とある男の不幸で幸福な人生 プロローグ

プロローグ

「はあ~…」
とある森の中で、大きなため息が一つ聞こえてきた。

一体如何すれば良いってんだ、俺はよお…

その森の奥で、男が自分に抱きついている美麗な女性を気にしながら悩んでいた。
金髪で一般的には上の中といった顔立ちの男は、また「はあ~…」とため息をついた。
男は剣を背負い、簡素な鎧を付けている。
女性の方はズタボロになった服を着ている…よく見ると、体にはねっとりとした精液がついている。

名を「キーツ・グローレン」と言うその男は、そこで長いこと悩んでいた。
…一体何を彼は悩んでいるのか?
それを説明するには、まず彼の身に起こった事を説明しなければいけない。

彼がいるこの世界は、所謂ファンタジーな世界。剣と魔法の世界と言う奴だ。
王国だってある。町だってある。更に魔物だっているし、それを統べる魔王だっている。
更に更に、女性だが勇者だっている。ドラク○みたいな世界だ。

彼は、その世界に生きる剣士だ。
腕は良いが、女好きで、何時もそれで失敗している。
ついでに、性格は能天気。

そんな彼が、何故この様に悩んでいるのか?
それは、三時間ほど前の話…。

彼は町のギルドから緊急依頼を受け町の外へ向かった。
その依頼とは、「急に暴れ出した森の魔物達を如何にかしてくれ」と言う物だった。
一応腕の立つ彼がギルドからその森に派遣された。と言う訳だ。

「やれやれ。何でこんな時に任務なんて来るんだよ…久しい休暇だったってのに。
もうちょっとであの子、落とせたんだがなあ…ブツブツ…」

…どうも、ナンパの最中に呼び出されたらしい。

(にしても、薄気味悪いな…この森)

 その薄気味悪さの原因は一般的に『淫気』と呼ばれる物のせいなのだが、
そんな事は彼が知る由も無かった。

「…ァァ……ァ…」
(しかも…たまに聞こえてくるこの声)

いったん立ち止まり、顎に手をかけながら思考に入る。

(明らかに木擦れの音じゃないし、魔物の声でもない。人間の叫び声に聞こえないでもない)

うっそうとした森の木々の方に目を向ける。その方向から
声は途切れることなく響いている。

…ガサッ

それから暫く経った時、近くの茂みから音がした。

(…やれやれ、おいでなすった、か)

剣を抜きながら音のした方に目を向け、
「誰だ?」
とそこにいるはずの何かに問いかけた。だが、反応が無い。

「…?」

仕方なくガサゴソと茂みを掻き分けてみる。

「…ぅ…」

そこにいたのは、裸の女性だった。その後ろには、這って来た後がある。
それはグレーターデーモンと呼ばれる高位魔族だった。一見、只の人間に見える。
だが、実際はこの世界に古くから生きている闇の種族だ。
…しかも、世界で三本指に入るほど強力な種族。

だが、目の前にいるそれは、ズタボロにされていた。
先ほどまで犯されていたのだろうか?白濁した液が皮膚にこびり付き、
その目は何処か、虚ろだ。

(そう言えば、声が聞こえ無くなってんなぁ…)

こいつの喘ぎ声だったのか?と思いながら更に彼は考える。

(もし、そうだとして、それなら―――)

こいつを犯した奴は、とんでもねぇぞ。俺が勝てるかどうかって位、強い筈。
グレーターデーモンを犯せる奴何ざ、聞いた事ねぇ。
しかも、コイツがここにいるって事は、そいつはそのうち俺の方に来る。
…逃げたほうがいい、か?

それを実行しようと後ろを向いた、その時
「…た…ぁ…」
グレーターデーモンが虚ろな表情のまま、何かを言おうとした。
思わずキーツは立ち止まり、次の言葉を待ってしまう。

「助…け…て。助けて…」
うわ言の様にそれしか言わない。意識が朦朧としているようだ。
「助けて…」
やがて、つつ…と彼女の目から涙が一筋流れる。

「…やれ、やれ…(助けてもらいたいのは、俺だってば)」

あー…畜生!何で俺は女に弱いかな!

「ほら、しっかりしな」

「…ぅう…あ、貴方は…?」

「んなの、どうでもいいだろ。それより走れるか?」

「…はい…」

「そうかい、じゃ、走るぞっ!もうそこまで来てらぁ!」

キーツが指した先には既にもう、緑色の肌をした何かが4匹程迫っていた。

ギィィィィッ!
叫び声を上げながらそれは突進してくるそれは、ゴブリンだった。
小鬼の一種で、一般的な奴は強くは無い。

「(おいおい、ゴブリン如きに高位魔族が犯されたってか、よっぽど弱いのか。コイツ)」

アレくらいの奴らなら殺れるか。
そう思い、逃げるのを止めて剣を構える。すると…

バチィ!

「のわっとぉ!?」

赤い閃光がゴブリンの手から放たれ、キーツ目掛けて飛んで来た。
間一髪、キーツはそれを避け、同時に思考し始める。

「(オイオイオイ、知能が低いゴブリンが何でまた『魅了』なんて使えるんだよ…)」

『魅了』とは呪文の一種。この呪文は、当たった者を無理矢理発情させると言う
とんでもない呪文だ。
だが、人並みの知能と高い魔力を備えて無ければ唱えられないはずだが…?

「(冗談じゃない、女でもないのに犯されるのは御免だ…ま、なんにせよ)」

キーツは呪文が途切れた瞬間、大きく前に踏み込み、
ゴブリン達の目の前まで距離を詰める。

「サッサと殺って、『吸収』しちゃいますか!」

ザキュッ!

剣を一振りし、一気にゴブリン達の半数を真っ二つにする。その後、
ドスッ!
剣を前にいたゴブリンの前に突き出し、串刺しにする。

「後、一匹…言い残す事は有るかい?ゴブリン君」

「グ…オ、オボエテイロ…イズレ…アノカタガ…ヨミガエル…」

「(…話した、だと?呪文を唱えたり、話したり。知能が低いはずなのに…一体)」

何が起こってんだよ…それに、あの方ってのは…?

「ソレガ…ニンゲンノ…サイゴ…!」

「…御高説どーも。じゃ、そろそろ、お別れの時間だぜ」

グシュッ!
嫌な音をたて、脳天からゴブリンが真っ二つになる。

「…はい、『吸収』っと。」

シュルルルッ!

キーツがそう言うと、ゴブリンから光の筋が出て、キーツがそれを吸収した。。
これは呪文の一種、『ドレイン』つまり、吸収。
使うと、相手の脳髄から特定の知識を吸い取ったり、体力を奪ったり出来る優れもの。
ただ、意識があると無効だが。

さて…と。後、どうすっかな。この子。
落ち着いた所で、先ほどのデーモンを振り返る。暗い表情だ。

デーモンを一瞥した後、視線を彼女から外し、また考え込もうとした、その時!

がしっ♪

「…へ?」

「有難う御座います~☆」

…説明しよう!
さっき出てきたグレーターデーモンがくっ付いて来たのだ。
ついでに言うと胸がぴったりキーツの背中にくっ付いていて羨ましい状況だ!

「い、いや、さっきまでの落ち込んだ雰囲気は如何したんだアンタ!」
 背中から感じるふくよかな感触に赤面しながらデーモンに突っ込みを入れるキーツ。
何と言うか、情けない構図である。

「それは…」

「それは?」

「演技です(きっぱり♪)」
そりゃもう清々するほどそう言い放つデーモン。

「きっぱり言うなァァーッ!」

「隠したってしょうがないですもの」

「むしろ隠せや!」

「いいじゃないですか、ご主人様ぁ」
 この言葉でキーツは麻痺した。

驚愕、ギルド戦士キーツ・グローレンに特殊性癖!
本日午後三時、キーツ氏に特殊な性癖があることが発覚した。
本人はこれを否定している。
友人A「そんな感じはしてたんです…」

って、現実逃避は止めろ、俺。

「アノ、キミ、ドウシテオレガゴシュジンサマニナルノカナ」
つい、台詞が棒読みになってしまう。

「助けてもらったからですよ、勿論」

「…」

はあ~…
一体如何すれば良いってんだ、俺はよお…

これからギルドに…なんて報告しよう…
これからを考えると、正直キーツは胃が痛くなる思いであった。

まだ、彼は自分の運命を知らない。

後書き

ええと、始めまして。おっどじょぶと言います。
これからお世話になります。

…御免、エロは今回、抜きです。しかもよく解んなくって御免なさい。
ど、読者の皆様、御免なさい。あ、石を投げるのは止めて~!

だけど、次回あたりキーツ君に授けた魅了呪文で大暴れさせます。
ごめん、ホンット御免なさい。

感想、アドバイス、その他色々よければメールで送ってください。
よろしければ次回も読んでね。おっどじょぶでした。

< つづく >

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