ポケガ 第2話

第2話

「“……市内を中心に若い女性の行方不明が多発しています。警察ではパトロールを強化するとともに、夜間の一人歩きや戸締まり、街角での勧誘などにも注意をするよう呼びかけており、また市民の皆様からの情報提供を―――”」

 朝のローカルニュースで、近頃学校でも話題の神隠し事件のニュースを取り上げている。うちのクラスにも、従姉の姉ちゃんがいなくなったってやつがいて、けっこう噂になっていた。
 そいつが言うには、ここしばらくの間に2、30人の行方不明者が、しかも女の人だけで続いてるらしい。
 家出なんかはよくあることなので最初は警察も相手にしてなかったが、10代ばかりじゃなく社会人とか20代の女性も多く、容姿や環境にも恵まれた人が多いことから、ようやく警察も事件の可能性を認めて動き出したとか。
 僕にはあまり関係ない話だと思ってたけど、うちには姉ちゃんもいるし、心配といえば心配だ。

「怖いわねえ。ちょっと、あんたも気をつけなさいよ」

 母さんが、トーストにべっとりバターを塗りながら姉ちゃんに言う。
 父さんが単身赴任中の我が家はメンズが僕しかいないので、何かと不用心ではある。

「大丈夫よ、母さん」

 姉ちゃんは、さらりと髪をかき上げて、小さく千切ったパンを口に運びながら微笑んだ。

「今日から私が魁斗を学校まで送ってくよ。私がちゃんと責任持って守るから安心して。魁斗は誰にも渡さないし」

 いや、お前の心配してんだよ。
 と、僕と母さんは言いかけたが、その姉ちゃんの悠然とした空気に何も言えなくなった。

 昨日までの姉ちゃんと全然違う感じ。大人っぽくなったというか、きれいになった。僕をじっと見つめる瞳にドキッとする。
 微妙に顔が変わった…? いや、雰囲気が変わったのか?
 昨夜は暗くてよくわからなかったけど、姉ちゃんってこんなに美人だったっけ? こんなにイケてるオーラ出てたっけ?
 とにかく、キラキラしてるんだけど。

「いや、私は自分のことを用心しなさいよって……」

 姉ちゃんは戸惑う母さんに気づきもしないで、僕の唇に指を伸ばしてそっと拭い、「もう、魁斗ったらこんなところにジャムつけて」とか言って、楽しそうにその指を舐めた。

「髪もボサボサじゃない。ふふっ、しょうがないなあ。あとで姉ちゃんが直してあげる」

 まるで子供をあやすような優しい手つきで、僕の髪をなでつける。僕も母さんも、姉ちゃんの変貌ぶりにただ呆気にとられていた。
 
「…まあ、私はあんたらが仲良く元気に育ってくれれば、それでいいんだけど……」

 そう言って、ため息を漏らす母さんだった。

『もちろんポケガでレベルアッピョしてるわけですから、リアル姉ちゃんもあがりまくりですよー。女は、男とポケガで磨かれるのです★』

 チルルは得意気にそんなことを解説してくれた。つーか、最初にもっと詳しく説明しとけ。

「ほら魁斗ったら、ちゃんと手を繋いで。姉ちゃんから離れちゃダメよ」

 姉ちゃん、どう見ても豹変だろ。レベル高まりすぎだろ。なんだこの色気。なんだこの過保護。
 ここまで変わるものだなんて、覚悟してなかった。
 昨日までの姉ちゃんなら、普通に家の外では無視が基本だったのに、今朝は僕の学校まで手を繋いでいくと言い張ってきかない。
 しかも、指をがっちり絡ませる恋人繋ぎってやつだ。
 こんなところクラスのやつらに見つかったら何を言われるかわからない。早く行こうとするのだが、姉ちゃんはグイっと僕の手を引き寄せる。

「あん、そんなに早く歩かないで…姉ちゃん、まだ魁斗のが中に残ってる感じで、歩きづらいんだよ?」

 でも耳元で色っぽくそんなことを告白されたら、僕の方からは何も申し上げることはない。僕らは仲良く手を繋いでのんびり登校する。
 そして校門前で「何かあったら私にすぐに連絡してね。絶対ね」と何度も念を押されて、ようやく僕は解放された。
 
「おはよう、内崎ー。フヒヒ!」

 隣のクラスの担任、田中が首を揺らしながら校門で立っている。こいつが今日の当番か。あいかわらずキモいやつだ。

「内崎くん、おはよう。今日はお姉さんと一緒なのね」

 その横ではうちのクラスの担任、凪原先生も優しく微笑んでいる。あいかわらずキレイな先生だ。僕らの凪原ちゃんなのだ。
 でも、どうしてか知らないけど、いつも田中と凪原先生は仲良さそうにしてて、僕はなんだか納得いかない。みんなもそう言ってる。校長先生だって言ってる。

「センセー、おはよーございます!」

 まあ、そんなことはどうでもいい。
 今日はポケガで知佳理ちゃんをゲットするんだ!

「カイト。お前、学校にDSii持ってきてんじゃねーよ」
「あー、僕、もうすぐ転校するから思い出づくりのためにね」
「ウソつけよ、どうせカメラ自慢だろー。俺たちのPSSPをバカにしたら許さないぞ」
「なになにー? カイトくん、転校すんの? マジで?」
「ウソに決まってんだろ、ブース。カイトが転校するってんなら、俺…どこまでも追いかけるからな」

 とか言って、カメラ向けたら必死でポーズを取るおバカなやつら。
 そいつらをパシャパシャ撮りながら、僕はさりげなくポケガを起動し、窓側の一番後ろの席をフレームに入れる。
 狙うは立花知佳理ちゃんだ。
 
「ちかりー、あんたも写ろー」
「私はいい」

 あいかわらずクールなその横顔を真ん中に入れて、僕はバレないようにシャッターを切った。

「ハイ、みんな席についてー」

 もちろん、凪原先生が教室に入ってくるタイミングで、他の連中に写真を確認させるヒマを与えない計算はバッチリできてる。最後の写真は間違って保存しなかったとでも言っておけばいい。カンペキだ。
 僕は席について、こっそりとDSiiを開く。
 チルルが知佳理ちゃんのアバターの肩を抱き、サムズアップ(親指グッ)をしてた。

 ところで知ってるか。
 なぜDSiiは旧型機対応のスロットをあえて排除してまで、薄型化を目指したか。
 これはニンペンドーからの挑戦状なんだよ。あいつら、授業中に教科書にDSii隠してプレイするような真の漢がどれだけいるか、試してるんだよ。
 まったく、なんてメーカーだ。手に汗握るぜ…!

 タッチ、開始!

『お触りタイムでーす★』

 画面の中では、知佳理ちゃんアニメが呆けた表情で宙を見つめている。
 僕はそのほっぺをツンと突く。

「んっ」

 ポケガ知佳理ちゃんがピクンと反応する。僕の2つ隣のリアル知佳理ちゃんをチラ見する。
 知佳理ちゃんは、もみあげのあたりの髪を気にしてた。
 僕はそのまま何度か突いて、本人の反応を確認する。
 DSiiの中では敏感に反応してるが、リアルではその半分から3分の1程度の刺激。
 召喚モード中の姉ちゃんはダイレクトに反応してたが、普通のタッチモードは遠隔操作が前提だから反応を弱めているらしい。

『ポケガに優しい安全第一の設計となっておりまーす。もちろん『ダイレクト』にも設定変更できますが、そのさいのリスク管理はユーザー様の自己責任となっておりますのでー』

 ちなみに、アバターの頭部を2秒以上タッチしてると、現在のポケガの状況を『授業中』とか吹き出しで確認できるし、上画面で現在地も表示される。状況によってはタッチモードでポケガに危険が及ぶ場合もあるので、要チェックということだ。
 ていうか、どんだけ後付け設定増えてくんだよ。

『後付けではありません! 一度に説明しちゃうと「一度に説明しすぎ」って怒るくせに! ぷんだ!』

 そのことを指摘すると、チルルはなぜか逆ギレした。
 だから僕は黙ってタッチを続行した。

「あっ、うんっ、や、なに? んっ、んっ、あんっ」

 ポケガの知佳理ちゃんが気持ちよさそうな声を出す。
 僕は彼女のうなじをくすぐり、耳をツンツンして、唇をなぞる。

「んっ、んっ、んっ」

 唇を噛みしめて、声をこらえる。色っぽくて可愛い。僕は張り切ってタッチを続ける。

「……ん……」

 今、現実の知佳理ちゃんが声を漏らした。
 そして「んんっ」と咳払いするフリして誤魔化して、スカートの位置を直す。
 反応した。知佳理ちゃん、今ちょっと感じちゃったんだ。

 やべ。すごい興奮する。僕の股間もギュッときた。
 ポケガの知佳理ちゃんの胸をペンでなぞる。小さい胸を上下に擦ってプルンプルンさせる。
 ポケガの知佳理ちゃんは、「あぁん!」って大きな声を出して反応する。
 リアルの知佳理ちゃんは、しきりに裾を気にして、上着を引っ張るような仕草をする。
 僕は激しく胸を上下させる。昨日の姉ちゃんみたいにノーブラパジャマじゃないから、乳首の位置がわからないのがもどかしい。あれをツンツンしたいのに。あれをツンツンするのが好きなのに。
 とりあえず、おそらくこのへんってところをグリグリする。

「あっ、あぁ!? あぁ、やだ、んっ、やんっ、そこ、やん
っ」

「…んんっ…!」

 やっりー。乳首発見。
 ポケガの可愛い声。リアルの苦しそうな声。どちらも僕を興奮させる。

「ちかりちゃん、具合悪いの?」
「な…なんでもないっ」

 隣の席の女子が知佳理ちゃんの様子に気づいたようだ。
 そろそろやばいかな。でも、ここまで来たら最後までイッちゃいたい。
 僕はポケガのスカートのあたりを擦る。お尻とかお股とか擦ったり突いたりしちゃう。リアル知佳理ちゃんがモゾモゾと腰を揺らす。ギュッて股間を手で押える。もう片方の手で声を堪えてる。
 その仕草も、エロい…!

「あぁっ、やあっ、くぅん、やめ、やめてっ、ひゃんっ、もう、ダメ、ダメェ…ッ」

『来るよ! カイトくん、来るよ。ちかりん史上初のビッグバンが!』

 股間のあたりを、グリグリって強く擦った。

「あぁーん!」

 “ヘヴン状態!!”

「あっ、あっ!?」

 リアル知佳理ちゃんが大きな声を出して、机を揺らした。
 凪原先生が「どうしたの?」と心配そうな顔をして、クラスの注目が彼女に集まる。

「…くしゃみが出そうになって」

 真っ赤な顔して言い訳する知佳理ちゃんに、「そう?」と凪原先生が不思議そうな顔をする。

「遠慮しないで、くしゃみくらい好きなときに出しなさいね」
「…はい」

 さすが僕らの凪原先生は、普段からボケボケしてるだけあって、知佳理ちゃんの不自然な言い訳も完全信頼してスルーだ。
 テスト中にわざと落とした消しゴム拾わせて、パンチラ胸チラ覗くのが男子の間で秘かなブームなってるのも気づいてないだけある。
 そのスケベな男子どもも「今の声、エロっぽくね?」とか言ってハシャいでる。
 アホだな。エロっぽいんじゃなくて、本物のエロ声なんだよ。僕が知佳理ちゃんに出させたんだよ。
 でも、さすがに知佳理ちゃんにはかわいそうなことしちゃったかな。
 僕がそっちを見ると、知佳理ちゃんとバッチリ目が合った。僕も驚いて固まる。知佳理ちゃんの目が潤んで、ほっぺたが上気してる。可愛い。色っぽい。そしてしばらく見つめ合ったあと、知佳理ちゃんはフイと目を逸らした。
 今、彼女は僕のこと見てたんだろうか。レベルアップして、僕のこと意識し始めたんだろうか。

『やーん。ちかりんのレベル1デレ、かわいー』

 僕は彼女のステータス画面を開く。
 当然、処女マークがあることを真っ先に確認しとく。イエス!

『あらやだ。ちかりんったら「くーる」と「すなおさ」+5ですって! 近頃の子は本当にジャンル化が進んでるのね…。それに「あどけなさ」よりも「いろけ」を優先して伸ばしちゃうあたりに、背伸びしたい年頃の危険な香りが…! これは姉っち、強力なライバル出現ね。あぁもう、早くこの子の成長した姿が見たいッ』

 その他、「めぢから」と「いちずさ」が+3、「すばやさ」と「ろりーた」が+2、「やさしさ」「みがるさ」「まじめさ」が+1などなどが成長していた。「おとこぎらい」と「けっぺきしょう」は減っている。

『あぁ…いいよぉ。ちかりん、すごくいい…ねえねえ、もっといっぱいレベル上げようよぉ』

 数値マニアのチルルは夢中になってハァハァしてるけど、さすがにこれ以上は学校ではムリだろう。
 僕はあきらめてDsiiをしまおうかと考える。

『あ、ちなみに「召喚」モードにしてから「設定」で、うつろ無反応のサイレンスマナーモードか、無言ピクピク反応のマナーモードに切り替えもできますので、教室内などはこちらでどーぞー★』
「なんでそれを早く言わないんだよ!」
『忘れてたからー。あテッ!?』

 僕はチルルの額にビシッてツッコミを入れてから、『召喚ボタン』をクリックしてサイレンスマナーモードを開始する。
 画面内の知佳理ちゃんと、授業中の知佳理ちゃんが、頬杖をついて外を眺めた姿勢で、同じようにうつろ目に変わる。
 タッチペンで耳をこちょこちょする。画面の中の知佳理ちゃんは「あっ、あっ」て可愛い声で反応するけど、リアル知佳理ちゃんは外を眺めたままうつろな目をしている。

 僕は張り切ってレベルを上げた。上げまくった。
 アイコンを舌にして、唇をキスするみたいにチョンチョン突く。耳をくすぐり、首スジを舐め回し、胸を撫でるようにして、擦って、回して、はじく。
 短いスカートから伸びる太ももも、当然撫でる。舌を這わせる。内股あたりが特に弱いみたい。そこを攻める。攻め立てる。

 “ヘヴン状態!!”

 “ヘヴン状態!!”

 授業中に何度もヘヴン。ヘヴンヘヴン。ヘヴン学級。
 僕は夢中になってタッチを続ける。ぼんやり外を眺める知佳理ちゃんの姿はいつもの光景で、誰も彼女の中で起こってる事件に気づいてない。
 今、彼女の内面は僕に凌辱されまくって大変なことになっているというのに。
 チャイムが鳴る寸前に召喚を解除する。そして休み時間になると、知佳理ちゃんは真っ赤な顔で席を立って、授業が始まる直前にまた真っ赤な顔で戻ってくる。
 教室に入ってくるとき、必ず僕の方を見る。でも目が合うと、恥ずかしそうに自分の席に逃げちゃう。
 たぶん彼女のパンツは、今頃かなりかわいそうなことになってんだろう。でもゴメン。やめらんない。
 何度もそれを繰り返す。サイレンスマナーモードから普通のマナーモードに切り替える。リスク上がるけど、頬を赤らめて、目をギュッてつむりながらピクッ、ピクッて反応する知佳理ちゃんもすごい可愛い。エロ可愛い。
 もう授業なんて聞いてられない。知佳理ちゃんにタッチしまくり。ペロペロしまくり。僕は将来、絶対痴漢で身を崩す。母さん、覚悟しとけ。

「ひゃん! あぁんっ、やんっ、やんっ、んんっ、くっ、ふわぁ、あぁーん! んっ、んっ」

 だってゲームの中で僕にイジられる知佳理ちゃんも。

「…! …っ…! !」

 教室の中でピクピク反応するリアル知佳理ちゃんも、どっちの知佳理ちゃんも可愛くてたまんないんだぜ!

「あら…」

 そのとき、斜め上から視線を感じた。
 慌てて僕は顔を上げる。今は国語の授業中。凪原先生が、他の子に教科書を読ませながら、僕の横に立っていた。
 驚いて僕は固まる。Dsiiピンチ。今これを没収されるのは、本当に痛い!

「…ふふっ」

 でも、凪原先生は優しく微笑んで、そのままスルーしてくれた。
 どっと汗が吹き出て、肩の力が抜けた。
 凪原先生は、何もなかったように授業を続けている。
 見逃してくれたんだろうか? でもどうして?
 ひょっとして、僕が転校するって話を真に受けたとか?
 いや、いくらほんわかした彼女でもそれはないな。
 でも見逃してくれたのは確実なんで、僕はそれに甘えて、なるべく先生の視線は意識しつつも、けっきょく一日中タッチを続けてしまった。

 そうだ。そのうち凪原先生も僕のポケガにしちゃおう。そうしよう。

 放課後。

 掃除当番も終わったところだ。
 さて、今日は早く帰って、知佳理ちゃんと姉ちゃんのレベルアップを続けよう。まだまだ上げるんだ! サルのように擦り続けるんだ!
 さっそく机の中を片付ける。するとカバンの中から手紙が出てきた。
 ノートを破って折っただけの、そっけないもの。でもこの変な折り方はたまに女子が授業中に回してるやつだ。差出人の名前は不明。

『チルルは見た! ちかりんがカイトくんのカバンに手紙を入れるところを!』

 DSiiの中で、柱から半分だけ顔を出したチルルが深刻そうな顔を作っていた。
 だんだん図々しくなってきたよな、コイツ。
 勝手に電源入れるなよ。もはやDSii本体気取りかよ。僕が違うゲームをしたくなったら、どうしたらいいんだよ。

『ソフト抜いたらマンドラゴラ並みの悲鳴を上げますが何か?』

 やっぱりな。

「そんなことより、知佳理ちゃんが僕に手紙を?」
『はいです。彼女は体育館の用具室で待ってるそうです』

 柱のかげで、神妙そうな顔をしてチルルは頷く。
 ゲームのくせに勝手にユーザー様宛の手紙を読むなとか、ゲームくせにどうやって手紙を開いて元通りにたたんだのかとか、言いたいことはいろいろあったが、僕もそろそろどのへんが世間の常識ラインなのかわからなくなってきたので、余計なことは言わないことにした。

「用具室か…」

 ―――ピンク色の予感がする。

 知佳理ちゃんが待っていた。
 用具室の扉を開けた僕を見て、安心したように頬を緩めた。

「来てくれてありがとう」

 いつものように落ち着いた声に、僕の方がドキドキする。
 授業中は必死だったから気づかなかったけど、やっぱり彼女も姉ちゃんみたいにレベルアップしてる。
 こんなに目がきれいだったっけ? なんだか立ち姿も妙に色っぽいし、ドキドキが止まらない。
 きれいだ。本当に可愛い。
 じっと見つめられて、落ち着かない。

「こんな風に呼び出したりしたら、私の言いたいこと、バレちゃってるよね」

 知佳理ちゃんが近づいてくる。僕はなぜか後退ってしまう。でも、すぐ目の前に彼女がいて、僕はその真っ直ぐな瞳に吸い寄せらて逃げられない。

「私、内崎くんのことが好き。大好き」

 何が起こったのかわからなかった。
 僕は知佳理ちゃんにキスされた。ありのまま起こったことを話すと、僕は知佳理ちゃんにキスされた。

「た、立花…ッ?」

 目の前に知佳理ちゃんの上気した顔。大きな目。

「キス…勝手にごめん。私のファーストキスの相手は、絶対に内崎くんだって思ったから」
「で、でも…」
「んっ」

 また唇を押し当てられる。強く抱きしめられて、いい匂いと柔らかい感触に全身が包まれる。

「…誰にも渡したくない」
「え?」
「内崎くんを、私のものにしたい」
「え? え?」

 マットの上に押し倒される。まさかの2日連続逆レイプの予感。ギュウって抱きしめられて、キスをされる。何度も何度もキスされる。
 でも唇を押し当てるだけの、不器用なキス。一生懸命で、ガチガチのキスだった。
 僕はようやく、彼女の肩が震えていることに気づく。彼女が隠してる緊張を見つけて、愛おしい気持ちになって、その肩を抱く。

「んっ」

 小さな声を出して、知佳理ちゃんの体に力が入った。僕はそれを解すように優しく撫でる。知佳理ちゃんは目を固く瞑って、必死でキスを続けてる。
 倒れた拍子に投げ出したカバンの中から、DSiiが飛び出ていた。応援団の格好したチルルが、ごつい団員さんたちを率いて僕の応援をしていた。
 うぜえ。

「立花ッ」
「あっ」

 僕は知佳理ちゃんと体を入れ替える。知佳理ちゃんは戸惑うような顔をして、でも見つめ合ってるうちに僕の気持ちを察したのか、そっと目を閉じた。
 本当にいいのかな。
 でも、ここで止めちゃうなんて我慢ができるわけがない。もったいない。
 僕は知佳理ちゃんの服を脱がしていく。Tシャツも、スカートも、タンクトップも、そしてパンツも。知佳理ちゃんは、最後の一枚まで僕が脱がすのを邪魔しなかった。
 裸になった知佳理ちゃんが、僕の目の前にいる。
 胸もお尻も小さい。でもきれいだ。白くて、すべすべで、細くて、すごくきれい。

『ふふーん』

 チルルは知佳理ちゃんの胸を見て、勝ち誇ったような顔をしていた。帰ったら、姉ちゃんのおっぱいで画面をグリグリしてやる。

「魁斗、くん…」

 知佳理ちゃんが僕の名を呼んで、手を握ってくる。僕は彼女の不安そうな頬を撫でる。

「…知佳理ちゃん」

 名前で呼ぶと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「知佳理でいいよ。魁斗くんには、そう呼ばれたい」
「…知佳理」
「うん…」

 キスをした。まだ固くなってる知佳理ちゃんの唇を、僕は時間をかけて柔くした。ペロリと唇を舐めると、彼女はくすぐったそうに肩をすぼめた。

「知佳理も舌を出してみて」
「え…?」

 僕がそう言うと、彼女はおずおずと、恥ずかしそうに舌を伸ばしてきた。僕はその舌に自分の舌を重ね合わせる。そして、ゆっくりと動かす。

「えぅっ、ん、ふっ、んっ、れろ、ちゅっ」

 しばらくそれを続けるうちに、知佳理ちゃんも自分から舌を絡めるようになってきた。僕らは大人がするようなエロいキスをする。それを続けながら、僕は知佳理ちゃんの肌を撫でていく。

「んっ、ふぅんっ、ちゅっ、魁斗くん、魁斗くんっ、んっ、ちゅっ、あんっ」

 くすぐったそうに知佳理ちゃんは身をよじる。でも僕がキスを続けるように言うと、素直に舌を伸ばしてくる。チロチロと絡めたり吸ったりしながら、僕は彼女のなだらかな胸やお腹を撫でていく。
 でも知佳理ちゃんは、やっぱり快感よりもくすぐったさの方が強いみたいで、じたばたと落ち着かない。
 僕はDSiiを持ち上げる。ビデオカメラの三脚を立てようとしていたチルルが『わーん!?』と悲鳴をあげる。

 召喚してタッチモード。知佳理ちゃんの目がうつろに変わる。

 そしてペンを彼女の肌に這わせた。画面の中の知佳理ちゃんが「あぁん!」と大きく跳ねる。リアルの知佳理ちゃんは無反応のまま。でもその白い肌を這う僕のペンの軌跡が、薄く窪んで現実化している。
 ぺたんこな胸の周りに円を描く。現実でも彼女の肌が丸く揺れる。うつろな彼女。嬌声を上げるゲームの中の彼女。乳首をつつく。ぷるぷる揺れる。こりこり弾く。色っぽい声を上げる知佳理ちゃん。うつろな瞳を遠くに向ける知佳理ちゃん。どっちも魅力的だから、どっちを見ればいいか困る。
 目の前に横たわる彼女の体はまるでお人形さんみたい。僕はそのすべすべの股間を指で開く。白い肌にぴったり閉ざされていたそこは、赤みがかったピンク色を隠していて、わずかに濡れていた。DSiiをマットの上に置いて、片手でペンを、片手で知佳理ちゃんのあそこを開いたままタッチモードを続ける。
 知佳理ちゃんのそこは、姉ちゃんのよりシンプルで小さいし、なんだか美味しそうな感じさえした。タッチペンでそこをいじると、現実のそこもふにふに揺れて、ちょっとずつ中から汁もあふれてきた。

「あぁっ! やぁっ、魁斗くん! やん、魁斗くん!」

 ポケガの知佳理ちゃんがビクンビクン跳ねる。現実マンコも濡れていく。小さくてよくわからないけど、姉ちゃんのより少し奥の方に、ポッチみたいのがついてる。
 これがクリトリスってやつかな? 前に校長先生がオマンコの絵を描いてくれたとき、ここが女の弱点だって言ってた。ここを狙えって言ってた。
 僕は画面を最大までマンコのアップにして、その小さなターゲットをめがけて、ペンで突いた。プルってクリトリスが揺れた。

「ひゃあぁ!? やっ、やんっ、そこダメ! ダメぇ!」

 DSiiの中では知佳理ちゃんが大声を出して乱れまくる。でも現実の知佳理ちゃんは放心状態だから、外に声が漏れる心配もない。
 ツンツン突く。コシコシ擦る。ポケガ知佳理ちゃんは面白いくらい反応する。リアル知佳理ちゃんのあそこもピクピクと反応する。画面のマンコを強めに弾くと、本物のマンコの中からチュッ、チュッと汁が跳ねてくる。
 おもしれー。マンコおもしれー。
 そこばかり攻撃した。ゲームの中の知佳理ちゃんはめちゃくちゃに叫んで、ビクンビクンしてた。リアル知佳理ちゃんのあそこももうビチャビチャだった。そろそろとどめが必要だと僕は思った。
 僕はペンを高い位置に構えた。よーく狙って、ペンを落とした。
 クリトリス弾道ミサイル「ヘヴン」発射。

「ああぁーッ!」

 “ヘヴン状態!!”

 プチュッ、という音がして、知佳理ちゃんのアソコから、結構な量の汁がトロリと垂れた。
 僕は召喚を解除して、DSiiを彼女から隠す。

「ふあ…魁斗、くん…? あ、あれ…私…あっ…?」

 現実感を取り戻した彼女は、ピクリ、ピクリと快感の余波に翻弄されて、体を波打たせた。
 自分がエクスタシーに達した直後だということを、当然彼女は知らない。戸惑いながら、その余韻に体を震わせる。

「あっ、あ、あ…魁斗くん、私…あうっ…体が、変なの…」

 切なそうに潤む瞳。時々苦しそうに眉をしかめて、小さな胸を上下させる。半開きの唇から漏れる吐息は、上気した頬と同じように熱く火照っていた。
 これが知佳理ちゃんのイキ顔。自分の体に起こったのかわからなくて、困ったように助けを求める子犬のような瞳。
 やばい。超抱きたい。
 僕は彼女の足の間に腰を入れて、パンツを下げた。彼女の太ももを持ち上げて、接近した。
 されるがままになっている知佳理ちゃんが、股間に当てられた僕のを見て、「あ…」と驚きの声を上げて僕を見た。

「いいよね?」

 知佳理ちゃんは目を閉じて、「うん」と頷いた。

「魁斗くんに抱いてもらえるなら、嬉しい」

 本当に嬉しそうに知佳理ちゃんは微笑んだ。幸せな表情にチクリとくる。大事なマンコで遊んでゴメンね。
 僕は、十分に濡れた彼女のそこに自分のを擦りつけた。知佳理ちゃんは顔を真っ赤にして目を閉じた。彼女のエッチ汁で濡らしたチンチンを、僕はアソコに押し当てる。

「いくから」
「…うん」

 昨日は姉ちゃんの中に2回も入れたから、場所はだいたいわかってる。不安そうな彼女のお腹を撫でて、少しずつ進めていく。彼女のアソコは、ギュウってきつい。

「んっ、んんっ!」

 知佳理ちゃんは眉をしかめる。僕はなるべくスムーズに入れちゃいたいのに、彼女のそこは姉ちゃんのより狭くて、なかなか進まない。

「知佳理。足を持って。もっと広げて」
「え…?」

 僕の恥ずかしい命令に真っ赤になりながら、彼女は震える手で膝を持ち上げ、アソコを上に向けて開いた。

「これで…いい?」
「うん」

 僕はそこに覆い被さるようにして、彼女の中に腰を沈めた。グッ、グッと押し込んで、とうとう彼女の奥に当たるまで埋め込んだ。

「うぅぅーッ!」

 苦しそう喉を上げ、うめく知佳理ちゃん。体はガチガチに緊張して、ふっ、ふっと息を荒げて歯を食いしばっている。

「…大丈夫? 苦しい?」

 行き場を求めて彷徨う手を握ってあげると、力を込めて握り返してくる。
 そのまま僕らはじっとしていた。じんわりとした汗が彼女の全身に浮かび、僕のチンチンは彼女の中でギュウギュウに締め付けられる。
 やばいのかな、これ? 止めた方がいいよな。

「ごめん。もう抜くから」
「やっ! やだ!」

 僕が抜こうとすると、知佳理ちゃんは慌てて僕を抱き寄せる。その拍子に中の角度が変わって、まだ「ぐぅッ!」て知佳理ちゃんは悲鳴を上げる。

「私なら、平気だからッ。だから、このまま続けて…! お願い!」

 必死にしがみついて、足も絡ませる。でもこんな苦しそうな知佳理ちゃんに無理はできそうもない。
 DSiiは、まだ僕の手の届くところにある。

「そのまま、じっとしてて」

 彼女からは見えないように腕を伸ばし、タッチモードの設定を『ダイレクト』に変えた。
 これで彼女は自分の意識を保ちながら、DSiiのタッチを受け止めることになる。
 僕はアバター知佳理ちゃんの胸に、そっと触れた。

「あんっ」

 画面の中の彼女と、現実の彼女が同じ声を出した。
 僕は胸や乳首を優しいタッチでなぞる。

「ひやっ、あんっ、あっ、なんだか、あっ、どう、してっ」

 ピクンピクンと彼女が僕の下で跳ねる。でもまだまだ痛そうな表情はしてる。僕はそのまま、DSiiで彼女の体を愛撫した。胸やお腹や、お尻のあたりもくすぐってあげた。
 
「んっ、あっ、魁斗くん、あっ、なんだかっ、きゃん、あぁっ」

 知佳理ちゃんが戸惑うように上げる嬌声。いつもの彼女じゃ想像もつかないような可愛い反応。すごく色っぽい。やっぱり本物は興奮する。
 僕は画面をスクロールさせる。彼女の、僕のを咥えてぱっくり広がったマンコをアップにする。
 ギチギチに張り詰めたそこは、本当に痛そうだ。僕はそこを優しく撫でてあげた。傷つけないように、カーソルを舌にして軽いタッチでさすってあげた。

「あんっ?」

 ピクと、彼女の体が跳ねる。その拍子にあそこもキュッて動いた。

「あっ、あんっ、きゃっ、やだ、んっ、ふっ、くすぐったい、ん、ムズムズ、するぅ…ッ」

 ピクンピクンと反応して、僕のチンチンにも彼女の快感が伝わってくる。僕は何度もその動作を続けた。彼女の声がどんどん大きくなってくる。さらに、僕はクリトリスを攻める。ツンツンと攻める。

「ひゃっ、ひゃんっ、やっ、あん、ごめん、なんか、私、あっ、体が、変なの、あっ、やだ、ごめんっ、ごめんなさいっ、あっ、あん!」

 僕のチンチンを擦るようにして、知佳理ちゃんの腰が跳ねる。見えないところからクリトリスを攻撃されているとも知らず、どうして感じるのか自分ではわからない彼女は、はしたないところを僕に見せてると思ってるのか、恥ずかしそうに、でも正直に反応する体を抑えられずに、淫らに腰を動かしている。
 もう体は慣れたのか、知佳理ちゃんは可愛い声には苦しそうな気配もない。
 そろそろ僕も、動いてよさそうだ。

「あぁっ!? 魁斗くん!」

 グッと僕が腰を動かすと、知佳理ちゃんは驚いたように大きく口を開けて僕の名を呼ぶ。
 強すぎないように、小さなストロークで彼女の膣を擦る。タッチも続ける。
 クリトリスをレロレロと刺激されながらチンチンを出し入れされる快感に彼女は翻弄され、僕の首にしがみつき、華奢な体をぶつけるように腰を動かし始めた。グイグイ揺らしてきた。
 甘い声が可愛い。熱い吐息がエロい。彼女の目尻から喜びの涙がこぼれる。何度も僕の名前を呼んでる。
 僕は今、立花知佳理とセックスしてるんだ。ずっと大好きだった彼女を僕は抱いてる。
 みんなも狙ってたクールな女子を手に入れた。向こうから告白させて、その場でセックスしてやった。
 幸せすぎる。気持よすぎる。
 タッチモードとセックスを同時に進めて、僕の快感もすごい勢いで上昇していく。もうじき彼女もヘヴンだ。僕はそのタイミングを狙って腰を動かす。ひたすら突く。彼女の子宮とクリトリスを擦る。

「あぁん、魁斗くん! あふ、あっ、あっ、魁斗くん! 魁斗くん!」

 ギュウウっと知佳理ちゃんがしがみつく。僕は彼女の一番奥にチンチンを擦りつける。彼女の中が、すごい強さで締め付ける。その衝撃に耐えながら、僕はクリトリスにクリック連打する。

「あぁぁーッ!」

 “ヘヴン状態!!”

 頭の中が真っ白になって、腰が溶けてなくなっちゃうんじゃないかってくらいブルブルきて、僕は知佳理ちゃんの中に射精していた。

「…魁斗、くん…」

 こてん、と彼女の手が僕の背中から離れてマットに落ちた。
 彼女の体から力が抜けて、スゥスゥと寝息を立て始めた。
 朝からずっとヘヴン続きで、初めてのセックスで最後までイッちゃって、彼女もくたくたになってるんだろう。

「…ふふっ…」

 すべすべのほっぺたを撫でると、知佳理ちゃんは無邪気な笑顔を浮かべた。
 なんだか僕まで、幸せな気持ちになった。

『―――カイトくん、大変にゃ、大変にゃ!』

 でも、DSiiの中でエロアクマが騒ぐから、うっさいなと思いながら僕は顔を上げる。

『これを見るのにゃ!』

 チルルが自分の部屋のテレビをつけた。テレ東ではカエル軍曹アニメが再放送中だった。
 その画面上部に、小さく「臨時ニュース」のテロップが流れた。

 “内崎魁斗氏、同級生を犯しながらレベルアップの快挙達成(用具室では世界初)”

『おめでとうございます! 今のヘヴンで、マスターカイトくんもレベルアップでございまーす★』
「…他のチャンネルも見てみようよ。ひょっとしたら特番とか入ってるかもしれな…」

 ぶつんとテレビは消された。
 暗くなった上画面に僕の情けない顔が映る。
 チルルは下画面でバタバタとはしゃいでいる。

『さらにさらにー! 聞いてたぎらせ、エロ男子! いよいよお待ちかねの…『お着替えモード』の解禁だー!』

 僕のレベルアップの時と違い、派手な画面効果と音楽(歌:チルル)で盛り上がる中、チルルが華やかなウエディングドレスに着替えて空に舞い上がり、その周りをいろんなコスチュームを着たチビチルルが楽しそうに踊りだした。
 女子高生になったチルルのスカートが風でめくれたり、アイドルの衣装を着たチルル数人が息のあったダンスを披露したり、ペンギンになったチルルが行進して後ろの1匹がコケたり、チアリーダーの格好をしたチルルたちが大技を決めてみせたりしてた。

 僕はそれを、冷めた目で見てた。

< 続く >

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