魔王と聖女と三王女 第七話

第七話

 三王女が我の仔を産み落とし、魔物の母として生まれ変わってから、人界にして半年ほどの時間が流れた。あれから三王女は幾度かの出産を繰り返して、今日に至る。産まれてきたものは、すべて娘。さらに、魔物の仔の生育は早い。最初のほうに産まれた仔は、すでに人間でいうところの少女ほどの姿に成長している。その姿は、すべからく母親をそのまま幼くしたかのような風貌だ。年長の……とは言ってもはじめの娘が産まれてから、まだ半年もたってはいないが……娘たちは、自らの妹達を抱きかかえながら、玉座の間の両脇に控えている。言葉は覚えていないが、言いつけを守る程度はできるようだ。

 三王女は、先日に何度目かの出産を済まし、ここに来たばかりの身軽な腹に戻っていた。幾度とない出産を経験しても、彼女たちの身体が崩れることはなく、むしろ乳房や尻肉は張りと肉付きを増し、妖しげな色香を増していた。

 我が玉座のそばには、リーゼとフィオがいる。傍らで控えるリーゼは相変わらずメイドの衣装に身を包んでいるが、今はその衣装の胸元が大きく開かれた造りになっている。彼女の胸元には、不気味に見開かれた巨大な瞳が埋め込まれている。魔物に堕ちた消えぬ証……リーゼは、それを誇るように胸を張って直立していた。

 我の足下には、甘える子猫のように喉を鳴らすフィオの姿がある。一糸まとわぬ姿の胸元には、リーゼやエレノアと同じ魔界の瞳が息づく。リーゼが何着か服を仕立ててやっていたが、フィオは「魔獣である自分が、服を着る道理はない」と言い張って、全裸で過ごしていた。我のそばにいるときは愛玩動物のようにじゃれついてくる。

 我の眼下、玉座の間の中央には、エレノアが立つ。薄布で仕立てられた扇情的な踊り子の衣装は、ただでさえ豊満なエレノアの身体をさらに妖艶にひきたてる。エレノアは、踊っていた。細い腕が風を切り、しなやかな脚が激しい拍子を刻む。胸元の不気味な瞳を見せつけるように身をくねらし、情熱的な舞に合わせて朗々と歌を歌う。人界でも今は使う者がいなくなった古代の言葉の歌、その歌詞は運命に引き裂かれた男女の情熱的な恋歌だった。

 エレノアの妖しくも美しい舞踏を眺めながら、我は彼女の透き通る歌声を聞いて、訳もなく不快感が込み上げるのを感じる。湧き上がる吐き気が、どこから来るかもわからない。三王女は魔に堕ち、我に忠誠を誓い、すべては順調に進んでいるはずなだというのに……我は、足下で丸くなるフィオの身体を抱きかかえた。

「にゃあん……」

 文字通りの猫なで声をあげて、軽く小さいフィオの身体が持ち上がる。我は、剛直を股間から解き放つと、その上にフィオの身体を下ろした。

「ふぁッ! ああぁぁぁんん!!」

 フィオが嬌声をあげる。舞うエレノアの視線が、一瞬だけ羨望を込めてフィオを見つめる。傍らからは、リーゼがつばをのむ音が聞こえた。何の抵抗もなくフィオの秘所は、我が男根を飲み込む。小さな体に熟れきった尻肉、幼く狭い膣に熱く蕩けきった肉壁、矛盾を内包したフィオの肉体が我を快楽で迎え入れる。我は、古代の恋歌を聞いてこみあがってきた不快感を忘れようと、フィオの肉体を貪る。

「あふ……ん! んんん!!」

 エレノアの舞と歌を邪魔してはいけないと持ったのか、喘ぎ声をかみ殺すフィオ。その様を見てか、エレノアが踊りの拍子をより一層激しいものへと変えていく。我の腰が、フィオを突き上げる速度も増していく。

「ぁ……ぃ……あふぁ……ッ!!」

 フィオが唇を噛んだまま絶頂を迎えた。我もまた、フィオの内部に精を放ってやる。エレノアは、さらに激しい律動を全身で刻み、情熱的な舞を踊りきった。

「私のダンス……いかがでしたか? お父様」

 エレノアが息を弾ませながら、我のもとに歩み寄る。全身には、玉のような汗が浮かんでいた。我は、絶頂に脱力したフィオを床におろしてやり、エレノアに向き直った。

「悪くはない……だが、あの歌は余計だったな」
「あぅ……申し訳ありません」

 我が告げると、エレノアは残念そうに顔を伏せる。そして、指を突き合わせて、モジモジとしだす。

「あの……お父様?」
「どうした?」
「お気に召さなかったってことは……ご褒美は頂けないのかしら……」

 伏し目がちに我を見つめるエレノア。

「それくらいのことならば……別にかまわん」

 我は、まだそそり立ったままの股間の男根をエレノアに見せつける。途端に、エレノアの顔に期待と淫欲がまじりあった笑みが浮かびあがる。

「うふふ。お父様、ありがとう! 大好き!!」

 エレノアは、少女のように我に抱きつき、接吻を求めた。そのまま、対面するような格好で玉座にまたがると、汗がしみ込んだ腰布をはらりとはだける。踊っているときから濡れていたのか、エレノアの太股は汗と愛液がまじりあい、粘液が妖しく輝いていた。

「お父様。ご褒美、いただいちゃいまぁす」

 どこか息が荒く、肌も紅潮させたエレノアは、満面の笑みを浮かべて腰を下ろした。エレノアの充血した媚肉が我の男根の亀頭に口づけする。そのまま、飢えた赤子が吸いつくように、エレノアの秘所は我が肉棒を呑み込んでいく。

「あぁん……お父様、イイ……」

 胸にたわわに実った二つの果実が我の胸板に押し付けられ、つぶれる感触が伝わってくる。エレノアは歓喜を噛み殺しながら、我の肩に顔をうずめる。我が荒々しくエレノアの背を抱きしめると、背筋を震えさせてエレノアは応える。

「あの、ご主人様……どうぞ、私にも……」

 傍らに控えていたリーゼが歩み寄り、我の耳元にささやいた。リーゼもまた顔が赤く染まり、目がうるんでいる。我が頷くと、リーゼは目をつむり、静かに唇を突き出した。

 ちゅ……

 我とリーゼの唇が触れ合う。すぐに溶けてなくなってしまいそうなリーゼの唇の感触が伝わってくる。我は片手でエレノアの肩を抱きしめたまま、リーゼの首筋にもう片方の手を回す。我がリーゼの唇を割って舌を侵入させると、リーゼも我の舌に舌をからませて歓迎する。二本の舌が、蛇と蛇が交尾するかのように身をくねらせる。慎ましやかな接吻は、すぐに淫らで貪欲な交わりに姿を変える。

 んじゅ、じゅぱ……

 妖しげな水音が我とリーゼの口の接合部からもれる。二人の口角から、唾液があふれ出す。我はほんのりと甘いリーゼの唾液を味わうように堪能しながら、ゆっくりとエレノアの腰を突き上げる。

「えへへ……エレノア、魔王様ぁ。フィオもお手伝いしますぅ」

 フィオの甘い声が聞こえた。フィオは重なった我とエレノアの股間に回り込むと、そこに顔をうずめる。すると、結合する我とエレノアの性器を舌でなめ始めた感触が伝わってくる。フィオの舌は、我の玉袋から肉竿の裏筋を這い、チロチロとくすぐりながら甘い感触を伝えてくる。我の肉幹とエレノアの秘唇が睦み合う地点を、フィオの舌がぺロリとひときわ大きく撫でまわす。

「ひゃぁん!?」

 エレノアが、その感触にあえぐ。フィオは声も出さずに笑うと、今度はエレノアの身体を舐めまわしはじめる。エレノアの陰唇からあふれ出す愛液に加えて、フィオの唾液が我の肉の竿に流れ落ちる。

「んあッ! フィオ……そこは、お尻の……!!」

 フィオの舌が、エレノアの裏の穴をえぐり始めたらしい。エレノアの肉壁の熱と締め付けが、強さを増す。我は、エレノアの息づかいに合わせるように、突き上げる動きを激しくする。

「あ……イイっ! イイですっ!!」

 エレノアの膣内がキュッとけいれんする。我は、最後のとどめと言わんばかりに、剛直をエレノアの奥深くに突き上げる。エレノアは背筋をのけぞらせ、膣内のみならず全身をビクビクと震わせる。我は、それに合わせて精を注ぎ込んでやる。すると、限界まで緊張したエレノアの全身が弛緩し、我の胸元にしなだれかかってくる。

「あはぁ……お父様、最高……」

 エレノアは、うっとりと呟いた。周囲から、三王女の娘たちの熱のこもったため息が聞こえてきた。

 交わりを終えて、身体を反したエレノアは、フィオとともに、玉座の足下にペタンと尻をつく。リーゼは、傍らに控え直立する。しかし、三王女の瞳は相変わらずうるみ、その視線は一点に注がれている。フィオとエレノアに精を注いでもなお、我の剛直は萎えずにそそり立っていたからだ。

「ご主人様、まだ、たくましい……見ているだけで、淫らな気分になってしまいます……」
「ねえ、お父様。もう少し、ご奉仕させていただいてもよろしいかしら?」
「フィオからもお願い! フィオ達、一生懸命ご奉仕するからぁ!!」

 三王女は、さらなる淫行をねだる。我が「好きにしろ」と短く告げると、表情を淫らに歪めて三王女は動き始める。

「フィオ、手伝って?」
「はぁい、エレノア」

 エレノアがフィオに声をかけながら乳房をはだけると、豊満な乳肉に手を当てる。フィオもエレノアにうなずき、その動作の真似をする。巨大なエレノアの双乳と、それに負けずとも劣らぬほど膨れ上がったフィオの双乳がつきだされる。二人は、自らの乳首を指でクニクニとこね回しながら、乳房を揉みしだいていく。

「うぁ……うぅん」
「あはッ……はぁ……」

 しばし、二人の甘い声が響くと、乳房の先端からピュッと白い液体が分泌される。甘い匂いのするそれは、魔物の仔たちに与え続けてきた魔性の母乳だ。エレノアとフィオは、手のひらで乳汁をすくうと、自分の乳房に塗りたくっていく。

「お父様……私とフィオの、母乳まみれのお乳でご奉仕するわ」
「フィオも、エレノアも、頑張るから……魔王様には、もっと気持ち良くなってほしいなぁ」

 エレノアは膝をつき身をかがめ、フィオは直立して胸を張るような格好で、二人の計四つの乳房が我の太股の上に置かれる。エレノアとフィオは、そのまま、お互いの双乳で我の男根を包み込む。両の手で乳房を圧迫して、肉竿へ快楽の刺激を送り込む。硬くなった乳首からは断続的に乳液が噴き出し、仔を育むための母性の液体は淫らな潤滑液となって乳房と剛直をなじませていく。

「ねえ、エレノア、フィオ……」

 一心不乱に双乳奉仕を続ける二人に、どこか不安げな表情でリーゼが声をかける。

「三回目のご主人様の精液は……私が貰ってもいいかしら?」

 リーゼの問いかけに、エレノアとフィオは微笑する。

「もちろんよ、リーゼ。三王女は、平等に愛していただかないと、ね?」
「リーゼのために、フィオも頑張るから、安心して精液をいただいて?」

 二人の返答に、リーゼは安堵したように相貌を崩す。

「ありがとう、二人とも……ご主人様、それでは失礼いたします」

 リーゼは丁寧にお辞儀をすると、我と対面するようにひざまずく。そのまま顔を傾け、エレノアとフィオの四つの乳房の間から頭を出す我の男根の先端にそっと口づけする。 リーゼの唇は、吸盤のように我が肉棒の亀頭に吸いつく。瑞々しい唇がチュウ、と吸引しながら、リーゼの舌が男根の先端部の鈴口を優しくえぐるように蠢いてくる。リーゼは、手先だけではなく、舌の動きまでも繊細で器用だ。

「ふぁあ……あッ!!」
「くぅん……くふぅ……!?」

 周囲から、艶のこもったため息が聞こえてくる。それは、三王女の声ではなかった。周囲に控えた三王女の仔らのため息だった。先ほどから、我と三王女の情交を見守り続けていた魔物の娘たちが、我慢できなくなり、自らの秘所に指を這わせていたのだ。母親から受け継いだ淫欲への本能に促され、秘唇をいじり、肉芽をつねり、まだふくらんでもいない乳房を自らの手でもてあそぶ。蛇の下半身をしたエレノアの娘、蜘蛛の脚を持つリーゼの娘、タコの触手をはやしたフィオの娘が、母である三王女の痴態を凝視しながら、乱れていく。

「エレノア、リーゼ、フィオ……良いぞ」

 我はそう言いながら、順番に三王女の頭をなでてやる。髪をなでられたフィオは子猫か子犬のように無邪気に笑い、エレノアは媚と色香を感じさせる微笑みを浮かべる。リーゼは、唇を男根に押し付けながらも、その目が清楚な少女のように笑っていた。

 リーゼの舌が、何度も繰り返し亀頭の付け根から先端の穴に向けて、射精を促すようになで続ける。リーゼの唇の吸引する力も少しずつ強められ、エレノアとフィオの乳房の柔らかく淫靡な圧迫も強められていく。我の射精感が、下腹部の奥より燃え上がり、こみあがってくる。

「出すぞ、受け取れ……」

 我が短く告げると、リーゼも小さくうなずく。次の瞬間、我の男根の先端部より、白い欲望のたぎりが噴出する。粘つく精は、リーゼの喉を打つ。リーゼは、溢れんばかりの量の精をすべて口で受け止める。その表情に苦痛の色はない。ただ至福の表情を浮かべて、喉を鳴らし、少しずつ我の精を嚥下していく。

「ご主人様の精液……とても、美味しいです……」

 口の中に、何本もの粘液の糸を引きながら、うっとりとリーゼがつぶやいた。エレノアとフィオは、羨望のまなざしでその様を見つめていた。

 深い情交の後、三王女は服を着替え、我の前に並んで直立していた。

「ご主人様。お言いつけの通り、以前の装束を直して、身につけてまいりました」

 リーゼがまじめな面持ちで言う。我が命じ、リーゼは、三王女がかつて我と対峙していた時に着ていた服を修繕していた。いま、三王女は人界の英雄だったかつての衣装に身を包んでいる。しかし、魔に堕ちた今となっては、三人ともどこか落ち着かぬ様子でたたずんでいた。

「フィオ。お前は化身することによって、人界と魔界の間にある世界の裂け目を越えることができるのだな」
「え? はい。できますけれども……」

 我の問いかけに、けげんな様子で聞き返すフィオ。

「お父様。私たちにこんな恰好をさせて、一体何をさせるつもりなの?」

 エレノアが首をかしげながら、尋ねる。かつての自分を思い出させるような格好をさせられていることに、若干の不愉快さを感じているようだ。

「前に言っただろう……貴様らには、殺した魔族の代わりを務めてもらうとな……」

 我は、にやりと邪悪な笑みを浮かべて応える。我が言葉に、三王女は息をのむ。

「貴様らは、これからフィオの力で人界に帰還してもらう。もちろん、魔王を倒した英雄を騙ってな……」

 我の言葉を聞いて、三王女は合点のいった表情を浮かべる。我は、三王女の顔を順番に見つめ、その後、エレノアに向き合った。

「エレノア。このまま人界へと帰還すれば、自らの国を貴様自身の手で滅ぼすことになるだろう。それでも、良いか?」
「構わないわ、お父様……自分の国と言っても、別にいい思い出なんてない……そもそも、あんな国、亡くなってしまえばいいのよ」

 我が問いかけに、酷薄な笑みを浮かべてエレノアは答える。ついで、我はリーゼに目を向ける。

「リーゼ。貴様の望み通り、姉姫を魔界へ連れ去らせてやろう。だが、支柱である姫君を失った国がどうなるかはわからぬな」
「はい。私の望み……お姉様と同じ卓で食事をするためには……どんな犠牲も払う覚悟をしています」

 リーゼは、静かに目を閉じて、深々と頭を下げる。最後に我は、フィオを見下ろす。

「フィオ。貴様が師事した聖女ティアナを魔界に奪い去ることが、我の目的だ。貴様は、そのことに従えるか?」
「大丈夫です。聖女様のこと、大好きだから……フィオも、聖女ティアナ様に魔界に来てもらって、一緒に暮らしたいと思っていたんです」

 子供のように無邪気に表情を緩めながら、フィオは答えた。我は、三王女の様子を確かめ、あらためて頷く。

「魔の瞳を植え付けた貴様らは、空間を超越して魔界と、そして我とつながっている。貴様らの五感は、我が五感。人界に着いたあとの算段は、追って指示を出す……まずは、人界に英雄として凱旋すればいい」

 我の言葉を聞き、三王女はひざまずき、頭をたれた。

「かしこまりました、お父様」
「ご主人様の、仰せの通りに……」
「魔王様のご命令通りにいたします」

 三人の言葉に、不快さも疑念もない。ただあるのは、我に対する絶対の忠誠と従属のみ。三王女は、再び立ち上がると静かに我に背を向け、玉座の間を後にする。

「すべては……聖女ティアナを、人界より奪い取るために……」

 我のささやきは、玉座の間を満たす闇の中に溶け込んでいく。後には、邪笑を浮かべた我と、無数の魔物の娘たちが玉座の間に残されていた。

< 続く >

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