馴奴 四 後編 双花競艶

後編 双花競艶

「さあ、どうするの、四宮さん?」

 栗原を先輩と認める。そんな屈辱的なことはない。
 しかし、そうしないと竜泉寺の人形にはなることはできない。
 それに、一度人形として認めてもらえば、その後で立場を逆転させる機会があるかもしれない。いや、できる、きっと自分は一番に登りつめる。その自信が葵にはあった。

「わかりましたわ」
「そう。いいわ。それじゃあ、今からあなたは私の後輩ね、葵ちゃん」
「あ、葵ちゃん!?」
「当然でしょ、あなたは私の後輩なんだから。じゃあ、ちょっと待っててね、葵ちゃん。さあ、お願いします、先生。んっ、あああんっ!」

 先輩として、余裕の笑顔を見せると、栗原は竜泉寺の方に向き直り、腰を上下に動かし始めた。

「あんっ!先生のおちんちんがっ、奥にゴツゴツ当たってっ!はううっ!」

 淫らな言葉を口走りながら、栗原は激しく腰を揺らし続ける。

「あんっ、んんっ!あんっ、はんっ、あんっ、んっ、んっ、んっ、ああっ!」

 さっきよりもより激しく、より大きく腰を動かす栗原。それに合わせるように、竜泉寺も下から腰を突き上げる。

「あんっ、ああっ、先生っ、私っ、もうっ、イキそうですっ!だから、先生もっ!はうっ!」

 竜泉寺の手が栗原の腰に添えられ、一段と動きが激しくなったその時。

「くうううっ、ああっ、ああああああああーっ!」

 叫び声とともに栗原の体が弓なりになり、ビクビクと震える。

「んん、あぁ、んはああぁ」

 そのまま、竜泉寺の上に伏して、大きく息をする栗原。

「んんっ、さあ、こっちに来て、葵ちゃん」

 しばしの間、肩で大きく息をしていた栗原が、ゆるゆると体を動かして竜泉寺の上から退くと、葵をベッドの上に招きあげる。

「は、はい?」
「さあ、ほら、葵ちゃん。先生のあそこ」

 ベッドに上がってきた葵を背後から抱きかかえ、バイブレーターを抜き去ると、竜泉寺の股間のものを指さす。
 それは、今さっき射精して、少し萎えているように見えた。

「葵ちゃんが気持ちよくしてもらえるように、竜泉寺先生のおちんちんをお口で大きくしましょうね」
「え、ええ」
「それが、先生のお人形の第一歩よ、葵ちゃん」

 その言葉に、葵の胸が高鳴る。
 葵は、躊躇うことなく、ヌラヌラと湿った肉棒に顔を近づけていく。
 もう、葵には竜泉寺の肉棒をしゃぶることへの嫌悪感はない。

「ん、あふ、んむ」

 手で軽く支えると、肉棒を口に含む。
 思えば、竜泉寺の肉棒をしゃぶるのは金曜日以来だ。

 ああ、この味ですわ。

 葵は、日曜にバイブレーターを口に含んだときの、物足りない感じがようやく満たされたように感じた。

「んふ、ちゅ、んむ、あふ、ん、んんっ」

 ああ、美味しい……。

 うっとりとした表情で、肉棒をしゃぶり続ける葵。すると、少し萎れていた肉棒が大きくなってきて、葵はすっかり嬉しくなってくる。

「んっ、んむっ、んふっ、あふっ、じゅるる!」

 葵の肉棒をしゃぶる動きに熱が入り、頭を前後に振り始める。

「んふっ、んっ、んっ!……あ、ああ?」

 突然、背後から体を引っ張られて、肉棒から引き離された葵の口から残念そうな声が漏れる。

「ほら、葵ちゃん。もう先生のおちんちんはすっかり準備できてるわよ。今日はお口の中に出してもらうんじゃなくて、大事なところに出してもらうんでしょ。先生のお人形になった記念なんだから」

 背後から葵を抱きかかえたまま、その耳元で栗原が囁く。そして、葵の両膝に手をかけると、葵は抵抗することなく、Mの字に足を開く。

「さあ、こういうときはどう言うのかしらね、葵ちゃん?」

 大きく足を開いた葵の正面に、竜泉寺の屹立した肉棒があった。

「あ、わ、わたくしの中に、先生のお、おちんちんを入れて下さい」

 途切れ途切れに、竜泉寺にねだる葵。
 それは、決して恥じらいから来るものではなく、興奮のあまり息苦しくなっているせいだった。

「うん、いいだろう」

 竜泉寺は、ひとつ頷くと、葵の裂け目に肉棒を宛う。

「じゃあ、いいかい、四宮さん」

 葵は、黙ったまま竜泉寺に頷き返す。

「それじゃあ、いくよ」
「んっ、はくううっ!ふわあああああああああっ!」

 竜泉寺の肉棒が、葵の中に飲み込まれていくと、葵は仰け反って、ビクビクと、何度も体を震わせる。

「あら、挿れられただけでイっちゃったの、葵ちゃん?」

 まるで、子供でもあやすように、栗原が背後から囁くと、葵は瞳を潤ませてこくりと頷く。
 葵の想像したとおり、いや、それ以上に竜泉寺の肉棒がもたらす快感は強烈で、バイブレーターの刺激など比べ物にもならなかった。
 その、太いもので奥まで貫かれると、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。

「でも、まだまだ、これからだからよ」
「え?ああっ、あああっ、いあああっ、あんっ、あんっ!」

 竜泉寺が腰を動かしはじめ、強烈な快感が間断なく葵に襲いかかってきた。

「あんっ、はうっ、あああっ、あんっ、あんっ!」

 ひと突きされる度に、意識が飛びそうになる。

「はんっ、あんっ、あっ、ああっ、あんっ、んんっ!」

 もう、葵の頭の中は、快感に埋め尽くされていた。

「あんっ、あんっ、あんっ、はうっ!あっ!?あああっ!」

 突然、新たな快感が加わって、葵は体を悶えさせる
 気付けば、背後から葵の体を支えるようにしていた栗原が、葵の乳房を揉み始めていた。

「はうううっ!くっ、栗原さん!?」
「ん、栗原さん?」
「あっ、いえっ、せっ、先輩!ああっ、いっ、今そんなことされたらっ、わたくしっ!はああっ!」
「いいのよ、もっと気持ちいいのに慣れないと、一人前のお人形になれないわよ」
「あっ、はううっ、あうっ、ああっ、あああーっ!」

 快感が振り切れたのか、栗原の話の途中から、葵の目がぼやけてくる。

「あううっ、あんっ、はうっ、あっ、はあああっ!!」
「きゃっ!葵ちゃん!?」
「あうっ、あんっ、はんっ、あんっ、んんっ!」

 いきなり、反動を付けて竜泉寺の方に抱きつくと、そのまま葵は激しく腰を動かし始める。その長く、カールした髪がふわりふわりと跳ねている。

「あうっ、はんっ、はんっ、はんっ、あくうっ!」

 貪るように腰を動かす葵の姿には、名門、四宮家の令嬢の誇りは全く見られない。

「ふふっ、すごいわ、葵ちゃん。そんなに先生のおちんちんが欲しかったのね」
「あっ、がっ、ああっ、はうっ」

 目を細めて葵の痴態を眺める栗原。
 一方で、涎を垂らしながら大きく腰を上下させていた葵の声は、次第に短く途切れがちになる。

「んっ、あっ、あうっ、ああああああああーっ!」

 射精が近づいてきたのを感じたのか、力強く竜泉寺にしがみつき、葵はそのまま腰を深く沈める。
 それは、もう完全に牝としての本能がさせた行動だった。

「ふあああああああああっ!ああっ、あっ、あぁ……」

 焦点の合わない目で竜泉寺に抱きついたまま、腰を何度か小さく震わせて、精液を搾り取っていく葵。
 そのまま、葵の体から力が抜けてベッドの上に崩れ落ちる。

「葵ちゃん、葵ちゃん?」

 呼びかける声に、葵が目を開けると、栗原が覗き込んでいるのが見えた。

「あ、くりは…、いや、先輩?」
「気が付いた?葵ちゃんは気持ちよすぎて気を失っちゃったのよ」
「え?」
「どう?気持ちいいでしょ、竜泉寺先生のお人形になるのは」
「え、ええ」
「んふ、葵ちゃんのここ、すっかり濡れて、いやらしい、ちゅる、ん、葵ちゃんの味と、先生の味がするわ」

 栗原が葵の上に乗ると、さっきまで竜泉寺の肉棒を咥えていた場所を舐める。

「ああっ、せっ、先輩っ、そんなところっ!」
「うふ。ん、じゅ、ちゅる、あふ」
「あああっ、あうっ!」

 涙目で喘ぎながら見ると、葵の目の前に、剥き出しのままになった栗原の敏感な部分があった。ほの赤く染まった襞に、竜泉寺の精液がこびりついているのが見える。
 それを見ていると、我慢できなくなって葵も舌を伸ばす。覚えのある竜泉寺の味に混じっている、これは、栗原の味だろうか。

「んふ、ちゅる、ぺろ、ん」
「んんっ!あうっ、葵ちゃんったら!んっ、あむっ、ちゅるる!」
「んんんっ!んむっ、じゅっ、あふう!」

 まるで、獣のように体を絡ませて互いの裂け目を舐め合う葵と栗原。

 そんなふたりの姿を、竜泉寺は満足そうな笑みを浮かべて眺めていた。

* * *

 3週間後。

「おはようございます!」

 朝、息を切らせて由佳が教室に駆け込んでいる。

「栗原さん、何度言ったらわかりますの?校舎の中を走らないで頂けますこと?」
「あら、ごめんなさい、四宮さん。走らないと遅刻しそうだったから」
「そもそも、遅刻しそうになるのがだらけている証拠ですわ」
「はい、私が悪うございましたわ。以後気を付けますわね」
「まあ、なによ、それで謝っているつもりですの?」

 このところ、毎朝のように繰り返される光景。

「なあ、このところ栗原と四宮、やけに険悪だよな」
「ああ。ふたりで言い合ってない日がないもんな」
「いったいどうしたんだろうな」
「まあ、でも、前から仲がいいって訳じゃなかったけどよ」

 葵と由佳の言い合いをよそ目に、男子たちがひそひそ声で話をしている。

「あっ、そういやさ、何か最近四宮もやけに色っぽくねえか?」

 ひとりの男子の言葉に、全員が黙って頷く。

 他の生徒たちには、犬猿の仲に映る葵と由佳。
 だが、その、本当の関係は、誰も知ることはない。

 放課後。

「また今朝もお説教するなんて、葵ちゃんは本当に私のことを先輩だと思ってるの?」
「ええっ!?でも、それは人前ではこのことは知られないようにって由佳先輩が仰ったから」
「まあ、この子ったら、口答えするの!」
「そ、そんな、口答えなんて」
「もう、今日は葵ちゃんに先を譲ろうと思ってたのに、お預けよ」
「ええっ!」

 保健室の中では、竜泉寺の人形としての、由佳先輩と葵ちゃんというのがふたりの関係だった。

「んん、はあああっ!ああっ、イイですっ、先生!」

 仰向けになって大きく足を開き、竜泉寺の肉棒を咥え込む由佳。

「あんっ、ああっ、はんっ!あうううっ!?ああっ!葵ちゃん!?」

 由佳の体に覆いかぶさるようにして、葵がその乳首に吸いつく。

「せーんぱい。わたくし、由佳先輩にもっと気持ちよくなって欲しいんです。ん、ちゅ」
「あんっ、あうっ、葵ちゃんったら!あああっ!」

 淫らに体を絡め合う3人。

 葵は、すっかり竜泉寺の人形になって、由佳にも懐いているように見える。
 だが、その胸の内では。

 見ていなさい、栗原さん。今に、わたくしが一番の人形だって竜泉寺先生に認めさせてあげますわよ。

 その、葵の本心は、彼女以外知る者はいない。

「あううううっ、ああっ、あんっ、先生っ!葵ちゃん!」
「んふふ、気持ちよろしいですか、先輩?んふ、ちゅる」

 大きく足を開いた由佳の股間を、竜泉寺の肉棒が湿った音を立てて出入りしている。
 そして、その乳房に覆いかぶさるようにして吸いつく葵。
 
「んんんっ!あふ、んちゅ!」
「ああんっ!先輩ったらぁ!」

 顔の前に下がって揺れている葵の乳房に、由佳が口を近づけると、葵が由佳の乳首から口を話して甘ったるい声をあげる。

 保健室の中に、淫らな声だけが響いていた。

* * *

 実験記録 No.4

 対象:3年生、女子。

 実験対象は、この学園の理事の娘、たいそうなお嬢様らしい。以前から、プライドの高いお嬢様には実験対象として興味があった。実験の目的は、そのプライドの高さをとことん利用することと、誇りを決して失わせずに堕とすこと。
 まず、実験対象に、由佳への敵対心を植え付けさせる。由佳に、実験対象を小馬鹿にしているような演技をさせて対象のプライドに火をつける。それにしても、相変わらず由佳はいい仕事をしてくれる。

 次に、木下を使って対象を保健室に来させ、催眠状態にさせた後、いくつか暗示を仕込む。要点は、私にされたことを快感に感じてしまうこと。それと、それを認めることは対象のプライドが許さないこと。そうすることで、こちらから与えられた快感をも屈辱に感じてしまうことになるはずだ。そして、もうひとつの暗示が、どんなものでも、学校で一番でないことには耐えられないというもの。本人のプライドが高いので、この暗示自体は定着しやすいだろうとは思っていた。これが、最終的に対象を堕とす鍵になるはずだ。
 暗示を仕込み終えたら早速実験を開始する。結果は良好。快楽に悶えながらも、こちらに向けてくる、その、屈辱に震え、怒りに燃える目。申し分のない反応だ。

 2日目からはバイブレーターを使った実験を開始。刺激が強すぎたのが、途中で対象の意識が飛んで、快楽を感じる暗示だけが剥き出しになる。プライドを失わないという暗示が出てこないのは快楽原則の為せる業だろうか。おそらく、そちらの方がより本能に近いために意識が飛んだ状態で現れる結果になったのだろう。

 3日目にはバイブレーターを挿したままで家に帰らせる。これは、対象のプライドを相当に傷つけるはずだ。

 4日目。こちらの命令に素直に従うようになったが、その瞳の炎は決して消えていない。むしろ、より昏く、深く燃えているような気がする。そろそろ頃合いだ。おそらく、月曜にはいい具合には上手く仕上がっているだろう。由佳の時もそうだったが、快楽を受け入れるようになった体に、週末の2日のブランクは、精神的に相当堪えるようだ。

 そして、週が明けて月曜日。保健室に来た対象に、由佳との行為を見せつけてやる。対象は茫然としてこっちの方を見ていたが、瞳を潤ませて体をもぞもぞと動かしているのを見れば、欲情しているのは一目瞭然だ。そして、最後に、由佳のことが一番だと言ったときの対象の表情。陵辱されている時でもあんな顔は見せなかった。屈辱に打ち震え、昏く沈んだいい表情だ。

 翌日も、対象を放置したままで由佳との行為を見せつけてやる。途中、とうとう対象の方から、自分を人形にするように願い出てくる。どうやら、私に陵辱されていた屈辱や憎しみはすっかり消えているようだ。それもひとえに、由佳への嫉妬のせいだろう。
 ここまで来たら、もうこの実験から得るものは何もないので、後は由佳に任せる。対象が、由佳の出した条件をあっさりと認めたのはちょっと意外だったが、対象のプライドを上回るほどに追いつめられていたということか。それにしても、由佳の奴も意地の悪いことをするものだ。由佳のことを先輩と認めるなんて、対象には相当の屈辱だろうに。どうやら、由佳はだいぶ私の性格に似てきたようだ。

 それにしても、今のところは人形の先輩後輩として仲良くじゃれ合っているように見えるが、時々対象が由佳に向ける、鬱屈したような視線。まあ、本人は内心含むところがあるのだろう。だが、別に問題はなさそうだし、それも面白そうなので放っておくことにする。

 20XX年、9月28日。竜泉寺岳夫。

< 終 >

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