もとわん!

 こんにちは!
 私は、おもと。小粋な江戸っ娘よ。
 旦那様にお仕えする女中をとりまとめる女中頭として楽しくお勤めしています。いわゆるお局様みたいに偉ぶったりしてないから陰口叩かないでちょうだいね。

 趣味は知り合いの南蛮人に教えてもらった催眠術。粗相をしちゃった女中をお仕置きするのにとっても便利なの。術を使うとみんなすぐに反省してくれるようになるのよ。
 でも本当は旦那様に術を掛けてあれやこれやとしてもらいたい…なぁんてね。きゃ、恥ずかしい~。

 こんなに楽しく生きてる私だけど悩みはあるの。
 何故かここ最近立て続けに女中達が口を揃えてこう言うのよ。
「お暇をいただきとうございます」
 わ、私のせいじゃないわよ!そりゃあちょっとお仕置きが度を超えてしまう時だってあるけれど、みんな喜んで反省してたんだから。
「おねぇさまぁ~。もっと、もっとこのはしたない女中にお仕置きをしてくださいまし!私の女陰(ほと)がせつのうございます。どうか、どうかその張り型でもって反省を促してくださいまし!」
 …てな具合でね。私もたまに使うけど凄いんだから、この南蛮渡来の張り型。中にからくりが仕込んであって、女陰から淫乱を引き摺り出すかのように振動するの。それはもう天にも昇る心地って言うのかしら。ちなみに菊座用もあるわよ。例の南蛮人が譲ってくれたの。

 何だか話が逸れちゃったわね。とにかく新しい女中を雇わなきゃいけないんだけど、斡旋所には碌なのがいないし、かといって斡旋所を通さない人買いに頼むとふんだくられちゃうし…。それに最近はお台所の事情もあってあまりお給金も弾む訳にはいかないから、向こうから奉公に来てくれる人も少ないの。いたとしても、とてもじゃないけど旦那様の前に出せるような輩じゃないわね。一昨日来やがれってもんよ。

 それでまあ…、お勤めの合間を縫ってこうして浅草の八幡様にお参りにやってきたの。神頼みってヤツね。なんか行き詰まっちゃったのよ。
 パンパン!
(どうか新しい女中が見つかりますように。そして願わくばその者が働き者で慎ましやかで淑やかな、見目麗しい者でありますように。できることなら荒縄や三角木馬の似合う者でありますように。更に言うならどんなに厳しい責めをしても、へこたれるどころかより一層私を『おねぇさま』と恋い慕ってくれるような被虐趣味の持ち主でありますように…)
 こんなところかしらねぇ。え?欲張りすぎじゃないかって?そりゃあ私だって何もかも叶うとは思ってないけど、もし叶ったら儲けものじゃないさ。願わなきゃ損よ。

 さて、そろそろお屋敷に戻らなくちゃ。踵を返して歩き出すとなんだか子供の騒ぐ声が聞こえたわ。
 一体どうしたって言うのかしら?八幡様のお社で騒ぐなんて躾がなってないわね。何処の洟垂れ坊主よ。
 なんか数人の子供らが輪になって唄ってるわ。もうちょっと近付いてみましょう。
「しろんぼ!しろんぼ!とおちゃはしんだ!かあちゃはくるった!おめぇのいくとこどこにもねぇ!ばけもんみてぇにまっかなめ、ばばよりかみのけまっしろけ!しろんぼ!しろんぼ!きもちわりぃ!とっととおめぇもしんじまえ!」
 どうやら輪の中でうずくまってる子を虐めてるみたいね。小粋な江戸っ娘、おもとさんとしては捨て置けないわ。ちょっと懲らしめてやりましょう。
「おやおや、坊や達。何してるんだい?ちょいと、おねぇさんにも教えてくれないかい?」
 子供らに注意を向けさせる為にちょっとあだっぽいおねぇさんを演じる私。この年頃の子供ならどきどきして目が離せない筈よ。
「し、しろんぼがきもちわりぃから、ぞうりでふんでくろくしてやってんだ」
「へぇぇ、そうなのかい。なるほどねぇ。じゃあご褒美にコイツをあげようじゃないか」
 私は帯から小さな包みを取り出すと子供の手の平に載せてやった。え?これは何かって?例の南蛮人に貰った代物でね、おもとの催眠七つ道具のひとつよ。大勢を相手にする時はこれを使うと面倒がなくて便利なの。
「なんだなんだ?」
「なんかいいもんはいってんじゃねぇのか?」
「あけてみようや」
「そうしよう、そうしよう」
 子供らが寄ってたかって包みを解くと中に入っていた粉がぶわっと舞い上がる。
「うわ、なんだ?」
「すげぇいいにおいだ」
「なんかいいきもちだぞ」
「もっとかぎてぇな」
 子供らはぼぅっとした眼で鼻をひくひく動かしている。
「どうだい?良い気持ちだろう?もっと気持ちよくなりたいかい?」
 優しい声音で子供らに語り掛ける。
「…なりてぇ」
 一様に答える子供ら。
「そうかい。じゃあ深く深く息を吸うんだ。ゆっくりと吸うんだよ、体の隅々まで行き渡らせるんだ。そうそう、ゆっくりとね…。ああ、もう体の全部がぱんぱんに張り詰めてきた。だけど、もうちょっと頑張ってみようじゃないか。………そろそろ限界だねぇ。よ~し、じゃあゆっくりと息を吐いていこう。おねぇさんがとお数えるからね。その間にぜ~んぶ吐いてしまおう。いいかい?ひぃ、ふぅ、みぃ、体の中にある嫌なものは出し切ってしまおう、よぉ、いつ、むぅ、そうすれば気持ちよ~くなれるからね、なな、やぁ、ここのつ、さあもうちょっとだよ…とお。さぁ、これで体から嫌なものが全部抜けきった。これから体に入るものはぜ~んぶいいものだよ。おねぇさんがこれから喋る言葉も、ぜ~んぶいいことなんだよ。それが耳から体に入るととっても気持ちいい。おねぇさんがしゃべった言葉の通りにすればもっともっと気持ちよくなれるんだ。どうだい?もっともっと気持ちよくなりたいかい?」
「…もっときもちよくなりてぇ」
「いい子だ。じゃあ耳から言葉を入れてあげるからね。………………。さあ、これでいい。さて、これからおねぇさんが柏手を打つよ。そうするとあんたらは目が覚める。でもおねぇさんと話してたことはみぃんな忘れちまうんだ。けどね、おねぇさんが『八幡様にごめんなさいしな』って言うとさっき耳から入れた言葉の通りにしたくなるよ。そうするととっても気持ちいいからね、どうしてもそうしたくてしょうがなくなる。いいかい?じゃあ柏手を打つよ」
 ぱんぱん!
「…あれぇ?おいらたちなにしてたんだっけ?」
「…たしか、しろんぼをふんづけてたんだ」
「…そうだぁ、うたいながら」
「こら、あんたたち!ここは八幡様のお社だよ。あんまり馬鹿騒ぎしてっと罰が当たっちまうから!ほら、『八幡様にごめんなさいしな』!」
 すると子供らはびくんっと震えたかと思うと、着物をかなぐり捨て褌まで解いて素っ裸になった。そして一斉に若茎を扱き始める。
「は、はやくしねぇとはちまんさまにおこられちまう」
「いそいでかたくしねぇと…」
「おいら、いまいちたちあがらねぇ。いちばんまえになるよ」
「わかった。おい、みんなじゅんばんにならべや」
 子供らは一列に並ぶと順番に前の子供の菊座に若茎をおしこんでいく。そうして連なると足並みを揃えて走り出した。
「はちまんさま、ごめんなさ~い!」
 それを見た私は腹を抱えて大笑い。どう、思い知った?おもとさんを差し置いて虐めなんて許さないから。あっはっはっは…と、いけない、いけない。虐められてた子を介抱してやらないとねぇ。
 おや、この子。確かに目が赤くて髪も真っ白。噂に聞く白子(しろこ)ってヤツかしら?たまに生まれるって言うけど。色がちょっと違うからって…不憫ねぇ。
 さっきの子供らの仕業かしら?着物はぼろぼろだし、白い髪も顔も薄汚れて見る影もないわね。
 私は手拭いを濡らしてくると丹念に拭いてやった。…あら、やだ。この子凄く綺麗。まるでお人形さんみたい。着物の汚れを払ってやろうと胸元に手をやると、ふにっと柔らかい感触。
「あんた、娘っ子かい!?」
「…うん、おらはおなごだ」
「親御さんは?」
「…唄の通りだ。おら、帰る場所もねぇ。こっそりお供えもん食って生きてるだ。今日は途中で餓鬼どもに捕まっちまって…。でもしょうがねぇだ。おら、きもちわりぃから」
 ちょっとちょっと!これ早速御利益があったんじゃないの!?この子を連れて行っても誰も文句言わないだろうし、この子もご飯出してあげればきっと喜んで働いてくれるわよ。
「ねぇ、おねぇさんが働いてるお屋敷に来ない?女中として働いてくれるならご飯を食べさせてあげられるし、ちょっとだけどお給金も出るわよ」
「ホントか!?お、おら飯食えるなら何だってするぞ!あ…でもおら、まっしろできもちわりぃからお屋敷の面汚しになっちまうよ」
 随分悲観的ねぇ、とっても綺麗なのに。でも今までの境遇を考えるとしょうがないのかも…。
 そうだわ!こんな時こそ催眠術よ!この子を生まれ変わらせてあげましょう。ついでに私好みに変えちゃいましょう。
 そうね、変えるとしたら…まず見た目は合格。とっても綺麗だし、この白い肌にはきっと荒縄や三角木馬も似合うわ。ご飯だけで何でもやるって言うんだからきっと働きものよね。じゃあ、お屋敷の品格に合うように慎ましやかで淑やかになってもらう…のは後でも良いわ。そこはお仕置きしながら矯正していく方がきっと素敵だわ。むしろ悲観的な性格をねじ曲げて虐められるほど幸せを感じるようになって貰いましょう。
 あ、そうだ。あれ使ってみようかしら?私は帯の中をごそごそ探る。あった、あった。真っ白な犬の耳が付いた南蛮の髪飾り。例の南蛮人情報によると『かちゅ~しゃ』と言うらしいわね。もちろん、この『犬耳かちゅ~しゃ』もおもとの催眠七つ道具のひとつよ。
「大丈夫、大丈夫♪ほら、とっても可愛い。よしよし」
 私はその子に『犬耳かちゅ~しゃ』を着けて頭を撫でてやる。するとその子の目がぼやけて焦点を失う。
 ふふふ。催眠状態一丁上がり。この『かちゅ~しゃ』を着けて頭を撫でてやるとすぐに深い催眠状態に入っちゃうの。とっても便利なんだけど、今まで似合う子がいなくて使い損ねてたのよね。思った通りこの子ってば凄く似合うわ~。
「どう?頭を撫でられるととっても気持ちいいでしょう?どうしてかわかる?」
「…おら、わかんねぇ」
「よ~く聞いてね。本当のあなたはね、犬なの。まっしろなわんちゃん。だから頭を撫でられるととっても気持ちいいの。今まで人間として生きてたけどそれは間違いだったの。ほら、たくさん虐められたでしょう?自分のことが嫌いになっちゃったでしょう?それはね、本当は犬なのに無理してたからなの。だからあなたはこれから犬に戻るの。そうすればね、あなたはとっても幸せになれるのよ。どう?幸せになりたい?」
「…幸せになりてぇ。…ひもじいのはもうやだ。…虐められたくねぇ」
「そうよね。でもね、犬に戻ればそんな思いはもうしなくて良いのよ。ご飯も食べさせて貰えるし、虐められる事はあるかもしれないけど人間の頃とは違って辛くなんかないのよ。あなたは犬だから。どんな形でも構って貰えると嬉しくてしょうがないの、とっても気持ちよくて、幸せな気分になれるの。でも人間のままだと辛く感じてしまうの。もう辛いのは嫌でしょう。ねぇ、犬に戻りましょう。辛い人間を辞めて犬になりたいでしょう?」
「…なりてぇ。おら…犬になって幸せになりてぇ」
「良い子ね。じゃあおねぇさんがあなたを犬に戻してあげる。これから私があなたの着物を脱がして体中を余す事なく触っていくわ。私に触られたところは順番に犬になっていくの。犬になった部分からあなたはどんどん幸せで気持ちよくなっていく…わかった?じゃあ、まず着物を脱がしてあげるね」
 私はその子のぼろぼろの着物を脱がす。汚れてこそいるけど、汚れの下にあるのは一点の曇りもない白い肌。私は汚れを拭い去り、白い肌を愛おしむように体を撫でていく。ああ、何て綺麗な裸。無駄なものなんて何処にもない。絶妙な肉の柔らかさ。ああ、八幡様ありがとうございます。次はもっとお賽銭入れます。八幡様に感謝しながら全身余すところなく指を這わせていく。
「…あ、ん、おらが、犬になってく、こんなに気持ちよくて、幸せなの、初めてだぁ…」
「ふふふ。そうね、だいぶ犬になったわね。じゃあ、ちょっと確かめてみましょうか…。ほら、ここに膜があるでしょう?これを張り型で貫いたらきっと痛いわね。でもあなたは犬だから、もう何をされても気持ちよいのよ…。痛いのも、苦しいのも、全部、ぜ~んぶ気持ちよいのよ。だから…ほら、入れちゃうわよ」
 私は帯の中からからくり式張り型を取り出すと、その子の女陰に押し当てる。実はこの張り型も催眠七つ道具のひとつ。普段はただこれで快楽が得られればどんな使い方をしても良いんだけど、催眠で使う分にはちょっと特殊な条件を満たす必要があるのよ。それはね、相手が生娘であること。それさえ満たせば使用方法は簡単、この張り型で膜をぶち抜いてやれば良いだけ。そうするとね、相手はどんなに理不尽なことでもとっても素直に受け入れてくれるようになるの。さあ、入れるわよ~。えい♪
「…ああ!!い、いてぇ…。いてぇのに、おら、とってもしあわせだ!おら、犬になれたんだ!」
「そうね、じゃあどんどん犬になりましょう」
 私は張り型の根本にあるツマミを動かなくなるまで一気に回した。瞬時にからくりが作動して最大出力で振動を始める。
「あああああ!!なんだこれ?ほとが!おらのほとがぁ!めちゃくちゃになっちまう!なのにぃ、きもちいいだぁ…おら、とってもしあわせだぁ!」
「まぁ素敵。もう立派な犬ね。あれあれ?でもこの犬には尻尾が生えてないわねぇ。でも安心して私がとっても可愛い尻尾をつけてあげるから」
 準備をする間は振動を止めておいてあげましょう。
「はぁはぁ…おねぇさんがそう言うなら安心だべな。おねげぇだ、おらに尻尾生やしてくんろ。でなきゃ立派な犬になれねぇ」
 私は帯の中から菊座用の張り型と『犬耳かちゅ~しゃ』とお揃いの白いふさふさした尻尾を取り出す。これをこうしてくっつけると…はい!これも催眠七つ道具に大変身!さっきの『犬耳かちゅ~しゃ』は催眠深度を一気に深める効果の他に装用者の幸福感を倍増させる効果もあるの。そしてこの『ふさふさ菊一文字』にも似たような効果があるのよ。催眠深度を深める効果は『かちゅ~しゃ』程じゃないんだけどね。でも『ふさふさ菊一文字』の真価はそこじゃないわ。装用者の快楽の度合いを操作できるってこと、これがまたとっても素敵なのよ。まあ、やってみればわかるわね。それ♪
「ふぁぁ…尻尾だぁ。おらに尻尾が生えた。おねぇさん、ありがとうな」
 え?何も起こらないじゃないかって?だってまだ何もしてないもの。ここを見て。女陰に突っ込んだ張り型と同じように根本にツマミが付いているでしょう?普段はこれも振動の強さを調整するものなんだけど、尻尾を取り付けている時にこれを回すと、微弱な振動を始めるの。この振動の強さは何処まで回しても変わらないわ。でもね、回せば回すほど入れた相手は体中がどんどん敏感になっていくの。最終的には全身が性感帯になって、何処を触られても蜜にまみれたお豆さんを擦られた時みたく感じるようになるのよ。
「まぁ、とっても可愛いわんちゃんになれたわね。背中を撫でてあげるわ」
 もう四つん這い以外の立ち方を忘れちゃったその子の背中を優しく撫でながら、私はゆっくりとツマミを回していく。
「ああ…背なを撫でられっだけでどんどんきもちよくなるだ。おら、もう犬なんだな。幸せすぎてどうにかなっちまうだ…。ふぁぁ…、だめだぁ。背ながぁ…もうたまんねぇだ。おらの蜜豆いじられてるみてぇだ。幸せすぎて背筋がびりびりしちまうだ。…ああ!!おねぇさん、おねげぇだ!もっと撫でてくんろ!犬のおらを可愛がってくんろ!」
「まあまあ、欲張りさんね。すっかり犬になれたみたい。よしよし、可愛い子だね。でもよくお聞き。あなたは犬になってとっても幸せになれたけど、いつも犬でいられる訳じゃないの。私といる時か旦那様といる時だけ可愛い雌犬でいられるの。他の人のいるところでは今までのように人間の振りをしてなくちゃ駄目なのよ。辛いかもしれないけど、あなたはもう立派な雌犬だから辛くてもそれがとっても気持ちよくて幸せだし、賢い雌犬なんだからちゃんとオアズケできるでしょ?」
「あああ!!で、できるだ!おら、ちゃんとオアズケするだ!他の人の前では人間の振りするだ!んああああああ!!」
「逝っちゃったの?仕方のない雌犬ねぇ…。まあ良いわ。そのままでも私の声はしっかり心に響くからね。取り敢えず女陰の張り型は抜いてあげましょう。でも『耳』と『尻尾』はそのままね、とっても可愛いから。それに本当は犬だからそのままでも気にならないわよ。じゃあ私が柏手を打つとすっきりして目が覚めるからね。犬の時の事は覚えてないけど、心の奥にちゃんと残ってる。私や旦那様しかいない時は自然と犬になれるから安心してね。さあ、柏手を打つからね。起きたらまず着物を着直して人間の振りよ。できるわよね?じゃあいくわよ」
 ぱんぱん!
「あ、あれぇ?おら、なして着物着てねぇだ?さみぃからちゃんと着るだ。なぁ、おねぇさん。おら、ホントにお屋敷に行ってもいいだか?」
「もちろんよ!歓迎するわ。あ、私はおもと。よろしくね。あなたは何て名前なの?」
「おもとさんだな、これからよろしくだ。おらぁ、たいてい『しろんぼ』って呼ばれてるだ。ホントの名前は知らねぇ…。生まれた時にゃおとうはおっちんでたし、おかあもおらに名前教える前にくるっちまっただ」
「まあ、かわいそうに。それじゃあ、私が名前をつけてあげるわね」
「ホントか!?おもとさん、すまねぇだな。ありがてぇよ」
「ええと…じゃあ『ましろ』、今日からあなたは『ましろ』よ」
「ましろか!いい名だぁ。おら、うれしい。今日からちゃんと名乗れるぞ。おらぁ、ましろだってな」
 うふふ。犬の時はシロって呼んじゃお…。まあ、擦り切れて短い着物の裾から尻尾が揺れてるのが見えるわ。ホントに犬みたい。
「じゃあ、ましろ。一緒にお屋敷へ行きましょう。着いたらまずご飯にしましょ。お腹空いてるでしょ?そのあと体を綺麗に洗ってそれから私の着物を着せてあげる。お古で申し訳ないけど今のより綺麗よ」
「うわぁ、もう飯食えるだか?それに着物まで?おら、女中として目一杯働くぞ!恩返ししねぇと!」
「あらあら頼もしいわね。じゃあ行きましょうか」
「うん!」

 そうして私達は千住のお屋敷まで帰ってきたの。取り敢えずましろにご飯を食べさせてあげなきゃね。あら、ましろってば。お勝手から誰もいないお台所に入った途端四つん這いになっちゃったわ。気が早いわね。
 早速ご飯を拵えてやってると、ましろってば喉が渇いたのか掃除用の雑巾が浸かった桶からぴちゃぴちゃ水を舐めとってるの。
「こら、シロ!そこの水は汚いでしょ?飲んじゃ駄目じゃない!」
 ましろはそれならと雑巾をくわえて振り回す。遊んでるのかしら?ああ!雑巾から水が飛び散る。もう!
「雑巾振り回しちゃ駄目でしょ!こっち来なさい、お仕置きにお尻ぺんぺんしちゃうから!」
 ぺしん!ぺしん!
「きゃいん!きゃいん!」
 まあ!泣き叫んでるのかと思えば…女陰からしとどにおつゆが垂れてるわ。こんな事されてもキモチイイなんてましろはすっかり淫らな雌犬ね。
 さてお仕置きはこのぐらいにしてご飯ご飯。どんぶり鉢に白飯を持って朝の味噌汁の残りを掛けてやる。その上に鮭も一切れ載せてやりましょう。さあ、できた!私はましろの前にどんぶり鉢を置いてやる。がっつこうとしたましろにビシッと一言。
「オアズケ!」
「きゅ~ん…」
 ましろが切なそうに私を見てくる。うふふ。まだ仕上げがあるのよ。私は帯の中に手を入れると小瓶を取り出して中身をご飯の上に垂らした。お察しの通り、これも催眠七つ道具のひとつよ。これを飲ませたりご飯に掛けて食べさせたりすると、もう女陰が疼いて疼いて仕方なくなるの。女陰に子種を注ぎ込まれるまで治まらないのよ。ふふふ、ましろに孕んでもらって産まれた子をまた女中にしちゃえば斡旋所や人買いにお金を払わなくて済むからとっても経済的!私ってば節約上手ね、あったまいい!
「良し!」
 ああ、何も知らずに食べてるわ。うふふ、可愛い女中をどんどん産んでね。あ、もう食べ終わったみたい。余程お腹が空いてたのね。じゃあ今度は体を磨かなくちゃ。どんなに元が良くても汚れたままじゃ旦那様の前に出せないわ。
 私はタライに湯を張るとましろの着物を脱がせてやる。
「さ、おいでシロ。体を洗おうね」
「うん!わぁ、あったけぇ湯なんていつぶりだろ?」
 あ、言葉までなくした訳じゃないのね。良かった、術を掛け直そうかと思ったけど手間が省けたわ。さあ、しっかり洗いましょうね。手拭いを石鹸で泡立ててごしごし洗ってやるとましろが切なげに身悶える。薬が効いてきたみたいね。
「お、おもとさぁん…おらぁ、なんか体の奥が疼いちまってしょうがねぇよ」
「あら、大変。ばい菌が入っちゃったのかしら?しっかり洗ってばい菌を追い出しましょうね」
「ふぁぁぁぁぁ…」
 気持ちよさそうにしてるわね。でもこんなんじゃ治まらないわよ。一通りましろの体を洗い上げた私はお湯を被せて水気を拭き取ってやる。
「さあ、とっても綺麗になった。次は着物ね」
「う、うん…」
 ああ!真っ赤になって俯いちゃったわ。ましろってばなんて可愛いのかしら!私までどうにかなっちゃいそうよ。

 なんとか気を落ち着かせた私は裸のましろを連れて女中部屋へ向かう。ましろの首には荒縄が結んであるわ。縄を引かれて私の後を付いてくるましろに思わずはぁはぁしちゃう。そうそう、この荒縄も催眠七つ道具のひとつよ。これを首に結わえ付けると相手は縄の先を持った人の言うことを何でもきいちゃうの。わざわざ催眠状態にして誰それの言うことをきくようにって教え込まなくてもいいから便利よね。まあ、大抵は女中を縛り上げるのに使ってて、こうして本来の使い方をしたのは久しぶりなんだけど…折角犬にした訳だし、たまにはこういう緩い縛り方も良いかしらね。
 女中部屋に入ると箪笥から着物を取り出す。
「ごめんね、私のお古なんだけど」
「おら、全然構わねぇだよ。それにこんなに立派な着物、おら、見たことねぇだ!」
 私のお古なんて真っ赤な嘘。やっぱりこれも催眠七つ道具のひとつなの。ましろが見たことないのも無理はないわね。この、黒と白を基調にした南蛮渡来の、ええと『冥土服』って名前だったかしら?私も例の南蛮人に貰うまで知らなかったもの。初めて見た時は驚いたわよ、派手好きの南蛮人もこういう奥ゆかしい服を着るんだ…って。でも『冥土服』なんて言い得て妙よねぇ。この黒と白は確かに冥土を連想させるわ。でも聞いた話では南蛮の女中が着るものらしいわよ。きっと己を殺して旦那様にお仕えする滅私奉公の精神が南蛮にもあるのね。
 南蛮の女中が着るんだからこっちの女中が着たって何の問題もないわ。それにとっても素敵な効果もあるんだもの。
「おもとさん、これどうやって着るだ?おら、わからねぇよ」
「大丈夫よ。私が手伝ってあげるから」
 ましろに『冥土服』を着せてやる。荒縄は着物の中に隠しておきましょう。
 …まあ、何てこと!『犬耳かちゅ~しゃ』と合わせるととっても素敵ね!抱きしめたくなっちゃう!
「おもとさん。この着物、なんかむずむずするだよ。おらには丈が合わねぇのかなぁ?」
「着慣れない内はそんなものよ。それに丈もちゃんと合ってるわ。とっても可愛いわよ」
 ふふふ、それがこの『冥土服』の効果なのよ。これを着ると始終誰かに体中を撫でられているような心地がするの。さっきの小瓶に入った薬の効果と合わせると、もう何て言うのかしら、究極の焦らし?うふふ、我慢できなくなって旦那様におねだりするましろの姿が目に浮かぶわ。
 え?催眠七つ道具の癖に段々催眠とか関係なくなってる?しょ、しょうがないでしょ!道具と言えば七つ、でも七つ揃ってないと何だか据わりが悪いじゃない!だから例の催眠好きの南蛮人に貰ったものをまとめて『催眠七つ道具』って呼んでるのよ、丁度七種類あったから。お願いだから、そこは深く突っ込まないで。突っ込むなら熱く蠢く私の女陰に…、って駄目駄目。何言ってるの、私ったら。私の女陰に突っ込んで良いのは旦那様と愛用の張り型だけなんだから!
「じゃあ、旦那様に面通しをしましょうね。そうそう、しばらくの間また人間に戻ってね。旦那様を驚かせてやりましょう」
 襟元に少しだけ覗いた荒縄を軽く引っ張りながら言う。
「あん…。わ、わかっただ。人間の振りして旦那様を驚かせるだ」
「うふふ、良い子ね。じゃあ行きましょう」

「旦那様。かねてより探しておりました新しい女中を先程雇い入れました。その者にご挨拶をさせていただいてもよろしいですか?」
 障子越しに旦那様に呼び掛ける。
「おお、もとか。ようやく女中が見つかったか。これでお前の負担も減るであろうな。良いぞ。入ってこい」
「ありがとうございます。では失礼して…」
 すっと障子を開け、ましろと共に平伏し、そのまま座敷に上がる。顔を上げ、ましろに呼び掛けた。
「さ、旦那様にご挨拶を」
 顔を上げたましろは真っ赤になっている。女陰が切なくてしょうがないのね。
「…しろ、で、すだ。旦那様。よ、よろしく、お願いいたしますだ…」
 あら、感じすぎて最初の方が聞こえなかったわね。
「シロとな?それでは犬ころのようではないか?緊張せずとも良い。ちゃんと申してみよ」
「も、申し訳ごぜぇません。ま、ましろと申しますだ。」
「ましろか、お前さんによく似合う良い名だ。時に珍しい格好をしているな」
 それには私が答える。
「はい、南蛮の女中着にございます。この娘は碌な着物を持っておりませんでしたので私が与えました」
「そうか、辛い暮らしをしておったのだな。構わん。良く似合うておるしな」
「では私は別の用事がありますので下がらせていただきます」
 隙間からこっそり覗きますけどね。
「うむ。ではな、もと。さて、ましろとやら。これからよろしく頼むぞ」
「は、はい。精一杯お勤めさせていただきますだ」
「ははは、まだ緊張しておるな。では丁度喉も乾いたし、お茶にしよう。チンチン沸いている鉄瓶の蓋を取ってくれんか?」
「チンチンでごぜぇますか?はい!」
 まあまあ、ましろが犬みたいにチンチンしてるわ。
「おいおい、犬じゃあるまいし。ほら、そこでチンチン沸いてるだろう?早く取ってくれ」
「あ、あれ?ちがっただか?あ、そうか!アレのことだな。おら、知ってますだ!今すぐ!」
「わ、わ、い、いきなり何を!?」
 あ!ましろが旦那様を押し倒して、褌をずらしてる!ああ…旦那様の逸物、相変わらずご立派…。ましろが逸物をぺろぺろ舐めてるわ。
「たまに来る吉兵衛さんにコレやると喜んでくれて、握り飯くれるだ。旦那様、キモチイイだか?」
 まあ、吉兵衛さんったら。意外とやるわね。
「た、確かに心地良い…。で、ではなくてだな。わ、儂は茶が飲みたいのだ。わかるか?」
「わかっただ!飲めば良いだな!」
「の、飲んでくれるのか!?い、いやいや、そうでなくて…。そうだ!焙炉(ほいろ)!焙炉ならわかるか?焙炉を取ってくれ!焙炉!」
 旦那様もまんざらじゃないみたいね、私も次からはちゃんと飲もっと。あら、ましろが逸物くわえながら唸ってる。苦しいのかしら?旦那様の逸物逞しいものね。
「う~、わん!わんわん!」
「く、くわえながら吠えられると意外と心地良いな…ちょ、出る。こ、これではまさしく犬ではないか!?お~い、もと!もとは居ぬか!」
「はい!旦那様、こちらに!ですが、もとも犬でございます!」
 勢いよく開いた障子、そこにいる私の頭には黒い『犬耳かちゅ~しゃ(予備)』、お尻には黒い『ふさふさ菊一文字(予備)』が揺れてるわ。だって、ましろが羨ましいんだもん!私だって旦那様とあれやこれやしたいのよ!既に着物を脱いで素っ裸になっていた私は四つん這いで座敷に飛び込んでいった。
「なんと!もとも犬か!?この屋敷は犬ばかりではないか!ええい、こうなったら儂がまとめて躾てくれるわ!」
 着物を脱ぎ捨て褌を一瞬で解く旦那様。黒光りした逸物が天を貫かんばかりにそそり立っているわ!
「伏せ!」
 旦那様の怒号が飛んで私とましろは思わず旦那様にお尻を向けるようにその場に伏せた。
「覚悟せい!」
「わお~ん♪」
 
 その日、二匹の雌犬の鳴き声が止むことはなかったと言う…。

< おわり >

感想を書く

メールアドレスが公開されることはありません。