本当はえむしーだった浦島太郎 やんちゃ乙姫ver.

~やんちゃ乙姫ver.~

 むかしむかし、深い海の底にある竜宮城に乙姫様が住んでいました。

 ある日、ちょっと砂浜まで遊びに来た時に、乙姫様は浦島太郎に恋をしてしまいました。
 釣り竿を手にした浦島太郎の日に焼けた、引き締まった体格、真剣な眼差しで糸の先を見る凜々しい顔立ち。
 岩の陰に身を隠したまま、乙姫様は浦島太郎の姿にぽーっと見とれてしまったのでした。

 

 そうやって、乙姫様はずっと浦島太郎の姿を見つめていました。
 その姿を眺めれば眺めるほどに、乙姫様の胸はドキドキと高鳴ってくるのです。
 夕方になって、浦島太郎が家に帰ってしまっても、乙姫様はしばらくの間ぼーっと彼のことを考えていたのでした。

 乙姫様が竜宮城に帰ったのは、辺りがすっかり暗くなってからでした。

 その日から、乙姫様は浦島太郎の事ばかり考えて過ごしていました。
 でも、忙しくてなかなか海岸に行くことができません。

 乙姫様がやっと砂浜に行くことができたのは、あれから一週間後のことでした。
 また、浦島太郎の凜々しい姿を見ることができると、乙姫様は胸をときめかせて岩陰から顔を覗かせました。

 ところがです。
 地上と竜宮城では時間の流れ方が違うので、乙姫様が竜宮城にいた一週間の間に、浦島太郎は白髪でよぼよぼのお爺さんになってしまっていたのでした。

 乙姫「そんなのってないわよ~~~~~~~!!!」
(注:「そんなのってないよ~」は著者猫さんの『洗脳魔法少女ヒプノちゃん』です)

 ……というわけで仕切り直しです。

 砂浜に行った時に偶然見かけた浦島太郎に恋をしてしまった乙姫様は、岩陰からずっとその姿を眺めていました。
 そして、日が暮れて浦島太郎が帰ってしまっても乙姫様は竜宮城に帰ることはありませんでした。
 そのまま岩陰に身を潜めて、朝になって浦島太郎が釣りにやってくるのを待っていたのです。

 そして、その翌日も、そのまた翌日も乙姫様は胸をときめかせて浦島太郎の姿を眺めていました。

 困ったのは、乙姫様の身の回りの世話をしている亀です。

「ちょっと、乙姫様、そろそろ竜宮城にお戻りにならないと……」
「いやよ! 私はここで太郎様のことを見てるの!」
「でも、乙姫様がここにいられたら竜宮城の仕事が滞って……」
「なんと言われても私は戻らないわよ! 竜宮城と地上では時間の流れる速さが違うんだから、私が戻ったらその間に太郎様がお爺さんになっちゃうじゃないの! 私は絶対にここを動かないんだから!」

 亀がいくら説得しても、乙姫様は竜宮城に戻るのを承知しません。

「……困ったなぁ。どうしたもんだか…………あっ、そうだ! いいことを思いつきました、乙姫様、浦島様を竜宮城に連れて行くのはどうでしょうか?」
「太郎様を竜宮城に?」
「はい。私に任せて下さったら必ずや彼を竜宮城に連れて行きますので、どうか乙姫様は竜宮城でお待ちになって……」
「だーめ! あなたが本当に太郎様を連れてくるのかどうか確かめるまでここで見てるんだから!」
「……わかりました」

 乙姫様に聞こえないように小さくため息をつくと、亀は浜で遊んでいた子供たちの方に近づいていきます。

「ちょっと、きみたちに頼みがあるんだけどね」
「え? なになに、亀さん?」
「これをあげるから、ちょっと私の頼みを聞いてくれないか?」

 集まってきた子供たちにそう言って亀が取り出したのは、小さいけれどもキラキラと光る珊瑚や真珠でした。

「うわぁ、すごい!」
「小さいけど、この珊瑚も真珠もすごくきれい。これ、市場に持っていったらお小遣いの何年分になるかな!?」

 さすがに海辺に住んでいるだけあって、子供とはいえ亀の差し出した珊瑚や真珠の価値を知っています。

「で、頼みってなんなの、亀さん?」
「うん、ちょっと私をいじめるふりをしてもらいたいんだよ」
「ええっ? 亀さんをいじめるの!?」
「だから、本当にいじめるんじゃなくて、いじめるふりだけでいいんだ」
「なんか変なの」
「いや、ずっとじゃなくて、この浜に浦島太郎ってひとがいるだろ? あの人が来るまででいいんだ」
「浦島さんが来るまで? どうして?」
「とにかく、頼まれてくないかな」
「なんだかよくわからないけど、まあいいや。これもらったんだし」
「そうだね」
「ありがとう! じゃあ、いっちょう派手に頼むよ」
「うん、わかった!」

 亀の頼みを聞いて、子供たちは亀を取り囲みました。
 そして、一斉に小突いたり蹴ったりし始めたのです。

「やーいやーい! のろまな亀めっ!」
「悔しかったらなんとか言ってみなっての!」
「そうだそうだ!」
「痛いっ! 痛たたたっ! ちょっと力が入りすぎじゃないのか、きみたち!」
「でも、ちゃんと手加減してるって」
「そうそう、このくらいはしないとそれっぽくならないよ」
「いや、そこまでそれっぽく見せなくても! 痛ててててっ!」

 と、子供たちが半分楽しみながら亀をボコボコにしていた時のことです。

「こら、おまえたち、何やってるだかっ?」

 そう言いながら、ひとりの男の人が覗き込んできました。
 釣り竿を持った浦島太郎です。

「なんだ、亀をいじめてるのか? そんな可哀想なことをするもんでねぇ。ほらほら、あっちに行って遊びな」
「ちぇ」
「しかたねぇなぁ、もう……」

 浦島太郎が追い払うと、子供たちは残念そうなふりをしながらその場を立ち去っていきます。

 でも、内心はホクホクです。
 だって、これしきのことで珊瑚や真珠をもらうことができたんですから。

 さて、一方でやらせとはいえ浦島太郎に助けられた形になった亀の方は、いかにも感謝しているという表情でペコペコと頭を下げます。

「どなた様か知りませんが助けていただいてありがとうございます」
「ああ、わしはこの近くに住む浦島太郎だ」
「ああっ! あなたが浦島さんでしたか! あなたのご高名は海の中でも知れ渡っております」
「いや、わしはただの漁師でそんな大層なことはしてねぇはずだがな……」
「いえいえ、漁師の浦島太郎さんといえば大変立派な方だという話は海の底まで伝わってきております。その噂どおり、このたびはこうやって私を助けていただいて……」
「いやいや、わしとしては当たり前のことをしただけだから」
「何かこのお礼をしたいのですが……」
「いや、別にたいしたことはしてねぇし」
「いえ、私としても是非このご恩返しをしたいんです」
「そんな、お礼なんて本当にいいって」

 亀の申し出を、浦島太郎は手を振って固辞します。
 そんなところもいかにも真面目な好青年といった感じです。

「まあ、そう言わずに……そうだ! では、浦島さんを竜宮城にご招待したいのですが」
「なに? 竜宮城だって?」
「はい。実は私は竜宮城で乙姫様にお仕えしておりまして。浦島さんには是非とも竜宮城にお越しいただきたいのですが」
「わしみたいな者が竜宮城に行っていいのか?」
「もちろんですとも。今日のことを報告したらきっと乙姫様も喜ばれると思います」
「しかし、そこまでたいしたことをしたわけでもねぇのに悪いなぁ」
「滅相もないです。さあ、どうぞ私の背中にお乗り下さい。竜宮城まで連れて行って差し上げますから」
「そうか、おまえがそこまで言うんならそうさせてもらうとすっか……」
「はい! さあ、どうぞどうぞ!」

 浦島太郎が背中に乗ると、亀はのそりのそりと海の方へと這い始めました。

 そんな亀と浦島太郎とのやりとりを岩陰で見ていた乙姫様は、ふたりが海の中に入ったのを確認すると自分も身を翻して海の中に潜っていきました。
 そして、亀の先回りをして竜宮城へと戻っていったのです。

♪ ♪ ♪

 そして、ここは竜宮城。

 一足先に戻った乙姫様は、ダッシュで身支度を整え、お化粧もばっちり決めました。
 そこに家来のヒラメが入ってきて、浦島太郎を連れた亀が戻ってきたと告げました。
 同時に、浜辺で子供にいじめられていた亀を浦島太郎が助けたとの報告もされました。

 もちろん、その一部始終を乙姫様は見ていたのですが、そんなことは知らない体で広間へと向かいます。

 広間に入った乙姫様が玉座に座るとすぐに、亀と浦島太郎がその前に通されました。

 それを、竜宮城の主らしく威儀を正し、優しい微笑みを浮かべて乙姫様は迎えます。
 本当は胸がドキドキしていて、微笑みどころか、嬉しくて嬉しくてにやつきそうになりそうなのですがそんな様子はおくびにも出しません。

「あなたが浦島太郎様ですね。このたびは私の家来の亀を助けていただいたそうで、本当にありがとうございます」
「そんな……わしとしてはごく当たり前のことをしただけで、乙姫様にそんな言葉をかけていただくなんて恐縮です」

 乙姫様が言葉をかけると、浦島太郎はかしこまって平伏しました。
 そんな浦島太郎の態度にますます好感が持てるのですが、乙姫様はできるだけ鷹揚な態度を装います。

「いいえ。私は本当に感謝しているのですよ。ですから、このお礼に私から浦島様をおもてなししたいのですけど」
「いやいや、そんな、本当にお礼なんて……」
「どうぞ遠慮なさらずに。私としても浦島様にお礼をして差し上げなければ気が済みません。どうか、私の気持ちと思ってお受け下さいませ」
「……では、乙姫様がそこまで仰られるんだったら」
「ありがとうございます、浦島様。今日は、浦島様をお迎えした記念として盛大に宴をご用意させていただきますゆえ、どうぞごゆるりとご逗留なさいませ」
「は、はい……」
「では、宴の前に浦島様にはお湯にでも入っていただきましょうか。この竜宮城のお風呂は海底から湧き出る天然の温泉を使っておりますので、よく疲れが癒えますわよ」
「はぁ……。では、そうさせていただきます」

 乙姫様が目配せをすると、侍女の海老たちが浦島太郎の荷物をとり、奥の湯殿の方へと連れて行きます。
 その後ろ姿を、乙姫様はいかにも嬉しそうな顔で見送り、小さくガッツポーズをしたのでした。

♪ ♪ ♪

 その日は乙姫様の言葉通りに、浦島太郎を歓迎するそれはそれは盛大な宴会が催されたのでした。
 そして、その翌日から乙姫様自ら浦島太郎を案内して海中の名所を案内して回り、夜は夜で連日の大宴会が開かれました。
 浦島太郎の方も、そんな竜宮城で過ごす日々を楽しんでいるように乙姫様には見えていました。

 しかし、浦島太郎が竜宮城に来て二週間ほど経ったある日のことです。
 浦島太郎が浜へ戻りたいと言ってきたのでした。

「え? えええっ!? ど、どうしてですか、浦島様!?」
「いやー、乙姫様をはじめ、こちらの皆様には大変よくしていただいているんですが、いつまでもこちらでお世話になるのも心苦しいんで」
「なにか私どものもてなしにお気に召さぬ事でもあったのでしょうか?」
「いやいや、そうでねぇんです。ただ、家には親も残してますし、いつまでもここにいるわけにも……」
「……そうですか。でも、あいにくと亀が出払っておりまして、今すぐにお送りするというわけには……」
「いえ、急ぐわけではないので。それにしても変ですなぁ、さっき亀さんの姿を見かけたような気がするんですが?」
「そ、そうかしら? きっと何かの見間違いですわ。こ、こちらとしても浦島様をお送りする時にはまた盛大に宴をしなければいけませんので、もう少しゆっくりしていて下さいまし」

 そう言ってごまかすと、乙姫様は奥に引っ込みます。
 そして、廊下にいた亀を見つけると、その甲羅の端を掴んで人の来ない奥の間に引っ張り込みました。

「ななな、なんですか、乙姫様!?」
「どうしましょうどうしましょうどうしましょう! 太郎様が浜に帰るって言ってるのよ! 私、どうしたらいいのよ!?」

 と、乙姫様はすっかり恐慌をきたしています。

「ちょ、ちょっと、落ち着いて下さい、乙姫様」
「ああ、どうしよう。太郎様が戻ってしまったらもう会えないかもしれない。……いや、きっと会えないわ。だって、竜宮城と地上では時の流れ方が違うんですもの。もし会えたとしても太郎様はお爺さんに……いやいやいや! そんなの絶対にいやー!」
「だから! 落ち着いて下さいってば!」
「落ち着いていられないわよ! だって、太郎様が!」
「ですから、浦島様を帰さなければいいんですよ!」
「太郎様を? でも、どうやって!?」
「これを使うのです」

 そう言って、亀が差し出した容器の中には、黒くてどろりとした液体が入っていました。

「……??? いったいなんなの、これは?」
「はい。竜宮城一の薬師に作らせた強力な媚薬です」
「媚薬ですって!?」
「そうです。ミツクリエナガチョウチンアンコウの雄、リュウジンアシロの肝、ユキフリソデウオの鰭、サケビクニンの鰾(うきぶくろ)、それにアデヤカキンコとヤマトメリベをじっくり煮込んだ秘薬で、とても効き目があるのです」
「……どうでもいいけど、今の呪文みたいなのはなんなの?」
「え? 全部この海に生きている生き物の名前ですけど」
「本当にそんな生き物がいるの?」
「いますよ。乙姫様ともあろうお方がご存じないのですか?」
「……まあいいわ。で、それを太郎様に使うのね?」
「はい。これを飲むと、その後に見た異性を好きになってしまって、その相手のことしか考えれなくなります。しかも、心だけでなく体も好きになった相手を欲するという、惚れ薬と発情薬を合わせた強力な媚薬なのです。この竜宮城には乙姫様の他には魚しかおりませんし、浦島様がこの薬を飲めば乙姫様のことを好きになって、浜に帰る気など失せてしまうに違いありません」
「すごいわ! これさえあれば……でも、こんなどろっとして食欲の湧きそうにないものを太郎様は口にしてくださるかしら?」
「そうですね……浦島様はすぐに帰ると言っておられるのですか?」
「いいえ。いちおう今はおまえが出払っていることにして浜に連れて帰れないと言ってあるし、お帰りになる前に盛大に見送りの宴を開くとも言ってるから」
「では、その宴の席で浦島様の料理にこの薬を混ぜることにしましょう。そのままでは気づかれるでしょうが、味の濃い料理に混ぜれば大丈夫のはずです」
「いいわ、それで決まりね。じゃあ、細かいことはおまえに任せるから、さっそく宴の予定を立てることにしましょう」

 亀の説明を聞いて、さっきまであんなに慌てふためいていたのが嘘のように乙姫様はタイやヒラメを呼んでてきぱきと指示を出していきます。
 良くいえば切り替えが早い、悪くいえば現金な性格なのが乙姫様の取り柄です。

「それでは、私も準備に取りかかりますので」

 そう言って頭を下げると、亀も奥に引っ込みます。
 こうして、浦島太郎の送別会という名目の引き留め作戦の手筈は整ったのでした。

♪ ♪ ♪

 そして数日後、いよいよ宴が始まりました。

 いちおう、送別の宴という名目になっているので、乙姫様は本気で名残惜しそうな演技をしながら酒や料理を勧めていきます。
 浦島太郎に絶対に気づかれたらいけないので、乙姫様はかなり本気の演技です。
 そう、それはもう本気の演技です。大事なことなので三度言いました。

「さあ、浦島様、こちらもお召し上がりになって」
「は、はぁ……」
「浦島様、お酒のおかわりはよろしいですか?」
「はぁ、いただきますだ」

 浦島太郎も、乙姫様の勧めるままに料理には手をつけていますが、この後で浜に帰ることを気にしているのか、お酒の方はちびちびと呑んでいます。
 それもあってか、気がはやっている乙姫様は早く例の薬を仕込んだ料理を出すよう目配せをしました。

「さあ、浦島様。これは本日特別に用意した料理ですわ」

 浦島太郎の前に運ばれてきたのは、それはそれは見事なフカヒレの煮込みでした。

「ほう……なんですか、これは?」
「これは、フカヒレの煮込みですわ」
「フカヒレですと?」
「さようですわ。この料理は、はるか西方は唐土(もろこし)の国で皇帝のために作られている珍しい料理ですの。鱶(ふか)のヒレを干したものを、じっくり煮込んで臭みを取って味付けしたものです。漁師である浦島様は鮫のことを鱶と呼ぶのはご存じでしょう。竜宮城では海の治安維持のためにならず者の鮫を退治しておりますが、捕らえた鮫のヒレを切り取って干したものをこの料理にしております。煮込んだフカヒレの食感と、この濃厚な餡が自慢の一品ですわ」

 と、乙姫様は料理について説明していきます。
 もちろん、フカヒレ煮込みの濃厚なソースに例の媚薬が仕込んであるのは言うまでもありません。

「ささ、浦島様、どうぞ」

 まだ熱々で湯気の立っているフカヒレ煮込みを乙姫様が小皿に取り分けて浦島太郎に勧めます。
 浦島太郎は、それを匙ですくって口に入れました。

「はふ……熱っ……ほほう、これはこれは」

 ひとくち、またひとくちと浦島太郎はフカヒレの煮込みを口に運んでいきます。

「ところてんのもう少し硬ぇような……こんな食感は初めてだぁ。それに、この餡……これは美味いですな」
「それは良かったです。この餡はうちの料理人の自慢なんですのよ。ささ、おかわりをどうぞ」

 そう言って、乙姫様は媚薬入りのソースをたっぷりとかけておかわりを勧めます。

「おお、こんなに、ありがとうございます」

 そうして、媚薬がけフカヒレを食べる浦島太郎に変化が起きました。
 最初は目の周りがほんのりと赤らんできて、やがて、深酒をしたみたいに顔全体が真っ赤になっていきました。
 そして、料理を食べるのよりも乙姫様の方をぼうっとした表情で見つめている時間の方が長くなっていきます。

「どうしたのですか、浦島様?」
「……え? ああ、いや、どうやらちと酒が過ぎたようで。そんなに飲んだ覚えはねぇんですが」
「まあ、それはいけませんわ。どうでしょう? お帰りになるのはまた後日にして、今日は竜宮城で休んでいかれませんか?」
「そうですな。それでは、お言葉に甘えて……」
「さあ、浦島様、どうぞこちらへ」

 立ち上がるときにふらついた浦島太郎を支えるようにして乙姫様は奥へと案内します。
 ふらふらと歩きながら、浦島太郎は赤い顔でちらちらと乙姫様の方を見ていました。

♪ ♪ ♪

「ささ、浦島様、こちらに寝屋が用意してあります」

 浦島太郎を連れて、乙姫様は布団を敷いてある部屋までやってきました。
 と、そのときです。
 浦島太郎ががっしと乙姫様を抱きしめました。

「乙姫様!」
「きゃあっ!?」

 いきなりのことで乙姫様が吃驚した声を上げると浦島太郎は慌てて抱いていた腕を放しました。

「すすす、すみません、乙姫様! わしとしたことがいくら酒に酔ったとはいえ、乙姫様になんと失礼なことをっ……」

 と、浦島太郎はペコペコと平謝りしています。

 乙姫様としては、思わず声を上げてしまいましたが媚薬のことを知っているので、別に抱きつかれたことに対して怒ったりはしていません。
 むしろしてやったりという気持ちです。
 それに、媚薬が効いてもなお生真面目な浦島太郎にますます好感が持てるのでした。

「いいんですわよ、浦島様。それに……私も嬉しかったですし……」

 そう言うと乙姫様はシナを作り、羞じらいながら上目遣いに浦島太郎を見つめます。
 こういうあざといことが平気でできるのが乙姫様のダメなところです。

 しかし、効果は覿面でした。

「乙姫様!」

 浦島太郎はもう一度乙姫様に抱きつくと、そのまま寝具の上に押し倒しました。

「好きだ! 乙姫様! わしみたいなのが乙姫様のことを好きだなんておこがましいけど、どうしようもなく好きだぁ!」
「ああ……浦島様。私もお慕いしてますわ」

 浦島太郎に抱きしめられて、内心ほくそ笑みながら乙姫様も浦島太郎に抱きつきます。
 もちろん、表向きは奥ゆかしい態度を崩しません。
 あくまでもしとやかに、頬を染め、潤んだ瞳で浦島太郎を見つめます。

 すると……。

「乙姫様! 本当にきれいだ!」

 そう叫んだかと思うと浦島太郎が乙姫様の唇を吸いました。
 乙姫様の方も浦島太郎を抱きしめてそれに応えます。

 そのままじっくりと口づけを交わしながら、乙姫様はそっと自分の着物の帯を解いていきます。
 そうしておいて、襟元をぐっと引っ張るとその豊かな乳房が露わになりました。

「……わっ! わっ! すまねぇ、乙姫様! わしとしたことがなんてことを!」

 ようやく口づけを終えた浦島太郎は丸見えになっている乙姫様の胸を見て、自分のせいだと勘違いして謝りました。
 でも、その視線は目の前で揺れるふたつのふくらみに釘付けになったままです。

「いえ、いいんですよ。浦島様」

 浦島太郎に謝られた乙姫様はそう言ってニッコリと微笑みます。
 まあ、もともと自分でやったことなので当たり前ですが。

 一方、乙姫様の胸を見つめる浦島太郎の顔は火照り、息もどんどん荒くなっていきます。
 白く透き通るような色の、豊満という言葉を形にしたみたいに大きなおっぱいがふるふると柔らかそうに震える様は、媚薬の効いた今の浦島太郎にはとても魅力的に見えて興奮をそそられます。

「どうぞ。いいですわよ」

 乙姫様の言葉に、浦島太郎はむしゃぶりつくようにその胸に顔を埋めました。

「乙姫様……ああ、乙姫様ぁ……」

 浦島太郎が乙姫様の胸に顔を押しつけるとおっぱいがぷるんと揺れます。
 頬に触れるスベスベした肌とふにふにと柔らかい感触に、ただでさえ媚薬の効いている浦島太郎はますます興奮していきます。

「乙姫様ぁ……わしは乙姫様のことが好きだぁ……」
「うれしいですわ、浦島様」

 乙姫様をギュッと抱きしめる浦島太郎に応えながら、乙姫様は自分の着物の裾を引っ張ります。
 するとどうでしょう。上半身がほぼ丸見えになっていた乙姫様の着物が、足元まではだけていきます。
 もちろん乙姫様のおっぱいに夢中の浦島太郎はそのことに気がつきません。

「さあ、浦島様……」

 そう言った乙姫様の手が、優しく浦島太郎の頭を押し上げます。
 それではじめて浦島太郎はすっかり裸になった乙姫様の姿に気がつきました。

「おっ、おおお、乙姫様……?」

 驚きと興奮で浦島太郎は声をうわずらせたまま乙姫様を見つめています。
 そんな浦島太郎に向かって乙姫様は微笑みながら頷きました。

「どうぞ、よろしいですわよ、浦島様」

 そう言われてはもう歯止めは効きません。

「乙姫様!」

 浦島太郎はひと声叫んで乙姫様にむしゃぶりつきます。
 そして、そのおっぱいに吸いつきました。

「ああぁん……!」

 音を立てておっぱいを吸われて、乙姫様の口から喘ぎ声が漏れました。

「あっ……はっ……ぁんっ……んっ……あんっ……」

 チュッ、チュッと肌を吸われるたびに乙姫様が短い声をあげます。
 浦島太郎の接吻は乙姫様のおっぱいからおなかへと降りていき、少し薄めの繁みの下にある乙姫様の大切なところに浦島太郎が顔を埋めました。

「あああぁんっ! はぁんっ! うっ、浦島さまぁああっ!」

 ぱっくりと開いてヒクついている割れ目を浦島太郎が吸ったとき、乙姫様の声が一段跳ね上がり、その体がグンッと持ち上がりました。

「あんっ、あっ! あふっ、ああっ! はぅんっ! ああぁんっ……!」

 浦島太郎の舌が割れ目に入ったり、その上にある小さなお豆を吸ったりするたびに、乙姫様の口からは海の世界の主のものとは思えないほどに甘く可愛らしい喘ぎ声が漏れてきます。
 それも今の浦島太郎にとっては興奮をそそるだけでした。
 それに、乙姫様の割れ目もお豆も真っ赤に充血したようになって奥からどんどん蜜が溢れてきます。

「あぅっ! あっ、浦島様ッ! はぁんっ、あんっ、んんんっ!」

 乙姫様の割れ目からの湿った音と悩ましげな喘ぎ声が部屋の中に響くたびに、その体が小さく跳ねます。
 それに、乙姫様の息が激しくなっていっているようでした。

「ああっ、私ッ、もうっ、はぁあああああああぁん!」

 乙姫様が甲高い声をあげたかと思うと背筋が海老みたいに反りました。
 そのままプルプルと体が震えて、お漏らししたみたいに蜜が噴き出してきます。
 そこでようやく浦島太郎が顔を上げると、乙姫様の体からくたっと力が抜けました。

「はぁ……はぁ……浦島様、どうかお願いします。私、もう我慢できそうにありませんわ……」

 潤んだ瞳で浦島太郎を見上げてそう言う乙姫様の白い肌はほんのり桃色に染まり、切なそうに大きく息をするたびにおっぱいがゆっくりと上下しています。
 裸の乙姫様のそんないやらしい姿に、浦島太郎の興奮も頂点に達して股間が熱くなるのを感じました。

「わ、わかっただ、乙姫様」

 そう言うと浦島太郎は立ち上がって腰紐を解き、服を脱いでいきます。
 すると、その股間で逞しくそそり立ったものが丸見えになりました。
 そして、もう一度腰を降ろして乙姫様の上に覆いかぶさります。

「乙姫様、入れていいだか?」
「はい。どうぞ来てくださいませ」

 浦島太郎の言葉に乙姫様はコクリと頷きます。
 それを合図に浦島太郎は硬くいきり立ったイチモツを乙姫様の割れ目に押し当てました。

「はぅっ! くふぅううううっ!」

 太く大きなものが入ってきたかと思うと、体が裂けるかと思うほどの痛みに乙姫様は歯を食いしばりました。
 そう、乙姫様は処女だったのです。
 しかし、それと同時に乙姫様は痛みすらも甘美に思えるほどの幸福感に包まれていました。
 一方で、浦島太郎は心配そうに乙姫様の顔を覗き込みます。

「お、乙姫様、だだだ、大丈夫だか?」
「だっ、大丈夫です、それ以上に嬉しくて……」

 そう言うと、乙姫様の方から浦島太郎に腕を絡めて抱きつきました。

「ああ……私、浦島様と繋がっているのですね……」

 乙姫様はその体勢のまま、恋い焦がれていた浦島太郎とようやくひとつになれた感慨に浸っています。
 そうしていると、ズキズキする痛みが治まっていくように感じられました。

「浦島様、本当にもう大丈夫です。どうぞ……動いてください」

 浦島太郎を抱きしめて乙姫様は耳元で囁きます。

「わ、わかっただ」
「んっ! きゅふううううんっ!」

 乙姫様の言葉に応じて、浦島太郎がゆっくりと腰を動かしました。
 すると、治まったかと思っていた痛みがズキッとぶり返してきます。
 しかし、その向こう側から未知の感覚がこみ上げてきたのです。

「きゅふっ! あんっ! はぁあああんっ!!!」 
「本当に大丈夫だか、乙姫様?」
「へっ、平気です! ですからっ、もっと! もっと動いてください……あああぁんっ!」

 浦島太郎にしがみついたままの、半ば叫ぶような乙姫様の声が響きます。
 それは、本当に初めての感覚でした。
 自分の中に硬くて熱いものが入っているのをはっきり感じます。
 そして、それが動くたびにゾクゾクと背骨が震えるみたいな刺激が駆け抜けていきます。
 それは決して不快なものではなく、それどころか頭も体も甘く熱く溶かしていくように心地よく感じられました。

「ああぁんっ! ふああっ! あんっ、浦島様ぁっ!」
「うおおっ、乙姫様ぁ!」
「はぁんっ! ああっ! 浦島様ぁっ、もっと、もっと激しくっ! あああんっ! はぁあああんっ!」

 いつの間にか、浦島太郎に抱きついている乙姫様の方も腰を動かしていました。
 額に汗の粒すら浮かべて、浦島太郎は無我夢中に腰を突き動かします。
 そして、乙姫様は恍惚とした表情でそれを受け止めます。
 実際、つながっているところはアソコだけのはずなのに、全身が蕩けるように気持ちよくてダメになりそうです。
 まあ、傍から見ると竜宮城の主としては十分ダメダメですが。

「ああっ、乙姫様!」
「ふああっ、深いいいっ! こんな奥までっ! ああっ、いいっ、いいですぅううっ!」
「おっ、乙姫様! わ、わしはもうっ……!」
「ふああっ!? 浦島様っ、もっと、奥までっ!」

 浦島太郎が切羽詰まったような声をあげます。
 しかし、初めての乙姫様にはなにが起きるのかわかりません。
 ただ、浦島太郎の動きが少し緩んだ気がしたのが寂しくて、半ば無意識のうちに浦島太郎の体に両足を絡め、きつく抱きしめます。
 それが最後の一押しになりました。

「乙姫様! もっ、もう出るだ!」
「えっ? ふええっ!? ふあああああああああっ!」

 お腹の中でなにか熱いものが弾けたように感じたかと思うと、気持ちいいのをぎゅっと凝縮したのが駆け抜けていって、そのまま体の中で爆発して意識が飛びそうになりました。

「あふぅうううううううううううっ……!」

 浦島太郎に抱きついたまま、乙姫様は暴れ回る快感に全身を震わせます。
 初体験で感じた初めての絶頂は乙姫様には刺激が強すぎて、しばらくそのまま体をひくつかせていました。

 そして、ようやく少し落ち着きを取り戻して、浦島太郎に肌をすり寄せました。
 まださっきの甘く心地よい快感の余韻に包まれています。
 こうやって浦島太郎に抱きついていると、これまで感じたことのない幸福感に満たされていきます。
 これが恋の魔法にかかるってことなのかしらと、乙姫様はしょーもないことを考えていました。
 でもしたかがありません。
 たとえ普通の人の何倍も生きていても、こういう時の女の子は永遠の乙女なのです。
 なにしろ名前が乙姫様ですから。
 ……誰ですか? ロリババアとか言っているのは。

「浦島様……」
「乙姫様……」

 ほとんど裸で抱き合ったまま、熱い視線を交わします。

「とても素敵でしたわ、浦島様」
「ありがとうございます、乙姫様」
「それで……その、浦島様……」

 浦島太郎を見つめたまま、乙姫様が少し羞じらうように頬を染めます。

「なんですか、乙姫様?」
「わたくし……あの、さっきの……もっとしたいんですけど、よろしいですか?」

 そう言うと乙姫様は浦島太郎にそっと口づけをしました。

 そして、その後さらに二回ほど体を重ねた後で……。

「乙姫様ぁ……わしは乙姫様のことが好きだぁ。もう乙姫様から離れたくねぇだぁ……でぇ好きだ乙姫様ぁ……」

 まるで子供が母親に甘えるみたいに浦島太郎は乙姫様の胸に顔を埋めて愛を囁きます。

「いいですわよ、浦島様。ずっとここに、わたくしの側にいてください」

 乙姫様は微笑みながらそんな浦島太郎の頭を撫でるのでした。

♪ ♪ ♪

 それからというもの……。

 乙姫様は昼間は竜宮城の主としての務めを果たしていますが、夜になると浦島太郎とセックス三昧です。
 そして、浦島太郎が二度と地上に戻ろうと思わないように数ヶ月に一度媚薬入りの料理を食べさせます。
 そうやって、乙姫様は浦島太郎と竜宮城でずっと幸せに暮らしました。
 めでたしめでたし。

 ……って、ん? あれ?

タイ「……なあ、この玉手箱どうするんだ?」
ヒラメ「ああ、それならもう必要ねえって亀が言ってたぞ」

-終劇-

♪ ♪ ♪

 あとがき

 このお話は、ほとんど「そんなのってないわよ~~~~~~~!!!」の出オチのためにあるようなお話です。著者猫さんはワタシがここに投稿を始めた頃によく感想をくださっていて、軽い冗談を投げ合うような著者猫さんのスタイルのおかげでワタシも必要以上に肩肘張らずに済んだかなって思ってます。本当に、投稿し始めた頃にみゃふさん、Panyanさん、著者猫さんから感想をいただいたおかげでお話を書き続けることができたのは間違いないです。
 今年でこのサイトが20年目を迎えるということで、ワタシは投稿を始めてやっと9年が過ぎたところですけど、今でも毎回感想をくださるみゃふさんをはじめ、ティーカさんや紅夢抄さん、お互いの作品での感想掲示板でやりとりしてきたA-Wingさんや他の書き手の人たち(ここまで言い出したらきりがないですが(笑)、でも、秋茄子トマトさんや小柳いとさんとか元気にしてらっしゃるんでしょうか? 南田朗さんも去年はEGOでも見てないですし)、初投稿のシリーズを完結まで追いかけてくださった古参の名無しさんや沢山の人たちがこれまでのワタシのお話にくださった感想が、ワタシが今もお話を書く力になっています。もちろん永慶さんやみゃふさん、nakamiさんたち小説を投稿することでここを支えてきた先輩方や、なによりこのサイトを維持して、毎回更新作業をしてくださっているざくそんさんへの感謝の言葉はひと言では言い表せません。
 最後に、著者猫さんはもう長いことここには来ておられませんし、お元気でいるのかどうかもわからないですけど、もし、このお話を見ていて、クスッと笑っていただけたなら嬉しいな、と思います。

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