馴奴 六 2週目

2週目

 そして、土曜日の朝。

 約束の時間の少し前に竜泉寺のマンションを訪ねた文子が406号室の前でインターホンを押すと、ドアが開いて私服にエプロン姿の由佳が出てきたのだった。

「いらっしゃーい、文子ちゃん!」
「ゆっ、由佳先輩!?」
「さっ、入って入って!」

 驚いて目を丸くしている文子を、由佳が中に招き入れた。

「ごめんね、文子ちゃん。私、今ちょっと料理の途中で手が離せないのよ。先生は奥の部屋にいるから」
「はい……」

 文子が中に入ると、由佳はダイニングルームの向こうのキッチンへと引っ込んでいった。
 お肉か何か焼いているいい匂いが漂う部屋を抜けて隣の部屋に向かう。

 そこは、6畳くらいの部屋で、左側の壁際にパソコンデスクが、そして右側の壁際にはソファーがあって、その前には小さめのガラステーブルが置いてあった。
 ソファーのある側にもうひとつドアがあるのは寝室へのドアだろうか。

 部屋の中では、竜泉寺がパソコンに向かってなにやら作業をしていた。

「おはようございます、先生」
「ああ、よく来たね、本多さん」

 挨拶すると、竜泉寺は画面から顔を上げて文子の方を見る。

「あの……今日は何をしたらいいんですか?」

 言われたとおりに竜泉寺の家まで来たものの、自分が何のために呼ばれたのかわからないでいた。

「うん。とりあえず荷物があったらそこに置いて、由佳の手伝いをしてもらっていいかな」
「わかりました」

 肩掛けバッグを部屋の隅に置くと、文子はキッチンへと向かって由佳に声をかける。

「あのー、先輩のお手伝いをしなさいって竜泉寺先生に言われたんですけど……」
「そう?まあ、文子ちゃんにもいろいろ覚えてもらわないといけないしね。じゃあ、こっちはもうできるから、そこにあるお茶碗にご飯をよそってくれる?」
「……はい、わかりました」

 由佳が目で示した先に、炊飯器とご飯茶碗が3つ並んでいた。
 自分がいろいろ覚えなくてはいけないと言われたのが何のことなのか少し気になるけど、とりあえず茶碗の上にあった杓文字を手に取る。
 そして、茶碗をひとつ手にすると炊飯器の蓋を開けてご飯をよそっていく。

「ご飯入れたらお茶碗はダイニングのテーブルの上に並べてちょうだいね」
「はい」
「それと、冷蔵庫の中にお茶が入ってるから、それとそこのマグもお願いしていい?」
「わかりました」

 由佳の指示に従って、文子はてきぱきとテーブルに茶碗とマグカップを並べていく。

「文子ちゃん、そっちの準備はできた?」
「はい」
「じゃあ、先生を呼んできてね、こっちもできたから」
「はい!」

「先生、ご飯ができましたよ」

 文子がそう告げると、竜泉寺は「ん~~っ」と伸びをひとつした。
 そして、ふたりでダイニングルームに戻ると、由佳がほかほかと湯気を立てている3枚の皿をテーブルに並べているところだった。

「あっ、来た来た!はい、今日は由佳特製しょうが焼きですよ~!」
「うん、うまそうだな」
「ちょっと座って待っててくださいね、お味噌汁は熱々のを持ってきますから!」

 竜泉寺と文子を席に着かせて再びキッチンに戻ると、由佳はこれまた湯気の立っているお椀の乗ったお盆を持ってきた。
 それをテーブルに並べると、自分も椅子に腰掛けた。

「それじゃいただきましょうか!お箸がふたり分しかないから、文子ちゃんは割り箸だけどいい?」
「あ、いえ、大丈夫です」

 割り箸を受け取りながら、文子はまだ状況が飲み込めないでいた。
 竜泉寺の家に来るように言われて、自分が何のために来たのかわからないうちにいきなり由佳の手料理をごちそうになるなんて、まるで狐につままれたような気分だった。

「それじゃ、いただきます!」
「いただきます……」

 由佳と文子が手を合わせているうちに、竜泉寺は早くもしょうが焼きを口に放り込んでいた。

「あ……おいしいです」
「うん、うまいな、由佳。焼いてるのに肉が柔らかいままだし」
「よかった!これはね、ちょっとした秘密があるんですよ~」
「……あの、由佳先輩はよく先生にご飯を作ってるんですか?」

 いつも以上に親しげに会話をしている竜泉寺と由佳の話に、おずおずと割って入る。

「そうだな、週末はたいていきてるよな、なあ、由佳?」
「まあ、竜泉寺先生ってこんな感じでしょ。自分で料理もしないし、ほっとくとご飯も食べずに1日中パソコンの前にいたりするのよ。だから私がこうしてご飯を作りに来てるの」
「おいおい、こんな感じってどういう感じだよ?」
「だって、見たままでしょ?」
「勘弁してくれよ」

 いつものように、由佳が軽口を叩いて竜泉寺がぼやく。
 もう、文子には見慣れた光景のはずなのになぜかいつもと違う感じがした。
 でも、どこが違うのかうまく説明できない。

 テーブルの上には豚のしょうが焼きと付け合わせのサラダ、お味噌汁に白いご飯。

 文子は、味噌汁をひとくち啜る。

「あ、お味噌汁にも豚肉が入ってるんですね」

 その味噌汁の具は、細切れの豚肉と千切りキャベツだった。

「うん。しょうが焼きを作った残りのお肉とキャベツ」
「まあ、そういうの由佳は上手いよな」
「まあ、買った分は効率よくきちんと使い切らないとね」
「すごい、先輩、感覚がまるで主婦ですね」

 自分でそう言って、文子はハッと気がついた。
 そういえば、いつも学校では竜泉寺は由佳のことを”栗原くん”と呼んでいるのに、今日はさっきから”由佳”と名前で呼んでいた。
 それが、ふたりの距離をいつもよりも近く感じさせていたのだ。
 本当に、今の由佳は主婦をしているように見える。

「うーん、主婦って言われるのはなんか不本意なんだけどね」
「あっ、ごめんなさい」
「うん、いいのいいの。それに、お肉はまあ冷凍できるけど、キャベツは残しても先生は間違いなく腐らせちゃうだけだしね」
「おいおい、またそれかよ」

 竜泉寺がぼやいて、由佳が声を立てて笑う。
 それにつられて、文子もついつい笑ってしまう。

 それが文子の気持ちをほぐして、和やかな会話とともに食事は進んでいった。

* * *

「ふう、ごちそうさま、由佳」
「ごちそうさまです」
「さてと、じゃあ後片付けといきますか」
「あ、私も手伝います」
「うん、お願いね」

 昼ご飯の後、立ち上がった由佳に続いて文子も立ち上がると食器を下げて洗うのを手伝った。
 由佳が洗った皿や茶碗を、文子が拭いて食器棚に収めていく。

「はい、これが最後のお皿」
「はい」

 受け取った皿を文子が拭いて棚に収めている間に、由佳はケトルに水を入れて火にかけていた。

「文子ちゃん、ちょっとそっちの棚からコーヒーを出してちょうだい。インスタントのだけど」
「ええっと……あっ、これですね」
「そうそう、それそれ。先生はコーヒーが好きだから、ご飯の後は絶対にこれがいるのよね」
「あの、カップは?」
「ああ、さっきのマグでいいのよ。先生ったらパソコン使いながら飲んだりするから、安定感のあるマグの方がいいの」

 文子から受け取ったインスタントコーヒーの瓶を受け取って、由佳は手際よく淹れていく。

「じゃあ、これを先生のところに持っていって。先生はブラック派だからそのままでいいから」
「わかりました」

 コーヒーを持ってダイニングに戻ると、テーブルにはもう竜泉寺の姿はなかった。
 文子が隣の部屋を覗くと、もうパソコンに向かっているその姿があった。

「あの、先生、コーヒーをお持ちしましたけど……」
「ん?ありがとう。そこに置いといて」

 パソコンの脇にマグカップを置くと、竜泉寺はそれを手にとって一口飲む。

 と、すぐに由佳がマグカップとミルクポットの乗ったお盆を手に入ってきた。

「はいはい~、私たちの分も入ったわよ~」

 由佳はガラステーブルにお盆を置くとソファーに腰掛ける。

「ほらほら、文子ちゃんもこっちに座りなよ」
「はい」

 文子も、勧められるままに由佳の隣に腰掛けた。

「これが文子ちゃんのね。で、こっちが牛乳。……砂糖は要る?」
「あ、いただきます」

 差し出されたマグカップに、ミルクと砂糖を入れてスプーンでかき混ぜる文子。

 カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ……。

「あ……」

 呻くような短い声と、マグカップの縁にスプーンが当たるカチャリという音。

 ぐったりとなって倒れそうになった文子の体を、そっと由佳が支えてソファーに凭れさせる。
 半開きになった口は笑っているように歪み、虚ろに開いた目も心持ち目尻が下がって、これも微笑んでいるように見えた。

 パソコンに向かっていた竜泉寺が、カウンターを手に振り返る。
 ニヤニヤと笑みを浮かべながら立ち上がると、ソファーに近づいて文子を見下ろした。

「ねえ、今日の竜泉寺先生と由佳先輩って、なんかいつもと違うと思わない?」
「……うん」

 竜泉寺の問いかけに、文子はコクリと頷く。

「でも、どこが違うんだろ?ふたりを見ていてどう思った?」
「……失礼だと思うけど、まるでカップルか、そう、まるで結婚してるみたいだった」
「それは、どっちに対して失礼なの?」
「……それはもちろん由佳先輩よ。だって……先輩はまだ若いし、あんなにきれいなのに……竜泉寺先生と夫婦みたいだなんて悪いなって……」

 ぼそりぼそりと答える文子の返事を隣で聞いていた由佳が、クスリと笑って竜泉寺にVサインをしてみせる。

「でも、そう見えたってことはそれだけふたりが仲がいいってことだよね」
「……うん」
「だから、もうふたりが何をしても驚かないよね」
「……え?」

 怪訝そうに、文子の眉根がよる。

「もっともっと仲のいいところを見せられるかもしれないってこと」
「……もっと……仲のいいところ?」
「そう。竜泉寺先生と由佳先輩はカップルみたいなんだから、何をしてもそれは当然のことなの」
「……ふたりは何をしても……当然」
「そう。だから、ふたりが何をしても驚かないの」
「……うん」
「それを忘れちないで。……じゃあ、5つ数えて手を叩いたら、気持ちよく目を覚ます。いい?」
「……うん」

 そこで竜泉寺が目配せをすると、由佳が文子の体を支えて真っ直ぐ座らせる。
 それを確認してから竜泉寺が5つ数えて、パチンと手を叩いた。

「ちょっと、文子ちゃん?どうしたの?」
「……え?由佳先輩?」

 気がつけば、由佳の腕に支えられるようにして座っていた。
 目の前に心配そうな表情でこちらを覗き込んでいる由佳の顔があった。
 
 たしか、さっきまで自分は由佳が淹れてくれたコーヒーを飲もうとしていたはずなのに、いつの間にこんな……?

「なんか、ぼんやりしてたみたいだけど?」
「そうですか?」

 言われてみると、何かぼんやりと考えていたような気がする。
 でも、何を考えていたのか思い出せない。

「ほら、早く飲まないとコーヒーが冷めちゃうよ」
「あ……はい……」

 促されて、まだ湯気を立てているマグカップに口をつける。

 そのまま、コーヒーを飲みながら由佳とおしゃべりを始める。
 竜泉寺は、相変わらずパソコンに向かっていた。

 由佳とおしゃべりするのは、それはそれで楽しいのだが、どうして今日自分がここに呼ばれたのかわからない。

「さてと、ちょっとカップを洗ってこようかな」
「あっ、それなら私が洗ってきます」

 由佳が、おしゃべりの途中で立ち上がろうとしたので、文子は自分からそう申し出た。
 先輩の由佳にばかり働かせるのは悪いと思ったのだ。
 それに、さっきお皿を洗うのを手伝ったので、キッチンの勝手はだいぶわかってきていた。

「そう?じゃあ、甘えちゃおうかな」
「じゃあ、洗ってきますね」

 空になったカップとミルクポットをお盆にのせて立ち上がると、文子はキッチンへと向かう。

 そして、カップを洗い終えて部屋に戻ってくると……。

「……あっ」

 そこで見た光景に、文子は思わず声を上げてしまった。

 ソファーに腰掛けた由佳と竜泉寺が抱き合ってキスをしてた。
 それだけではない、竜泉寺の手がブラウスの上から由佳の胸を揉んでいた。

 ただ、その光景を見ても文子はさほど驚かなかった。
 むしろ、やっぱり、と思ってしまった。

 ふたりは、そういう関係だったんだ。
 むしろ、抱き合っているふたりを見たことで、ここへ来てからずっと感じていたふたりが漂わせていた親密な雰囲気に納得がいった気がする。
 それに、ふたりがそうやっているのはすごく当然な気がした。
 でも、さすがに自分がそれを見るのは憚られるような気がした。

 こっそりと、文子が部屋を出ようとしたとき。

「行ったらダメよ、文子ちゃん」

 背後から、由佳の声が呼び止めた。

「……え?由佳先輩?」

 もう一度振り向くと、竜泉寺と抱き合ったままで由佳がこっちを見つめていた。

「そこに座って見ててちょうだい、文子ちゃん」
「は、はい……」

 そう言った由佳の顔には、普段の明るくて柔らかい雰囲気はなかった。
 それに気圧されて、文子はその場に座ってしまう。

 と、竜泉寺が由佳のブラウスの裾を胸元までめくり上げると、ブラもずらして露わになった乳房を揉み、もう片方の乳首に吸い付いた。

「あ……んっ、先生っ……」

 竜泉寺に胸を吸われて体を震わせると、由佳が悩ましげな声を上げる。

「はうんっ、あっ、ああっ!」

 今度は、大きな喘ぎ声をあげてその体がビクンと跳ねた。
 よく見ると、竜泉寺の手がそのスカートの中に潜り込んでいた。

「あんっ、はっ、はうっ、せっ、せんせえっ!」

 うっとりと目を閉じて腰をくねらせている由佳の姿は、文子から見てもすごくいやらしくて、すごくきれいだった。
 なんだか、見ているだけでこっちが真っ赤になりそうなくらい恥ずかしいのに、それをごくごく当たり前に感じてしまう自分がいた。

「じゃあ先生、今度は私が……」

 少しの間そうしていた後で、由佳がガラステーブルを押しのけると、床に座り込んで竜泉寺のズボンをずらし始めた。
 そして、トランクスもずらして露わになったもの。

 いくらこの間初めてオナニーをしたくらいに初心な文子でも、それが何かはわかった。

 それに向かって由佳が舌を伸ばしたときには、さすがに少し驚いた。

「……ぴちゃ、れろぉ……んふ、あふう、ぺろ」

 由佳は、まるで、アイスか何かを舐めるようにおいしそうに舌を這わせていく。

「んふ、あむ……んむ、ちゅぱ……えふ、しゅぼ……」

 ……すごい。あんなに大きくなるんだ。

 由佳が舐めているうちに、それは目に見えて大きくなっていた。
 それに向かって由佳は舌を這わせ、時折それを口の中に咥え込む。

「んぐっ、あむっ……んっ、じゅるっ……むふうぅ……」

 由佳の小さな口には大きすぎるくらいに膨らんだそれを、口いっぱいに頬張る。
 嬉しそうに目を細めているその表情が印象的だった。

「……んっ、んぐっ、あふう……ねえ、先生、そろそろいいですか?」

 ようやくそれから口を離して竜泉寺を見上げた由佳の表情には、いつも軽口を叩いている雰囲気は全くなかった。
 むしろ、ふるふると瞳を潤ませてうっとりと見上げるその姿は、飼い主を見上げる子猫か何かを思わせた。

 竜泉寺が黙って頷くと、由佳は立ち上がって大きく膨れあがったそれの真上に自分の腰を持っていくと、スカートの中に自分の手を入れながら腰を沈めていった。

「んんんんんっ!はうっ、んはああああっ!」

 一瞬、由佳の背筋がピンッと突っ張った。
 そして、首を仰け反らせて大きく息を吐く。
 だが、それもほんのわずかな間のことで、すぐに腕を竜泉寺の背中に回して抱きつくと、くねらせるように腰を動かし始めた。

「はうっ、あああっ、イイッ、気持ちいいですっ、先生っ!」

 竜泉寺の上に跨がって、由佳のしなやかな体がくねくねと妖しく動く。
 恍惚とした表情で竜泉寺の頭を胸で抱えるようにして切なそうに喘いでいた。

「あんっ、ああっ、ここっ、ここがイイですっ!んふううううっ!」

 ねえ?これって……もしかして……?

 食い入るようにふたりの姿を見つめながら、文子は激しく混乱していた。

 今、自分の目の前で竜泉寺と由佳がセックスをしている。
 いくら文子が初心で未経験でも、そのくらいのことはわかった。
 ただ、問題はふたりがセックスをしていることではなかった。
 その点に関しては特に不思議には思わなかったのだ。
 むしろ、このふたりの関係を考えたらそのくらいのことは当たり前のように思えた。

 しかし、何のために今、自分がここにいるのかがわからない。
 ただでさえ、今日、自分がここに呼ばれた理由がわからないのに、なぜふたりがセックスしている様子を見なければいけないのか、いくら考えても答えは出てこなかった。

 ……でも、なんだろう。
 見入っちゃうよ、これ。

 いつの間にか食い入るように見つめている自分がいた。
 初めて見るセックスから、目を逸らすことができない。

「あんっ、はんんんっ!ああっ、せんせいっ、はげしっ!ああっ、そこっ、すごいっ!」

 文子が見ている前で、由佳の動きが次第に激しくなっていき、体全体で跳ねるように上下に揺れている。
 よく見たら、竜泉寺の方も下から腰を動かしているみたいだった。
 ふたりの繋がっている辺りから、ジュッ、グチュッと湿った音が聞こえてくる。
 
 すごい……セックスって、ああいう風にやるんだ……。
 んっ……なんか、私……。

 そんな激しいセックスを見ているうちに、体が熱くなってくるのを感じる。
 アソコの辺りが、じーん、と熱くなって疼いてくるように思えた。

 だって、由佳先輩ったらあんなに気持ちよさそうなんだもん……。

 そう、由佳は明らかに笑っていた。
 目を閉じて喉の奥から悩ましげな喘ぎ声を絞り出しながら、その口許にはいかにも心地よさげな笑みが浮かんでいた。
 竜泉寺にしがみつくようにしてそのしなやかな体全体をいっぱいに揺すっている由佳の動きが激しくなればなるほど、その喉から洩れる喘ぎ声も大きくなっていく。

 その姿を見ているうちに、一昨日の晩初めて自分でアソコを弄ってみたことや、昨日、竜泉寺にアソコを触られて気持ちよかったことが思い出されてくる。

 本人は気づいていなかったが、ふたりのセックスを見つめて顔を真っ赤に染めながら、文子はふとももをモゾモゾと動かしていた。

「あふんっ、ああっ、あっ、せんせいっ、私っ、もうイクっ、イキそうですっ!あっ、はうんっ、んんっ、ああっ、だめっ、もうっ、イックううううううううううっ!」

 ガクガクと大きく腰を動かしていた由佳の体が、両腕を竜泉寺に巻き付けたままぎゅっと反り返った。
 喉をヒクヒクと震わせて、大きな喘ぎ声が上がる。

 文子の見ている前で、由佳のすらっとした肢体がきれいな弧を描いて固まり、何度かブルブルッと痙攣している。
 だが、それも少しの間だった。
 まるで彫像のように強ばっていた体から何の前触れもなく力が抜け、竜泉寺にぐったりと体を預ける。

 そんな姿を文子は半ば茫然と見つめていた。
 初めて見たセックスは衝撃的で、文子にはちょっと刺激が強すぎた。

 でも、由佳先輩……本当に幸せそう……。

 竜泉寺に寄りかかって肩で息をしている由佳の頬はほのかに赤く染まり、薄く開いた目尻はトロンと下がっていた。
 今週の放課後はずっと由佳と一緒にいたというのに、初めて見た、とても幸せそうで無防備な表情だった。

 やがて呼吸が整ったのか、由佳はゆっくりと竜泉寺の体から降りて立ち上がると、こっちに向き直った。
 その時の由佳の姿は、文子が思わず息を飲むくらいきれいだった。

 それはもちろん、もともと由佳は大人びた雰囲気のあるきれいな顔立ちをしていたけれど、紅潮した顔で瞳を潤ませてこちらに近づいてくるその表情のいやらしさは、女の文子がドキッとしてしまうくらいだった。
 ブラウスの裾をはだけて、胸元も大きく開いた乱れた服装がそれに拍車をかけていた。

「実はね、今日ここに文子ちゃんを呼んだのは他でもないの。私ね、明日は模試があってここに来ることができないの。だから、明日は文子ちゃんに私の代わりをしてもらいたいの」
「先輩の……代わり?」
「そう。今日、私がしていたとおりに文子ちゃんにして欲しいの。それを見てもらおうと思って今日ここに文子ちゃんを呼んだんだけどね」
「先輩がしていたとおりに……って?ええええええっ!?」

 文子が大声を上げたのも無理はなかった。

「どうしたの?」
「だって、先輩がやったとおりって……!」
「え?それは、先生のお昼ご飯を作って、食後のコーヒーを淹れて……」
「いえ、それじゃなくて……」

 由佳が、1本ずつ指を折って数えていく。
 だが、そんなことは何の問題もなかった。
 問題なのは、たった今目の当たりにしたことだ。

「さっきのっ!竜泉寺先生と先輩のもですかっ?」
「……?もちろんよ」

 いったん首を傾げてから、由佳は当然だと言わんばかりに大きく頷いた。

「でもっ、それはっ!」

 ……あれは、竜泉寺先生と由佳先輩だから当たり前なんじゃない。
 ふたりはそういう関係なんだからセックスしても何の問題もないけど……。
 でも、私は違う。
 自分と先生がセックスをしていいわけがないじゃない!
 だいいち、そういう経験がない私なんかに先輩の代わりが務まるわけがないし。
 いやいやいや!それ以前に私、初めてなのに……。

 文子は、完全にパニックに陥っていた。

「やってくれるでしょ、文子ちゃん?」
「そんなっ!私には無理です」

 重ねての頼みを、おろおろしながら断る文子。
 すると、由佳が困ったような表情を浮かべた。

「でも、竜泉寺先生はこのために文子ちゃんを借り出したのよ。今、文子ちゃんは先生に貸し出されているんだから、先生のためになることをしなくちゃいけないんじゃないの?」
「……あっ!」

 それを持ち出されて、文子は黙り込んでしまった。

 でも、文子自身はそのために自分が貸し出されたなんて思ってもいなかった。
 てっきり、保健室の雑用をするためだと思っていたのに。
 それを、いきなりそう言われても困ってしまう。

 それに、自分が言われたのは貸し出されている間は竜泉寺の言うとおりにしていればいいということで、竜泉寺のためになることをするということではない。
 いや、それはもちろん、貸し出されている間は竜泉寺のためになることをしなくてはいけないというのもわかるような気がする。
 でも、竜泉寺の言うとおりにするのと、竜泉寺のためになることをするのはやっぱり違うような気がする。

 そんなことを考えながら、文子がまごついていると……。

「ねえ、先生も困りますよね?」
「うん、そうだな。明日一日だけ、由佳の代わりを頼むよ、本多さん」

 竜泉寺にそう言われると、文子には断りようがなかった。
 だって、自分は竜泉寺の言うとおりにしなくてはいけないのだから。

「……はい、わかりました」
「ありがとうね、文子ちゃん!じゃあ、一緒に晩ご飯の準備しよ!キッチンのどこに何があるかもう少し詳しく教えないといけないし」

 パッと笑顔を見せて、いつもの明るい口調に戻ると由佳は文子の手を引いていく。

 結局、文子は由佳の頼みを断ることができなかった。

 そのまま、由佳にいろいろ説明してもらいながら一緒にご飯を作ったけど、文子は明日のことで頭がいっぱいになって由佳の説明がほとんど入ってこなかったのだった。

* * *

 翌朝。

 さすがに、竜泉寺の家に行くのはかなり気が重かった。
 なにしろ、今日、自分は竜泉寺とセックスをしなくてはいけない。
 そのことが重くのしかかっていた。
 それが気になって、昨日はよく眠れなかった。

 それでも、約束したことではあるし、なにより、由佳だけではなくて竜泉寺にも頼まれたのだから来ないわけにはいかなかった。

 竜泉寺の部屋の前まで来ると、はぁ~、とため息とも深呼吸ともとれるくらい大きく息を吐き、インターホンを押す。

「やあ、いらっしゃい、本多さん」

 ガチャリとドアを開けて、竜泉寺が顔を出した。

「おはようございます」
「うん、おはよう。さあ、入って」
「はい」

 竜泉寺に招き入れられて部屋の中に入る。

 この日、これからすることを思うと、不安で顔が強ばっているのが自分でもわかった。
 それに対して竜泉寺の方は、飄々としていつもと特に変わったところはない。

 昨日と同じく、ダイニングルームを通って奥の部屋に入り、荷物を置く。

 そこで文子はまた戸惑ってしまう。
 よく考えたら、こうやって竜泉寺と二人きりになるのは月曜日の図書室以来だ。
 それからは、いつも由佳が一緒にいてくれた。

 由佳先輩は、いつも先生とどんなことを話してるのかしら?
 ……バカねっ、私ったら。
 先輩は先生とつき合ってるんだから話すことなんかいくらでもあるに決まってるじゃないの!
 でも、私は……。

 学校とは違って、こういうプライベートな場所で竜泉寺と二人っきりで何を話したらいいのかわからない。

「どうしたんだい、本多さん?」
「……えっ!?あっ、いえっ、なんでもないです!じゃあ、お昼ご飯の準備をしてきますね!」

 竜泉寺に話しかけられただけで、飛び上がりそうなほどに驚いて声がうわずってしまう自分がいた。
 とりあえず、キッチンでご飯の準備をしていれば少しは気が紛れると思って、そそくさと部屋を出る。

「……あ」

 しかし、冷蔵庫を開けて、文子はまた唖然としてしまう。
 そこには、卵が2個にバターとマヨネーズ、それと、昨日の晩の残りのレタスとプチトマトが少し入っているだけだった。

 そういえば……。

(冷蔵庫にほとんど何も残ってないから、買い物しておいた方がいいかもしれないよ)

 昨日、由佳がそんなことを言っていたような気がする。
 というか、あの時はすでに頭の中がパニックになっていたから、そう言われたことも今の今まで忘れていた。

 ……今からお買い物行ってたら遅くなるよね。

 このマンションの少し先、駅前の商店街にスーパーがあるのは知ってるけど、今からそこまで買い物に行っていたらお昼がだいぶ遅くなってしまう。

 何かないかと冷凍庫を開けると、そこにはミックスベジタブルと使い残しの鶏肉が少し。
 調味料の入っている棚を開けると、砂糖や塩、こしょうと一緒に粉末のコンソメスープが入っていた。
 他には、お米だけはたっぷりある。

 どうしよう?
 オムライスを作るには卵が少なすぎるし……。

 あり合わせの食材を全部出してみて、文子は考え込む。

「そうだ!」

 ポンと手を叩くと、文子はレンジに鶏肉を入れて解凍する。
 その間にお米を研いで水気を切っておく。

 そして、解凍した鶏肉を小さく刻んで、お米とミックスベジタブルと一緒にバターで炒めた。
 それを炊飯器に入れると、水とコンソメスープを入れてスイッチを入れる。

 ご飯が炊けるまでの間に、小鍋に水とコンソメスープ、そしてミックスベジタブルの残りを少し入れて簡単な野菜スープを作った。

 もともと料理が好きな文子は、こうしているとだいぶ気が紛れる思いだった。

 炊飯器がなってから蓋を開け、味見をしてみる。
 即席のピラフにしては上出来だった。

 それを皿に盛ってから、フライパンで半熟目玉焼きを作ってピラフの上に乗せた。
 あとは彩りにレタスとプチトマトを添えて、スープをカップに注いで完成だった。

「先生、お昼ご飯ができました」
「ん~、わかった、すぐ行くよ」

 竜泉寺を呼びに行くと、パソコンから顔を上げて立ち上がった。

「はい、先生、スプーンです」
「ん、ありがとう。……それじゃあ、いただくとするかな」

 竜泉寺が、手にしたスプーンで目玉焼きの黄身を崩してから、ピラフと一緒に口に運ぶ。

「んっ!旨いよ」
「ありがとうござます」
「本多さんは料理が上手なんだね。もしかしたら由佳よりも上かな?」
「そ、そんなことないです!」

 こんな間に合わせの料理と比べられたら、由佳に悪いような気がした。
 それに、これも竜泉寺のリップサービスなんだというのはわかっていた。

 でも、竜泉寺に褒められてすごく嬉しかった。
 同じようなことが前にもあった。
 竜泉寺に褒められて、嬉しくて顔が熱くなって胸がドキドキしてくる。

 とはいえ、二人だけだとやっぱり会話は弾まない。
 それでも、竜泉寺が旨い旨いと言って完食してくれたことも嬉しかった。

 でも、昼ご飯が終わったらいよいよその時が来てしまう。

 ご飯の後、お皿を洗いながら文子は自分の手が震えているのを感じていた。

* * *

 後片付けをした後、コーヒーを淹れて竜泉寺のところに持っていく。
 文子も、自分のコーヒーの入ったマグを手にソファーに腰掛けた。

 でも、そうして座っていても全然落ち着かない。

「あの、先生、いいですか?」

 結局、耐えきれなくなって文子は自分から話を切り出した。

「ん?どうしたんだい?」
「今日、これからのことですけど……」
「あー、そうだったそうだった」

 竜泉寺も、思い出したように席を立って文子の方に来る。
 いよいよかと、緊張で体が強ばるのを感じた。

「そういえば、本多さんの体を調べなければいけなかったよね」
「……え?」

 竜泉寺の口から、予想していたのとは違う答えが返ってきた。

「ほら、金曜日はあのままになってしまってたから。だから、あの続きをしようと思ってね」
「は、はあ……?」

 昨日のことがショッキングで、金曜のことなんかすっかり忘れていた。
 すっかり肩すかしを食らって、思わず全身の力が抜けてしまう。

 そう言えば、あの時はすごく気も良かった。
 どうして自分の体がああなってしまうのかはわからないけど。
 セックスするのは嫌だけど、あれならいいかな……。

「いいかな、本多さん?」
「あっ、はい……お願いします」
「うん。じゃあ、今日は服を着ているし、ちょうどいいからこのまま調べてみよう。……こう、これはどうかな?」

 服の上から、竜泉寺が肩に手を置いた。
 しかし、それ以上に特別な感触はしない。

「……?特に変わった感じはしないです」
「ふーむ……。じゃあ、ここは?」
「ひゃうああああっ!」

 竜泉寺の手が直に首筋を撫でた瞬間、体がビクンと反応した。
 最初にビリリッと電気が走って、その後からじーんと痺れてくるようなあの気持ちいい感覚。
 まるで、すごく熱いもので擦られたみたいで、気持ちがほわんとしてくる……。

「本多さん?ビリビリ感じてるの?」
「はっ、はいいいいっ!」
「なるほど、じゃあ、こっちは?」
「……え?あ、いえ、なんとも」

 竜泉寺の手がまた、服の上から文子の二の腕を掴んだ。
 さっき、首筋であんなにビリビリきたのが嘘のようになんとも感じない。

「なるほど、じゃあ、こっち」
「ひゃあっ!はうううううううんっ!」

 もう一度首筋を撫でられて、文子は悲鳴を上げる。

「なるほど、服の上から触ったらなんともなくて、直接触ったらビリビリくるわけか……」
「ふあああああっ!ああっ、あっ、せっ、せんせいっ!いあああああっ!」

 考えるのに集中しているのか、竜泉寺は呟きながら文子の首筋を撫で続けていた。
 文子が悲鳴を上げ続けているのにも気がついていないようだった。

 あの、金曜日にも感じた、痺れるような快感が止まらない。
 撫でられている間、ずっと電気が走りっぱなしで、最初は首のあたりだけだった痺れが次第に全身に広がっていくみたいに感じられた。
 強烈な刺激に、ビリビリっとくるたびに目の前で火花が散っていた。

「せんせいっ!ふああっ、せんせええええっ!」
「……ん?おっと、ごめんごめん」

 ようやく気づいたのか、慌てて竜泉寺が手を離す。

「大丈夫かい、本多さん?」
「は……はい、大丈夫、です……」

 そう返事をした文子の息はすっかり上がっていた。
 もう触られてはいないというのに鈍い痺れが全身に残り、胸がバクバクと鳴っている。
 体が溶けてしまいそうな気怠さがあるのに、それがやけに心地いい。

「本当に大丈夫?まだ続けられそうかい?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、今度はここなんかどうかな?」
「……んふっ!あ、あれ?そこ、ちょっとビリってきます」

 スカートの上からふとももを撫でられたときに、微かに快感を感じた気がして文子は首を傾げた。
 さっき肩や腕を触られたときはこんな感じはなかったのに。
 そう言えば、金曜日に調べてもらったときは、肩や腕よりもふとももを触られたときの方が刺激が強かった。
 もしかしたら、そんなことが関係しているのかもしれない。

「なるほど、ここは服の上からでもビリッとくるわけだね」
「はい」
「じゃあ、次はこんなのはどうだい?」
「はうっ、はうううっ!」

 竜泉寺がしゃがみ込んで、文子のふくらはぎを触った。
 すると、スカートの上から触られたときよりもずっと強い快感が走る。

 竜泉寺の手がゆっくりと上にあがり始めた。

「あうっ、うああっ!あっ、んふうううっ!なんかっ、だんだん激しくっ!ふあああっ、あああああああっ!」

 ふくらはぎから膝の裏、そしてももへとあがってくるにつれて、次第に快感が強まっていく。

「あうっ、うふうううううううっ!」

 内ももまで手が上がってきたときに、また目の前で火花が散って体がビクンと跳ねた。
 ズキンズキンとアソコの辺りが疼いて、体がかぁっと熱くなってくる。

「ひょっとして、次第に刺激が強くなっていった感じかい?」
「は、はい……」
「なるほど、そういうことか……。それに、この間もそうだったけど、こういう場所の方が反応が大きいってことは……」

 いったん手を離して、竜泉寺は納得したように何度も頷いている。
 何かわかった様子だが、それが何かは文子には見当もつかない。

「じゃあ、今度はここなんかどうだろう?」
「……ええっ!?んふううううううううううううっ!」

 竜泉寺の手が胸に触れた瞬間、服の上から触られたというのに、あまりの刺激に目の前が真っ白になった。

 んんっ!おっぱい、こんなにっ!

 むにゅっと掴まれると、あまりの快感に息が詰まりそうになる。
 それに、自分の乳首がカチンコチンに固くなっているのが自分でもわかった。
 服の上からでもそこをコリッと触られると、くらくらと目眩がするほどの快感が走る。

「あふううううううっ!乳首っ、すごいですううううっ!」

 叫びながら、文子の体がビクビクッと震える。
 頭が真っ白になって、快感に飲み込まれそうだった。

 と、不意に竜泉寺の手が胸から離れた。

「……ふえぇ?先生?」

 いきなり気持ちいいのを止められて、緩みながらも名残惜しそうに竜泉寺の顔を見上げる。
 竜泉寺の方はいたって真面目な表情で頷いた。

「うん、たぶんわかったと思う」
「……なにが、ですか?」

 そう聞き返した文子の頭の中はまだふわふわしていて、竜泉寺がなんのためにこんなことをしていたのかすぐに思い出せなかった。

「たぶん、きみは感じてるんだよ」
「感じてる?なにを、ですか?」
「ちょっと答えにくい質問をするから、答えたくなかったら答えなくていいけど、本多さんはその、男の人とセックスをした経験はあるのかな?」

 それは、本当に答えにくい質問だった。
 おかげで文子は、頭の中がふわふわしていたのが一気に醒めてしまった。

 でも、よく考えたら経験がない、というのは特にやましいこととは思えない。

「あの……ありません」

 だから、文子は素直にそう答えた。

「じゃあ、自分でいやらしいことをした経験は?」
「……ないです」

 本当は、木曜日の晩に生まれて初めて自分でやったのだけれど、それはこのおかしな症状が出てからなので経験がないと言っても差し支えがないように思えた。

 しかし、竜泉寺の方はその返事を聞いて少なからず驚いたようだった。

「なんだって!?これは驚いたな……」
「どうしたんですか?」
「いや、本多さん、きみが感じているのはね、そういう経験のある人が好きな人といやらしいことをしているときに感じるもののはずなんだよ」
「……え?えええええええっ!?」

 竜泉寺の出した結論に、今度は文子の方が驚く番だった。

「せ、先生?それって?」
「うん、きみが感じているのは性的な快感。それも好きな相手とそういうことをするときに感じる特別なものだと思うんだよ」
「でもっ、先生、私っ!?」
「うん、僕も驚いているよ。まず、きみは男性とセックスした経験はもちろん、自分でしたことすらない。それに、僕ときみはこの間まで話をしたことすらなかったんだから、そんな特別な感情をきみが僕に持っているわけはないしね」

 文子の感じた疑問は、竜泉寺が全部言ってくれた。

「だったらどうして……?」
「それはまだわからない。でも、きみが言っていたビリビリと痺れるような感じ、目の前で火花が散る、頭の中がほわんとする感じっていうのは、どれも性的な快感を感じたときの喩えでよく出てくることだし、どうだろう?体が熱くなったりしなかったかい?」
「あ……なりました」
「そうだろうね。顔もあんなに紅潮してたしね。それと、体の場所による感じ方の違いっていうのは、まあ、人によって違うこともあるけど、これもだいたい性的な快感を感じる場所と一致してる。ただ、普通は特に性的な快感を感じる場所ではないところでも気持ちよく感じるっているのは、深く愛し合っている者同士でないと見られないんだけど……」
「で、でも……」
「正直に答えて欲しいんだけど、本多さんは僕のことをどう思っているのかな?」
「それは……竜泉寺先生のことはいい人だと思います。でも、それは……いい先生として好きだってだけで……そんな、男の人として好きだっていうのとは違うと思います。……すみません」

 文子はそう言って申し訳なさそうに俯く。

 でも、それが自分の正直な気持ちだった。
 決して竜泉寺のことを嫌いなわけではない。むしろ、好きだとは思う。
 しかし、それも単にひとりの生徒として学校の保健医の竜泉寺を好ましく思っているという程度だと自分では思っていた。

 でも、それならどうして……。

 正直、文子は自分の感情がわからなかった。
 セックスはもちろん、男の子とつき合った経験もないのだから。
 ちょっと憧れた先輩とかはいたことがあるけど、それが本当に好きだったのかと言われると、正直なところ自信はない。
 ましてや、竜泉寺とこうして話をするようになってまだ一週間しか経っていない。
 それで、好きになることがあるのかということもわからないし、そんな実感もない。
 だいいち、竜泉寺には由佳がいる……。

「いや、そんなすまなそうにすることはないんだよ。むしろ、それが当然だと思うしね。なにしろ、僕はきみを借り出してこうやってこき使っているわけなんだし」
「あっ、いえっ、そんな!私、本当に竜泉寺先生のことはいい先生だと思ってるんです」
「うん、ありがとう。でも、特別な恋愛感情じゃないんだね。それがわかればいいんだよ。こればっかりはきみ自身に答えてもらわないとわからないからね。まあ、年頃の女の子は何があるかわからないから」
「いえ……そんな、私……」

 今度は、少し恥ずかしそうに頬を赤らめて俯く文子。
 それを見て、竜泉寺が気まずそうな顔をする。

「うん、ごめんごめん。今のはちょっとデリカシーに欠けてたよね。でも、そうなるときみの体に出てるこの反応がどういう理由でなのかがわからなくなるんだよなぁ……」

 そう言ったきり、竜泉寺は腕を組んでまたなにやら考え込み始めた。

 そのまま、沈黙の時間が流れる。

 ずっと考え込んでいる様子の竜泉寺と、混乱しっぱなしの文子。

 文子なりに、どうして自分の体がこんなことになるのか考えていた。
 竜泉寺に触られて、最初に電気が走るような強い刺激を感じたのは木曜日だった。
 はじめはびっくりしたけど、すぐにそれを気持ちいいと思うようになっていた。
 実際、金曜日も、そしてさっきもあんなに気持ちよく感じてすごく幸せな気持ちになった。
 もし、竜泉寺の言うことが本当なら、それは自分が竜泉寺のことを好きだから、ということになる。
 でも、自分にはそんな実感はない。
 もちろん、竜泉寺のことが嫌いというわけではない。むしろ、好意を持っている。しかし、それは決して恋愛対象としてではないと思う。
 考えれば考えるほど、自分の体の反応と心の反応が一致してないように感じる。
 それとも、それほどまでに自分の心が恋愛に対して鈍感なんだろうか?
 本当は竜泉寺のことを好きなのに、それに自分で気づかないほどに。

 私、もしかして竜泉寺先生のことが好きなの?

 そう自問自答しても、何の実感も湧いてこない。
 いくら考えても、竜泉寺に触られて気持ちいいと感じてしまう体と、自分の心との間のズレの原因がわからない。

 どうやったら、自分の本当の気持ちがわかるんだろう?

 ……もしかして、先生とセックスしてみたらわかるのかな?

 不意に、そんな考えが浮かんだ。
 冷静に考えたらそんなのはおかしいと思うはずなのに、文子はいたって大まじめだった。
 そんな考えが浮かぶこと自体、文子が混乱している証拠だというのに。

「あの、先生……」
「ん?どうしたんだい?」
「あの……ですね…………」

 話しかけるだけでもかなりの勇気がいったのに、なかなか話を切り出せなくて黙ってしまう。
 竜泉寺は、不思議そうに首を傾げてこちらを見ていた。

「何かあったのかい?本多さん?」

 促されて、文子はなけなしの勇気を振り絞る。

「……私とセックスしてくれませんか?」
「おいおい、何を言ってるんだい?」

 文子の申し出に、竜泉寺は少し驚いたみたいだった。
 そして、すぐに苦笑いを浮かべる。

「冗談だよね、本多さん?」
「いえっ、私、本気です。もしかしたら私、先生のことが好きなのかもしれないですし。そのことに自分で気づいてないだけかもしれないですから、もしかして、セックスしたらそれがわかるんじゃないかって……」
「でも、きみは初めてなんだろ?」
「それは……そうですけど……」
「だったら、軽々しくそんなことをするもんじゃないと僕は思うけどね」

 たしなめるように少しきつい口調でそう言われて、文子はシュンとなる。
 この場合、客観的には明らかに竜泉寺の言うことの方が正しくて、文子の言っていることの方が無茶苦茶だった。
 そんなことは文子にもわかるけど、そうでもしないと何がどうなっているのかはっきりしないように思えた。

 だから、ありったけの勇気を出して申し出たのだ。

「だけど、私、昨日由佳先輩にも言われましたし、いちおう、今日はそのつもりで来てましたし……」

 本当は、今日ここに来るまではものすごく気が重かった。
 いまでも、気が重いことに変わりはない。
 だけど、竜泉寺の説明を聞くと、本当に自分が竜泉寺のことを好きなのかどうか確かめたいという気持ちも湧いてきていた。

「本気なのかい?」

 文子があまりにも真剣な顔をしているので、竜泉寺も真顔で聞き返してきた。

「はい」
「そうか……きみがそこまで言うんだったら」
「……ひゃううんっ!」

 竜泉寺が文子の両膝を掴んで、足を大きく広げさせた。
 その手が膝に触れた刺激だけで、文子は悲鳴を上げてしまう。

 そこに、こっちに覆い被さるように竜泉寺が体を寄せてきたので、文子は思わずぎゅっと目を閉じてしまった。
 いざそういう段階になると、急に怖くなった。
 文子は、自分の気が重かった理由がわかったような気がした。
 竜泉寺とセックスをするのが嫌だったんじゃなくて、初めてのセックスが怖かったんだと。
 そんな知識も経験もない自分がいきなりそんなことをしたら、どうなってしまうのか怖かった。
 だから、体がガチガチに緊張してしまって小さく震えているのが自分でもわかる。

 体を強ばらせ、目を固く瞑ったまま文子は待った。
 ドキドキと自分の心臓の音だけがいやに大きく聞こえる。

 でも、なにもなかった。

 不思議に思って目を開くと、竜泉寺がこちらを覗き込んでいた。
 柔らかい、それでいてどこか寂しそうな笑みを浮かべて。

「冗談だよ、本多さん」
「……え?」
「初めてがこんな形じゃだめだよ。きみにとっても」
「で、でもっ、私は……」
「もうやめておこう。ね?」
「でも……昨日、由佳先輩にも言われましたし……」
「あれは由佳の勇み足だよ。そこまで気を回さなくても、僕はここに来てご飯を作ってもらったら十分だったんだから。それに、あんなに怯えている相手にそんなことするわけにいかないよ」
「でも……」
「うんうん、本多さんは優しいんだね。その気持ちだけもらっておくよ」

 そう言って、文子の頭を優しく撫でると、竜泉寺は立ち上がって自分のデスクに向かってパソコン作業を始めた。

 その後ろ姿を、文子は茫然と見つめていた。
 あんなに気が重たかったのだから、セックスをしなくてすんでホッとしてもいいはずなのに、ちっとも気が楽にならなかった。
 それどころか、ますます気分が沈んでくるように思えた。

 後悔……とでも言うのだろうか。
 竜泉寺に対して、そして由佳に対して申し訳ないという気持ちがふつふつと湧いてくる。
 今日は来ることができない由佳に代役を指名されたのに、それを果たすことができなかった。
 それに、自分は竜泉寺に貸し出されているのに、その竜泉寺に気を遣わせてしまった。

 私、そんなに嫌だったの?
 違う、ちょっと怖かっただけだよね……。

 本当は竜泉寺とのセックスが嫌なのではなかった。
 これから起こることが怖くて、体が竦んでしまったのだ。
 湧き上がってくる後悔によって、改めてそのことに気づかされた。
 初めてを失うことに臆病になっていた自分の心が、一歩踏み出すことを躊躇わせていた。

 それに、こんなに後悔しているんだから、もしかしたら自分は竜泉寺のことを好きなのかもしれない。
 そのことに気づいて、文子は悄然と項垂れていた。

 でも、いまさらもう一度お願いしますなんて、言えないよね……。

 一度タイミングを逃してしまうと、もう一度話を切り出すのはより大きなエネルギーがいるものだ。
 ましてや、さっきので持っている勇気を全部使い果たしてしまったような気がする。
 だからといって、こうやって黙って座っていると気が滅入るばかりで泣きそうになってくる。

「私、ちょっとスーパーに買い物に行ってきます。晩ご飯の材料を買わないと……」

 そう言って文子は立ち上がった。
 せめて晩ご飯はちゃんと作らないと、由佳に合わせる顔がないように思えた。

「あ、じゃあ僕がお金を出すよ」
「後でいいです……」

 短く答えると、鞄を手に部屋を出る。
 
 とにかく何かしていないと、本当に泣きだしてしまいそうだった。

* * *

 月曜日。
 一夜明けても、気分は全然晴れなかった。

 放課後、重い足どりで保健室へと向かう。

 昨日のことを由佳先輩にはなんて言おう……。
 いや、もう先輩には先生が言っているかもしれないよね。

 会って最初に由佳に言う言葉が見つからないままに、ドアをノックして保健室に入る。

「ああ、よく来たね、本多さん」
「いらっしゃい、文子ちゃん」
「あら?本多さんはこれから?」

 その日、いつもと違って3人の声が文子を出迎えた。

「え?木下先生?」

 そこにいたのは、木下佐知子だった。

「本多さんには、放課後に保健室の雑用を手伝ってもらっているんですよ」
「そうだったんですか。……どう?貸し出されるのにはもう慣れた?」
「はい……」
「まあ、竜泉寺先生も栗原さんもいい人だから、その点は心配ないわよね」

 いつもと変わらない明るい笑顔を文子に向けながら、佐知子はスーツを脱いでいく。

「え?えええっ?」

 驚いている文子の目の前で、佐知子はシャツもスカートも脱ぎ、下着も脱ぎ捨てて裸になってしまった。

「それじゃあ、始めさせてもらっていいですか、竜泉寺先生?」
「ええ、いいですよ」

 裸になった佐知子が竜泉寺の前で膝をついて、ズボンのベルトを外してずり降ろしていく。
 そして、露わになったそれを微笑みを浮かべながら手に握った。
 握った手に力を入れたり緩めたりしているうちに、それが大きくそそり立ってきたのが文子の位置からもわかった。
 すると、佐知子はそれを扱くように手を動かし始めた。
 滑るように動く佐知子の手の中で、それがさらにむくむくと膨らんでいく。
 その先っぽから何か出てきているのか、赤黒く膨れたその全体がヌラヌラと濡れて光り始めていた。

「ああ……出てきました……」

 うっとりと呟くようにそう言うと、佐知子はその先に、ちゅっ、とキスをして、次に口の中にそれを咥え込んだ。

「ん……はむっ……んふ、ちゅる……」

 いっぱいにそれを頬張り、口の先をすぼめる佐知子。
 ひねりを加えながら頭を振ると、じゅぼっ、と湿った音がこっちにも聞こえてくる。

「んむ、んふ……じゅるっ、しゅぽっ……あむ、はふ……ちゅるる……」

 土曜日に由佳がしていたように、佐知子は口いっぱいに膨れあがったそれを頬張っている。
 でも、由佳のときよりもずっと濃密で、しゃぶっている時間も長い。
 なにか溢れてきているのか、それとも涎なのか、時折、じゅるるるっと吸い込む水音が響く。

 文子は半ば呆気にとられてそれを見ていることしかできなかった。

「んっ、んぐっ、んっく……んふっ、ん、んっ、んんっ、んぐっ……」

 今度は、佐知子はそれを咥え込んだままで大きく頭を前後に揺らし始めた。
 少し苦しそうに眉間に皺を寄せて喉の奥深くまで飲み込んでいるのに、どこか気持ちよさそうにも見える。

「んっ、んっ、んっ、んんんっ!んぐっ、んっ、んふうぅ、んっ、んっ、んぐぐっ、んっ!」

 佐知子の動きは次第に激しくなって、なにかに憑かれたように一心不乱に頭を振り続けていた。
 時々苦しそうにえづく声が上がるが、それでも動きを止めようとしない。

「……くっ!そろそろ出ますよ、木下先生」
「んくっ、ふうんんっ、んっ、んむっ、んぐっ、んっ、んっ、んぐぐうううううううっ!」

 竜泉寺に声をかけられて、それまで大きく頭を振っていた佐知子が、がばっと竜泉寺の腰をかき抱く。
 すると、竜泉寺の体がブルブルッと震えて、ひときわ大きな呻き声が佐知子の喉から洩れた。

「ぐくっ、ぐふ、んんんっ、んむむうううううううっ!」

 ブルッ、ブルブルッと竜泉寺の体が震えるたびに、佐知子も体をひくつかせて呻いている。

「んくっ……こく……んふううううう……。はあぁ、こんなに、いっぱい出してくださって」

 咥えていたそれをようやく口から出すと、粘着質の糸を引いた。
 口の中に入っているものを、ごくっと喉を鳴らして流し込んで佐知子は大きく息を吐く。
 そして、口の端からこぼれていたドロリとした汁を、ちゅるると音を立てて吸い込んだ。

 その瞬間に、すごく嬉しそうな笑みを浮かべていたのを文子は見逃さなかった。
 それも、普段の明るくて優しい笑顔ではなく、見ている文子がドキリとするくらいに蕩けた笑顔だった。

「ありがとうございます、竜泉寺先生。じゃあ、次はこっちにお願いしていいですか?」

 そう言うと佐知子はベッドに上がって四つん這いになると、尻を上に突き上げるような格好になった。
 そして、顔を竜泉寺に向けてくいくいっと腰を振る。

「ええ、わかりました」

 竜泉寺もベッドに上がると、膝立ちになって佐知子の腰を掴んだ。
 すると、期待に満ちた表情が佐知子の顔に浮かぶ。
 その股間に竜泉寺が腰を寄せて、まだまだ大きく突き立っているそれをアソコに宛がい、中へと沈めていく。

「はううううっ!んっふうううううう!」

 それがアソコの中へと挿し込まれた瞬間、佐知子の背筋がぐっと反って顎が跳ね上がった。

「あふううううっ!はっ、入ってますっ、ふあああっ、気持ちいいですうううっ!ああっ、あうっ、あっ、あんっ!」

 恍惚とした表情を浮かべて快感に浸る間もなく竜泉寺がリズミカルに腰を動かしはじめて、佐知子の体がガクガクと揺れる。

「あっ、はんっ、ああっ、イイッ、気持ちいいですっ、先生っ!」

 竜泉寺が腰を前後に動かし、佐知子の短い喘ぎ声が響く。

 それを、驚きと戸惑いの入り交じった思いで文子は見つめていた。
 今、自分の目の前で繰り広げられているのは間違いなくセックスだった。
 それだけでも驚きだというのに、竜泉寺の相手は由佳ではなくて佐知子だった。

 その時になって、はじめて由佳の存在を思い出した。

 ……え?由佳先輩?

 見回すと、由佳はいつも竜泉寺が座っている肘掛け付の椅子に腰掛けて二人のセックスを見ていた。
 その顔には、楽しそうな笑みすら浮かべている。

 文子の視線に気がついたのか、由佳がこっちを見てニコッと微笑み、また竜泉寺と佐知子の方に視線を向ける。
 それにつられて、文子もまた二人の方を見た。

 するとまた、後ろから竜泉寺に突かれてガクガクと体を揺らしながら喘いでいる佐知子の姿が目に飛び込んでくる。

「はうん、あっ、ああっ、あうんっ、んんっ!」

 教え子の目の前で、自分の慕っている先生がセックスをしている。
 そんなこと、普通ならあり得ないはずなのに。

 でも、木下先生、すごく気持ちよさそう……。

 竜泉寺とセックスしながら、佐知子は生徒の前では決して見せたことのないいやらしくて、そして気持ちよさそうな笑顔を浮かべていた。
 それに、よく見たら竜泉寺の動きに合わせて佐知子の方からも腰を振っているようだった。

 そんな佐知子の姿に、つい見入ってしまう。

「はうっ、あっ、あああっ、それっ、すごいですっ!あんっ、はっ、はっ、はっ、はああっ!」

 次第に竜泉寺の動きが激しくなっていき、パンパンと音が響くほどに腰を打ち付けていく。
 そんなに激しくされているのに、むしろ佐知子は喜んでいるみたいだった。

「あんっ、はあっ、ああっ!おっ、奥まで擦れてっ、イイッ、気持ちいいっ!あうんっ、はあっ、ああっ、先生っ!」

 まるで、おもちゃのようにカクカクと体を揺らしながら、佐知子の表情は完全に蕩けきっていた。
 目尻はトロンと下がり、口の端から涎を垂らして、妖しいまでにきれいでいやらしい姿だった。

「はうんっ、ああああっ!ああっ、わたしっ、もうっ!あふううんっ!」

 また、佐知子の背筋が反って、ビクビクッと震えはじめた。

「僕も、そろそろ出しますよ!」
「ふあああああっ!くださいっ!いっぱいくださいいいいいっ!」

 目に見えて、二人のテンションが高ぶっていくのがわかる。
 それに合わせて互いの腰の動きもますます激しくなっていって、ベッドがギシギシと軋んだ音を立てる。
 その動きが最高潮に達した、その時だった。

「ああっ!ふあああああああああああああっ!」

 両手を思い切り突っ張って、佐知子の体が海老反りになった。
 そのまま、全身がヒクヒクと激しく痙攣する。

「あっ、ああああっ……いっぱい、奥に……はあああああぁ……」

 佐知子の体がドサリとベッドの上に崩れ落ちる。
 こちらに向けたその顔にはうっとりとした笑みが浮かび、余韻に浸っているように視線を泳がせていた。

「はい、木下先生、これをぞうぞ」
「うん、いつもありがとう、栗原さん」

 数分後、ようやく体を起こした佐知子に由佳がタオルを差し出した。
 それを受け取って、佐知子はドロドロになった顔と体を拭いていく。

 体をきれいに拭いてから下着を身につけ、服を着た佐知子は、もう文子のよく知っている普段通りの佐知子だった。

 文子は、まるで夢でも見ているような思いだった。
 どう考えても、今さっき見たことが現実とは思えない。

 と、茫然としている文子の前に、スーツを羽織りながら佐知子がやってきた。

「ねえ、本多さんはもう竜泉寺先生にしてもらったの?」
「……え?なにがですか?」

 一瞬、佐知子になにを聞かれたのかわからなかった。

「やだ、今さっき見てたでしょ?竜泉寺先生と私がしてるのを」
「え、えええっ!?いえっ、私はっ……」
「あらそう、もったいないわね。せっかく竜泉寺先生に貸し出されているんだから、その間に本多さんもしてもらえばいいのに」

 耳の先まで真っ赤にしている文子とは対照的に、佐知子はまるでお気に入りの本でも薦めるような軽い口調で言った。

「……え?木下先生?」
「竜泉寺先生にしてもらうのは本当に気持ちよくて、それにすごく元気になれるんだから。だから、一度はやってもらいなさい。……じゃあ、竜泉寺先生、私はこれで失礼しますね。ありがとうございました」

 そう言って普段どおりの優しい笑顔を見せると、竜泉寺に会釈をして佐知子は保健室から出て行く。
 文子は、その姿を呆気にとられて見送るしかなかった。

「さてと、木下先生がああおっしゃってたけど、どうする、本多さん?」
「……え?」

 気がつくと、竜泉寺が文子の前に立っていた。
 穏やかな笑みを口許に浮かべて、こっちを見つめている。

 ……どうするって……さっきの、セックスだよね?
 でも……木下先生が、やってもらいなさいって。

 自分が信頼している佐知子が、竜泉寺とセックスするよう勧めてきた。
 とても信じられないことだけど、佐知子はいつも文子たち図書委員のことを考えてくれる優しい先生だ。
 その佐知子が勧めるのだから……。

 もう、文子にはなにが正しいのかわからなくなってくる。

 ……ひょっとして、私の方が間違ってるの?

 そうだ、佐知子の言うことが間違っているはずがない。
 だから、間違っているとしたらきっと自分の方だ。
 それに、文子には昨日のことで後悔した思いが強かった。

 ……そうよね、木下先生が勧めるんだから、そっちの方が正しいのよ。

 だから。

「お願いします、先生、私とセックスしてください」

 文子は、自分からそうお願いしていた。

「昨日も言ったけど、本当にいいのかい?初めてなんだろう、きみは?」
「はい、お願いします。先生にして欲しいんです」

 そう答えた文子の心境は、昨日と全然違っていた。

 まだ、自分が竜泉寺のことを好きなのかどうかわからない。
 でも、昨日のような後悔はもうしたくなかった。
 それに、佐知子の言葉が背中を押してくれた。
 だから、迷いなくそう言い切っていた。

 竜泉寺は、しかたがないなというかのように肩をすくめると、ふっ、と笑みを浮かべた。

「そうか……じゃあ、服を脱いで」
「はい」

 素直に頷いて、文子は服を脱ぎ始める、
 ここに来て裸になるのはもういつものことだ。
 しかし、先週までとはまったく意味合いが違う。

 いつものように黒の革靴と白いハイソックスを残して制服も下着も脱ぐと、今日は、恥ずかしさとはまた違った胸の高鳴りを覚えた。

「さあ、本多さん」
「はい……んっ、んふぅ……」

 差し出された竜泉寺の手を取ると、ゾクゾクと伝わってくる決して軽くはない刺激に思わず吐息が漏れる。

「ひゃううんっ!んぅ、ああっ、せっ、先生っ!はあっ、はううんっ!」

 立ち上がった文子を支えるようにそっと抱きすくめられただけなのに、クラッと目眩がするほどの衝撃が走った。

「さあ、ベッドに行こうか」
「ふぁいっ!んふっ、ふあああっ!」

 抱きかかえられたままでベッドの方に誘われるけど、足下がおぼつかない。
 頭の中が、じーん、と痺れてきて、腰が砕けそうで踏ん張りがきかない。

「ほら、ベッドに上がって」
「はい……んふうんっ!」

 ベッド際で体を離されて、ドスンと尻餅をつくように腰を落とす。

「ふうん、本多さんは本当に感じやすいんだね。ここ、もうこんなになってるよ」
「ひあああああああああっ!」

 無造作に股間を撫でられた瞬間、目の前が白く弾けた。
 あの、電気が流れるような強烈な刺激が体を駆け巡る。
 ビリリと、ももの内側が引き攣るように引っ張られる感じがして、アソコの辺りがきゅっと締まるみたいだ。

「すごい、どんどん溢れてくるよ」
「あふうううううううっ!あっ、ああっ、それっ、激しすぎですっ、せんせいっ!」

 竜泉寺がアソコの中に指を突っ込んで、グチュグチュと、わざと大きな音を立てるように掻き回した。
 そのたびに目の前で火花が散って、体か勝手にビクンと跳ねる。
 お腹がひくひくと痙攣して息がうまくできない、アソコが疼いて、体が火照って、意識がぼんやりしてくる。

 あの時もそうだった。
 先週、初めてオナニーした晩、お風呂から上がってもベッドの中でアソコを弄っていた。
 そうしていたら体がどんどん熱くなって、後から後からおツユが溢れてきて、結局ショーツを替えなければいけないほどだった。
 でも、今日のはあの時よりももっと気持ちいい。

「どうやら、準備はいいみたいだね、本多さん」
「はううっ!」

 アソコから指を抜くと、竜泉寺の手が両膝にかかって文子の足を大きく広げさせた。

 ……あ、来るんだ。

 直感的に文子はそう感じた。
 自然と体に力が入って、ぎゅっと目を瞑る。

 やっぱり、初めての怖さはまだ少しある。
 でも、昨日と違って、今日はそれ以上にして欲しい気持ちの方が大きい。

「じゃあ、いくよ、本多さん」
「は、はい……来てください、先生……」

 おそるおそる薄目を開けて、コクリと頷いた。
 昨日は目を瞑って震えていたから竜泉寺が途中でやめてしまった。
 だから、今日はちゃんと見ておかないといけないと思った。

 向かい合っている竜泉寺の体が、こっちに覆い被さっている。
 文子の腰と竜泉寺の腰がゆっくりと近づいていく。

 そして。

「んんっ、んくうううううっ!」

 アソコになにか堅いものが当たる感触。
 指よりもずっと太くて、堅くて、そして熱いものがアソコの中に入ってくる。
 一瞬、ビリッと快感が走ったのも束の間、大きなものがアソコを掻き分けてめり込んでくる息苦しさに文子は歯を食いしばった。

「くふうううっ!」

 途中まで入ってきたそれが、何かにぶつかったように動きを止める。
 アソコの中で何かに引っかかっているような、引っ張られるような鈍い痛み。
 文子を落ち着かせるように竜泉寺が大きく頷いたかと思うと、アソコの中のなにかをその堅いものが突き破った。

「ひぐううううっ!痛いっ、ですうううっ!」

 その瞬間に鋭い痛みを感じて、文子は思わず悲鳴を上げた。
 さっきの鈍い痛みとは違って、こめかみまでズキズキと響くくらいだった。

「あっ、ぐくううっ!痛っ、痛いいいっ!」

 痛みにばさばさと頭を振る文子にはかまうことなく、アソコの奥までメリメリと太くて堅いのが入り込んでくる。
 気持ちいいとか、そんなのを感じるどころではない。それくらいの激痛だった。

「んっ、くふうううううっ!」
「ごめん、痛かったね。でもこれで奥まで入ったよ」
「くううっ!ふえ、先生……んっ、つうっ!」

 竜泉寺を見上げる、眼鏡の下の目尻に大粒の涙が浮かんでいた。
 ちょっと体を動かしただけで、お腹の下の方がズキズキと痛む。
 それに、大きなものがお腹の中にいっぱいに入っているこの感じ。
 苦しくて、息がうまくできないくらいだった。
 こんなに苦しいのに、どうして由佳や佐知子はあんなに気持ちよさそうにしていたのかわからない。

「せっ、せんせいっ!苦しくてっ、わたしっ!くふうううっ!」
「ごめんね、本多さん。じゃあ、慣れるまでこうしててあげるから」
「ふええっ!?ああっ、ひああああああああっ!」

 竜泉寺にぎゅっと抱きしめられて、一瞬、わけがわからなくなった。
 体のあっちこっちからビリビリと電気が走って、竜泉寺の腕の中で体が何度も跳ねる。

 でも、そのおかげか、アソコの痛みがだいぶ紛れたような気がする。
 体中を駆け巡る刺激の方が、痛みよりもずっと大きく感じる。
 頭の中がじんじんと痺れてきて、痛みを感じるところをブロックしてくれているのかもしれない。 

「んんっ、ふああああああっ!せんせいっ!」

 無意識のうちに、文子は竜泉寺を力いっぱい抱き返していた。
 竜泉寺に抱きしめられているこの快感を感じている間は、とりあえず痛みのことは忘れられた。

 そのまま、どのくらいの時間が過ぎたのか、ほんの少しの間なのか、ずっと長い時間なのか、文子にはそれすらわからなかった。
 そうやって竜泉寺を抱きしめているうちに、その痛みをほとんど感じないようになっていた。

「本多さん。今、僕のがきみの中に入ってるんだよ」
「せ、先生のが……」

 そう言われて、体が一気に熱くなるような感じがした。
 いま、自分の中をいっぱいに満たしているのは竜泉寺のなんだと、そう思うと、わずかに残った痛みさえ引いていくように思えた。

「もう、痛くないかい?」
「はい……」
「じゃあ、動くよ」
「はい……はうっ!ふああああっ!」

 竜泉寺が腰を引いた瞬間、アソコの中をゴリッと擦られてまたもや目の前で火花が散った。
 自分のお腹の中に入っている堅くて熱いものが、アソコの中を思い切り擦った衝撃が、ダイレクトに伝わってきた。
 それは、胸やアソコを触られたときの比ではなかった。

「はうううんっ!ああっ、ふあああああっ!」

 いったん出口近くまで引いていたそれが、また肉を掻き分けて奥まで入ってきた。
 アソコの中を擦られる熱と、痺れるほどの刺激に、文子は体を震わせる。
 でも、最初のときの痛みはほとんどない。
 それが、二度、三度と繰り返される。

「あっ、あっ、ふあああっ!きっ、きもちっ、いいですっ、せんせいっ!」

 アソコの中を竜泉寺の大きくて熱いもので擦られる、いつしかそれを快感に感じていた。
 その堅くて大きなものは、指ではとうてい届かないほど深いところまで届いていた。

「ふあっ、あああっ!あっ、熱いいいっ!熱くてっ、きもちいいいっ!」

 竜泉寺にしっかりと抱きつきながら文子は喘いでいた。
 こうして抱きついていると、快感が何倍にも増すように感じられた。
 アソコの中を堅くて熱いのが擦るたびに目の前が白く弾け、意識がぼんやりしてくる。

「んふううううっ!ああっ、奥っ、奥まできてるうううううっ!」

 気のせいか、お腹の中のそれがさっきよりもさらに大きくなっているような気がした。
 奥までコツンと当たっているような気がして、そのたびに意識が飛びそうになる。

「ふああああああっ!ああっ、しゅごいっ、しゅごいですうううっ!」

 竜泉寺にしがみついて、文子は無我夢中で喘いでいた。
 もう、痛みはすっかり消えて、痺れるような快感しか感じない。

「ふあああああっ!お腹の中っ、ひくひくって!」

 不意に、アソコの中が痙攣するような感覚を思えた。
 いや、もしかしたら中で擦れているそれがブルブルと震えているのかもしれない。
 いずれにしても全身を冒す痺れに耐えきれず、竜泉寺を抱く腕に力を込めた。

「ひああああああっ!?なにっ!?熱いのがっ!ああっ、ふああああああああああっ!」

 お腹の中で、なにか熱いものが弾けた。
 それがアソコの一番奥まで当たって、これまで感じたことがないほどの快感をもたらす。

「ふあああああああっ!こっ、こんなのっ、しゅごすぎてっ!んふうううううううっ!」

 頭の中が真っ白に染まり、遠のいていく意識の中で何かが弾けた。
 全身を染め上げていく快感が、胸に支えていたもやもやを吹き飛ばしていく。

「んんっ、ふわああああぁ……せ、せんせえ……」

 そのまま、幸福感に包まれて文子は意識を手放したのだった。

* * *

 翌日。

「先生、由佳先輩!今日もよろしくお願いします!」

 放課後、保健室に行って元気よく挨拶すると、文子は早速制服を脱ぎ始める。

「あら?文子ちゃんったら今日はすごい元気ね?」

 文子に先を越された形になって、由佳も急いで裸になった。

「はい!今日は朝からとても気分が良くて!」

 いつものように、白のハイソックスだけの格好になって、文子は明るくはきはきと答える。
 実際、先週から昨日までの間にいろんなことがあって、驚いたり気持ちが沈んだりしていたことが全部すっきりしていた。

 それもこれも、竜泉寺のセックスが本当に気持ちよかったから。
 昨日は、あの後で竜泉寺と由佳に起こされてからもまるで夢を見ているような感じだった。
 家に帰ってからも甘くて気怠い余韻に浸っているみたいで、ずっと幸せな気持ちでいられた。
 そして、今朝はすっきりした気分で目が覚めた。

 やっぱり、佐知子の言ったことは正しかったのだ。
 竜泉寺とのセックスは本当に気持ちよくて、そして元気になれる。

 だから今日は朝からすごく気分が良かった。
 それに、昨日のセックスで吹っ切れたのか、こうやって保健室で裸になるのも全然恥ずかしく感じない。

「それで、今日はなにをしたらいいんですか?」
「うん。今日はね、シーツの交換」
「また、ですか?」
「そうよ。シーツはね、毎週火曜日に交換してるの。それにまあ、昨日は木下先生と文子ちゃんのおかげでシーツがすっかり汚れちゃったしね」
「あっ、ごめんなさい……」
「いいのいいの。でも、今日はカーテンの交換はしなくていいから楽よ。さ、始めましょうか」
「はい」

 裸の少女たちは、3台あるベッドの、汚れたシーツを取り外しにかかる。

「あ……」

 昨日、文子が竜泉寺とセックスしたベッドのシーツに、ほんのりと赤い染みがあるのを見つけた。

「どうしたの、文子ちゃん?」
「これ……」
「ああ、それね。昨日、文子ちゃんが先生とセックスした証。文子ちゃん、本当に初めてだったんだね」
「はい……」

 昨日のことが鮮やかに思い出されて、文子はそっとその染みを撫でた。

「ねえ、初めてのセックスはどうだった?」
「最初はすごく痛かったんですけど……途中からすごく気持ちよくなって、まるで幸せな夢でも見てるみたいで……。初めてなのに、あんなに気持ちよく感じるなんて……」
「ふーん、そんなに気持ちよかったんだぁ」
「……え?あっ、ごめんなさい!」

 ニヤニヤと、由佳が少し意地の悪そうな笑みを浮かべているのに気がついて、文子は慌てて頭を下げる。

「あーら?どうして謝るのかしら、文子ちゃん?」
「だって、竜泉寺先生は由佳先輩の……」

 俯いたまま、その先を言うことができない。

 舞い上がっていてすっかり忘れていた。
 竜泉寺と由佳がそういう関係なのに……。
 それを知っていて、自分は竜泉寺とセックスしてしまった。
 本当は、由佳は傷ついてるじゃないだろうか。

 しかし、そんな心配に反して由佳はクスクスと笑い出した。

「えー、文子ちゃんったらそんなこと気にしてたの?」
「……え?先輩?」
「なんか問題でもあるの?私は竜泉寺先生のことが好きで、木下先生も竜泉寺先生のことが好きで、文子ちゃんも竜泉寺先生のことが好きで、別にそれでいいじゃないの」
「だって、それは……」
「だいいち、日曜日に私の代わりを文子ちゃんに頼んだのは私だよ。いいに決まってるじゃない。それなのに文子ちゃんったら尻込みしちゃって、1日損しちゃったよね」
「先輩……」
「もっと早くしてたら、もっといっぱい楽しいことできたのにね」
「それは……」
「ま、とりあえずさっさとシーツの交換を済ませちゃいましょ」
「は、はい……」

 由佳に促されて、文子は汚れたシーツを外していく。

 3台のベッドにきれいなシーツをかけて、汚れたシーツを畳み終えると、いつものように竜泉寺が声をかけてきた。
 でも、今日はその手にビニール袋を提げていない。

「お疲れさま。それでね、本多さん。今日のご褒美だけど、いつもと同じお菓子と、僕とのセックスとどっちがいいかな?」
「……えっ?」

 驚いて、文子は竜泉寺の顔を見上げる。
 竜泉寺は口許に笑みを浮かべて、こちらをじっと見ていた。

 次に、由佳の方を窺ってみる。

「だから、私のことは気にしなくていいのよ」

 と、由佳はにっこりと笑みを返してきた。

 文子は、自分の胸にそっと手を当てて考えてみる。
 いや、考えなくてももう答えは出ていた。

 竜泉寺とセックスをしたい。
 あの気持ちいいのを、もう一度感じたい。

「……先生と、セックスがしたいです」
「やっぱり、そっちの方がいいよね~!」

 文子が答えると、竜泉寺の返事よりも先に由佳がじゃれついてきた。

「きゃっ!先輩!?……ひゃうううっ!?」

 そのまま、押し倒されるようにベッドの上に倒れ込むと、由佳は文子の肌に指を這わせてきた。

「せっ、先輩!?あうんっ、んはああっ!」

 背後に回り込んで文子を抱きかかえるようにして、由佳が両方の乳房を揉んで乳首をキュッと摘まんだ。

「私、嬉しいんだよ。やっと、文子ちゃんと、そして先生とこうやって楽しいことがいっぱいできるんだから」
「あふうううんっ!やあっ、そっ、そこぉおおおっ!」

 由佳の片手が、文子の下腹部の辺りを探って、アソコの中に指を入れてぐにっとかき混ぜた。

 まるで、竜泉寺に触られたときのようにビリビリと快感が走る。
 この間ふざけて由佳に触られたときとは全然違う感覚。
 それは、由佳が自分の敏感なところを正確に抑えているからだと文子にはわかった。

「んふふっ、文子ちゃん、かわいいんだから。……ぺろ、はむ」
「ふやあああああっ!せっ、せんぱいいいいっ!」

 胸とアソコを同時に責めながら、由佳が首筋に舌を這わせてきて、文子は快感の大洪水に襲われていた。
 体のあっちこっちが気持ちよくて、どんどん火照ってくる。

「ね、裸でいるのって便利でしょ。いつでも、すぐにこういうことができるんだから」
「んふううううっ!ふ、ふぁいいいぃ」

 そうか、そうなんだ……。
 こういうときのために裸になってたんだ……。

 早くもふにゃりとしてきた意識の中で、文子はぼんやりとそんなことを考えていた。
 本来、それが自分へのペナルティーだったということなど、快感の波に流されて記憶のはるか彼方に消え去っていた。

「ほら、見て、文子ちゃん。アレが昨日文子ちゃんのあそこに入っていたんだよ」
「んんんっ!あ……あああ……」

 由佳に指し示されて、ぼんやりと潤んだ瞳を前に向ける。
 まず目に飛び込んできたのは、うっすらと笑みを浮かべて立っている竜泉寺の姿。

 そして、視線を下にずらすと、ズボンを脱いだその股間のものを捉える。

「あれが……私の中に……」
「そうよ。竜泉寺先生のおちんちん。アレを今日もアソコの中に入れてもらうのよね」
「はい……」
「じゃあ、もっと近くでよく見て、ちょっと触ってみようか」
「はい……」

 由佳に支えられて体を起こすと、文子は目の前のそれに手を伸ばした。
 そっと握ってみると、それはやけどしそうなくらいに熱くて、ドクンドクンと脈打っていた。

 ……すごい、男の人のおちんちんって、こんなんなんだ。

 よく考えたら、おちんちんをこんなに近くでまじまじと見つめるのは初めての気がする。
 昨日はそんな余裕はなかったし、土曜日に竜泉寺と由佳のセックスを見たときもこんなに近くで見ていなかった。
 間近で見るそれは、先っぽの方が赤黒くて、ヌラッと濡れて光っていた。

 こんなに熱いのが入ってくるんだから、アソコの中も熱くなるはずよね……。

 妙に感心しながらそっと扱くと、手の中でおちんちんがビクンと震えてちょっと大きくなった気がした。

「きゃっ!?」
「ふふふっ、先生のおちんちんも準備OKみたいよ、文子ちゃん」

 驚いた文子の体を、また由佳が背後から抱きかかえた。

「ひゃううううううっ!?先輩!?」
「ほら、ここにおちんちん、入れてもらおうね、文子ちゃん」
「ふあああああっ!」

 由佳が文子のアソコに指を入れて、バクゥ、と広げさせた。
 さっきからさんざん弄られていたせいで、文子の体は過敏に反応して由佳の腕の中でビクンビクンと跳ねる。

「ひあああああっ!激しすぎですっ、先輩!こんなっ、今入れられたら私っ!」
「すっごく気持ちよくなれるよね。ほら、もう先生が入れたいって」
「えっ?はうううううっ!」

 ぽん、と押し出された勢いで、竜泉寺に抱きかかえられる格好になる。
 いっぱいに竜泉寺を感じて、体が快感に打ち震えているところに、アソコに堅くて熱いおちんちんが当たる感触がした。

「んんっ!んふうううううううううううっ!」

 それが、アソコの中に入ってきたと思った瞬間、目の前が真っ白になった。
 もう、痛みは全然感じなかった。
 感じるのは、おちんちんがアソコの中を擦る痺れるような快感と、アソコに火がつくような熱さだけ。
 全身が麻痺したみたいに勝手にひくひくと痙攣している。

「あら?入れてもらっただけでイッちゃったの?」
「んん……ふええぇ……」

 由佳の声が聞こえているのかいないのか、ぼんやりと蕩けた瞳を泳がせるだけで反応が鈍い。

 頭の奥までじんじん痺れて、考えるのも億劫だった。
 もう、ただただこの快感に身を任せていたかった。

「しかたないわね。じゃあ、もっとイカせてもらいましょ」
「んふう……んっ、はううっ、ふあっ、ふああああっ!」

 不意に、おちんちんが動き始めてアソコの中を擦り、奥をゴツンと突く。
 その、熱くて堅いのが動くたびにつま先から頭の先まで快感が弾けていく。
 大きく見開いた文子の瞳は快感に蕩けきり、口からは言葉にならない喘ぎ声が洩れるだけになった。

 そして、文子の意識はあっけなく快感の波に押し流されていったのだった。

* * *

「んっ、んん……」
「あっ、目が覚めた、文子ちゃん?」

 心地よい気怠さに包まれて、文子が目を開くと、こちらを覗き込んでいる由佳の顔があった。
 まだ、頭はぼんやりとしたままだし、なんだか焦点も合わなくて由佳の姿も少しぼやけているような気がした。

 と、次の瞬間。

 カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ……。

 その音が聞こえた瞬間、また文子の瞳に霞がかかった。

「どう?竜泉寺先生とのセックスは?」
「……すごく気持ちいい。……気持ちよくて、すごく幸せな気持ちになれるの」

 竜泉寺の言葉に、笑みを浮かべながら文子は答える。
 ただ、その顔に浮かぶ笑みは、いつもの催眠状態のときのぼんやりとした虚ろな笑みとは違って、うっとりとした官能的な笑みだった。

「もっと早くやっていれば良かった?」
「……本当にそう。……私、なにを怖がっていたんだろう……バカみたい」
「でも、その分これからいっぱいしたらいいじゃない」
「……うん」

 そう頷いた文子の顔に、またもやふにゃりと蕩けた笑みが浮かぶ。
 まるで、竜泉寺とセックスしているところを想像でもしているかのように。

「じゃあ、もう裸でいるのも恥ずかしくないよね?」
「……うん。だって……裸でいるといつでもセックスできる……いつでも気持ちよくなれるもの」
「だよね。もう、竜泉寺先生の前で恥ずかしいことなんて何もないよね」
「……うん」

 竜泉寺の言葉を自分の言葉として、文子は何の抵抗もなく受け容れていく。
 もう、その言葉を受け容れるのに躊躇いを見せることもなかった。

「じゃあね。もっと気持ちよくなれるなれることを教えてあげる」
「……それは……なに?」
「竜泉寺先生の命令を聞いて、その言うとおりにしていたら、それだけで気持ちよくなれるよ」
「……竜泉寺先生の命令を?」
「そう。だって、想像してみて。竜泉寺先生は私をあんなに気持ちよくしてくれるんだから、その命令も私を気持ちよくしてくれるの」
「……うん」

 なにを想像しているのか、文子の口許が、にまっ、と歪む。

「忘れないで。私は竜泉寺先生の命令のとおりにしてると気持ちよくなれるの」
「……うん。私は……竜泉寺先生の言うとおりにしてると……気持ちよくなれる……」
「じゃあ、そろそろ起きようか?」
「……うん」

 竜泉寺の言葉に、靄のかかったみたいに昏く濁っていた文子の瞳にゆっくりと、本当にゆっくりと光が戻ってくる。

「やっと目が覚めた?文子ちゃん?」
「……先輩?」

 まだ少しトロンとした瞳を由佳に向けて、文子は首を傾げる。

 私……そうか、竜泉寺先生とセックスしてたんだ。

 ぼんやりとして働かない頭で記憶をたどる。
 シーツを替えた後で、由佳にアソコやおっぱいを弄られて、竜泉寺におちんちんを入れられたところまでは覚えている。
 その後は記憶が途切れ途切れで、とにかく気持ちよかったことしか覚えていない。
 もっとも、かなり最初の方から気持ちがよかった記憶しか残ってなかったのだけれど。

「あ~あ、替えたばっかりなのにこんなにぐしょぐしょになっちゃって……。このシーツだけもう一度替えないとダメね」
「……あ、私も手伝います」

 汗と愛液と精液でぐっしょりと濡れたシーツを手で押さえて嘆息している由佳を見て、文子は慌てて起き上がるとベッドから降りる。

「まあ、これはほとんど文子ちゃんの汗とおツユだもんね」
「ご、ごめんなさい……」
「いいのいいの。さあ、さっさと取り替えちゃいましょ」

 言ってることとは反対に、ニコニコと笑みを浮かべたままの由佳と一緒に、自分が汚したシーツを取り替える。

 そして、その日の帰り際。

「そうだ、本多さん、今日はひとつきみに宿題を出そう」
「宿題、ですか?」

 竜泉寺に呼び止められて、文子は怪訝そうに首を傾げる。

「うん。今夜、寝る前にオナニーしてから寝るんだ?」
「オナニー?」
「……あー、そうだね、自分のアソコや胸を自分で触って気持ちよくなることだよ」
「ええっ……と……わかりました」

 自分でも驚くくらいにすんなりと返事をしていた。
 不思議なことに、躊躇いも戸惑いも全然感じないし、これっぽっちも恥ずかしいとも思わなかった。

「うん。じゃあ、明日報告してもらうから、絶対にやるんだよ」
「わかりました。それでは失礼します」

 ペコリと頭を下げて、文子は帰宅の途についた。

* * *

 その晩……。

「んっ!はうううううううっ!」

 ベッドの上でくちゅくちゅと音を立ててアソコを指先で弄りながら、文子の体が弓なりに反った。

「やあんんんっ!なんかっ、すごいいいいっ!」

 きゅっと背筋を反らせたままで、文子の体がビクビクと震える。
 木曜の晩に、初めて自分でしたときよりも断然気持ちよく感じる。

「んふううううんっ!なっ、なんでっ!あふううううっ!」

 体をひくつかせながら、それでも文子の手はずっとアソコを弄っていた。

「竜泉寺先生に言われたからっ?あっ、あふううううううっ!」

 人に言われてこんなことをするなんて、やっぱり変だと思う。
 それなのに、堪らなく気持ちいい。
 それはきっと、単に人に言われたからじゃない、言ったのが竜泉寺だからだ。

 思えば、木曜の自分と今の自分は全然違う。
 自分は、竜泉寺とセックスしてすごく気持ちよくしてもらった。
 そんな今の自分と比べると、先週までの自分がすごく子供に思えてくる。

 だから、そう……今、私の指を竜泉寺先生のおちんちんだと思って。

「くうううっ!はううううううううううううっ!」

 そう思った瞬間、目の前が真っ白になった。
 体を反らせたまま、全身が痙攣する。
 自分のアソコが、痛いくらいに自分の指を締めつけていた。

「んふううううううううんっ!ああっ、竜泉寺……せんせえ……」

 全身から力が抜けてぐったりと横たわると、文子の意識はそのまま眠りに落ちてしまった。

* * *

 翌日。

「じゃあ、昨日の宿題の報告をしてもらおうか、本多さん」

 放課後、保健室に来て服を脱いだ文子に竜泉寺がそう言った。

「あの、報告ってどうしたらいいんですか?」
「うん。昨日したとおりのことを、僕と由佳の見てる前でするんだよ」

 そう言われても、やっぱり恥ずかしさは感じなかった。
 もう、竜泉寺になにを言われても恥ずかしくない。
 それどころか、嬉しく思っている自分がいた。

「わかりました」

 素直に返事をすると、文子はベッドの上で仰向けになる。

「ふうん、横になったままやったんだ?」
「はい。だって、先生が寝る前にって言ったから……」
「なるほどなるほど。じゃあ、続けて」
「はい……んっ、んふうっ!」

 昨日の晩にやったように、片手で胸を揉んで、もう片方の手をアソコに這わせる。
 自分でやっていて気がついたのだが、自分の敏感なところを弄っているのは竜泉寺のものだと思えばずっと気持ちよく感じられた。

 自分の胸を揉んでいるのは竜泉寺の手、アソコの中に入ってきてるのは竜泉寺のおちんちんだと、そう思うとただ自分でしているのよりも感じるような気がする。

「あふううううううっ!ああっ、せっ、せんせええええっ!」
「ちょっといいかな、本多さん?それは、僕のことを考えてるのかい?説明してくれないか?」
「はっ、はいいいいいいっ!先生の手でおっぱいを揉まれて、先生のおちんちんがアソコに入ってるってっ、そう思ってるんですうううっ!そうしてるとっ、すごく気持ちよくなってっ!んはああああああっ!」

 竜泉寺に聞かれるままに、具体的に説明をする。
 なぜか、それだけでうっとりとしてくる気がした。

「ひぅうううううあああんっ!ああっ、竜泉寺……せんせえ……」

 そして、昨日の晩と同じように竜泉寺の名前を呼びながら絶頂に達する。

 そのままベッドにぐったりと横たわって大きく息をしている文子を、ベッド脇まで来た竜泉寺が見下ろしていた。

「うん。なかなかいい報告だったよ、本多さん。でも、もう少し改善の余地があるんじゃないかな?」
「……えぇ?せんせい……?」
「これから、僕の言うとおりにしてみてよ」
「……?はい」

 まだ、肩で息をしながら文子はコクリと頷く。

「まずはね、きみの指はもっと奥まで入ると思うんだ。だから、アソコの奥まで思い切り入れてみて」
「はい……んんんっ、ひああああああああっ!」

 竜泉寺の言うとおりに、思い切り指を入れると、ずん、と響く快感に意識が飛びかけた。
 一度絶頂して弛緩した体が、またキュッと弓なりになった。

「うん。じゃあ、もう少し腰を前に突き出すようするんだ」
「はううううっ!ああっ、ふあああああああっ!」

 竜泉寺の言うとおりに腰をぐいと突き上げるようにすると、根元までアソコに飲み込まれた指が内側を擦りつけて、ビリビリくる刺激に体がひくひくと震えた。

「で、もう片方の手でクリトリスを摘まむんだ」
「んふうううううううううっ!あ……ふああ……」

 言われたとおりに、空いている手でクリトリスを摘まむと、熱と快感が一気に弾けて、文子の目の前は真っ暗になったのだった。

* * *

 あの後、気持ちよすぎて気を失ってしまって、目が覚めてから文子はさらに竜泉寺からオナニーの指導を受けた。
 竜泉寺の指示は的確で、言うとおりにしているとすぐに気持ちよくなって、何度も何度もイッてしまって、最後には由佳に支えられないと起き上がれないくらいだった。

 それで気がついたのだが、竜泉寺の指示が確かなのはもちろん、竜泉寺の言うとおりにしているとそれだけで気持ちよくなれるみたいだった。
 竜泉寺の言葉に従っていると、なんだかうっとりとしてきてすごく気持ちよくなれる。
 でも、考えてみたら竜泉寺は自分に触れただけであんなに気持ちよくしてくれるんだから、それもそんなに不思議なことではないように思えた。

 だから、木曜日の放課後におちんちんを舐めろと言われた時も、別に驚くことなく文子は従っていた。

「んふ……ぺろ……れろ……」

 すぐ近くまで顔を近づけて舌を這わせると、少ししょっぱい味がして、変な臭いが鼻をついた。
 でも、嫌な感じは全然しない。
 よく考えたら、由佳や佐知子がそうやっているのを見ているので、今の文子には何の抵抗もなく舐めることができた。

「ん……れろろ……ぺろっ……」

 そうやって舐めているうちに、最初はクタッとしていたそれがむくむくと起き上がってきたのを感じると、文子の方も胸の高鳴りを抑えられなかった。

「そう、もっと全体を丁寧に舐めて」
「ふぁい……んっ、れろぉ……」

 竜泉寺に言われて、根元の方から裏筋に沿って丁寧に舐め上げていく。
 そうやって舐めているだけなのに、文子の体もどんどん熱くなってくる。

「ぺろ、ぺろろ……れろ、えろぉ……」

 大きくそそり立ったそれを、まるでアイスキャンデーでも舐めるようにおいしそうに舐めている文子。
 うっとりとしたその顔は、由佳や佐知子がそうしていたときの表情とそっくりなことに本人はまだ気づいていない。

「じゃあ、次は口の中に咥えて」
「ふ、ふぁい……ん、あむ……」

 竜泉寺に言われて、口の中にそれを咥え込む。
 堅く大きく膨らんだそれは、口の中のあちこちにゴツゴツと当たる。
 でも、それがたまらなく気持ちいい。
 口の中のおちんちんはすごく熱くて、舐めると舌が溶けてしまいそうだった。

「ん、はふ、んむ……じゅっ、むふう……はむ、はふ……」

 ……やだ、これ、気持ちいい。
 由佳先輩が木下先生があんなに熱心になるのも当然よね。

 文子は、無我夢中になってしゃぶりついていた。
 男の人のおちんちんを口いっぱいに頬張っているのに、嫌な感じはしないし、気持ち悪くもない。
 むしろ、気持ちがいいくらいだった。
 堅くて熱いのが口の中に当たり、舌を擦ると、頭に直接快感が響くみたいだった。

「んっ、んむ、はむ、んぐっ、じゅるる、むふう……んっぐ、んふ、あふ、はふふ、んむう、んっ、じゅぼっ……」

 小さな口の中をいっぱいにしているそれをしゃぶる文子の舌と口の動きは、まだまだ不慣れでぎこちない。
 しかし、それを補って余りある熱心さがあった。
 そして、それは竜泉寺の射精を促すのには十分だった。

「んぐっ、んぐぐぐぐぐっ!?ぐふっ、ぐむむむむむうぅ~!」

 口の中の堅い肉の棒がビクビクッと震えて熱いものが吹き出してきたので、文子は目を白黒させて咽せかける。

「ほら、こぼさないでちゃんと飲むんだ」
「んむっ!……んぐっ、ぐぐっ、ぐっ、こくっ!んくっ、ごきゅっ……こほっ、げほげほっ」

 言われるままに口の中に吐き出されたその熱い汁をなんとか飲み込んだけど、すこし気管に入って文子は咳き込む。
 さすがに少し苦しかったけど、それ以上に心地よさに全身を包まれていた。
 熱くてドロリとしたものが喉を通り過ぎていって、全身が燃えるように熱くなった。
 アソコが疼いて、下半身に力が入らない。

 文子がそのままぺたりと尻餅をつくと、竜泉寺の声が降りかかってきた。

「うん、よかったよ、本多さん。じゃあ、次は下の方にこれを入れてあげようか」

 文子が見上げると、すぐ目の前に自分の唾液と精液でヌラヌラと光る竜泉寺の肉棒があった。

「はい……ください。文子のアソコに、先生のおちんちん、入れてください……」

 トロンと表情を蕩けさせて、文子は自分からおねだりしていたのだった。

* * *

 そして、金曜日。

「んむ、はふ……どう?気持ちいい、文子ちゃん?」
「ん、れろおぉ……はい、気持ちいいです、先輩」

 その日は竜泉寺に言われて、由佳とふたりで肉棒にしゃぶりついていた。
 すでに大きくそそり立ったそれをそれぞれのおっぱいで両側から挟み込んで、そこから顔を出した先っぽに舌を伸ばす。

「あふ、ぺろろっ……やんっ、文子ちゃんの舌がくすぐったいよ」
「んふっ、れるっ……私も、くすぐったいです、先輩」
「ほらほら、ふたりとも喋ってないでもっと胸と舌を使って」
「ん、ふあい、先生……れろっ、じゅるる」
「わかりました……んふ、あふ……んふううん!」

 竜泉寺に言われて、乳房を押さえる両手に力を込め、肉棒を舐める舌の動きに熱を入れる。

 そうしていると、堅く尖った乳首がコリコリッと由佳の乳首と擦れて甘く痺れる快感が走った。
 それに、鼻をつくおちんちんの臭いに、頭がクラクラきてうっとりとした気分になってくる。

 もう、文子は竜泉寺のいうとおりにしていれば気持ちよくなれるということを疑いもしなかった。
 それに、経験豊富な由佳がリードしてくれるのもありがたかった。

 そして、ふたりのフェラのあとは……。

「あっ、あんっ、ふああああっ!あああー!」

 ベッドの上で仰向けになった竜泉寺に跨がって、文子はアソコいっぱいに肉棒を飲み込んでいた。

「ほらほら、文子ちゃんったら、ちゃんと腰を動かさないと」
「でっ、でもっ、先輩!これっ、気持ちよすぎてっ!ああっ、ふああああああっ!」

 背後から文子を抱きしめている由佳に叱咤されて、なんとか腰を浮かせても、またすぐに腰を沈めてしまう。
 しかも、その衝撃で軽くイッたのか、文子は大きく喘いでいる。
 さっきから、由佳にコーチされながらなんとか自分で腰を動かそうとしているのだけど、この姿勢だとおちんちんが奥まで入ってきてすぐに腰が砕けてしまう。
 気持ちよすぎて、体に力が入らない。

「もう、だめじゃないの」
「ごっ、ごめんなさい!でっ、でもっ、体に力が入らなくてっ!」
「しかたがないわね。……先生、文子ちゃん、力が入らないんですって」
「そうか。じゃあ、しょうがないな。僕が動いてあげよう」
「はぁはぁ……あっ!んっふぅぅううううううんっ!」

 体が持ち上がるくらいに下から突き上げられて、文子は悲鳴を上げた。
 背筋を貫く快感に体を仰け反らせ、舌を出して大きく喘ぐ。

 そして、突き上げられる衝撃が二度、三度と繰り返される。

「ふあっ、んひぃいぁあああ!あうっ、んふぅううううっ!」

 そのたびに文子はあられもない声を上げて喘ぎ、意識が飛びそうになる。
 立て続けに押し寄せる快感の波に飲まれ、その、蕩けきった瞳はいとも簡単に快楽のそこへと沈んでいったのだった。

* * *

 その日の帰り際。

「ねえ、文子ちゃん、明日も明後日も竜泉寺先生の家に来ない?」
「え?……はい」
「だよね!先生が文子ちゃんを借りているのは月曜までだから、この週末はいっぱい楽しもうね!」
「……あっ」

 由佳にそう言われるまですっかり忘れていた。

 自分が竜泉寺に貸し出されている期間は2週間。
 次の月曜日には、自分は返却されなければいけない。

 竜泉寺や由佳と過ごすこの時間が楽しくて、ずっと続くみたいに錯覚していた。
 それが、急に現実に引き戻されてしまった。

「どうしたの、文子ちゃん?来るんでしょ?」
「えっ、あっ、はい、行きます」

 そう返事を返しながら、ショックで文子は心ここにあらずという様子だった。

< つづく >

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