた調子で、手をひらひらさせる。
「・・・何言ってるの・・・?」 
 謎めいた言い方を繰り返され、思考がそちらの方へ向かった。
「だから、頭が熱くなると、体も熱くなる・・・」
 啓人の不気味な言い回しに、真弓は形の良い眉をひそめた。
(頭が変になったのかしら?)
 その考えが浮かんだ瞬間、真弓の体が急に熱くなりだした。
(え・・・う、嘘でしょ?)
 じわじわと体温が上がっていくような、そんな感覚に捉われ始める。
(な、何でなの・・・?)
 真弓の全身が段々と熱くなってくる。
「ほうら・・・体が疼き出す」
「何馬鹿な事を・・・うっ・・・」  
 真弓は覚えのある感覚に襲われ、その場に膝をついた。
(はあぁ・・・か、体が・・・)
 快感を求めて疼き始めたのである。
「さ、冴草君・・・」
 真弓は啓人を睨み、呻くように声を絞り出した。
「しぶといな。やはり経験者は違うな」 
 啓人はそう言って、少し潤み始めた真弓の視線を受け止めた。それを聞いた真弓の顔には驚きが広がった。
「な、何でそれを知ってるのよ・・・」
 そう言う真弓の声は、かなり弱々しかった。
「そんな事は気を見れば分かるんだよ」
 啓人は他の誰も出来ない事を、平然と口にした。
(気を見れば・・・?一体何の事・・・?)
 当然の事ながら、真弓には啓人の言っている事は全く理解出来ない。
「ま、それはさておき・・・お前の体を何倍も感じるようにしてやろう」
 啓人がパチンと指を鳴らしたが、真弓には何も起こらなかった。
(何なの・・・さっきから何言ってんのよ・・・)
 真弓には啓人という人間が不気味に思えてきた。さっきから彼女に理解出来ない事が起こり、啓人は訳の分からない事を言っている。
(頭がおかしくなったんじゃないの?)
 そう思ったが、口には出さなかった。いや口を開くと喘いでしまいそうで、とてもそうする気にはなれなかったのである。
「楠町してやれ」
 啓人の言葉を聞いて、真弓はそこに真梨江がいるのを思い出した。真梨江は黙って真弓の方へと近づいて来る。
「真梨江・・・」
 万感を込められた言葉にも、真梨江は反応を示さなかった。
「日生は動くなよ」
 その言葉を聞くと、真弓の筋肉が痙攣した。逃れようとしたところを、啓人に先回りされたのである。
「気持ち良い事をしてあげる・・・」
 真梨江はそう言って、笑いかけた。その笑みの色っぽさに、真弓は目の前の人間が知らない誰かだと思わずにはいられなかった。 
「イッて良いのよ」
 そう言う真梨江の声は、いつもと全く変わらない。
(真梨江、止めて)
 心の中で叫ぶが、真梨江に届く筈がない。真梨江の白い指が、スカートの中に伸びてくる。やがて指は布の上から、真弓の割れ目をなぞった。
(あっ!)
 快感が全身を駆け巡り、真弓は軽くイッてしまった。ふうっと熱い息が真弓からもれる。
「良いんでしょう?私だってしてもらってないのに」
 妖しく問い掛ける口調に、悔しさが多少混じっていた。
「おい、ちゃんと加減しろよ」
 啓人は一抹の不安を感じ、真梨江を牽制する。
「分かってるわ」
 そう答えた真梨江の声は、どこか硬かった。
(大丈夫だろうな・・・取り敢えず声は出させておくか)
 啓人の心配をよそに、真梨江は真弓を責め始める。
「ああっ!」
 真弓はいきなり悲鳴に近い声を上げた。それを聞いた真梨江の声は、少しずつ早くなっていく。
「あああっっ!!ああああっっっ!!!」
 真弓は叫びながら、何度もイッてしまった。
「あらあら・・・なぞっただけなのに凄いわね・・・」
 失神してしまった真弓に対し、真梨江は不気味な程冷静であった。
「まだ続けるの?」
 真梨江は振り返りもせずに尋ねる。まるで啓人に頼まれて拷問しているかのようであった。
「当然だが・・・その前に、日生の体は自由にしよう」
 次の瞬間真弓の体は床に崩れ、激しく痙攣した。真梨江は真弓の耳元へ口を近づけると、息を吹きかけた。
「これで存分にのたうちまわれるわよ・・・良かったわね」
 真梨江はそう囁きかけると、凄惨な笑みを浮かべた。
「おい楠町・・・俺の意図を本当に分かってるのか?」
 啓人は段々と不安になってきたのである。
「分かっているわ」
 振り返ってニッコリする真梨江から、啓人は危険なものを感じ取った。
(楠町を発奮させる作戦は失敗したらようだな・・・)
 そう判断した啓人は、頭の中で肩を竦めた。お預けを食らわせたのは、その為だったらしい。
「楠町、お前はもう用済みだ」
 振り返ろうとした真梨江も、虚ろな顔になってその場に崩れ落ちた。
「日生、起きろ」
 啓人がそう言うと、失神している筈の真弓の体が起き上がった。当然目は閉じられたままである。
「これから言う事は、よく覚えておくんだ」
 一瞬の間をおいて、啓人は再び言葉を続けた。
「お前は今まで大罪を犯して来た。そしてそれを許すのは、一人だけだ。お前が目覚めた後、最初にお前をイかせた者だけがお前を許してくれる」
 啓人は再び間をおき、溜め息をついた。こういう回りくどい事は、本来嫌いなのである。
(後で愉しまないとなあ・・・)
 啓人はその為だけに行動しているのである。
「その者の言う事、する事は全て正しい。その者に従っていかないとお前は生きていけない。その者に従っていれば、お前は無上の幸せを感じられる」
 ここまで言うと、啓人はパチンと指を鳴らした。すると真弓は二、三回首を振ると目を開けた。
「ん・・・あ、あれ?私は・・・」
 真弓は何があったのかを思い出そうとしているらしい。それを見た啓人は、慌てて真弓の意識を奪った。
(ふう・・・俺が言ったっていう記憶を消すのを忘れてたぜ・・・あ、楠町にもやっとかないとな)
 啓人は二人に、別の暗示を刷り込んだ。

(やっぱり面倒だな・・・) 
 啓人は一人一人いこうとした事を少し後悔していた。指を鳴らし、真弓を正気付かせる。
「あ、あれ?」
 真弓はやはり首を振りながら起き上がった。そんな真弓に啓人はいきなり抱き付いた。 
「きゃっ!?」
 真弓はとっさに身をよじろうとしたが、啓人は真弓の腰をガッチリと掴んで離ささない。
「さ、冴草君・・・」
 真弓は苦しげに訴えるが、啓人は耳を貸さず真弓の耳朶に息を吹きかけた。
「あ・・・」
 背中にゾクッと悪寒が走り、真弓は抵抗を止めてしまった。そんな真弓の尻に、啓人の手が触れた。
「ああっ」
 真弓は拒絶しようとしたのにも関わらず、あまりの快感に声を上げてしまった。啓人の指は柔らかい胸を巧みに揉む。
「あっ、あああっっ」
 今まで真弓が味わった事のない快感が、胸から全身へ送られる。
(すっ、凄い・・・)  
 その快感の前に、真弓の脳裏は完全に溶けてしまった。
「ああっ、ダ、ダメッ・・・ああああっっっ!!!」
 達する直前と思えるところで、啓人は手を離した。それにも関わらず真弓の体は、痙攣を起こしていた。フラついて倒れそうになった真弓を、啓人は手を出して支えた。
「ど・・・どうして・・・」
 真弓の口から飛び出したのは、啓人が止めた事に対する不満であった。理性は完全に消えているらしい。
「焦るなよ」
 そう言う啓人の手は、真弓の股間へと滑り込んでいく。
「ああっ!」
 布の上からの刺激にも、今の真弓は敏感に反応してしまった。もうそこは十分過ぎる程湿っていた。
「彼氏とどっちが良い?」
 そう言ってちょんと触る。
「ああん・・・」
 真弓はもどかしそうに腰をくねらせる。啓人の方を媚びるように見上げる。
「冴草君よ」
 だから早く、と続きそうな口ぶりであった。だがそれで直ぐに望みを叶える程、啓人は甘くない。
「それじゃあ彼氏を捨てられるか?」
 流石にこれには困った顔をした。啓人は追い討ちをかけるように、真弓の割れ目をなぞる。
「はあんっ・・・す、捨てる、捨てます」
 真弓はあっさりと兜を脱ぐ。だが啓人は意外にも首を横に振った。
「ダメだな、それじゃあ面白くない」
 そう言われた真弓は、キョトンとした顔になる。啓人は笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「彼氏も好きで良いんだよ。ただ、それ以上に好きがいるだけの話だ」
 そう言って指に力を込めた。
「ああ~~っっ!!」
 真弓は一瞬で達してしまい、その場に座り込んだ。服は乱れ、息は荒くなっている。
「さてと・・・次は楠町の番だな」
(こいつも感度を上げておくか。ついでに、欲求不満の記憶も呼び起こしておいてやろう)
 啓人はまだ喘いでいる真弓を尻目に、床に横たわっている真梨江への側に屈み込んだ。ぐったりとしている真梨江の割れ目を、ゆっくりとなぞる。
「ん・・・」
 意識はないのにも関わらず、真梨江の体はしっかりと反応していた。
「楠町起きろ」
 啓人はそう言って真梨江の頬をペチペチと叩く。これが啓人の一番まともな起こし方なのである。
「うん・・・」
 真梨江は目を擦りながら、体を起こした。やがて意識がはっきりすると、真梨江はキョロキョロした。
「あれ・・・?私寝てたの?」
 記憶が戻ってきたのか、引き締まった表情になっていく。
(確か・・・日生さんに・・・でも私は途中で・・・?)
 そこから先がどうしても思い出せない。必死で思い出そうとする真梨江の肩を、啓人はポンポンと叩く。そして反射的に振り向いた真梨江の唇を塞いだ。
「んん・・・」
 真梨江は一瞬抵抗しようとしたが、啓人の巧みな舌技に目覚めたばかりの脳を蕩かされてしまう。啓人が唇を離すと、真梨江はトロンとした目を彼に向けた。
「気分が出て来たか?」
 啓人の囁きにも、気だるげに頷く。啓人はそれを見ると、真梨江の小ぶりな胸に吸い付いた。
「ああ・・・」
 真梨江は早くも喘ぎ始める。啓人の指が白い乳房を揉み、舌がピンク色の乳首を弄ぶ。もう一つの方は、五本の指が同じように責めている。
「ああっ、あああんっ」
 その凄まじい快感に真梨江は体を仰け反らせる。
「はああっ、あああっっ、あああっっ」
 欲求不満だった事を呼び起こされた為か、真梨江はあっさりと達してしまった。
「満足するにはまだ早いぞ」
 啓人は一呼吸をおくと、真梨江の股を開いた。そして十分過ぎる程濡れたところに口をつけると、ワザと音を立てて舐め始めた。
「ひっ、あっ、ああっ、あああっっ」
 別の場所からの快感に、真梨江は身を委ねるしかなかった。啓人はその様子を見て、音は聞こえていないと判断して、音を立てるのは止めた。
(聞かせないと意味ないからな)
 真梨江が達しないように、加減をしながら何度も舐める。
「あああっっ、ああっ、あっ、ああっ」
 真梨江は身悶えしていても、決して達せない快感に少しずつ慣れてきた。
「ああっ、あっ、ああんっ」
(ああ・・・イ、イきたい・・・)
 真梨江は今の快感が物足りなくなってきていた。そんな真梨江の心理を見抜いたのか、啓人は責めを止めてしまった。
「不満そうだな楠町」
 啓人はそう言って真梨江をからかう。一方の真梨江は、限界が近づいていた。
「お、お願いイかせて」
 真梨江は両脚を擦りつけながら啓人に哀願した。それを聞いた啓人は、ニヤリと笑った。
「そんなにがっつかなくても良いだろう?」
 そう言いつつ、真梨江の股間を強めに刺激した。その瞬間、真梨江は再び達してしまった。
「あああ~~~っっっ!!!」
 真梨江は絶叫と言っても差し支えないような声を出すよ、ぐったりとなってしまった。それを見た啓人は、大げさに肩を竦めた。
(おやおや・・・これからが本番なんだがな。ま、少しくらい休ませるとするか)
 啓人が真弓の方へ目を移すと、真弓は手を股間へ伸ばしていた。啓人の視線に気付くと、欲情した目で見つめ返した。
「私も・・・お願い」
「お前はもう少し先だ」
 縋るような真弓に対し、啓人はどこか素っ気なかった。
「取り敢えず二人共立ち上がれ」
 そう言われて真弓は何とか立ち上がったが、真梨江は起き上がる事さえ出来なかった。
(仕方ないな・・・)
 啓人がパチンと指を鳴らすと、真梨江は急に起き上がる事が出来るようになった。本人も驚いているらしく、自分の手や足を何度も見直した。
「行くぞ」
 啓人がそう言って歩き出すと、他の二人は慌てて後に続いた。

< 続く >

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