第十一話
古ぼけた薄暗い教室から漏れるぐちゃぐちゃという卑猥な音。
その教室に近づく、あるいは存在を知るものがいないのが幸いかその教室から漏れる女性の喘ぎ声は誰にも聞き取られることは無い。
お互いに向き合う形で男女の行為を行う二人。
男のほうは何を言うわけでもなくただ女を下から突き上げるだけ。
「ひぁ、あぁぁ、ふあぁ、あ、あっ」
その突き上げに対し女は全裸で長い黒髪を振り乱しながら与えられる快楽に酔う。
その表情に見えるのはただ陶酔した表情のみで、以前見せていたような敵意は全く見られない。
ーーーもとより久須美は気の強い女でも、意志の強いほうでさえもなかった。
彼女が激しい敵意を見せていた理由は、自分の親友を奪われたという一点においてのみ。
もはやそれが打ち壊された今、久須美は体も、魂でさえ主人に預ける身となった。
「うぁああんっ・・・イイ、気持ちいいですぅ、聖夜さまぁっ!!」
久須美が俺に屈服してからすでに二日が経つ。
あずさの言うとおりこの一週間の間は昼からの時間を自由に使用することが可能のため、この二日間俺は放課後はずっと日の暮れるまで久須美の調教に時間を費やしていた。
結果、久須美は俺が死ねというなら躊躇無く死を選ぶと言うほどまで俺に依存するようになった。
秘所から溢れ出す愛液を、古びた床に飛び散らせながら俺の上で狂ったように膣を痙攣させながら激しく腰を振り乱す久須美。
夢見るようにとろんと蕩けた瞳は俺の顔以外何も映していない。
俺は何も言わず、目の前で揺れる張りのある乳房を音を立てて吸い、ピンク色の乳首に甘噛みを加える。
「はううっ、あ、あうう、あぅんっ・・・」
甘噛みを加える度久須美の秘穴は締まりを増し、声にも甘ったるさが増していく。
「イきそうか?」
俺の背中に回された久須美の腕に力が増すのを感じ、俺は久須美に問いかける。
「あふぅっ、はぁ、はぁ、イキそうですっ・・・気持ちよすぎてっ、うぁんっ」
「そうか・・・俺も、イクぞっ!!受け止めろっ」
がんがんと今まで以上に突き上げる動きを激しくし、ラストスパートをかける。
腰に甘い痺れが走り、俺のモノに食いついた膣口が一気に収縮する。
その痛いほどの収縮に耐えられず、俺は久須美の中に熱い迸りを放った。
「んっ、んあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
久須美は背中を弓なりに逸らし、ぴくぴくと体を震わした。
そして俺に抱きつく形で、力を失い倒れ込む。
満足していただけましたか、と言わんばかりの媚びた微笑を浮かべる久須美。
俺は満足そうに頷き返し、幸せそうな微笑を浮かべる久須美の頭をくしゃりと撫ぜた――――――。
●●●●●●●
調教が始まる前、俺は久須美から情報を引き出した。
”なぜ俺を監視していたか?”、”もう貴方は必要ない”と言った言葉の真実。
俺を憎んでいた理由は俺に親友とやらを奪われたこと。それで納得がいく。
しかし、久須美が取った行動は久須美の年齢を考えると熟考され過ぎている。
よって久須美の性格、年齢を考えると俺を監視するよう言ったのは”別の人物”であり、俺との接触をしたのは”久須美の独断”である。
そして与えられた任務において俺が必要だったが、ここでもやはり久須美が独断で”貴方は必要ない”と判断した。
そう考えると筋は通る。
そのため筋を立てるためにはどうしても黒幕の存在が必要不可欠になる訳である。
よって先ほどから例の旧教室で後ろから久須美を抱く格好を取りながら情報を引き出している。
「久須美、以前お前が俺に言った”もう貴方は必要ない”と言うのはどういうことだ?」
俺は久須美の秘所を弄る手を止め、久須美に問いかける。
「・・・ぅぁ・・・はぁ、はぁ・・・お姉ちゃんに言われたんです。”今の彼と昔の彼が同じ考えかどうか分からないから善悪は貴女がつけなさい”って。・・・でも、私は許せなかったから、だから・・・。あぁぁ、ごめんなさい・・・ごめんなさい、私を捨てないでください聖夜様ぁ」
久須美は体を震わせ、ぽろぽろと涙を流しながら懺悔する。
俺は背中越しに久須美の涙を拭き取ってやる。
「安心しろ。俺はお前を捨てる気は無い・・・折角手に入れたのだしな。それより続けてくれ」
「は、はい。お姉ちゃん―――暁美(さとみ)お姉ちゃんが・・・性格にはお姉ちゃんの知り合いの女の人が私の親友を奪った人物の正体が分かったって言ったんです。・・・それから親友の敵を討ちたいならいろいろと協力して欲しいって・・・」
「・・・・・・それが偵察、か」
「はい・・・。それから聖夜様がこの学園に転入することを知って教師の暁美お姉ちゃんじゃ動きにくいから私が転入して―――」
「ちょっと待て!!教師で動きにくいって・・・お前の姉はこの学園にいるのか!?」
緒方 暁美?
全学年の生徒、教員、果ては事務や警備員の名前を脳裏に浮かべるがそんな人物は一人もいない。
それから、だ。
久須美が転入したのは俺がここに入るように決めてからだと?
以前見た久須美のデータには”転入”などという記述は無かった。
それが改竄することが出来るのは・・・やはり内部の人間。
「緒方暁美なんて人物は俺は知らない。・・・とするとお前の姉は偽名を使っているんだな?」
俺の問いかけに対し久須美は顔を横に振る。
「私とお姉ちゃんは両親の離婚の時に離されたから・・・。私は母の姓の”緒方”をお姉ちゃんは父の姓の”神楽坂”を名乗っているんです」
「・・・・・・神楽坂」
――――――やられた。
俺は向こうのことを知っていても、向こうが俺のことを知っているというのは明らかに”不自然”だったのに。
そりゃ向こうも教師だ。転校生の名前くらい知っていても不自然ではないと思うが、何百人といる生徒の中でいわば無関係の人間の名前を確信を持って言える。
そんな些細な不自然を俺は気付くべきだった。
「神楽坂・・・か。じゃあその暁美の知り合いの女性とやらのことを話せ」
俺がそう言うと、抱きしめている久須美の背中にわずかな震えが伝わる。
「眼鏡の奥に冷たいガラスのような眼を持った・・・きれいな女性です」
そう答える久須美の声にも明らかな震えが混じっていた。
「・・・それで?」
「分かりません。私が知っているのはそれだけです。・・・ただ、思い出すのは少し・・・・・怖いです」
「その女の事を知るにはまず暁美から・・・と言うわけか。久須美、姉を堕とす事に抵抗はあるか?」
「ふふ・・・むしろ支配されることの悦びをお姉ちゃんが知ってくれることは嬉しいことです」
「・・・そうか。じゃあ最後だ”なぜ指が効かなかった?”」
そう、それこそが最も重要な謎だ。
指の無効化。それは今まで試してきた中で一度たりとも指の無効化なんてことは起きなかった。
そして久須美はその無効化を知った上で、反撃に転じた。
それは指が効かないのは偶然ではないと言うことを意味するのだ。
「・・・薬です。白い、粉末状の薬」
「・・・薬、だと?」
「その薬の意味は自分で確認しろと言って渡されました」
(・・・・・・・・・・・・・・馬鹿な)
俺がしていることは薬なんかでどうにかできると言う問題ではないはずだ。
しかし、現に久須美は薬のおかげで俺の人差し指の効果を無効化した。
そう―――――――――人差し指は。
多分、だが俺の推測が間違っていなければその薬があれば親指の効果でさえ無効化されるだろう。
だが他の指の効果は・・・・・・無視できないはず。
「薬を渡したのはどっちだ?暁美か、それとも冷たい瞳の女か?」
「冷たい女性の方です・・・」
(・・・・・・・ふぅ。やっぱりまずは暁美を堕としてから、ということか)
「あ、あの聖夜様・・・。もしかして真正面からお姉ちゃんを?」
「ん?まぁ油断はさせるつもりだが・・・結局はそういうことだな」
「それは駄目です!!」
いきなり久須美が声を荒げて、俺の方へ向きかえる。
「私はお姉ちゃんに格闘術を教えてもらったけれど・・・勝ったことも、勝てる気もしません。それに・・・」
「それに・・・何だ?」
「たぶん聖夜様じゃお姉ちゃんに決定的な隙を作れません。もし作れたとしても一朝一夕では・・・」
「俺じゃ、ということはお前ならと言う意味に取って良いわけか?」
「・・・はい。それに私なら家に聖夜様を連れて行ってもそう不自然はありません。両親が死んで家で暮らしているのは私とお姉ちゃんだけですから」
「成る程」
「私が聖夜様を倒す所を見せれば、外の監視にも気付かれることはありません・・・」
そう言えば学園内から出た俺を追い回す糞鬱陶しい蝿達もいたな。
捕まえていろいろなことを吐かせようと思っていたが、どうやら黒幕はその冷たい瞳をした女のようだしな。
どのみち暁美には同じ用があったことだ。ちょうど良い。
「あ、あの・・・聖夜様・・・」
「ん、まだ何かあるのか?」
「いつ・・・決行なさるんですか?」
「当然今日だ」
「じゃ・・・じゃあ、その・・・今から私を抱いてくださいませんか?」
「今から?」
「だって・・・昼間から争い合っては不自然すぎますから。だから外に人が少なくなるまで・・・いつも通り久須美を調教して下さい・・・もっと、聖夜様のものにして下さい・・・」
「―――――――――分かった」
俺がそう言うと、さっそく久須美は目を輝かせ俺の股間へと顔を近づけた――――――。
●●●●●●●
「・・・・・・おりかさ せいや君、ね?」
すっかり人の姿が消え、薄闇がかった正門の前。
薄闇など吹き飛ばしそうな激しい敵意を燃やしながら一人の女性が俺の前に立ち塞がる。
「そうだよ、緒方久須美さん」
「・・・矢張りとは思ったけれど、私の正体は知っていたというわけね」
「君みたいな可愛い女の子を忘れろって言う方が無理な話だよ」
「ふふ・・・顔を見せたことの無い女性を覚えているって言うのはもっと無理なことだけど、ね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺の表情が闇に同化する。
その顔からは一切の感情を消え、冷徹な瞳は真正面の敵を見据えるのみ。
「だったら猫を被る必要も無いか。・・・何のようだ緒方久須美」
「別に理由は無いわ。ただ貴方を殺してしまおうかと思って。・・・もう貴方は必要ないもの」
そう言うや否や久須美の体が闇に消える。
残ったものは後に続く跳躍音のみ。
「・・・・・・・・・くっ!!」
すかさず後ろに跳ぶと、今まで顔が存在した位置に斬撃のような鋭い蹴りが襲い掛かる。
次いで横腹を狙って放たれる鞭のような横薙ぎの一撃を右腕で何とか受け止める。
鞭のような一撃の実質はハンマー。
受け止めた俺の右腕の骨はぎしぎしと折れそうに痛み、内部へと確実に刺激を伝える。
(・・・・・・・・受け止めるのは危険だな)
速度のフェイントを混ぜながら何度も俺に襲い掛かる無数の線をぎりぎりで交わしながら俺は少しずつ後退していく。
受け止めた箇所は腫れ、びりびりと痺れが抜けない。
びゅんっ、と一際大きく空気を裂く音が聞こえた瞬間。
今まで立ち構えで攻防していた体が下に沈み、俺の放った足払いで久須美の体が中に浮く。
その瞬間俺は、予期せぬ出来事にも全く動せず受身を取ろうとする久須美に飛び掛りマウントを取る。
「・・・・・十年早かったな」
俺に飛び掛られたせいで完全に無防備になった久須美の額に俺の”人差し指”が突き刺さる。
「・・・っぅ・・・・・・ぁ・・・・・」
そして久須美の瞳から意思の光が消え――――――より激しく燃える。
「・・・なっ!?」
驚くのも一瞬。
逆に無防備になった俺の体は宙を舞う。
意識が途絶えそうな痛みが腹部を中心に広がり、俺の体は地面に打ち付けられる。
痛みを堪え、すかさず立ち上がろうとした俺の肩を久須美の革の靴が踏みつける。
「お返し。・・・十年早かったようね」
冷徹な声とずしっ、と重く響く音。
「・・・・・・・・・な・・・・」
予定とは違った、意識を奪う重い一撃に驚きの呻き声を上げながら俺の意識は闇に沈んでいく。
(・・・く・・・久須美・・・・・・・?)
「・・・・・・・・ふぅ・・・・・・薬が無かったら本当に危なかったわね」
久須美は振り返り、人のいない場所へへと視線を向ける。
その視線の先から現れるのは黒服の男二人。
男達は無言のまま足音を立てずに久須美が倒した男の方へ歩み寄る。
「見事ですね。流石は・・・と言ったところです」
「ううん、まだまだお姉ちゃんには届かないよ」
「謙遜することは無い。スピードだけなら暁美様にも勝っていますよ。じきに技の切れでも暁美様に追いつくことが出来る」
「少なくとも5年は無理ですよ。お姉ちゃんの体術は格が違うもの」
「そうかもしれませんね。・・・・・それでこの男はどうするのですか?私達も殺さないように言われていますが?」
「私は今この場で殺したい。けどお姉ちゃんの言うことは聞かなくちゃならないから・・・・・・」
「それでは施設の方へ運びましょうか?」
「・・・ううん。私の家のほうへ運んで下さい。お姉ちゃんの判断を聞いたらまた連絡します」
「はい。了解しました」
男達は頷くと、一人は敗者の体を軽々と持ち上げ肩に担ぎ、もう一人は少年の持っていた鞄を手に持ち現れた場所の方へと静かに歩いていく。
その途中。
肩に少年を担いでいた男が振り返る。
「・・・久須美様。最後は本気でこの男を殺そうと思ったでしょう?」
「ふふ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かも、ね」
●●●●●●●
・・・・・・意識が沈んでいく。
その深い意識の底にある記憶は、どれも真っ白だった。
真っ白な部屋。
そこにあるものは全てが白いもので出来ていた。
ドアノブも、ベッドも、もちろんベッドにかかったシーツも、何もかもが真っ白だった。
その中の白は清潔感などには溢れておらず、どちらかと言えば身体を圧迫していた。
触れる壁はひんやりとして冷たく、通気口から流れる空気はどこか息苦しい。
自分の中の世界は全て真っ白なもので出来ていた。
時折食事をもって訪れる女性は部屋にも負けないくらいの白衣を身に付けていた。
もちろん自分の着ている物も真っ白だった。
―――だから染めたかった。
最初は染められるのならどんな色でもいいと思った。
その考えが変わったのは気が狂いそうな白に圧迫されての日々をしばらく過ごしてからだった。
ただ・・・ただ真っ白というのが苦しくて俺は思った。
塗り潰すなら”黒”が良い。
白と正反対の位置に属する黒色。
初めてそう考えた時、どくんと心臓が高く波打ち俺はしばらく笑いを止められなかった気がする。
そして、ようやく手に入った一本の黒い鉛筆。
初めは真っ白な床に何か字を書いた気がする。
後は世界を否定するように白を黒く塗り潰し変えたり、世界を隔離されたことの呪詛を込めた言葉を書いたり、見てみたかったもの、欲しいものの絵を描いた。
それは、ただ楽しくて。
寝ることさえ忘れ俺は世界を次々に否定し続けた。
・・・否、自分の世界に作り上げていった。
部屋が真っ黒になるのに時間はさほどかからなかった。
もとよりその世界には時間軸は存在しなかったため俺がどれくらいの時間その行為に没頭していたか知ることは不可能だったが。
すでに短くなってしまった鉛筆を握りしめながら届かない壁に手を伸ばす俺の後ろで黒いドアが開く。
・・・陶器製の食器が落ち、粉々に砕ける音。
カツカツとハイヒールが定期的に床を叩く音がし俺のほうへ近づいてくる。
だが俺は気にも留めず相変わらず届かない壁に手を伸ばしている。
―――不意に体が上昇する。
一瞬だけ下を向いて、黒の世界にそぐわない白衣を着た女性が自分を抱き上げたと言うことを理解し、俺はまた壁に手を伸ばした。
『もうちょっと我慢すれば・・・・・れたのに』
壁を塗り潰すことに夢中でほとんど女の言っていることが聞こえなかったが、その内容は酷く気に入らなかったと思う。
『分類分けすると貴方は必要の無い分類』
女がそう言ったの聞いて、俺は女の顔を初めて見た。
ぞくっとするほど冷たい微笑み。
いや、怖かったのは微笑ではない。
眼鏡の奥に見える瞳は、人間として持つべき感情を移していなかった。
奥歯ががちがちと音を鳴らして震え、胃がぐるりと裏返ったように吐き気を催した。
―――興味が無いから後の言葉を聞き取れなかったのではない。
本当の理由は、恐怖。
俺の額から流れた汗が、女の眼鏡の上に落ちる。
そしてそれを合図としてか、女が最後の言葉を紡ぎだした。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”バイバイ”』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!」
弾ける様にして体を起こす。
体を確認すると、じんわりと滲み出した汗が制服を濡らしていた。
「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
呼吸が酷く落ち着かない。
瞳孔が開き、尚も流れ出した汗が今まで体に掛かっていた薄掛け布団に流れ落ちる。
(・・・・・・・薄掛け布団・・・・・・・?)
「・・・どこだ・・・此処は・・・?」
俺が横になっていたのは群青色のソファーの上。
どうやら、どこかの家の中のようだが・・・里香の家ではないのは確かみたいだ。
「・・・あら、目が覚めた?折笠君。おはよう・・・って言ってももう夜の八時なんだけど」
「・・・神楽、坂・・・」
「・・・・・・そっか、学園内でもないから猫被る必要は無いもんね。でも、呼び捨てにするなら名前にしてくれないかしら。・・・ほら、久須美と私は姓が違うでしょ?だから苗字で呼ばれると、ね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ふふ、久須美に酷くやられたわね。傷跡を見たけれど・・・あの子結構本気で折笠君を殺そうと思ってたみたいよ?」
「・・・何が言いたい?」
俺がそう言うと、今まで立っていた暁美が俺の目の前で腰を下ろしずいっと身を乗り出してくる。
「率直に聞くけど、今朝のように私のお手伝いをしてくれた貴方と、今の貴方。どっちが本当の貴方なの?」
「知ってどうする?」
「もし・・・もし今の貴方が本当の貴方で無いなら、私が絶対に助けてあげるわ」
俺の本意を確かめようと、俺の目を覗き込む暁美の表情は真剣で、実に教師らしかった。
俺からすれば、可笑しいくらい真面目で真っ直ぐな瞳。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まぁ・・・すぐに答えるのは難しいでしょうね。いいわ、久須美にお茶を淹れてきて貰うから。・・・ふふ、あの子のお茶は本当に美味しいのよ?」
暁美は勝手に納得したように頷いた後、立ち上がり部屋の外へ小走りで消えていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
正直、俺は毒気を抜かれていた。
暁美は黒幕と一関わりあるに違いないはずなのに、今の態度を見ているとそれが間違っているような気がした。
「・・・・・・・・・・・・っ・・・・・」
それにしても、痛い。
予定では腹に軽い掌底を一撃を与えるはずだったのに、踵落としに変わっていた。
その上、本気で殺そうとしていた・・・だと?
まったく暁美と久須美・・・どっちが危険分子なのか分かったもんじゃないな。
がちゃ。
扉が開き、小さな机を持った暁美とマグカップを二つ手にした久須美が現れる。
暁美の表情はご機嫌そうだったが、それに対して久須美は凍て付くような視線を俺に浴びせている。
その表情はまるで――――――初めて出会ったときに”戻った”ような。
乱暴な仕草で久須美が俺にマグカップを一つ手渡す。
もう一つは静かに姉が置いたテーブルの上へ。
・・・手渡された紅茶には毒でも入ってそうで思わず飲むのが躊躇われる。
「あはは、久須美は毒なんか入れる子じゃないわよ?心配しないで」
「・・・お姉ちゃん。余計なこと言わないで」
「ん~?本当に毒でも入れたんならともかく、入れてないんだからいいじゃない」
「・・・・・・・・・・・」
「あ・・・。折笠君、そんな心配そうな顔しないで?本当に毒なんて入れてないから。・・・じゃあいいわ、私のと交換してあげる」
暁美は何もかもが勝手で、俺の有無を言わさずに俺が掴んでいたマグカップを引ったくりそのまま口に運ぶ。
それから一口中身を喉を鳴らして飲み込み、何とも無いように微笑んだ。
「・・・・・・ほら、ね?毒なんか入ってなかったでしょ?」
「・・・・・・く・・・・くっくく・・・・」
「折笠君?どうした―――――――――あ――――――」
ぐらりと力を失ったように暁美の体が机の上に倒れ込む。
体が倒れこんだために倒れたマグカップがごとっと床の上に落ち、その中身が床に広がっていく。
「ふふ・・・・・御免ねお姉ちゃん。でもこうでもしないとお姉ちゃん油断してくれないから・・・」
悪びれた表情など全く浮かべずに、むしろ姦計がうまく運んだことに酔うように微笑みながら久須美が呟く。
・・・そう。暁美が俺の持っていたマグカップに手をかけ、口に持っていた瞬間から久須美は本性を露出した。
何かが入った紅茶を飲む暁美の背後で、久須美は実の姉の背中を”全くの他人”を見るような冷ややかな目で眺めていたのである。
「聖夜様・・・体は大丈夫ですか?その・・・敵を欺くには味方からと思いまして・・・」
「いや、問題ない。よくやった久須美」
俺がそう言うと久須美は嬉しそうな表情を浮かべ、机に突っ伏している姉を羽交い絞めにする。
「く・・・久須美・・・?」
「さぁ・・・お姉ちゃんも聖夜様のものになろう?」
「何を言って・・・貴女・・・・・」
暁美の耳元で洗脳するように淫靡な声で久須美は囁きかける。
妹のそんな姿を見たくないのか、暁美は首を横に振りながら顔を逸らす。
「お姉ちゃん。・・・聖夜様に可愛がられて私幸せだよ?」
「貴女の親友を奪ったのが、折笠君だって分かっていても・・・良いのね?」
「ふふ、今ならあの子の気持ちが分かるもの」
「そう・・・そう、なの」
暁美が全てを諦めたように目を閉じる。
瞬間、けたたましく、何かが爆発したような破壊音が部屋に響き渡る。
「・・・・・・・なっ!?」
まるで映画のワンシーンを見ているように、スローモーションで吹き飛んでいく体。
一瞬の瞬きよりも早く。久須美の体が反転し、机を巻き込んで壁際まで吹き飛んでいく。
それが爆音の前の出来事。
激しく壁に打ち付けられた久須美の体は痙攣し、軽く意識が途絶える。
「・・・・・・・・・・すぅ」
大きく息を吐いて、目を薄く開ける暁美。
目蓋から覗くその瞳は冷たく、浮かべた表情でさえ先ほどの暖かな色は無い。
「う・・・・ぁ・・・・お、お姉ちゃん・・・・ど・・・・して」
振り返る力も無く、壁側で倒れたまま声を絞り出すようにして久須美が呟く。
「久須美の制服の襟。そこに小型の盗聴器が付いているわ。・・・もちろん痺れ薬なんて飲んでないし、ね」
暁美は久須美の方までゆっくりと近づいていく。その仕草はまるで死者を送り出す葬儀のよう。
大切な何かを失ってしまったかのように暁美の瞳には確かな憂いの色を帯びている。
「味方を欺くには・・・・ね。少しだけおやすみ、久須美」
暁美はあくまで優しい声でそう呟き、久須美の首筋に手刀を打ち込んだ。
久須美は最後に何かを呟こうとしたが、それも叶わず。意識が途絶える。
「久須美を殺すのかと思ったが?」
「私は両親の離婚のせいで久須美と離されてからずっと会えなくて、もう一度一緒に暮らせるようになった時にもう絶対に離れないと誓ったのよ?」
それから俯いた暁美は呟くように『その時の喜びが貴方に分かる?』と言った。
「本当の俺がどうだとか尋ねたのも芝居か?」
「・・・ええ。最初からあなたの事は分かっているもの」
立ち上がった暁美から放たれる殺気は、かつて久須美が放ったそれとは訳が違う。
あくまで冷やかな双眸は狼のそれを連想させ睨まれたら最後。誰もが彼女から逃げることは適わないと感じるであろう。
少年でさえ全身に冷や汗を浮かべ、目の前に立つ敵を見据えるのが精一杯のようだ。
「一つ聞くけれど・・・久須美を元に戻すことは可能かしら?」
「さぁ?だが、少なくとも今の久須美は自分が望んだ姿だぞ」
「それは・・・元に戻す気は無いと言うこと?」
「・・・くく・・・かもな」
それで、暁美の静かな怒りは限界に達した。
暁美は間違いなく体術の達人。その暁美が見せる原始的な怒りと、攻撃衝動が姿見えない何かのように少年に襲い掛かる。
「久須美は気絶させるくらいだったけど、貴方は殺す。絶対に」
「・・・・・・それは無理だ。なぜなら体は――――――」
「――――――――――――――――――動かない」
突如響き渡る呪文がその場の空間を支配する。
その瞬間、俺の方へと跳んだ体が俺の一歩手前で落ち、暁美は短く驚いた声を漏らした。
そして、何かに躓いたように力の重心を失った暁美の体が床へと乱暴に叩きつけられる。
「・・・ぐぅっ・・・・・・な、んで・・・久須美の薬は飲んで・・・ないのに」
「ああ、飲んでないな。もちろん」
「体が・・・動かない・・・?」
「当たり前だ。・・・なにせ俺がお前に与えた暗示は”俺の言う通りに体が動いてしまう”だからな」
暁美は理解に苦しむような表情で俺を見上げる。
おそらく、鏡で見たならばそこに映っているのは眼下の人間を嘲笑うように皮肉な笑みを浮かべた自分がいるだろう。
「・・・ぁ・・・暗示・・・私はそんなもの・・・・・・」
「くっくく・・・”中指”の力は”中指”に触れた媒体を通して相手に暗示を刷り込むこと。但し”中指”から媒体が離れた場合、暗示の内容にも依るが確認しているもので最大で数十秒」
「・・・媒体?そんなもの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っぁ!?」
「ご名答。ご丁寧にも毒見のために俺の手から奪い取ってくれた”マグカップ”だ」
『あ』と驚愕の声を一言漏らし、暁美は悔しげに顔を逸らす。
だが暁美は顔を伏せる素振りをしてその実、体を動かそうと懸命に力を込める。
「無駄だ、止めておけ。”中指”では意識に浸透するような深い暗示は込められないが、体の自由を奪うことなど造作も無い」
「・・・・・・・っく・・・・・ぁあああああ!」
その瞬間、重力に押し潰されたような暁美の体が片手を頼りに持ち上がる。
「・・・・・・・・・・なっ!?」
「ぅああああああああああああああああああああああ!!」
獣のように吼えた後、みるみると体が持ち上がり腕立て伏せをする時の開始時と同じくらいの所で・・・力を失う。
重力に負け、自分から床に倒れこんだ暁美は思わず苦悶の表情を浮かべて痛みを示す。
「・・・まさか、体を動かせるとは思っていなかったぞ」
「ふふ・・・次は貴方の首の骨を折ってあげる・・・わ」
そう言った暁美の言葉が俺の中の何かと一致する。
・・・その答えはすぐに分かった。以前の久須美の口ぶりだ。
ふむ。そう言えば以前の俺に敵対していたときの久須美の口ぶりと、奴隷に堕ちたときの口ぶりが全然違うと思っていたら・・・。
堕ちたときの久須美の見せた顔が本当の顔で、敵対していたときの久須美は弱い自分を隠そうと姉の暁美の口ぶりを真似ていたということか。
くく・・・まぁ、そんなことは今はどうでも良いな。
「その必要は無いから”服を脱げ”」
必死に暗示の呪縛を解こうと体を動かす暁美に、有無を言わさない無慈悲な次の呪文が発動する。
「・・・・・くぅ・・・・ぅああ」
自らの意思を無視して体が別のものとして動く感覚に戸惑いの声を上げながら、抵抗に震える手で暁美の薄いカーディガンが体から離れていく。
続けて暁美の手は自らの制御下を離れたまま、腰からキャミソールをたくし上げていく。
そしてそのキャミソールも身体を離れていき、上半身に見えるのは床と密着して出来た潰れた胸の谷間だけ。
「・・・くぅっ・・・と、まって・・・お願い」
羞恥に顔を染めながら、暁美は最後の一線だけは守ろうと腰に手を回す自分の手を強靭な意志で制止しようと試みる。
それでも暁美の手は背中の辺りで行き来を繰り返すだけで、背中の方へ戻る感覚も時間が経つごとにだんだんと短くなっていく。
「・・・っあ・・・駄目・・・・っ!!」
野生の狼じみた気迫を持ってしても暁美は自分の手を制することが出来ない。
ブーツカットは下にずり下がり、豊かなヒップを包んだ黒色のランジェリーが露出する。
続けて暁美の両手がそれぞれランジェリーの端を掴もうと、震える手を伸ばす。。
「ストップ」
俺がそう命令すると、暁美の意志ではどうしても動かなかった両手から突然力が消える。
安堵の息をつくのも束の間。暁美は怪訝な表情を浮かべ、俺を睨み付ける。
その怪訝な表情に含まれていたのも、どうして止めたのかではなく、次はどんなことで自分を辱めるか。と言う悔しそうな表情。
「その格好じゃ、俺に大事な部分が見えないだろう?」
「見せるつもりなんか・・・ないわ」
「くっくく・・・抵抗は無駄だと痛いほど理解できているのに、か?」
「・・・・・・・・・・っ!!」
「じゃあ早速座り込んだ格好で、俺に見せ付けるように焦らしながら下着を脱いでくれ。・・・さぞかし見ごたえがあるだろうな」
びくんっと暁美の体が一瞬だけ弛緩する。
そしてすぐに足はゆっくりとした動作で大きく広がり、いやらしく開いた股を見せ付けるようなポーズで俺の前に座り込む。
顔は悔しげで、吐き出す吐息は熱い。
俺が言った通りなのかそれとも抵抗しているのか、腰からなぞるようにしてランジェリーに添えられた手は脱げそうになった瞬間に手を離れる。
苦悶の表情と裏腹に、時折漏れる悩ましげな声。そして太ももの付け根をゆっくりとなぞるいやらしい手つきが俺の嗜虐心を刺激する。
いよいよクライマックスを迎える手。
淡い陰毛、わずかにはみ出した花びら。そしてその色は色素の沈殿など全く起こしていない綺麗なピンク色。
自分の行為に興奮を起こしているのだろうか、淫肉の隙間からはじんわりと蜜が垂れて身を離れていくランジェリーがつぅと細い銀の糸を引いていた。
「興奮しているのか?濡れてるぞ」
「・・・・くっ・・・・卑怯、物・・・・・」
「引っかかる方が悪い。・・・さて、俺の推測が正しければお前には”親指””人差し指””薬指”はもう効かないはずなんだが」
俺の正しさを証明するように、暁美の眉がぴくんと反応する。
「だが生憎”中指”では深い暗示は刷り込めないし残った”小指”も相手の意識を変化させるものではない」
「へ・・・へぇ。それは御生憎様・・・んっぅ・・・それで私をどうするの・・・?殺してみる?」
「いや、お前ほどの女を殺すなんて無粋なことはしない。ただ久須美と同じ方法で堕ちてもらおうと思っているだけだ。・・・気の強い女は快楽で堕ちるのが一番美しいからな」
「つくづく・・・下種な考え方ね」
「くっくく・・・なぁに、直に快楽の虜になる」
また俺が暁美に体勢を変えるように命令すると、暁美は無駄な抵抗を続けながらも俺のほうへ尻を突き出した四つんばいの体勢を取らされた。
湿っているとはいえ、暁美の膣口はけっして開きそうに無い金庫の門。
尻を高く突き出したポーズをとりながらも、暁美は凛とした表情でただ俺を睨み付けるばかりだった。
もし、ここで俺が挿入したら下の口で俺のモノを噛み切る。そんな気迫さえ伝わってくる。
「・・・ふぅ。恥じらいくらい持ってくれればやりやすかったんだがな」
「・・・・・・私は辱めでは絶対に屈しないわ」
「だろうな。・・・”普通の快楽”なら」
俺は意味深な笑みを浮かべ、隠すことなく晒された暁美の肛穴にゆっくりと”小指”を突き刺した。
最初は初めて入ってくる異物に苦悶の表情を浮かべ、そしてその瞬間。
「ああっ、ああっ、ぁぁぁぁあああっ」
暁美は目を大きく見開き、壊れた人形のようにがくがくと背中を震わせながら前に崩れた。
「ふぁっ・・・はぁ、な、何・・・んぁあっ、お尻の穴・・・熱い・・・」
”小指”を引き抜いたその穴はひくひくといやらしく痙攣を起こし、暁美はいきなり味わったはじめての感覚の正体が掴めぬまま虚空を見つめている。
ほんのりと紅潮していく頬。吐き出す息は荒く、色っぽい。
「何が起こったか分からないか?」
「ひっ・・・ふぁ・・・あああ」
「返事も出来ないくらい良かったのか。・・・まぁ理性が残っているうちに説明してやろう。・・・・・・俺が差し込んだ”小指”はな、差し込んだ部分を強制的に発情させる能力を持っている。”人差し指”や”親指”は額にしか差し込めはしないが”小指”なら何所へ差し込んでも良く強弱の調節も効く。ただし、使う用途が限定されていてあまり実践的ではないがな」
「・・・ぅぁ・・・そんな・・・こんな快楽・・・」
ひくひくと妖しく蠢く尻穴の蕾を指でなぞる。
それだけで暁美の背中には汗が滲み、蜜の分泌が増していく。
「理性をぶち壊して、徹底的に快楽の底に沈ませてやる。さぁ・・・せいぜい抵抗してくれよ?」
吐き出される暁美の絶望の声を聞きながら、俺は背中越しにたわわにゆれる柔らかい胸に手をかけた。
弾力に富み、俺の手の中で弾ける様に揺れる胸を愛撫しながら、右胸のしこりに”小指”を突き刺す。
「んああぁぁぁぁぁっ!」
再び獣のような叫び声が暁美の口から漏れる。
異常なほど促進された性感帯が刺激されている。それは今まで感じたことの無い快楽で、刺激を与えられる堅い乳首も、触れられたまま何の刺激も与えられない肛穴も暁美にとっては拷問に近い。
・・・否、それはまさしく拷問だった。
先ほど強弱がつくといった”小指”の力はきわめて強く、常人であれば発狂するような快楽を暁美に与えているのだから。
もはやマグマのように流れ出した愛液が暁美の健康的で艶かしい太ももを濡らす。
両脚はぷるぷると震え、命令が無ければ倒れ込みそうなほど限界に近い。
「ふぁっ!あっ・・・ひぁああっ・・・いや、胸を・・・あうっ・・・乳首がぁ、溶けちゃうっ」
「言っただろう?ぶち壊してやるって。ははっ、精神崩壊するかもなっ」
少年が言ったとおり、このまま体を蹂躙され続ければ精神崩壊を起こしそうだった。
ただの胸への愛撫でさえ大きなよがり声を上げて、辱めでは屈しないと言った壁を着実に削り取っていく。
ぬぷぅっ。
突如淫肉の合間を縫って挿入される肉棒。
処女ではないが、さほど経験をしていないそこに挿入されると当然痛みを感じる。
「はぅぅっ、うっ、うぁんっ、うぁあっ」
・・・のはずだった。しかし実際に感じているものは間違いなく快楽の類。
両手を捕まれ、猥らな水音を響かせながら少年は体を突き立てる。
リズム良く突き立てられるたび、それに合わせて暁美の口からは甘い喘ぎ声が漏れだす。
「そこっ、嫌っ、あっ・・・・・許してぇっ、壊れ、壊れるぅっ」
イヤイヤするように顔を振ると、いつの間にか口から漏れてきた涎が辺りに飛び散る。
感じたくない、と否定的な考えが余計にそれを意識させてしまう。
そしてそれすらをどこか遠く感じてしまうほどに頭の中が、心が真っ白く塗り替えられていく。
膣内で暴れ狂う快楽。子宮の入り口を擦られるたびに脳髄が溶けていく。
失禁してしまいそうな脱力感と悦楽が体の中で暴れまわっていく。
もう何度絶頂に達してしまったのだろう。
壊れかけた理性で見る自分の姿はどれほどいやらしいのだろう・・・。
「暁美、こっちを向け」
「うぁ、ふあぁああ・・・・ぁ・・・・?」
呼びかけられて振り返った額に少年の”小指”が突き刺さる。
最後。
目の前が真っ白になって爆発した。
我慢や、残っていた理性は全て爆発の波に飲まれてしまった。
「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、ひああぁぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、脳下垂体を刺激され全身が性感帯に変わった。
この世のものとは思えない叫び声を上げ、折れてしまいそうなほど背中を弓なりに逸らして暁美は絶頂を迎える。
呼吸が、心臓までが止まったように自分の中の全てが停止した。感じられるのは不思議なくらいに大きく響き渡る血脈の音。
それから、子宮に突き刺さるように何度も噴出する熱い白濁液。
完全に力をなくし、床に倒れ込む暁美。
持っていたもの全てを壊されたショックだろうか、生気の失せた両の目からは涙が零れ落ち頬を濡らしていた。
透明な雫を垂らしながらぶつぶつとうわ言を繰り返していたが、それが何を示しているのかは分からない。
「休ませはしない。ここからが一番面白いんだぞ?」
もう一生俺のものなしでは生きていけないように、空洞化した心に倒錯した快楽を嫌というほど染み込ませる。
その状態で囁きかける言葉は・・・一生心から離れることはない。
ずるりと隆起したままの肉棒を引き抜くだけで暁美の体は痙攣を起こす。
最後の自尊心も消え失せた。
頼るべき妹の姿も生気を失った瞳で捉えることが出来ない。
暁美は、これから俺だけを見続ける。死ぬまで一生。
「あうう゛う゛う゛う゛うううううううううううううううぁぁぁっ」
欲望で濡れた肉棒が暁美の肛穴を貫き、とどめとばかりに快楽が暁美の全思考を支配した―――――――――。
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「はっ、ひゃあっ、くひゃぁぁあんっ」
俺の上に跨り、騎乗位で激しく腰をゆさぶる女。
その女の表情は愉悦に溢れ、彼女は先ほどまでとはうってかわってうれしそうに喜んで体を開いている。
「どうだ?暁美」
俺が尋ねると、今まで虚空を見つめていた虚ろな瞳が俺の顔を捉える。
「あはっ、うぁあっ、いいですっ・・・おかしくなりそうなくらい、気持ち、いいですっ御主人様ぁ」
徹底的に理性を打ち砕かれ、新しい常識に身を沈めた暁美。
狂いそうな快楽の果てに刷り込まれた言葉は彼女から消えることなく、俺を見つめる彼女の顔には何一つとして迷いは残っていない。
「お前は俺の何だ。答えてみろ」
黙っていても腰を揺さ振りたてる暁美を突き上げながら、俺は暁美に隷属の言葉を要求した。
「あっ、うぁあ・・・わ、私は――――――私は奴隷、ですっ。何でもします、肉奴隷になりますっ、ひぁぁんっ。だ、だから、お情けを・・・んっ・・・くださいぃ」
全身を性感帯に―――という”小指”の力はもう解けているものの、それでも与えられる快楽は暁美を狂わせるにはもう十分である。
暁美は煮えたぎるような子宮を感じながら惚けた笑みを浮かべて何度も奴隷という言葉を呟いている。
ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・。
その言葉を聞いて俺の胸に舌を這わせている久須美も嬉しそうに微笑んだ。
「これで・・・ずっと一緒だよお姉ちゃん」
上目遣いで服従を誓う自分の姉を見つめる久須美の熱っぽく潤んだ瞳は、ぞっとするほど妖艶で美しい。
暁美の腰が激しくうねり、狂ったように尻が暴れまわる。
肉と肉とがぶつかり合う音が激しく響き、肉棒の付け根から甘い痺れが伝わって全身へと流れ出す。
「出すぞっ!」
勢いを強め、腰をがんがんと突き立てる。
「し、痺れ・・てぇ、お、おかしくなるっ、子宮が熱いっ!ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
そして爆発を起こし、熱くたえぎったマグマのような白濁が暁美の子宮を何度も穢していく。
大きな喘ぎ声を漏らして後、ごぽっと接合部から白濁液が流れ出した。
もはや暴力とも呼べる快楽を与えられ、暁美は繋がったままだらしなく惚けた笑みを浮かべ座っている。
もう二人は与えられる快楽無しには生きてはいけないだろう。
接合部から零れ出した愛液と精液に舌を這わせる久須美と、惚けた微笑を浮かべながら自らの秘所を弄る暁美を見て俺はそう思った。
この姉妹に逃げる道など存在しない。・・・いや、逃げようとも考えないだろう。
なぜなら、この姉妹は、悪魔が与える快楽に魂を売ってしまったのだから――――――――――――。
< 続く >