-プロローグ-
俺、御堂誠二は恵まれている。中の上の財力を持つ両親に、八畳の自分の部屋。健康的な肉体に、そこそこに整った顔。両親が離婚して、父親に引き取られ、何年か前にその父が再婚したが、おかげで、美人で巨乳の姉と微乳だが美少女な妹、さらには義母の腹の中には、俺のまだ見ぬ妹か弟が(お熱いこって)できた。家庭以外でも、幼馴染に同じ中学出身のクラスメイトの双子にと、美少女な知り合いは多い。
だからといって、彼女らは無条件に俺が好きと言う訳ではない。それではギャルゲーの主人公だ。だがまあ内一人なら、それは俺の努力と心がけ次第だろう・・・姉貴と妹は問題あるが。
しかし、何故かその努力も心がけも払う気になれない。俺は健康的な男子高校生で、むしろそっちの方面には、ベッドの下には入りきらなくなりつつある程、関心があると言うのに。・・・何か足りないピースを待っている。そんな気がした。
そして今日もその何かを待ちつつ、パソコンを起動させた。メールをチェックしてみると、一通届いている。『裏能力開発センターより』
なんとも怪しげなメールだが、俺がよく行くサイトの管理人からだ。自称超能力者の卵達集まり、超能力の開化を目指すという設定の掲示板メインのサイトだ。そう言えば、先月君には見所があると言っていたが・・・ここの管理人さん、マジで電波系なのか。
メールを開いてみると、おめでとうと言うメッセージと、ホームページアドレスとパスワーとIDらしき数字。
そのアドレスのホームページに行き、パスワードとIDを入れてみると、妙なページに入った。『真・能力者ルーム』とカラフルな大文字が踊っている。
・・・なんだ? と思いながらとりあえずチャットのコンテンツに入ると、いきなり話しかけられた。
『初めましてミドー君。僕は管理人のサイバーだよ』
『早速だが本題に入ろう。君が真の超能力者だということが判明した。このルームの4人目の住人になる資格があるわけだ』
このまま怪しげなグッツの紹介になったら、常連止めよう。詐欺だから。
『君の能力は某アメコミのキャラクターのような、派手なものではない。残念?』
いや・・・そうじゃなくて・・・
『君の力、それはズバリ、他人史の力だ! 以下、君の能力について説明する』
説明を要約すると、俺の力(?)は、自己分析のときに書く自分史(自分がいつ生まれ、今まで何をしてきたか)の他人ヴァージョンらしい。この能力でできることは次の通り。
・過去の記述 対象の記憶と感情の改変。
・未来の記述 対象の行動とそれを実行した時の感情を自由に設定できる。
対象の肉体の状態を設定できる。
ただし、ペンも紙も自由だが、対象の本名と生年月日を正確に知っていなくてはいけない。過去の記述と、実現しもう終わった未来の記述は無かったことにはならない。
こんなところだ。なんだか夢見たいな話だが・・・
『おや? 気がつくと君はさっきから黙ったまんまだね。さては僕の話をうたがってるな。
なら物は試しだ。誰かの他人史を書いてごらん。もしこの話が僕の嘘だったとしても、紙と時間を少し消費するだけだろ』
それもそうか。
適当にルーズリーフを何枚か抜き取り、シャーペンを持つ。さて誰の他人史にしようかな。俺が本名と生年月日を知っている人物・・・芸能人は本名を知らない、政治家には興味が無い。やっぱり家族か。
それで何を書くか・・・万が一にも他人史の能力が本当だったら、取り返しが付かないような事はまずい。過去の記述は無かったことにできないようだから、未来の記述にしよう。今は・・・四時二十分か。姉貴は、今日は帰りが遅いから・・・。
父 御堂幸一 四時二十五分 息子に小遣いをやる。
母 御堂真帆 四時三十分 息子におやつを差し入れる。
ここまでなら、まあ偶然有り得そうだ。そこで妹の真紀には
御堂真紀 四時三十五分 兄に自分の下着姿を観賞してもらい、似合うかどうか聞く。
・・・よし、これなら有り得ない。我が義理の妹真紀はギャルゲーのキャラクターではないのだ。
『もうそろそろいいかい、ミドー君』
『ああ、書けたよサイバー。こんな感じに』
と、俺が書いた内容をそのまま話してやる。そうこうしているうちに、もう五分がすぎようとしていた。これで父さんが来なければ・・・
コンコン
「っ!? どうぞ」
思わず息を呑み、それでも平静を装って返事をしたら、ドアの向こうにはなんと父さんが立っていた。
「チャットか? あまり長時間やるなよ。ああ、それと買い物で小銭が余ったんだ。あげよう」
と言って、小銭を何枚か手渡してきた。・・・三十円。
『で、いくらもらった?』
まるでこちらの事が、全て見えているようなタイミングで、サイバーは言ってくる。正直に言ってやると、『次は具体的に金額まで書くんだね』と、アドバイスされた。
で、さらに五分たった。これで母が来なければ、父が来たことはただの偶然で終わる。が、しかしノックの音が俺の部屋に響いた。
「誠二君、おやつよー」
持って来たのはもちろん母で、ココアとクッキーでした。
ここまで来ると、超能力の類はフィクションと思ってきた俺も、もしかしたらと思わずにはいられない。しかしここで俺は、さらにダメ押しすることにした。
真紀の他人史に、『兄にまずディープキスしてから。』と書き加えたのだ。
よし!これで偶然には起こらない。必然のみだ。
『もうすぐ妹さんの時間だけど、心の準備はどう?』
そう聞かれて、ばっちりだと答えようとしたら、三度目のノックの音。落ち着くんだ俺よ。母さんがココアのカップを取りに来た、だけかもしれないじゃないか。
「セイジィー、入るよー」
俺が返事をする前に、真紀は俺の部屋に入ってきた。・・・どうだ、某ゲームの妹とは全く違うだろ。同じなのは美少女な所だけだ。前述の通り胸は無いが、それも小悪魔系と割り切れば・・・いやいや、真紀の考察をしている場合じゃないって。
「よ、よう真紀、何のようだ、こんな時間に?」
全然冷静でない声で俺が聞く。内心はありえないという叫びと、もしかしたらと言う期待でぐちゃぐちゃだ。
真紀の方と言えば、そんな俺の内心に気づいた様子も無く、俺の顔を覗き込んだ。熱があるんじゃないかと思うほど、頬を赤らめた真紀の顔が俺の視界の正面を占領し、次の瞬間には、それ以外見えなくなっていた。
唇に、熱い感触。そして、俺の口腔に入り込んでくる、ぬるりとした熱い真紀の舌。
真紀の舌は、硬直している俺の口腔を少しの間好き勝手に動くと、すぐに出て行った。
「実はセイジィーに聞きたいことがあって、これはそのお礼の前払い。ファーストキスあげたんだから、ちゃんと答えなさいよ」
「お、おう」
その聞きたいことの内容を、俺は知っている。
「あたしの下着姿の感想がききたいの」
よっしゃーっ! 夢のようだ! いや、夢かもしれないから確認しておこう。ぎゅうう
イタタタタ 。
「一人でなにやってんの? 今から脱ぐから、ちゃんと見てなさいよ」
独りで奇怪な様子の俺にそれ以上構わず、真紀は服を脱ぎ始めた。瞬く間に真紀は白いカップなしのブラとショーツだけになった。
「ちょっと待て」
俺は机に向き直り、真紀の他人史に『良い感想を言ってもらうために、言われた通りにポーズを取る』と、『触ってもいいよと言う』の二つを書き加えた。
「触ってもいいよ。も、もちろんちょっとだけだからねっ!」
早速真紀が実行してくれる。どうやら、まだ継続している未来の記述は、変更が可能らしい。
「じゃあまず後ろを向いて、俺に向かって尻を突き出せ」
言われた通り素直に真紀は、後ろを向くと俺に向かって尻を突き出した。
別に俺が胸よりも尻がいいと思っているわけではない。ただ、真紀なら胸より尻だろうと思っただけだ。ブラをしているのが無駄だと感じるくらい胸が無いんだから。
俺は目の前の小ぶりで、肉のまだ薄そうな尻を見つめて、生唾を飲み込んだ。
そして、ぽんと真紀の尻に手の平を乗っける。
やはりまだ未成熟で、少し硬い。だが、俺の手は、張り付いたように離れず、その感触を楽しんでいた。
頭に血が昇ってくる。このまま真紀を蹂躙し、自分の物にしてしまいたくて堪らない。
しかし、パソコンのモニターが俺の血が昇った頭を冷やしてくれた。そうだ、まだサイバーとのチャットがまだ終わってない。
俺は真紀の尻から手を離すと、感想を言ってやった。
「いいんじゃない。Tバックとかローレグとかの方が似合いそうだけど」
ちなみに、この感想は俺の主観と偏見だけで構成されている。
「そう、ありがと・・・って! なにやってんのよあたし!?」
真紀はバババッと、自分の服をかき集めるとそれで自分の身体を隠しつつ、
「それとTバックとかローレグとか有り得ないから!」
そう言い捨てると、今にも倒れそうなくらい赤い顔をした真紀は、逃げるように俺の部屋から出て行った。そういえば行動だけで、『恥ずかしくない』とか書いてなかったな。
これからは気をつけよう。あの様子なら父や母に話すとは思えないから、今はいいけれど。
俺は興奮がまだ治まらない頭で、パソコンに向き直った。画面にはサイバーの『で、信じる?』と言う言葉が表示されている。
俺はキーボードに指を置き、『もちろん』と入力した。
< つづく >