英理と里彩 後編・そして私たちはキスをする

【後編・そして私たちはキスをする】

「…………」

 言葉が出てこない。
 身体が震えて、息苦しくて、声をだすことができない。
 謝らなければ! そう思っているのに、頭ではわかっているのに、

「……なんとか、言いなさいよ」

 英理の視線に射抜かれて言葉を発することができない。

 “大嫌い”

 その一言が、私の心を打ち砕いた。
 頭をハンマーで殴られたような衝撃が走って、まともな思考さえおぼつかない。

「ねぇ……なにか言ってよ!」

 英理の手が私の肩を両手で掴み、揺さぶる。

「なんで? なんであんなことしたの?! 信じてたんだよ……私、里彩のこと信じてたのに! …………え?」
「………だから」
「何?!」
「英理のこと……好きだから」

 自然と、その言葉が出た。

「英理の事が好きだった……ずっと前から、大好きだった……」

 想いが、溢れていく。

「催眠術を覚えて、英理のこと好きにできるって思ったら……私……我慢できなかった……英理を……私のものにしたかった……」

 瞳から涙が溢れる。
 今更気持ちを伝えても、もうどうにもならないのに……。
 こんなことになるまで気持ちを伝えることができないなんて……。

「里彩……あなた……」
「ごめんなさい……」

 それが全てだった。

「ごめんなさい……私、酷いことした……英理のキモチ、弄んだ……」
「…………」
「それに女の子が女の子を好きって……ヘンだよね、気持ち悪いよね……」

 実際、ヘテロセクシュアルの女の子から見れば私のしたことって、レイプ以外のなにものでもないんじゃないだろうか。

「ぅ……ぁ」

 そう考えて、私はまた悲しくなってしまった。

 “大嫌い”

 英理の言葉がよみがえる。
 そっか……私、英理に嫌われちゃったんだ。

「やだ……やだよぉ」
「里彩?」
「お願い英理……嫌いにならないで……何度でも謝るから、なんでもするから!」
「…………」
「やだ……ねぇ……英理!」
「…………」

 英理はなにも言ってくれない。
 それも当然だと思う。
 でも私は、私の前から英理がいなくなってしまうのがどうしても耐えられなくて、すがりついて懇願した。

「英理……お願い……許して……」

 涙で視界が滲んで英理の顔もまともに見ることができない。

「ごめんなさい……なんでも……なんでもしますから…………お願いします……そばに、いさせて……嫌わないで……」

 それでも私は、壊れた機械のように懺悔の言葉を紡ぎ続けた。
 不意に、私の身体は暖かくて柔らかいものに包まれた。

「もういいよ、里彩」
「ひら……り……」

 英理に抱きしめられてる。
 すぐには理解できなかった。

「もう謝らなくていいよ。里彩の気持ちはわかったから。泣き止んで、リラックスして」
「ぅ……ぐすっ」

 英理の声にさっきまでのトゲトゲしさがない。
 許して、くれるのかなぁ。

「ほら、大丈夫だよ」

 背中をさする英理の手のひらがあったかい。
 気持ちよくて思わず目を閉じてしまう。

「いい子ね」

 片方の手で背中をさすりながらもう片方の手で頭を撫でられる。

「ほら、いいこいいこ」

 なでなで なでなで

「…………」

 気持ちいい……嘘みたい……。
 この世の終わりと言ってもいいくらい絶望的だったのに、今、すごく幸せ……。
 英理の感触、ぬくもり、匂い……その一つ一つが私に深い幸福感をもたらしていく。

「力を抜いて……楽にしていいよ」

 英理の声がやけに心地よく響く。
 私の身体はその声の言うがままに力を抜いていく。

「もっと力を抜いて……心も身体もリラックスしていく……らく~になっていく……だんだん眠くなってくる……」

 頭の中に甘いぼんやりとした感覚が広がり、急激に意識が遠のいていく。
 力の抜けた身体が英理の身体にもたれかかって彼女の体温が直に伝わってくる。
 その心地よさも手伝って、どんどんどんどん眠くなってしまう。

「眠くなる……眠くなる……」

 子守唄のような英理の声もだんだんわからなくなっていき、カクンと首の力が抜けると同時に私は意識を手放した。



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



 結局あのあと、私は英理の家に泊まった。
 英理と一緒のベッドに寝て、英理の作ったご飯を食べて、英理の一緒に登校した。
 それだけを見れば私の望んだ恋人同士そのものの展開なのだけど、英理はあれからなにも言ってくれない。
 催眠のことについてなにも触れない。
 私のことを好きとも嫌いとも言わない。
 あの夜に私のことを催眠術で好きにした英理はなんだったのだろう。
 英理の気持ちが知りたい。
 けど、あんなに英理を怒らせた私がそのことを聞くこともできず、とりあえずは上機嫌の英理をみているとこのままでもいいか、とも思って躊躇してしまうのだった。

「あ……」

 校門の前に見覚えのある人達が立っているのが見えた。
 湯上谷先輩と上月先輩だ。

「おはようお二方」
「おはようございます。先輩」
「あれ、高峰さん……今日はスカートなんだ。珍しいね」
「ええ、たまには」

 上月先輩と英理はそんな和やかな会話を交わしている。

「ふぅ~ん」

 湯上谷先輩は探るような目で私たちを見ると、
「ちゃんと仲直りできたみたいだね」

 安心したような声で話しかけてきた。

「別に喧嘩してたわけじゃないと思うけど」

 後ろから少し呆れたような声で上月先輩が続く。

「ええ、お陰様で」
「…………」

 私はなんだかバツが悪くなり、二人から目を逸らした。
 湯上谷先輩はそんな私に気づいたようで、
「まぁ魔が差すってこともあるけどさ、相手の気持ちも考えようね」

 なんて説教ぶってきた。

「はい……」

 なぜだか知らないけど、この人に言われると不愉快だ。
 英理も上月先輩も、そんな生暖かい目で見ないで欲しい。
 そういえば、私はこの人に訊いてみたいことがあった。

「湯上谷先輩、あの……」
「ん?」
「英理が私の催眠にかかってるって見抜いたのは湯上谷先輩ですよね」
「そうだよ」
「どうしてわかったんですか?」

 英理の表情がハッとした慌てたものに変わり、上月先輩が気まずそうに目を泳がせる。

「ああ。私も以前似たようなことをしちゃったことがあってさ。まぁ、そこの未来ちゃんのことなんだけどね。詳しいことは省くけど。
 その時の未来ちゃんの様子と高峰さんの様子が同じだったからさ」
「上月先輩と英理が、同じ?」
「うん。自分の気持ちを抑えられてるって言うか、好きな人に自分の気持ちを言えない苦しみって言うか、そんな気配があったからさ」
「え、それって……うわっ!」

 言葉と思考がまとまる前に私は腕を引っ張られて校内に連れ込まれた。

「ちょ、ちょっと英理!」
「……………」

 大股で足早に歩いて私を引っ張る英理に私の声は聞こえてないようだった。



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



 結局あのあと、私は英理の家に泊まった。
 英理と一緒のベッドに寝て、英理の作ったご飯を食べて、英理の一緒に登校した。
 それだけを見れば私の望んだ恋人同士そのものの展開なのだけど、英理はあれからなにも言ってくれない。
 催眠のことについてなにも触れない。
 私のことを好きとも嫌いとも言わない。
 あの夜に私のことを催眠術で好きにした英理はなんだったのだろう。
 英理の気持ちが知りたい。
 けど、あんなに英理を怒らせた私がそのことを聞くこともできず、とりあえずは上機嫌の英理をみているとこのままでもいいか、とも思って躊躇してしまうのだった。

「あ……」

 校門の前に見覚えのある人達が立っているのが見えた。
 湯上谷先輩と上月先輩だ。

「おはようお二方」
「おはようございます。先輩」
「あれ、高峰さん……今日はスカートなんだ。珍しいね」
「ええ、たまには」

 上月先輩と英理はそんな和やかな会話を交わしている。

「ふぅ~ん」

 湯上谷先輩は探るような目で私たちを見ると、
「ちゃんと仲直りできたみたいだね」

 安心したような声で話しかけてきた。

「別に喧嘩してたわけじゃないと思うけど」

 後ろから少し呆れたような声で上月先輩が続く。

「ええ、お陰様で」
「…………」

 私はなんだかバツが悪くなり、二人から目を逸らした。
 湯上谷先輩はそんな私に気づいたようで、
「まぁ魔が差すってこともあるけどさ、相手の気持ちも考えようね」

 なんて説教ぶってきた。

「はい……」

 なぜだか知らないけど、この人に言われると不愉快だ。
 英理も上月先輩も、そんな生暖かい目で見ないで欲しい。
 そういえば、私はこの人に訊いてみたいことがあった。

「湯上谷先輩、あの……」
「ん?」
「英理が私の催眠にかかってるって見抜いたのは湯上谷先輩ですよね」
「そうだよ」
「どうしてわかったんですか?」

 英理の表情がハッとした慌てたものに変わり、上月先輩が気まずそうに目を泳がせる。

「ああ。私も以前似たようなことをしちゃったことがあってさ。まぁ、そこの未来ちゃんのことなんだけどね。詳しいことは省くけど。
 その時の未来ちゃんの様子と高峰さんの様子が同じだったからさ」
「上月先輩と英理が、同じ?」
「うん。自分の気持ちを抑えられてるって言うか、好きな人に自分の気持ちを言えない苦しみって言うか、そんな気配があったからさ」
「え、それって……うわっ!」

 言葉と思考がまとまる前に私は腕を引っ張られて校内に連れ込まれた。

「ちょ、ちょっと英理!」
「……………」

 大股で足早に歩いて私を引っ張る英理に私の声は聞こえてないようだった。



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



「ぅ…………」
「こら、目を逸らさないで。見たかったんでしょ?」
「そ……れは」
「ん?」
「見たい……です」

 脱衣所に着くなり、英理は私の見てる前で服を脱ぎだした。
 上着を脱いで下着姿になると、スレンダーな英理の身体が露になりドキドキしてしまう。
 胸はあんまり大きくないけど、無駄な肉の付かない長身のスタイル、特にスラっとした細長い足は下着姿だとより強調されて見える。
 ブラを外し、形の良い小振りな胸が露になる。

「……いつか超える」

 英理が悔しそうに口を尖らせる。
 胸、小さくても英理の身体はキレイだよ。
 そう思ったけど、口には出さないでおいた。
 パンツを脱ぐときはさすがに少し恥ずかしそうにしていたけど、ためらうことなく脱いでしまう。

「ぁ……」

 一糸纏わぬ英理の身体を前にして、私の頭の中はエッチなことでいっぱいになってしまった。
 ついさっき英理の目の前でオナニーして一度イッたのに、英理の裸に興奮してまたムラムラしてしまった。

「ふぅん」

 英理の視線が私の股間に向いて、意地悪な笑を浮かべた。

「あ……」

 溢れ出した恥ずかしい液体が割れ目から溢れて太腿まで垂れていた。
 慌てて股間を隠す私を英理は嬉しそうに眺めていた。

「おいで」

 十分に楽しんだのか、英理は扉を開けて浴室へと入った。
 浴槽には既にお湯が張られていた。……いつ沸かしたのだろう。

「まずは身体を洗わなくちゃね。座って」

 英理はシャワーから湯を出して手のひらで温度を測りながら手招きした。

「え、っと……」
「洗ってあげる。ね?」

 おいでおいでと手招きする英理に誘われるように、私はお風呂椅子に座った。

「熱かったら言ってね」

 シャワーから出たお湯が身体に当たる。

「んっ。大丈夫」

 シャワーのお湯は熱めが好きだ。
 身体の細胞の一つ一つが開いて疲れや汚れを洗い流してくれるような気がするから。
 そんなことを考えていると、英理の手のひらが目の前にかざされる。

「そう……手のひらを見つめて、じーっと見るのよ。意識を集中して、だんだん頭がぼーっとしてくるよ」

 英理の手のひらが私の視界を撫でるようにゆっくりと動く。
 その動きを追っていると、だんだん意識がぼんやりしてきてしまう。

「じーっと見ていると、だんだん手のひらが淡く光ってくる。ほら、ぼんやり光ってきたでしょ?」
「……うん」

 見つめていると、手のひらがぼんやりと光り出してきた。

「何色に光ってる?」
「……赤……ううん、オレンジ?」

 赤とオレンジの中間のような、あったかそうな色。

「ふふっ、これで私の手は魔法の手になったよ。この手に触られたトコロはとっても気持ちよくなるよ。試してみよっか」

 言いながら英理は淡く光った魔法の手で私の肩に触れた。

「あ……気持ちいい」

 英理に触れられた部分がほんわりと熱を帯びたように暖かくなって、くすぐったいようなじぃんとするような、そんな心地よさが与えられた。

「ふふっ、気持ちいいでしょ。ここも……」
「あっ、やん」

 気を良くした英理は肩から首筋、喉、胸元とだんだん敏感なところに触れていく。
 そして触れられたところがいちいち気持ちよくて、だんだんヘンな気分になってしまう。

「あ……はは」
「ふふん、大分いい感じになってきたね」

 少し前にシャワーはとまっているのに、上気してきた私の身体を見て英理は満足気に頷くと、
「じゃあ身体を洗おっか」

 そう言って手のひらにボディソープをつけて泡立てた。

「え、英理が洗ってくれるの?」
「そうだよ。ほら、力抜いて」

 そう言って英理はボディソープの泡がたっぷりと付いた魔法の手で私の背中に触れた。

「んっ!」

 途端に背中から強烈な快感が伝わる。

「ふ……ああっ」

 軽く擦られるだけで、背中全体がぞくぞくするほどの快感で満たされる。

「動かない。洗いにくいでしょ」

 英理に言われて慌てて身体を固くする。だけど、
「んっ! くふっ……やっ、だめぇ」

 与えられる快感があまりにも強烈で、ついつい身じろぎしてしまう。
 そんな調子で肩、脇、腕と丁寧に……そりゃあもう丁寧に魔法の手によって私の身体は洗われていく。
 敏感な脇の下を洗われたときはそれだけでどうにかなりそうだった。

「あ……」

 腕を洗った流れで手をとられた。

「手もきれいにしようね~」

 指の一本一本を指先から丁寧に洗っていく。

「ぁ……ぁ……」

 指って、性感帯だっけ?

 指を絡めてるだけで、なんだか気持ちいい。
 それに、英理の触り方がなんだかいやらしい。
 指と指をこすり合わせながら絡めてにぎにぎして……。

「どうしたの里彩、ぽーっとして」
「ぁ……なんでも……」
「んー?」

 いたずらっぽい笑みを浮かべて英理は私の顔をのぞき込む。

 絶対わかっててやってる。

 指の感触に満足すると、喉から鎖骨、胸へと身体の前のほうを洗い始めた。
 英理の魔法の手は本当に気持ちいい。
 英理の手が胸に近づいてきて、期待でドキドキしてしまう。
 ところが英理の手が私の胸に達しようとしたところで手は胸を避け、腰を洗い始めた。

「……え?」
「ん? どうかした?」
「あ……ううん」

 気のせいかな……。

 そう思っているうちに英理の手はお腹を洗い、おへそ、太腿、股間へとさしかかった。
 だがここでも英理は股間を避け、太腿、ふくらはぎの順に洗っていく。

 焦らされてる?!

 かぁっ……と顔が熱くなった。

「ひ、英理……」
「ん? なぁに?」

 英理はニマニマしたいやらしい笑みをうかべていた。
 私のおねだりを待っているんだ。

「う、ううん。なんでもないよ……」

 私は目を逸らして身体の疼きを抑えようとする。
 だが一旦くすぶり始めた火種は決して消えるようなことはなく、じわじわと心の奥を炙り続けた。

「はい、おしまい」

 足を洗い終え、とうとう英理は胸とアソコを洗ってくれなかった。

「ね、ねぇ……英理、まだ……洗ってないところが……」
「えっ? どこ?」

 英理は白々しくとぼけて見せた。

「ぅぅ……英理ぃ……」
「んん? どこを洗ってほしいの? 大きな声ではっきりと言ってごらん」
「はぁ……はぁ……胸……おっぱいと……お、おまたを洗ってください!」

 うう~恥ずかしいよぉ……

「ふぁっ」

 英理の手が私の胸を揉むようにして洗い始めた。

「くすっ…乳首、硬くなってるわよ」
「ぁ…ぁぁ…んんっ」

 気持ちよくてたまらない。
 ボディソープのせいですべりがよくなっているため、ぬるぬるした感触が加わり快感が倍増している。

「さて、こっちは……」

 英理の手が股間にのびる。

「あっ!」
「あれぇ? ずいぶんぬるぬるしてるね」

 英理は割れ目に指を這わせながら楽しそうに言った。

「ボ、ボディソープのせいだよっ」
「ふぅん…にしてはずいぶん泡立ちがわるいね」

 英理は私の目の前で親指と人差し指を広げながら言った。
 指と指の間には私の愛液が糸をひいていて、それを見た私は恥ずかしい気持ちが湧き上がってきてますます興奮してしまう。

「くすっ……」

 英理は再び私の股間に手を潜り込ませて愛撫……もとい、洗うのを再開した。

「んあっ、あ……ぁぁ……ああっ」

 英理の魔法の手は強烈な快感を私にもたらし、焦らされたことも相まって確実に絶頂へと導いていく。

「はぁ…ああん…んんっ」

 英理の指は執拗にクリトリスを弄り続け、私はたちまち我慢できなくなってしまう。

「ああっ……は……あ……んうっ」
「うわぁ、ぐしょぐしょ。乳首もこんなに固くして。おかしいなぁ、洗ってるだけなのにねぇ」
「あ、だめっ……もう、私っ」
「んん? 何がダメなの?」

 英理の指の動きが早くなっていく。

「ん? イキそうなの? ねぇ、ねぇ」
「ぅああっ、気持ち……い、やぁっ……!」
「そこまでっ!」

 いきなりの英理の大声にびっくりして、思わず私は我にかえった。

「だめだよ里彩、イっちゃだめ。勝手にイっちゃだめだよ」

 小さい子に言い聞かせるように英理は「イっちゃダメ」と繰り返した。

「いい? 里彩はイケない。どんなに気持ちよくてもイケないよ。私がいいって言うまで絶対にイクことはできない」
「あ……ぁぁ……」

 身体は火照ったまま。
 敏感なところはジンジンして、ちょっと触ってだけでイケそうなのに。

「ほら、試しに自分でいじってごらん。きっとすっごく気持ちいいよ。でも絶対にイケないけどね。あははっ」

 慌てて自ら割れ目を押し開き、クリトリスを弄り始める。

「ぁ……あぅっ! はぁっ……ああっ」

 気持ちいい……もうアソコはぐちゃぐちゃで、クリトリスも限界まで固くなって、こんなに気持ちいいのに、
「はぅっ! あぁ……なんで……なんでイケないのぉ? ぁあっ!」

 最後のひと押しが足りない。
 今にも絶頂の波に飲み込まれそうになるのに、あと少しというところで快感の波が引いてしまう。
 かといって身体が冷めることもない。
 永遠に続く生殺しだ。

「里彩、イキたい?」
「うんっ! イキたい……イキたいよぉ」
「あ~あ、里彩は変態だね。友達の前でいやらしい姿晒して、ヨダレたらしてエッチな声出して。こんな娘と私友達だったなんて、あ~あ」

 容赦のない英理の罵倒が私のプライドをズタズタにしていく。
 だけどそんな安っぽいプライドよりも、目の前の快楽のほうが私には何倍も魅力的に感じられた。

「はい……私は、変態な女の子、です…んあっ…英理様に、見られて、あっ……興奮、してます」
「ふふ、そんな変態な英理には躾が必要ね」

 言いながら英理は私の髪をわしづかみにし、私の顔を自分の股間に押し付けた。

「舐めなさい。ふふ……こういうことされると興奮するんでしょ? 変態里彩ちゃん」
「ふぁ…ん…ちゅ…んっ…ちゅ…ぴちゃ」

 私は夢中になって英理のアソコを舐めた。
 英理のアソコは私を魅了するいい匂いがして、私の心をトロトロに溶かしていく。

「ん……はっ……上手よ、英理」

 上手と言われて私は嬉しくなり、ますます一生懸命に舐めていく。
 同時に自慰も続けてゆき、悦びと興奮とでまたイってしまいそうになる。

「ん……んんっ」
「いいよ……んっ、許してあげる……私をイかせることができたら……ぁ……里彩もイっていいわよ」

 英理からお許しをもらって、私は自分への愛撫をゆるめ、英理への愛撫に集中した。

「あっ……は……ああっ」

 英理の手が私の頭の上に置かれ、優しくなでなでされる。

「り……あ……ああっ」

 英理がうわごとのように私の名前を呼んでいる。
 私が英理を気持ちよくしているということが嬉しい。
 もっと感じてほしい。
 もっと英理のためにご奉仕したい。
 私はあいてるほうの手をそっと英理のおしりの穴にあてがった。

「っ! そこは……」

 私は指先でやさしく穴の周りをなぞっていく。
 もちろん舌によるクリへの愛撫も続けていく。

「あ……ああっ……ふぁ……んんっ」
「んむっ……英理……私の手で、イって……」

 愛液をまぶした指でおしりを愛撫しながら舌先でクリをはじく。
 英理はしばらく耐えていたが、我慢できなくなったのか自ら足を大きくひらき、私を受け入れた。

「あっ……ああっ……あ、ダメ……イっちゃ、イっちゃうっ! ……あっ、あっ、あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 英理はとうとう快感に屈し絶頂を迎えた。

「ん…んっ、こくっ」

 英理のアソコからふきだした絶頂の証を私は思わず飲んでしまう。
 とたんに強烈な性感が私をおそい、自分を慰めていたほうの指の動きが急激に早くなった。

「あぅ、あっ、ふああぁぁぁぁぁっ!!!」

 快感に抗う間もなく、私は絶頂を迎えてしまい、ぐったりと崩れてしまう。

「はぁ……はぁ……」
「里彩……よかったわよ」

 英理はそう言ってシャワーで私の身体についた泡を流すと、お姫様だっこで湯船にいれてくれた。
 英理は膝の上に私を乗せ、後ろから抱きつくような姿勢で一緒に暖まった。
 少し熱めのお湯がとても心地よい。

「可愛い……里彩」

 背中にちゅっちゅっとキスしながら、甘い言葉を囁く。
 快感の余韻で満足に身体が動かないのをいいことに、背中や首筋にたくさんキスマークをつけられてしまった。

 どうせキスするなら、唇にしてほしいのに……。



 結局あのあと、私は英理の家に泊まった。
 英理と一緒のベッドに寝て、英理の作ったご飯を食べて、英理の一緒に登校した。
 それだけを見れば私の望んだ恋人同士そのものの展開なのだけど、英理はあれからなにも言ってくれない。
 催眠のことについてなにも触れない。
 私のことを好きとも嫌いとも言わない。
 あの夜に私のことを催眠術で好きにした英理はなんだったのだろう。
 英理の気持ちが知りたい。
 けど、あんなに英理を怒らせた私がそのことを聞くこともできず、とりあえずは上機嫌の英理をみているとこのままでもいいか、とも思って躊躇してしまうのだった。

「あ……」

 校門の前に見覚えのある人達が立っているのが見えた。
 湯上谷先輩と上月先輩だ。

「おはようお二方」
「おはようございます。先輩」
「あれ、高峰さん……今日はスカートなんだ。珍しいね」
「ええ、たまには」

 上月先輩と英理はそんな和やかな会話を交わしている。

「ふぅ~ん」

 湯上谷先輩は探るような目で私たちを見ると、
「ちゃんと仲直りできたみたいだね」

 安心したような声で話しかけてきた。

「別に喧嘩してたわけじゃないと思うけど」

 後ろから少し呆れたような声で上月先輩が続く。

「ええ、お陰様で」
「…………」

 私はなんだかバツが悪くなり、二人から目を逸らした。
 湯上谷先輩はそんな私に気づいたようで、
「まぁ魔が差すってこともあるけどさ、相手の気持ちも考えようね」

 なんて説教ぶってきた。

「はい……」

 なぜだか知らないけど、この人に言われると不愉快だ。
 英理も上月先輩も、そんな生暖かい目で見ないで欲しい。
 そういえば、私はこの人に訊いてみたいことがあった。

「湯上谷先輩、あの……」
「ん?」
「英理が私の催眠にかかってるって見抜いたのは湯上谷先輩ですよね」
「そうだよ」
「どうしてわかったんですか?」

 英理の表情がハッとした慌てたものに変わり、上月先輩が気まずそうに目を泳がせる。

「ああ。私も以前似たようなことをしちゃったことがあってさ。まぁ、そこの未来ちゃんのことなんだけどね。詳しいことは省くけど。
 その時の未来ちゃんの様子と高峰さんの様子が同じだったからさ」
「上月先輩と英理が、同じ?」
「うん。自分の気持ちを抑えられてるって言うか、好きな人に自分の気持ちを言えない苦しみって言うか、そんな気配があったからさ」
「え、それって……うわっ!」

 言葉と思考がまとまる前に私は腕を引っ張られて校内に連れ込まれた。

「ちょ、ちょっと英理!」
「……………」

 大股で足早に歩いて私を引っ張る英理に私の声は聞こえてないようだった。



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



「ぅ…………」
「こら、目を逸らさないで。見たかったんでしょ?」
「そ……れは」
「ん?」
「見たい……です」

 脱衣所に着くなり、英理は私の見てる前で服を脱ぎだした。
 上着を脱いで下着姿になると、スレンダーな英理の身体が露になりドキドキしてしまう。
 胸はあんまり大きくないけど、無駄な肉の付かない長身のスタイル、特にスラっとした細長い足は下着姿だとより強調されて見える。
 ブラを外し、形の良い小振りな胸が露になる。

「……いつか超える」

 英理が悔しそうに口を尖らせる。
 胸、小さくても英理の身体はキレイだよ。
 そう思ったけど、口には出さないでおいた。
 パンツを脱ぐときはさすがに少し恥ずかしそうにしていたけど、ためらうことなく脱いでしまう。

「ぁ……」

 一糸纏わぬ英理の身体を前にして、私の頭の中はエッチなことでいっぱいになってしまった。
 ついさっき英理の目の前でオナニーして一度イッたのに、英理の裸に興奮してまたムラムラしてしまった。

「ふぅん」

 英理の視線が私の股間に向いて、意地悪な笑を浮かべた。

「あ……」

 溢れ出した恥ずかしい液体が割れ目から溢れて太腿まで垂れていた。
 慌てて股間を隠す私を英理は嬉しそうに眺めていた。

「おいで」

 十分に楽しんだのか、英理は扉を開けて浴室へと入った。
 浴槽には既にお湯が張られていた。……いつ沸かしたのだろう。

「まずは身体を洗わなくちゃね。座って」

 英理はシャワーから湯を出して手のひらで温度を測りながら手招きした。

「え、っと……」
「洗ってあげる。ね?」

 おいでおいでと手招きする英理に誘われるように、私はお風呂椅子に座った。

「熱かったら言ってね」

 シャワーから出たお湯が身体に当たる。

「んっ。大丈夫」

 シャワーのお湯は熱めが好きだ。
 身体の細胞の一つ一つが開いて疲れや汚れを洗い流してくれるような気がするから。
 そんなことを考えていると、英理の手のひらが目の前にかざされる。

「そう……手のひらを見つめて、じーっと見るのよ。意識を集中して、だんだん頭がぼーっとしてくるよ」

 英理の手のひらが私の視界を撫でるようにゆっくりと動く。
 その動きを追っていると、だんだん意識がぼんやりしてきてしまう。

「じーっと見ていると、だんだん手のひらが淡く光ってくる。ほら、ぼんやり光ってきたでしょ?」
「……うん」

 見つめていると、手のひらがぼんやりと光り出してきた。

「何色に光ってる?」
「……赤……ううん、オレンジ?」

 赤とオレンジの中間のような、あったかそうな色。

「ふふっ、これで私の手は魔法の手になったよ。この手に触られたトコロはとっても気持ちよくなるよ。試してみよっか」

 言いながら英理は淡く光った魔法の手で私の肩に触れた。

「あ……気持ちいい」

 英理に触れられた部分がほんわりと熱を帯びたように暖かくなって、くすぐったいようなじぃんとするような、そんな心地よさが与えられた。

「ふふっ、気持ちいいでしょ。ここも……」
「あっ、やん」

 気を良くした英理は肩から首筋、喉、胸元とだんだん敏感なところに触れていく。
 そして触れられたところがいちいち気持ちよくて、だんだんヘンな気分になってしまう。

「あ……はは」
「ふふん、大分いい感じになってきたね」

 少し前にシャワーはとまっているのに、上気してきた私の身体を見て英理は満足気に頷くと、
「じゃあ身体を洗おっか」

 そう言って手のひらにボディソープをつけて泡立てた。

「え、英理が洗ってくれるの?」
「そうだよ。ほら、力抜いて」

 そう言って英理はボディソープの泡がたっぷりと付いた魔法の手で私の背中に触れた。

「んっ!」

 途端に背中から強烈な快感が伝わる。

「ふ……ああっ」

 軽く擦られるだけで、背中全体がぞくぞくするほどの快感で満たされる。

「動かない。洗いにくいでしょ」

 英理に言われて慌てて身体を固くする。だけど、
「んっ! くふっ……やっ、だめぇ」

 与えられる快感があまりにも強烈で、ついつい身じろぎしてしまう。
 そんな調子で肩、脇、腕と丁寧に……そりゃあもう丁寧に魔法の手によって私の身体は洗われていく。
 敏感な脇の下を洗われたときはそれだけでどうにかなりそうだった。

「あ……」

 腕を洗った流れで手をとられた。

「手もきれいにしようね~」

 指の一本一本を指先から丁寧に洗っていく。

「ぁ……ぁ……」

 指って、性感帯だっけ?

 指を絡めてるだけで、なんだか気持ちいい。
 それに、英理の触り方がなんだかいやらしい。
 指と指をこすり合わせながら絡めてにぎにぎして……。

「どうしたの里彩、ぽーっとして」
「ぁ……なんでも……」
「んー?」

 いたずらっぽい笑みを浮かべて英理は私の顔をのぞき込む。

 絶対わかっててやってる。

 指の感触に満足すると、喉から鎖骨、胸へと身体の前のほうを洗い始めた。
 英理の魔法の手は本当に気持ちいい。
 英理の手が胸に近づいてきて、期待でドキドキしてしまう。
 ところが英理の手が私の胸に達しようとしたところで手は胸を避け、腰を洗い始めた。

「……え?」
「ん? どうかした?」
「あ……ううん」

 気のせいかな……。

 そう思っているうちに英理の手はお腹を洗い、おへそ、太腿、股間へとさしかかった。
 だがここでも英理は股間を避け、太腿、ふくらはぎの順に洗っていく。

 焦らされてる?!

 かぁっ……と顔が熱くなった。

「ひ、英理……」
「ん? なぁに?」

 英理はニマニマしたいやらしい笑みをうかべていた。
 私のおねだりを待っているんだ。

「う、ううん。なんでもないよ……」

 私は目を逸らして身体の疼きを抑えようとする。
 だが一旦くすぶり始めた火種は決して消えるようなことはなく、じわじわと心の奥を炙り続けた。

「はい、おしまい」

 足を洗い終え、とうとう英理は胸とアソコを洗ってくれなかった。

「ね、ねぇ……英理、まだ……洗ってないところが……」
「えっ? どこ?」

 英理は白々しくとぼけて見せた。

「ぅぅ……英理ぃ……」
「んん? どこを洗ってほしいの? 大きな声ではっきりと言ってごらん」
「はぁ……はぁ……胸……おっぱいと……お、おまたを洗ってください!」

 うう~恥ずかしいよぉ……

「ふぁっ」

 英理の手が私の胸を揉むようにして洗い始めた。

「くすっ…乳首、硬くなってるわよ」
「ぁ…ぁぁ…んんっ」

 気持ちよくてたまらない。
 ボディソープのせいですべりがよくなっているため、ぬるぬるした感触が加わり快感が倍増している。

「さて、こっちは……」

 英理の手が股間にのびる。

「あっ!」
「あれぇ? ずいぶんぬるぬるしてるね」

 英理は割れ目に指を這わせながら楽しそうに言った。

「ボ、ボディソープのせいだよっ」
「ふぅん…にしてはずいぶん泡立ちがわるいね」

 英理は私の目の前で親指と人差し指を広げながら言った。
 指と指の間には私の愛液が糸をひいていて、それを見た私は恥ずかしい気持ちが湧き上がってきてますます興奮してしまう。

「くすっ……」

 英理は再び私の股間に手を潜り込ませて愛撫……もとい、洗うのを再開した。

「んあっ、あ……ぁぁ……ああっ」

 英理の魔法の手は強烈な快感を私にもたらし、焦らされたことも相まって確実に絶頂へと導いていく。

「はぁ…ああん…んんっ」

 英理の指は執拗にクリトリスを弄り続け、私はたちまち我慢できなくなってしまう。

「ああっ……は……あ……んうっ」
「うわぁ、ぐしょぐしょ。乳首もこんなに固くして。おかしいなぁ、洗ってるだけなのにねぇ」
「あ、だめっ……もう、私っ」
「んん? 何がダメなの?」

 英理の指の動きが早くなっていく。

「ん? イキそうなの? ねぇ、ねぇ」
「ぅああっ、気持ち……い、やぁっ……!」
「そこまでっ!」

 いきなりの英理の大声にびっくりして、思わず私は我にかえった。

「だめだよ里彩、イっちゃだめ。勝手にイっちゃだめだよ」

 小さい子に言い聞かせるように英理は「イっちゃダメ」と繰り返した。

「いい? 里彩はイケない。どんなに気持ちよくてもイケないよ。私がいいって言うまで絶対にイクことはできない」
「あ……ぁぁ……」

 身体は火照ったまま。
 敏感なところはジンジンして、ちょっと触ってだけでイケそうなのに。

「ほら、試しに自分でいじってごらん。きっとすっごく気持ちいいよ。でも絶対にイケないけどね。あははっ」

 慌てて自ら割れ目を押し開き、クリトリスを弄り始める。

「ぁ……あぅっ! はぁっ……ああっ」

 気持ちいい……もうアソコはぐちゃぐちゃで、クリトリスも限界まで固くなって、こんなに気持ちいいのに、
「はぅっ! あぁ……なんで……なんでイケないのぉ? ぁあっ!」

 最後のひと押しが足りない。
 今にも絶頂の波に飲み込まれそうになるのに、あと少しというところで快感の波が引いてしまう。
 かといって身体が冷めることもない。
 永遠に続く生殺しだ。

「里彩、イキたい?」
「うんっ! イキたい……イキたいよぉ」
「あ~あ、里彩は変態だね。友達の前でいやらしい姿晒して、ヨダレたらしてエッチな声出して。こんな娘と私友達だったなんて、あ~あ」

 容赦のない英理の罵倒が私のプライドをズタズタにしていく。
 だけどそんな安っぽいプライドよりも、目の前の快楽のほうが私には何倍も魅力的に感じられた。

「はい……私は、変態な女の子、です…んあっ…英理様に、見られて、あっ……興奮、してます」
「ふふ、そんな変態な英理には躾が必要ね」

 言いながら英理は私の髪をわしづかみにし、私の顔を自分の股間に押し付けた。

「舐めなさい。ふふ……こういうことされると興奮するんでしょ? 変態里彩ちゃん」
「ふぁ…ん…ちゅ…んっ…ちゅ…ぴちゃ」

 私は夢中になって英理のアソコを舐めた。
 英理のアソコは私を魅了するいい匂いがして、私の心をトロトロに溶かしていく。

「ん……はっ……上手よ、英理」

 上手と言われて私は嬉しくなり、ますます一生懸命に舐めていく。
 同時に自慰も続けてゆき、悦びと興奮とでまたイってしまいそうになる。

「ん……んんっ」
「いいよ……んっ、許してあげる……私をイかせることができたら……ぁ……里彩もイっていいわよ」

 英理からお許しをもらって、私は自分への愛撫をゆるめ、英理への愛撫に集中した。

「あっ……は……ああっ」

 英理の手が私の頭の上に置かれ、優しくなでなでされる。

「り……あ……ああっ」

 英理がうわごとのように私の名前を呼んでいる。
 私が英理を気持ちよくしているということが嬉しい。
 もっと感じてほしい。
 もっと英理のためにご奉仕したい。
 私はあいてるほうの手をそっと英理のおしりの穴にあてがった。

「っ! そこは……」

 私は指先でやさしく穴の周りをなぞっていく。
 もちろん舌によるクリへの愛撫も続けていく。

「あ……ああっ……ふぁ……んんっ」
「んむっ……英理……私の手で、イって……」

 愛液をまぶした指でおしりを愛撫しながら舌先でクリをはじく。
 英理はしばらく耐えていたが、我慢できなくなったのか自ら足を大きくひらき、私を受け入れた。

「あっ……ああっ……あ、ダメ……イっちゃ、イっちゃうっ! ……あっ、あっ、あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 英理はとうとう快感に屈し絶頂を迎えた。

「ん…んっ、こくっ」

 英理のアソコからふきだした絶頂の証を私は思わず飲んでしまう。
 とたんに強烈な性感が私をおそい、自分を慰めていたほうの指の動きが急激に早くなった。

「あぅ、あっ、ふああぁぁぁぁぁっ!!!」

 快感に抗う間もなく、私は絶頂を迎えてしまい、ぐったりと崩れてしまう。

「はぁ……はぁ……」
「里彩……よかったわよ」

 英理はそう言ってシャワーで私の身体についた泡を流すと、お姫様だっこで湯船にいれてくれた。
 英理は膝の上に私を乗せ、後ろから抱きつくような姿勢で一緒に暖まった。
 少し熱めのお湯がとても心地よい。

「可愛い……里彩」

 背中にちゅっちゅっとキスしながら、甘い言葉を囁く。
 快感の余韻で満足に身体が動かないのをいいことに、背中や首筋にたくさんキスマークをつけられてしまった。

 どうせキスするなら、唇にしてほしいのに……。



 結局あのあと、私は英理の家に泊まった。
 英理と一緒のベッドに寝て、英理の作ったご飯を食べて、英理の一緒に登校した。
 それだけを見れば私の望んだ恋人同士そのものの展開なのだけど、英理はあれからなにも言ってくれない。
 催眠のことについてなにも触れない。
 私のことを好きとも嫌いとも言わない。
 あの夜に私のことを催眠術で好きにした英理はなんだったのだろう。
 英理の気持ちが知りたい。
 けど、あんなに英理を怒らせた私がそのことを聞くこともできず、とりあえずは上機嫌の英理をみているとこのままでもいいか、とも思って躊躇してしまうのだった。

「あ……」

 校門の前に見覚えのある人達が立っているのが見えた。
 湯上谷先輩と上月先輩だ。

「おはようお二方」
「おはようございます。先輩」
「あれ、高峰さん……今日はスカートなんだ。珍しいね」
「ええ、たまには」

 上月先輩と英理はそんな和やかな会話を交わしている。

「ふぅ~ん」

 湯上谷先輩は探るような目で私たちを見ると、
「ちゃんと仲直りできたみたいだね」

 安心したような声で話しかけてきた。

「別に喧嘩してたわけじゃないと思うけど」

 後ろから少し呆れたような声で上月先輩が続く。

「ええ、お陰様で」
「…………」

 私はなんだかバツが悪くなり、二人から目を逸らした。
 湯上谷先輩はそんな私に気づいたようで、
「まぁ魔が差すってこともあるけどさ、相手の気持ちも考えようね」

 なんて説教ぶってきた。

「はい……」

 なぜだか知らないけど、この人に言われると不愉快だ。
 英理も上月先輩も、そんな生暖かい目で見ないで欲しい。
 そういえば、私はこの人に訊いてみたいことがあった。

「湯上谷先輩、あの……」
「ん?」
「英理が私の催眠にかかってるって見抜いたのは湯上谷先輩ですよね」
「そうだよ」
「どうしてわかったんですか?」

 英理の表情がハッとした慌てたものに変わり、上月先輩が気まずそうに目を泳がせる。

「ああ。私も以前似たようなことをしちゃったことがあってさ。まぁ、そこの未来ちゃんのことなんだけどね。詳しいことは省くけど。
 その時の未来ちゃんの様子と高峰さんの様子が同じだったからさ」
「上月先輩と英理が、同じ?」
「うん。自分の気持ちを抑えられてるって言うか、好きな人に自分の気持ちを言えない苦しみって言うか、そんな気配があったからさ」
「え、それって……うわっ!」

 言葉と思考がまとまる前に私は腕を引っ張られて校内に連れ込まれた。

「ちょ、ちょっと英理!」
「……………」

 大股で足早に歩いて私を引っ張る英理に私の声は聞こえてないようだった。



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



「う……んんっ」

 目を開けると、見慣れない光景が広がっていた。
 部屋の壁紙、机やベッドの位置、明らかに私の部屋じゃない。

 ここはどこ?

「起きた?」

 声がした方を見ると、椅子に座った英理が私を見ていた。

「あの、私……あ!」

 一瞬ぼーっとして、すぐに記憶が戻った。
 泣きながら私がしたことを英理に謝ってる最中に英理に抱きしめられて、そしたらなぜか急に眠くなって……。

「あ……英理、私……」
「ねぇ、里彩」

 なにかしゃべろうと口を開いた私の言葉に被さるように英理は私の名前を呼んだ。

「私ね、里彩が許せない」

 頭がクラッとした。

「里彩が私にしたこと、すごくひどいことだと思うよ。やっぱり私、簡単には許せないよ」
「ぅ……」
「でもね、里彩は反省してるみたいだし、いっぱい謝ってくれたし」

 うつむいた顔を上げて英理を見ると、なぜだかあんまり怒っているようには見えなかった。

「それに、『なんでもする』って、言ったよね」

 言った。
 思わず出て来ちゃった言葉だったけど、英理に私がしたこと許してもらえるなら……。

「それは、本当?」
「う、うん! 本当だよ」
「ふぅん……」

 半信半疑、というような表情で英理は私を見つめた。

「本当に本当?」
「ほ、本当に!」

 私が必死で繰り返すと英理は、にやぁ、と、見たこともないような邪悪な笑みを浮かべた。

「結構よ。じゃあ早速だけど、これを見てくれる?」

 そう言って英理は私の鞄から何かを取り出し、テーブルの上に置いた。

「あ、それ……!」

 それは、私が昨日使ったメトロノームだった。

「これをこうして、っと」

 英理が留め具を外すとメトロノームは規則的なリズムを奏でる。

 カチッ カチッ

「あ…………」

 その音を聞くと、なんだか急に身体から力が抜けていく。

「ほら、里彩……この音に意識を集中して」

 カチッ カチッ カチッ

 だんだん意識がぼんやりしてくる。
 メトロノームの音が頭の中で心地よく響いてくる。

 これって、もしかして……。

「そう……その調子よ……メトロノームの音を聞いていると、だんだん意識がうつろになっていく。気持ちよ~くなっていく」

 やっぱり、英理は私に催眠術をかけようとしている。

「ゃ……だ……め……」
「だめじゃないよ? 里彩はだんだん眠くなる……眠くて眠くてたまらなくなる……」

 抵抗しなきゃ。
 そう思っていても、メトロノームの音が心地よすぎて逆らえない。
 それに私の身体が、英理の言うことをききたいって、駄々をこねてる。
 私がどんなに言い聞かせても、私の身体は英理の言葉通りに気持ちよくなっていき、意識を手放していく。

「ふふっ、もうすっかり催眠状態になったね」
「ちがう……私、催眠、に……なんて」
「ううん、里彩は催眠術をかけられちゃったの」
「ぁぁ、私……催眠術に……ぅぅっ! ちがうもん……かかってなんて」
「かかってるよ。里彩は催眠術にかかてる」

 英理になんども催眠にかかっていると言われると、なんだか本当にそんな気分になってきてしまう。
 それに、英理の声が心地よく感じられて、頭の芯がぼんやりして、もうなにもかも言いなりになってしまいたくなる。

 英理の言葉に頷いてしまいたい……。
 自分の意思なんて手放して、英理の言いなりになってしまいたいっ!

「里彩は私の催眠術にかかっちゃった。いい?」
「…………はい」

 言っちゃった……。
 私、認めちゃった。

「うん。いい子ね」
「ぁ……」

 やだ、すっごく嬉しい。
 英理に『いい子』って言ってもらえたのがすっごく嬉しい。
 もっと英理に褒められたい。

「里彩には私にあんなことした罰として、今日一日私のいいなりのお人形さんになってもらうわ。大丈夫。もう里彩は私の言うことに逆らえない。いっぱいいっぱい命令して欲しい。そうだよね?」
「は……はい」

 留め具を付けてメトロノームを止めると、英理は私の耳元に口を近づけて、その甘い声でまた私に暗示をかけていく。

「さぁ里彩、あなたは服を脱ぎたくなってくる」
「え……ぁ……」
「服を脱ぎたくなる……着ているものを脱ぎたくなる……裸になって私に見てもらいたくなる」

 脱ぎたい……英理の前で裸になりたい……。

 そんなはしたない欲求が私の心に生まれて、それはどんどん強くなっていく。

「ほら、脱ぎたくなる……脱ぎたくなる……我慢しないで、裸になろうね里彩」

 耳元で囁く英理の声に導かれて、私は制服のボタンに手をかけた。
 ボタンを一つ外すたびに、なんだか心が満たされていくような感じがした。
 横を見ると、英理が優しい顔で私を見つめてくれている。
 そんな英理の瞳を見ていると、ますます言うことをききたくなってしまう。

 もういいや、脱いじゃえ。

 ブラウスとスカートを脱いで下着姿になってしまう。
 脱いだ服はキチンとたたんで英理のベッドに置いた。
 英理はじーっと私の身体を見ていた。
 下着姿なんて、体育の着替えの時とか何度も英理には見られてるはずなのに、なんだかドキドキする。

 ぅぅ、そんなにジロジロ見ないでよ……恥ずかしいよ……。

 でも私は、そんな英理の視線が気持ちよくてたまらなくて、もっと見られたい……この下着の中の部分まで、全部見て欲しいなんて、恥ずかしいことを考えてしまう。
 そして英理はそんな私の気持ちを見透かしたように、
「下着も、脱いで欲しいな」

 なんて言っちゃうんだ。

「うん……ぬぐ」

 恥ずかしい……恥ずかしいけど……英理の言葉に従いたいという気持ちの方がずっと強かった。
 ブラを外し、成長途中の胸が英理の視線にさらされる。

「むぅ」

 一瞬、英理の表情が不機嫌になった。

「負けた……」
「?」

 私、なにか英理を不愉快にさせるようなこと、したかな?

「あ、ううん。なんでもないよ」

 私の不安そうな視線に気づいた英理は慌てて頭を振ると、
「ほら、パンツも脱いで」

 残った最後の薄布を取り払うよう命令する。

「ぅぅっ」

 さすがにココは恥ずかしい。

 でも、英理の命令だから……いいよね、脱いでも……うん、脱いじゃうっ! え、えいっ!

 するっ

 思い切って一気にパンツを膝まで下ろす。

「あ……ふぁぁ」

 途端に羞恥心とある種の開放感が襲ってきて、背筋がぞくぞくってした。

「英理ぃ」

 泣きそうな顔で英理を見ると、身を乗り出して興味津々な様子で私を見ている。
 そんな英理を見て、分かってしまった。
 ああ、英理は楽しんでる。
 こんなに恥ずかしい思いをしている私をみて、楽しんでる。悦んでる。
 そして英理に悦ばれることに、私自身悦びを感じてしまっている。
 英理を悦ばせたい。もっともっと命令してほしい。そんな思いが、私を大胆にさせた。
 脱ぎかけたパンツを足から抜いて全裸になると、私は震える声で、
「脱いだよ……英理。私、次は何をすればいいかな?」

 なんて言ってしまう。

 そしたら英理の表情がぱぁっと輝いて、その変化を見た私はますます嬉しくなってしまうんだ。

「オナニーして見せて。私のこと、想いながら」

 ちょっと、後悔した。
 だけど身体は英理に命令される悦びに震えて、たちまち私はオナニーがしたくてたまらなくなってしまう。

「はい……仰せのままに」

 ぁぁ……私が塗り替えられていく。
 もっと……もっと命令して欲しい。
 恥ずかしいところを見せたい。

「ぁん!」

 立ったまま股間の割れ目に指を這わせると、それだけで身体に電流が走ったような感じがして、ついエッチな声が漏れてしまう。

「は……あ……っ、ぁ……はぁっ」

 英理はじっと、私を見つめている。
 私の口から漏れるいやらしい声に耳を傾けて。
 これって罰なんだよね。
 こんなに気持ちよくって、嬉しくて、いいのかなぁ。

「は……ああっ、ひら……りぃ」
「あはっ、濡れてきたよ。見られて、嬉しい?」
「うんっ……嬉し、いっ……んっ……ぁ」

 割れ目から漏れた恥ずかしい液体が太腿を伝う。

「もったいないなぁ」

 英理は私の太腿にそっと手を添え、足を伝う愛液を舐めとった。

「あ! 英理……」
「えへへ。ほら、続けて。近くで見てあげるから」
「う……うん……あっ、ああっ」

 より近くで見られてると思うと、なんだか敏感になったような気がする。

「うわ、里彩の指の動き……エロっ」
「やぁ……言わないでぇ」
「え? 本当にそう思ってる?」
「ぅ……そ、れは」

 反射的に目を泳がせるけど、すぐに英理の瞳に捕まってしまう。

「ほら……本当の気持ちを教えて」

 喉の奥から本音がこみ上げてきて、言わずにはいられなくなってしまう。

「言って、欲しいです。私の恥ずかしいところ……英理の口で、解説して欲しいです」

 うわぁ……何言ってるんだろ、私……。
 こんなの、まるで……。

「里彩は変態だね」
「ちっ! ちが……」
「違わないよぉ。ほらぁ、素直になって……里彩は心の中を全部しゃべっちゃう。隠し事はできない。ね?」
「はぅ……ああっ…………はい、里彩は……エッチな女の子です……英理に見られて、とっても、嬉しいんです」

 自分でも気づいてなかったいやらしい気持ちが溢れて止まらなくなる。
 私は割れ目を指で開いて、ナカの秘肉を英理に披露する。

「見て、里彩の……一番エッチなとこ……英理に見て欲しいの」

 お腹の奥が熱くなり、女の子の部分がきゅうって切なくなり、熱いトロリとしたものが溢れて指を濡らす。

「あ……は……」
「指、早くなってるよ」
「ぅぁ……そんなぁ」
「私を想って寂しくなると、そうやって慰めてたの?」
「う……うんっ!」
「朝も? 夜も?」
「だって……寂しいんだもん。私……こんなに英理のこと好きなのに……英理は私のこと、友達としか見てくれなくて」
「…………」

 沈黙した英理の表情からは私に対する感情は読めない。
 だけど心から溢れる私の想いは止まることをしらない。

「学校では英理のこと目で追って、家では英理のことを考えて、英理の夢を見て……朝起きて一番に考えるのはやっぱり英理のことだった……。大好きなの……英理、大好きっ!」

 想いを口にするごとに快感のランクがひとつずつ上がっていく。
 クリトリスを弄る指の速度はどんどん早くなり、絶頂はもう目前だった。

「あっ……あっ……もう、あ……ああっ」
「ほら、イッちゃいなよ」
「や……あ、ああああっ!!!!」

 英理の言葉に誘われて、あっという間にイッてしまった。

「は……ぁぁ……」

 お腹の奥がきゅうってなって、下半身が勝手にビクビクと震えてしまう。
 秘裂から愛液が溢れて両手がべとべとになってしまう。

「ふふ、見ちゃった。里彩のイクとこ」

 英理に言われて、頬がかぁーっと熱くなる。
 快感の熱が少しずつ引いて冷静さを取り戻してくると羞恥心がこみ上げてくる。
 慌てて股間を閉じて恥ずかしいところを手で隠す。

「だめだよ。隠したりしないで」

 英理の言葉に身体がピクンと震える。

「あ……ダメっ」
「ほら、足を広げて。手をどけて」

 私の身体は私の言うことなど聞かず、英理の言葉に従って一度は閉じた身体を開いていく。

「ゃ……だめぇ」

 イッた直後の身体は火照ってうっすらと汗ばんだ皮膚は上気してピンク色に染まっていた。
 女の子の部分は花が開いたようにふんわりと広がって物欲しそうにヒクヒクしながら新しい蜜をこぼしている。

「やだぁ、英理……見ないで……」

 懇願しても英理は私の身体を舐めるように見つめるのを止めてくれない。

「恥ずかしいでしょ……もっと恥ずかしくなるよ」

 英理の瞳が怪しく光る。

「恥ずかしくなる……里彩はもっともっと恥ずかしくなる」
「ぅぁ……ぁ……」
「自覚してるの? 好きな人の前でオナニーしちゃった。イクとこも見られちゃった」
「やめてぇ……お願い……」
「イッた時の里彩、可愛かったよ。色っぽい顔で色っぽい声で喘いで、お股全開にしちゃって夢中でイジイジしちゃって……」
「はぅ…………」

 あまりの恥ずかしさに顔が火が出そうなほど熱くなる。
 英理に自慰行為を観察された事実を心の中で反芻すると、女の子として一番恥ずかしいところを見られたみたいに感じて身体が震えてしまう。

「あ、あの……服、着てもいい?」

 なんとか場の空気を変えたくて、恐る恐る話しかける。

「ずっと裸だし……風邪、ひくといけないし……」
「ふぅん……」

 英理はニヤニヤと口元を歪める。

「寒いの?」
「う、うん」

 ダメ、と言われなくてホッとしたけど、
「じゃあお風呂にはいろうか。だから服は着なくていいよ」
「え、お風呂?」
「そう、お風呂。ほら、立って」

 英理に急かされて慌てて立ち上がる。

 でも、お風呂って……。



「ぅ…………」
「こら、目を逸らさないで。見たかったんでしょ?」
「そ……れは」
「ん?」
「見たい……です」

 脱衣所に着くなり、英理は私の見てる前で服を脱ぎだした。
 上着を脱いで下着姿になると、スレンダーな英理の身体が露になりドキドキしてしまう。
 胸はあんまり大きくないけど、無駄な肉の付かない長身のスタイル、特にスラっとした細長い足は下着姿だとより強調されて見える。
 ブラを外し、形の良い小振りな胸が露になる。

「……いつか超える」

 英理が悔しそうに口を尖らせる。
 胸、小さくても英理の身体はキレイだよ。
 そう思ったけど、口には出さないでおいた。
 パンツを脱ぐときはさすがに少し恥ずかしそうにしていたけど、ためらうことなく脱いでしまう。

「ぁ……」

 一糸纏わぬ英理の身体を前にして、私の頭の中はエッチなことでいっぱいになってしまった。
 ついさっき英理の目の前でオナニーして一度イッたのに、英理の裸に興奮してまたムラムラしてしまった。

「ふぅん」

 英理の視線が私の股間に向いて、意地悪な笑を浮かべた。

「あ……」

 溢れ出した恥ずかしい液体が割れ目から溢れて太腿まで垂れていた。
 慌てて股間を隠す私を英理は嬉しそうに眺めていた。

「おいで」

 十分に楽しんだのか、英理は扉を開けて浴室へと入った。
 浴槽には既にお湯が張られていた。……いつ沸かしたのだろう。

「まずは身体を洗わなくちゃね。座って」

 英理はシャワーから湯を出して手のひらで温度を測りながら手招きした。

「え、っと……」
「洗ってあげる。ね?」

 おいでおいでと手招きする英理に誘われるように、私はお風呂椅子に座った。

「熱かったら言ってね」

 シャワーから出たお湯が身体に当たる。

「んっ。大丈夫」

 シャワーのお湯は熱めが好きだ。
 身体の細胞の一つ一つが開いて疲れや汚れを洗い流してくれるような気がするから。
 そんなことを考えていると、英理の手のひらが目の前にかざされる。

「そう……手のひらを見つめて、じーっと見るのよ。意識を集中して、だんだん頭がぼーっとしてくるよ」

 英理の手のひらが私の視界を撫でるようにゆっくりと動く。
 その動きを追っていると、だんだん意識がぼんやりしてきてしまう。

「じーっと見ていると、だんだん手のひらが淡く光ってくる。ほら、ぼんやり光ってきたでしょ?」
「……うん」

 見つめていると、手のひらがぼんやりと光り出してきた。

「何色に光ってる?」
「……赤……ううん、オレンジ?」

 赤とオレンジの中間のような、あったかそうな色。

「ふふっ、これで私の手は魔法の手になったよ。この手に触られたトコロはとっても気持ちよくなるよ。試してみよっか」

 言いながら英理は淡く光った魔法の手で私の肩に触れた。

「あ……気持ちいい」

 英理に触れられた部分がほんわりと熱を帯びたように暖かくなって、くすぐったいようなじぃんとするような、そんな心地よさが与えられた。

「ふふっ、気持ちいいでしょ。ここも……」
「あっ、やん」

 気を良くした英理は肩から首筋、喉、胸元とだんだん敏感なところに触れていく。
 そして触れられたところがいちいち気持ちよくて、だんだんヘンな気分になってしまう。

「あ……はは」
「ふふん、大分いい感じになってきたね」

 少し前にシャワーはとまっているのに、上気してきた私の身体を見て英理は満足気に頷くと、
「じゃあ身体を洗おっか」

 そう言って手のひらにボディソープをつけて泡立てた。

「え、英理が洗ってくれるの?」
「そうだよ。ほら、力抜いて」

 そう言って英理はボディソープの泡がたっぷりと付いた魔法の手で私の背中に触れた。

「んっ!」

 途端に背中から強烈な快感が伝わる。

「ふ……ああっ」

 軽く擦られるだけで、背中全体がぞくぞくするほどの快感で満たされる。

「動かない。洗いにくいでしょ」

 英理に言われて慌てて身体を固くする。だけど、
「んっ! くふっ……やっ、だめぇ」

 与えられる快感があまりにも強烈で、ついつい身じろぎしてしまう。
 そんな調子で肩、脇、腕と丁寧に……そりゃあもう丁寧に魔法の手によって私の身体は洗われていく。
 敏感な脇の下を洗われたときはそれだけでどうにかなりそうだった。

「あ……」

 腕を洗った流れで手をとられた。

「手もきれいにしようね~」

 指の一本一本を指先から丁寧に洗っていく。

「ぁ……ぁ……」

 指って、性感帯だっけ?

 指を絡めてるだけで、なんだか気持ちいい。
 それに、英理の触り方がなんだかいやらしい。
 指と指をこすり合わせながら絡めてにぎにぎして……。

「どうしたの里彩、ぽーっとして」
「ぁ……なんでも……」
「んー?」

 いたずらっぽい笑みを浮かべて英理は私の顔をのぞき込む。

 絶対わかっててやってる。

 指の感触に満足すると、喉から鎖骨、胸へと身体の前のほうを洗い始めた。
 英理の魔法の手は本当に気持ちいい。
 英理の手が胸に近づいてきて、期待でドキドキしてしまう。
 ところが英理の手が私の胸に達しようとしたところで手は胸を避け、腰を洗い始めた。

「……え?」
「ん? どうかした?」
「あ……ううん」

 気のせいかな……。

 そう思っているうちに英理の手はお腹を洗い、おへそ、太腿、股間へとさしかかった。
 だがここでも英理は股間を避け、太腿、ふくらはぎの順に洗っていく。

 焦らされてる?!

 かぁっ……と顔が熱くなった。

「ひ、英理……」
「ん? なぁに?」

 英理はニマニマしたいやらしい笑みをうかべていた。
 私のおねだりを待っているんだ。

「う、ううん。なんでもないよ……」

 私は目を逸らして身体の疼きを抑えようとする。
 だが一旦くすぶり始めた火種は決して消えるようなことはなく、じわじわと心の奥を炙り続けた。

「はい、おしまい」

 足を洗い終え、とうとう英理は胸とアソコを洗ってくれなかった。

「ね、ねぇ……英理、まだ……洗ってないところが……」
「えっ? どこ?」

 英理は白々しくとぼけて見せた。

「ぅぅ……英理ぃ……」
「んん? どこを洗ってほしいの? 大きな声ではっきりと言ってごらん」
「はぁ……はぁ……胸……おっぱいと……お、おまたを洗ってください!」

 うう~恥ずかしいよぉ……

「ふぁっ」

 英理の手が私の胸を揉むようにして洗い始めた。

「くすっ…乳首、硬くなってるわよ」
「ぁ…ぁぁ…んんっ」

 気持ちよくてたまらない。
 ボディソープのせいですべりがよくなっているため、ぬるぬるした感触が加わり快感が倍増している。

「さて、こっちは……」

 英理の手が股間にのびる。

「あっ!」
「あれぇ? ずいぶんぬるぬるしてるね」

 英理は割れ目に指を這わせながら楽しそうに言った。

「ボ、ボディソープのせいだよっ」
「ふぅん…にしてはずいぶん泡立ちがわるいね」

 英理は私の目の前で親指と人差し指を広げながら言った。
 指と指の間には私の愛液が糸をひいていて、それを見た私は恥ずかしい気持ちが湧き上がってきてますます興奮してしまう。

「くすっ……」

 英理は再び私の股間に手を潜り込ませて愛撫……もとい、洗うのを再開した。

「んあっ、あ……ぁぁ……ああっ」

 英理の魔法の手は強烈な快感を私にもたらし、焦らされたことも相まって確実に絶頂へと導いていく。

「はぁ…ああん…んんっ」

 英理の指は執拗にクリトリスを弄り続け、私はたちまち我慢できなくなってしまう。

「ああっ……は……あ……んうっ」
「うわぁ、ぐしょぐしょ。乳首もこんなに固くして。おかしいなぁ、洗ってるだけなのにねぇ」
「あ、だめっ……もう、私っ」
「んん? 何がダメなの?」

 英理の指の動きが早くなっていく。

「ん? イキそうなの? ねぇ、ねぇ」
「ぅああっ、気持ち……い、やぁっ……!」
「そこまでっ!」

 いきなりの英理の大声にびっくりして、思わず私は我にかえった。

「だめだよ里彩、イっちゃだめ。勝手にイっちゃだめだよ」

 小さい子に言い聞かせるように英理は「イっちゃダメ」と繰り返した。

「いい? 里彩はイケない。どんなに気持ちよくてもイケないよ。私がいいって言うまで絶対にイクことはできない」
「あ……ぁぁ……」

 身体は火照ったまま。
 敏感なところはジンジンして、ちょっと触ってだけでイケそうなのに。

「ほら、試しに自分でいじってごらん。きっとすっごく気持ちいいよ。でも絶対にイケないけどね。あははっ」

 慌てて自ら割れ目を押し開き、クリトリスを弄り始める。

「ぁ……あぅっ! はぁっ……ああっ」

 気持ちいい……もうアソコはぐちゃぐちゃで、クリトリスも限界まで固くなって、こんなに気持ちいいのに、
「はぅっ! あぁ……なんで……なんでイケないのぉ? ぁあっ!」

 最後のひと押しが足りない。
 今にも絶頂の波に飲み込まれそうになるのに、あと少しというところで快感の波が引いてしまう。
 かといって身体が冷めることもない。
 永遠に続く生殺しだ。

「里彩、イキたい?」
「うんっ! イキたい……イキたいよぉ」
「あ~あ、里彩は変態だね。友達の前でいやらしい姿晒して、ヨダレたらしてエッチな声出して。こんな娘と私友達だったなんて、あ~あ」

 容赦のない英理の罵倒が私のプライドをズタズタにしていく。
 だけどそんな安っぽいプライドよりも、目の前の快楽のほうが私には何倍も魅力的に感じられた。

「はい……私は、変態な女の子、です…んあっ…英理様に、見られて、あっ……興奮、してます」
「ふふ、そんな変態な英理には躾が必要ね」

 言いながら英理は私の髪をわしづかみにし、私の顔を自分の股間に押し付けた。

「舐めなさい。ふふ……こういうことされると興奮するんでしょ? 変態里彩ちゃん」
「ふぁ…ん…ちゅ…んっ…ちゅ…ぴちゃ」

 私は夢中になって英理のアソコを舐めた。
 英理のアソコは私を魅了するいい匂いがして、私の心をトロトロに溶かしていく。

「ん……はっ……上手よ、英理」

 上手と言われて私は嬉しくなり、ますます一生懸命に舐めていく。
 同時に自慰も続けてゆき、悦びと興奮とでまたイってしまいそうになる。

「ん……んんっ」
「いいよ……んっ、許してあげる……私をイかせることができたら……ぁ……里彩もイっていいわよ」

 英理からお許しをもらって、私は自分への愛撫をゆるめ、英理への愛撫に集中した。

「あっ……は……ああっ」

 英理の手が私の頭の上に置かれ、優しくなでなでされる。

「り……あ……ああっ」

 英理がうわごとのように私の名前を呼んでいる。
 私が英理を気持ちよくしているということが嬉しい。
 もっと感じてほしい。
 もっと英理のためにご奉仕したい。
 私はあいてるほうの手をそっと英理のおしりの穴にあてがった。

「っ! そこは……」

 私は指先でやさしく穴の周りをなぞっていく。
 もちろん舌によるクリへの愛撫も続けていく。

「あ……ああっ……ふぁ……んんっ」
「んむっ……英理……私の手で、イって……」

 愛液をまぶした指でおしりを愛撫しながら舌先でクリをはじく。
 英理はしばらく耐えていたが、我慢できなくなったのか自ら足を大きくひらき、私を受け入れた。

「あっ……ああっ……あ、ダメ……イっちゃ、イっちゃうっ! ……あっ、あっ、あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 英理はとうとう快感に屈し絶頂を迎えた。

「ん…んっ、こくっ」

 英理のアソコからふきだした絶頂の証を私は思わず飲んでしまう。
 とたんに強烈な性感が私をおそい、自分を慰めていたほうの指の動きが急激に早くなった。

「あぅ、あっ、ふああぁぁぁぁぁっ!!!」

 快感に抗う間もなく、私は絶頂を迎えてしまい、ぐったりと崩れてしまう。

「はぁ……はぁ……」
「里彩……よかったわよ」

 英理はそう言ってシャワーで私の身体についた泡を流すと、お姫様だっこで湯船にいれてくれた。
 英理は膝の上に私を乗せ、後ろから抱きつくような姿勢で一緒に暖まった。
 少し熱めのお湯がとても心地よい。

「可愛い……里彩」

 背中にちゅっちゅっとキスしながら、甘い言葉を囁く。
 快感の余韻で満足に身体が動かないのをいいことに、背中や首筋にたくさんキスマークをつけられてしまった。

 どうせキスするなら、唇にしてほしいのに……。



 結局あのあと、私は英理の家に泊まった。
 英理と一緒のベッドに寝て、英理の作ったご飯を食べて、英理の一緒に登校した。
 それだけを見れば私の望んだ恋人同士そのものの展開なのだけど、英理はあれからなにも言ってくれない。
 催眠のことについてなにも触れない。
 私のことを好きとも嫌いとも言わない。
 あの夜に私のことを催眠術で好きにした英理はなんだったのだろう。
 英理の気持ちが知りたい。
 けど、あんなに英理を怒らせた私がそのことを聞くこともできず、とりあえずは上機嫌の英理をみているとこのままでもいいか、とも思って躊躇してしまうのだった。

「あ……」

 校門の前に見覚えのある人達が立っているのが見えた。
 湯上谷先輩と上月先輩だ。

「おはようお二方」
「おはようございます。先輩」
「あれ、高峰さん……今日はスカートなんだ。珍しいね」
「ええ、たまには」

 上月先輩と英理はそんな和やかな会話を交わしている。

「ふぅ~ん」

 湯上谷先輩は探るような目で私たちを見ると、
「ちゃんと仲直りできたみたいだね」

 安心したような声で話しかけてきた。

「別に喧嘩してたわけじゃないと思うけど」

 後ろから少し呆れたような声で上月先輩が続く。

「ええ、お陰様で」
「…………」

 私はなんだかバツが悪くなり、二人から目を逸らした。
 湯上谷先輩はそんな私に気づいたようで、
「まぁ魔が差すってこともあるけどさ、相手の気持ちも考えようね」

 なんて説教ぶってきた。

「はい……」

 なぜだか知らないけど、この人に言われると不愉快だ。
 英理も上月先輩も、そんな生暖かい目で見ないで欲しい。
 そういえば、私はこの人に訊いてみたいことがあった。

「湯上谷先輩、あの……」
「ん?」
「英理が私の催眠にかかってるって見抜いたのは湯上谷先輩ですよね」
「そうだよ」
「どうしてわかったんですか?」

 英理の表情がハッとした慌てたものに変わり、上月先輩が気まずそうに目を泳がせる。

「ああ。私も以前似たようなことをしちゃったことがあってさ。まぁ、そこの未来ちゃんのことなんだけどね。詳しいことは省くけど。
 その時の未来ちゃんの様子と高峰さんの様子が同じだったからさ」
「上月先輩と英理が、同じ?」
「うん。自分の気持ちを抑えられてるって言うか、好きな人に自分の気持ちを言えない苦しみって言うか、そんな気配があったからさ」
「え、それって……うわっ!」

 言葉と思考がまとまる前に私は腕を引っ張られて校内に連れ込まれた。

「ちょ、ちょっと英理!」
「……………」

 大股で足早に歩いて私を引っ張る英理に私の声は聞こえてないようだった。



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >



「う……んんっ」

 目を開けると、見慣れない光景が広がっていた。
 部屋の壁紙、机やベッドの位置、明らかに私の部屋じゃない。

 ここはどこ?

「起きた?」

 声がした方を見ると、椅子に座った英理が私を見ていた。

「あの、私……あ!」

 一瞬ぼーっとして、すぐに記憶が戻った。
 泣きながら私がしたことを英理に謝ってる最中に英理に抱きしめられて、そしたらなぜか急に眠くなって……。

「あ……英理、私……」
「ねぇ、里彩」

 なにかしゃべろうと口を開いた私の言葉に被さるように英理は私の名前を呼んだ。

「私ね、里彩が許せない」

 頭がクラッとした。

「里彩が私にしたこと、すごくひどいことだと思うよ。やっぱり私、簡単には許せないよ」
「ぅ……」
「でもね、里彩は反省してるみたいだし、いっぱい謝ってくれたし」

 うつむいた顔を上げて英理を見ると、なぜだかあんまり怒っているようには見えなかった。

「それに、『なんでもする』って、言ったよね」

 言った。
 思わず出て来ちゃった言葉だったけど、英理に私がしたこと許してもらえるなら……。

「それは、本当?」
「う、うん! 本当だよ」
「ふぅん……」

 半信半疑、というような表情で英理は私を見つめた。

「本当に本当?」
「ほ、本当に!」

 私が必死で繰り返すと英理は、にやぁ、と、見たこともないような邪悪な笑みを浮かべた。

「結構よ。じゃあ早速だけど、これを見てくれる?」

 そう言って英理は私の鞄から何かを取り出し、テーブルの上に置いた。

「あ、それ……!」

 それは、私が昨日使ったメトロノームだった。

「これをこうして、っと」

 英理が留め具を外すとメトロノームは規則的なリズムを奏でる。

 カチッ カチッ

「あ…………」

 その音を聞くと、なんだか急に身体から力が抜けていく。

「ほら、里彩……この音に意識を集中して」

 カチッ カチッ カチッ

 だんだん意識がぼんやりしてくる。
 メトロノームの音が頭の中で心地よく響いてくる。

 これって、もしかして……。

「そう……その調子よ……メトロノームの音を聞いていると、だんだん意識がうつろになっていく。気持ちよ~くなっていく」

 やっぱり、英理は私に催眠術をかけようとしている。

「ゃ……だ……め……」
「だめじゃないよ? 里彩はだんだん眠くなる……眠くて眠くてたまらなくなる……」

 抵抗しなきゃ。
 そう思っていても、メトロノームの音が心地よすぎて逆らえない。
 それに私の身体が、英理の言うことをききたいって、駄々をこねてる。
 私がどんなに言い聞かせても、私の身体は英理の言葉通りに気持ちよくなっていき、意識を手放していく。

「ふふっ、もうすっかり催眠状態になったね」
「ちがう……私、催眠、に……なんて」
「ううん、里彩は催眠術をかけられちゃったの」
「ぁぁ、私……催眠術に……ぅぅっ! ちがうもん……かかってなんて」
「かかってるよ。里彩は催眠術にかかてる」

 英理になんども催眠にかかっていると言われると、なんだか本当にそんな気分になってきてしまう。
 それに、英理の声が心地よく感じられて、頭の芯がぼんやりして、もうなにもかも言いなりになってしまいたくなる。

 英理の言葉に頷いてしまいたい……。
 自分の意思なんて手放して、英理の言いなりになってしまいたいっ!

「里彩は私の催眠術にかかっちゃった。いい?」
「…………はい」

 言っちゃった……。
 私、認めちゃった。

「うん。いい子ね」
「ぁ……」

 やだ、すっごく嬉しい。
 英理に『いい子』って言ってもらえたのがすっごく嬉しい。
 もっと英理に褒められたい。

「里彩には私にあんなことした罰として、今日一日私のいいなりのお人形さんになってもらうわ。大丈夫。もう里彩は私の言うことに逆らえない。いっぱいいっぱい命令して欲しい。そうだよね?」
「は……はい」

 留め具を付けてメトロノームを止めると、英理は私の耳元に口を近づけて、その甘い声でまた私に暗示をかけていく。

「さぁ里彩、あなたは服を脱ぎたくなってくる」
「え……ぁ……」
「服を脱ぎたくなる……着ているものを脱ぎたくなる……裸になって私に見てもらいたくなる」

 脱ぎたい……英理の前で裸になりたい……。

 そんなはしたない欲求が私の心に生まれて、それはどんどん強くなっていく。

「ほら、脱ぎたくなる……脱ぎたくなる……我慢しないで、裸になろうね里彩」

 耳元で囁く英理の声に導かれて、私は制服のボタンに手をかけた。
 ボタンを一つ外すたびに、なんだか心が満たされていくような感じがした。
 横を見ると、英理が優しい顔で私を見つめてくれている。
 そんな英理の瞳を見ていると、ますます言うことをききたくなってしまう。

 もういいや、脱いじゃえ。

 ブラウスとスカートを脱いで下着姿になってしまう。
 脱いだ服はキチンとたたんで英理のベッドに置いた。
 英理はじーっと私の身体を見ていた。
 下着姿なんて、体育の着替えの時とか何度も英理には見られてるはずなのに、なんだかドキドキする。

 ぅぅ、そんなにジロジロ見ないでよ……恥ずかしいよ……。

 でも私は、そんな英理の視線が気持ちよくてたまらなくて、もっと見られたい……この下着の中の部分まで、全部見て欲しいなんて、恥ずかしいことを考えてしまう。
 そして英理はそんな私の気持ちを見透かしたように、
「下着も、脱いで欲しいな」

 なんて言っちゃうんだ。

「うん……ぬぐ」

 恥ずかしい……恥ずかしいけど……英理の言葉に従いたいという気持ちの方がずっと強かった。
 ブラを外し、成長途中の胸が英理の視線にさらされる。

「むぅ」

 一瞬、英理の表情が不機嫌になった。

「負けた……」
「?」

 私、なにか英理を不愉快にさせるようなこと、したかな?

「あ、ううん。なんでもないよ」

 私の不安そうな視線に気づいた英理は慌てて頭を振ると、
「ほら、パンツも脱いで」

 残った最後の薄布を取り払うよう命令する。

「ぅぅっ」

 さすがにココは恥ずかしい。

 でも、英理の命令だから……いいよね、脱いでも……うん、脱いじゃうっ! え、えいっ!

 するっ

 思い切って一気にパンツを膝まで下ろす。

「あ……ふぁぁ」

 途端に羞恥心とある種の開放感が襲ってきて、背筋がぞくぞくってした。

「英理ぃ」

 泣きそうな顔で英理を見ると、身を乗り出して興味津々な様子で私を見ている。
 そんな英理を見て、分かってしまった。
 ああ、英理は楽しんでる。
 こんなに恥ずかしい思いをしている私をみて、楽しんでる。悦んでる。
 そして英理に悦ばれることに、私自身悦びを感じてしまっている。
 英理を悦ばせたい。もっともっと命令してほしい。そんな思いが、私を大胆にさせた。
 脱ぎかけたパンツを足から抜いて全裸になると、私は震える声で、
「脱いだよ……英理。私、次は何をすればいいかな?」

 なんて言ってしまう。

 そしたら英理の表情がぱぁっと輝いて、その変化を見た私はますます嬉しくなってしまうんだ。

「オナニーして見せて。私のこと、想いながら」

 ちょっと、後悔した。
 だけど身体は英理に命令される悦びに震えて、たちまち私はオナニーがしたくてたまらなくなってしまう。

「はい……仰せのままに」

 ぁぁ……私が塗り替えられていく。
 もっと……もっと命令して欲しい。
 恥ずかしいところを見せたい。

「ぁん!」

 立ったまま股間の割れ目に指を這わせると、それだけで身体に電流が走ったような感じがして、ついエッチな声が漏れてしまう。

「は……あ……っ、ぁ……はぁっ」

 英理はじっと、私を見つめている。
 私の口から漏れるいやらしい声に耳を傾けて。
 これって罰なんだよね。
 こんなに気持ちよくって、嬉しくて、いいのかなぁ。

「は……ああっ、ひら……りぃ」
「あはっ、濡れてきたよ。見られて、嬉しい?」
「うんっ……嬉し、いっ……んっ……ぁ」

 割れ目から漏れた恥ずかしい液体が太腿を伝う。

「もったいないなぁ」

 英理は私の太腿にそっと手を添え、足を伝う愛液を舐めとった。

「あ! 英理……」
「えへへ。ほら、続けて。近くで見てあげるから」
「う……うん……あっ、ああっ」

 より近くで見られてると思うと、なんだか敏感になったような気がする。

「うわ、里彩の指の動き……エロっ」
「やぁ……言わないでぇ」
「え? 本当にそう思ってる?」
「ぅ……そ、れは」

 反射的に目を泳がせるけど、すぐに英理の瞳に捕まってしまう。

「ほら……本当の気持ちを教えて」

 喉の奥から本音がこみ上げてきて、言わずにはいられなくなってしまう。

「言って、欲しいです。私の恥ずかしいところ……英理の口で、解説して欲しいです」

 うわぁ……何言ってるんだろ、私……。
 こんなの、まるで……。

「里彩は変態だね」
「ちっ! ちが……」
「違わないよぉ。ほらぁ、素直になって……里彩は心の中を全部しゃべっちゃう。隠し事はできない。ね?」
「はぅ……ああっ…………はい、里彩は……エッチな女の子です……英理に見られて、とっても、嬉しいんです」

 自分でも気づいてなかったいやらしい気持ちが溢れて止まらなくなる。
 私は割れ目を指で開いて、ナカの秘肉を英理に披露する。

「見て、里彩の……一番エッチなとこ……英理に見て欲しいの」

 お腹の奥が熱くなり、女の子の部分がきゅうって切なくなり、熱いトロリとしたものが溢れて指を濡らす。

「あ……は……」
「指、早くなってるよ」
「ぅぁ……そんなぁ」
「私を想って寂しくなると、そうやって慰めてたの?」
「う……うんっ!」
「朝も? 夜も?」
「だって……寂しいんだもん。私……こんなに英理のこと好きなのに……英理は私のこと、友達としか見てくれなくて」
「…………」

 沈黙した英理の表情からは私に対する感情は読めない。
 だけど心から溢れる私の想いは止まることをしらない。

「学校では英理のこと目で追って、家では英理のことを考えて、英理の夢を見て……朝起きて一番に考えるのはやっぱり英理のことだった……。大好きなの……英理、大好きっ!」

 想いを口にするごとに快感のランクがひとつずつ上がっていく。
 クリトリスを弄る指の速度はどんどん早くなり、絶頂はもう目前だった。

「あっ……あっ……もう、あ……ああっ」
「ほら、イッちゃいなよ」
「や……あ、ああああっ!!!!」

 英理の言葉に誘われて、あっという間にイッてしまった。

「は……ぁぁ……」

 お腹の奥がきゅうってなって、下半身が勝手にビクビクと震えてしまう。
 秘裂から愛液が溢れて両手がべとべとになってしまう。

「ふふ、見ちゃった。里彩のイクとこ」

 英理に言われて、頬がかぁーっと熱くなる。
 快感の熱が少しずつ引いて冷静さを取り戻してくると羞恥心がこみ上げてくる。
 慌てて股間を閉じて恥ずかしいところを手で隠す。

「だめだよ。隠したりしないで」

 英理の言葉に身体がピクンと震える。

「あ……ダメっ」
「ほら、足を広げて。手をどけて」

 私の身体は私の言うことなど聞かず、英理の言葉に従って一度は閉じた身体を開いていく。

「ゃ……だめぇ」

 イッた直後の身体は火照ってうっすらと汗ばんだ皮膚は上気してピンク色に染まっていた。
 女の子の部分は花が開いたようにふんわりと広がって物欲しそうにヒクヒクしながら新しい蜜をこぼしている。

「やだぁ、英理……見ないで……」

 懇願しても英理は私の身体を舐めるように見つめるのを止めてくれない。

「恥ずかしいでしょ……もっと恥ずかしくなるよ」

 英理の瞳が怪しく光る。

「恥ずかしくなる……里彩はもっともっと恥ずかしくなる」
「ぅぁ……ぁ……」
「自覚してるの? 好きな人の前でオナニーしちゃった。イクとこも見られちゃった」
「やめてぇ……お願い……」
「イッた時の里彩、可愛かったよ。色っぽい顔で色っぽい声で喘いで、お股全開にしちゃって夢中でイジイジしちゃって……」
「はぅ…………」

 あまりの恥ずかしさに顔が火が出そうなほど熱くなる。
 英理に自慰行為を観察された事実を心の中で反芻すると、女の子として一番恥ずかしいところを見られたみたいに感じて身体が震えてしまう。

「あ、あの……服、着てもいい?」

 なんとか場の空気を変えたくて、恐る恐る話しかける。

「ずっと裸だし……風邪、ひくといけないし……」
「ふぅん……」

 英理はニヤニヤと口元を歪める。

「寒いの?」
「う、うん」

 ダメ、と言われなくてホッとしたけど、
「じゃあお風呂にはいろうか。だから服は着なくていいよ」
「え、お風呂?」
「そう、お風呂。ほら、立って」

 英理に急かされて慌てて立ち上がる。

 でも、お風呂って……。



「ぅ…………」
「こら、目を逸らさないで。見たかったんでしょ?」
「そ……れは」
「ん?」
「見たい……です」

 脱衣所に着くなり、英理は私の見てる前で服を脱ぎだした。
 上着を脱いで下着姿になると、スレンダーな英理の身体が露になりドキドキしてしまう。
 胸はあんまり大きくないけど、無駄な肉の付かない長身のスタイル、特にスラっとした細長い足は下着姿だとより強調されて見える。
 ブラを外し、形の良い小振りな胸が露になる。

「……いつか超える」

 英理が悔しそうに口を尖らせる。
 胸、小さくても英理の身体はキレイだよ。
 そう思ったけど、口には出さないでおいた。
 パンツを脱ぐときはさすがに少し恥ずかしそうにしていたけど、ためらうことなく脱いでしまう。

「ぁ……」

 一糸纏わぬ英理の身体を前にして、私の頭の中はエッチなことでいっぱいになってしまった。
 ついさっき英理の目の前でオナニーして一度イッたのに、英理の裸に興奮してまたムラムラしてしまった。

「ふぅん」

 英理の視線が私の股間に向いて、意地悪な笑を浮かべた。

「あ……」

 溢れ出した恥ずかしい液体が割れ目から溢れて太腿まで垂れていた。
 慌てて股間を隠す私を英理は嬉しそうに眺めていた。

「おいで」

 十分に楽しんだのか、英理は扉を開けて浴室へと入った。
 浴槽には既にお湯が張られていた。……いつ沸かしたのだろう。

「まずは身体を洗わなくちゃね。座って」

 英理はシャワーから湯を出して手のひらで温度を測りながら手招きした。

「え、っと……」
「洗ってあげる。ね?」

 おいでおいでと手招きする英理に誘われるように、私はお風呂椅子に座った。

「熱かったら言ってね」

 シャワーから出たお湯が身体に当たる。

「んっ。大丈夫」

 シャワーのお湯は熱めが好きだ。
 身体の細胞の一つ一つが開いて疲れや汚れを洗い流してくれるような気がするから。
 そんなことを考えていると、英理の手のひらが目の前にかざされる。

「そう……手のひらを見つめて、じーっと見るのよ。意識を集中して、だんだん頭がぼーっとしてくるよ」

 英理の手のひらが私の視界を撫でるようにゆっくりと動く。
 その動きを追っていると、だんだん意識がぼんやりしてきてしまう。

「じーっと見ていると、だんだん手のひらが淡く光ってくる。ほら、ぼんやり光ってきたでしょ?」
「……うん」

 見つめていると、手のひらがぼんやりと光り出してきた。

「何色に光ってる?」
「……赤……ううん、オレンジ?」

 赤とオレンジの中間のような、あったかそうな色。

「ふふっ、これで私の手は魔法の手になったよ。この手に触られたトコロはとっても気持ちよくなるよ。試してみよっか」

 言いながら英理は淡く光った魔法の手で私の肩に触れた。

「あ……気持ちいい」

 英理に触れられた部分がほんわりと熱を帯びたように暖かくなって、くすぐったいようなじぃんとするような、そんな心地よさが与えられた。

「ふふっ、気持ちいいでしょ。ここも……」
「あっ、やん」

 気を良くした英理は肩から首筋、喉、胸元とだんだん敏感なところに触れていく。
 そして触れられたところがいちいち気持ちよくて、だんだんヘンな気分になってしまう。

「あ……はは」
「ふふん、大分いい感じになってきたね」

 少し前にシャワーはとまっているのに、上気してきた私の身体を見て英理は満足気に頷くと、
「じゃあ身体を洗おっか」

 そう言って手のひらにボディソープをつけて泡立てた。

「え、英理が洗ってくれるの?」
「そうだよ。ほら、力抜いて」

 そう言って英理はボディソープの泡がたっぷりと付いた魔法の手で私の背中に触れた。

「んっ!」

 途端に背中から強烈な快感が伝わる。

「ふ……ああっ」

 軽く擦られるだけで、背中全体がぞくぞくするほどの快感で満たされる。

「動かない。洗いにくいでしょ」

 英理に言われて慌てて身体を固くする。だけど、
「んっ! くふっ……やっ、だめぇ」

 与えられる快感があまりにも強烈で、ついつい身じろぎしてしまう。
 そんな調子で肩、脇、腕と丁寧に……そりゃあもう丁寧に魔法の手によって私の身体は洗われていく。
 敏感な脇の下を洗われたときはそれだけでどうにかなりそうだった。

「あ……」

 腕を洗った流れで手をとられた。

「手もきれいにしようね~」

 指の一本一本を指先から丁寧に洗っていく。

「ぁ……ぁ……」

 指って、性感帯だっけ?

 指を絡めてるだけで、なんだか気持ちいい。
 それに、英理の触り方がなんだかいやらしい。
 指と指をこすり合わせながら絡めてにぎにぎして……。

「どうしたの里彩、ぽーっとして」
「ぁ……なんでも……」
「んー?」

 いたずらっぽい笑みを浮かべて英理は私の顔をのぞき込む。

 絶対わかっててやってる。

 指の感触に満足すると、喉から鎖骨、胸へと身体の前のほうを洗い始めた。
 英理の魔法の手は本当に気持ちいい。
 英理の手が胸に近づいてきて、期待でドキドキしてしまう。
 ところが英理の手が私の胸に達しようとしたところで手は胸を避け、腰を洗い始めた。

「……え?」
「ん? どうかした?」
「あ……ううん」

 気のせいかな……。

 そう思っているうちに英理の手はお腹を洗い、おへそ、太腿、股間へとさしかかった。
 だがここでも英理は股間を避け、太腿、ふくらはぎの順に洗っていく。

 焦らされてる?!

 かぁっ……と顔が熱くなった。

「ひ、英理……」
「ん? なぁに?」

 英理はニマニマしたいやらしい笑みをうかべていた。
 私のおねだりを待っているんだ。

「う、ううん。なんでもないよ……」

 私は目を逸らして身体の疼きを抑えようとする。
 だが一旦くすぶり始めた火種は決して消えるようなことはなく、じわじわと心の奥を炙り続けた。

「はい、おしまい」

 足を洗い終え、とうとう英理は胸とアソコを洗ってくれなかった。

「ね、ねぇ……英理、まだ……洗ってないところが……」
「えっ? どこ?」

 英理は白々しくとぼけて見せた。

「ぅぅ……英理ぃ……」
「んん? どこを洗ってほしいの? 大きな声ではっきりと言ってごらん」
「はぁ……はぁ……胸……おっぱいと……お、おまたを洗ってください!」

 うう~恥ずかしいよぉ……

「ふぁっ」

 英理の手が私の胸を揉むようにして洗い始めた。

「くすっ…乳首、硬くなってるわよ」
「ぁ…ぁぁ…んんっ」

 気持ちよくてたまらない。
 ボディソープのせいですべりがよくなっているため、ぬるぬるした感触が加わり快感が倍増している。

「さて、こっちは……」

 英理の手が股間にのびる。

「あっ!」
「あれぇ? ずいぶんぬるぬるしてるね」

 英理は割れ目に指を這わせながら楽しそうに言った。

「ボ、ボディソープのせいだよっ」
「ふぅん…にしてはずいぶん泡立ちがわるいね」

 英理は私の目の前で親指と人差し指を広げながら言った。
 指と指の間には私の愛液が糸をひいていて、それを見た私は恥ずかしい気持ちが湧き上がってきてますます興奮してしまう。

「くすっ……」

 英理は再び私の股間に手を潜り込ませて愛撫……もとい、洗うのを再開した。

「んあっ、あ……ぁぁ……ああっ」

 英理の魔法の手は強烈な快感を私にもたらし、焦らされたことも相まって確実に絶頂へと導いていく。

「はぁ…ああん…んんっ」

 英理の指は執拗にクリトリスを弄り続け、私はたちまち我慢できなくなってしまう。

「ああっ……は……あ……んうっ」
「うわぁ、ぐしょぐしょ。乳首もこんなに固くして。おかしいなぁ、洗ってるだけなのにねぇ」
「あ、だめっ……もう、私っ」
「んん? 何がダメなの?」

 英理の指の動きが早くなっていく。

「ん? イキそうなの? ねぇ、ねぇ」
「ぅああっ、気持ち……い、やぁっ……!」
「そこまでっ!」

 いきなりの英理の大声にびっくりして、思わず私は我にかえった。

「だめだよ里彩、イっちゃだめ。勝手にイっちゃだめだよ」

 小さい子に言い聞かせるように英理は「イっちゃダメ」と繰り返した。

「いい? 里彩はイケない。どんなに気持ちよくてもイケないよ。私がいいって言うまで絶対にイクことはできない」
「あ……ぁぁ……」

 身体は火照ったまま。
 敏感なところはジンジンして、ちょっと触ってだけでイケそうなのに。

「ほら、試しに自分でいじってごらん。きっとすっごく気持ちいいよ。でも絶対にイケないけどね。あははっ」

 慌てて自ら割れ目を押し開き、クリトリスを弄り始める。

「ぁ……あぅっ! はぁっ……ああっ」

 気持ちいい……もうアソコはぐちゃぐちゃで、クリトリスも限界まで固くなって、こんなに気持ちいいのに、
「はぅっ! あぁ……なんで……なんでイケないのぉ? ぁあっ!」

 最後のひと押しが足りない。
 今にも絶頂の波に飲み込まれそうになるのに、あと少しというところで快感の波が引いてしまう。
 かといって身体が冷めることもない。
 永遠に続く生殺しだ。

「里彩、イキたい?」
「うんっ! イキたい……イキたいよぉ」
「あ~あ、里彩は変態だね。友達の前でいやらしい姿晒して、ヨダレたらしてエッチな声出して。こんな娘と私友達だったなんて、あ~あ」

 容赦のない英理の罵倒が私のプライドをズタズタにしていく。
 だけどそんな安っぽいプライドよりも、目の前の快楽のほうが私には何倍も魅力的に感じられた。

「はい……私は、変態な女の子、です…んあっ…英理様に、見られて、あっ……興奮、してます」
「ふふ、そんな変態な英理には躾が必要ね」

 言いながら英理は私の髪をわしづかみにし、私の顔を自分の股間に押し付けた。

「舐めなさい。ふふ……こういうことされると興奮するんでしょ? 変態里彩ちゃん」
「ふぁ…ん…ちゅ…んっ…ちゅ…ぴちゃ」

 私は夢中になって英理のアソコを舐めた。
 英理のアソコは私を魅了するいい匂いがして、私の心をトロトロに溶かしていく。

「ん……はっ……上手よ、英理」

 上手と言われて私は嬉しくなり、ますます一生懸命に舐めていく。
 同時に自慰も続けてゆき、悦びと興奮とでまたイってしまいそうになる。

「ん……んんっ」
「いいよ……んっ、許してあげる……私をイかせることができたら……ぁ……里彩もイっていいわよ」

 英理からお許しをもらって、私は自分への愛撫をゆるめ、英理への愛撫に集中した。

「あっ……は……ああっ」

 英理の手が私の頭の上に置かれ、優しくなでなでされる。

「り……あ……ああっ」

 英理がうわごとのように私の名前を呼んでいる。
 私が英理を気持ちよくしているということが嬉しい。
 もっと感じてほしい。
 もっと英理のためにご奉仕したい。
 私はあいてるほうの手をそっと英理のおしりの穴にあてがった。

「っ! そこは……」

 私は指先でやさしく穴の周りをなぞっていく。
 もちろん舌によるクリへの愛撫も続けていく。

「あ……ああっ……ふぁ……んんっ」
「んむっ……英理……私の手で、イって……」

 愛液をまぶした指でおしりを愛撫しながら舌先でクリをはじく。
 英理はしばらく耐えていたが、我慢できなくなったのか自ら足を大きくひらき、私を受け入れた。

「あっ……ああっ……あ、ダメ……イっちゃ、イっちゃうっ! ……あっ、あっ、あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 英理はとうとう快感に屈し絶頂を迎えた。

「ん…んっ、こくっ」

 英理のアソコからふきだした絶頂の証を私は思わず飲んでしまう。
 とたんに強烈な性感が私をおそい、自分を慰めていたほうの指の動きが急激に早くなった。

「あぅ、あっ、ふああぁぁぁぁぁっ!!!」

 快感に抗う間もなく、私は絶頂を迎えてしまい、ぐったりと崩れてしまう。

「はぁ……はぁ……」
「里彩……よかったわよ」

 英理はそう言ってシャワーで私の身体についた泡を流すと、お姫様だっこで湯船にいれてくれた。
 英理は膝の上に私を乗せ、後ろから抱きつくような姿勢で一緒に暖まった。
 少し熱めのお湯がとても心地よい。

「可愛い……里彩」

 背中にちゅっちゅっとキスしながら、甘い言葉を囁く。
 快感の余韻で満足に身体が動かないのをいいことに、背中や首筋にたくさんキスマークをつけられてしまった。

 どうせキスするなら、唇にしてほしいのに……。



 結局あのあと、私は英理の家に泊まった。
 英理と一緒のベッドに寝て、英理の作ったご飯を食べて、英理の一緒に登校した。
 それだけを見れば私の望んだ恋人同士そのものの展開なのだけど、英理はあれからなにも言ってくれない。
 催眠のことについてなにも触れない。
 私のことを好きとも嫌いとも言わない。
 あの夜に私のことを催眠術で好きにした英理はなんだったのだろう。
 英理の気持ちが知りたい。
 けど、あんなに英理を怒らせた私がそのことを聞くこともできず、とりあえずは上機嫌の英理をみているとこのままでもいいか、とも思って躊躇してしまうのだった。

「あ……」

 校門の前に見覚えのある人達が立っているのが見えた。
 湯上谷先輩と上月先輩だ。

「おはようお二方」
「おはようございます。先輩」
「あれ、高峰さん……今日はスカートなんだ。珍しいね」
「ええ、たまには」

 上月先輩と英理はそんな和やかな会話を交わしている。

「ふぅ~ん」

 湯上谷先輩は探るような目で私たちを見ると、
「ちゃんと仲直りできたみたいだね」

 安心したような声で話しかけてきた。

「別に喧嘩してたわけじゃないと思うけど」

 後ろから少し呆れたような声で上月先輩が続く。

「ええ、お陰様で」
「…………」

 私はなんだかバツが悪くなり、二人から目を逸らした。
 湯上谷先輩はそんな私に気づいたようで、
「まぁ魔が差すってこともあるけどさ、相手の気持ちも考えようね」

 なんて説教ぶってきた。

「はい……」

 なぜだか知らないけど、この人に言われると不愉快だ。
 英理も上月先輩も、そんな生暖かい目で見ないで欲しい。
 そういえば、私はこの人に訊いてみたいことがあった。

「湯上谷先輩、あの……」
「ん?」
「英理が私の催眠にかかってるって見抜いたのは湯上谷先輩ですよね」
「そうだよ」
「どうしてわかったんですか?」

 英理の表情がハッとした慌てたものに変わり、上月先輩が気まずそうに目を泳がせる。

「ああ。私も以前似たようなことをしちゃったことがあってさ。まぁ、そこの未来ちゃんのことなんだけどね。詳しいことは省くけど。
 その時の未来ちゃんの様子と高峰さんの様子が同じだったからさ」
「上月先輩と英理が、同じ?」
「うん。自分の気持ちを抑えられてるって言うか、好きな人に自分の気持ちを言えない苦しみって言うか、そんな気配があったからさ」
「え、それって……うわっ!」

 言葉と思考がまとまる前に私は腕を引っ張られて校内に連れ込まれた。

「ちょ、ちょっと英理!」
「……………」

 大股で足早に歩いて私を引っ張る英理に私の声は聞こえてないようだった。



「きゃっ!」

 英理は教室には行かずにまっすぐ屋上へ向かった。
 扉を開けて屋上に人がいないことを確認すると、屋上扉に私を押し付けて顔を覗き込んだ。

「里彩、私の目を見なさい。じっと見つめて……そう、いい子ね」
「あ……は……」

 英理の瞳を見ていると、だんだん心が落ち着いてくる。
 少しずつ瞳に吸い込まれていくような感じがして、思考がぼんやりと霞んでくる。
 身体から力が抜けて、腕がダランとさがっていく。
 また私、催眠術にかかっちゃったんだ。

「里彩、私の声が聞こえる?」

 コクン、と頷く。

「里彩は催眠術にかかっていくよ。だんだん気持ちよくなっていく。頭のなかがぼんやりして何も考えられない。ほら、もう里彩は私の操り人形になっちゃった」

 英理の言葉が頭の中で心地よく響く。
 英理に命令されるのが嬉しくてたまらない、英理のいいなりの私になっていく。

「私の言うことをききたくなる。私に命令して欲しくてたまらなくなる。いい?」
「はい……」

 この返事ひとつで、私は英理の従順な下僕になってしまった。
 英理に命令されることが嬉しくてたまらない。

「里彩、服を脱ぎなさい」

 こんなとんでもない命令にも、私は喜んで従ってしまう。
 シャツを脱いでベストの上に畳んで置いて、スカートも脱いでしまう。

「下着も脱いで。裸になりなさい」
「ぅ……」

 さすがに羞恥心を刺激されて一瞬ためらってしまう。
 だけど、英理の言うことをきかなくちゃ、英理の言うと通りにしてあげたい、そんな気持ちの方が圧倒的に強く、ブラもパンツもあっさりと脱ぎ捨てた。

「ぅぅ……」

 青空の下で裸になるなんてはじめてのことで、やってから強烈な羞恥心に襲われて身体を固くした。
 そんな私の様子を英理は満足そうに眺めると、
「これからご奉仕をしてちょうだい。やりかたは、わかるわよね」

 私は頷くと、英理のスカートの中に手を入れて下着を脱がせようとした。ところが、
「ちょっと待って」

 下着に手が触れたところで止められた。
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、英理は私の両手を握った。
 その体温にドキドキしていると、
「里彩、あなたの両手は動かなくなる。自分の意思では動かせなくなる」
「え……あ、ああっ」

 握られた手から感覚が消えていき、肘より先が動かせなくなる。

「もう動かない。ほら、どっやっても動かすことができないよ」

 英理の手が離れたあとも、どうやっても手を動かすことができない。
 肩を上げても腕はダランと下がったままで、まったく力が入らない。

「やっ、英理……どうして……」

 怖くなって英理を見上げると、英理は私を見下ろして、
「ねぇ、ご奉仕はまだなのかな?」

 そうだった……私、英理にご奉仕しなくちゃ……。
 でも、どうやって……。
 ………………。

「……そう、そうだよね。そうするしかないよねぇ」

 私は動かない手を見限り、英理のスカートの中に頭を入れると、パンツを口でくわえて少しずつ下ろしていった。

「んっ、んっ」

 すごくやりづらい。
 それにこれってかなりみっともない格好だ。
 それでも、英理がやれって言うなら……私、どんなことでもしてあげたい。

「んっ、ふぅ」

 なんとか下着を足首まで下ろすことに成功すると、またスカートの中に頭を入れて英理の秘所に口づけをした。

「あん!」

 英理の色っぽい声が聞こえる。
 割れ目に舌を這わせて、心を込めて愛撫する。

「んっ……は……」

 心地よさそうな英理の声が聞こえると私も嬉しくなってしまう。
 少しずつ舌で割れ目を押し開き、ナカの敏感なところを刺激していく。

「ぁ……はぁっ……いいよ、上手……んっ」

 スカートの上から頭を抑えられる。
 舌先にぬるぬるした感触を感じて、英理が気持ちよくなっていることがわかる。
 英理が感じてくれるのは嬉しいんだけど、これは体勢的にかなり辛い。
 膝で身体を支えて腹筋と背筋で姿勢を保たなければならない。

「あっ……あ……気持ちいいよ……里彩……」

 でも、英理が悦んでくれるから。
 英理のこと、気持ちよくしたいから。
 私、頑張るよ。

「は……あ、あっ……あ」

 頭を抑える手に力がこもっていく。
 英理の膝がガクガクと震えてくる。
 英理、イキそうなのかな?

「んっ……ちゅ……んむっ」

 割れ目をかき分けて英理の敏感な肉芽を見つけると、重点的にソコを刺激してあげる。

「やっ……ソコ、はっ!」

 戸惑う英理に構わずに少し固くなった肉芽を舌先で何度も弾いてやる。

「あっ、あっ、あ、あ……あ! くぅっ!!」

 英理の身体がビクビクと震え、割れ目の奥からどっと愛液が溢れた。

「あふっ! あっ……あああっ」

 英理の膝がガクンと折れてその場にしゃがみこんでしまう。
 同時に私の身体も力尽きてその場に倒れてしまう。

「あ……里彩」

 英理の手のひらがそっと私の顔を包み込む。

「里彩……ありがとう……ごめんね」

「……どうして……謝るの?」

「………………」



 キーン コーン カーン コーン

「ずっと……こういうこと、したかったの」

 英理が私の質問に答えたのは、始業のベルがなってからだった。

 一限のサボリは確定だ。

「私ね、里彩の身体を好きにしたかったの。里彩に恥ずかしいこと、させたり言わせたり、一方的に尽くされたかったの」

 ポツリポツリと、英理は語り始めた。

「里彩が私の命令でエッチな姿を晒したり、ご奉仕してくれたりするのが嬉しくてたまらないの。里彩のこと、もっともっと欲しいって、思っちゃうの」
「………………」
「だからね、お互い催眠術をかけあったときなんて、自分の欲望を抑えるのに苦労したんだよ。だって里彩、あんなにぼんやりした顔で私の命令を待ってるんだもん」
「わ、私だって……英理のこと、そういう目で見てたよ。無防備な英理の姿に我慢できなくて……」
「うん。我慢できなくて私を操っちゃったんだよね。気持ちはよくわかるよ。でもね」

 英理は少し怒ったような顔を私に向けた。

「私は我慢したんだよ。里彩は私を信じてくれる、大切な親友だと思って、里彩のこと、傷つけたらダメだって思って!」
「ぅ……ごめん」
「ごめんじゃないよ! 必死で我慢してた私がバカみたいじゃない!」

 はぁっ! と、英理は怒気を含んだため息をついた。

「だからね、ずるいって思ったんだ。里彩のこと。私はこんなに頑張って気持ちを抑えてたのに、なんだよ~って。だからね」

 英理の言葉を、私は判決を言い渡される刑事裁判の被告人のような心境で聞いていた。

「私はまだ里彩のことが許せない。だけど、許したいの。本当に、里彩とずっと一緒にいたいの。里彩は私のこと、好き?」
「う、うん! 好き、大好きだよ!」
「ありがとう。……私も、うん、その先はさ、私が里彩のことを許せるようになったら言おうと思うんだ」

 英理はじっと私の目を見つめて、言った。

「それまで、待っててくれる?」

 私は思わず英理に抱きついた。

「待つよ……ずっと、いつまでも待つから……」

 いつまでも待つよ。
 英理の気持ちの整理がつくまで、何年でも償うよ。

「ありがとう。でもね……」

 英理は少し身体を離すと、そっと頬に手のひらをあてた。

「前払い。いいよね」

 ゆっくりと英理の顔が近づいてくる。

「目、瞑って」

 そして私たちはキスをする。
 お互いの気持ちと未来を確認するために。

< END >

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