サイの血族 17

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 嫌な場面に遭遇してしまった。

 昨夜、麻衣と過ごした時間が楽しかっただけに隼人はうんざりした気分になった。

 あれから意識が戻った麻衣は初体験のことや、梨花との複雑な関係について、いろいろと話してくれた。姉妹のプレイを「サイ」のせいで露骨な表現で語る麻衣。興奮した隼人は、もう一回戦挑んで麻衣の身体を堪能した。しかし、これから作ろうとしている自分たちの集落に麻衣を呼ぶことを考えたら、かなり面倒なことになると思うようになり別れ際に麻衣の記憶を消してしまった。

 あの素晴らしい身体には未練があったが、抱く気になればいつでもできるからと自分に言い聞かせて、朝早く麻衣のマンションを後にしたのだった。

 激しいセックスで疲れてしまったのか一時間ほど歩くと休憩したくなり、コンビニでお菓子と飲み物を買って(正確には「サイ」を使った)公園でそれを食べているときに後ろの茂みから声が聞こえた。

「金は持ってきたんだろうな」

 脅しをかけるとき独特の口調だ。

「ごめ・・・んなさい。もう許して」

 弱々しく答える女の声。まだ若い感じがする。カツアゲだと隼人は思った。脅かしている方も女だ。

「ざけんじゃねょ。元はと言えばお前ん家の父ちゃんが、あたしの母ちゃんにセクハラして会社を辞めさせたんじゃねぇか。あたしだって、いろいろ金がいるんだ。それをお前から取ってなにが悪い。そうだろ」

「だって・・・もう何度も・・・私・・・お小遣いぜんぶ美香にあげたのに・・・」

「足らねぇんだよ。金がなかったら家から盗んでこい!」

「そんなこと・・・できない・・・」

「お前の金より、お前ん家の金が欲しいんだ。持ってこれねぇんだったら、わかってんだろうな」

「きゃっ・・・やめて!」

 ガサガサと音がして制服姿の少女が茂みから飛び出してきた。

「なんだ、お前・・・」

 あとを追いかけてきた女が隼人を見て言った。ちょっと戸惑った感じだ。ふたりとも同じ制服を着ている。たぶん同じくらいの年齢だと隼人は思った。

「僕はただここにいただけで・・・」

「関係ねぇんだから消えろよ」

 凄む少女のヤンキー言葉は杏奈のように板に付いていない。むしろ、整った顔立ちと乱れたところもない普通の恰好をしているので違和感すらある。ロングヘアーという違いはあるが、その姿はどことなく南川琴音に似ていた。

 逃げるのを忘れたかのように、もうひとりの少女は立ちつくして隼人と美香と呼ばれていた少女を見ている。たぶん軽く染めているのであろう栗色の髪はゆるやかにウエーブしていて、あどけないかわいらしさは少女コミックから抜け出してきたような印象だ。

「彩、行くぞ!」

 隼人から離れようとした美香はその少女をアヤと呼んで腕をつかんだ。

 なんだか複雑な事情がありそうなふたりに隼人は興味を抱いた。

「ちょっと待って」

 立ち去ろうとする二人に声をかける。

「なんだよ」

「サイ!」

 振り向いた二人に隼人は手をかざして「サイ」を唱えた。

 二人の眼から光が消える。

「もしかしたら君たちの力になれるかもしれない。二人とも僕の隣に座って話を聞かせてよ」

 これが、ただのヤンキーのカツアゲだったら「サイ」をかけたりしなかっただろう。なんだか気になった。二人の容姿のせいかもしれない。タイプは違うが二人とも美人なのだ。

 術にかかりやすいのか彩の方が先に歩いて隼人の隣に座る。「サイ」をかけると本性が剥き出しになる。彩は隼人に触れそうな距離に座った。力に従順というよりかは、かなりの甘えん坊なのではないかと隼人は思った。

 美香の態度はぎこちない。意識はないはずなのに個性が出るのがおもしろかった。

「美香ちゃんだっけ? 聞く気はなかったけど聞こえちゃったんだ。どうして、この娘からお金を取ろうとしたの?」

「悔しかったから・・・不公平で悔しかったから・・・」

「どうして?」

「彩とは幼なじみなんだ。仲良しだった。でも、彩の父さんがあたしの母さんに手を出して・・・彩の家は名士で金持ちで母さんが働いてる会社の社長だったんだ。スキャンダルになるから母さんをクビにして・・・ウワサになって、母さんは働く場所もなくなった・・・」

「それでお金が欲しかったんだ」

「違う」

「えっ?」

「いつも、あたしと彩は比べられてた。いつも、あたしが悪者だった。理由は彩の家。不公平。悔しかった。だから困らせてやりたかった。彩を悪者にして、あたしの気持ちをわからせたかった・・・」

 かなり屈託してると隼人は思った。

「美香ちゃんは彩ちゃんのこと好きなんだね?」

「・・・」

 美香は黙り込んでしまった。「サイ」をかけてもすぐには答えられないこともあるらしい。

「なんとなくわかるんだ。妬ましさとも違う割り切れない気持ち。僕も学校では疎外されてるような気がしてたから」

 気がつくと美香は涙を流していた。

「嫌だったのに彩を脅してた・・・嫌だったのにお金を取ってた・・・」

「彩ちゃんに自分の気持ちを知って欲しかった・・・そうだよね?」

「わからない・・・自分でもわからない・・・」

「美香ちゃんは彩ちゃんが憎い?」

「わからない・・・すごく、いじめたくなることがあるの・・・最初は・・・もしかしたら彩と姉妹になれるんじゃないかって思った・・・のに・・・」

「えっ、姉妹? 美香ちゃんのお父さんは?」

「小さい頃に死んじゃったの。彩のお父さんの会社で働いていて・・・事故で・・・」

 かなり複雑な事情があるのだと隼人は思った。

「彩ちゃんのお母さんは?」

「いないの。彩が中学生のとき出て行っちゃったの」

 こんどは彩が答えた。

「ふ~ん、そうなんだ。で、彩ちゃんは美香ちゃんをどう思ってるの?」

「あ・・・んと・・・大切な幼なじみなの・・・ずっと一緒だったのに・・・」

 ちょっと舌足らずなロリっぽいしゃべり方が、いかにもお嬢様という感じだ。大きな瞳が潤んで見える。

「でも、美香ちゃんは彩ちゃんのこといじめたくなるんだって」

「うん・・・彩が悪いの・・・」

「どうして?」

「ワガママだから・・・」

「仲良くしたいからお金をあげたんだよね?」

「うん・・・」

「どうしたら前みたいに仲よくなれるかな?」

「わかんない・・・」

「彩ちゃんは兄弟とかいるの?」

「ううん、お父さんとふたり・・・」

「そっか・・・僕が仲直りさせてあげようか? 前よりずっと仲良しになれるよ」

「ほんとに・・・?」

「サイ」がかかっているはずなのに彩の顔が輝いた。

 ロリっぽい彩を見て興奮した隼人に悪計が浮かんだのだ。

「彩ちゃん家って、いまお父さんはいるの?」

「ううん、仕事で遅くまで帰ってこない」

「じゃあ案内して。美香ちゃんも付いてくるんだ」

「は・・・い・・・」

 美香は無表情で立ち上がる。

 彩の家は豪邸だった。地方によくある悪趣味な和風の家ではなく鉄筋コンクリートのモダンな作りだ。聞けば、有名な建築家が設計したのだという。掃除などは昔からいるお手伝いさんが午前中に済ますというから、やはり旧家の金持ちなのだろう。広い庭を通り抜け三人は彩の部屋に入った。

 ガーリーとかラブリーという言葉がぴったりするほど彩の部屋はレースやヌイグルミでいっぱいだった。目についたのは装飾過多と思える白いパイプフレームのベッドだった。

「ふたりとも、そこに座って」

 隼人はベッドを指さして言う。

「美香ちゃんは彩ちゃんが嫌いだからいじめるんじゃない。逆なんだ。好きでたまらないから、いじめたい。だけど、それじゃダメだ。もっと仲よくなれる方法を僕が教えてあげる。僕の言うとおりにすれば美香ちゃんも気持ちよくなれる。だから僕の命令に従うんだ。わかったら返事をして」

「は・・・い・・・わかりました・・・」

 隼人の指示に従ってベッドに座った美香が返事をする。

 いままでの話から美香には倒錯した感情を彩に対して抱いているのではないかと隼人は感じていた。それならば「サイ」によって、それを解放させてみるのもおもしろい。昨夜、麻衣がしてくれた話に影響されていたのかもしれない。隼人はこの二人を絡ませてみたいと思った。

「彩ちゃん、この家にロープはある?」

「はい・・・納戸に・・・あると思います」

「じゃあ、持ってきて」

「はい」

 彩が部屋から出て行く。

「美香ちゃん、彩ちゃんが帰ってきたらロープでベッドに縛りつけるんだ。手足を四本の柱に。わかるね」

「はい・・・」

「美香ちゃんは、彩ちゃんの服を脱がしてエッチなお仕置きをするんだ。どうすればいいかわかる?」

「あ・・・いえ・・・」

「美香ちゃんはひとりでエッチしたことないの?」

「あり・・・ます・・・」

「縛った彩ちゃんにおんなじことをすればいいんだ。そうすると美香ちゃんも気持ちよくなるよ。わからなかったら僕が教えてあげるから」

「あっ・・・」

「どうしたの?」

「おんなじこと・・・考えてた・・・彩を縛っていじめたいって・・・」

「そうなんだ・・・じゃあ夢がかなうね・・・」

 隼人はそう言いながら驚いていた。やはり美香には倒錯した欲望があったのだ。美香と梨花のイメージが心の中で重なった。梨花は麻衣を縛ってプレイをしたこともあったと聞いていたのだ。

 そのときロープを持った彩がドアを開けた。

 襟のない紺のブレザーにグレーのプリーツスカート、臙脂に近い赤のリボンをした彩が白いロープを持っている姿を見て、隼人は「鴨が葱を背負って」という古い言葉を思い出してしまった。

「さあ、美香ちゃん。言ったとおりに」

「はい・・・彩、こっちへ来て・・・」

 美香に命令された彩は戸惑っている。

「彩ちゃん、君は逆らえない。言葉で抵抗できても逃げられないんだ。僕にそのロープを渡して」

 一瞬、泣きそうな顔をした彩を見て「サイ」が解けたのではないかと心配したが、素直にロープを差し出したので安心した。たっぷりと長さのあるロープを机の上にあったハサミで四等分していると、美香が彩をベッドに押し倒していた。

「や・・・やだよう・・・美香・・・やめて・・・」

 暗示が効いたのか、それともおとなしい性格のせいか、彩は抵抗らしい抵抗はしない。

「これを使って」

 隼人が切ったロープを手渡すと、美香は彩の手首を縛ってベッドの柱に固定した。

 さほど時間が経たないうちに彩は両手脚をひろげた状態でベッドに固定されてしまう。

「彩ちゃん、これから彩ちゃんは美香ちゃんにお仕置きされるんだ」

「や・・・どうして・・・」

「彩ちゃんがワガママだったせいだよ。でも、これでふたりは元通りの仲良しに戻れるんだ。いや、前よりもずっと仲よくなれる。さあ、美香ちゃん、はじめるんだ」

 隼人の命令を聞いて美香の眼が光った。

 彩のブレザーをはだけてリボンを外しブラウスのボタンに手をかけた。

「いやぁっ! やめて・・・美香・・・お願い・・・」

 初めて自分が何をされるのかを察した彩が悲鳴を上げる。しかし動じた様子もなく美香はブラウスのボタンを外していく。フリルの付いたピンクのブラジャーが露出したとき、彩は言葉にならない声をあげた。

「ずっと・・・ずっと、うらやましかった・・・やっぱ、ずるい・・・こんなに、まんまるなおっぱいして・・・」

「いやぁぁっ!!」

 フロントホックが外され、思わず桃を連想してしまうような見事な膨らみが晒されて彩は叫んだ。先端の蕾も桃のようなピンク色をしている。

「み、美香・・・助けて・・・ダメだよぅ・・・わたしたち・・・女同士なんだよ・・・こんなの・・・だめぇぇ・・・」

「関係ないよ。ずっと、こうしたかったんだ・・・やっとわかった・・・」

 なにかに憑かれたような顔をして美香はスカートを捲り上げる。ショーツはブラジャーとセットのものだった。

「いやぁ・・・恥ずかしいよぅ・・・やめてぇ・・・」

 恥辱のせいか彩の白い肌が桜色に染まっていく。

 ひろげられた脚のせいでショーツを脱がすことが出来ず、どうしようか考えている美香に、隼人は先ほどのハサミを渡した。

 それを見て彩は息を飲んだ。ハサミを手にした美香の表情が怖かったからかもしれない。

「いやぁぁぁっ!!!」

 ショーツと腰の隙間にハサミが入れられたとき彩は絶叫した。

 突き出した腰骨あたりの二カ所が切られてショーツは一枚の布きれと化してしまう。

 淡く生えたヘアーの奥にスリットが見える。

 美香はショーツを引っ張って獲物を誇示するように彩に見せた。それは彩を手中に収めたという美香の示威行為なのかもしれないと隼人は思った。美香が不思議な笑みを浮かべていたからだ。

「あうっ!」

 彩の身体が硬直した。美香の手が股間に差し込まれていた。

「やっ! いやぁっ! こんなの、いや・・・ああっ・・・いたい・・・美香・・・ゆるして・・・いやぁっ!」

 覗いてみると美香の指先が秘肉をかき分けて淫靡に蠢いていた。

「わたしの・・・お人形さんにしてあげる・・・」

 そう言う美香の眼は完全にいっていた。

 しかし、お人形さんという言葉がぴったりするほど彩の身体は美しかった。

「はうぅぅぅっ!」

 美香の中指が蜜壺に挿入された。

「いやっ! いやぁぁぁっ!!」

 彩の叫びも、その頃には甘さを含んだものになってきた。

 そんな彩を見下ろしながら、美香は空いた手で桃のようなバストを揉みはじめる。

「あっ! あんっ! だめ・・・ああっ・・・だめだよぅ・・・ああん・・・」

 見れば、美香の指先が巧みに乳首を愛撫している。ひとりエッチと同じようにという隼人の言葉を思い出しているのかもしれない。

「だめ・・・美香・・・だめ・・・だめぇ・・・あんっ・・・」

 彩の身体が震え出す。

 クチュクチュと湿った肉が立てる音がしてきた。どうやら蜜が溢れてきたようだ。

「いやぁっ! そんなにしたら・・・ああんっ!」

 美香は四つん這いになって、もう片方の乳首を口にふくんでいた。

「ああっ! ああんっ!」

 もう彩は喘ぐだけになってしまう。

 興奮した隼人はそっと美香のスカートを捲ってみた。

 彩とは対照的なプレーンなコットンのショーツ。そのクロッチの部分は湿って色が変わっている。思わず顔を埋めたい衝動に駆られたが、まだその段階ではない。静かに身体を離した隼人は彩の方へ行き、その耳元でささやく。

「彩ちゃんは、ひどいことをされればされるほど感じてしまう。そういう身体なんだ。彩ちゃんは囚われのお姫様。逃げられない、心も身体も・・・」

「ああっ! たすけて・・・ください・・・ああ~んっ!」

 暗示が効いたのか、彩はいっそう甘い声を上げて喘いだ。

「い・・・いけないこと・・・なのに・・・ああんっ! だめっ・・・おかしくなる・・・おかしくなっちゃうの・・・あんっ! ああんっ!」

 ついに彩は絶頂を迎えてしまった。

「いやぁ! だめっ! もう・・・しないで!」

 身体をバウンドさせながら彩が叫ぶ。絶頂を迎えたことを知った美香が蜜壺に入れた指の動きを速くしたのだ。

「あんっ! ああ~んっ!」

 ウエーブした髪が汗をかいた額にへばり付き、官能に翻弄された表情がたまらなく艶っぽい。

「ふたりとも、よく聞くんだ。僕は美香ちゃんの分身だ。だから、僕がすることは、美季ちゃんのすること・・・」

 そう言って隼人は喘ぎ続ける彩にキスをした。

「んんっ! んんんっ!」

 唇をふさがれた彩が痙攣する。隼人は精霊仕込みのオーガズムを送り込んだのだ。

 まだ処女のまま、彩は底知れぬ快感に溺れて白目をむいて意識を失ってしまう。

「つまんない・・・」

 弛緩してしまった彩から身体を離して美香がポツリと言った。

「どうして?」

 隼人が聞く。

「だって・・・もっといじめたい・・・自分だけいっちゃうなんて・・・やっぱ彩はずるい・・・」

「美香ちゃんだって気持ちよかったくせに」

「うん・・・でも・・・」

「彩ちゃんだけ先にいっちゃったから?」

「うん・・・」

「じゃあ、僕が望みをかなえてあげる。彩ちゃんのロープを解いて」

「は・・・い・・・」

 言うことを聞くようにと指示を与えてあるから美香はトランス状態に戻って彩の縛めを解いていく。

「そう・・・そしたら美香ちゃんも裸になるんだ」

「は・・・い・・・」

 彩はベッドの上で弛緩したままだ。

 そんな彩を無表情で見下ろしている美香に隼人は命令した。

 ゆっくりと制服を脱ぎはじめる美香。

 ふっくらとした曲面で構成されている印象の彩とは違って、美香の身体はしなやかで少女らしい初々しさに溢れている。胸の膨らみは手のひらに収まる程度でボリューム感はないが、かえってそれが美しいと隼人は思った。そして、やはり、どことなく南川琴音に似ていた。

「きれいだよ、美香ちゃん。とっても、きれいだ」

「で・・・でも・・・」

「女っぽい彩ちゃんがうらやましかった。そうだね?」

「はい・・・そうです・・・」

「美香ちゃんには彩ちゃんにない美しさがある。それが、とってもきれいだと思うよ」

「あ・・・うれしい・・・」

 憑かれたような顔に少女らしい笑みが浮かぶ。

「人と自分を比べても意味はないさ。でも、気持ちはわかるよ。だから、これから二人をひとつにしてあげる。そこにいる彩ちゃんを抱いてごらん」

「こう・・・ですか・・・?」

 まだ意識を失っている彩に美香は身体を重ねる。

「どんな感じ?」

「柔らかくって・・・あったかくて・・・気持ちいい・・・」

「そう・・・ちょっと待っててね」

 隼人は彩の傍らにひざまずいて頬を軽く叩く。

「彩ちゃん、彩ちゃん。目を覚まして」

 試しに起きるよう念を送ってみると、彩の瞳が開いた。

「あ・・・あれ・・・」

 彩と目が合う。解けている可能性を考えて、隼人は心の中で「サイ」を唱えてから言った。

「もう彩ちゃんを縛っていたロープはない。だけど、彩ちゃんは逃げられない。もう、美香ちゃんの奴隷だからね。だから、美香ちゃんのすることは何でも気持ちがいい。感じるたびに、もう、離れられないと思うようになる」

「わたしは・・・美香の・・・どれい・・・」

「そうだ。そして僕は美香ちゃんの分身。僕の言うことはなんでも聞くんだ」

「は・・・い・・・」

「それじゃあ、美香ちゃん。彩ちゃんを抱きしめてあげて」

「ああっ・・・」

 返事をせずに美香は隼人の指示に従った。

 二人の口から同時に喘ぎが漏れる。

 昨夜、麻衣の話を聞いて、隼人は女同士の絡みを見たくて仕方なかったのだ。美香と彩を見ていたら、梨花と長谷川恭子、結花と奈緒のことを思い出した。女同士のプレイは見ているだけで興奮する。そして美香は南川琴音と似ている。そんな美香が他の女と絡んでいるところを想像してしまったのは自分でもかなり倒錯していると思ったが、極限まで「サイ」の力を試すいい機会だとも思った。

 隼人は彩の快感が美香にも伝わるように念を送っている。だから、二人が同時に喘いだのだ。

「あっ! ああんっ!」

 美香が彩の乳首を口にふくんだ。

 彩が喘ぐと、美香の身体も震える。彩には美香がすることはなんでも気持ちがいいと暗示をかけてあるから快感がループする仕組みだ。

「ああっ! ああ~んっ!」

 彩が喘ぎ、そのたびに美香が身体をくねらせる。

「ああっ! そ、そこ! とけちゃう・・・とけちゃうのぉ~・・・」

 美香の指先が秘肉をとらえ敏感な部分を愛撫している。乳首を口にふくんだままだ。

 後ろから見ていると美香のアヌスがひくひくと蠢いている。

 隼人にまた悪計が浮かんだ。

「美香ちゃん、彩ちゃんを四つん這いにさせてごらん」

 美香は言われたとおりにする。

「そう、こうやってお尻を持ち上げて・・・」

 隼人が手伝って彩のヒップを突き出すような恰好にさせる。

「お尻の穴を舐めてごらん」

「ひゃっ! ひゃん! そんな・・・とこ・・・ああんっ!」

 隼人の命令に躊躇なく従う美香。そして、美香のすることならなんでも感じてしまう彩。その快感が伝わって悶える美香。それは、たまらなく刺激的な眺めだった。

「だっ・・・だめぇっ! こんなのって・・・ああっ!」

 気がつけば美香は舌先をアヌスに突き入れながら、蜜壺に指を挿入していた。たぶん、美香がそうされたいと望んだ結果なのだろう。美香は彩の身体を使ってオナニーをしているのと同じなのだ。

 美香の息づかいも荒い。

 もう隼人は我慢が出来なくなった。

 服を脱いで二人の隣で仰向けになった。

「彩ちゃん、僕を跨いで」

 彩はわけもわからず震えながら指示に従う。なにしろ美香の分身だと思っているから男だという認識はないらしい。

「そう・・・これを・・・入れてあげるからね・・・もうすこし前に・・・」

 隼人は屹立に手を添えながら彩を誘導する。

「そうそう、腰を沈めて・・・僕の上に座り込むように・・・」

 蜜壺の位置を確認した隼人が命令する。

「あうぅぅぅぅっ!!!」

 先端が潜り込んだとき、彩はものすごい声で叫んだ。

「あうっ! い・・・いったぁい・・・美香が・・・わたしの中で・・・いっぱいに・・・あああっ!」

 そういえば分身がすることも気持ちいいとは言っていなかった。破瓜の痛みで「サイ」が解けてしまうのを防ぐために、隼人は思いつく限りのオーガズムを彩に送り込んだ。

「いやぁぁぁっ!!」

 突っ伏して叫んだのは美香だった。

 快感に溺れた彩が隼人の上に座り込んだので屹立が根本まで挿入されたのだ。

 送り込まれたオーガズムのせいで彩は大きく痙攣して、結果的に腰を動かしてしまっている。彩が動くたびに美香が痙攣を繰り返す。

「美香ちゃん、僕を見て」

 口を半開きにした美香が顔を起こして隼人の方を向く。

「どう? これで、ひとつになれただろ。もう、彩ちゃんは君の思いのままだ。それとも、もっと感じたい?」

 隼人の言葉をどこまで理解しているのか、美香はガクガクとうなずいた。

「じゃあ、彩ちゃんのお尻の穴に指を入れてごらん。きっと気持ちいいよ」

 美香は這うようにして彩に近寄り手を伸ばした。

「いやぁ! そんなとこ・・・こんな・・・うそ・・・いやぁっ!」

 美香の指が挿入されたタイミングで隼人はまたオーガズムを送り込んだ。

 美香も激しく喘いでいる。

「彩ちゃんはヘンタイだね。こんなことされて感じちゃうなんて」

「いやぁ・・・ゆるして・・・ください・・・ああ~んっ!」

 隼人は連続してオーガズムを送り込む。

「どう? お尻も感じるんだろ?」

「ああっ! は・・・はい・・・感じます・・・」

「だったら、もっと太いのを入れてあげるよ。欲しい?」

「お・・・おねがいします・・・」

「じゃあ、言うんだ! お尻の穴にオチンチンをくださいって!」

「ああ・・・わかりました。おねがいします。彩のお尻に美香のオチンチンを入れて・・・ください・・・」

 彩の言葉に美香も興奮しているようだ。美香は後ろから彩を抱きしめていた。

「よし、いい子だ。じゃあ美香ちゃんは横になって・・・彩ちゃんはその上に」

 隼人は屹立を引き抜いて指示を出す。

 ふたりとも言うとおりにする。

 彩のアヌスを貫いたとき美香がどんな表情を見せるのか確かめてみたかった。

「そう・・・いい子だね。お尻の穴が好きだなんて・・・彩ちゃんはヘンタイだね」

 そう言われた彩はうっとりとした顔で美香に頬ずりをしていた。

「いくよ」

 隼人は彩の腰を抱えて屹立をアヌスにあてがう。

 蜜でたっぷりと湿った隼人のものはゆっくりと埋没していった。

「あうぅぅぅ・・・」

 彩の甘い声と同時に美香が驚いたような眼で隼人を見つめた。

「きつい・・・ああっ!」

 結合が深まってそう言ったのは美香だった。

「美香ちゃんにも後で本物をあげるからね」

 まとわりつくような肉の感触を楽しみながら隼人は余裕たっぷりに微笑む。

「ほんもの・・・これは・・・ほんものじゃ・・・ない・・・の・・・」

 美香がそこまで言ったとき彩のアヌスが収縮した。隼人が送ったものではないオーガズムがやってきたのだ。どうやら精霊の力には性感を開発する働きもあるらしい。美香が苦悶にも似た表情を浮かべる。そして高く喘いだ。

 その表情が隼人の放出を促した。気がこもった精液が彩の直腸を直撃する。

「ああっ! 熱い・・・ああっ!」

 美香が叫ぶ。

 実際に気を受けた彩は背中をのけ反らして硬直した後、また意識を失ってしまった。

 美香も痙攣を繰り返している。

 萎えたものを引き抜くと彩は美香の上に倒れ込んだ。

 ベッドサイドにあるティッシュで後始末をしながら二人を見ると折り重なったまま動く様子がない。

「美香ちゃん・・・彩ちゃん・・・」

 隼人はちょっと心配になって声をかけてみる。

 先に目を開けたのは美香だった。なぜか上に乗っている彩の背中に手をまわして抱きしめる。その刺激で彩も目を覚ました。

「み・・・か・・・」

 彩が口を開く。

「もう、彩ちゃんは美香ちゃんの奴隷なんだ。気持ちよかっただろ? これから、美香ちゃんが望んだときには彩ちゃんは言いなりになる」

 なぜか美香の味方をしたい隼人だった。抱いてしまった彩には興味がなくなってしまったのかもしれない。

「ふたりは秘密の関係になった。一生離れられないんだ。だけど、学校とか親の前ではいままでどおりにするんだよ。わかったね」

「は・・・い・・・」

「は・・・い・・・」

 二人は声を揃えて返事をする。

「僕は二人の影みたいなもの。夢の中の人物だ。僕が彩ちゃんを抱くときは美香ちゃんの分身。美香ちゃんを抱くときは彩ちゃんの分身。わかるかな?」

「は・・・い・・・」

「は・・・い・・・」

 二人の返事を聞いて、隼人は力がいっそう強くなっていることを感じていた。

「彩ちゃんは美香ちゃんにあんなことをされて気持ちよかったんだよね?」

「は・・・い・・・」

「彩ちゃんも美香ちゃんにエッチなことしたい?」

「はい・・・でも・・・わたしは奴隷だから・・・」

「じゃあ、僕が分身になって美香ちゃんを抱いてあげる。だから、よく見てるんだよ」

「は・・・い・・・」

 彩は虚ろな目で答える。

「さて、美香ちゃん。君はずいぶんと彩ちゃんにエッチなことしたね。だけど、あれは美香ちゃん自身がされたかったことでもある。そうだよね?」

 隼人は美香の方を向いてそう聞いた。

「・・・」

 美香は答えられない。

「僕のこれが彩ちゃんの中に入ったとき美香ちゃんも気持ちよかったはずだよ」

 美香がうなずく。

「だけど、いまは小っちゃくなってる。もう一度気持ちよくなりたかったら、これをしゃぶるんだ。キャンディーみたいにね」

 隼人はベッドサイドに立ち上がって腰を突き出した。

「本物が欲しいんだろ?」

「ほんもの・・・」

 美香の瞳が輝いた。

「そう、これをしゃぶれば大きくなって美香ちゃんを気持ちよくさせてあげられるんだ」

「あたしの・・・中に・・・これが・・・あのときみたいに・・・」

「そうだよ。いや?」

 美香が首を振って答える。

「だったら、しゃぶって」

 そのひと声で美香はベッドの上で起き上がった。そして、しゃがみ込んで隼人のものを指で軽くつまんだ。

 ていねいに拭いたつもりだが、まだ匂いが付いているかもしれない。どうするのか見ていると、美香は躊躇なく隼人のものを口にふくんだ。「サイ」が強くかかっているのか、美香の欲望が強いのか隼人にはわからなかったが、口にふくんだものを美香は舌で舐めまわしている。動きとしてはぎこちないものだったが、黒髪をなびかせながら一生懸命に舐めている光景に隼人は興奮して硬度を甦らせていく。

「んんんっ・・・」

 大きくなったものに驚きながら美香は指示に従って舐め続ける。

「もういいよ、美香ちゃん。こんどは僕が舐めてあげるからベッドに横になって」

 そのまま口の中に出して美香に飲ませることも考えたが、やはり美香自身を味わいたいと思って隼人はそう言った。

「そう、いい子だね.大きく脚を開いて・・・」

 美香は隼人の指示に従う。

 美香の秘所は彩より毛深い。大陰唇も黒いヘアーで覆われている。その間に見えるスリットをそっと指先で開いてみると、もうグッショリと蜜で濡れていた。いや、まだ先ほどのものが残っているのかもしれない。なにしろ、彩の感覚が転送されていたのだから。

「ああん・・・」

 それだけで美香は甘いため息を漏らした。隼人は快感を送り込んでいない。やはり、そうとう余韻が残っているのだと思った。

「はうっ!」

 隼人の舌先がスリットの真ん中をなぞり敏感な部分に触れたとき、美香は大きな声を上げてビクンと痙攣した。口の中に蜜独特の味が広がる。

「美香ちゃんはすごく感じやすいんだね。エッチな身体なんだ。これはどうかな?」

 隼人はクリトリスを集中的に舐めまわした。快感を送り込むよりも達成感があっておもしろいと思ったからだ。

「あんっ! ああんっ!」

 美香が激しく喘ぐ。

「美香ちゃんは、ひとりでエッチしてたんだよね? 答えて」

「は・・・はい・・・してました・・・ああっ!」

 言葉が終わらないうちに隼人はクリトリスを舐めていた。

「いまのは正直に答えたご褒美だよ。もうひとつ教えて。ひとりでするのと、どっちが気持ちいい?」

「こっち・・・こっちの方がずっと・・・おねがい・・・彩・・・もっとして」

 美香は隼人のことを彩だと認識している。やはり力は強くなっているようだ。

「さっき、彩ちゃんのエッチなところを触りながら、おっぱいも揉んでいたよね。ひとりでするときもそうしてるの?」

「そうです・・・」

「あと、彩ちゃんを縛る想像もしていたんだよね?」

「そ・・・そうです・・・」

「もしかして、美香ちゃんも縛られたいんじゃない?」

「わ・・・わかりません・・・」

「彩ちゃんを縛ったらどんな気持ちだった?」

「すごく・・・すごく興奮しました・・・」

「じゃあ、美香ちゃんも縛ってみよう。彩ちゃん。そこのロープで美香ちゃんの手首を縛って」

 隼人は彩を使うことにした。

 彩は床に落ちているロープを拾って美香の手首を縛りはじめる。

「そうそう、そのままベッドの柱につないで」

 美香は両手をあげる恰好でベッドに固定されてしまった。それだけで息を荒げはじめている。

「やっぱり興奮するんだね。じゃあ、こうしてあげる」

 隼人は美香の股間に顔を埋めた。

「あああっ! いやぁっ!!」

 美香はさっきより明らかに高い喘ぎをあげた。

「彩ちゃん、美香ちゃんのおっぱいを舐めてあげて」

「あうっ! いやぁっ!」

 彩が指示に従って乳首を口にふくむと、美香は腰をバウンドさせながら悶える。

「あううっ! だめぇっ!」

 隼人が蜜壺に指を入れると、その指を締めつけるように内部が収縮させながら美香は喘ぐ。

「ぐ・・・うううっ・・・」

 言葉がしなくなったので顔を上げてみると、彩がバストを揉みながら美香にキスをしていた。

 おもしろくなった隼人は美香の快感を彩に送り込む。

「んぐぅっ!」

 彩は身体を震わせながら唇を離そうとはしない。暗示のせいだけではなく、この二人には心の底で絆があったのだろう。そう思った隼人は屹立を美香のものにあてがう。

「あああああああっ!!」

 二人が同時に叫んだ。

「サイ」が解けることも厭わず隼人は屹立を一気に挿入した。

「いいい・・・たい・・・みか・・・みかぁ・・・」

「あや・・・あやのが・・・あああっ・・・」

 反応は違うが、二人は互いの名を呼びながら、きつく抱き合っている。

「ああっ・・・ご・・・ごめんね・・・彩・・・あたし・・・彩のことが・・・好きだから・・・いじめちゃったの・・・」

 彩だと思っている隼人に貫かれながら美香は切れ切れにそう言った。

「いいの・・・わたしも悪かったの・・・美香に・・・言われて・・・うれしいよ・・・だって・・・わたし・・・美香の・・・奴隷なんだもん・・・」

 どうやら彩は美香に貫かれていると思っているらしい。破瓜の痛みを共有しながら気持ちを打ち明ける二人を見て隼人は律動する。

「ごめんね・・・彩・・・あたし・・・彩のお尻にも入れちゃった・・・痛かったでしょ・・・あたしにも・・・してもいいよ・・・」

「ううん・・・美香・・・とっても・・・気持ちよかった・・・美香にされて・・・うれしかったの・・・」

 喘ぎながら二人は話している。

 それならば美香の後ろを征服してしまうのも悪くないと隼人は思った。

 隼人は屹立を引き抜き、美香の腰を持ち上げて先端をアヌスへあてがう。

「いいよ・・・いいよ・・・彩・・・しても・・・あうぅぅっ!」

 溢れた蜜が潤滑剤になって先端が狭い器官へと潜り込んでいく。

「ああ・・・いっぱいに・・・きつい・・・」

 彩が呻く。隼人は快感を送り込んでいない。後ろで感じるまで開発されていない美香の身体の感覚がそのまま彩へ転送されている。それでも二人はうれしそうだ。

 自分から存在を認識しないように誘導しておきながら、隼人はなんだか悔しくなってきた。

「美香! 彩! 聞こえるか。僕は二人を結びつける精霊だ! 覚悟して!」

 隼人はそう叫びながら、考えられる限りのオーガズムを送り込んだ。

「いやぁぁぁっ!」

「あうぅぅぅっ!」

 二人は絶叫に近い喘ぎ声をあげる。

 虚空蔵の力なのか隼人の能力はパワーアップしている。

 アヌスが屹立を食いちぎるくらいに収縮して、美香は大きく痙攣した。

 隼人も、いままでにないくらい気が高まってくる。下半身でマグマが渦を巻いているように感じた。精霊の力は相手の快感を引き上げるだけでなく、それに比例して隼人自身の気のエネルギーレベルを高めているようだった。

 爆発するような勢いで精液が美香の直腸内に噴出された。

 あまりの快感に隼人は目の前が真っ白になったように感じていた。

 そして「気」を受けた美香は声も立てずに硬直した。

 彩も白目をむいている。

 まるで下半身がなくなってしまったような爽快感に隼人は震えた。

 しかし、同時に美香と彩に対する執着心も消えていた。

 なぜか南川琴音の姿が脳裏に浮かぶ。

 隼人はベッドから降りると服を着た。そして足早に彩の家を出た。

 目を覚ませば二人にかけた「サイ」は解けているだろう。その後、美香と彩の関係がどうなるか不思議なほど関心が湧かなかった。どうせ、隼人のことなど夢の中の登場人物くらいにしか覚えていないはずなのだ。

 かすかな虚しさを覚えながら隼人は日が傾きつつある方向へ歩を進めた。

< 続く >

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