後編
(16)
「ああ…ああ…いい……」
千秋は全裸になり、ベッドの上で喘いでいた。
「私…私ぃ…悪い子になっちゃった……」
自己嫌悪にとらわれる。オーナーと清香の情事の翌日、結局学校には行かなかった。真面目な千秋が授業をさぼったのは、初めての事だった。しかも、その理由は自慰をしたくて我慢できなくなったからだ。
最近ベッドで目を覚ますと、決まってあそこが濡れている。しかも、充血していた。軽く触れただけで、ビクビクと体が震えてしまう。すっかり敏感になっていた。
寝る前と起きてから、ベッドの上でオナニーする。それが、千秋の新しい習慣だった。それでも完全には満足できない。たびたび授業をさぼって、自慰に耽るようになっていた。今も、本来ならもう大学に行かなければいけない時間だ。
「私…ここに来てから、すっかりいやらしくなっちゃった…どうして……?」
都会に出てきて日が浅いが、いろいろな事を経験した。それが自分を変えてしまったのだろうか。それとも一人暮らしという、誰にも干渉されない環境が、秘められていた己の本性を引き出したのだろうか。
「オーナー…ああ…オーナー……」
千秋は無意識のうちに呟いていた。快楽に痺れる頭に浮かぶのは、オーナーの姿だ。風呂場で見た裸。想像するだけで体が熱くなってくる。いつの間にか、千秋の性の対象は、オーナーだけに限定されていた。オーナーと裸で抱き合う自分を想像し、激しく指をかき動かす。この指が、オーナーのものであれば良かったのに。
「だ、だめ…こんな事、していちゃいけない…いけないのに……!」
いくら千秋でも、自慰の経験がないわけではない。夜ベッドに入って、興味本位で自分の性器をいじったりした事もあった。しかし快感が昂ぶってくると、怖くなって途中で止めていた。
それが今、千秋を突き動かす衝動は、そんな自制心を軽く吹き飛ばしてしまう。止めようと思っても、指の動きは止まらない。更なる快感を求めて、性器を這い回っていた。
不意に携帯電話が鳴った。それは、母からの電話だった。
「もしもし。千秋ちゃん?まだ学校には行っていないの?」
「う、うん。今日は午前中は休講で、午後からなの」
母に嘘をついた。良心が痛んだ。
「そう…。そちらの生活にはもう慣れた?最近、連絡もないから心配していたのよ」
「う、うん」
曖昧に返事をした。
『お母さん、あのね……』
携帯を握り締める手からは、自分自身の女の匂いが漂ってきた。愛液の匂いだ。言いかけた言葉を飲み込む。
何を言うつもりなのだろう、私は。あなたの娘はすっかりいやらしくなりました。今も学校さぼってオナニーに耽ってました。など言えるわけがない。
ひょっとしたら、この環境が良くないのかもしれない。みんなで集まってポルノビデオ見たり、オーナーと一緒にお風呂に入ったりする、この異常なマンションが。
自分の考えを、即座に否定する。
両親は既に多額の敷金を支払っている。そんな曖昧な理由で、こんなにいい住まいを変えたいなんて話、できるはずがない。
「どうしたの?何かあったの?」
唐突に黙ってしまった娘に、母は何か感じたようだ。急に声の調子が変わっていた。
いけない、両親に心配をかけては。
生来の思いやりの強さが、自ら引き返す最後の機会を閉ざしていく。
「ううん、何でもないよ」
無理に明るく言った。
「…千秋ちゃんみたいな大人しい性格で、都会が一人でやっていけるのか、お父さんと心配しているのよ」
『お父さん、お母さん』
「大丈夫。元気でやってるから」
千秋は、ごく普通の会話に努めた。大学の事を話し、送って欲しい食べ物などを告げた。そして慎重に、この異常なマンションの話は避けた。母としばらく世間話をしてから、電話を切る。
「ああン……!」
電話を切った途端、即座に手が股間に行く。中途半端に火の付いた欲情は、千秋が達するまで許そうとはしなかった。
千秋の脳裏からは、すでに両親の姿は消えていた。ただひたすらオーナーとの情事を想像し、快感にその身を震わせていた。
(17)
「ふぅ……」
ぼんやりと、千秋は湯船にその身を沈めていた。夕暮れ時の街の様子が、絵画のように美しい。そこは、大浴場だった。オレンジ色の光が浴槽を照らしている。時間が早い事もあり、他に誰もいなかった。
結局、日中はずっと自慰をしていた。一度登りつめても、千秋の肉体は貪欲に快楽を求めつづけた。それ程までに襲った性の衝動は力強く、千秋を突き動かした。自分自身、気が狂ってしまったのかと思ったほどだ。
夕方になってその強い性欲からようやく開放された時、千秋の体は汗まみれになっていた。
またオーナーと鉢合わせになったら、とは思った。しかし、今は例のプレートは『未使用』になっている。何より、この広い浴槽を諦めるなんて勿体無い。
そうよ。
千秋は、自分にそう言い聞かせていた。
脱衣所の方で、人声がした。誰かが浴場に入ろうとしているようだった。女性特有の弾むような声。複数の人の気配がした。しばらくして、扉が開いた。
『ああ…!オーナー……』
先頭で入ってきたのは、オーナーだ。その後ろに、数人の女性達を従えていた。
「やあ、大沢さん」
オーナーは明るく声をかける。その様子には悪びれたところがない。この前すまなそうに謝ってきたのは、一体何だったのか。
「あら、大沢さん」
オーナーの後ろから現れたのは清香だった。その透き通るような肌の白さは想像していた通りだ。清香はタオルこそ持ってはいたものの、その体を隠そうとはしていなかった。
「こ、こんばんは」
どぎまぎしながら頭を下げる。清香は、意味深な笑みを浮かべて、オーナー達と一緒に洗い場の方へと向かっていく。
オーナーは千秋を前にしても、まったく体を隠そうとはしていなかった。タオルすら持っていない。
『あ…ああ…オーナーのアソコ…。み、見ちゃった……』
ダラリと垂れ下がったオーナーの性器。思わず見てしまった。恥ずかしい、と思いつつ、目を逸らす事ができない。千秋は、食い入るように、オーナーの性器をチラチラと盗み見ていた。タオルを押し付けた千秋の桜色の乳首が、ぷっくりと膨らんでいく。
「オーナー、お背中流しますわ」
「あ、私も」
女性達の嬌声が浴槽に響く。見るとまるで競い合うように、オーナーの体に群がっている。オーナーは女性達に体を洗わせて、自分では何もしようとしていなかった。
『ど、どうしよう……』
一人、千秋は焦っていた。よく考えてみれば、後からオーナーが入ってくるのならばプレートなど関係ない。なぜそんな事も思いつかなかったのか。しかも清香達は、オーナーと一緒にお風呂に入りにきているのだ。
『で、出ないと』
風呂から出ようと立ち上がろうとした。
ダメヨ。
動きかけたと体が止まる。
『ど、どうして…。私、なぜだかわからないけど、出たくない…。ここにいたい…おかしい。おかしいよ……』
千秋は、湯船に浸かったまま、じっとオーナー達の様子を見つめていた。なんと女性達は、オーナーの体を洗うのにタオルを使ってはいなかった。自分達の体を使ってオーナーの体を洗っていた。体を泡まみれにして、オーナーの体に擦りつけている。その顔は、とても幸せそうだ。それは体を洗うというより、愛撫に等しい行為だ。
『ああ、あああ…そ、そんな…私…私ぃ……』
思わず股間に伸びそうな手を、必死に止める。千秋は、明らかに興奮していた。
「うふふ。千秋さんは見ているだけ……?」
いつの間にか、清香は千秋の横までやって来ていた。耳元で囁く。
「そ、そんな……」
「そうよね。千秋さんは、見るのも大好きですものね」
おかしそうに清香は言う。一体、何を言っているのだろう。まさか。千秋ははっとなった。
いつかの夜の事を言っているのだろうか。ひょっとしてあれは、わざと自分に見せつける為に……。
「そんなに物欲しそうな顔をして見ているぐらいだったら、千秋さんもやればいいのに」
「えっそ、それは……」
「ふふ、いいのよ。別に遠慮しなくても。さぁ、いらっしゃい」
そういうと、清香は手首を掴んで引っ張った。そんなに強い力ではない。しかし、なぜか逆らう事ができなかった。千秋は清香に導かれるままに、オーナーの所まで連れて行かれてしまった。
(18)
「オーナー。千秋さんもお背中流したいそうです」
清香は一方的にそう告げた。いつの間にか、千秋が巻いていたバスタオルは外れ、全裸姿になっていた。
「おお。それはありがたい。さっそくお願いするとしようか」
そういうと、背中を向ける。オーナーの体にまとわりついていた女性達は、千秋にその場を譲る。オーナーの背後に、千秋は全裸でへたり込んでいた。その周囲を、同じく全裸姿の女性達が取り囲んでいた。まるで、引き出された囚人のようだ。少し重苦しい雰囲気になる。
『オーナーの背中、洗わないと、いけないの…?』
千秋が、オーナーの背中を洗わなければならないような空気になっていた。それが、もっとも自然な事であるかのように。不思議な義務感が沸いてくる。頭の中に霧がかかっているように、意識がぼやけていく。何かに導かれるように、千秋はぼんやりと決心した。
『オーナーの裸に…直接、触れる…触っちゃうの……』
剥き出しになっている股間から、とろとろと粘り気のある液が溢れ出てきた。オーナーの肌に直接触る。それを考えただけで、千秋は痺れるほどの興奮を味わっていた。
おずおずと、洗面器の中の泡をすくい上げ、そっと両手でオーナーの背中に触れる。
『暖かい……』
手のひらに、暖かい感覚が広がる。明らかに女性のそれとは違う男性の裸の感触に、千秋は夢中になっていた。ゆっくりと手に取った泡を背中全体に広げていく。
「背中はもういいよ。今度は前の方をお願いね」
オーナーはそう言うと、体を反転させてこちらを向く。
『きゃっ』
今、自分は何も隠すものが無い全裸なのだ。胸も、あそこも、全てオーナーに見られてしまった。同時に、オーナーの肉体も千秋に全てを晒している。先ほどまではだらりと垂れ下がっていた男根が、心持ち大きくなってきたような気がした。
「どうしたの?」
固まっている千秋を見て、オーナーが怪訝な顔をする。
洗ワナイト。
「い、いえ」
不思議な衝動に突き動かされて、千秋は慌てて泡をすくい上げた。床に跪いた自分は、まるでこの方に仕える従者か何かのようだ。優しく腕を取ると、熱心に洗っていく。
何度も両手で泡をすくい上げ、オーナーの体を隅々まで洗っていく。その行為に、千秋はいつしか夢中になっていった。
相変わらず千秋の意識は、霧がかかっているかのようにはっきりしない。今のこの異常な状況に、染まりつつあった。不快感は全くない。むしろうきうきと、心が弾むような感情が芽生えてくる。いやらしくて、楽しい。清香達も、こんな気分になっているのだろうか。
『ああ…男の人の胸……』
女性のそれとは違う固い筋肉の感触。胸の上に、泡を広げていく。乳首を中心に、円を描く。洗うというより愛撫に近い動きだった。
「千秋さん。ちゃんと『そこ』も洗うのよ」
横から清香が命令する。千秋の視線がゆっくりと下がっていく。清香の言う『そこ』とは、オーナーの股間に他ならなかった。オーナーの肉棒は、千秋の奉仕を受けて今や固くそびえ立っていた。
『こ、ここも…洗わないと……』
夢遊病者のように、千秋はふらふらとオーナーの性器に触れた。
『ああっ…!』
ピクンと体が震えた。
『あ、熱い…。オーナーのここ。それに、固い…とっても……』
固くなった男根は、血管が浮き出て醜悪に節くれだっていた。始めて見た肉棒に、千秋は不思議な愛着を感じていた。
『素敵…すてき…。オーナーのオチ○チ○。こうして触っていると、不思議な気分になってきちゃう。いい…とっても……』
泡まみれの手で握ると、恐る恐る上下に動かしてみせた。その感触に夢中になる。
「どう?千秋さん。オーナーのここ」
清香が千秋に尋ねてくる。
「どうって……」
余りの恥ずかしさに口篭もる。それでも、オーナーのペニスをしごく動きは止めない。
時々ぴくっと肉棒が震える時がある。千秋の手に感じているのだ。それだけで、胸が幸福感に包まれる。
「オーナーの、ここの感触は、どうなの?」
清香は後ろから千秋の股間に手を差し入れた。敏感な部分を一撫でする。不意に襲った快感に、思わず声が洩れた。
「あ…!と、とっても逞しい、です」
慌てて言う。くすくすと、女性達がおかしそうに笑う。
「そう言ってもらえると嬉しいね」
満更でもないように、オーナーが笑う。今やオーナーは、千秋の奉仕に身を任せていた。
『オーナーの体に触るのって、こんなに気持ちいいんだ……』
オーナーの肉棒をいじる。その手つきは、次第に大胆になっていった。
『ああ、あああ…!私、私……!』
頭の中で、何かが弾けそうになっていた。それが何なのか、千秋自身もわからない。不思議な圧力が、どんどん高まっていった。
不意に、オーナーは立ち上がった。抜けるように、両手から男根が離れる。
『あ……』
高揚感が去り、虚無感が胸を打つ。
「ありがとう。きれいになったみたいだから、もういいよ」
(19)
「ううん…はぁ…ああっ……!」
ベッドの上で、千秋は自分を激しく慰めていた。
オーナーは、泡を落すと清香達と一緒に風呂場を出て行った。半ば呆然としている自分を残して。千秋はすぐに大浴場を出ると、ベッドに直行した。オナニーしたい。その衝動を押さえる事ができなかった。まるで中毒だ。
「オーナー…ああ…オーナー……」
何度もその名を呼ぶ。彼の分身の感触が、まだ両手に残っていた。まるでそれを擦りつけるように、全身に手を這わせる。これが、本物のアレだったら、どんなにいいか。
「ああっ来る!また来ちゃう!オーナー…!」
千秋は登りつめる。その身を激しく痙攣させた。
ベッドの上に、その身を投げ出した。息が荒い。既に半裸姿だった。ブラずれて乳房が露になっていた。足首には、ショーツが引っかかったままになっていた。
「……」
再び両手が股間に伸びる。絶頂を何度迎えても、性欲は無くなったりはしない。収まるのは一瞬だけで、次の瞬間には更に強い性欲が襲ってきていた。大浴場でオーナーの体に触れてから、完全にスイッチが入ってしまったようだった。
「あ…だ、だめぇ…もうしたくなっちゃった…こんな事、ばっかりしていちゃいけないのに…止まらない……!」
今まで自分で作っていた自制のタガは完全に外れ、ひたすら快楽を貪る色情狂になっていた。自分が自分で無くなる。これからどうなってしまうのか。恐怖や不安も無い事は無かったが、遥かに強い性欲が全てを押し流す。千秋自身の理性では、もうどうにもならない段階まできていた。
「オーナー…はぁ…ン…オーナー…ああ…オーナー」
再び意識が快楽の沼に沈んでいく。もう何も考えられなかった。千秋は、再び己を襲う快感に夢中になっていった。
(20)
三日月の淡い光が、『スターコート植田』を照らしていた。屋上から見た都会の夜景も、随分暗くなっている。
省電力の為、消灯していたエレベーターに明かりがともる。低いモーター音が響き、屋上へと上がってくる。静かに扉が開くと、中から千秋が現れた。
千秋は下着姿だった。素足のまま、ブラの肩紐も外れていた。そしてショーツの中心は、洩らしたかのように大きな染みができていた。異様だった。フラフラと夢遊病者のように、その足取りはおぼつかない。焦点の定まらない目で、まっすぐにオーナーの屋敷を目指していた。
「んん…ああ……」
明かりの消えた屋敷から、微かな声が聞こえてきた。それは先ほどまで千秋が発していたのと同じ、喘いだ声だ。
『オーナー…今、セックスしている……』
胸に熱い感情が生まれる。それは嫉妬なのか。欲情なのか。千秋自身にもわからない。いても立ってもいられず、千秋は庭の方へと回り込んだ。広い庭の奥に、一つだけ明かりが点いている部屋がある。光に集まる虫のように、千秋は吸い寄せられていく。
その部屋の窓から光が洩れていた。ちょうと千秋の顔の高さだ。そっと中を覗き込んだ。
『あっ……』
呆けた千秋の顔が、驚きの余り正気に返る。その窓から部屋の中が一望できた。寝室のようだった。大きなベッドの上に、オーナーが横たわっている。全裸だ。そのオーナーの股間に、顔を寄せている女性がいた。それも二人。
「ああん、オーナー。逞しいです」
「す、素敵。オーナー」
口々にオーナーを褒め称えながら、熱心にオーナーの分身に舌を這わせている。一人は清香。もう一人は珠季だ。二人とも、生まれたままの姿だ。あれほどいがみ合っていた二人が、今は仲良くオーナーに奉仕している。清香の白い肌と、珠季の日焼けした肌が、オーナーの肉体に絡みついていた。二人ともその顔には、至福の笑みが広がっている。一人が竿の部分に舌を這わせると、もう一人は顔を沈めて袋の方を口に含む。協力しあっていた。
『あの二人が、そんな……』
清香だけならまだ理解できる。しかし珠季も一緒となると、もう理解できない。確かに珠季もオーナーの事は好きな様子だった。オーナーに請われれば、当然体を開くだろう。しかしだからといって、二人同時にベッドインするものだろうか。
いや、こんな光景を前に見た気がする。確か最初のパーティで見せられた、ポルノビデオだ。あの映像では、確か一人の男性が複数の女性と同時にセックスしていた。こんな世界が、本当にあるなんて。
『素敵……』
千秋は食い入るように、中の様子を見つめていた。
前にポルノビデオを見た時には、嫌悪感の方が強かった。そこに愛情はなく、ただ性欲を満たすだけの獣の宴。千秋にはそうとしか思えなかった。しかし今、三人の様子を見ていると、この世でもっとも崇高な儀式のように思えてくる。
どうして自分だけ、仲間外れにされるのだろうか。みんなあんなに楽しそうなのに、私はこうして外から覗くしかできない。あのビデオでは、もっと多くの女性が参加していたではないか。だったら、もう一人ぐらい。
自分の思考にはっとした。なんというふしだらな考えなのだろうか。
オーナーの性器を熱心に舐めしゃぶっていた珠季が、顔を上げた。オーナーの反応を窺う為だったのかもしれないが、窓の外から覗き込んでいた千秋と目が合ってしまった。
「誰…?」
まずい。逃げないと。
慌てて千秋は、その場を離れようとした。しかし。
ダメヨ
ぴたりと千秋の動きが止まる。この場を離れる事を、千秋の魂は拒否していた。
「千秋ちゃん?」
窓が開けられた。全裸の珠季が、半裸姿の千秋をじっと見ていた。
「あ、あの。これは……」
「そんな所で何しているの?」
それは清香の声だった。いつの間にか全裸のまま庭に下り、千秋の横に立っていた。もう、逃げ出す事もできない。
「いや、その」
言葉が出てこない。半裸姿で、股間をぐっしょりと濡らし、その顔は赤く欲情しきっている。言い逃れできる状況ではなかった。
「ふうん」
千秋の全身を、上から下まで珠樹の視線が這い回る。猫科の動物が獲物を弄ぶような、無邪気で残酷な瞳になっていた。捕まった獲物のように、千秋は俯いたまま立ち尽くしていた。
「そんな所に立っていないで、上がったらいいのに」
あっさりと珠季が言う。
「えっ…そんな」
「さ、千秋さん」
清香が千秋の腕を掴む。強い力ではなかったが、千秋には逆らう事はできなかった。
(21)
「やあ、千秋さん。こんばんは」
千秋が寝室まで連れてこられると、オーナーは平然とそう言った。素っ裸で、性器は丸見えだ。セックスの最中を覗き見されたにも拘らず、まったく気にしていない様子だった。清香は信じられない事を言った。
「千秋さんが来るの、あんまり遅いからもう始めていたのよ」
「あれ、清香。今夜、千秋ちゃんが来るって事知っていたんだ」
不思議そうに珠季が尋ねる。千秋は恥ずかしそうに、俯いたままだ。
「お風呂場でね、あんなに欲情していた顔をしていたから、今夜辺り来ると思っていたのよ」
「ふふ、それで千秋さんは、こんな所で何をしていたのかな?」
オーナーが意地悪く尋ねる。そんな質問、答えられるわけがない。
「あら、オーナーが聞かれているのよ」
清香が千秋の体に手を伸ばす。ぴくっと体が震えた。
「うふ。敏感なのね。珠季。千秋さんが正直になれるように、少し可愛がってあげましょうよ」
「あは。それいいね」
淫靡な尋問をしようという清香の提案に、珠季は乗り気だ。二人がかりで、千秋の体をベッドの上に組み敷いた。
「た、珠季さん……」
「うふ、千秋ちゃん。初めて見た時から、かわいいなって思っていたんだよ。いつか、こんな風に可愛がってみたいってね」
そう言うと、唇を寄せていく。
「んン…」
女同士のキス。千秋にとって初めてのキス。されるがままに、唇が蹂躙されていく。
「ああ……」
下半身は、甘い刺激が走る。清香が潜り込んでいた。両足は大きく開かされ、熱く濡れた女芯には蠢く舌の感触があった。
『あ…あはぁ…あ…はあ…。清香さんに、アソコ舐められてしまっている。まるで、別の生き物みたいに、動いている』
興奮で充血しきった性器を、舐め上げられる。その微妙な刺激に、千秋は夢中になっていった。珠樹は、そのまま上半身を責めてくる。首筋にキスを繰り返し、円を描くように乳房を刺激する。
「はぁん…はぁ…あン…はぁ…や、やめてください」
「千秋ちゃんの胸ってかわいいね。ちょうど手のひらサイズだし、感度の良さそう」
千秋の声を無視して、二人の責めは続く。千秋はされるがままになっていた。その身を襲う快感に、耐えるのがやっとという具合だ。女性の馴れた手つきで、確実に性感を刺激していく。自慰とは比べ物にならない。強烈な快感だった。女性に二人がかりで愛撫されるという異常な状況が、千秋の自制心を溶かしていく。
『ど、どうして…?こんなに気持ちがいいの?』
ふと目を開けた。オーナーがベッドの隅に座り、自分を見ていた。いつもの善人顔は影を潜め、その目は興奮に爛々と輝いていた。
『そうか。オーナーが見ていてくれるから』
そう思っただけで、千秋の体は熱くなった。自分は今、ただ二人にせめられているのではない。その様子を、オーナーに見られているのだ。
「ああ…!はぁ…はぁ…くぅん…はあ…!」
一段と色っぽい喘ぎ声が洩れる。千秋は、自分でも気づかない内に、オーナーに媚びを売っていた。
「さあ、そろそろ素直になったかな。ここで何していたのか、言う気になった?」
意図的に乳首を摘みながら、珠季が楽しげに尋問する。
「そ、それは……」
「それは?」
次の言葉が続かない。私は本当に、何をしに来たのだろう。自分でもわからない。いくら自分を慰めても、満足する事ができなかった。すればする程切ない感情は昂ぶってきた。気がつくと、フラフラとオーナーの屋敷までやって来ていた。
「正直に言わないと、これ以上してあげないわよ」
清香はそう言うと、つんつんと舌先が千秋の芽をつついた。それだけで、狂いそうなる。
「あう…!い、言います!」
叫ぶように、千秋は言った。もう自分が何を言おうとしているのか、わからなかった。
「オーナーに、抱いてほしくて…堪らなくて」
感情が昂ぶり、いつの間にか千秋は涙を流していた。
「でも、でも、オーナーは清香さんと珠季さんと……」
昔好きだった人に、遅れて告白するような、そんな切なさがあった。涙がとめどなく零れ落ちていた。千秋の様子に、清香と珠季が顔を見合わせる。
「ねえ、千秋さん」
優しく、清香が語りかける。
「オーナーはね。誰のものでもないの。このマンションに住む、全ての女性は、オーナーの所有物なの」
『所有物…?』
その言葉を聞いた時、千秋の胸は高鳴った。
「このマンションはね、オーナーのハーレムなのよ」
『ハーレム…!』
落雷にも似た衝撃があった。ショックが走る。
「ここのマンションの女達は、オーナーの物なの。オーナーに尽くし、オーナーに奉仕する事だけに、残りの人生全てを捧げているのよ」
「つまり、私達はセックス奴隷ってわけ」
あっけらかんと珠季が言う。それは一見非常識な話だった。これほど女性の人権を馬鹿にした話はない。しかし、千秋は憤慨するどころか、それがこの世で一番素晴らしいもののように思えていた。
都会の片隅で、美女達の頭上に君臨する一人の男性。その男の為だけに、女性達は心も体も捧げ尽くす。なんという甘美な世界なのだろう。
「もちろん。誰でもなれるというものではないわ。容姿が並外れて美しい、ごく一部の女性だけが、オーナーの愛を頂戴する資格を持つの」
そういえば、初めて見学した時、追い返されていた女性がいた。あの人は、あの段階で不合格だったわけだ。では、自分はどうだろうか。
「あ、あの。私は……」
恐る恐る尋ねる。
「あなたにはハーレムの一員、オーナーのメス奴隷になる資格があるわ」
『ああっ…!!』
千秋の両目から、また新しい涙が零れ落ちる。それは歓喜の涙だった。大学に合格した時よりも、何倍も強い感動。おそらくこれから先何年生きようとも、決して味わう事はないであろう感激。それが一気に、千秋の体を駆け巡った。
『わたし、私…。今日、この日為に生まれてきたんだ……』
思えば今までの人生は、全てオーナーの性奴隷になる為にあった。つまらない男と付き合ったりしなくて良かった。これで処女をオーナーに捧げられる。オーナー。私のオーナー。おそらく、人生ただ一人の男。
「もちろん。これは強制ではないよ。全ては君の意志だ。どうする?私のハーレムに入りたいかね?」
「はい」
厳かに、千秋は答えた。それは結婚式の誓いなどよりも、ずっと神聖なものに感じられた。
「私の全てを捧げます。身も心もあなたのものです。どうか、どうか。私の所有者、オーナーになってください」
千秋は素っ裸のまま、ベットの上で土下座する。傍目には滑稽な姿だったが、本人は必死だ。
「うん。いいだろう。使ってあげるよ」
オーナーは尊大に頷く。それだけで、天にも登る心地だった。
「ああ…!!ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」
千秋は心の底からの感謝の言葉を、何度も何度も繰り返した。
(21)
「オーナー。どうか、私の処女を受け取ってください」
千秋はオーナーに訴えかけた。その体は羞恥と興奮で桃色に染まっていた。
「ほう。千秋は処女だったのか。それではセックス奴隷になった記念に、私が奪ってやろう」
「ああ…。オーナー…うれしいです……」
うっとりと千秋は呟いた。そのままベッドに体を横たえる。
「ほら。足を開け。大事な部分を自分で開いて見せてみろ」
「はい」
真っ赤になりながらも、素直にオーナーの命令に従う。その顔は幸福そうだった。千秋の体は、隅々までオーナーに見られていた。まだ少女の面影が残るかわいらしい乳房の頂点には、ちょこんと乳首が乗っている。無駄な肉の無いお腹を過ぎると、急に豊かになる。綺麗に揃えられた陰毛は、薄く直毛だ。その奥には、形の崩れていない、閉じた性器があった。自ら指で開いた更に奥はしっとりと濡れ、ピンク色に輝いている。まるで宝石のようだ。更に下を見れば、かわいらしくすぼんだアナルがあった。
「オーナー…私のオーナー……」
千秋は愛する者の名前を口にする。何もかもを捧げ尽くした奴隷ならではの、幸福感がそこにはあった。
「せっかくいい感じだったんだけどね。これでお預けなんてあんまりだよ。でも、今日は千秋ちゃんの一生の記念日だから、譲ってあげるよ」
そう言うと、珠樹が唇を重ねてくる。それを待ち望んでいたかのように、千秋も夢中で唇を求めた。
「フフフ。すっかり奴隷ぶりが板についてきたようだな。清香、いい娘を見つけてきたな」
「ああン。オーナー。お褒めに預かり光栄ですわ」
清香は感激の余り、その身をくねらせている。
「しかしこれで満室か。ようやく、私のハーレムも完成したと言っていいな」
オーナーは満足げに呟いた。
数年前、怪しげな発明家がやって来た。いくらかの金で、自分の発明品を買ってほしい。そう言っていた。その発明品とは、ある特殊な電磁波を発生させるものだった。『自由に夢を見る事ができる機械』発明家はそう言った。
「夢とは潜在意識の事です。こちらが操作した夢を見せ続ける事で、潜在意識そのものを変える事ができます。そうなれば、こちらの思う通りの思考を持った人間に、作り変える事もたやすい。そう。本人も気づかないうちに」
くだらない遊びのつもりで、その機械を買った。だがその効果が本物だと知ったのは、当時高級クラブのホステスだった清香に使った時だった。愛人にして、マンションに住まわせてはいたが、自分の金が目当てである事は明白だった。何人か、若い男の影もちらついていた。清香の部屋のベッドに機械を取り付けてみた。夢は『性奴隷になる事』。一ヶ月もしないうちに、清香の態度は劇的に変化した。
散々手を焼かされた我が侭が無くなった。それどころか、気味が悪いほど従順になった。若い男の影が消え、純粋な愛情を求めるようになってきた。尽くしている事自体に、幸福を感じているようだった。
「今まで生意気な態度をとってすいませんでした。私、なんて馬鹿な事を……!」
試しに別れを切り出した所、清香は涙を流して土下座までした。今までの自分の行いに、心の底から後悔している様子だった。
「これからは心を入れ替えます!何でもします。どんな事でもおっしゃってください。だから、だからどうか。お傍に置いてください」
清香は最初の奴隷となった。
それからハーレムを作ろうと思い立った。自分の土地に、マンションを建てる。女性専用だ。無論、清香のように容姿が美しくなければ入れたりはしない。ベッドは備え付けの物を用意して、その中に例の機械を設置する。見る夢は『ハーレムの一員になる事』だ。毎晩、このマンションに住む美女達は、ハーレムの一員になる夢を見る。そして心は、少しずつそれを熱望するよう変わっていく。
歴史上の権力者達は、ハーレムを作り大勢の女性をはべらせていた。しかし、その女性達は心から尽くしたわけではない。社会的権力の上に成り立っていた、極めて打算的なものだ。だが、私のハーレムは違う。美女達は、心の底の底から私を愛し、奉仕したいと思っている。これこそが、本当のハーレムだ。
自分を愛し、身も心も捧げる美女達の頭上に、自分は住む。まるで君臨するかのように。好きな時に好きなように、美女達を蹂躙する。彼女達もそれを本心から望んでいる。そう、このマンションこそが現代のハーレム宮殿そのものなのだ。
そして今。また一人の女が、目の前に裸体を晒している。美女というには幼さが残る。美少女だ。一目見て、その清楚な佇まいに心を奪われた。そんな彼女ですら、彼のセックス奴隷になる事を熱望し、処女の奪われる瞬間を心待ちにしている。このまま自分好みに調教し、生来の美しさを磨いていけば、ハーレムの宝とも言えるほどのセックス奴隷となるだろう。
(22)
「そろそろ入れてやるぞ。それ!」
オーナーは己の分身を千秋の性器にあてがうと、一気に腰を沈めた。
「あああああ…!」
痛みよりも、感動の衝撃の方が大きかった。情け容赦無く、己の処女が奪われていく。なんと素晴らしい出来事だろう。
『これで、私は本当に所有物になったのね』
「オーナー……」
かわいらしく顎を突き出し、口付けをねだる。煙草の匂いのする中年男性の唇。なんと甘い事か。その感覚に夢中になっていく。
「フフ。千秋のあそこ、ギチギチに締め付けてくるぞ。いい感じだ」
自分の性器が荒々しい男根で押し広げられていく。その感覚に陶酔する。
『もっと、もっと奴隷の私を犯してください』
ゴボゴボという音がして、二人の接合している部分から出血が見られた。破瓜の血はオーナーの肉棒を染めつつ、己の中に出し入れされていた。その度に、電気にも似た快感が走っていく。男を知らない処女の性器だ。痛くないはずがない。しかしそれでも千秋は、痛みを上回る快感と感動にその身を震わせる。
「ああン。オーナー…。私達も……」
堪らなくなった清香がオーナーに抱きつく。珠季の方は、重なってきた。左手で、乳房を刺激する。
「おめでとう、千秋ちゃん。これであなたも肉奴隷になれたのよ」
「ありがとうございます。珠季さん」
優しくキスで、唇が塞がれる。千秋も珠希の唇を求めた。
「これからは、私の事はお姉さんと呼んで」
「はい、珠季お姉さま……」
再びキスを交わす。まるで重大な契約を交わすように、恭しく。その間も、オーナーは激しく突き入れてくる。
「ああン…ん…んん…いいです!セックスがこんなに気持ちいいなんて」
「どうだ?肉棒の感触は」
「最高。最高ですぅ!」
半狂乱になって千秋は叫んだ。
「ふふ。そうだろう。もうお前は、これ無しでは生きていけないんだぞ」
「はい!はい!!ど、奴隷の千秋は…オーナーの、オチ○チ○無しでは…生きて、いけません!」
「そろそろいくぞ。一番奥の子宮に、たっぷりとかけてやるからな…!」
オーナーの動きが激しくなる。途端に千秋は追い詰められていく。
「あああ!出して、出してください!ど、奴隷の千秋を、中から汚してください!!」
「くっ…!!」
オーナーの体が震えた。下腹部に、何か暖かい感触が広がる。それは、とてもとても幸福な事だった。
『し、幸せ……』
うっとりと目をつぶる。千秋は、生涯感じた事のない幸福感に包まれていた。
(23)
「それでは今週のパーティを開催したいと思います」
ステージに上がった清香は、司会者を気取ってシックな黒いスーツ姿だ。もっとも、意図的に胸と股間はくり貫かれており、肝心な部分は丸見えになっている。少し身動きするだけで、フルフルと乳房が揺れている。股間からはやや濃い目のアンダーヘアが、前方に飛び出していた。ハレンチ極まりない格好だったが、それでも清香は誇らしげに背筋を伸ばして立っていた。
パーティルームに、マンションの住人達が集まっていた。かなり広いパーティルームだが、40人を超える人間がいると狭く感じる。それも、並外れて美しい女達ばかりだ。この世の天国を思わせる光景だった。唯一の男性であるオーナーは、上座でふんぞり返っている。まるで王様の玉座を思わせる、豪勢な椅子に。
女性達は皆、色とりどりに着飾っていたが、全てお揃いのチョーカーを首につけていた。チョーカーには、所有者の名前が彫られている。
前に参加したパーティは、本当のパーティではない。珠季はそう教えてくれた。その日の気分でオーナーは、奴隷達の部屋を訪ねてはその肉体を楽しむ。複数の女性と同時に楽しむ事もあった。
しかしこのパーティの時だけは、所有する雌奴隷たち全員が参加する事になっていた。女性達は、この日が来るのを、指折り数えて楽しみにしているのだそうだ。
「今宵は、新しく皆さんの仲間になった、大沢千秋さんの歓迎会も兼ねています。千秋さん、こちらへ」
促されて、千秋はステージに上がった。高校時代のものだろう、セイラー服を身につけていた。勉学に勤しんだ思い出の詰まった高校時代の制服も、今はオーナーの目を楽しませる為のアクセントにすぎない。
「皆さん、始めまして。新しくオーナーの肉奴隷の一員に加えていただきました、大沢千秋と申します。皆さんをお手本に、一日でも早くド淫乱で可愛い、最低のマゾ奴隷になりたいと思います。どうぞよろしくお願いします」
千秋は可愛らしく頭を下げた。狂った言葉。だが本人は大真面目だ。それどころか、自分の言葉に酔っていた。ぼんやりとした瞳に、上気した頬。明らかに興奮していた。そこに、越してきたばかりの清純な姿はない。成り立てのセックス奴隷が、そこにいた。
そんな千秋の無残な様子に、万雷の拍手が降り注ぐ。狂気じみた熱意を込めて。
「早く淫らなメスになれるといいですわね。さ、オーナーの元へ行きなさい」
千秋はステージを降りると、奥のオーナーの元へ歩いていく。既に室内は、異様な空気に包まれていた。男性はオーナーしかいないのだ。自然、女同士で絡み合い始めた。至る所でキスが交わされ、体が重なっていく。
女達の喘ぎ声が、部屋に満ち始めた。服ははだけられ、胸が露出する。固く勃起した乳首と乳首を擦り合わせつつ、舌を絡め合う。全ての者が快楽に溺れつつ、オーナーの目を意識していた。オーナーを欲情させれば、寵愛をいただけるかもしれない。淫らな行為に拍車がかかった。
そんな淫靡なショーを繰り広げているのは、皆モデルとしても通用する美女達ばかりなのだ。
『ああ…なんていやらしいの…素敵……』
それは、浅ましい肉の宴でしかなかった。しかし魂からメス奴隷に変えられた千秋の目には、それがこの世の楽園にしか映らない。そして今、千秋自身この楽園の住人になったのだ。あまりの幸福感に、泣きそうになる。
「オーナー……」
切ない声で話し掛ける。すでにモジモジと太ももを擦り合わせている。欲情している事は誰の目にも明らかだ。まだ処女を、失ったばかりだというのに。
「うふふ。千秋ちゃん、さ、座って」
珠季が手を取って、オーナーの足元に座らせる。
「千秋ちゃんは、今までに男性のアソコに口で奉仕した事がある?」
千秋は頭を激しく振って否定する。
「そんな事、した事ありません」
「ほう。それじゃ、千秋の口の処女までいただけるのか。そりゃいい」
オーナーは嬉しそうだ。
「いい?お口での奉仕は、奴隷の基本中の基本のたしなみよ。オーナーの一番大事な部分を、お口の中に受け入れて気持ちよくなってもらうの。素敵でしょ」
「はい、珠季お姉さま」
千秋は想像しただけで、うっとりと幸せそうな顔になる。
「さあ、私と一緒にご奉仕しましょう」
二人で、オーナーの股間に顔を寄せる。露出されていたオーナーの分身は、既に固くなっていた。
「んん…」
「チュバ…」
舌を肉棒に這わせる。それだけで、千秋は体が震える程の感動を味わっていた。
『やっぱり。オーナーのここ、おいしい……』
無論、味などない。これは、奴隷として魂で感じる味覚なのだ。
ときおり、珠季の舌と触れ合う。オーナーの肉棒を通して、二人でキスを交わしているかのような、不思議な感覚があった。
「ほら。千秋ちゃん。ここのカリの溝に沿って舐めるのよ」
「はい。お姉さま」
細かく珠季の指示が飛ぶ。千秋は夢中になって、従っていた。
「いいぞ。やはり千秋は、チ○ポしゃぶりの才能があるな」
オーナーは二人の奉仕に身を任せながら、優しく千秋の頭を撫でてくれた。
「ありがとうございます!千秋、うれしいです!もっともっとがんばって、オチ○ポしゃぶりうまくなります!!」
それだけで、有頂天になる。今までの千秋だったら、決して口にしなかった下卑た言葉も、今はすらすらと口をついて出てくるようになっていた。
「それではご褒美に、最初は千秋を犯してやるとするか」
「あン。オーナー。千秋ちゃんばっかりずるいです」
横で、一緒になって奉仕していた珠季が口を尖らせている。
それを見て、オーナーは苦笑する。珠季も去年の今頃は、千秋と同じだった。生来の美貌は自覚せず、スポーツに打ち込む色気もない娘だった。それが今では性交をねだる、どこに出しても恥ずかしくない立派な淫乱奴隷へと成長していた。どんな男でも狂わせるメスの色気を、むんむんと発散していた。
「仕方ないな。まあ珠季も、先輩奴隷としてこれから千秋を仕込んでもらわないといけないからな。よし、ご褒美だ。千秋と横に並びなさい」
「ありがとうございます!オーナー」
嬉々として、珠季が答える。千秋と珠季、二人は服を全て脱ぎ捨てると、四つんばいになって尻を向けた。
「ちゃんと背筋を伸ばして胸を張るのよ。よくオマ○コが見えるように、足を開いて」
二つの性器が、オーナーの前に突き出された。やはり先輩だけあって、珠季の性器の方が少し熟れた感じがする。肉交を欲して、熱く息づいているのは同じだが。
オーナーは立ち上がった。甲斐甲斐しく、清香がオーナーの服を脱がせていく。オーナーは千秋の腰を掴むと、その中へ突き入れていく。処女を失ったばかりのはずなのに、千秋の子宮はすっかりオーナーの男根に馴染んでいた。
「ああン…いい。オーナーの、とってもいいです!」
半狂乱になって歓喜の声を上げた。
「オーナーぁ、私にもぉ」
珠季はいやらしく尻を振って催促する。
「あん…」
千秋の中から、肉棒が引き抜かれる。思わず、不満の声を上げた。今度は、珠季の中に突き入れる。
「ああっいいの…感じちゃう…!」
珠季が声を上げる。その様子を千秋が横目で見ている。羨望と嫉妬の入り混じった目をしていた。
「そ、そんなぁ。オーナー。私に、私にもっと下さい」
尻を振る。千秋と珠季は仲がいい。共に奴隷となると誓ってからは、姉妹、恋人のような親密さだ。しかしそれでもことオーナーの肉棒に関しては、欲望丸出しで浅ましく求め合う。恥も外聞もない、メス犬だ。
「フフフ。いいぞ。今晩の宴は、また始まったばかりだ」
オーナーは高らかに宣言した。
都内の一角にあるマンション。そこでは今晩、ハーレムの美女達の喘ぎ声が、夜を通して響き渡っていた。
(24)
「あ、お母さん?私」
千秋は実家に電話をしていた。ベッドに腰掛けていた。
「うん。今晩御飯食べたところ。…うん、外食は控えめにして、ちゃんと自炊しているよ」
「ねぇ。本当に大丈夫?悩みとかあるんじゃない?この前話した時は、少し様子がおかしかったみたいだけど」
母の声は、やはり心配そうだった。
「うん…ちょっとホームシックになっちゃった。でも、もう大丈夫。このマンションはすごくいい所だし、住んでいる人達もみんないい人ばかりなの」
携帯電話では拾う事ができない、微かなモーター音が室内に響いていた。それは、千秋の股間から聞こえていた。
「それならいいけど……」
そっと左手を股間に伸ばす。愛液に濡れたピンクローターを、自ら敏感な部分に当てる。
「ん…私、うまくやってイケると思うの…ん…だから安心してね」
そう告げる瞳は、愛欲に曇っていた。浮かんでいるのは、愛しい男の裸。
電話を切った千秋は、本格的に快楽を貪ろうとベッドに横になる。
「ああ、オーナー…今夜あたりいらして下さらないかな」
切なそうにため息と共に言うと、愛するオーナーとの情事を妄想しながら、千秋は激しく自分を慰めていた。
< 終わり >