エピローグ やっぱり振り回される彼と相変わらずな彼女
あの事件の後、僕は自分から羽実に告白することにした。
「あのさ……僕、羽実のことが、すっ、好きなんだ。だから、つ、つきあってくれないかな……?」
羽実が僕のことを好きだってわかってても、やっぱり自分から告白するのは恥ずかしいし、緊張する。
でも、これだけは僕の方からしなきゃいけないって、そう思うようになったんだ。
「ど、どうかな、羽実……?」
「う、うん……いいよ……」
やっぱり真っ赤な顔をして、羽実が恥ずかしそうに頷く。
「ありがとう、羽実!」
「きゃっ?陸くん?」
OKの返事に、嬉しくて抱きしめると、羽実が小さく悲鳴を上げた。
「ありがとう、羽実!」
「……うん」
もう一度ありがとうって言うと、僕の胸の中で羽実が小さく頷いて、おずおずと背中に腕を回してきた。
そうやってしばらくの間抱き合った後で、また、互いに見つめ合う。
「……キス、しようか?」
「……うん、いいよ、陸くん」
僕の方からそう言うと、羽実も恥ずかしそうに頷き返してくる。
そして、どちらからともなく目をつむって、顔を近づけていく。
「ちゅ……」
「ん……」
僕と羽実の唇の当たる、柔らかな感触。
「んふ……ん……」
「ん……んん……」
唇を当てるだけの軽いキスだけど、朝にやってたキスよりかはずっと長い時間そうやっていた。
「ん……ふう……へへへ」
「んふぅ……ふふっ」
長めのキスを終えると、またまた顔を真っ赤にして互いに笑い合う僕たち。
今、すごく幸せな気持ちだけど、やっぱり、僕たちはまだまだこれが精一杯だな……。
* * *
で、一方の空はというと……。
あの一件以来、空は催眠術を使って僕の身の回りを騒がせることはなくなった。
おかげで、今までにないくらい平穏な毎日が続いている。
その代わりに、羽実とつきあい始めたことで、毎日僕らは明日菜と亜希にからかわれっぱなしだけど。
まあでも、そんなのも幸せのうちだよね。
で、空なんだけど、おとなしくなったせいか、このところ、だいぶ女の子らしさが増してる気がする。
早く、空も幸せになってくれればいいのに……。
そんなことを願わずにはいられない僕だった。
そして、僕と羽実がつきあい始めて、1ヶ月ほどが過ぎて……。
夜、最近にしては珍しく空が僕の部屋にやってきた。
「陸……いろんなことがあったけど、陸と羽実がつきあってくれて、あたしも嬉しいわ」
「……うん」
まあ、いろんなことを引き起こしたのは主におまえなんだけどな。
「あたしも、いい人を見つけることができるように頑張るから」
「……うん」
まったく、そうしてくれると僕も助かるよ。
「でもね、なかなかすぐにはいい人って見つかりそうもないし。何かあったときには陸に助けて欲しいなー、って」
まあ、それは兄妹なんだから、空が困ったときには助けてやるってば。
そんなことを言うためにわざわざ僕の部屋に来たのか、おまえは?
「でね、あたし……もう少しの間、陸に助けて欲しいなって……」
……て、ん?
何が言いたいの?
ていうか、なにもじもじしてるの?
「あのね……やっぱりあたし、あの時のことがどうしても忘れられないのよね……」
あの時の?
いつのことを言ってんだよ?
「いや、本当にいつか絶対にいい人見つけるから!陸と羽実の関係に波風立てるようなことは絶対しないから!でも……でもね……あたしには、もう少しの間、陸が必要なの……」
はい?
なに言ってんの、おまえ?
「それでね。あたし……今日は安全な日なんだ……」
ちょっと待て!?
安全な日って……おまえ、まさか……!?
「だからぁ……いいでしょ?」
そう言って、ニコッと笑う空。
その笑顔は妙にきれいで、パチッとした目が期待に輝いてるのがわかった。
まさか……まさかおまえ、あの言葉を言うつもりなのか!?
「ね?陸?」
や、やめろ……やめろよ、空……。
その言葉を言うのはやめろって……!
「”ケダモノの陸はあたしのことしか見えない”」
「うっ……!」
一瞬、目眩がして目の前が暗転した。
「おう、空……」
「へへへ、陸……」
目の前が明るくなると、気恥ずかしそうにしている空の姿が飛び込んできた。
こいつは俺の双子の妹で、俺の、俺だけのもの。
ハッ、きょうもいい女じゃねえか。
「よう、安全な日だからって、かわいいことを言うじゃねぇか」
「……うん」
顔を真っ赤にして、空が小さく頷く。
まったく、本当にかわいい奴だぜ。
「よし、じゃあ、今日はいっぱいおまえとしてやるよ」
「ホントに!?」
俺の言葉に、パァッと嬉しそうな笑顔が弾ける。
そんなに俺としたかったのかよ、おまえは。
て、まあいいか。
俺もそのつもりなんだし。
「なんたっておまえは俺の女だからな。たっぷりかわいがってやるぜ」
「嬉しいっ、陸!」
「それに、約束もしたしな。おまえの胸がでかくなるまでいっぱい揉んでやるって」
「うんっ!あたしのおっぱい、いっぱいいっぱい揉んで!そして、いっぱいいっぱい気持ちよくして!そう思って、父さんも母さんも気がつかないように催眠術かけてきたから!」
「はっ、まったく用意がいいな、おまえは。いいぜ、おまえが満足するまでいっぱいしてやるよ。でも、その前に……」
空の体をぐいっと抱き寄せると、向こうからぎゅっと抱きついてくる。
「……んっ、んむっ」
「……んんっ、んふぅっ」
そんな空を思い切り抱きしめながらその唇に舌を差し込んで、まずは濃厚なキスをしてやったのだった。
< 終 >