さよならウィザード 第5話

第5話

 中学最後の1年は矢のように過ぎていった。

 しかし、やることは基本的には何も変わらない。
 勉強だって真面目にしたし、セックスもたくさんした。
 夏には毎日プールでエッチしたし、秋にはキャンプに行ってみんなで野外エッチした。
 王族や貴族のランキングをたまに動かしたり、学校外の女の子ともエッチしたり、思いつきの魔法で遊んだりと、相変わらずの過ごし方をしている。
 やがて季節は冬になり、僕は県内の有名私立を受験した。
 学力的には合格圏内で、僕の他にはチカとモエミも同じ学校を受けた。
 チカの受験にはいろいろ細かい細工も必要だったけど、それもなんとかなりそうだ。僕らは進学の準備をすすめていく。中学時代ももうすぐ終わる。今はもう卒業前の長い休みですることもない。
 そんな時、ジュリがスタジオ見学に誘ってくれた。モデルさんの仕事見学だ。

「ジュリちゃん、もう少し首を右に」
「はーい」
「いいね。そのままカメラに視線を向けて」

 キッズモデルとして名を知られたジュリも正式にティーン誌との専属契約を結ぶことになったそうだ。
 今日はそんなジュリや他の卒業生モデルのために、所属の子たちが集まって、全員撮影のスナップを撮って雑誌を飾るという企画らしい。
 僕はモデル撮影のスタジオというのは初めて見る。
 思ってたより広くて、大勢の人たちが働いている。ジュリは学校の彼女と少し違って、真面目に仕事している姿は大人みたいに見えた。
 他のモデルの子たちもみんなきれいで可愛く、僕の学校にいれば王族・貴族ランクな子ばかりだ。
 働いている大人の人たちもおしゃれで、かっこいい人やきれいな人ばかりで、少しだけ気後れを感じる。
 でも社会見学みたいで面白い。
 見たことない機材がたくさんあった。みんなにバレないように、少しいじらせてもらった。強いライトや、あちこちにあるレンズ。華やかな衣装やメイク道具に、匂いまで演出に影するのか知らないけど、きちんと香水にも気を配っていた。
 面白いと思いながら、すぐにそれを魔法に結びつけてしまうのは僕の職業病だと思う。
 点と点を線にして、それを交互に結わせて、トラップに仕上げる。
 慌ただしく動くスタッフたちも、出番までメイクを整えるモデルの子たちも、後ろでそれを眺める偉い人たちも。
 僕の魔法が線にしてそれを繋げる。ただの社会見学のつもりだったけど、こんなに魅力的な女の子たちが揃っていれば仕方ないと思う。

「オッケー。終了です。おつかれさま…そして、卒業おめでとう!」

 終了の合図とともに、大きなケーキが運ばれてきた。
 女の子たちの歓声。フラッシュ。華やかな音楽。いっせいに盛り上がるスタジオの中で、僕はタイミングが来たと思った。
 みんなの視線と注目が集まり、意識がそこに奪われたとき。
 僕はカメラの後ろに回ってレンズを向けた。

「そのまま誰も動いてはいけない」

 ストロボを焚いて、集まった全員に光を当てる。
 驚いて固まった人たちに向かって、何度もストロボを点滅させる。
 決められたリズムがある。強い光もある。
 意識を奪うのも感嘆だった。

「止まって、そのまま僕の言葉を聞いて。あなたたちの仕事は終わった。これからは僕の時間だ」

 僕はこの撮影の合間にも、少しずつ彼らに魔法の要素を与え続けていた。例えばカメラのフラッシュも、香水の匂いも、スタジオの音楽も。
 およそ人の感情に何らかの効果を訴えるために存在するものは、全て魔法の小道具になる。僕はその性質を理解し、魔法の順列に構築して提供してやるだけでよかった。
 簡単に、と言えるようになるまでにはそれなりの修行も必要だけど、この程度の人数と密室の中でなら数時間もいらない。
 魔法は支配を終えていた。

「僕は魔法使いのトーマ。これはとても大事な言葉だから覚えておいて。僕は魔法使いのトーマだ。今、君たちをカメラの世界に閉じ込めた。君たちは写真だ。誰も動けない。僕の手のひらの中の写真だ」
 
 意識を魔法に奪われ、彼らは薄く遠い目をして、ストロボを浴び続ける。
 やがて完全に彼らが意識を忘れた頃を見計らって、僕は最後のシャッターを切った。

「それじゃ、とりあえずモデルの子たち全員と…ヘアメイクのあなたと、カメラアシスタントのあなたは、僕を手伝って。他の人たちは、もうスタジオの仕事も終わりだ。今すぐここを出て行って、違う仕事でもしててもらおうか」

 それこそ動き出す写真みたいに、固まった人数の中から男性と一部の女性だけが動き出し、のろのろとスタジオを後にしていく。
 残ったのは可愛い女の子ときれいな女の人だけだ。
 魔法使いになって以来、僕はひどい面食いになった。というより、魔法でするセックスに必要なのは容姿だけで、内面なんてどうでもよかった。
 僕には何でも自由なんだから。
 固まったままのきれいで可愛い女の子たちを眺める。近寄って、スカートでもめくってみる。
 触っても、揉んでも動かないモデルの子たち。良くできたフィギュアみたいだった。人形の館だ。
 背の低い子のほっぺたを舐めてみると、なんだか倒錯的でぞくぞくした。ジュリの胸を揉んで、隣の子のスカートをめくって、パンツの中も覗き込んでみる。
 これはこれで、なかなかのお楽しみだ。

「それじゃ、撮影会を始めようか。僕が手を叩くと目が覚める。そして撮影会の始まりだ。カメラマンの言うことは絶対だよ。君たちはモデルとスタッフなんだから」

 このままイタズラし続けるのも楽しそうだけど、せっかくのモデルと機材が揃ってるんだから、まずはカメラマンの真似でもしたい。
 僕がパンと手を叩くと、女の子たちは目を覚まして自分たちの仕事を始めた。
 最初にジュリと、あと数名の子を並べてポーズをとってもらうことにした。

「いいねー」

 後ろで見ていても上手だなと思った彼女たちのポージングも、カメラを通して見るともっときれいに見えた。
 自分を一番良く見せるポーズと表情をよくわかってて、なおかつそれをファッションに合わせて出来るんだから、僕の同年代や年下の彼女たちも立派なプロだった。

「すごくいい」

 素直にきれいだと思う。そして興奮してくる。
 今、そんな彼女たちを僕の魔法スタジオに閉じ込めているなんて。
 もちろん、ただの撮影会で終わるつもりはない。

「僕のカメラが光るたび、君たちの体に快感が走る。セックスを知っている子もそうでない子も、一番気持ち良かったこと思い出して。その一瞬が僕のカメラのストロボで蘇る。さ、撮るよ」

 かしゃ。

「あぁん!」
「はあぁぁんっ」
「んっ、んっ!」

 びく、びく、と女の子たちが震える。僕とのセックスに慣れているジュリは、もうそれだけで達してしまったのか、ぽかんとだらしなく口を開けた。
 他の子も、頬を染めたり、うっとりと目を潤ませたり、小学生っぽい子もエッチな声を出してしまった口元を押さえて、困ったようにモジモジしていた。

「まだ撮るよ。ポーズをとって」
「…はい」

 ジュリは唇に指を当て、挑発的なポーズをとった。それに続いて他の子も、それぞれモデルらしいポーズをした。

 かしゃ。

「あっ、あぁ!」
「くぅん!」
「ひっ…あっ」

 ぴくん、びくっ、ぷるぷるっ。
 擬音にするとそんな感じ。ジュリと他のモデルたちがそれぞれ快感に震えて、せっかく決まっていたポーズを乱していた。
 僕はカメラの向こうで、そんな彼女たちに舌なめずりをする。

「カメラマンの指示は絶対だよ」

 こく、彼女たちは動きを合わせて頷く。
 その瞳はすでに熱をもったように潤んでいた。

「それじゃ、もっとセクシーなポーズに挑戦しようか。服をちょっとはだけてみて。大丈夫だよ。この写真は僕しか見ないから。もっともっと、撮影が気持ちよくなるよ」

 ジュリが、スカートをパンツギリギリまで上げ、そしてTシャツも上げてブラをチラ見せする。他の子もそれにならって、少しだけセクシーな格好をした。

 かしゃ。

「はっ、あぁ!」
「んんん~ッ」
「くっ、くぅん…」

 かしゃ。

「やっ!? あ、あぁ!」
「あぁぁぁぁッ!」
「ん~~~ッ!」

 唇を噛んで姿勢を崩すジュリ。切なそうに瞳を濡らす子、それにお股のあたりをモジモジさせる子。

「一枚ずつ脱いでいこう」
「…はい」

 Tシャツを脱ぎ捨てたジュリは、胸を強調させるポーズを向けた。
 あとの二人も、さっきまでのモデルポーズとは違う、セクシーなポーズをとった。

 かしゃ。

「いっ…くぅ!」
「あっ、あっ、あっ、すごい!」
「や、やぁ…なぁに、これ…?」

 乱れていくきれいなモデルっ子たちに、僕はますます興奮していく。
 これは思っていたより楽しい。将来はこっちに進むというのもアリかもしれない。でも、僕がもしこの職業に就いたら、きっとモデルの子にイタズラしてばかりで仕事にならないだろうな。
 こういうのは趣味だから楽しいのかも。

 かしゃ。

「あっ、また、いっちゃう!」
「あぁ、もっと、撮ってぇ!」
「…こんな格好、恥ずかしいのに…はぁ…はぁ…」

 ジュリはほとんど全裸に近い格好になり、女豹ポーズで僕を切なげに見上げる。
 その隣の僕らと同年代くらいの子は、パンツをぐらい半分ずらして、さらに形のいい胸を強調するように手を頭の後ろで組んで、ポーズを決めている。
 一人だけ幼い隣の子は、パンツ一枚になったお尻を僕に向けて四つんばいになっていた。
 赤い顔、荒い息。すでに何度も達している彼女たちは、体中を汗や愛液で濡らして、僕のカメラの前であられもない姿を見せている。

「全部脱いで、カメラに向かって足を広げて」
「はい…」

 従順にカメラマンの指示に従い、最後に残した下着を脱ぎ捨てていく。
 ジュリの引き締まったお尻と、隣の子の下ぶくれなお尻と、その隣の小さなお尻。
 それぞれのお尻をぺたんとシートの床につけ、3人揃って足を広げる。真っ赤に濡れたアソコが3つ、きれいな色して並んでる。
 僕はごくりと唾を飲み、レンズを通して美少女たちのヌードにフォーカスを合わせる。

「これが最後の一枚だよ。君たちのアソコの中まで、僕のカメラで写すからね。すごい快感がシャッターと同時に押し寄せる。最高の一枚になるよ」

 女の子たちは嬉しそうに微笑み、僕に向かってさらに足を広げて、お尻を浮かせた。とろりと濡れてライトに反射するソコは、沸騰寸前のシチューのようだった。
 きれいな女の子たちを汚すなら、下世話なやり方が一番楽しい。
 僕はシャッターに指をかけて合図する。

「1万個+1万個は?」
「にっ万個!」

 にっ、と彼女たちが指で広げたソコをめがけてフラッシュが光った。
 
「ああぁぁぁぁあぁぁぁあああーッ!?」

 スタジオ内に女の子たちの悲鳴がスタジオに反響する。
 あまりの快感の大きさに彼女たちはお尻を突き上げて潮を吹き、だらしのない顔で舌とよだれを垂らし、肌を真っ赤にしてエクスタシーにのたうち回る。
 
「イクぅ! イク、イク、イク、イク、イクッ……イクぅ!」
「あぁぁぁ、すごい! なにこれぇ!? すごいの、止まんないィ!」
「はぁン! あっ、やだっ、やぁ! 気持ちよすぎて、おしっこ出ちゃうよぉ!」

 カメラに動画機能が付いていたのは幸いだ。
 3人の美少女たちがそれぞれの絶頂アートを描く様子はまさに芸術だと思う。
 やがて快感の波が引いてぐったりとする彼女たちを休ませ、床を掃除してもらったあと、次のグループを登場させる。

「よろしくお願いしまーす!」

 さっきのジュリたちにも負けず劣らずの美少女揃いだ。
 仲良く顔をくっつけてポーズをとる彼女たちに、僕はまた刺激的なシャッターを切る。

「あぁぁぁぁぁん!」

 少女たちが快楽に乱れて女を見せていく様子を克明に写し撮っていく僕のカメラ。
 いやらしく服を脱がせ、今までにしたことないようなスケベなポーズをやらせ、セックスのような撮影を続ける。
 モデルの子たちも全員の撮影が終わる頃にはみんな裸で、床に転がる彼女たちを僕はカメラを持って写して回った。
 僕のストロボに照らされるだけで少女たちは絶頂する。中には自分でした経験すらないんじゃないかって子もいるけど、初めての快楽を連続して味わい、すっかりハマってしまったようで、喜んで僕のカメラの前でアソコを広げていた。
 アシスタントの人もヘアメイクの人も、裸にして僕のモデルにしてやった。全員裸の女の子たちでスタジオを埋めた。
 充満するオンナの匂いに僕も興奮していく。群がる女の子たちをシャッターで絶頂させる。快楽でとろとろになっている彼女たちは、それでも次のエクスタシーを求めて、重たい体で僕の足に絡んでくる。
 これはゾンビですか?
 まとわりつく少女たちを次々にカメラで撃退していく。悲鳴を上げて崩れ落ちていく女の子たち。それでも飽くことなく「もっと、もっと」と濡れた裸体が僕の体にしがみつき、ジュリが僕のファスナーを下げた。

「トーマ君、お願い。もう我慢できないの……私たちを慰めてぇ」
「わかったわかった。それじゃ、一人ずつね。この中で処女の子は手を上げて」

 半分以上の子が手を上げていた。
 派手の見た目とかで、勝手に進んでる子ばっかりなんだろうなって思ってたけど、なんだか少し安心した。日本女子もまだまだ捨てたものじゃない。
 まあ、それも今日までだけど。

「それじゃ、まず君から」

 処女の子は体の回復や後始末に時間がかかるから、最初に片付けておいた方が効率がいい。
 だてに中学校を1つ支配しているわけじゃない。数十人単位で女の子を抱くことには慣れている。ハーレムプレイのハウトゥー本だって書ける自信もある。
 こんなとき、処女に価値を抱く人ならご馳走を後回しにしておきたいところだろうけど、彼女らだって緊張しているから待たせすぎると興奮を冷ましてしまうし、何よりも肝心の男の方が、膣内の抵抗激しい処女たちを後回しに抱けるほどの体力と硬度を残しておけるかっていう問題もある。ハーレムはそんなに甘いものじゃない。
 魔法使いは現実主義者だ。だからまずは処女から抱く。他に質問はあるか?

「いくよ」
「は、はい…」

 ショートの髪に花をいっぱい飾った子だ。顔は幼いわりに胸は丸く膨らんでいる。
 その胸を軽く手のひらで撫でながら、僕のペニスを股間に擦る。不安げな彼女にキスをして、一気に潜っていった。

「あぁぁぁあぁあッ!?」

 ぶちぶちと聞き慣れた破瓜音をペニスで感じ、そして角度を少し変え、入れ残したところも挿入する。
 女の子と痛みを共有できる唯一の機会。相手は名前も知らない子だけど。

「じっとして、深呼吸して」
「はい…」

 僕はカメラをもってハメたまま女の子に向ける。

「処女喪失の日に記念して」

 かしゃ。

「あぁぁぁぁッ!」

 このシャッターには女の子を気持ちよくする魔法がかかっている。
 きゅっとアソコがきつく締まり、彼女の体が強ばった。でもその後にじわりと愛液が広がり、彼女の中の温度が上がっていく。

「動くよ」
「んんん~ッ!」

 徐々に慣れていく体が僕の動きをスムーズに助け、気持ちよさも増していく。

「撮るよ」
「あぁぁぁッ!」

 僕がシャッターを切るたびに彼女は乱れていって、やがて舌を突き出して「もっとしてぇ」と甘えた声を出すようになった。
 あとで彼女の写真を並べたら、処女がセックスを覚えていく課程の実証的な記録になるだろう。

「そろそろすごいの撮るよ。一番気持ちいいやつだ。ちゃんとポーズとって」

 まだ処女の血も乾いていない女の子が、僕のペニスを咥えながら半目でダブルピースする。親にも見せてやりたい気持ちで、僕はシャッターを切った。

「は、ぁあぁ、あぁぁぁんんッ!?」

 電池の切れかけた人形みたいに体を痙攣させ、結合部から大量の愛液を溢れさせる。ペニスをまんべんなく締め付ける心地よい圧力に射精を我慢をして、僕はその子の中から引き抜いた。
 次の女の子。
 柔らかそうな茶髪を巻いて、大人びたメイクをしている小さな子だ。
 こういう派手な子がまだ処女っていうのも、この年代ならではなんだろうね。進学したらさっそく彼氏でも作るつもりでいたのかな。平べったい胸を上下させ、これから自分の体験することを期待する目で僕を見上げていた。

「じゃ、君はうつぶせになって」
「はい」

 そしてお尻を高く上げさせる。丸いお尻の真ん中に茶色い窄まりがあり、その下でぷっくりと膨らんだアソコは閉じたままだった。
 僕はそこに自分の先端を押し当て、ぐりぐりと擦る。

「んっ…んっ…」

 なかなか開いてこないソコに向かって、カメラを構えた。

「撮るよ」

 かしゃ。
 
「あぁあああぁぁあぁ~ッ!?」

 このカメラ、売ったら高値がつくんだろうな。
 数回シャッターを切るだけで垂れるほど濡れた幼いアソコの中にペニスを埋め込みながら、僕はそんなことを考えた。

「あぁっ、あぁっ、あぁっ」

 何度もシャッターを切り、何度も女の子の中を動く。
 処女の血と愛液がぐじゅぐじゅ音を立て、悲惨な見た目とは裏腹に、とても甘い悲鳴をその子は上げていた。

「あっ、あっ、気持ちいい、気持ちいいです!」

 カメラのメニュー画面をいじって、これまでの写真をサムネイルで眺める。
 この子のお尻がずらりと並んでいて笑えた。そして意外と良い眺めだった。
 僕はさらにズーム機能を発見してレンズをにゅうっと伸ばした。

「お尻を広げて。もっと奥まで見えるように」
「は、はい…」

 女の子は自分の手でお尻を広げた。小さな窄まりが強引に形を歪め、僕の前で広がった。

 かしゃ。

「はぅぅぅぅッ!?」
「奥を撮られるほど気持ちいい。カメラは君のお尻のずっと奥まで狙っているよ。ほら、レンズが君のお尻の穴にくっつきそうだ。もっと広げて」
「はいっ、はいぃぃ!」

 ぐい、と指の跡がつくほど広がるお尻。
 切れちゃったらどうするの、なんて余計な心配をしながら僕は腰を突き入れ、レンズを接近させてシャッターを切る。

「あぁぁぁぁッ!?」

 かしゃ。

「すごいぃぃぃッ!」

 ますます快楽を強めた女の子は、必死になってお尻を広げ、いろんな角度で僕に見せつけようとくねらせる。僕はその子の中に入っちゃいそうな勢いでレンズを近づけ、少女の秘密を調べていく。カメラは機械的に、冷静に少女の腸内を記録していった。

「あぁ、あぁっ、み、見られてる! 私のお尻、全部撮られちゃう! 撮って、撮って! 私の穴、お尻の穴、奥まで全部撮ってえぇぇぇ!」

 自分の指を穴の中に入れ、思いきり広げて僕に見せつける。
 その中をめがけて、僕はとどめとばかりに連続撮影でシャッターを切った。

 かしゃかしゃかしゃかしゃ。

「あぁ、あぁぁぁ、あぁぁぁああぁぁ~ッ!?」

 激しくブレたお尻の写真がサムネイルに並んでいく。
 子馬のような暴れ具合で女の子の体が痙攣し、アソコからブチュリと汁を吹き出し、ガクガクとお尻が震える。
 失神したその子の中から、僕は隆起したままのペニスを取り出す。
 ぬちゅ、と糸を引いて顔を出したそれは、まだまだ力を失う気配もない。
 さて、次の女の子。
 柔らかそうな黒髪の長い、清楚な顔立ちをした少女に僕は汚れたペニスを向ける。

「あ…あぅ…」

 派手な子ばかりがモデルというわけでもないらしい。きらびやかなイメージが多い中で、その子はまるで白鳥みたいに白く透きとおった肢体を震わせていた。
 たぶんランドセルを背負った通学姿も似合うだろう。将来が期待できそうな感じだ。
 怖がる彼女に、僕は優しくカメラを構える。

「ひゃぁん!?」

 シャッターに体を反応させ、顔やお尻を赤く染めた。僕の股間も激しく反応する。

「大丈夫だよ。僕に任せてくれればいい」
「は、はい…あぁん!」

 シャッターを切る。彼女の体がまた震えて、お股のあたりから温かい匂いをさせる。
 僕は彼女の足を持ち上げ、自分の腰を間に挟む。そして、彼女のつるりとしたアソコに向かってシャッターを切る。

「はぁぁぁん!?」

 真っ赤になったソコは、ぷくりと腫れて濡れている。自分の体が欲しがっているものをまだ理解できてないんだろう。
 心も体もまだ子供。だけど5分後には大人の女の欲しがり方を覚えているはず。
 僕に任せてくれればいい。連続処女破りは僕のお家芸みたいなもんだ。初めての子を狂わせるのだって簡単だ。
 シャッターを切って、同時に彼女の中へ突き進む。

「あぁぁああぁあっぁッ!?」

 苦痛と快楽が、強引に彼女の大人の扉をこじ開けた。
 僕は連続してシャッターを切り、彼女に快感を与えつつ、腰を動かす。
 ぐちゅ、ぐちゅ、いろんなものを混ぜた音が彼女の中で鳴り、それに甘い悲鳴をが重なった。

「あぁん! ひぁん! うあぁ!? あぁぁ!」

 清楚な顔が淫らに歪み、細く白い体がいやらしくくねる。何度も何度も僕に撮られ、そのたびに快楽の渦に流され、あっという間に彼女はオンナの顔になる。

「気持ちいい! 気持ちいいよぉ! 気持ちいい-!」

 僕の腰に足を回し、自分から腰を振ってその子は乱れる。僕はもう動くのをやめ、必死に欲しがるその子の姿をカメラに収め続ける。
 見た目もセックスも高得点。うちの学校に進学したなら、この子は王族クラスだね。

「セックス、気持ちいいかい?」
「気持ちいいです! 気持ちいいですぅ!」
「でも、こんな気持ちのいいセックスは僕じゃないと出来ないよ。君はもう僕以外の男のセックス出来ない。いいね?」
「わかり、ましたぁ! 気持ちの、いいことは、全部、お兄さんにお願いしますぅ! あぁ! あぁん!」
「あとで電話番号とアドレス教えてね。じゃ、キスしよっか」
「はい…んん…ちゅぷ…あん、舌が…んんん…」

 深く唇を絡ませ、舌を差し入れる。すっかり僕を受け入れる体になっている彼女は、同じように舌を伸ばして絡ませる。
 僕はカメラを床に水平に構え、腕を伸ばして、二人のキスが収まるようにレンズを向ける。

「カメラ、見て。キス写真を撮るよ」
「れう、はい、んっ、れるっ、れるっ」

 僕の口の中に舌を伸ばしながら、カメラ目線でピースする少女。
 セックスを覚えたてのいやらしい表情と体を焼き付けるように、僕はシャッターを切る。

「れぅぅぅううぅぅッ!」

 舌を出したまま彼女は絶頂し、僕も慌てて中から引き抜き、その体に精液をぶっかけた。
 小さな体には持て余される精液が彼女の全身を汚し、顔や太ももにまで男に抱かれた痕跡を残した。
 スタジオの固い床に、うつろな目の少女。激しい初体験に汚れた体。僕はどこか切ないその情景にシャッターを切る。
 女の子はピクンと反応し、「あぅ…」とおぼつかない声を出した。

「……さて、誰か僕にフェラ顔を撮って欲しい人?」

 僕が汚れの残ったペニスを向けると、それでも手を上げる女の子は殺到した。みんな積極的な子ばかりで何よりだ。
 年下ばかり続けて抱いたから、今度は大人の人にしよう。
 ヘアメイクの人とアシスタントの人、二人同時にしゃぶってもらうことにした。

「んんっ、ぢゅぶっ、んっ、ああぁん! んっ、んっ」
「れろ、ちゅ、はぁん! 気持ちい…ちゅ、もっと、撮ってぇ…」

 二人とも美人だし、きちんとカメラ目線でしゃぶってくれるし、良い被写体だった。
 すぐに僕のは復帰して固くなっていく。ますます彼女たちは熱心に僕のをしゃぶり、自分たちの胸を揉みしだいたり、アソコをいじったり、カメラに撮られる快感を高めていく。

「してあげるよ、二人とも。お尻をこっちに向けて」
「はいぃ!」

 嬉しそうに並ぶお尻二つ。
 さすが、大人のお尻はどっしりしている。僕はこういうお尻も好きだ。年下も年上もかなり年下もかなり年上も、きれいな女の人というのは、それぞれ年相応の魅力を持っている。
 僕もその魅力はちゃんと理解してるし、こうして楽しんでもいる。好き嫌いのない子に育ててくれた両親に感謝したい。

「ずるい、トーマ君! 私ももう待ちくたびれた!」

 どしん。
 アシスタントの人の隣に、もう一個お尻が並ぶ。
 しびれを切らしたジュリだ。形のよいお尻をぷりぷり振って、恨めしそうに僕を睨む。

「私の卒業記念なのに、待たせるなんてずるいー!」

 まあ、確かに僕をここに招待してくれたのは彼女だ。主賓に対する礼儀がなってなかったなと反省し、僕はジュリのお尻に方向を変える。
 しかし、さらにその隣にお尻が並んだ。

「私も今日で卒業です! ぜひ、記念に一発!」
 
 ショートカットの溌剌とした子だ。彼女も僕らと同級生らしい。健康的なお尻をしていた。

「私も! 卒業関係ないけど、して欲しいです!」
「わ、私、処女です。初めての人になってください!」
「私も半年くらい彼氏いないんで、してくださーい!」
「私は、彼氏いるけど別れま~す!」
「みんな、ずるいずるい! 私が先にトーマ君にお願いしたの~!」

 いくつものお尻が連なり、ゆらゆら揺れる。なんだかお尻じゃない別なものに見えてくる。
 こういうのなんていうんだろう。ゲシュタルト崩壊? 僕やばい?
 まあ、ハーレムプレイで一番大切なことは、細かいことなんて気にしないでセックスを楽しむことだ。
 自分が楽しければそれでいい。そうじゃなければ、こんなにたくさんの女の子を抱くことなんてできない。
 僕はハーレムというのをよく知っている。

「あぁぁん!」

 適当に目の前のお尻に挿入する。
 次々にお尻を変えて、数え切れないくらいのハメ撮り写真を集めていく。

『マック食べよ』

 ひととおり遊び終わって、気怠い疲労にぼんやりとしていたら、ルナからメールが来た。
 見渡すとスタジオ内には無数の全裸の子が絶頂に気を失い、転がっている。この子たち全員抱いてしまった。この上、ルナの野獣のような性欲とセックスをするのかと思うと、赤い玉が出た。

『エッチは無理』
『別にいいよ。マック食べたくなっただけ』

 そういや、お腹は空いている。そろそろ3時を回っていて、じつは昼を跨いでエッチしてたんだなって思うと、自分の性欲も野獣に思えた。

『じゃ、いつものとこ?』
『そうそう。私も今から家でるから』

 学校帰りにたまに寄るマックがあった。僕の通学路だから、ルナもうちに来るときはそこで昼食を買ってきたりする。
 ジーンズを履いて、すっかり忘れられた大きなケーキのクリームを一口舐める。甘い口溶けのあと、すっぱいような味がした。
 メイクブースの横で手を洗い、ついでに顔も洗ってから鏡を見る。
 ハンカチを持ったチカが立っていて、思わず悲鳴を上げそうになった。

「な、ど、どうしてここにいるの、チカ?」

 見慣れた赤いダッフルコート。
 短いスカートから伸びる細い足。
 いつもの無表情で彼女は答える。

「トーマ君にお願いがあってきました」
「お願い?」
「はい。ちょっと待ってください」

 僕が顔を拭いたハンカチをスカートのポケットにしまうと、チカはリュックの中を漁りだした。
 チカは、いつも知らないうちに近くにいる。どうやってかはわからないけど、僕の居場所を知っている。長年一緒にいても、いまだ彼女は謎めいていた。
 相変わらず変な子だ。
 でもまあ、見た目ならさっき抱いたどの子にも負けないな。
 僕が切ってやってるせいでちょっとでこぼこしたショートカットだけど、そこだけちゃんと整えてやれば彼女だってモデルになっててもおかしくない。
 空気じゃなかったら、チカは今ごろどんな女の子になってたんだろうか。
 などと、詮無いことを考えているうちに目当てのものを見つけたのか、きれいに包装された細長い箱を取り出してチカは言う。

「これをルナにあげてください」
「ルナに?」
「はい。トーマ君からだと言って、渡して欲しいんです」

 何のことかわからなくて、僕は首を横に傾げる。

「んー、こっち」

 平日のせいかさほど込んではいないマックの店内で、先にドリンクを飲んで待ってたルナが片手を上げた。
 僕も彼女に合図して、注文したバーガーのセットとホットコーヒーを持って彼女の前に座る。

「なんか久しぶりに来た、ここ」
「僕もそうかな。学校ないと寄らないよね」

 3年生の僕らはもう卒業式まで登校日はない。ルナと会うのも数日ぶりだった。
 最後に会ったのは、休み前の夜中に僕の部屋に忍び込んだルナとセックスしたとき以来だ。
 修学旅行から戻ってきたあとも、僕とルナはセックスしている。
 僕らの関係に大きな変化はない。でも、彼女は以前のように毎日したがらなくなったし、中出しもねだらなくなった。
 会ってもセックスしないでこうして喋るだけのときもあるし、逆にろくな会話もなくケダモノみたいに交わるだけのときもある。
 ルナは学校を休むことが多くなったし、卒業もぎりぎりだったと聞いた。彼女がどこの高校に行くかも聞いていない。
 たまにセックスをする友だち。そんな言葉がしっくりくる関係に僕らは落ち着いていた。

「食欲おさまらねー」

 バーガーとホットドッグを並べて、むしゃむしゃとルナは食べる。よく食べる子だけど、どうしてこんなにスタイルいいんだろうな。
 相変わらず彼女と一緒にいると、周りの視線が集まって痛い。当の本人は自分に集まる注目などまるで気にせず、バーガーにポテトを挟んで、小学生みたいな食べ方をしている。

「ルナ、行儀悪い」
「ふっふー」

 テレビのこととか、王族・貴族の間だけでやってるSNSで誰がどんなこと言ってたとか、どうでもいい会話をしながら、さっきチカの言ってたことについて考える。

(ルナとは毎年、同じ日に二人で食事しています。覚えてますか?)

 そんなこといちいち覚えているわけがない。しかも、聞けば学校帰りに二人でこのマックに寄ったとか、朝っぱらからセックスしてラーメン食べたとか、そういう話だ。
 それ、日常茶飯事すぎて覚えているわけがなかった。

(それでもルナにとっては意味のあることなんです。毎年、この日に、トーマ君と二人で食事することが大事なんです)

 チカは今、僕らのテーブルの隣で、一人で座っている。
 僕がさっき一緒に注文してやったコーヒーは彼女のテーブルの上だ。
 そしてポツンと、窓の向こうを眺めている。

(今日はルナの誕生日です)

 今年は登校日じゃないから、ルナの方から連絡が来ると思っていた。と、チカは言った。今年の今日は絶対に外せない日なんです、とチカにしては珍しく気合いの入った無表情(やや目の光が強い状態)で僕にプレゼントの箱を押しつけた。
 何がしたいのか相変わらずわからない子だけど、ルナのことを今も親友だと彼女が一方的に思っていることは知っている。
 僕はそれほど薄情な魔法使いじゃない。彼女が是非にとお願いするなら、プレゼント代行くらいやってやってもいい。
 だが問題は、僕は女の子に何かを贈るのなんて未経験だったから、これが意外と照れくさいものだということを、全然知らなかったということだ。

「でさー、そんときのクミの食べ方がアフリカナガバモウセンゴケみたいですっごい笑えて――」

 ルナはいつものようにペラペラとよくしゃべる。学校ではいまだにクールキャラで通してるけど、僕と二人の時はおしゃべりで口うるさい女の子に変わる。
 これも昔から変わらない。むしろ今日は、いつもよりもよくしゃべりよく笑う。そして食う。さりげなく僕のポテトにまで手を伸ばしていた。
 とてもプレゼントなんて渡すムードじゃない。ていうか本当に今日が彼女の誕生日で、しかもわざわざ僕に会いに来てんのかって、疑わしくなってくるんだけど。

 とんとん。

 隣のテーブルを、チカが指で叩いていた。
 僕がそっちを向くと、彼女は自分の手帳を広げる。そこにはボールペンで、ぐりぐりと太く塗られた文字が書かれていた。

 “Go!”

 わかってるよ。
 出せばいいんだろ。
 意を決してジャケットからプレゼントの箱を取り出すと、僕はルナのトレイの上に置いた。

「なにこれ?」
「プレゼント」
「は?」

 片眉を上げて、けげんそうに顔をするルナに、僕は唇を曲げて対抗する。
 腕を組み、ふんぞり返り、「睨んだって怖くないぞ」という気勢をアピールして、チカに言われたとおりの言葉をルナに告げる。

「誕生日おめでとう」

 ルナはその表情のまま固まる。
 チカは無言で小さな拍手をする。
 僕はふんぞり返って、なぜか熱くなってくほっぺたの処理に困る。
 やがて、ルナはふっと笑って、「ありがと」と小さく呟いた。

「――で、誰に言われたの?」

 笑顔のまま、目だけは笑ってなかった。
 ルナの大きな瞳が、奇妙な迫力で僕を見据えた。

「……誰って?」

 僕は答えながらチカを見る。
 チカは、拍手していた手でそのまま口を覆って、目を丸くした。

「修学旅行のとき、あんたの名前を騙ってメールしてきたやつと同じ?」

 顔は笑ってるけど、怒ってた。ルナは手元のプレゼントなどには目もくれず僕をジトっと睨んでいる。
 ちらりと横目でチカを見た。彼女は、青い顔をしていた。

「あんたが、私の誕生日なんて知ってるわけないもん。しかもプレゼントとか、ありえないじゃん」

 僕は口を開きかけて、やめた。
 ウソを重ねることに意味はないし、よく考えれば、僕には関係ない話だし。

「まあ、それはそうだよね」

 僕は降参の肩をあげる。
 ルナは、「やっぱり」と言って軽く笑う。

「なんかもー、わざとらしいっつーか、余計なお世話っつーか…何のつもりか知らないけど、ちょっとムカつくんだよね」

 ぎこちない空気に、僕はとりあえず愛想笑いを浮かべる。
 ルナは右手を頭の上まで挙げた。そしてそれを、テーブルの上に叩きつけた。

「ムカつくんだって、こういうことされると!」

 チカの用意したプレゼントの箱はルナの拳の下でつぶれ、僕は彼女の眼光に射すくめられて動けなくなる。
 店内まで静まりかえり、取り繕うような店員の明るい声が滑稽に響いた。
 ルナは、ぽろりと一つ涙を流すと、「あー、みっともない」と言って指で拭った。

「そこにいてよ。まだ話は終わってないから」

 トイレの方へ向かうルナの背中を見送ってから、まだしつこく僕に注目する無遠慮な視線に気づかないふりをしてドリンクを飲みつつ、チカへ恨みの視線を向ける。
 チカは、真っ青な顔で俯いていた。僕のことなど気にする余裕もなさそうだった。
 仕方なく、僕は一人で「全然大丈夫です」という態度を続行し、周りの視線を必死で流す。
 ルナはすぐに戻ってきた。
 そして、意外なくらい明るい声で言った。

「や、じつは報告があってねー。私、4月からテレビとかに出るから」
「…は?」

 突拍子もない話に僕も面食らう。どこでスイッチを戻してきたのか、ルナはさっきまでと同じように明るい調子で、「へへっ」と、イタズラを成功させた子供みたいに笑う。

「驚いたでしょ? じつはね、ジュリに一緒にモデルやろって前に誘われてて。一回だけっつって読モみたいな感じで撮影したこともあるんだよね。そしたらジュリのとは違うとこの事務所に誘われて。まあ、去年かおととしくらいの話なんだけど」

 知らなかった。そしてルナは意外と、自分のことは僕にしゃべらないってことも、なぜか今になって気づいた。
 そういえば、昔は「誰に告られた」とか「何人にナンパされた」とか、自分のことばかり僕にしゃべってたはずだけど。

「全然興味ないからイヤだって言ってたんだ。でもまあ、そのうち興味が湧いたら最初に相談してくれとも言われてて。で、京都から帰ってきてから、ソッコーで電話したわけ」
「京都って、修学旅行の?」
「そ。橋の下でエッチしたあと。へへっ」

 そのときのことを思い出したのか、ルナは少し恥ずかしそうに笑った。「あんときはどうかしてたし、勢いで」とか、照れくさそうに髪をかき上げる。

「…まあ、何でもいいから始めたかったの。じっとしてちゃダメだと思って。で、連絡してみたと。私としてはすぐにジュリみたいにモデルとか出来るのかと思って期待してたんだけど、歌とかダンスとか、お芝居のレッスンばっかりでさ。『私、騙されたのかー』とか思ってたんだよね。ジュリも、『あんな大手があんたなんか相手にするわけないじゃん』とか言ってバカにするし、マナホも『何かされたら警察に行こう』とか怖いこと言うし」

 僕は堰を切ったようにしゃべり出すルナの話を、どこか遠い出来事のように聞いている。
 修学旅行からほぼ1年近く。ルナには僕の知らない放課後活動があって、ジュリや他の女の子はそれを知っていた。
 僕にとってはルナも他の子たちもただのセックス相手で、それ以外に関わりはない。だから僕が知らないことがあったって当然なんだけど。
 それでも、なぜか意外な気がした。そのことに軽い衝撃を受けている自分に。
 
「そんでジュリが自分のこと来いって言ってくれてさ。あいつに頭下げるのとか死ぬほどウザいんだけど、知り合いいるだけマシかと思って社長にやめるって言いに行ったんだよね。そしたら、『絶対にやめさせない』ってすごい怒られちゃって。もう4月からCMでデビューさせること決めてあちこち根回ししてたって。だったら早く言えってね」

 とても明るく話す彼女の手元にはまだつぶれたチカのプレゼントがあって、それはもうルナの中では忘れ去られたものみたいになっている。
 チカは一人でうつむき、冷めていくコーヒーを眺めていた。彼女はこのことを知っていたんだろうか?
 いや、知ってたんだろうな。こんなプレゼントを用意してたくらいだし。
 空回りだったけど。

「ゴリ押ししてやるっていうから、ゴリって何ですかってすぐ聞いたのね。そしたら『何でもいいからうちは春からお前でいく!』ってまた怒鳴られてさ。しかも高校も知らない間に芸能コースのあるところに決まってたし。もう怖ーよ、芸能界。でもまあ、やってくしかないかなって」
「…どうして?」
「ん?」
「どうして、いきなり芸能界なの?」

 ルナは首をちょっと傾け、「んー」と半笑いを浮かべた。

「笑うなよ。ちょっとかっこわるいこと言うけど」
「うん」
「私、中途半端に死にたくないんだよね」

 真面目な顔をして、しばらく僕と見つめ合ったあと、ルナは吹き出して髪をかき上げた。

「や、もう自分でも何言ってんだってのはわかってんだけどね。ようするに、佐藤ルナっていう人間がここにいましたっていう証拠を、誰にも文句言わせないくらいに残してやりたいわけ。どうせいつかは死ぬんだし、だったらその前に、できるだけ大勢の人間の前に立っておきたいっていうか…んー」

 パン、と両手を叩いて、その指を交互に絡ませ、額をそこに押しつける。

「…上手く言えないけど、そういう気持ちでいれば、私は一人でも生きていけるかなって思って」

 そして深呼吸して、ゆっくりと顔を上げたルナは、どこかすっきりした面持ちで、にこりと微笑む。

「…もういっこ、告白があるんだけど聞いてくれる?」
「うん」

 ルナは、目を閉じて息を吸い込むと、口からゆっくり吐き出して、目を開けた。
 真っ直ぐ、僕の方を見た。

「私、トーマのことが好き。マジで大好き。愛してる」

 ルナの大きくて印象的な瞳が、ぴたりと僕の顔に刺さる。
 突然で、しかも脈絡のない告白に僕は面食らい、そして心臓まで動揺する。
 僕らはセックスだけで繋がっていたし、ルナは僕個人のことはタイプじゃないと明言していたし、意外と言えば意外な話だ。
 でもまあ、そう珍しいことじゃない。
 魔法使いになって支配してみれば誰でもわかることなんだけど、女の子っていうのは、権力とか流行とか、そういう自分を支配するものを嫌いにはならない。むしろそれを持っている男のことは大好きだ。
 自分の所属する学校で最高の権力を持って、なおかつ異性として唯一機能しているのは僕だけなんだから、惹かれるのはメスとして当然の本能だ。まして僕らはしょっちゅうセックスしているし、この関係を特別なものと考えるのも如何にもだろう。
 つまり、ルナも普通の女の子だったということ。
 セックスに恋してしまったというだけだ。
 
「あぁ、そうだったんだ」

 だけどもちろん、魔法使いは恋なんてしない。
 世間の常識の外で人間の心の隙間を操る僕に、他人の心など届くはずもない。僕の心の中にある、誰かのことを思うための場所には、今もエリが座っている。
 恋や愛などと軽い言葉で表されるものではなく、忠誠と真心で結ばれた場所に。
 誰にも邪魔なんかさせない。

「……うん、まあ、そういう態度の方があんたらしいよ。予想通りって感じね。こんなのより」

 ルナはわかったようなことを言って頷き、そしてトレイの上でひしゃげたままのチカのプレゼントを指さして笑った。

「これ、開けてみていい?」
「いいよ」

 つぶれた箱を丁寧に、楽しそうにルナは開けていく。さっきの告白のことも軽く水に流したようにご機嫌だ。
 ひょっとして僕、からかわれたかな?

「あ、かわいい。やだ、マジ可愛いんだけど」

 天使が3つ並んだネックレスだ。
 チェーンを持ち上げて、ルナは「おー」と角度を変えて眺める。

「やっぱりこれ、貰っていい?」
「いいけど、別に」
「ん。じゃ、これはトーマから私へのプレゼントってことにしとこう。手ぶらで帰るのもシャクだしね」 

 ネックレスをくるりと回し、あやとりのように指の間に3人の天使を広げ、ルナは嬉しそうに笑う。
 僕も、とりあえずの愛想笑いで間を繋いだ。

「それじゃ、私そろそろ行くね。みんなにもよろしく言っといて」
「みんな? 卒業式で会うだろ?」
「CMの撮影がその日なんだって。ずらしてもいいって言われたけど、いきなりわがまま言ったら印象悪そうだからOKしちゃった。私の初仕事だよ」
「へえ、大変だね。卒業式くらい出させてもらえばいいのに」
「ううん、いいんだ」

 ルナはバッグを持って立ち上がると、またくるりとネックレスを回し、天使を持ち上げて目を細める。

「…私の卒業式は、もう終わったし」

 じゃあね、と言って振り返ることなく彼女は出て行った。
 僕の食べかけのバーガーはすっかり冷めていて、なんだか疲れているのに食欲はなかった。僕のポテトはすっかり彼女に平らげられてしまっていたけど、逆にありがたいくらいだった。
 背中を伸ばして、太陽の傾いた空を見上げる。店内はいつの間にかお客さんも増えていて、もはやここは僕の居場所じゃないように思えた。
 氷の溶けたドリンクを一口すすり、濡れた指をナプキンで拭いて、そしてわざとらしく、聞こえよがしなため息をこぼして僕は。

「……どうして君が泣いてるの?」

 いつまでも顔を上げないチカに、声をかけた。

 その帰り道でもチカは項垂れたままで、僕の数歩後ろをトボトボついてきていた。
 彼女にしては珍しく相当に落ち込んでいて、今もぐずぐずと鼻をすすっている。僕と色違いのダッフルコートのフードをかぶって、子犬みたいに頼りなげな足取りで。
 冬はもうすぐ春に変わるはずだけど、そんな予感も感じさせない冷たさだった。工場の匂いがする川原を歩いていると、小さな雪の結晶がはらりと落ちてきてすぐ消えた。
 灰色の濃くなっていく空が重みを増していく。やがてどっぷりと夜が降りてくる前に、うちへ帰ってお風呂に入ろう。
 などと考えていたら、ぐん、とコートの背中が引っ張られた。
 チカが、手袋をはめた手で、僕のコートを掴んでいた。

「トーマ君に質問があります」
「え、なに?」
「私の目を見て答えてください」

 真っ赤になったほっぺたと、真っ赤になった目でチカが僕を見る。
 僕は「何だよ?」ともう一度言って、彼女の瞳を見つめ返す。

「――あなたは、竹田君を殺してませんか?」

 久しぶりに聞いた名前と、意外な質問に少し驚いた。
 そして、真剣なチカの顔に、どうしてそんなことを聞くのかと、僕も質問を返した。

「あの日、プールから上がるとき、竹田君は泣いたんです。『死にたくない』って、震えてたんです。それなのにどうして急にあんなことになるのか、ずっと不思議で」
「それで、僕が殺したんじゃないかって?」

 チカはぎゅっと唇を噛むと、コクリと頷く。
 失礼な話だけど、わからなくはない。僕は確かに竹田を疎ましく思っていたし、魔法使いだから自殺に見せかけて殺すことだって全然不可能じゃない。
 でも。

「それは違うよ。僕はあれから彼に会ってなかったし、病院にも行ってない。どうして飛び降りる気になったのかも知らない」

 チカは、僕の顔をじっと見てから、「変なこと言ってすみませんでした」と謝った。

「…僕を信じるの?」
「はい。トーマ君がウソをついてるかどうかは、顔を見ればわかりますから」

 付き合いが長いというのも考えものだ。
 まるで女房みたいなことをいうチカの手を払って、僕は頭を掻く。
 
「でもまあ、僕が殺してやってもよかったと思ってるよ、あんなヤツ」

 竹田が死んでくれてせいせいしているのは確かだ。
 僕自身も殺されそうになっているし、あのまま学校に戻ってこられたら、今度は何をやらかしたかわかったものじゃないし。
 僕がそう言うと、チカはぎゅうっと僕の腕にしがみついてきた。

「……そういう怖いこと、言わないでください」

 彼女の震えがコート越しに伝わり、急に風も冷たさを増す。
 チカはぎゅうぎゅうと僕の腕にしがみつく。

「トーマ君は、そういう人にならないでください!」

 彼女が大きい声を出すのは珍しいことで、僕は驚いて固まってしまい、チカも俯いて何も言わなくなってしまった。

「…ルナは」

 やがて消え入りそうな声で、チカは呟く。

「ルナは、生きてる証拠を残すって言ってました。一人でも生きていくって言いました。私には、そんな生き方はできません」

 チカが僕に『空気』にされてもう5年近くになる。
 今さら、と言ったらさすがに気の毒すぎるかもしれないが、チカがそのことで不満らしいことを言うのも久しぶりだった。
 
「でも、空気の私だから、出来ることもあります」

 そう言ってチカは顔を上げると、じっと僕の顔を見据えた。

「私と一緒に大阪へ行ってくれませんか?」
「大阪? なんで?」
「トーマ君に会って欲しい人がいます」

 僕に?
 誰だよ、そんな場所に。
 意味のわからないこと言ってるチカには、それでもふざけている様子もなく、僕の腕を握る手にも真剣さがこもっている。
 しばしの沈黙のあと、僕は彼女の言おうとしている人物の名前に思い当たり、息を飲んだ。
 それを待っていたように、チカも口を開いた。

「――栗原エリです」

 屋上。
 夕暮れ。
 魔法使い。
 流れ落ちていくカードのようにエリとの記憶が蘇り、頬が熱くなった。
 エリがいる。
 チカが彼女の場所を知っている。
 体が震え出していた。

「…エリは、今、大阪にいるの?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
「どうして…チカが、そんなこと知ってるの?」

 チカは、こくりと喉を動かすと、ゆっくり深呼吸をしてから答えた。

「……私とエリが、友だちだからです」

 意味のわからない言葉が次々とチカの口から出て来て、まるで僕が魔法にかかってしまったみたいに混乱する。
 エリとチカが、友だち。
 そんなことはありえない。バカバカしい戯れ言だ。エリを泣かせていたくせに。イジメていたくせに。
 チカは、コートのポケットからケータイを取り出した。
 僕はその古い機種を初めて見る。チカがケータイを持ってることすら、初めて知った。

「私は、トーマ君に空気にされてから、すぐにエリの転校先を調べて一人で行きました。エリにも私は見えなかったけど、それから何度も彼女の様子を見に行って、どういう生活をしているか観察していました」

 チカは時々、ふらっと一人旅に出ていた。いちいちどこに行ってたかなんて聞いたことないけど、彼女がお土産に持ってくるお菓子は、確かに関西のものが多かった。
 
「エリがあれからどうしていたか、教えます」

 ケータイのメモを読み上げながら、チカが言う。
 エリは転校先でもイジメに遭っていた。父親の虐待も続いていた。
 でも、その父親がある日、酔って階段から落ちて亡くなった。エリは父方の祖父母の元に預けられることになり、再び転校した。
 祖父母は、エリに優しくはなかったが虐待はなくなった。
 そして学校では、エリは自分の体を使ってイジメを回避した。
 クラスのトップに立っていた男子とセックスをして、彼の恋人になることで安全な地位につくことが出来た。
 その後は平穏に小学時代を過ごし、はじめは嫌われていたクラスの女子たちとも、ゆっくり馴染んでいくことが出来た。
 家庭での恐怖が和らぐことでエリの学校での暴力的な振る舞いも収まり、最初の恋人とは別れたあとも、彼女が学校で浮くことはなくなった。
 友だちと遊んだり、恋をしたり、普通の女子として中学時代も過ごし、祖父母ともたまにぶつかりながら家族関係を作っていった。
 今の彼氏は高校生。少し見た目は怖いけど、悪い人ではないそうだ。女子サッカー部のDFとして府大会を予選で敗退。夏に部活を引退してからは、彼氏に貰ったギターの練習を始めてミュージシャンになりたいと思い始めたところ。
 高校は地元の公立高に決めて、商店街の楽器屋でアルバイトすることも決まった。歌は正直上手いとは思えないけど、仲の良い友だちとユニットを組んで、近く路上デビューする計画らしい。
 エリはこっちにいた頃からは想像できないほど、前向きな女の子になったそうだ。
 そして、たくさんの恋をして、きれいになったそうだ。

「私は、中学に上がったエリがお祖母ちゃんのケータイを貰ったときに、アドレスを調べてメールしました」

 チカの古めかしい機種は、僕らが小学生くらいの時のものだ。今ではぶ厚く思える折りたたみが、カタンと危なっかしげな音を立てて開く。

「最初は気味悪がられました。信じてもらえないし、悪口も言われました。でも、エリは着拒とかも知らないし、何度もメールしました。空気の私が他人とコミュニケーションをとる方法はこれしかありませんから。そのうち、彼女も私が鏑木チカだって信じてくれるようになりました」

 僕はチカの話を呆然と聞いている。
 思い出すのは子供のころのエリだけで、彼女の話はそのときのエリとは全然結びつかなかった。

「謝って、謝って、何度も謝りました。電話もしたけど、空気の声は通じてくれませんでした。だから、ずっとメールです。毎日メールしてやりとりしました。そのうち、エリの方からもメールしてくれるようになりました。私やルナのこと、もう怒ってないって言ってくれました」

 チカは、開いた画面を僕に向かって突きつける。
 2日前の日付。送信者名は僕らがよく知っている名前だった。キラキラとした絵文字まで踊っていた。

  チカんとこも今休みでしょ?
  こっち遊びに来ない?
  大阪案内したるで~☆

「……私は、エリに会うことはできません。でも、友だちなんです。エリは私に何でも話してくれます。私は…ウソばっかり書いてますけど」

 吐き気がする。
 あの怒りんぼだったエリが、チカなんかと仲良くしている光景を頭に浮かべて、おかしくなりそうだった。

「どうして?」

 言葉は勝手に口から出る感じで、頭の中では混乱している。
 たくさんの疑問がありすぎて、考える力も足りなくなっている。

「どうして、そんなことするの?」

 震える唇の隙間から漏れる、情けない僕の声。
 耳鳴りがする。

「……最初は、復讐のためでした」

 ケータイを閉じて、チカは顔を上げる。
 いつものチカだ。無表情で、何を考えているのかわからないチカだ。

「トーマ君のしていることをエリに教えて後悔させようか。それとも、エリをもっと不幸にしてトーマ君に見せつけてやろうか。そんなことを私は考えていたんです」

 でも、エリの家での生活を見て、イジメというものを客観的に見て、自分のしてきたことが本当に申し訳なく思えた。
 エリの助けになりたくて、イジメの邪魔をしたりした。父親を後ろから殴ってやったりもした。
 だけどエリは、誰にも助けを求めたりしなかった。自分で戦い、頭を使い、そして耐えてきた。
 エリを見ているうちに自分たちが誤解していることに気づいた。
 魔法使いなんて、エリは信じていない。たまにこぼしてしまう弱音のことなんて、彼女はすぐに忘れてる。
 イジメられっ子のエリは、すごく強い子だった。話せば楽しくて、眩しいくらいポジティブで、そして現実と向き合える子だった。
 父親の遺影の前で、エリは手を合わせて泣いたそうだ。母親とは今も手紙のやりとりをしているそうだ。大阪の気風は彼女に合ったのか、今は友だちも大勢いる。
 彼女が不安定な時期しか知らない僕らは、本当の彼女を知らなかったんだと、チカは言った。

「私も、自分が恥ずかしいことをしたと思ってます。あのときのエリの気持ちも、トーマ君が怒った理由も理解しているつもりです」

 僕の手をチカが握る。
 自分でも驚くくらい、僕は震えていた。

「…だから、私は今のままで構いません。空気のまま、これからもトーマ君のそばにいるつもりです。私にはどんなことでもしてください。でも…他のみんなのことは、もう許してあげて欲しいんです。エリだって、もう誰も憎んだりしていませんから」

 屋上で彼女は泣いてたんだ。
 毎日、毎日、暗くなるまで泣いていた。
 僕は知ってるんだ。
 エリはみんなを憎んでた。
 家を、学校を、世間を、世の中を、彼女は小さな体を震わせて憎んでたんだ。

「エリは、魔法使いなんて信じていませんでした。ルナがそうだったみたいに。深い暗闇に怯えながらも、自分自身で出口を探していたんです。あなたが思っている以上に彼女たちは強い。人は、魔法がなくても救われるんです。魔法なんかよりも、ずっとずっと強いんです」

 ウソだ。
 そんなのはウソだ。
 耳を覆って叫びたい。

「だから、トーマ君も自分自身のことを許してあげてください。あなたはもう自分を責めなくていいんです。エリはあなたにそんなことをして欲しかったわけじゃない。きっとそれは、違うんです」
 
 僕は魔法使いのトーマ。
 エリの忠実な魔法の下僕。
 世界をエリのために作り替えるんだ。
 そう約束をしたんだ。
 だから、ここでエリを待っている。エリのための世界を作って待っているんだ。

「……エリと会うのが、まだ怖いんですか?」

 どうして?
 どうして僕がエリを恐れる必要がある?
 魔法使いはエリの従者だ。エリのための庭師だ。
 恐れるはずがない。恐れたことなんてない。
 怖いはずが……ないじゃないか。

「トーマ君!」

 急に腕を強く振られて、ハッとなる。
 僕の胸を掴み、チカが柔らかい体をぴったり寄せてくる。僕の体は、気持ち悪いくらいに震えていた。

「私が、ずっとあなたを支えます。エリと会って、お話してください。いっぱい、いっぱい、彼女としゃべっててきください。魔法のことは言わなくていいです。今の彼女がどんなことを考え、どんなことしているのか、しっかり見てきてください。そして…もう一度、今の彼女と友だちになってきてください。あなたの中にいるエリじゃなく!」

 立っているのが辛くなっていく。頭の先から血が失せていく。
 チカが僕の体を揺さぶり、しがみついてくる。

「私やルナじゃ、あなたの心に届かないから…ッ! エリじゃないと、トーマ君を助けてあげられないから……だから、行きましょう。私が彼女のところへ案内します。一緒に会いに行きましょう。エリが、きっと、あなたのことを救ってくれます!」

 エリが僕を救う?
 この子は何を言っているんだ。僕がエリを助けるんだ。僕は魔法使い。エリの魔法使いなんだ。
 なのに、頭の後ろの方でチリチリと音が鳴っている。これはひょっとしたら何か導火線のようなものかもしれない。あるいは、巨大な氷の崩れる音。
 それが破滅を呼んでいるみたいで、僕は恐怖を覚える。僕の中で何かが軋んでいる。大きなヒビが僕を追いかけてくる。
 追いつかれれば、きっと僕は終わるんだろう。

「トーマ君、私は――ー」
 
 僕はチカの額に手を伸ばす。
 前髪をかき上げて、彼女のつるりとしたおでこに手のひらを当てる。
 冷えた体が伝える体温。彼女の存在は僕だけが知っている。彼女は空気のチカ。エリをイジメた張本人。
 僕の表情から、チカはまた勝手に何かを読み取ったみたいで、瞳を悲しそうに歪めた。
 でもそれだけだ。
 彼女は空気。振り払えば簡単に消えてしまう空気だ。
 チカが、かつてエリにそうしたように。

「……チカ、“君は空気”だ」

 ぽろりと大きな涙をこぼして、チカは目を閉じる。

「空気は誰にも見えない。誰の記憶にも残らない。君の声も視線も魔法を発して他人の認識を操る…僕の記憶と認識からも」

 涙は次々にこぼれるけど、魔法は素直に受け入れられていく。
 唇が小さく締まり、チカは少し顔を上げて、両腕を垂らした。
 たとえ僕が何をしようと、彼女はいつも抵抗しない。

「世界から君は消える。あらゆる人間の目から消える。君は全身からその魔法を発し続けて、消え続ける。君は空気だ。空気のチカだ。消え続ける。君は消え続ける。世界から。僕の世界から」

 ぼんやりとチカの姿が透きとおっていく。
 僕の視界から、認識から、記憶から鏑木チカという人間が消えていく。
 チカは両目を開けた。
 その表情はいつもと同じ、一切の感情を消した無表情だ。
 彼女はいつも、その顔で“僕の後ろの何か”を見ていた。
 まっすぐに。目を逸らさずに。両手の拳を握って。
 そうして子供の頃からずっと。
 彼女は僕の魔法と一緒にいた。

「―――さよなら、チカ」

 ひゅう、と風が吹いて彼女の影を消した。
 手に触れていた彼女の温度も、彼女が最後に残した視線も消えた。
 僕はそのままかざしたままの手の甲を見つめていた。隙間から見える工場の煙突が吐き出す煙も北風に凍えていた。
 寒さでかじかんでいく指を一本ずつ丸める。そしてまた開く。
 意味もなく数回その動作を繰り返して、僕は愕然とした。

 ここにいる理由がわからない。

 こんなところで何をやってるんだろう?
 さっきルナと二人でハンバーガーを食べて、彼女が芸能界に入るという話を聞いた。そしてその帰りに、誰もいない川原で一人、僕はどうして突っ立ってんだ。
 夕暮れは駆け足で夜を連れて来ようとしている。背中を煽る北風にぶるぶると震えた。こんなところでバカみたいに風邪を引くのを待ってるつもりか?

「うぅ、さむっ」

 早く家に帰って、お風呂に入ろう。

 卒業式は、退屈だ。
 すすり泣く生徒たちの中で、僕は3年間の思い出を振り返る。
 魔法が支配した日のこと。
 王族と貴族だけのクラスを作ったこと。
 先に卒業してしまった先輩たち。今もセックスフレンドとして重宝している数名の先輩たちのこと。
 スズカ先生の個人レッスンは僕の性技を上達させてくれた。ルナとのセックスも勉強になった。1年生にはまだまだ教えてやりたいこともいっぱいあった。
 下着で泳がせた水泳の授業は楽しかった。むしろ授業後のシャワー室の方が盛り上がってしまって次の授業も潰してしまった。
 文化祭でやったお化け屋敷では、教室をお化けと魔法で装飾して、きれいな父兄や他校の生徒をお化け役の僕が食べちゃったっけ。
 体育祭や合唱発表。数々の学校行事は父兄や関係者のみんなも魔法で支配するのに役立った。王族の子たちの家を泊まり歩いて、美人なお母さんやお姉さん、妹たちと楽しむ家族エッチもほのぼの楽しかった。
 修学旅行ではお風呂場でおしっこさせたっけ。夜中に部屋でやった枕投げからのパンティ投げ大会も面白かった。こっそり布団の中で打ち明け合うオナニーネタ告白もお約束だった。モエミがまさかあんなネタでオナニーしてたとはね。あぁ、それにバスの中でのアナル確認も笑えたな。あれからしばらくアナルの見せっこを学校のブームにしたっけ。
 真面目に受けた授業風景。それをサボってした女の子たちとのエッチ。スカートめくりや強制オナニーも好きだったけど、普通に過ごした休み時間のくだらない会話や放課後の寄り道が、なぜか鮮明な想い出として蘇る。
 魔法使いとしての僕と、中学生としての僕。それらは決して一つにはならないけど、どちらも同じ重さの記憶として僕の中に残っている。
 でも、振り返ると物足りなさも感じる。
 僕が欲しかったのはセックスや学校生活の充実じゃない。僕がエリの魔法使いだという証明だ。たった一人で興じる魔法の世界には、いつも彼女の笑顔が足りなかったんだ。
 心に感じる物足りなさの正体は、きっとそれなんだろう。
 僕は何をしているときでも、ひとりぼっちだった。

「城戸ジュリさん」
「はい…ぐすっ」

 次々に卒業証書が手渡される中、ジュリが呼ばれて校長の前に立つ。
 ぷりっ。
 御辞儀をした拍子に彼女の白いお尻がこっちに突き出され、割れ目の向こうがちょっぴり見えた。

「琴原モエミさん」
「はぃ…うぅ…」

 ぷりっ。
 とりあえず、女子は全員、下半身裸で式典に出席させている。
 教師も父兄ももちろん、女性はとにかく全員だ。
 卒業式は、退屈だから。

 式が終わったあとは、パーティだ。
 場所はホテルのスイートルームを確保している。もちろん料金は魔法払いだ。
 参加者は僕と王族の子たちとスズカ先生。みんなで1泊して朝まで騒ぐ予定でいる。
 会場では先に1、2年生の子たちが準備をしてくれているはずだけど、下級生たちにもサプライズのお祝い返しということで、制服のリボンをプレゼントする予定になっていた。
 もちろん僕じゃなくて他の誰かの発案なんだけど、リボンの裏には僕の名前が刺繍されている。なんだか恥ずかしいけど、そういうのが嬉しいんだってみんながいうので了解した。
 そんなわけで会場へ向かう途中で店に寄る。みんながレジで受け取りを済ませる間、メンズの靴下を眺めていたら、そそっとクミが近づいてきた。

「トーマくん、ちょっといい?」
「ん、いいけど?」
「にゃ、あの、ちょっとその、お願いがあるというか…」

 もじもじと恥ずかしそうにクミは俯き、言葉を濁す。
 いつも溌剌とした彼女らしくない。長いツインテールが頼りなげにふらふらしてた。

「あ、あの、あたし…ほら、まだじゃない?」
「何が?」
「しょ…処女なの…」
「え?」
「あたし、処女、だから…その、今日は卒業式だし、ト、トーマくんに初めての人になってもらえたらいいなぁ…なんて…」
「あぁ、そういうこと?」

 クミは今も処女のままアナルセックスだけしている。
 1年生のときにしてから、彼女も後ろの穴が気に入ってるし、そういうキャラでこれまで続けてきた。
 特に処女にこだわりがあるわけじゃないけど、中にはそういう子もいるっていうのが僕のハーレムの面白いところだと思っている。
 ていうか、そこがクミの一番良いところだ。立派なチャームポイントだと思う。処女のアナル好きって。

「クミはそのままでいいだろ。処女は大事にしなよ」

 僕がそういうと、クミはちょっと驚いた顔をした。
 でもすぐに、にへらっと笑った。

「だ、だーよねー! 大事だよねー、処女っちは!」
「うん。クミはその方がいいよ」
「おっと、あたしも荷物持ちしなきゃ。失敬! ドヒューン!」

 元気よくクミは駆けだしていく。
 そしてそのままジュリに体当たりしてた。

「どーん!」
「いってぇ!? なにすんのよ、バカクミ! ほんとガキなんだから…」
「あたしはガキじゃない! ガキいうな、バカ! バカバカバカ!」
「いったぁ、もう、なんなのよ…何かあったの?」
「うるさい…バカぁ…」

 あいかわらず、仲が良いんだか悪いんだか。というより、案外面倒見の良いジュリに、なついている女子が多いのかもしれない。
 などとウロウロしながらも買い物を無事終えて、僕らは会場のホテルに着く。

「卒業おめでとうございます!」
 
 クラッカーの音と同時に、華やかな女の子たちに歓迎される。
 特大のケーキ。それにシャンパン。ホテルの豪勢な料理と、安っぽいピザやペットボトルのジュースにスナック菓子。和洋も高級もB級もごちゃまぜのテーブルの周りにきれいな花が飾られ、可愛く書かれた「祝・卒業」の横断幕まで掲げられていた。
 1、2年生の子たちが頑張って用意してくれたのだろう。
 南国リゾートをイメージして作られたスイートルームは、ゆったりとした雰囲気と広々としたスペースがあり、ベランダには露天風呂もある。
 朝まで騒ぐ準備は出来ていた。これからが本番のパーティだ。

「トーマ先輩。卒業生を代表して花束を受け取ってください」

 みんなの拍手に迎えられ、少し照れくさい気持ちになる。
 花束を持ってきてくれたのは、1年生の月浦ミナモだった。

「卒業おめでとうございます……トーマ先輩」

 頬に届くまで伸びた艶のある髪を揺らす、美しい女の子。
 彼女が、3年生を除く王族の中では最高位の子だった。
 入学して間もないときはボーイッシュ(というより男勝り)なだけだった彼女も、この1年の間にメキメキと女の子らしさを身につけ、驚くような成長ぶりを見せてくれた。
 当時の写真と比べても、同じ子だなんて分かる人はいないだろう。おしとやかな微笑みとまっすぐな黒髪はお人形さんのようにきれいだ。それにこの女性らしい立ち振る舞いと色気は、中1とは思えないほどだ。
 まさか、王族最下位から1年でここまで成長してくれるとは。最初に王族の順位を発表したときも、グズグズ泣いてばかりだった彼女はすぐに脱落するだろうと思っていた。だがじつはあのとき、彼女は不甲斐ない自分自身が許せず、誰よりも僕に相応しい女になろうと秘かな闘志を燃やしていたそうだ。
 彼女はそれからひたむきに女性らしさと外見を磨き、セックスを学び、1年生はおろか2年、3年もごぼう抜きにする美しさといやらしさを手に入れた。
 さすが少林寺拳法で全国2位になるほどの根性の持ち主だ。僕の前ではそんなそぶりも見せないが、今でも影では必死の努力があるらしい。
 僕も、彼女とのエッチは気に入っている。卒業してからも抱いてもいいと思える子だった。
 花束を渡すとき、そっと彼女の指が僕の手に絡んだ。

「寂しくなります、トーマ先輩…ミナモも、必ず2年後には先輩を追いかけていきますから」

 今の1、2年生の王族・貴族の間では「勉強」がブームだ。
 僕が有名私立高に進学を決めたせいで、同じ高校に行くための学力アップが彼女たちの課題らしい。多くが外見を磨くことだけに専念してきた子たちばかりなので、僕がいない間はひたすら塾通いすることになるそうだ。

「また先輩に王族に選んでもらえるよう、頑張ります」

 僕は別に、高校に行ったら階級制度を作る気はないんだけど。
 でもまあ、ミナモがいつでも抱けるようになるのは、少し楽しみかもしれない。

「私も! トーマ先輩と同じ高校へ行きます!」
「私も-! めっちゃ勉強してます、今!」
「私たちは来年行きます! よろしくお願いします!」

 ミナモと同じ1年生のシイナとコノハが宣言し、それに続いて2年生の子たちも手を挙げる。

「あーあ、私らも勉強しとけばよかった」
「モエミはいいよねー。トーマ君とずっと一緒で」
「う、うん…ごめんね?」
「ちぇー、ま、しょっちゅう会いに行くつもりだからいいけど」
「あなたたちはまだいいじゃない…私なんて、学校を離れるわけにいかないし…」
 
 ジュリやクミ、マナホ、チナホたちとはこれでお別れだ。スズカ先生とも、もちろんだ。
 王族の子では、モエミだけが同じ高校に進学する。なんだかずいぶん、すっきりしてしまう感じだ。
 僕の3年間の魔法中学生活が今日で終わり、春からは新しい場所での学校生活が始まる。
 当然、魔法支配はするけど、無意味な階級制度はもうやめるつもりだ。セックスに使える女の子だけ囲って、できるだけ平凡な学生として過ごす予定だった。
 僕もいいかげん大人にならないと。

「先輩たち、乾杯しましょう」

 2年生の子たちが全員にグラスを配る。
 スズカ先生もいるけど、この場では「アルコールじゃない」という暗示を魔法でかけておいた。
 シャンパンの泡がとてもきれいだ。

「卒業おめでとー!」

 軽やかな音を立てるグラス。抱き合う女の子たち。僕にキスを求める子たちにも応えて、いよいよ料理に手をつける。

「うめー!」

 さっきは様子のおかしかったクミも、お腹に食べ物が入るともうご機嫌でホテルの高級料理に舌鼓を打つ。
 あちこちで笑い声が響き、食事が進んだ。誰かが持ち込んだテレビゲームで盛り上がり、卒業式を思い出して感極まって泣き出すモエミをからかったり、さっそく露天風呂に飛び込む子がいたり、僕も珍しくよく笑ってたと思う。
 この雰囲気と、アルコールのせいだ。スズカ先生も頬を赤くして「美味しいサイダーね」とグラスを空けていた。

 ぴとっ。

 股の間で暖かく柔らかい感触がした。大きく低いテーブルの周りに、ソファを背もたれにして僕らは座っている。その下で、誰かが僕の股間に触れてきた。
 覗き込むと、そこにはシイナとコノハの1年生コンビが、小さな頭を並べていた。

「しーっ」

 イタズラっぽく笑う二人。そして僕のファスナーを下ろすと、だらりと垂れているペニスに、揃ってキスをした。

「んっ…ちゅ…」
「れろ…くふふっ…」

 ぺちゃぺちゃと、双子の仔猫のように可愛らしい女の子たちが僕のに舌を絡ませる。甘い愛撫にむくむくと僕のが膨れあがっていく。シイナとコノハは、目をうっとりと蕩けさせ、さらにねっとりと舌を蠢かせる。
 彼女たちは発情していた。これもきっと、アルコールのせいだ。

「あー! あんたたち、何してんだよ!」
「きゃーっ!」

 ジュリがテーブルの下で行われているイタズラに気づき、声を上げる。シイナとコノハは、ケラケラ笑いながら僕のペニスにしがみつく。

「そういうのは夜になってからって話だったじゃん。トーマ君、ずるい!」
「なになに-! 1年、勝手に始めてんじゃねーぞ!」
「そーだ、そーだ! トーマ先輩、私たちもー!」

 騒ぎ始める女の子たちを「わかったわかった」となだめて、少し早いけど卒業パーティを乱交パーティに変更する。
 瞳を輝かせる女の子たちを並べて、僕は指示を出していく。

「それじゃ、まずは1年生から」
「やったー!」
「…ずるい…トーマ先輩って、1年をひいきしてるよね…」

 2年生からこっそりと愚痴も聞こえてきた。
 我が校もご多分に漏れず、「3年生と1年生は仲が良いけど2年生は浮いている」という『サンドウィッチの法則』が存在している。
 どこの中学でも多かれ少なかれそんな感じだという。魔法使いの僕ですら、2年生のときはそういうの実感していた。
 なんなんだろうね、これ。確かに2年生よりも1年生の方が可愛く感じる。1年しか違わないのに。まあ、別にどうでもいいんだけど。

「とにかく、1年生の3人はベランダに並んで」
「はー!」

 シイナ、ミナモ、コノハが整列する。
 そして僕は次の指示を出す。

「スカートめくって」
「はーい」

 声を揃えた3人が、ぺろんと自分でスカートを持ち上げた。
 2年生、3年生の女子が歓声を上げる。

「出た、1年ふんどし!」
「可愛いー」

 今年の1年生の公式下着は「ふんどし」だ。
 彼女たちが履いているのはその中の「六尺」と呼ばれるもので、お尻にきつく締まった布が食い込むタイプだ。
 公式といっても絶対着用を義務にしたわけじゃないし、彼女たちの幼く形の良い尻を引き立たせるため、という名目と思いつきで命令したことだ。だが、柔軟で好奇心旺盛な彼女たちは喜んでふんどしを着こなし、すぐに1年生女子全員が毎日着用するようになっていた。
 越中とか六尺とか、僕も詳しくないがいろいろ種類があるらしい。中でも彼女たちは「前だれ」のあるタイプを好んで着用し、それをスカートの下からチョイ見せするのがオシャレということになっているそうだ。
 今年の1年生は、たいていの子がチョイ見せふんどしをヒラヒラさせて廊下を歩いている。しかも、一部の裁縫の上手い子たちが手ぬぐいなどからふんどしを自作するテクニックを生み出し、オリジナルふんどしまでもが流通するようになっていた。
 今日の彼女たちのふんどしは、シイナがピンクと白のチェック。コノハは紫色の生地に48手が描かれたエロふんどし。ミナモは、青に満月とウサギだった。

「じつは私も今日はふんどしー。シイナが作ってくれたんだよね」
「いいなー」
「私もふんどしですー。しかも、今日は第48代横綱大鵬の勝負ふんどしです!」
「やだ、かっこいい!」

 美尻効果があるのかどうかは僕も知らないが、2年生や3年生にもたまにふんどしを履く子も現れた。ジュリがシイナに作ってもらったというふんどしは、「はろぅきてぃ」と書かれたキャラ物だった。
 慣れてみると意外と気持ちの良いものらしい。じつは僕もちょっと興味がある。
 だが、ここまで女の子仕様に進化してしまった文化に、今さら手を出すのも男子として憚れるものがあった。内心で「いいなぁ」と思いつつ、ふんどしで盛り上がる女子たちを横目で眺めるだけなのだった。

「まあ、それはともかく、3人ともこっちにお尻を向けて」
「はい!」

 ぷりん。
 お尻をゴチンとくっつけて、3人揃ってとびきりの笑顔を見せる。

「どーぞ先輩、召し上がれ!」

 ふんどしで締め上げた、小さく可愛い桃3つ。
 制服にふんどしというシュールなファッションは、何度抱いても楽しい気持ちになれた。
 そして今年の1年生は本当に可愛かった。この3人は、たまに呼び出して可愛がってあげてもいいくらい。
 まずはシイナのふんどしをずらして、お尻の穴と、アソコをあらわにする。さっきのフェラですでに感じていたらしく、可愛いふんどしは濡れていた。

「入れるよ」
「はい…んんんんっ!」

 ズブズブと、シイナの中に入っていく。背の低い彼女を抱くにはこの体勢は苦しいけど、高級ホテルの窓に女の顔を押しつけて立ちバックなんて、まるで特命係長みたいでウケる。

「にゃあっ、あっ、いいっ。先輩! 先輩! 好き、先輩! 大好きですぅ! もっと、シイナを可愛がって、あぁ! あぁん!」

 お団子を二つ作った髪の匂いを嗅ぎながら、ぐいぐいと腰を押しつける。相変わらずきついアソコだ。これが1年生の良いところ。幼さが逆にセックスの快感を高めていく。
 彼女たちのアソコは、道具として優秀だ。「ややきつめ」が僕の好きなサイズだ。

「好き! 好きぃ!」

 鼻にかかったアニメ声で、くいくい小さなお尻を振る。
 屈託のない幼い顔が淫らになって、オンナの顔を見せる。

「大好きだよぉッ…お兄ちゃん! トーマお兄ちゃあん!」

 無敵と呼ばれた妹属性を武器にして、シイナがますます甘えた声を出す。
 リアルで妹のいる僕にそんな趣味はないのだが、それでも彼女の可愛い声で「お兄ちゃん」と呼ばれると、いけないことをしているようなスリルと興奮を感じた。
 シイナの膝が震えだし、体が安定しなくなる。そろそろ彼女はイきそうだ。僕は速度を速めて一気に彼女を持っていく。

「あっ、あっ、ダメ、もうイきます! イきます、もうイきますぅ!」

 ぷしゅっと、アソコから多めの液を吹き出し、シイナは達する。
 窓にしなだれかかる彼女を置いて、僕は次にコノハの中に入っていた。

「ああぁ~ッ、せ、先輩! あたし…ッ! あぁぁぁッ!」

 イきやすいコノハは、入れただけで達してしまう。
 もちろん僕はこれくらいで容赦などするはずなく、彼女を四つんばいにさせてさらに突き立てていく。

「イクぅ! イク、イクぅ! 先輩、ダメぇ! イきすぎて、あたし、狂う~ッ!」

 犬のような格好でコノハはよがりまくり、あられもない声をみんなに聞かせる。
 ルナ2世と呼ばれた彼女は大人っぽい容姿もさることながら、エッチのときの乱れっぷりも相当だった。
 こういう子も嫌いじゃない。僕はもっと彼女を泣かせたくて、さらに激しく腰を動かす。

「先輩、あたしのオマンコ…もう、壊れちゃってますぅ! 先輩の、オチンチンがないと、ダメなオマンコなんです! あたしを、高校に連れてってください! 先輩の、机の下で、ずっとオチンチン、入れててください! あぁ! あぁ! やだぁ…飛んじゃう! せっかく、勉強したのに、全部飛んじゃう! バカになっちゃう~ッ!」

 本当に、今年の1年生は良作だ。
 コノハを大きな絶頂まで導いてから、僕はいよいよミナモに向かう。
 ミナモは、しゅるりとふんどしを解くと、自分からお尻を向けて両手を窓についた。

「来てください…ご主人様」

 彼女は、その場の雰囲気に合わせて、僕の呼び名をコロコロ変える。
 お兄様と呼ぶときもあれば、あなたと呼ぶときもある。「先輩のセックスが少しでも気持ちよくなるなら」と、娼婦のように僕を誘惑するときもあれば、可憐な人形のように僕の乱暴に身を委ねるときもあった。
 ミナモはよく出来た子だ。この学校の女子は僕のセックスのためにいる、ということをここまで理解している子もいない。
 努力家で、真面目でスケベな優等生だった。

「んんんんんッ! ご、ご主人様ぁ」

 鼻にかかった声を出して、僕のを奥まで受け入れる。
 奥まで届いたところで、きゅうぅぅと締め付けてくる。
 小さな体で、僕の全てを抱きとめるように。

「はっ、あっ、あっ、あっ」

 甘い吐息が窓を曇らせる。僕の腰の高さに合わせてつま先立ちしたお尻が、きゅっとえくぼを作る。
 ふんどし効果なのかは知らないけど、丸くて形の良いお尻。「ご主人様」と切ない声を響かせる濡れた瞳。
 美しい横顔が快楽に蕩けて乱れていく。それが僕の征服欲をそそった。

「ご、ご主人様…そろそろ、始めてもいいですか?」
「あぁ」
「んっ!」
「くっ」

 きつい締め付けに、思わず歯の間から声が漏れた。

「んっ! んんっ!」

 ミナモの得意技。
 僕のリズムを覚えて、腰を突き入れたタイミングに合わせ、アソコを引き込むようにきつく締め付ける。少林寺拳法で鍛えた体幹が膣奥の圧力までコントロールして、深い快楽を生み出した。
 息の合った動きでそれをやられると、まるでミナモの中に体ごと飲み込まれるみたいで、すごく気持ちいい。
 彼女はこれを発見した日、「相手の間合いを自分のものにするのがセックスの極意ですね」と目を輝かせて僕に言った。まるで格闘技みたいに性技を探求する彼女に、僕も思わず笑ってしまったっけ。

「…いい子だね、ミナモは」

 彼女のあごを撫で、頬に唇をあてて囁く。
 そのまま胸もさすってやると、ミナモは、ぽぅっと頬を染め、「先輩に喜んで欲しいだけです」と恥ずかしそうに微笑んだ。

「出すぞ、ミナモ。シイナもコノハもしゃがんで。君たちの顔にかける」
「はい!」

 1年生3人が顔を並べる。僕はそこに向かってありったけの精液をぶっかける。
 目を閉じ、舌を伸ばす美少女たち。白濁した液体が彼女たちの顔を汚し、垂れていく。

「ありがとうございました、先輩…たくさん出してもらえて嬉しいです」

 ミナモは、拳と手のひらを合わせてペチンと鳴らす。

「シイナは先輩の精液が大好きです!」
「あたしも、好きでーす!」

 シイナとコノハも同じポーズをとる。1年生のトリオのお約束だ。『生まれも育ちも違うけど、愛する人は永遠に一緒』と桃の木の下で誓ったそうだ。
 2年生には気の毒だけど、ここまでキャラを立てられてしまっては、この1年生トリオにそうそう勝てはしないだろう。僕がひいきにしてしまうのも仕方ない。

「よし、じゃ次は2年生」
「やったぁ!」

 それでも僕は公平な魔法使いだ。
 4名の2年生王族をカーペットの上に転がして犯した。
 3年生の子も抱いた。ジュリはソファの上で四つんばいにして犯した。マナホとチナホはいつものように双子合わせにして交互に抱いた。モエミはゲームコントローラのストラップで手首を縛って犯し、最後にクミのアナルを犯した。
 そして、スズカ先生はベッドで抱いた。

「あぁ! トーマ君! 私の可愛いトーマ君!」

 僕の頭に両腕を絡め、おっぱいを押し付け、両足も背中に巻き付け、先生は激しく腰を動かした。

「先生を捨てないで! あなたを愛しているの! あぁ! あなたのオンナでいたいのぉ!」

 大人の匂いを強く発して、そして子供のように泣くじゃくって、先生はセックスを貪った。
 春から高校に進学する僕の時間は、彼女からは遠く離れていく。
 悪いけど、彼女にこだわる理由は僕にはなかった。中学時代は今日で終わる。この美貌と体は少し惜しいけど、女教師を抱く楽しみは、同じ学校であるからこそだ。
 乱暴に胸を握ると、スズカ先生は低い声で叫んだ。ますますヒートアップして腰を揺する彼女の耳元に、僕は口を寄せる。

「僕は魔法使いのトーマ。あなたの時間は止まる」
「あっ!?」

 一声叫んで、そのままスズカ先生は固まった。
 ぐぢゅ、ぐぢゅ、腰を揺するとスープ鍋をかき混ぜるような音がする。でも先生は、口を開けて固まったままだ。
 僕の魔法が止めた時間の中で。

「先生は、明後日からは普通の教師になる。僕に抱かれたことを忘れて、教師としての仕事だけを覚えている」

 他の教師や生徒にも同じ魔法をかけてある。今までの卒業生にも、王族以外の子は同じ魔法を使っていた。
 僕の中学時代は終わった。あとは今後も付き合わせたい王族の子だけ残して、魔法遊びは忘れさせる。
 多少の記憶違いは生じるだろうけど、そのときも疑問をすぐに忘れるように魔法をかけておく。僕はもう卒業する。この宴で最後だ。
 
「僕も、あなたの授業は好きでしたよ」

 ぐぢゅ、ぐぢゅ、大人のアソコが深い音を立てる。大きなお尻を掴んで、ますます激しく揺する。先生のお尻の肉は、指からあふれるほど大きい。

「でも、ここからは卒業させていただきます」

 じゅぶっ、じゅぶっ、思い出深いアソコが、だらしなく愛液を吹き出す。
 この胸も、お尻も、アソコも、僕に大人の女を教えてくれた。

「このパーティが終わって、次の朝が来たとき、魔法使いのトーマはただの生徒になる。魔法の夜は終わりです、先生。これが最後の夜です。あなたと僕が愛し合ってきた事実は夢の泡になる。あなたはただの教師に戻る」

 この体からも卒業だ。抱けば尊し我が師の恩だが、いずれ衰えていく彼女の肉体を見る前にお別れしておくべきなんだ。
 大きな胸を鷲づかみにする。
 ぐぢゅぐぢゅのアソコをかき回す。
 まだまだ楽しめる余地は大いにある彼女だけど。

「僕を愛していたなんてウソなんだ。それも明後日の朝、消える。さあ、あなたの時間は再び動き出す。残りの魔法を体で数えて…目を開けろ」

 ぴくっと、スズカ先生の頬が動いた。
 そして目を剥いて叫んだ。

「あぁ~ッ! 気持ちいい! 好きよ、トーマ君、大好き! 私をこのままでいさせて! 何でもするから、先生を愛してぇ! 穴奴隷でも飯炊き女でも何でもするから、あなたのペットにしてぇ!」

 指が食い込むほどおっぱいを握りしめると、痛みに顔を歪めながら、先生は「もっと潰して」と言った。
 僕が舌を伸ばして唾を垂らすと、スズカ先生は大きく口を開けて受け取り、ゴクンと飲みこんで、「もっとちょうだい」と甘えた声を出した。

 その後、みんなで露天風呂に入って、まったりする。
 風呂のふちに座って足だけ入れる僕の間に、マナホとチナホの姉妹が顔を埋め、いつものシンクロフェラでしゃぶってくれた。

「んっ、ンっ…ちゅう、ちゅっ」
「れろ、れろぉ…んっ、れろ」

 根本や玉、肛門の近くを重点に責める彼女たちの濡れた髪を指ですくう。むずむずするような快感が、気持ちいい。
 二人は同じ女子校に進学が決まっていた。マナホはともかく、チナホは僕やモエミよりも成績がよく、僕らの進学先も余裕で合格できたんだけど、マナホと同じところを選んだ。
 そのことは、マナホも自分に気を使わせたと思っているらしく、しきりに気にしていた。

「でも、ちゅっ、私たちの高校も、んっ、トーマ君の学校と近いし」
「そうだけどさ、れろっ」

 舌を絡ませながらも上手に会話を続ける二人。
 同じ形をしたおっぱいを揉みながら、僕も聞く。

「あそこはバスケ有名だしね。マナホはそっちが良かったんだろ?」
「でも、ちゅっ、チナホまで同じとこ選ぶなんて、んっ、私は、てっきりトーマ君と同じとこ…」
「だから、んっ、いいの。それは、ちゅっ、私の作戦だから」
「作戦?」
「ふふっ、そう。だって、んっ、女子校ですもの。きっと、可愛い女の子が、いっぱい、います」

 確かに、可愛い子が多いことでも有名だ。
 僕の進学先ともよく合コンしたりするとか。

「トーマ君を、こっちに引っ張ってくればいいんです。可愛い子たち、んっ、いっぱい集めて」
「な、なるほど~。チナホ、やはり天才…」

 なるほど。女子校に男が一人か。
 それは確かに、面白いかも。

「あぁ、入り浸っちゃうかもね」
「ふふっ、入り浸ってください」
「約束だよ!」

 仲良くしゃぶる双子の頭を撫でてやる。高校生活も楽しくなりそうだ。
 などとスケベな妄想に浸りながら他の女の子の方を見ると、ジュリたちが固まってコソコソ相談している。
 何かと思ったら、急にジュリが手を挙げて叫んだ。大きなおっぱいがプルンと震える。

「はい、それじゃ今から『ハメたのだ~れだ?』ゲームを開始します! 拍手~!」
「イエー!」

 よくわからないこと言って盛り上がる女の子たち。
 ジュリは司会者ぶった仕切りを発揮し、女子を全員集めて勝手にルールを説明しだす。

「ルールは超簡単でーす。トーマ君に目隠しして座ってもらって、女の子がその逞しい勃起チンポにハメハメします。10秒以内に誰がハマっているのか当てたらトーマ君の勝ち、わからなかったら女子チームの勝ちですオッケーですか?」
「オッケーでーす!」

 くだらなさすぎる…。
 でもすっかり盛り上がった女の子たちが、勝手に順番決めとか言って騒ぎ出す。雰囲気に水を差すのも悪いので、言われるがままにタオルで目隠しされた。
 ちょっとマヌケな絵だと思うんだけど。

「それじゃ、一人目の子、いきまーす」

 誰かが僕の上に跨る。息を飲む音がする。
 僕の首に女の子の腕が回り、そしてずぶりと、僕のが包み込まれる。
 かすかに甘い息が僕の顔にかかった。

「さあさあ、わかるかなー?」

 知ってる感触だけど、誰かはわからない。おそらく3年生だと思う。
 ジュリか、マナホ・チナホか、モエミか。

「…揺すってもいい?」
「いいよー。残り5秒!」

 今さらだけど、10秒って短すぎるよな。
 でも、こうすればすぐに答えは分かる。僕のセックスは女の子たちに鋭すぎるくらいの快楽を与える。

「あっ!? あぁ! やん!」

 声を我慢できる子なんていない。
 答えはすぐに分かった。

「モエミだ」
「あ~! モエミ、もっとがんばれよー!」
「だ、だってぇ!」
「むむー。じゃ、次いってみよう!」

 しばらくして、次の子が僕に跨る。
 きつい感触がして、そしてすぐに可愛い声が上がった。

「や…やぁぁん!」
「シイナ」
「ちょ、シイナ、バカかよ!」
「だって、だって、トーマ先輩の気持ちいいんだもーん!」

 くだらないけど、ちょっと面白いなこれ。
 次の女の子が跨ったとき、僕はちょっと楽しみな気持ちでペニスを身構えた。
 ずっ。
 すごくきつい感触が先っぽに当たる。
 ずっ、ずっ。

「……ッ!」

 しゃっくりみたいな声が一瞬聞こえた。でも、誰かはわからない。
 すごくきつい。思わず僕も声を上げてしまいそうなくらい。
 ぶち、ぶち。
 まるで処女みたいな挿入感。ぐっと奥に届いたとき、またしゃっくりみたいな、悲鳴みたいな細い息を彼女は吐いた。
 誰だろう。僕はこの感触を知らない。
 腰を揺すってみる。

「ッ! …ッ!」

 何度も揺すってみる。

「ッッッ!? ッッ!」

 女の子は声を出さない。というより、必死に悲鳴を我慢しているみたいに思える。
 誰だ? さっき全員抱いたばかりなのに、まるで検討つかない。

「……残り5秒」

 ジュリが、静かに時間を告げる。まるで彼女まで緊張しているような声だ。
 僕は急かすように腰を動かす。僕の上にいる子は、ギリ、と歯を鳴らすだけで声を漏らさない。
 体の軽い子だ。でも、ミナモとも違う。
 本当に誰なんだ?

「トーマ君、時間切れ-!」

 ジュリの宣言により、僕の負けが確定する。
 上の子が安堵の息を漏らす。じわりと、僕の股間に何かが流れる感触がした。

「…タオル取っていいよ。誰を抱いたか、見てあげて」

 僕は言われたとおりにタオルを取って、上に乗っている子を見る。
 クミが、弱々しい笑顔でVサインを出していた。

「へへ…可愛い子かと思った? 残念、クミちゃんでした」

 僕らの繋がっている場所からは、赤い血が流れていた。
 処女の証は破れることで存在証明を果たす。ボーカロイドの真似したツインテールが青ざめた顔に張り付き、体も小刻みに震えていた。

「怒らないでね、トーマ君? 私がやろうって言ったの。その、ちょっとしたサプライズでね!」

 なるほど。
 これは確かにタイトルどおりの『ハメたのだ~れだ?』だ。ハメられたのは僕一人ってことか。
 まあ、やられちゃったよ。
 負けは認める。

「罰ゲームは?」
「…え?」
「僕の負けだから、何か罰があるんだろ?」

 ジュリとクミが顔を見合わせる。
 そして、にんまりと二人して笑う。

「もちろん、罰としていっぱい愛してもらいま~す!」
「了解」

 僕はクミをそのまま押し倒し、ぐいぐいと腰を動かした。

「あぅ!? うっ、うっ、うっ!」

 とてもきつくて動きずらい。しかも彼女はまだ痛がって苦しそうだ。
 だから、僕は愛しやすいように魔法をかえてやる。
 
「僕は魔法使いのトーマ。全員聞いて」

 ぴたり。
 時間が凍ったように止まる。
 僕は魔法の指を鳴らす。パチン。

「今、僕はこの部屋にガスを撒いた。フェロモンガスだ。吸えば愛でいっぱいになる。目が合えば愛が生まれる。体は愛の快楽で満たされる。とても気持ちいい。他人に触れるだけでも気持ちいい。愛し合おう。…ケダモノみたいに」

 パチン。
 再び指を鳴らす。
 時間は溶けて動き出す。

「…トーマくぅん!」

 クミが叫んで、僕にしがみついてくる。「気持ちいい、気持ちいい」と何度も叫んで腰を振っている。

「あぁ! やだ、なにこの気持ち! モエミ、大好き!」
「ジュリちゃん、私も! もっと強く抱いてぇ!」
「スズカ先生、そこ、いい! もっと撫でてぇ!」
「なに、これ…女の子同士なのに、こんなに気持ちいいなんて! 吸って! 先生のおっぱい、もっとチュウチュウして!」
「トーマ君! 私も抱いてぇ!」
「トーマ先輩、私もぉ!」

 女の子たちが僕に抱きつき、勝手に絶頂に達していく。
 シイナがミナモにアソコを舐められて潮を吹き、コノハは2年生とディープキスして痙攣している。
 モエミとジュリはシックスナインで共にイき、マナホとチナホはそれぞれ別の後輩のアソコを舐め、そして違う後輩に自分たちのを舐めさせていた。
 ぐちゃぐちゃに入り乱れて愛し合う女の子たち。それでも自然と一つの場所に集まり、すでに失神してしまったクミの代わりに自分たちの尻を差し出してねだる。
 誰を抱いてるのかもわからない乱交。僕に触れられただけで女の子はエクスタシーに震え、そしてそれを他の子へと伝播していった。
 魔法のガスに満ちた世界で逃げ場所はない。女の子たちはアソコから潮を、あるいはおしっこを出して絶頂を続ける。

「死ぬ! 死んじゃう! 死んじゃうぅぅぅ!」

 僕にお尻を犯されながらジュリは叫ぶ。

「むぐう…もむぅ…ふにゅにゅぅ…」

 イラマチオされて達したマナホが、目の玉をひっくり返して、だらしないよだれを垂らす。

「あは…あはぁ…」

 崩れきった笑顔を浮かべて失神したスズカ先生の中を、ぐずぐずと往復する。

「せんぱい…せん…ぱぁい…」

 いつもの献身的なセックスを忘れたミナモが、壊れた人形みたいな声を出す。

「あぁ…はぁ…」
「ダメ…ほんと、死ぬ…」
「トーマ君…もっと…あたしの処女、もっと…」
「トーマくぅん…」

 積み上げられた女体の中で、僕は入れる場所を探して手当たり次第に突っ込んでいく。
 僕もなんだかガスにやられたみたいだ。彼女たちの快感が伝播して、くらくらしてくる。
 飲み続けているアルコール。
 あふれる女の子とアンモニアの匂い。
 セックスの声。
 セックスの肌。
 セックスの愛。
 麻薬のように僕らは溺れる。

「死ぬ…死んじゃう…もっとして…」

 僕は、ジュリのお尻を揺すっているようだった。
 彼女の声はどこか遠い。僕はぼんやりした頭の中で、エリと会っていた。
 いつもの屋上で。

「魔法使いに会いたい」

 エリはそう言った。

「じゃあ、僕が魔法使いになる」

 僕はそう答えた。

「約束だよ?」

 エリは言った。

「絶対だからね?」

 僕は魔法使いになってエリを救うと約束した。
 彼女はそう望んだはずだ。
 僕らはそう望んだはずだ。
 約束したんだ。

 確かに。
 僕らは。

「約束したよね?」

 エリは、にたりと笑ってた。

「いく~~ッ!?」

 急にジュリはそう叫んで、がくがく痙攣した。
 僕は彼女を抱いていたことを思い出し、慌てて引き抜いて射精する。
 僕の精子を背中に浴びて、ジュリは何度も体を痙攣させ、白目を剥いて失神した。

 そして、僕は明け方に目を覚ます。
 いつの間にか僕は眠っていて、ベッドの中にいた。
 周りには裸の女の子たちが転がっている。みんな、眠っていた。
 最後の記憶はない。僕らは酔っぱらっていたし、セックスに夢中になりすぎていた。
 セックスとアルコールとアンモニアの、ひどい匂いがした。あとでホテルの人がげんなりするんだろうな。
 僕も自分の指の匂いにげんなりした。いろんな女の子の、いろんなところに突っ込んだ匂いだ。
 おしっこしたついでに、洗面所で手と顔を入念に洗う。シャワーも浴びたいところだが、あとで露天風呂でもいいだろう。
 卒業パーティも終わって、中学のくだらない3年間がまもなく終わる。
 結局、エリは帰ってこなかったけど、僕はこれからも彼女を待ち続けるだろう。
 世界を彼女の形にするため、魔法使いはここにいる。これが世界の正しい姿で、僕はエリを待っている。
 いつもエリのことを思う。エリだけを思う。傷ついた小さな女の子のことを。かわいそうなあの子のことを。

「……あれ?」

 濡れた顔を拭こうとしても、先に使った人がいるのか、手元に備え付けのタオルがなかった。

「誰か、タオル持ってきてー」

 みんなまだ起きてこないのか、僕が呼んでも返事は帰ってこない。
 メガネのない僕はフラフラと手を伸ばす。

「誰かタオ―――」

 濡れた指が鏡の中の僕に触れる。
 そのとき、ふと、脳裏を何かが掠めた。
 デジャヴにも似たおかしな感覚。知らないはずの記憶が、ぼんやりと形になろうとして、そしてすぐに消えてしまった。
 鏡に映っているのは間抜けな形に眉を歪めた僕だけで、掴みどころのないその感情は、水滴と一緒にダラダラと僕の顔から落ちていく。
 音のないバスルームと、一人ぼっちの僕。
 疲れて落ちくぼんだ目に、糊みたいに白い肌。
 なんとなく、竹田ノブテルを思い出す。
 



 中学時代の話はこれで終わりだ。
 特に、付け加えることはない。
 言い訳も必要ない。
 区切りの良いとこまで辿り着いたら、次の章をめくるだけだ。

 4月、僕は高校生になった。
 そしてそこで出会った一人の女性と、恋に落ちた。

< つづく >




 中学時代の話はこれで終わりだ。
 特に、付け加えることはない。
 言い訳も必要ない。
 区切りの良いとこまで辿り着いたら、次の章をめくるだけだ。

 4月、僕は高校生になった。
 そしてそこで出会った一人の女性と、恋に落ちた。

< つづく >





 中学時代の話はこれで終わりだ。
 特に、付け加えることはない。
 言い訳も必要ない。
 区切りの良いとこまで辿り着いたら、次の章をめくるだけだ。

 4月、僕は高校生になった。
 そしてそこで出会った一人の女性と、恋に落ちた。

< つづく >





 中学時代の話はこれで終わりだ。
 特に、付け加えることはない。
 言い訳も必要ない。
 区切りの良いとこまで辿り着いたら、次の章をめくるだけだ。

 4月、僕は高校生になった。
 そしてそこで出会った一人の女性と、恋に落ちた。

< つづく >

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