人妻人形日記 五週目①

 

・6月23日(月)

 

 

「なんなの?」

 

 職場の給湯室で、ジト目の小田島に迫られる。

 

「なんでメール無視すんの?」

 

 長い人生の間にメールの一つや二つ空振りしたところで何が困るっていうんだ。

 そして僕はその人生でおそらく一番大切な一週間の中にいる。

 だから単刀直入に答えた。

 

「どうしてもやらないといけないことがある」

「は?」

「今週そっちに集中する。だから小田島に連絡してるヒマもないんだ」

 

 ますます眉間にシワを寄せ、ずいっと顔を近づけてくるが、僕もじっと彼女の顔を見つめ返した。

 やがて小田島は、息もかかるその距離で言う。

 

「……貴司のそういう何考えてるのかわかんないとこが、私なりにちょっと気になってたのかもなって思うけど、ひょっとしたら永遠に意味わかんないかもしんない。それちょっと怖くね?」

 

 僕がこれまでどんな女と付き合っても長続きしなかった理由がそれだ。

 そういう風に思われるらしい。まるでロボットか人形みたいに見えるときあるって。

 自分のどんなところがどんな感じに異性に見られているかなんて、こっちだって知ったことではないけど。

 

「キスしたくせに、なんでそんなこと言えるの?」

 

 今もくっついてきそうなくらい近い位置にまでくる唇。

 うかつに手を出してしまったことを後悔している。ただ、彼女に悪いことをしたなんて意識はない。

 

「キスはお互い様だろ。あの雰囲気でしないヤツの方がおかしい。今までそんな男いたか?」

 

 小田島はちょっと笑いかけ、そしてすぐに不機嫌な顔を取り繕って「ごまかすな」と唇を尖らせる。

 

「そーゆーことじゃないし。同じ職場同士の男女でキスしちゃったら、少しは責任ってあるじゃん。それなりに覚悟ないとしないじゃん」

 

 ここで「責任なしにしてる人たちだっているかもしれない」なんて言えば女子社員全員を敵に回すことになるんだろう。

 そのくらいの空気は読める。でもどっちにしても僕が悪者になることは確定している勝負だ。つべこべと言い訳するのも面倒だし、余計なウソは言わない方が少しは有利だ。

 

「今週だけ待って。そのあとなら連絡出来るし、どっか遊びにも行けるよ」

 

 小田島は、「あー」と察して首を傾け、斜め下から僕を睨み上げる。

 

「女か」

 

 僕は息を吐いて、「そんなとこ」と答える。

 

「まさかどっちにしようかって考えてる?」

「違うよ。そういうんじゃないって。結果はあっちの終わりで決まってるけど、時間がかかるってこと」

 

 具体的には今週末までだ。

 僕にはタイムリミットが決まっている。先輩が行っている現場は、たとえ今週いっぱいで解決しなくても交替することが決まっている。その交代要員は同じ係のベテランと僕だから、絶対的なリミットだ。

 おまけの一週間を、せいいっぱい幸せに過ごしたい。それだけだ。

 小田島も、腕組みしたまま「ふー」と息を吐く。

 

「いいよ、わかった。その代わりちゃんと整理して」

「うん」

 

 彼女も「ん」と頷いて僕に背を向け、そして出て行く間際にまた振り向いて言う。

 

「私も今週中に整理しとくから」

 

 おまえもかよって言いかけたけど、ひょっとしたら彼女なりの見栄かもしれないし、藪から蛇が出ても困るのでやめた。

 そもそも僕は小田島と付き合うのか?

 決定事項のように話は進んでいるので、今さら方向転換も面倒そうだからたぶん付き合うけど。

 今週いっぱいだ。

 僕の青春は、今週終わる。

 

「おかえりなさ……ん、ちゅっ」

 

 玄関まで迎えに来てくれた佳織さんの唇を奪う。

 すぐに真っ赤になって「もー」と怒る彼女に、後ろに隠していたアイスを渡す。

 

「これお土産です」

「食べ物でごまかそうとしてもダメ」

 

 と言いつつ佳織さんはアイスの箱を受け取って、「これは食後にいただきます」と笑ってくれる。

 新婚さんの気分だ。

 

「でもキスもダメだから、絶対…っ、ん、もー!」

 

 佳織さんも僕にかなりの隙を見せてくれている。キスしたって本気では怒らない。

 先輩が帰ってきたら僕は他に好きな人を作る。僕たちはそれまでの恋人。

 全部は了解してくれたわけじゃないけど、その条件で佳織さんも人妻の貞操意識を緩めてくれていた。

 僕らは、この関係を誰にも秘密だということを共有している。

 

「ご飯冷めちゃうから、早く食べよ」

 

 そう言いながら佳織さんはパーカーのファスナーを下ろす。可愛い黄色のブラに持ち上げられた豊満な乳房が、くっきりとした谷間を作っている。

 膝丈くらいのスウェットパンツも、するりと下ろして同色のパンツとまぶしい太ももを、僕の前に晒してくれる。

 

「貴司くんも脱げば?」

「え、あ、はいっ」

 

 自分が催眠暗示で命令していたことも忘れて僕は見入っていた。

 やっぱり佳織さんのプロポーションはすごい。何度見ても見惚れてしまう。

 

「いただきます」

 

 僕も下着一枚になって食卓に向かい合わせになり、裸の食事会が始まる。

 佳織さんの笑顔が今日も素敵だった。

 そして、彼女の肌にも魅入られる。手を叩いて笑うときの胸の弾み方とか、キッチンに何か取りに行くときのお尻とか。

 

「佳織さん」

 

 僕はテーブルの上に手を伸ばす。

 

「ん、マッサージ?」

 

 佳織さんも照れくさそうに手を伸ばして僕らは指をしっかり絡め合う。

 

「ふふっ、ちょっとくすぐったい」

 

 どうしてだろって佳織さんは首をすくめる。

 それはきっと、まるで恋人同士みたいな食卓だからだ。

 

「あ、アイス食べる?」

 

 そう言って冷蔵庫に向かうときに離れた手が寂しかった。

 だけど、佳織さんはアイスを持って僕の正面ではなく隣の椅子に戻ってくる。

 

「食べよ」

 

 少し恥ずかしそうに微笑んで、並んでアイスに舌鼓を打つ。距離は確実に近づいていた。

 すぐに食べ終えてしまった僕らは、どちらともなくまた手を繋いだ。

 

「……ね?」

「はい」

「マッサージ、して?」

 

 そして佳織さんの方から、誘ってきてくれた。

 俯いて頬を赤くしている彼女は、僕が立ち上がると手を握ったままソファまでついてきてくれた。

 仰向けに寝かせて、彼女の足を持ち上げて股間同士をくっつける。

 

「……ふぅ」

 

 鼻から抜ける息を漏らして、佳織さんはじっと僕を見上げている。その表情は上気して瞳も揺れるように濡れている。

 

「あっ」

 

 僕が腰を動かすと、軽く仰け反って甘い声を出した。

 そうしたらもう僕だって夢中になってしまう。

 人妻の肢体に。

 色っぽい喘ぎに。

 僕らだけの秘密に。

 

「佳織さん……あっ、気持ちいいです、んんっ」

「あっ、んっ、あんっ、気持ち、いいのっ? 貴司くんも、このマッサージ気持ちいいのっ?」

「いいです、すごくっ。ずっとこうしていたいくらいだっ!」

「あっ、んっ、んっ、わ、私もっ。気持ちいいっ。貴司くん、気持ちいいっ」

「あぁっ、佳織さんっ、佳織さん!」

 

 下着同士を擦り合わせて、互いの高まっていく体温を感じ合う。

 僕がブラの上から胸を揉んでも、それをマッサージとして佳織さんは受け入れてくれる。

 切なく可愛い声を出して、「気持ちいい」って悶えてくれるんだ。

 

「あぁっ、貴司くん、気持ちいいっ。いいの、すごいのっ。あっ、あっ、体、浮いちゃうっ。気持ちよくって浮いちゃう!」

 

 ぐぢゅぐぢゅと僕らの下着が音を立てていた。

 僕もそうだけど、佳織さんの体も反応が良くなっている。

 マッサージでの快楽を素直に受け入れ、体を開いてくれている。

 

「佳織さん……」

「あっ、あっ、ダメ、浮いちゃうっ、浮いちゃうっ!」

 

 腰を抱いて引き寄せ、強く擦りつける。

 彼女の形がはっきりと感じられるくらい、僕の陰茎を押しつける。

 

「いいっ、あんっ、貴司くん、いいよぉ!」

 

 このまま挿入しちゃえって気持ちにもなる。

 どうにでもなってもいいって。

 だけど、それはギリギリ踏みとどまって擬似的なセックスで彼女を導く。

 

「んっ! んん! あっ、貴司くん、たか、し……く、あぁぁぁん!」

 

 ビクンビクンと佳織さんの体が痙攣し、おへそを伸ばすように反る。

 そのエクスタシーの波が終わるまで手を握り、彼女の体がソファに沈むまで見守る。

 

「んんっ、くぅっ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 指を軽く噛むようにして、佳織さんは顔を火照らせる。

 僕は、たまらなくなってその上に覆い被さる。

 

「佳織さん……」

「んっ、ちゅむ、んん…ッ」

 

 弱々しく震える唇はキスを拒まない。

 調子に乗って僕は舌を差し込む。

 

「ん、ダメ……」

 

 僕の肩を押し上げて佳織さんは顔を背ける。さすがに性的すぎるキスには抵抗があるようだ。

 その頬を撫でながら僕は佳織さんに謝罪する。

 

「すみません、佳織さん。舌は入れませんから」

 

 そしてあごを持ち上げるようにしてキスを迫る。彼女は「いや」と首を振る。

 

「舌は入れません」

 

 だけど体に力が入らないのか、あるいは本気で抵抗するつもりはないのか、あっさりとその体から強ばりが消えていく。

 

「ん……」

 

 僕にマッサージされた彼女は、セックスの後のようにガードが甘い。

 何度も唇を重ねても、じっとされるがままになってくれていた。

 

「……お風呂、どうする?」

 

 ソファの上でブラの紐を直しながら佳織さんが言う。

 

「今日も泊まってってくれるんなら、お風呂もうちで入っていけば? 別々でお湯を張るのもったいないし」

 

 佳織さんの厚意にありがたく甘える。

 もちろん一緒に入るわけじゃないけど、僕に先に入るように彼女は言ってくれたし、お湯加減を聞きに磨りガラス越しに声をかけられたときは、お約束だけど浴槽の中で身を縮こまらせたりした。

 そして彼女がその後に入ったとき、僕はリビングで1人でドキドキする。

 夫以外の男と2人きりなのにお風呂に入るって、かなり心を許してくれてるし、信頼もしてくれている。同じ部屋で寝泊まりさせているんだから当然のように思えても、お風呂の件は僕から指示したことじゃない。彼女の提案だ。

 心の距離が縮まれば縮まるほど、どこまでが僕の誘導で、どこからが佳織さんの好意なのかがあいまいになっていく。

 そしてそれは、いつか彼女の中で一つになるんじゃないかと想像して、興奮と罪悪感でごちゃごちゃになる。

 僕のこれまでの暗示を彼女が自分の意思と一致させたとき、それは――

 

 想像だけで我慢できなくなり、そっと風呂場に近づく。

 脱衣場の外からシャワーの音が聞こえた。佳織さんは今、体を洗っている。しゃがんで、静かに僕は扉を開ける。音がしないように慎重に。

 そして、磨りガラスの向こうに肌色の体が揺れるのを見て、股間が痺れるように疼いた。

 黒髪を洗い流す水音、そしてぼやけたガラス越しでもはっきりとわかる彼女のプロポーション。お尻の割れ目もおぼろげにわかる。

 このままマスターベーションしてもすぐにイけると思う。だけど、もっと彼女に近づく方法を僕は知っている。

 口に手を当てて、大きな声で浴室に向かって言う。

 

「僕の催眠人形っ」

 

 急いで服を脱いで全裸になった。

 そして、浴室の扉を開いて、頭に手をかけたまま人形になっている佳織さんの裸体にしがみついた。

 

「カオリちゃんっ、カオリちゃん!」

 

 胸を揉んで、ヴァギナに触れて。彼女の濡れた肩に舌を這わせて温まった体を抱きしめる。

 柔らかいお尻に僕の股間を押しつける。どこまでも埋まっていく肌は挿入しているみたいだった。

 そのお尻の割れ目に沿って僕のを擦りつける。シャワーを頭からかぶりながら、夢中になって腰を振る。

 

「カオリちゃんっ、いいっ、やっぱり君の裸は最高だよっ!」

 

 割れ目の中心にあるアヌスが先端に擦れる。肌とは違う柔らかさがまるで僕を誘っているように感じる。

 湧き上がるイタズラ心と衝動が、僕の醜く笑わせた。

 

「カオリちゃん……力を抜いて。信頼できる僕が抱っこしているから、お尻をもっとリラックスさせて。そう、しっかりと支えているから、壁に手をついてお尻を突き出して」

 

 佳織さんのきれいな背中がシャワーを弾き返す。

 そしてその張りのあるお尻は、力が抜けて僕の手を柔らかく押し返す。

 

「そのまま。何も怖くない。僕がそばで支えているから怖くない。あなたの体に何が入ってきても……それは僕だから、あなたは幸せに感じる」

 

 薄めたリンスを陰茎に塗って、アヌスに押しつけてみる。

 試しにやってみるだけだ。

 無理そうならもちろんやめる。

 だけど、佳織さんのお尻は完全に弛緩していて、まるで膣のように簡単に広がっていった。一番太い部分を飲み込むと、当たり前のように僕のを包み込んでしまった。

 

「あぁ……ウソだ……」

 

 信じられない。

 こんなところでもあなたは僕を受け入れてくれるなんて。

 僕のことを、そこまで信じてくれてるなんて。

 

「佳織さん……ありがとうございます、あぁ、ありがとうございます!」

 

 ゆっくりと、彼女を傷つけないように腰を動かす。

 膣よりも狭く、だけどひっかかりが少なく、ぬるぬるとよく動いた。僕の形になってしまっているのかと自惚れてしまうくらい、腸壁は張り付いてくる。

 秘密の中の秘密。佳織さんのここの感触はきっと先輩だって知らない。

 佳織さんが初めてアナルセックスをした相手は僕だ。お尻処女を捧げたのは僕だ。

 この感動に任せて腰を振りたいけど必死に堪える。大事にしなきゃダメだ。デリケートな場所だから。

 佳織さんの処女孔なんだから…ッ!

 

「はぁ、はぁ、カオリちゃん、いいよ…ッ、すごい、いい!」

 

 シャワーの音。僕の乱れた呼吸と彼女の静かな呼吸。陰茎に引っ張られてめくれるお尻の穴。

 心臓が破裂しそうなくらい興奮している。

 シャワーに流されてるけど、きっと僕は泣いている。

 初めてのアナルセックスの相手が人妻のお人形さんであることに、泣くくらい感動していた。

 

「佳織さん……佳織さん、あぁ!」

 

 そして腸内にどくどくと僕の精液を全部残らず発射して、ゆっくりと引き抜く。

 彼女の突きだしたお尻の穴が緩く広がったまま、僕の白い濁りを垂らす光景は目眩がするくらいいやらしい。

 だけどあまりこのままにしておくのも彼女の体が心配なので、僕は佳織さんの耳元でささやく。

 

「体を洗うときは、お尻の穴も、その中もシャワーできれいにする。あなたはいつもそうしている。お風呂に入って、体を温めて、お尻の穴もしっかりとリラックスさせて。ゆっくり。僕はいつまでも待てますから、ゆっくりと体を休めてください」

 

 僕が脱衣場から出て行ったら覚醒する。

 そう指示して、僕にお尻を向ける彼女の姿を目にもう一度目に焼き付けて、どんな格好をしても美しくエロい人妻尻にキスをして、体を拭いて出て行った。

 

「――ごめん、普通に長湯しちゃった」

 

 なんだか腰のあたりが疲れてるみたいで。

 白いパジャマ姿の佳織さんは、腰に手を当てて伸びをしながら言った。

 無理な格好させて、しかも力を抜けなんておかしな指示をしたせいだ。

 だけど、お尻は無事みたいで何よりだ。

 

「あとでマッサージしますよ」

「えー、悪いよ。さっきしてもらったばかりなのに」

「いえいえ、させてください」

 

 さすがに悪いことした気もあって、真面目にしようと思ったけど、佳織さんは恥ずかしそうに頬を染める。

 

「……もうパジャマだからいいって」

 

 その下にブラはしていないと言外に匂わせ、胸を隠すように腕を回す。

 佳織さん、それ逆にエロいですから。脱がなくてもいいですよと、言いたいのにイタズラしたくなってしまう。

 

「じゃあ、下だけ脱いでくれればいいです」

「んー」

 

 僕の言うとおりにモジモジと下を脱いで、「脱いだよ」と恥ずかしそうにパジャマを引っ張って下着を隠そうとしている。

 そのせいで、胸の形がくっきりと張り付く。そして谷間も深く覗けてしまう。

 佳織さんはなぜかいつも以上に恥ずかしがり、自分でもどうしていいのかわからないみたいで、ずっと太ももをモジモジさせている。

 僕の前で下着姿になることに慣れつつあっても、上だけパジャマというイレギュラーさが彼女に違う羞恥を感じさせているんじゃないかと思う。「服を脱いで下着姿になるのは当然」と思い込んでいても、微妙に食い違うアンバランスな格好が感覚的な齟齬を生むというわけだ。

 そしてそれは僕にとっても目の潤いで、単純な下着姿とは違うエッチさと可愛さを今の彼女に感じている。

 

「……もう遅いし、どうせだからベッドの上でマッサージしましょうか」

「えええっ」

「どこでしても同じですよ。お風呂上がりであまり体を冷やしてもいけないし」

「で、でも、それはちょっと、恥ずかしいというか」

「ははっ、何も恥ずかしいことありませんよ。毎日していることじゃないですか」

「そうだけどぉ……」

「それに、今さら僕も佳織さんのその格好や体に触っても何も感じませんよ。興味もないです」

「な、なにそれ~。それはそれで、なんか失礼じゃない?」

「ははっ」

 

 冗談めかして言うと、佳織さんもようやく笑って僕の肩を叩く。

 

「もう」

「ほら、行きましょ。すぐ終わらせますから」

「はーい」

 

 そうして、気安く彼女の背中に手を回して寝室へ連れて行く。

 僕の使わせてもらっているセミダブルのベッドの前で、我慢の限界が近くなって彼女を押し倒し気味に寝かせる。

 

「やんっ、もうっ」

 

 パジャマの下の胸をたぷんと弾ませて、彼女はまだ僕がふざけていると思って笑う。

 その上に覆い被さって、彼女の首筋に顔を埋める。そしてパジャマの胸にも触れた。むにゅっと、柔らかい生肌に近い柔らかさに僕の手が埋まる。

 

「や、やぁんっ、もう、マッサージして欲しいのは腰!」

 

 くすぐったそうに首をすくめて、佳織さんはまだ笑っている。

 だけど僕は本気で興奮して鼻息も猛犬のように荒い。洗い立ての彼女の匂い。すべすべの肌。パジャマ越しでもわかる乳首の感触。

 そして寝室の空気が僕を狂わせた。

 

「んっ、あっ、もう、ふざけてないで、んんっ、こらっ。腰だってば、もうっ」

 

 佳織さんが僕の手を掴んで、自分の腰に触らせる。

 下着と肌を手のひらに感じる。そのまま優しく上下に撫で回す。

 

「んっ……」

 

 安心したのか、佳織さんはうっとりと目を閉じた。

 太ももにかけて手を這わせると、「ふぅっ」と息を吐いて軽く首を仰け反らせる。

 その無防備な首元に、僕はまたキス音を立てた。

 

「もー」

 

 佳織さんはまた笑って顔を背ける。だけど、腰を撫で続ける僕にそれ以上の文句は言わず、「ん」と色っぽい声を漏らして指を軽く咥える。

 

「佳織さん……」

「ん、なに……?」

 

 耳元で名前を呼ぶと、佳織さんもピクンと反応した。目を閉じたまま。

 僕は何も言わず、彼女の腰や太ももを撫で続ける。すこしだけまぶたを開いた佳織さんの瞳は濡れていた。僕の優しいマッサージに甘い息を吐いて、またうっとりとまぶたを閉じて指を唇で挟む。

 

「はぁ、んっ……気持ちいい……」

 

 指先でなぞるように太ももから腰へ。内股にも遠慮なく指を這わせ、手のひらで軽く揉む。

 

「んっ、あん……あっ、んんっ、あっ」

 

 ちゅっとまた首筋にキスをした。

 ピクンと佳織さんは反応したけど、怒ったりはしなかった。

 僕は調子に乗って、胸にもキスをした。ノーブラの柔らかいおっぱいは僕の顔をそこに埋めてしまう。

 佳織さんは、さすがに「だめ」と言ったけど、その力のない抵抗を無視して胸を吸い続けた。

 

「あっ、んんっ、ダメ……ウソつき……」

 

 僕がこれまで彼女についてきたウソなんて数え切れなくて、何のことを責められているのかわからない。

 でも、彼女がもう僕のマッサージに流されているのは確かだ。

 ここから逃げられることなんてない。

 

「ん、あんっ、な、なに?」

 

 腰のあたりをマッサージしながら、彼女のパジャマをめくっていく。

 お腹のまで丸見えになってから、佳織さんは慌てて隠そうとする。だけど、そこを優しく撫でているうちにおとなしくなってしまう。

 

「あんっ、んっ、貴司くん、んんっ……」

 

 そして隙を見て、下からパジャマの中へ手を潜らせた。

 彼女の生のおっぱいに――触れてやった。

 

「だ、だめっ」

 

 佳織さんは僕の手を急いで払いのける。「腰だけ!」って僕を睨む。

 さすがにやりすぎたかなと思って、僕は真面目に腰回りを撫で続ける。

 でも、そうしているとやっぱり佳織さんはトロトロに溶けていく。

 

「あ、んんっ、あんっ、はっ、貴司くん……気持ちいいよぉ」

 

 自分がどれだけ色っぽく僕を誘っているのか気づいていない人妻は、また無防備に胸を持ち上げるように体を反らす。

 彼女の名前をささやいて、僕はまた耳にキスをした。「あん」っとまた体を震わせて、佳織さんはうっとりと唇を開く。

 

「佳織さん、きれいだ」

「んんっ、ウソ……興味ないって言ったくせに」

「そんなわけないでしょ。僕がどういう気持ちでいるか知っているくせに」

「し、知らないよ、んんっ、知るわけない、あんっ」

「この腰、すごくきれいですべすべしている。最高ですよ」

「やだ、そんなこと、んんっ、ないから、あんっ、ちゃんと、マッサージしてってば、あんっ」

 

 前も後ろも、佳織さんの腰を舐めるように撫で回して、「最高だ」とつぶやく。

 彼女の耳にブチュと音を鳴らしながら。

 

「胸もマッサージしたい」

「い、いいってば。んんっ、パジャマだから、あんっ、しないで、お願い、んんっ」

 

 胸に腕を回してかばいながら、佳織さんは上気した顔で唇を舐める。

 もっと欲しがっているのはその表情で一目瞭然だ。

 僕も、股間が我慢できなくなっている。

 

「じゃあ、もっと腰のマッサージをします」

「うん、んっ、お願い、んんっ」

 

 2人の股間を重ね合わせると、「んっ」て佳織さんは喉を反らせる。

 腰をゆっくりと動かしながら僕は彼女の頬を撫でる。

 

「佳織さんとこうしているときが一番幸せです」

「んっ、やだ。なに言ってるの、んんっ。ただの、マッサージなのに」

「あなたの顔が一番近くで見えるから最高です。本当にきれいだ」

「そういうこと言わなくていいっ、んっ、いくら口説こうとしたって私は――んっ」

 

 キスをしたら、佳織さんは嫌がって顔を背ける。だけど腰を強く押し当てると我慢できないみたいで、ビクンって口を開いてアゴを上げる。

 僕はその頬を両手で挟んで、またキスをするんだ。

 

「んっ、だめっ、ちゅっ、だめ、お願い、んんっ、マッサージしながら、ちゅ、キスするのやめて、んんっ」

「どうしてですか? こんなに近くに顔があったら、キスしたくなるのは当たり前だ」

「したいからって、んんっ、ダメに決まって……んんっ、ちゅ、ちゅぷっ、あっ、いや、んんっ、強引、だってば、んんっ」

「好きです、佳織さん」

「ん、ちゅっ、やぁっ、んんっ」

「愛してる」

「んっ」

 

 唇は重ねても、舌を交えるようなキスはしない。そのルールを守っていることを信頼してくれたのか、あるいは抵抗する力も蕩けて残っていないのか、佳織さんは僕にされるがまま唇を任せてくれた。

 それどころか、軽く吸い返してくるようにもなった。

 

「んっ、好きです。佳織さん」

「あむっ、んっ、ちゅっ、んっ、貴司くん、あんっ、んっ」

 

 唇で頬を伝って耳や喉にキスをする。

 彼女の匂いを感じながら素股行為に没頭する。

 ベッドの軋む音がいつも以上にリアルなセックスを疑似体験させてくれた。彼女の感触もよりハッキリと感じる。

 トランクスが擦れて、ひょっとしたら陰茎が出てしまっているかもしれない。でも構うものかと彼女の股間にすりつける。

 

「んんんっ、あっ、貴司くんっ、貴司くん!」

 

 佳織さんの指が肩に食い込んでくる。

 僕はまた彼女の唇を奪って、がむしゃらに人妻の肉体を堪能する。

 

「好きだっ! 愛してます、佳織さん!」

「貴司くん…ッ! んっ、ちゅっ、ちゅぷっ、んんっ」

 

 佳織さんの瞳も、うっとりと濡れていた。僕の顔を、目を。夫ではない男の顔を、情欲に染まった表情で見つめていた。

 通じている。僕の気持ちが佳織さんを蕩けてさせている。

 これはもうほとんどセックスだ。このマッサージは僕らの愛を抱きしめ合うためのものだ。

 天に昇りそうなくらい舞い上がっていた。

 

「好きだ…ッ! あなたのことが、たまらなく大好きだ!」

「あっ、あ、あぁ、あっ」

 

 好きだ。

 世界で一番好きだ。

 きっと先輩よりも僕の方があなたを好きだ。

 陰茎をめいっぱい擦りつけて、彼女への気持ちを叫ぶ。

 

「佳織さんっ! 好きだっ、大好きだぁ!」

「あっ、あっ、あぁぁぁぁぁっ!」

 

 僕はもうこれで満足する。

 この秘密の恋はこれで達成されたと実感する。

 佳織さんの下着の上にびしゃびしゃと精液をぶっかけ、パジャマまで汚した。

 僕の背中に爪を立てたまま、佳織さんは仰け反って絶頂を迎える。

 真っ赤になった顔を寄せ合い、息がかかる距離で僕らは興奮が引いていく体を抱きしめ合う。

 そして、どちらともなくその唇を重ねる。

 幸福だった。

 満足だ。

 

「……なんかね」

 

 体を拭いたあとも、僕らは同じベッドにいた。

 マッサージと称して手を握る僕に、彼女はイタズラっぽく微笑んで応えてくれたから。

 そうして並んで天井を眺めながら彼女はポツリと呟く。

 

「男の子に好きって言われるの久しぶりだから、ちょっと嬉しいのはあるよ」

 

 自分で言って恥ずかしくなったのか、佳織さんは布団を噛むように口元を隠す。

 

「……先輩にいつも言われてるんじゃないですか」

「あの人はそういうこと言わないよー」

 

 だって幼なじみだからと、佳織さんは笑う。

 小さい頃に先輩のお嫁さんになると宣言して以来、それを当たり前のように過ごして結婚してしまったそうだ。

 なんだよ、その奇蹟。

 

「じつは他の男の子に付き合ってって言われたことはあって。中学とか高校のときとか。でも、全部断ってたんだ。私には許嫁がいますって」

「許嫁って……今どき聞かないですよね」

「ね。私も意味わかってなくて言ってたよ。お父さんも付き合ってるのは仕方ないけど、結婚まで許した覚えはないって怒られた。あはは」

 

 でも、恋ではなかったかなと、佳織さんは小さな声でささやいた。

 

「それが当然だって思ってただけなの。別にそれが不満だとか全然なくて、結婚して良かったと思ってるけど。でも、恋ってしたことないかもって気持ちもちょっとあるの」

「先輩以外の男子に、ときめいたりはなかったんですか?」

「……なかったかな」

「いや、ありますね。今のちょっとした間は、何かありましたね?」

「ないない。ただ、少しだけ思い出したことあって。高校生のときなんだけど」

 

 同じクラスの生徒会長やってた男子に、放課後の教室で告白されたことがあった。スポーツ万能で勉強も出来てすごい子だった。大人っぽい男子だったそうだ。

 その人は、佳織さんにフラれたときも堂々としていた。「友だちとしてこれからもよろしく」と笑って握手を求めてきたそうだ。

 

「あの人以外の男子と手を繋ぐの、なんだか初めて意識しちゃって」

 

 僕の手を握りながら、佳織さんは照れくさそうに笑った。

 そのときは少しドキドキしたって。

 

「でもそれだけ。卒業の日にまたみんなとハイタッチして、その人ともしたけど普通だったよ。だから恋ではなかったけど、ひょっとしたらあのとき私もあんなカッコイイ恋がしてみたかったのかなーって、今になって思った。あの人も今どこかで幸せになってるといいなって。それだけ」

「なんだか、いい話っぽく締めましたね」

「い、いい話のつもりだったんだけど!?」

 

 冗談めかして笑って、僕は「そうですか」と頷いた。

 

「じゃあ、僕と恋してみませんか?」

「しませーん。間に合ってまーす」

「したことないくせに」

「してるよー、たぶん。旦那様、大好きだもん」

「たぶんって」

「ふふっ」

 

 見つめ合って、キスをした。

 僕が顔を近づけても、佳織さんは逃げずに目を閉じただけだった。

 ただ待つだけのおとなしいキスだけど。

 

「……あのね」

「はい」

「あの人が帰ってきたら、もう絶対やめて。他の人を好きになるって約束して」

「わかってます。一つだけ教えてくれたら」

「なに?」

「どうしてその生徒会長の男の子だけ好きになったんですか?」

「す、好きになってないからっ。握手しただけ!」

「本当ですか?」

「なんでよー。ウソなわけないでしょ」

「いや、そうですよね。ごめんなさい」

「もう」

 

 ふてくされるふりをして佳織さんは微笑み、きゅっと手を握ってくる。

 そんな可愛い反応を見せる彼女に、僕も微笑みを返しながら言う。

 

「僕の催眠人形」

 

 目を開けたまま佳織さんは固まって、僕も真顔に戻った。

 ウソだ。彼女は僕にウソをついた。

 佳織さんは恋をした。

 僕でも先輩もない知らない男に恋してしまったんだ。

 ぐらぐらとお腹のあたりに何かが渦巻き、こめかみが締め付けられる。

 さっきまで心が通じ合っていると信じていたのに。最高の疑似セックスが出来たのに。

 佳織さんの初恋が僕も先輩も知らないところにあった。僕とキスしながらそんな話をなつかしそうにした。そのことが本当に気持ち悪くてどうしようもなかった。

 

「佳織さん……聞こえますね。返事をしてください」

「……はい……」

 

 久しぶりに聞く佳織さんの催眠声。

 相変わらずゾクゾクするほど色っぽいけど、今はそれを楽しんでいる余裕もなかった。

 

「あなたが高校時代に告白された生徒会長のこと思い出してください」

「……はい……」

「ここはその教室だ。あなたは今、その場所にいる。放課後の教室だ。2人きりだ。よく思い出して。正確に。そのときの気持ちも」

「……はい……」

「その人と握手したとき、あなたはどう思いましたか?」

「……悪いことしたなって……せっかく好きって言ってくれたのに」

「好きだと思ったんですか?」

「いえ……別に……」

「でもドキドキした」

「……いえ、私には彼がいるので」

 

 さっきと話が違う。

 覚醒時と違って、こうして催眠状態で語りかけている限り、佳織さんにウソなんてつけるはずがないのに。

 だけど、普段の記憶と、こうして催眠で深く掘り返したときの記憶が食い違うのは多少は無理ないだろう。

 誰だって無意識の記憶改ざんくらいするだろうし、学生時代の話なんて時がたてば美化されたり大げさに感じたりもする。多感な時期のことなんだから。

 それでも、彼女にとってこれは大事な話だと思うのになぜ記憶が逸れたんだ。どのタイミングで彼を意識した。

 僕は、さらに彼女の記憶を掘り下げていく。

 

「あなたは家に帰ってきた。その後、生徒会長のことを思い出しましたか?」

「……はい。その人のことを好きだった友だちがいるので、言おうかどうしようか迷いました」

「考えたのは友だちのことですか? 会長のことですか?」

「友だちです……仲が良かったので困ったなって……」

「教えたんですか?」

「……いいえ、彼に電話で相談したら黙ってた方がいいって言われて」

「彼に他の男に告白されたことを言ったんですか? 何て言ってました?」

「……またかって、あきれて笑ってました……」

 

 なるほど。

 この2人の間に隠し事はないのか。

 でも、じゃあどうしてその生徒会長の話を今頃になってしたんだ。

 

「次の日、会長とは話をしましたか?」

「……いえ」

「向こうが避けた?」

「……いえ」

「何も話さなかったんですか? 会長はどういう態度でした?」

「……彼は普通に挨拶してきました」

「あなたは?」

「……顔が熱くなって、彼のこと見れませんでした」

 

 僕は深呼吸して、もう一度聞く。

 

「彼のことを好きになってたんですか?」

「……わかりません……」

 

 心臓がうるさく鳴っている。

 高校時代の制服姿の佳織さんを思い浮かべ、そして僕の知らない教室で他の男子を意識する彼女を想像して、胸をかきむしりたくなる。

 

「どうして、顔が熱くなったんですか?」

「…………」

 

 返事の止まった佳織さんに、僕はゴクリと唾を飲み込んで口を近づける。

 慎重に。

 彼女の記憶が深い底に隠してしまった秘密の鍵を、丁寧に探っていく。

 

「恋人に何か変わったところはありましたか? いつもよりも冷たい態度だったとかは?」

「……ありません……私の話を、優しく聞いてくれました……」

「会長から夜に電話があった。そうじゃないですか?」

「いえ……何もありません……」

「夜、あなたはその日を告白を思い出しましたか? ドキドキしましたか?」

「……彼に相談してからは、何も。すっきりしていました……」

「じゃあ、夢は? その夜にあなたはどんな夢を見ました?」

「…………」

 

 カオリさん人形の返答が止まる。

 数年前に見た夢の内容を思い出せなんて、普通に考えてまともな質問じゃない。

 だけど、催眠術はそれを可能にした。

 E=mC^2で読んだ、夢の世界にだけ存在する館で憧れの先輩女子をメイドにする物語みたいに、脳のどこかにある秘密の場所をこじ開けるのがこの技術だった。

 

「……教室で、生徒会長とセックスをする夢……」

 

 やっぱり秘密はあった。そして、僕の怒りと嫉妬と喜びが唇を引きつらせた。

 

「そう……それであなたはその彼のことを意識した」

「……恥ずかしくて顔が見れなくなりました」

「恥ずかしくて忘れようとした。だってあなたは、そのときまだ処女だったから」

「……はい」

「恋人にも言えない秘密だ。あなたが最初にセックスを体験したのは夢の中で、違う男だったから」

「……でも夢……」

「そう。夢だ。あなたは恋人じゃない男とセックスを意識して、それを夢に見た。夢は願望の現れなのに」

「……はい……」

 

 彼女の深層意識の下に眠っているその男に心から嫉妬する。

 そして、深呼吸してその感情を殺す。

 

「いいです。そのことはもう忘れて構いません。深く記憶の底に沈めて。もう思い出す必要はありません」

「……はい……」

「力を抜いて楽にして。口を軽く開いて」

 

 夢だ。

 僕だって彼女と夢の時間を過ごしている。

 僕の方がもっと長い時間、カオリちゃんと愛し合っている。

 彼女の恋が夢のセックスなんかで生まれたっていうなら、僕だってしてやる。

 もっと強烈なセックスを見せてやる。

 

「口を開けて。もう少しだけ。歯を開いて」

 

 陰茎はすでに固くなっていた。

 同じクラスの男子とセックスする女子高生の佳織さんを想像して勃起していた。

 それを僕は、彼女の口の中に入れた。

 

「あなたは今夜、夢に見る。僕のペニスを跪いて咥える夢を。僕に命令されて、言われるがままあなたはチンポを咥える。ぢゅぶぢゅぶといやらしい音を立ててしゃぶる。しっかり覚えて。この大きさだ」

 

 佳織さんの体温を感じる。

 あの子どもじみたキスしか許してくれない彼女の唇に、僕の醜い陰茎をぎりぎりまで突っ込む。

 

「ほら、覚えて。舌を絡めるように動かして」

「ん、ん、ん、ん、ん、ん」

「入れたり出したりもする。夢の中であなたは僕のチンポを咥えて顔を前後に動かす。舌もたくさん絡めて、僕が気持ちよくなるように自分の口を使う。僕にそう命令されたから」

「ん、ん、ん、ん、ん、ん、ん」

「はぁ……カオリちゃん……」

 

 僕のフェラチオ人形だ。

 可愛い僕だけのカオリちゃん人形なんだ。

 

「そしてあなたは、僕の前で足を広げる。さあ、言われたとおりに広げて」

 

 ベッドの上でカオリちゃん人形は足を開く。

 僕の汚した下着はまだ濡れている。彼女の中からも溢れた汁で。

 

「セックスをします。僕と。あなたは夢の中で僕に抱かれた。無理やり犯された。だけどそれは最高に気持ちよくて、心から嬉しさを感じるセックスだった」

 

 下着を横にずらして、ゴムをつけた陰茎を挿入した。

 佳織さんのそこは相変わらず温かくて柔らかい。油断しきったヴァギナは簡単に僕のを飲み込んでしまう。

 

「ほら、入っていく。これは夢だ。だから抵抗しても無駄だ。あなたは僕に抱かれる。その体を好きなように弄ばれる。でも僕はあなたを愛しているから気持ちよくしてあげる。最高のセックスを2人で分かち合える」

 

 ギッギッと、ベッドが軋む。

 佳織さんの吐息が漏れる。

 

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」

 

 その両足を広げるように持って、僕は悠然と腰を使う。

 自分の女を抱くみたいに。

 

「あなたの幸せボタンに僕のチンポが触れている。わかるね? 僕のチンポがここの鍵だ。僕だけがあなたの幸せにスイッチを入れてあげられる。セックスでしか味わえない幸福がここにある」

「ふぅっ、ふっ、ふっ、ふぅっ、ふぅっ」

「犯されてるのに幸せだ。あなたは悶えて、喘いで、僕に犯される。夫ですら教えてくれなかった幸福を犯されて感じている。僕はとても優しい顔をしている。僕に犯されて喜んでいるあなたを、とても可愛いと褒めている。そしてどんどんどんどん犯す。あなたが溶けてなくなってしまうまで犯す。なのに、あなたの快楽はまだ止まらない。幸福感は増幅されていく」

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ」

「愛されているから。僕に愛されているから、あなたは自分がセックスだけになってしまっても幸福だ。初めての経験だ。これが本物のセックスだとあなたは実感する。今までのは偽物だったと知る」

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ」

 

 カオリちゃん人形の顔が真っ赤に火照る。

 僕の腰は早くなっていく。

 だけどまだまだ射精はしない。

 彼女の深層意識に僕のチンポの形が残るまで犯すと決めている。

 

「愛してるよ、佳織」

 

 人形の仮面の下で悶える姿を想像しながら、僕は朝まで彼女の息遣いを堪能する。

<続く>

2件のコメント

  1. 数週間前、これが投稿されたときにノクターンの感想を見返したら夢の続きについて言及があったので読み返しておいたみゃふに隙はなかったw
    いや、夢の続き名作でぅよね。強制的に言うこと聞かせてしかも現実に反映するの控えめに言って最高でぅ。
    まあ、それはそれとして。
    もういい感じにお人形遊びが加速してますね。夢を強制させて佳織さんの牙城を崩せるのか。

    あとまた誤字報告
    >「んっ! んん! あっ、貴司くん、たかと、し……く、あぁぁぁん!」
    名前の変更は置換でやったと思うので見落としが(みゃふも変更なら置換をするけど)
    貴(と)司くんでぅねこれは。二宮的なw

    1. >みゃふさん
      夢の続きいいですよね…
      本当はもっと他人の作品に言及していきたかったんだけど日和りました。
      誤字報告ありがとうございます!

感想を書く

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。