世界を握れ 第四章 前編

第四章 前編

 その日は、門倉我尽にとって小さいながらも己の目標へ一歩前進した一日だった。

 司令室とは言っても命令を下す相手も頻度も少ない現状のため、メタリックでやたら広いただのオフィスと化している空間で、我尽はいつも通りくつろいでいた。昼は例の芸能プロダクションのオーディション乗っ取りのための仕掛けにかかりつけで、この後は子作りに励まなければならない。

 特別クラス改め『江戸文化研究会』のメンバーを組織に取り込んだ事で、子作りの相手は飛躍的に増えたが、作業員としてはまだ不足気味だ。当然ながら、彼女達は教師だったり学生だったりするので、昼の間は学園で授業を受けたりしなければならない。ついでに言うと、その教師である胡桃や良子はアパートや賃貸マンション住まいなので、夜には帰さないと周囲の住人に怪しまれる事になる。

「ここに住み込みで働いてもらう女も必要だな。胡桃と良子には、怪しまれない程度に引越しの準備をさせてはいるが・・・それとも、先に医療機関を充実させるのが先か? ただのスタッフなら『転写』で知識と技術をコピーすれば良いんだが・・・」

 っと、色々企みながら我尽がココアの入ったカップに口をつけたと同時に、薫が司令室に入って来た。その顔は心なしかいつもよりも輝いているように見える。
「どうした薫? 今日はまだ種付けの時間じゃないし、俺はまだくつろいでいたいんだが」
「いえ、そうではなくて報告したいことがあるんです」

「報告?」
「はい・・・出来たんです、ついにっ」
「出来た・・・っと、言うとあれかっ!? 妊娠したのかっ!?」
「はいっ! そうなんですっ!」

 思わぬ吉報に我尽は玉座めいた椅子から立ち上がると、薫を抱きしめた。
「でかした薫っ! お前の腹の子供が俺の第一子だ。お前は俺の一番目の奴隷であると同時に、一番初めに俺の子供を産む奴隷になるんだ。
 褒美に・・・」
「はいっ! 褒美に・・・?」

「しばらくセックスは無しだ。オナニーも激しいのは禁止」
「ええっ!? そんなぁーっ!」
 セックス禁止を言い渡された薫は、さっきまでとはうって変わって失望を顕にする。

「仕方ないだろう。妊娠しても胎児が流れてしまったら台無しだ。ある程度まで育てば、『掌握術』でどうとでも出来るが・・・。
 その代わり安定期に入ったら、胎児の生命力を『強化』してマタニティセックスを存分にしてやる」
「はい・・・。あっ、それと世良様に明日のご予定を連絡しておきました。問題無いそうです」

「そうか。明日は『総合人材派遣会社 エスキュー』に任せてあるオヤジの会社の選抜結果を見に行く日だからな。世良の分もスーツを用意しておけよ」

 同時刻その日は門倉グループの新設会社、総合人材派遣会社 エスキューにとって、社運をかけた大きな契約を取るための一大プレゼンテーションの前日。社内は何処か慌しい雰囲気に包まれていた。特に、プレゼンテーションの責任者であると同時に新設されたこの会社の代表取締りである鷲宮珠恵(27)は、最終チェックのために今現在も忙しく働いていた。

 社長のポストには彼女は若すぎないかと言うグループ会社重役の声もあったが、彼女は実際に有能であったし取引先の推薦もあったので彼女が異例の人事で抜擢されることになった。その後、このポストについてから彼女の人事運用能力の成長には目を見張る物があり、今では何故彼女が先日まで主任だったのか疑問視する者まで出るほどだ。

「プレゼンの関係者に、書類をしっかり目を通させておいてね。それから、それに合わせてスケジュール調整も。あと、グループ会社からここに出向しに来た人達の手続き、終わっているわね?
 そうそう、ちゃんとBGMも忘れないで。それから・・・」
「会場の設営も、もう終わってますよ」

 マシンガンのように口を動かしながら、休み無く手元を動かしている珠恵に答えたのは副責任者の佐藤健一は苦笑いを浮かべながら答えた。
「クリーニングも完璧ですが、念のため今日これからもう一回業者が掃除します。出向して来た人達は、ビジネスホテルに滞在してもらっていますが、明日の朝一番に集合してくれるはずです。書類はコピーした物を配ってありますし、スケジュールも完璧に調整してあります」

「そう、助かるわ。・・・佐藤君や村田君、脇西さんがいてくれなかったら、このプレゼンの成功は無かったでしょうね」
「それもこれも、僕達を社長が引き止めてくれたからじゃないですか。前の部署で上司に美少女ゲームが趣味だってばれて、虐められていた僕を引き抜いてくれなかったら、僕は今頃転職していますよ」

 そう、この佐藤は先日までただの凡庸な平社員だった。しかし、珠恵に見いだされてはエリート社員のような働きでバリバリと活躍している。村田も脇西も、同じようなものだ。彼女の人事能力の高さを知らしめる一因である。
 人が育つ原動力は、責任やポストや希望・・・そして熱意である。その熱意に珠恵は火をつけたのだ。

「そうは言ってくれるけど、女の私じゃ気づかなかった事や思いつかなかったアイディアを出してくれたのは佐藤君達じゃない。特に脇西さんの熱意はすごかったわ。体裁が悪いからって私がボツにしようとした商品を、実用化するように何度も私を説得してくれたじゃない」
「ボ、ボクはただ自分が良いと思った事を正直に口にしただけですよ」
 小太りの脇西は、照れたように頭をかいて応えた。

「村田君は商品の選抜基準項目のチェックに、研修制度の立ち上げまでがんばってくれたし」
「これからも・・・がんばります。商品の扱いに関しては自信が・・・ありますから」
 消え入りそうな小さい声だが、自信を滲ませて村田は答えた。

「じゃあ、私は確認に行ってくるから後よろしくね」
「はい、行ってらっしゃい」
 総合人材派遣会社 エスキューの3人の社員達は社長を見送ると、それからも忙しく働き続けた。社長が働いているのに、自分達だけ楽をすることなど彼らには考え付きもしないことだった。

 珠恵はプレゼン前日の関係者説明を終えると、ようやく一息ついていた。この後、各グループ会社の重役や社長との打ち合わせがあるが、それまで僅かながら時間がある。小休止といったところだった・・・が、ゆっくりとは休めそうにはない。

「がんばりましょうね、主任っ! ・・・じゃなくって、鷲宮社長っ! 私達今回のプレゼンの関係者に選ばれてから、仕事が楽しくって仕方が無いんです」
「本当に。こんなやりがいのある仕事が出来るなんて、思いませんでしたっ!」
 珠恵が以前主任として働いていた当時の同僚の工藤義美や後輩の谷山弥生達の激励が、彼女の胸を打つ。

「あなたがこんな重要な仕事を任されるまでになるなんて・・・あたしは先輩として鼻が高いわ」
「最初はすぐに会社を辞めると思っていたんだけど、私の予想は外れたみたいね」
「私の部署からあなたみたいな人が育ってくれて、そればかりか私に声をかけてくれるなんて、感激だわ」
 入社当時仕事について教えてくれた先輩の栗原綾女や、口うるさく注意された先輩の刈谷喜久子が、初めての上司の三浦里佳子が、それぞれ暖かい言葉をかける。

「明日は私もがんばるわ。こんなに楽しくて刺激的な仕事があるなんて、あなたに会うまで知らなかったんだからそのお礼に」
「私もがんばります。・・・まだ研修途中ですけど、それでも精一杯」
 玉枝の元上司の小島敏子と、その部下望月彩乃も同じように激励をする。

「私だってがんばるわっ! 新しい自分を見つけられたのはあなたのおかげなんだからっ!」
「わたしも、がんばっちゃおうかな? この仕事結構気に入りそうだし」
「あたしは、まだ目覚められないけど・・・がんばらない訳にはいかないわよね」
 各グループ会社や支社で職場アイドルだった谷之崎葉月、園田蘭、八島千鳥3人が、彼女らなりに応援してくれている。

「鷲宮さん、明日のプレゼンがんばってね。今回の事で、一度は辞めたのにもう一度働けるかもしれないんだから」
「私もがんばるわ。今回のプレゼンがなければ、まだあの不毛な関係を続けていたかもしれないんだから」
 上司との不倫で会社にいられなくなった三田香華と、不倫の関係に悩みながらもだらだらと続けていた佐野素乃子が肩を叩く。

「私も応援してますっ! 私みたいにとろいお荷物に『あなたが必要なの』って言ってくれたのは、鷲宮さんだけなんですからっ!」
「あたしもがんばらなきゃね。あのセクハラオヤジ殴ったこと帳消しにしてくれたんだから」
 新入社員の中でも仕事の覚えが悪く、本人の言っているようにお荷物扱いされていた富野美福と、上司のセクハラに堪忍袋の尾が切れて殴ってしまい退職寸前だった西野理沙が、その豊かな共に胸をふるんと揺らしながら、激励する。

「ひどいミスをして首になりそうだった姉さんや、職場の対人関係が上手く築けなかったあたしに・・・その上就職浪人だった妹まで拾ってくれたご恩は、必ず返しますっ!」
 姉妹揃ってエライ事になっていた三沢綾乃が、見ていて危なっかしいぐらいの情熱を燃やす。

「私たちもです。鷲宮さんのおかげで、妹も受験ノイローゼから解放されて前向きになってくれたんですから、恩返しがしたいんです」
「あたしとおねえちゃんの晴れ舞台でもあるんだから、他人事じゃないわよね。がんばらなきゃ」
 妹の受験ノイローゼに悩んでいた浅野衣世と、浪人生で受験に重圧を感じ思い悩んでいた妹の浅野加世も応援の言葉を贈る。

「私も、精一杯やってみます。夫に先立たれ、生きる希望を失っていた私達母娘を鷲宮さんは救っていただいたんですから」
 2人の娘の手を握って、滝真由子が希望に輝く瞳で誓う。

「鷲宮さんっ! あたしもがんばるよ。あたし達家族がバラバラにならなかったのも、鷲宮さんと会えたからなんだから」
「本当に・・・あなたに会えたから私は娘達といっしょに新しい人生を生きる決意が出来ました。今度は私たちが恩返しする番です」
 4人の娘達と一緒に、母親の篠塚春子が静かだが力強く頷いてみせる。

「私と、私の娘たちも篠塚さん達と同じ気持ちです」
「はい、私達一生懸命がんばりますっ!」
 こちらはなんと6人三組の双子に囲まれている在賀好栄と、4つ子に囲まれている茶野美沙紀がそれぞれの娘達と共に、決意を表す。

「鷲宮さん、営業部で成績を上げていた私を『どうしてもこのプレゼンのためには必要だ』って、口説いて出向させたんだから、ちゃんと成功させなさいよ。じゃないと私のキャリアに傷がつくわ」
「私も失敗したら許さないわよ。このプレゼンのために専務昇進を蹴って来たんだから」
 本人の言うようにエリートOLとして第一線で活躍していた橋本美湖や、専務の椅子を断ってこのプレゼンの関係者になった綾小路燐が、美貌にプライドの高さと珠恵への信頼を浮かべて、二度肩を叩いた。

 それからも激励の声は絶え間なく続く。玉枝にこのプレゼンのためにとグループ会社から誘われた者に口説かれた者、元社員や社員の扶養家族だった者やその親類達。実に多くの女性がこの場に集まり、その全員が玉枝を心から応援している。その全てに耳を傾けていたら、僅かな小休止の時間などたちまち過ぎてしまうだろう。

 しかし、そんな事は気にならない。何故なら、彼女はすでに充分回復していたのだから。
「ええ・・・きっと成功させるわっ!」
 珠恵は胸が熱くなる思いだった。彼女達は自分の仕事を認め、信頼してくれている。感動とはきっとこういう感情なのだろうと、彼女は感じた。

「皆、明日のプレゼンには遅れないで集合してねっ! 色々着てもらう衣装や手順だあるんだから。
 あと、プレゼンの最中は『淫乱』とか『メス豚』とか言ったり、屈辱的な扱いや演出をするけれど、許してねっ!」
 彼女の声に、関係者全員が力強く頷いた。

 軽食を取った後、珠恵は各グループ企業の重役や、代表達と本部の大会議室で最後の報告兼打ち合わせを行っていた。
 エスキューが新設のグループ子会社とは言え、門倉グループは基本的に独自採算だ。本来なら大きな契約になるかもしれないとは言えども、こんな打ち合わせは必要ないのだが今回の契約如何によってはグループ全体の今後の行く末を左右する事になりかねないので、この場が設けられたのだ。

 取引相手のニーズ、予想されるリアクション。そして売り込むための戦略や段取り。そういった事を淀み無く報告していく。珠恵は歴戦の重役や本社の社長の質問にさえも、まったく動揺せず完璧に答えた。

「しかし・・・嫁入り前の君がやれ『メス豚』だ、やれ『淫乱肉壷』だのと言うのはどうかと思うのだが? 先方も引いてしまうんじゃないかね?」
 っと、年配の重役に質問されれば・・・。
「いえ、近藤専務。近頃は私のような女性に『ケツ穴』や『オマンコ』といった『淫語』を言わせるのが、先方の世代では喜ばれるようです」

 っと、返し、脂ぎった中年の代表が・・・。
「この小道具や衣装は本当に必要なのかね? 皆裸で出せばいいじゃないか。それに会場が汚れてしまったら先方に不快な思いをさせてしまったらどうするんだ」
「たしかに裸で商品を出すという方法もありますが、先方の世代を考えますと・・・木住野代表は演出過多に思われるかもしれませんが、効果的だと思われます」

 っと、返して怯むことはなかった。
「それで、皆様から推薦のありました商品ですが、本採用となりましたことを報告させていただきます」
 その言葉に、代表達は喜びと同時に僅かな落胆を洩らす。

「そうか・・・それは良かったが、少し残念だよ。先島君は優秀な秘書だったからね。何よりあの尻が・・・」
「何を言うのかね。私など不倫相手も兼ねていた夏川クンを提供したのだよ? 彼女には頭の固い妻が絶対させてはくれない事で、色々と楽しませてもらっていたのに」
「お2人とも、それでは僕の自己犠牲精神の足元にも及びませんぞ。わたしは秘書課の綺麗所を全て提供したのですからな」

 口々に自分が如何にこのプロジェクトのために犠牲を払ったかをアピールする代表達。これも、自分の発言力や影響力を強めるためのビジネストークである。

「待て待て、私だって犠牲を払ったとも。うちに秘書課は無いが、各支店の受付嬢から選抜した6人を提供したじゃないか。特に鬼塚君なんてピチピチだし、下山君はスレンダーだが巨乳だし」
 門倉デパートの代表が自分が一番貢献していると、主張する。

「笑わせてくれますな。私など選りすぐりの人材を8名提供したのですよ? 全員空手や柔道の有段者やボクシング経験者なので能力は保障済みで、足腰を鍛えているので締まりも抜群間違いなし。それに・・・貶す訳ではありませんが、巨乳と言っても下山君はしょせんEカップ。こちらの江川君はGカップ、その上処女。どちらが上かは明らかですなぁ?」
 警備会社代表が、そうはさまいとアピール。

「何を言いやら・・・それなら僕の方が上ですよ。調理能力の高い人材や、営業力のある人材から選抜した10名を提供したんですからね。中には巨乳な清水君や金田君、若い二ノ宮君や竹中君、その上処女でナイスバディな中野君や南川君もいますが・・・それだけでは先方から契約を取ることはできません。やはり、この商品は『収穫』直前まで仕事が出来なければ目玉とは言えないでしょう」
 レストラン会社代表が、その2人のさらに上に行こうと自慢する。

 このように、それぞれライバル意識をむき出しにしたりもする。

 そして、いよいよ最後の確認事項・・・特別『商品』の話題になった。この商品は佐藤が出したアイディアを採用した物で、すでに商品の募集や仕入れは済み明日の段取りにも組み込まれている。しかし、明日発表できるかどうかは、この確認しだいだ。

「では皆様・・・例の商品についてですが、予定通りでよろしいですね?」
 そう珠恵が質問した途端、大会議室の空が変わった。

「鷲宮君・・・今更何を言っているのかね。もちろんだよ。妻も娘達も明日のプレゼンを楽しみにしているんだ」
 保険会社の近藤専務は、笑い皺を作って穏やかに言った。
「娘達は皆君のファンでね。もちろん私もだが」
 金物を扱う商社の木住野代表は、似合わないウインクをしながら茶目っ気たっぷりに答える。

「もちろん私も、異存はないよ。どうせ娘はいつか嫁に行っちまうんだし、妻とは離婚寸前だからね。慰謝料を払わなくて助かるよ」
「それを言うなら僕もだ。妻や下の娘は僕を宿六扱いだし、上の娘は君に会うまですっかり不良だったからね」
「私の妻はもう年だから無理だったが、娘達を採用してもらったんだったね。・・・作家だとか歌手だとかになりたいと抜かす娘達だ。嫁に行っても相手のご両親にご迷惑をかけるだけなんだから、これも親心さ」
 生花や成果等を扱っている会社の重役や代表が、肩の重荷を降ろして、ほっと一息ついている。

「私なんて、私の稼ぎにたかってくる親類を何人も採用してもらって・・・これで『不採用だからお返しします』なんて言われたら、私の胃に穴が開いてしまいますよ」
 門倉グループに吸収された由緒ある呉服店の入り婿は、よほど苦労していたのだろう本当に嬉しそうだ。

「僕のところの『子供は産まない。妊娠しても降ろす。嫌なら慰謝料寄越せ』なんて言うふざけた妻をよろしく頼みますよ。もう、バシバシ躾けてやってください」
 不幸な結婚をしてしまった投資会社の重役は、負債が出る前に処理できた事に満足している。

「本当に安心しましたよ。金は毎月きっちり払っているというのに『奥さんと別れて結婚して』としつこく言ってくる愛人達や、その隠し子共。さらに、そいつらの事がばれて崩壊した私の家庭までちゃんと引き取ってくれて。これで安心して再出発が出来ますよ」
 乳製品を取り扱う食品加工会社の代表は、『浮気は男の甲斐性』をすでに通り越して外道の道をまた進みそうだ。

「鷲宮君・・・実を言うと私は今回のような機会を待っていたんだよ」
 門倉グループの本社、門倉自動車社長の倉田賢治はタバコの火を消しながら重々しく、しかし何処か重荷の取れたような顔をしていった。

「跡取り息子1人で充分なのに、娘ばかり豚か何かのように産み続けた息子の嫁とその娘達を排除できる機会をね。・・・君が息子を説得してくれたおかげで今度こそ良い嫁を息子も見つけることが出来るだろう」

 我も我もと、次々に頷く重役や代表達に、珠恵は自分が如何に信用されているかが実感できた。明日のプレゼンは、絶対成功する。こんなにも多くの人達の協力が、自分にはあるのだから。そう、珠恵は確信した。

 スーツを着てネクタイを締めて、我尽と世良はプレゼンの会場にワゴンで向かっていた。・・・何故正装する必要があったのかと世良が訊くと、我尽はただの雰囲気作り半分、術の節約半分なのだと答えてくれた。
「今回、俺は最初しか『掌握術』を使っていないからな。後は適当に選んだ代理人を立てて、環境を整えてやっただけで何もしてない。
 だから、少し演技が必要なんだ」

「それって・・・大丈夫なんですか? その代理人の言う事を聞くようにしたって言っても、我尽さんが術を使った時にたまたま居なかった人がいたら、大変ですよ」
「そう言う時のために、色々援助しておいた。まず、代理人のカリスマ性を『強化』した。どこぞの元画家志望の総統以上に」
「・・・そんな事が出来るなら、クリームパフェの3人の不人気も簡単に覆せたんじゃないですか?」

 感嘆の声の代わりに世良の口から飛び出した言葉に、我尽はあっさりと首を振った。
「そんな事をしたら、俺と子作りする時間が取れなくなるだろう」
「なるほど・・・。
 でも、カリスマ性だけでどうにかなるんですか? カルト教団みたいに閉鎖性の高い組織ならともかく、洗脳前に警察に駆け込まれたら終わりですよ」

「だからこれを渡しておいた」
 そう言って取り出して我尽が見せたものは、数枚の音楽CD。ただし、表面にはただ番号が書かれているだけで曲名も、アーティスト名も書かれていない。

「何ですか、これ? 聞くと掌握術にかかるって言いませんよね」
「近い。催眠効果のあるCDだ。ちなみに、番号は聞かせる順番。これを聞くと、俺が選んだ代理人の言うことこそが真実のように思えてくる。NO1だと気休め+αって程度だが・・・NO4まで何度も聞かせれば、聖書や六法全書よりも代理人の言うことを信じるようになる。ピンクの空飛ぶゾウが北極にいるって言えば、大真面目に探すだろうな。
 ちなみに、入っている曲はクラシックの名曲集」

「催眠効果って・・・そんな物あったんですかっ!? てっきりそういうのは術以外使わないんだと思ってたんですけどっ!?」
 驚く世良に、我尽は呆れたように息を吐いた。

「無くてどうする。親父は大真面目に世界征服を企んでいたんだぞ? これは効果が現れるまで時間がかかるし、術も併用しないと効力も個人差が出る。しかし、『掌握術』と違って誰でも使用法を知っていれば遣うことができる。
 術はたしかに強力で、即効性も高いが俺しか使えない。・・・まさか、世界中の人間に術を使う訳にはいかないだろう?」

 言われてみればその通りだ。どうやら我尽の父親は、大人の玩具開発プラントと化した兵器開発室でも、まともに世界征服に役立つ物を作っていたようだ。
「これを使えば、俺に術をかけられた人間以外もかなり自由に指図できる訳だ」

「でもそれって、その代理人が人気者になるだけで、我尽さんに服従するって訳じゃないんじゃないですか?」
「そうなっても、それは手に入れた後『掌握術』で書き換えればいい。・・・そろそろ会場だな。良いか、世良? 俺は『巨額の資産を受け継いだ、由緒ある一族の御曹司』で、お前はその『秘書』って設定になっている。術でいくらでも誤魔化せるから、そう硬くなる必要は無いが・・・ごっこ遊び程度には役を演じろよ」

「御曹司とその秘書・・・まぁ、嘘じゃないですけど」
 たしかに我尽は巨額の資産を親から受け継いだ、『掌握術』を継承してきた一族の末裔。そして世良はその右腕。一応間違ってはいない。

「・・・『総合人材派遣会社 エスキュー』・・・聴いたこと無い会社ですね」
 会場について、世良の発した第一声がそれだった。そしてそれが失言である事を自覚したのは、一瞬。ここはその会社のプレゼンの会場なのだ。関係者は山ほどいる。

「そうですね。新設の会社ですから、無理も無いですよ」
 涼やかな声をかけられたときは、らしくも無くドキリとした。
 声をかけてきたのは、髪をアップでまとめた二十代後半くらいのスーツ姿の眼鏡をかけた女性だ。・・・そしてそれ以上に、人を惹き付ける雰囲気のような物を持っている。

「総合人材派遣会社とは言っても、まだ総合どころか派遣できるのはまだ一部の商品だけですから。でも、本日のプレゼンテーションをご覧になれば、我が社の事を忘れられなくなるはずですよ。なんと言っても、世界初の派遣商品を扱っているんですから」
「えっと・・・我が社って言うと・・・・・・?」

「はい、申し送れました。私、総合人材派遣会社 エスキュー代表取締役の鷲宮珠恵と申します」
「あっ・・・どうも。僕はこういうものです」
 ガチガチに緊張しながら、何とか世良は我尽に貰ってあった偽名詞と玉枝の名刺を交換する。

「では、お席でプレゼンテーションをお楽しみください」
 一礼して珠恵は舞台袖に向かっていった。

「・・・あの人が我尽さんの選んだ代理人か。すごいカリスマですね。この僕をあそこまで緊張させるなんて」
「まぁ・・・そうだが・・・・・・その悪役台詞はやめろ。
 それと、そろそろ席に着け。始まるから」

 通常の人材派遣のプレゼンでは映像や書類等で自社の商品などを紹介するのだが、今回のプレゼンでは玉枝の提案でVTR等はあくまでおまけ。実際の商品を見てもらって先方(つまり我尽達の)関心を狙おうという試みが、とられている。
 そのため、会場は会議室等ではなく本社がオーナーのスポーツチーム(残念ながら男子)の練習に使う、体育館を貸してもらって行なわれる。

 体育館の前半分を暗幕で遮り控え室や舞台袖を設置。そして中央には低めのステージを置き、そのすぐ前に席と机を用意して体裁を整えた形だ。ちなみに今回は、撮影はプレゼンのスタッフが行うので世良はノータッチ。
 我尽と世良が席につくと、副責任者の佐藤がプレゼンのスケジュール等を書いた書類とペットボトル飲料を配る。

「・・・思ったより捻った名前ですね。てっきり『派遣メス奴隷』とか『性玩具お届け』とか、ストレートなネーミングだと思ったんですけど」
「ピンクチラシの宣伝文句じゃないんだぞ。それに捻ったほうが、面白みが出るだろう?」

 書類にあった商品名は・・・『出産家畜派遣サービス』。スケジュールは、まずこの派遣出産家畜業の解説にビジネスモデル解説。そして制約や保障関係の説明、一般商品解説を挟んで各研修制度の説明をした後、最後に目玉商品の解説と続く。

「でも、名前だけ捻ってもやる事は同じなんでしょう?」
「それはどうだろうな。俺は内容までは手を出していないから・・・まぁ、鷲宮の手腕に期待しようか」
 そして、すぐにプレゼン開始の時刻になる。会場に控えめな音量でBGMが流れると、世良が一瞬身を固くしたがすぐに緊張を解いた。クラシック音楽ではなかったからだ。

 一瞬催眠CDかと思ったようだが、さすがにそれは我尽が手を回したらしい。

「今日は我が総合派遣会社 エスキューの新商品『派遣出産家畜』のプレゼンテーションにお集まりいただき、まことにありがとうございます」
 舞台に出て来た玉枝が、晴れやかな笑顔で司会を勤める。衝撃的なのは、その衣装だった。先程までのスーツ姿ではなく、過激なボンテージルック。それも豊かな乳房や股間の茂み、尻等の肝心なところは一切隠していないと言う、過激な代物だ。

 その上手に持っているのは、細いが金属性で丈夫なポインター・・・司会と言うよりSMの女王様の様な格好だ。
 そのポインターを片手に、珠恵は恥ずかしがる素振りも見せずプレゼンテーションを進める。

「昨今の日本では、第一次ベビーブームや第二次ベビーブームのような出産ラッシュは望むべくもなく、少子高齢化社会はすでに回避不可能となっています」
 ここまでは、よく討論番組やニュースの特番で聞く話題だ。事実、日本は少子高齢化社会への道へ進み、すでに他の道へ進む事は出来ない段階までやってきている。

「しかし、だからこそ少子化に歯止めをかけなければなりません。ですが・・・残念ながら子作りに励むべき今の若者は『自分の時間が欲しい』と言って結婚を先延ばしにし、『先行きに不安がある』と言っては結婚しても子供を作らない者が増えています」
 ・・・かなり偏った意見だし、都合の悪い事(珠恵は独身)は省いているが・・・一応嘘は言っていない。

「中でも、同じ女性である私の目から見ても近年の女性は嘆かわしい限りです。自分の時間や社会生活、さらには育児の手間と言う理由を挙げては、子供を産む事を避けています。・・・これは紛れもなく罪です。子を産み育てるという、『メス』としての使命を放棄していると言えるでしょう」
 ここで暴言へと変化するが、スタッフの誰も玉枝の言う事に疑問を覚えないようだ。彼女の『強化』されたカリスマと、催眠CDの威力による物だ。

「しかし、そう言ったメスをいちいち相手にしていたらきりがありませんし、そのような負担を子作りに熱心な殿方にかけるのは忍びない。
 ・・・そこで我が社が提供するのはこの画期的な新商品『出産家畜派遣サービス』ですっ!」
 ここで玉枝の後ろの舞台一杯の大きさのスクリーンに、デカデカと『出産家畜』の文字が映る。

「この『出産家畜』と言う言葉を、まだ聞いた事のない方も多いでしょう。『出産家畜』とは、子供を妊娠し出産するための家畜・・・つまり畑女です」
 そう断言する珠恵。

「もしこのサービスをお受けいただければ、普通の女性を妻とした場合で起こる家庭のトラブルなどとは無縁です。もし家畜がわがままを言うのなら、必要なのは言葉で無く鞭による躾に他ありません。
 子作り上のすれ違いでも、解消されます。『今日は疲れたから』と言われてセックスを拒否する権利は、当然家畜にはありません。いつでも何処でも、ねじ伏せあなたの逞しいチンポをオマンコに突っ込み、自分が家畜だということを解らせればいいのです」

「もちろん、子作りの方法も自由です。家畜に遠慮する必要はありません。どのようなアブノーマルプレイも、望むままにお楽しみいただけます。
 煩わしい結婚へのプロセスや、結婚後の嫁姑問題等を全て解消できるこのサービスの需要は今後高まっていくことが予想され、少子化への抑止力になることが期待されます」
「・・・もっとも、いくら需要があっても顧客は俺だけだが」
 ぼそりと我尽が呟くが、それは世良にしか届かない。

「次に契約内容ですが、一回の期限は家畜の役割が出産であるため明確な時間では区切っておりません。お客様は商品の家畜を選んでいただき、その家畜に何人お子様を産ませるか書類に記入していただきます。家畜からお望みの数だけお子様を収穫するまでが、期限となります」
「質問ですが、一人子供が欲しいという契約時に、双子が生まれた場合はどうするんですか?」

 秘書としての役割を演じているのか、それともただ単に純粋な疑問なのか、世良が質問をする。珠恵は台本に無いこの事態にも当然だが動じない。
「その場合は、お客様がお望みならお受け取りください。料金はサービスさせていただきます。お望みでない場合は当社のほうで、施設に預けさせていただきます」

「禁止事項は、家畜とはいえレンタルなのでもちろん命を、難産以外で危険に晒す行為。それと、当社の事前了承無しのボディピアスや刺青、焼印等になります」
 これは形だけの禁止事項になるだろう。顧客が我尽である以上、『強化』や『低下』でどうとでもなる問題だ。そもそも、我尽に手に入れた女を殺すつもりは全く無いのだから。

「それでは、当社が誇る新商品『出産家畜派遣サービス』の家畜達を実際にご紹介いたしましょうっ!」
 スケジュールは商品紹介に移ったようだ。舞台袖から出てきたのは、20代前半から半ばまでの女性用スーツを着て首に黒い皮の首輪をつけた、女性達10名程だ。中には、玉枝の同僚だった工藤義美や谷山弥生の姿もある。
 彼女達はステージ正面で一列に並ぶと、腰に片手を当ててポーズを揃って取る。まるで新作スーツの発表会のようだ。・・・首の首輪がなければだが。

「・・・なかなか美人揃いだな」
「そうですね。抜きん出た美人はいませんけど、少なくとも平均以下はいませんし」
「はい、家畜の美醜は子作りにとって大問題です。そのため我が社では厳しい審査項目を設けており、それらをクリアーした家畜のみを厳選しています」

 別に質問ではなかったのだが、2人の囁きを耳ざとく聞き取った鷲宮はそれに答える形で開設を続ける。
「もちろん厳しいのは美醜の項目だけではありません。健康面でのチェックも万全です。子宮筋腫や性病の検査はもちろん、半年に一度の健康診断に一年に一度の人間ドックなども行い、管理体制も万全です」

「そして我が社の商品であるこの家畜達は、すでに基本的な掃除や洗濯といった家事能力や事務仕事等を仕込んでおりますので、子作り以外の時は事務員として働かせることが出来ます。
 さらに、この全員が結婚適齢期・・・安全に妊娠出産が出来る割合がもっとも大きい年代であることも魅力ではありますが・・・」

 玉恵の言葉に合わせて、ポーズを取ったまま動かなかった義美や弥生が一斉に動き出す。スーツのボタンを外しスカートのホックを外す。
 元々仕掛けがあったのか、それだけで上着はするりと彼女達から離れスカートはすとんっと、床に落ちる。

 なんと、彼女達は誰一人下着を着けてはいなかった。
 首輪以外に全裸と言う格好になった彼女達は、その場でぐるりと一回転すると同じようにポーズを決める。

「何と言っても魅力的なのは、若く健康的な女性の意思も人権も無視し踏みにじった上にその身体を蹂躙出来る事でしょう。彼女達との関係を維持するために必要なのは、高いプレゼントを貢ぐことや旅行の計画でもなく、デートコースを考える事ですらありません。
 サインをする意思と少々のマネー。たったそれだけなのですっ!」

 玉恵の宣言にタイミングを合わせて、佐藤が我尽達に『出産家畜派遣サービス』の発注書と契約書のサンプルを配る。
「基本契約・・・家畜一匹に収穫一回で300万。収穫1回+事に50万。少し高くないか? 人一人としての値段としてならともかく、あのビジネスモデルじゃ平均的な所得の人間も利用できないとまずいはずだしな」

「でも、普通に考えたら格安ですよ。プレゼントやデートなんかの諸経費無し、結婚式も必要無し、収穫が終わった後は養う必要無し。その上ほら、ここ見てくださいよ」
 渋い顔をする我尽に、世良が指差して見せた所には『産婦人科を当社指定の医院を使うなら料金保証』の文字が並んでいる。

「医療費保証か・・・ならお買い得だな」
「でしょう? ここは契約した方が―――」
「いいえっ! 私達にはまだ必要な物がありますっ!」
 何処まで演技のつもりなのか不明だが契約を検討する二人の動きを止めたのは、驚いた事にステージで並んでいる出産家畜の一人、工藤義美だった。

「契約のサインとお金だけじゃ、私達は身体も心も捧げられませんっ!」
 それに続いて谷山弥生が自分の身体を抱くようにして、胸を隠しうずくまる。
『私たちにも、仕事を選ぶ権利はあるはずですッ!』
 他の出産家畜達もそう断言すると、同じように身体を隠してうずくまってしまう。

「我尽さん、これはもしかしてトラブルなんじゃぁ?」
 やはり、催眠CDと強化したとはいえ個人のカリスマだけでは無理だったのでは? そんな不安が世良によぎるが我尽は面白そうに眺めているだけで、何かをしようとする様子は無い。

「私達は、この出産家畜の仕事に誇りを持ってますっ!」
「メスとしての使命を果たせる、この出産家畜の仕事に人生賭けてますっ!」
 今度はそう告白すると、身体を隠してうずくまっていた姿勢から胸も股間も完全に丸見えな、M字開脚に姿勢を素早く一斉に変える。

『私達には私達で赤ちゃんを作りたいお客様の情熱と性欲と、私達のオマンコの奥に突っ込んでくれるお客様のチンポと、何よりお客様の濃い精子が必要なんですっ!』
 そしてやはりタイミングを合わせて、彼女達は性器のスリットを指で開き肉穴を露出させる。

「・・・演出だったんですか」
「動きと台詞が、芝居がかっていたからな。俺が思っていたよりも、オヤジの作った催眠CDは強力らしい。
 ・・・商品をもっと近くで見たいんだが、構わないかな?」
 前半は世良に、後半は玉恵に我尽は話しかけた。

「はい。どうぞ近くでご覧になってください。しかし、商品に触れるのは・・・」
「契約後にだな。しかし、こちらとしては商品の使い心地が解らないと、踏ん切りがつきにくいんだが?」
 ここで、我尽はこっそり掌握術の『誤認』を玉恵に使用する。内容は、『門倉我尽は、ここで格別なサービスすれば大事な大口のお得意様になってくれる』と言うものだ。

 ・・・ここまで演出されて、ただ見ているだけでプレゼンが終わるまでお預けを食らうのは、少々我慢しがたい物があったようだ。
「はい、この『家畜お試しサービス』をご利用なさいますと、契約前でも商品の使い心地をお試しいただけます」
 掌握術が効いたのか、それとも元々そのつもりだったのか玉恵がそう言うと、すぐさま佐藤が書類を取り出す。

「このサービスをご利用なさいますと家畜に触れるのはもちろん、口だろうとアナルだろうと、オマンコでさえ試用することが可能です。もちろん、膣内で射精してくださって結構です。家畜がその結果妊娠した場合は、その時点で正規契約をしていただきますが。
 ・・・本来信用のおけるお得意様用のサービスですから、他の方には御内密にお願いします」

「任せておけ。秘密保持には自信がある」
 何せ世界征服を企んでいるんだからな。
 後半だけ胸中で呟くと、さらさらとサインし最後に判子を押す。

「世良はどうする?」
「そうですね・・・僕はやめておきますよ。僕は子供が欲しいわけじゃないし、万が一僕の子供が出来ちゃってもお金払えませんし。
 今回は横からチャチャを入れるだけにしておきますよ」
 迂闊にご一緒して学生でローンを組む羽目になるのはごめんですから。っと、心の中だけで呟く。

 それに我尽は「そうか」とだけ返事をすると、サインした書類を佐藤に渡しそのままステージに向かった。
「それで、この中でお勧めはあるのか?」
「はい、それではこの2人がお勧めかと」
 玉恵が我尽に推薦したのは、元同僚の義美と後輩の弥生の2人だった。

 もちろん、元同僚や後輩だからと言うだけの理由で彼女は大事なお得意様候補に、推薦したわけではない。それだけの理由があるのだ。
「どの辺りがお勧めなんだ?」
「それは、本人達に聞いてみましょう。あなた達のセールスポイントをお客様にお勧めして」

「はいっ、まずはお客様、義美のオマンコをお試しください」
「その次は、私のオマンコをお願いします」
 そう言うと、M字開脚から四つんばいになると尻を上げる二人。我尽は言われるままに、まず義美の膣にペニスを挿入した。

 にゅるりと、スムーズに義美の膣は我尽のペニスを受け入れると、そのままぎゅっと締め付けてくる。
「あはぁぁぁぁあっ、お客様のチンポ気持ち良いぃ」
 義美は喘ぎながら、自分から腰を降り始めた。もちろん、ぎゅっぎゅとペニスの締め付けは維持したままだ。

「お前・・・結構経験しているな。きつすぎない、柔らかく緩すぎない丁度良い締りだ。腰の振り方も満点だ」
「はいっ、私は26歳で妊娠したことは無いですけどぉ、何回もセックスをしてましたっ! それで同僚にあっさり追い抜かれたスケベOLだったので、鷲宮社長に『経験豊かでスケベなあなたのオマンコとケツ振りなら、きっとこの仕事で成功するわ』って、スカウトされたんですっ」

「私の経験とスケベマンコはぁ、きっとお客様も気に入ると思いますしいぃぃっ、子作り私大好きなのできっと早く孕みますぅっ!」
「なるほど・・・次は弥生だったな」

 ズプリとペニスを引き抜くと、今度は隣で待っている弥生にそのまますぐに挿入する。
「あぐぅぅぅっ!」
 弥生の膣は義美とは違って、まるで処女のように締め付けがきつかった。それでいて、しっかりとペニスを受け入れているので、経験が浅いわけではないようだが。

「私はっ! オマンコの締りに自身がぁあぁあぁあぁっ! あってっ・・・くぅぅぅぅっ! 鷲宮先輩っ、『あなたのオマンコの締りを活かさないなんて、犯罪よ』ってえぇぇぇっ!!」
 ビクビクと、言葉が途中で叫び声に変化すると腰を痙攣させる。イッてしまったようだ。

「たしかに締まりは良いが・・・もう少しイクのをまって欲しかったな」
 その点だけが不満だったようで、我尽はペニスを引き抜くと再度義美に挿入する。
「あうぅぅっ」
 そしてそのまま膣内に射精する。

「お気に入りましたか?」
「まあな。なかなかの使い心地だ。これなら契約しても・・・」
「我尽さん、もう少し様子を見てから決めるべきですよ。たしかに我尽さんにとっては大金ではないですが、これもビジネスなんですから。
 鷲宮さん、もう少し安い商品はありませんか?」

 世良は本当にちゃちゃを入れるつもりのようで、我尽の台詞を遮って玉恵に質問を行う。
「はい、もちろんご用意しております」
 その質問に、待ってましたと珠恵は飛びついた。ステージ上では、その声を合図にしたように義美と弥生以外の家畜達が舞台袖に下がっていく。

「出産家畜としての最大の商品価値は、やはり妊娠出産が安全に行えるという点にあります。しかし、安全に妊娠は出来ても出産に注意が必要な出産家畜や、出産家畜として働ける時間が短く長期の契約に向かない商品などは割安となっております。
 この商品達のようにっ!」

 舞台袖から出てきたのは、先程とは違いすでに全裸に首輪といった格好になっている女が3人。いずれも30代以上の女性だろう。
 そして、3人には先程の5人とは違う点がもう一つあったことに世良は気がついた。

 3人の下腹部に、赤く数字が書かれている。右端から『30』『32』『35』。
「なるほど、年齢か。たしかに、高齢出産には危険が付きまとうな」
「はい。30歳以上で10パーセント、32歳以上で20パーセント 35歳以上で30パーセントの割引となっております。
 あと、出産経験が3回以上の商品も割り引きたい対象になります」

「たしかに、適正な割引でしょうけれど・・・使い心地はどうなんですか? プロポーションは問題ないように見えますけど」
「それもそうか。あと、出産家畜以外の仕事も出来るのか? その辺りも聞いておきたいな。膣の使い心地は実際に試すからいいとして」

 2人の容貌に、珠恵は3人に目配せをした。すると3人はそれに答えて立ったまま、女性器の中身が見えるようにしながらオナニーを開始。そして、順番に自己申告していく。

「あたし、栗原綾女30歳は・・・んんっ・・・この年になるまで結婚できなかったメス失格な、三十路女ですけどその分オマンコはぁっ、まだあんまり使い古してませっ、ん。
 仕事はぁ、新入社員に教えられるくらいできたのでぇ、今度はお客様にメスの仕事を仕込んで欲しいです」

「私、刈谷喜久子32歳はっ、不相応なプライドを持って若い子に厳しく当たってストレス解消している癖に、この年になって結婚できないことに焦りを感じるメス犬ですっ!
 不相応なプライドを維持するために、仕事は迅速にミス無くこなしてきました。ですから、私の古マンコでもきっと短い期間で間違いなく健康児を孕んで、産んで見せますっ!」

「この三浦里佳子35歳は、出産経験は無いけれどバツイチですっ! 夫のチンポより仕事をとったけれど、殿方のチンポを忘れられずにオナニーを三日に一回はしていますっ。
 若い男性社員を物欲しげに見ていた淫乱OLですが、係長を務めていたので仕事はできますっ」

「俺が期待している仕事に『営業』は今の所含まれてはいないが・・・事務仕事が出来ないというわけでもないだろうし、将来的には営業もしてもらうことになるかもしれん。その上安い。
 世良、この辺りで納得できないか?」

「出来ませんね」
 きっぱりと世良は言い切った。
「考えても見てくださいよ。今まで見せてもらった商品は、この会社じゃないと手に入らないって程の商品じゃないじゃないですか。契約するなら、他の企業も参入してライバルが増え、会社ごとの格差や付加価値がついてからでも遅くありません」

 もちろん、世良は他の会社が『出産家畜派遣サービス』業に参入することが無いことなど承知している。なのでこれもただのごっこ遊びの延長と、玉恵の仕事がどれほどの物か試したいと言う好奇心から出た言葉だ。

 そして、珠恵はその世良の好奇心に応えた。
「はい。おっしゃるとおりであると私達も考えています。
 そのため、これより商品に付加価値をつける当社独自の研修制度の紹介と、大型契約用のセット商品に出産以外の用途にもご使用可能なエキスパート商品・・・ならびに当門倉グループがこの事業にかける誠意の結晶、『特別商品』のご紹介にお時間を頂きますっ!」

 ステージのBGMが変わり、いよいよプレゼンは本番に突入する。

< つづく >

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