つい・すと 3日目・午後1

3日目・午後1 会話

 何とかコテージにたどり着き、俺達は建物内に入った。荷物はあまり濡れておらず、大惨事は免れた。直後、建物を豪雨が襲うのが聞こえる。本当に間一髪だった。
 その時、下半身に異変を感じた。
「あっ?」
 見ると、トランクスがずり下がっていた。ケツが見えそうになっている。慌ててトランクスを持ち上げた。走ったせいで、腰紐が緩んだのだろうか。
 しかし、そうではなかった。正しい答えは、千晶が教えてくれた。
「…………俊ちゃん、腰、細くなってない……?」
「えっ………………マジか……」
 そう言われ、後ろ向きに見下ろしてみれば、確かに腰からケツのラインが今朝より目立っているような気がする。そしてよく見れば、ケツの部分はむしろ少しきつくなっていた。
「まだ変化してるのか……」
「そうですね。……お帰りなさいませ」
 俺のつぶやきに答えたのは、奥から出てきたミリアだった。
「早速ですが、今回の雨はかなり長引きそうですので、まずシャワーを浴びてこられたら如何でしょうか。ただ、申し訳ないのですがモニターの都合上、シャワー後は今お着けになっている水着『のみ』着用のままでいていただけますか。ダイニングは裸足のままでいいですので」

 それぞれの部屋でシャワーを浴びて、俺達はダイニングに戻ってきた。
「ミリアちゃん、今朝クーラーボックスに入ってた道具って、溶けたの?」「はい」
 マコトの質問に、ミリアは即答した。俺達がシャワーのために水着を脱いだとき、俺達の股間に物体はなかった。代わりに、俺の太ももには青紫色のかけらがくっついていた。
「あれ、何?」
「ええ、皆様がお付けになっていたのは振動機能のついた錠剤です。お客様の状態に応じて、いくつかの薬を混ぜ合わせてありました。白い成分は皆様に含まれていて、女性器を敏感にし、吐蜜しやすくして、快楽の許容量を大幅に引き上げる薬です。赤い成分は俊一様と真琴様に配合され、女性器を成熟させ、柔らかくする薬です。そして俊一様には、さらに青色の薬を併せてありました」
「ふぅん」
 確かに俺のは、青紫色だったな。
「紫の薬は、処女膜を極限まで柔らかく、伸縮性のあるものにする薬です。今の俊一様には処女膜がありますが、男性器のようなサイズのものを挿入しない限り、処女膜が破れなくなりましたので、指を入れても誤って処女膜を破る心配が要らなくなっています」
 ……それは、喜んで良いのだろうか。俺は女として生きてきた訳じゃないので、よく分からない。
「真琴様の方には、もう少し色の薄い青色の薬を混ぜてありました。これは、身体の発情を適切に精神に伝える薬です。簡単に言うと、精神が発情しやすくなります。」
「……そうなんだ……」
「なお、薬剤の効果は、ものによって違いはありますが、どれも一時的なものですので、ご安心ください。チェックアウトまでは保ちませんので」

 俺達はダイニングでクーラーボックスを開け、浜辺で食べるはずだった昼食をとることにした。食べ終わった頃にはさすがに当初の豪雨ではなくなっていたが、まだ止みそうではなかった。シャワーは浴びていたが水着は湿っているので、ミリアがビーチチェアを四つ出してくれた。高さはダイニングの椅子と同じくらいなので、それと入れ替える。
 ミリアは俺達が昼食を食べ終わった後、「ダイニングは自由にお使い下さい」と言い残して、クーラーボックスを持って別棟に下がっていった。

「どうしようね」
 室内用のサングラスをかけ、おっぱいをさらしたままのマコトが、俺の正面の椅子に座ってつぶやいた。――その言葉と同時に、スマホが鳴った。
 各自、スマホを取り出す。

『お疲れ様です。
 天気が回復するまで時間がかかる見込みですので、それまでの間、お客様におかれましては、猥談をお楽しみ下さい。
 包み隠さず、積極的に会話にご参加願います。』

 顔を上げる。理由がよく分からないが、なぜか、自分の頬が火照っていた。
 マコトと目が合う。
「マコトはセックスする時って、いつもあんな感じなのか?」
 どうしても聞きたいと思っていたことが、突然口をついた。サングラスをかけたマコトの顔が、一気に真っ赤になった。
「何聞くんだよ、お前!」
 大きな声を出すマコト。だが、その声には拒絶の色はなかった。
 俺の脳裏にあったのはもちろん、昨夜見たマコトと叶のセックスだ。マコトは、叶を「ご主人様」と呼んで、叶に完全に服従していた。
「……いつもじゃない、たまに」
「そうですね、たまにです」
 隣に座っていた叶も、目を逸らしながら答える。
「マコト、ああいうの好きなのか?」
 思わずたたみかける。ぶっちゃけ、すごく興味があった。半分くらいは怖いもの見たさ、もとい怖いもの聞きたさだったが。
「……………………別に、そういうわけじゃないんだ。…………ただ、」
 マコトが一呼吸置いた。昨日の朝と同じか、それ以上に顔が赤くなっている。本気で恥ずかしいらしい。
「たまに、叶になじられると、身体が熱く……なりすぎることがある」
 マコトがぽつぽつと、言葉を並べていく。
「いつもじゃないんだけどね。叶にカッコつけると、あとでそうなっちゃうことが多くて」
「あら、真琴さん気づいてたんですね」
 しれっと、叶が答えた。
 そういや、昨日はビーチバレーで、マコトが叶を間一髪でボールから守ってたな。ああいうのが引き金なのか。
「変だってわかってるんだ。でも、せっかくカッコつけたのに踏みにじられて、惨めな気分になると、止められなくなって。身体も頭もバカになるんだ」
 ……うわぁ。
 俺だけでなく、隣の千晶も退いている。あんなに精悍なマコトが、そんな性嗜好を持っているとは。
「これでも、性欲は少ないから普通なんだぞ、二人遊びするの自体、二週間に一回すれば多い方だし。……性欲が多かったら、変態だけど」
 あまり言い訳になっていない言い訳を展開するマコト。性欲が少なくても変態は変態だと思うのだが、そこは突っ込んではいけないんだろう。
「…………それって、前からなの?」
 その質問は千晶からだった。まだ退き気味だが、興味はあるらしい。
 マコトは首を縦に振った。
「割と……最初の頃から。……聞いてくれる?」
 今度は逆に、マコトからしおらしく言われてしまう。おい、これ俺の知ってるマコトじゃねえぞ。
「僕、処女はナンパされて無くしたんだ。中学生の最後に」
 えっ、と、周りの三人が息を呑む。叶も知らなかったようだ。
「サナエさん、っていう人だったんだけど。三月の頭くらいに、ちょっとしたことで意気投合して。その人が初めてだったんだ、卒業式の日に」
 全く知らなかった。マコトはもっとちゃんと手順を踏むタイプだと思っていたので、少しショックだった。
「その人とは三回か四回くらい、二人遊びしたんだけど。……最後の一回をする前に、別のナンパ男に捕まって、僕がサナエさんをガードしたんだ。でもそれが何か気に障ったみたいで、その後の二人遊びで、サナエさんがものすごく僕を責めてきて」
 また一呼吸ついて、下を向きながら、マコトは言葉を紡ぐ。マコトの乳首が、固く大きくなっていくのが見えた。
「……その時の二人遊びで、初めてイッたんだ。サナエさんはその日で音信不通になっちゃったんだけど、それでクセになっちゃったのかもしれない」
「その快感が忘れられなくて男装するようになったんですよね? 落差が欲しくて」
「マジ!?」
 叶のそれは……爆弾発言だ。
「いくらなんでもそりゃねじ曲げすぎだ、叶! ……ほんのちょっと、そんなことも考えてたってだけだよ。全然別の理由だから! 本当だからなシュン! ちー!」
「あはは、冗談ですよ、冗談」
 マコトのその言葉は、普段は見せない本気の否定だった。叶も悪びれなく笑っている。だから、マコトの言葉は信じられた。……だけど、ほんのちょっとは考えた、というのは、知ってはいけない真実だった気がする。

「そういう叶は、初めてはいつだ?」
 一通りわめいて落ち着いたマコトは、切り返すように叶に話を振った。
「私ですか? 中二の時です。クラスメイトの女の子と。処女膜を破ったのはもっと後ですが」
「じゃあ、叶が一番早くて、僕が一番遅いんだな。シュンとちーは中三の夏前だろ? 告白してすぐ」
 当然のように、俺達の脱童貞・処女はマコトに把握されていた。俺からしゃべってはないはずだが、付き合い始めた時期や状況証拠で分かってしまうだろうから、ごまかしても仕方が無い。
「みんな中学生なんだ、そう思うと早いですね。そういえば、中学生の頃の性交はどうだったんですか? 千晶さん」
「えっ」
「あ、それ興味ある」
 キラーパスを真に受けた千晶の表情と、野次馬根性を発揮したマコトの表情が交錯する。
「どうって…………うーん……激しかったかな、今より。最初は俊ちゃん、すごく強引だったし」
「う……その節は申し訳ない」
 いきなり千晶に非難の目を向けられて、俺は恐縮した。そうか。千晶の経験は俺の経験でもあるもんな。悠長に構えている場合じゃなかった。
「やっぱり男ね、俊一君。最近は?」
「今はちゃんと、気を遣ってくれるよ。……あたしが慣れたっていうのもあるけど」
「ふぅん、すっかり開発されちゃったんですねえ」
 見た目楽しそうな叶の発言に、そこはかとないトゲを感じた。なぜだ。
「気持ちよくなったのって、いつくらいから?」
「いつって………………二、三週間くらい、かな……初めてから」
 千晶は完全に下を向いて、それでもちゃんと質問に答える。
「初イキはいつですか?」
「イキ……イッたのは、半年くらい後」
「ちょっと長めでしたね。イケないままよりは良いですけど。千晶さん、俊一君との性交、今と中学生の時と、どっちのが好きですか?」
 千晶が顔を真っ赤にする。しかし、小さな声ながら、はっきりと答えた。
「…………どっちも」
 その答えに、俺の顔まで赤くなる。
「…………俊ちゃんに触られてると……どんどんエッチになるの。……激しくても、優しくても、気持ちいいの」
「……ごちそうさまです」
 呆れたような叶を後目に、はぁっ、と熱い息を漏らして、千晶が身体を震わせる。セックスの快楽を反芻しているのだろうか、千晶の乳首が勃ち上がっているのが、ビキニ越しに分かった。
 それに気づいた俺の身体も、熱くなってきて――
「そういうお前らは、セックス好きじゃないのか?」
 マコト達に話を押し返した。にんまりと野次馬していたマコトが、また少し恥ずかしそうにする。
「うーん……嫌いじゃないけど、正直僕は、しなくてもいい」
「私はどっちかというと、したいですね。好きかと言えば……まあ好きですか、どちらかと言えばですけど。お二人は、性交大好きなんですよね」
「大好きって……」
 千晶が口ごもる。
「ああ、俺は大好きだ、千晶とするのが」
 俺がはっきりと答えた。千晶も九分九厘同様の答えだと思うが、男としてその質問を千晶に答えさせるわけにはいかない。
「んもぅ!」
 案の定、千晶が俺を責めて、話の矛先がそれた。
「……あたしも大好き」
 と思ったら、意外なほどはっきりと、千晶も宣言した。千晶だけでなく、俺の顔もまたもや真っ赤になる。
「へぇ……」
 マコトが口先で応じるが、こちらも意外という表情だ。その横で、叶はうんざりしたように口を開けていた。お腹いっぱい、と顔に書いてある。なら最初から聞くなよ。
「逆に聞くけど、マコトは本当にしなくても平気なのか?」
「ああ、うん。僕は、精神的に繋がってるって分かれば、それで満足なんだ。二人遊びはおまけだと思ってる」
「それほど気持ちよくないのか?」
「いや……そういうわけじゃないけど…………でも、精神的な気持ちよさの方が、僕は好き」
 マコトの言っていることが体感的によく分からないのは、俺が男だからなのだろう。そういえば昨夜も、身体と心は別、みたいな話をしていたな、マコト。
「私は、そんな真琴さんが、肉体的な快感に耐えられなくなるのを見るのも好きです」
「ちょっ」
「あ、ひどーい!」
 マコトは言葉に詰まり、千晶は笑いながら茶々を入れた。確かにそれは「いい趣味」だ。叶はサドなんだな、想像通り。
「カナちゃん、マコちゃんはどういうときに耐えられなくなるの?」
「おい、ちー!」
「えー……と、一番すごかったのが、双頭バイブ使ったときです」
「あ、やっぱりそういうの使うのか」
「使わないカップルも多いんですけど、私達はたまに。真琴さん、もうメチャクチャになりますよ」
「お願いだからやめてくれよー!」
 マコトがテーブルに突っ伏した。よっぽど恥ずかしいらしい。……当たり前か。
「でも、普段は道具じゃなくて、ああいう風に指ですることが多いです。十分満足ですし」
「そういやさ、……失礼だったらごめん。レズって、俺は『貝あわせ』っていうの聞いたことあるんだけど、するもんなの?」
 俺が聞いた途端、叶は苦笑した。
「するカップルも割といるみたいですけど、あれは、……うまく説明できないんですけど、お互いの『身体の形』が合わないと気持ちよくならないんです。私と真琴さんは、その……恥骨が低すぎて。どちらかが高ければ、うまくいきそうなんですけど」
 叶が残念そうに言葉を継いだ。マコトがむっくりと起き上がって、ジト目で叶を見る。
「っていうか叶って、性欲強いよね、本当。道具も貝あわせも、叶が言うよりレアだよ、絶対。僕、どっちも叶からしかされたことないもん」

 そう言われた叶は、形勢不利と判断したのか、急に話を変えた。
「そういえば俊一君は、昨夜は千晶さんとお楽しみでしたか?」
「っ!」
 言われてみれば……それは今の俺が、一番聞かれたくないことだった。一瞬、反応できない。しかし、それこそが完全に答えだった。
「どうだった?」
 マコトがかさにかかって突っ込んでくる。この野郎、自分から矛先がそれたのをいいことに。
「どうって……」
「気持ちよかった?」
「そりゃあ、まあ」
「男の子の時と比べて、どう?」
「う~ん…………」
 悩む。というより、男としての尊厳が、答えることを躊躇させた。
 しかし、
「俊ちゃん、男の子の時よりずっと気持ちいいって言ってたよね?」
 千晶がその躊躇を勝手にぶち破った。
「そんなこと言ってない! 全然違うってだけだ!」
「それ絶対、気持ちいいってことですよね」
「それは! ………………」
 叶の突っ込みに、ぐうの音も出なかった。
「気持ちよかったんだね? シュン。イッた?」
「……はい」
「へぇ、イッたんですね……」
 軽く心を折られた感覚と共に、白状する。
 その言葉と一緒に、昨夜の、そしてさっきの快楽が、脳裏によみがえってきた。マンコが熱くなるのを感じる。
「……っ!」
 水着のトランクスの上から、思わずそこを軽く押さえた。水着が擦れる感覚で、濡れているのが分かった。下を向くと、俺の女乳首も完全に勃起している。
 そして、自分の中にある「女の性欲」を自覚した。身体が、ムズムズすることに気づく。もっと熱くなりたい。もっと快楽を感じたい。身体からの声なき声が聞こえるような気さえする。とはいえ、男の時と違って、その声なき声が主を無視して暴走する様子はない。やはり「出すものがない」という違いは大きいようだ。
 その代わりに、俺は男のはずなのに――という戸惑いが頭をよぎる。昨夜はそんなことは思わなかったが、それは女の「お試し」という感覚が勝り、深く考える余裕も、その気なかったからだと思う。今は不安にも似たそれがより大きくのしかかってきていた。なまじっか頭を整理する時間があったから、というのもあるし、あるいは……さっき、暴力的な女の快楽に翻弄されたからかもしれない。

「どこまでしたんです?」
「……千晶に、オナニーの仕方を教えてもらった、かな。実演つきで」
「俊ちゃんっ!」
 千晶が噛みついてきた。何言ってるの! という呆れを含んだ表情だった。だが、もうこの流れで、中途半端にはぐらかしても仕方がない。
「まあまあ。で、どうだった? 男の子の時とどう違う?」
 マコトが千晶をなだめつつ、さらに踏み込んでくる。
「……男の時はさ、とにかくチンコから精液出したくてたまらなくなるんだよ。でも、女ってそうじゃないからさ。全身から何とか性欲発散させたい、って感じする」
「あっ、分かります、その感じ」
 意外にも同調したのは叶だった。
「私ももやもやすると、燃料みたいにちゃんと燃やしきらないとすっきりしないです」
「そうなんだ」
 マコトの方が、感心したようにうなずく。いやお前、女だろ。
「でも、初めてでイクのって、難しいんですよ。私も二ヶ月かかりましたし……俊一君は男の人だったからなんですかね」
「……さぁ……?」
 答えようがないので、話題を逸らすことにした。
「ところで、感心するってことは、マコトは叶と感覚違うのか?」
「あ、うん。僕はもやもやしたままにしてると、いつの間にか消えちゃうんだ」
「もやもやはするんか?」
「それはするね。生理前とか」
「今は? 乳首勃ってるけど。……まあ、みんなだけど」
 割と自爆覚悟で、突っ込んだ。マコトも俺も、さっきから乳首は勃起したままだった。そして――千晶も、そして叶も、固くなった乳首がビキニを押し上げているのがはっきりとわかる。
「……うん、もやもやする。さっきから思ってた」
 マコトのその言葉に思わず、叶と千晶がうなずいていた。二人も同じらしい。
「でもそうすっと、マコトはオナニーはしないのか?」
「うん、僕、ほっとんどしない。叶は?」
 いきなり、マコトは叶に話を振った。
「私は、……たまに。千晶さんは?」
「……あたしも、たまにだけど」
 もう、誰も答えを拒む空気ではなかった。みんなが会話に没頭して、普通ならあり得ないような質問や答えが、ほとんど躊躇なく飛び交っている。みんなが空気というアルコールに酔って、頭のネジがいくつか飛んでるような感じだ。俺を含めて。
 俺は、どうしても聞きたい質問を、一つ見つけた。だけど、それをマコトや叶にぶつけるのはさすがに怖くて、千晶にぶつけることにした。
「千晶、普段はどうやってオナってるんだ?」
「へぇっ!?」
 千晶が変な声を上げて、俺を見た。聞いてみて気づいたが、俺は意外にも千晶のオナニーをほとんど知らない。
「あ、私興味あります、それ」
 叶が即座に、俺の質問に乗っかった。
「千晶さん、結構激しい自慰しそう」
「そんな……」
 といって、真っ赤な顔で下を向く。……あー、これは……激しいんだな、千晶。
「あたしは…………おっぱいと、アソコを、触るだけ……」
「アソコには指入れるんですか?」
「え……うん」
「陰核はしないんですか?」
「お豆も……一緒にするかな」
「一緒にって、激しいじゃないですか」
 叶から鋭い突っ込みが入った。仰る通りだ。千晶はおでこを机にぶつけんばかりに、下を向いた。
 クリと、マンコを一緒にか……もしかして、それに乳首とかも一緒にするのか? 普段のエロさからすると「いかにも」だけど、改めて想像すると興奮してきてしまう。
「そういう叶はどうなんだよ」
 それを聞いたのは、俺ではなくマコトだった。
「……私はひたすら乳房をいじめますね。下半身はほとんど触らないです」「それってイケるの?」
 思わず聞いてしまった。
「イカないです。イカなくても満足できますから」
 一瞬「まずいことを聞いた」と思ったが、叶は普通に答えてきた。
「あたしは、イカないとダメだな……」
 千晶が下を向いたままつぶやいた。
 おっぱいをひたすら揉む叶が頭に浮かび、俺は叶から目を逸らした。その想像はいろいろ危ない。
 逃げるようにして、俺は次の言葉を口に出した。
「マコトは、するときはどんな感じなんだ?」
「僕? 僕は……」
 ごまかす風でもなく、遠くを見る。どうやら、本当に記憶の彼方らしい。
「……僕は性感帯だけじゃなくて、全身を撫でるんだ。なかなか火がつかないから。で、火がついたら続けるし、つかなかったら止める」
「上と下、どっち派ですか?」
「いや、どっち派ってほどしてないね。僕本当に、性欲少ないんだよ」
「その割には昨日と今日と盛ってるよな。俺も他人(ヒト)のこと言えないけど」
「……そうだね……はぁ」
 マコトは溜息をついた。
「このホテル来てから、エロいこと増えてないか?」
 俺が何気なく言ったそれは、よく考えると重要なことだと気づいた。
「そうだね。今朝のなんか、完全なエロアトラクションだ」
 マコトが応じた。ただ、その表情に浮かぶ感情は、決してネガティブなものではない。
「……ミリアさん、私達を『これ』で洗脳してるって、言ってました」
 頭上のバラを指さしながら、叶が言う。その言葉が、きっと答えだった。俺達はきっと、エロいアトラクションを受け入れるように、洗脳されているのだ。

「正直、さ」
 思うところがあり、俺は意を決して、切り出した。

「この花に頭いじくられるの、すごく気持ちよくないか?」

< つづく >

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