(30) 絶望の取り引き
日は過ぎて、金曜日になった。梨華は銀行から帰ると、何か落ち着きがなく、宅急便が届いていないか母親に尋ねた。しかし、今日は届いていなかった。ホッとしたような、何か物足りないような不思議な気分であった。これ以上、ビデオテープ等が送られても梨華には、それを買う金が無かったので、それで良かったのかもしれない。カバンには、お昼に自分の貯金のほぼ全額にあたる200万円が詰まっていた。明日、鋭次に金を渡す用意をしているのだった。
ついに、土曜日の朝がきた。梨華の運命の日であった。
梨華は、母親に友達と遊びに行ってくると言うと、カバンを持って、鋭次の待つシティホテルに向かった。
コンコン。1919号室のドアがノックされる。
鋭次がドアを開けると、梨華を部屋の中に招き入れた。
「待っていたよ」
鋭次は、梨華をソファに案内した。
「あの。お金を持ってきました」
梨華は、カバンから、200万円を取り出すと、鋭次に渡そうとした。
「ああ。代金ね」
いつもながら、鋭次は、あまりお金に関心がないように、金を受け取った。
「それじゃあ、ビデオテープと写真集を売ってあげよう。そこに破砕機があるから、使ってもいいよ」
鋭次は、そう言うと、梨華は、ビデオテープと写真集を次々と破砕していった。
そして、全てを破砕すると、
「それでは、私はこれで失礼します」
と言って、部屋を出ようとした。そこで、鋭次の”待った”が、かかった。
「ちょっと、待って」
「何ですか?」
梨華は、帰ろうとしている。
「ビデオテープと写真集の数が一つずつ、足りなかったと思わないかい?」
鋭次の問いかけに、梨華は足を止めて、考えてみた。そういえば、それぞれ、10本ずつは、なかったような気がする。
「どういう事ですか!?」
梨華は、騙されたような気がして、強い口調で鋭次に問いつめた。
「昨日の夜、ビデオと写真集を見ていて、俺の家に忘れてきたよ」
鋭次は、とぼけた顔で言った。
「俺の家まで、来てくれるかい?」
鋭次は、梨華に簡単に言った。家に行くというのが、少し抵抗があったが、行かないわけにはいかない。ビデオテープと写真集を返してもらわなければならないからだ。一つずつとはいえ、誰に見せられるか分からないからである。渋々、梨華は、了解した。
「それじゃあ、出発だ。車で、すぐ着くからね」
そう言うと、梨華についてくるように言った。梨華を高級車の助手席に乗せて、車を走らせた。途中で、”1分ほど、目を閉じて。”と言われたので、梨華が言う通りにすると、鋭次にキスをされた。ビックリして、目を開けると、鋭次の目がキラリと妖しく光った。
梨華の目がとろーんとなって、催眠術にかかった。鋭次が一言二言囁いて、キスをすると梨華は、頷いて目を閉じた。
「俺の家に着いたよ」
と、鋭次の声がした。梨華は、本当に1分だったのかどうかは、わからないが、知らない間に、最高級の一戸建て住宅の駐車場に着いた。ここは、一体、どこなのだろう・・・
車から降りると、梨華は家に入るように言われた。まだ、少し抵抗感があったが、仕方なく鋭次と一緒に玄関を入った。
「おかえりなさいませ。ご主人様」
玄関に入ると、召し使いらしい女性が、三つ指をついて、出迎えた。
白いブラウスで、肩の所が、ポコンと丸くなっている可愛いメイド仕様のブラウスを着た女性だ。スカートは、よく見えないが、赤色が主体で黒と白のチェックの模様が入った、まるでどこかの女子高生の制服のようなスカートである。スカートが見えにくいのは、その上に、エプロンをしているからであった。ワンピースタイプのピンクのエプロンである。
肩から腰元にかけては、エプロンのひもでつながっており、上半身のブラウスが良く見えるようになっている。腰から下はスカート状になっている。そして、腰の後ろの所でリボンを蝶々結びに止めてある。なんとも可愛い姿のメイドである。
年齢は二十歳ぐらいだろうか。梨華から見ても、可愛くて、お嬢様育ちの品のいい女性であることは、すぐに分かった。黒い髪は、肩に流れるようになっていて、シャンプーのコマーシャルに出てくるようなツヤであった。また、髪の上には、メイド仕様のフリルの付いた可愛い白いヘアバンドをしていた。 身体の方はというと、服の上からでも、豊満とわかる胸と、キュッと締まったヒップが、男ならほってはおかないだろうという素晴らしいものであった。どうして、こんなに可愛い子が、召し使いをしているのかは、深く考えはしなかったが、鋭次の家に召し使いがいることには、少し驚いた。
「書斎の方に行っている。俺が呼ぶまでは、来ないように」
「わかりました。ご主人様」
「それじゃあ、ついてきて下さい」
鋭次は、梨華に言うと、ベッドのある書斎に連れていった。
「そこにでも、座ってください」
鋭次は、部屋の中ほどにある、丸いテーブルの所のリラックスチェアに座るように言った。
大きめのチェアで、座ると、とてもリラックス出来る。
「えーと、ビデオテープと写真集だったね・・・」
鋭次は、部屋の角にある大きなダブルベッドの枕元から、ビデオテープと写真集を持ってきた。しかし、すぐには、返してくれなかった。
「今から、面白いものを見せてやるよ!!」
鋭次は、そう言うと、書斎の真ん中の大きな本棚に近づいた。そこには、なぜか、カーテンがしてあった。何か、見られると困るものでも入っているのだろうか。
鋭次が、カーテンを左右に開けた。
そこには、梨華にとって、絶望的なものがあった。
それは、ビデオテープのパッケージや写真集の背表紙で何か、分かった。1本目のビデオテープ、2本目のビデオテープ、そして、写真集。本棚の中にぎっしりと、入っている。
「1本目のテープが100本。2本目のテープが100本。写真集が100冊あるよ」
鋭次は、得意げに言った。
「そんなっ!! こんなのって・・・」
梨華が、青ざめた表情になっている。鋭次は、毎回、この表情を見るのが好きである。
「これだけあれば、バラまき甲斐があるよな」
「それだけは・・・許して下さい・・・」
梨華の可愛い顔は、泣きそうになっている。
「そうか。じゃあ、どうする?」
「売って下さい。全部、売って下さい」
「全部で、3000万円になるぞ。そんなお金、無いだろう」
その通りであった。梨華には既に貯金が無く、そんな大金を払う方法は無かった。
考えた末に、次のように言った。
「毎月、10万円づつ、払いますから、それで・・・」
「だめだ!! そんな払い方は、認めないぞ。ビデオテープをバラまくぞ!!」
「あぁ・・・どうすればいいんですか?」
梨華は、仕方なく、鋭次に聞く。
「そうだな。俺の言う条件を飲めば、3000万円は払わなくていい。それに、300本のビデオテープと写真集も破砕してやろう」
「本当ですか?!」
梨華は、夢のような話に少し戸惑った。しかも、条件を聞くのがとても怖かった。
おそるおそる鋭次に聞いてみる。
「どうすればいいんですか? 条件って、いったい・・・」
「なぁに、簡単なことだよ」
鋭次は、すんなりと言った。
「1本目のビデオの最後のセリフを覚えているか?」
「1本目の?・・・はい、覚えています」
「そうか。それは良かった。今から、バスルームに行って、着替えてくるんだ。
そして、ビデオと同じようにするんだ。それが、条件だ」
「あぁ・・・あんな恥ずかしいこと、言わなければならないの・・・それに・・・」
梨華は、絶望的な気持ちであった。それに、そのセリフを言った後、どうなるのか不安でたまらなかった。
「セリフのとおりにすれば、1回につき、5本のビデオテープや写真集を破砕してやろう。 60回で、全部、破砕されるって訳だ。 どうだ? いい条件だろう?」
「本当に、それでいいんですか?」
梨華が、鋭次が、約束を守ってくれるのか、不安になって聞き直す。
「ああ、約束する!!」
鋭次が、力強く答えた。そして、付け加えて言った。
「ただし、1回でも、逆らった場合は、バラまくからな!!」
「わかりました」
梨華には、この条件を飲む以外に方法が無かった。
「それでは、着替えてくるんだ」
「はい」
梨華が、書斎の横にあるバスルームに向かった。
(31) 絶望のセリフ
「着替えてきました」
バスルームから出てきた梨華は、ビデオと同じように着替えてきて、言った。
「よし。着替えや荷物は、そちらの椅子にでも、置いておくように」
鋭次は、そう言って、満足そうに梨華を見た。梨華の姿は、バスタオル一枚であった。
「それでは、ビデオのセリフを言ってもらおうか。そっちにあるベッドに行くんだ」
鋭次は、部屋の角にあるダブルベッドを指さした。梨華は、従順にベッドの方に向かった。
鋭次もベッドの側に行き、梨華にベッドに上がるように、言った。
「じゃあ、まず、セリフの練習をしてもらおうかな。本当にビデオのセリフを覚えている
か確認させてもらう。最後のセリフを言ってごらん」
梨華が、顔を赤めながらセリフを言う。
「はい・・・今日から梨華は、鋭次様のものです。お呼びくだされば、いつでも伺いますので・・・ よろしくお願いします・・・」
「少し違うんだよなぁ」
「間違ってますか?」
「ああ。後のほうがちょっとね」
「どう違うんですか?覚えてません」
「仕方ないな。教えてやろう。最後は、”お好きなだけ可愛がって下さい。”だろ?」
「あっ! そうでした」
「わかったら、もう一度、練習だ。言ってごらん」
「はい。今日から梨華は、鋭次様のものです。お呼びくだされば、いつでも伺いますので、お好きなだけ可愛がって下さい」
梨華が、ビデオの最後のセリフを一挙に読み上げる。
「いいだろう。良く言った。それでは、本番だ。今度は、セリフだけではなく、演技も一緒にしてもらうぞ」
そう言って、鋭次は身に着けているものを脱いでいった。そして、トランクス一枚の姿になると、梨華の座っているベッドに上がった。
「さあ、ビデオと同じようにするんだ。”可愛い梨華ちゃん人形”」
鋭次が言うと、梨華の目がとろーんとなり、催眠奴隷の状態になり始めた。
梨華は、鋭次のほうを向き、演技を始めた。
「鋭次様。今日から梨華は、鋭次様のものです。お呼びくだされば、いつでも伺いますので、お好きなだけ可愛がって下さい」
ついに、屈辱のセリフを言ってしまった。続いて、鋭次に抱きつくと、ビデオと同じように梨華が身に着けているバスタオルが、ハラリと落ちた。
梨華は、動けなくなっていた。ビデオの弱みを握られているとはいえ、裸の鋭次に抱き付き、絶望的なセリフを言ってしまった。
「よしよし、良く出来た!! これで、”可愛い梨華ちゃん人形”は、今日から60回、俺のものになる訳だ。たっぷりと可愛がってやるからな。よろしくな!!」
そのように鋭次に言われて、目を見つめられると、梨華の目はとろーんとなった。
梨華の思考能力がどんどん、”鋭次に可愛がられるしかない。”という気持ちになっていくのであった。
鋭次が梨華から離れた。そして、書斎の机にあるものを持ってきた。
「これを、梨華にあげよう」
そう言って、渡したものは、カード型の携帯端末であった。携帯端末と言っても、大きなものではなく、薄いカード型のシンプルな作りになっている。携帯電話のカード型だと、思ってもらえばいいだろう。この携帯端末は、電話をする為のものでは無く、主に、メール機能を利用するように作られている。携帯電話やパソコンからのメールを送受信出来るようになっている。
鋭次は、これを梨華に持たせる事にした。
このカード型携帯端末は、メールを受けた時に、ベル音の代わりに、バイブレーション機能もあるのである。
例えば、鋭次が、携帯電話より、
”シティホテル1919号室に来い。鋭次。”
というように、メールを送信した場合、
梨華に持たせてあるカード型携帯端末が、薄いながらも、ブィーンブィーンと振動が伝わるのである。ベル音を鳴らさないように設定しておくと、他人に気づかれずに、メールにて指示を与える事が出来るのである。
梨華が、見たことのないカード型端末に、質問をする。
「これは・・・何なんですか?」
「これは、カード型の携帯端末だよ。メールの送受信が出来るんだよ」
「カード型・・・端末ですか?」
「そうだ。今日から、梨華は、この携帯端末を、いつも持っておくのだ。
そして、メールの指示に従うようにするのだ。わかったな?」
鋭次が、宣言するように、梨華に言い放つ。梨華は渋々、返事をした。
「はい・・・」
「これで呼び出して、たくさん可愛がってやるからな」
「はい・・・」
梨華は、惨めであった。しかし、もうどうしようもないのであった。
「さあ。それじゃあ、記念すべき、1回目の呼び出しをしてやろう!!」
鋭次は、そう言うと、梨華に椅子で休むように言った。先ほどのリラックスチェアだ。
鋭次は、部屋の角にあるダブルベッドで携帯電話から、メールを送信した。
ブィーンブィーンと、梨華の持つ携帯端末が振動する。携帯端末を見ると、そこには、メッセージが表示されていた。”書斎のダブルベッドに来い。鋭次。”
梨華は椅子から立ち上がり、鋭次の待つベッドに進んだ。
「鋭次様。お呼びでしょうか」
「やあ、よく来たね」
鋭次が白々しく言う。
「呼び出されたら、どうなるのか、わかっているな?」
「はい・・・」
「好きなだけ、可愛がれるんだよな?」
「はい、鋭次様」
「記念すべき、1回目の呼び出しだ。それでは、たっぷりと可愛がってやろう!!」
「ああ・・・」
梨華の絶望の声が響いた。
「誰が、バスタオルを着けていいと言った?!」
激しく言い、バスタオルを剥ぎ取り、ベッドの脇に捨てた。椅子で休むように言われた時に、梨華はバスタオルを着けていた。
「ベッドに上がるんだ」
梨華に命令し、梨華がベッドに上がると、すぐに鋭次の愛撫が始まった。
< つづく >