帝都狂躁曲 7

-7- 名探偵と美少女探偵助手の一夜 

「紀子君は、紀子君はどこですか!?」
 いつもは冷静で温厚な態度を崩さない篠宮文仁探偵は帝都警察内でも、最大懸案事項だけを扱う【帝都特高警察署】の本部に足を踏み入れると、声を限りに叫びました。ここは国家転覆を目論む者やテロリストなど、巨悪犯罪者の身柄を拘束し、厳しい拷問にかけることで知られているのです。なぜそんなところを訪れたかと言えば、探偵事務所にかかって来た池上警部からの電話の為でした。
『篠宮さんッ、早く来てください!! 紀子さんが、五十面相の部下であるかもしれないという疑いで帝都特高に連行されてしまったんだ!! か弱い紀子さんが、特高の厳しい尋問にでもかけられたりしたら・・・早くあなたが行って疑いを晴らしてあげてください!!』

 帝都一の名探偵の登場とあっては、さすがに強権的な帝都特高も面会を拒むわけにはいきません。篠宮探偵は可愛い助手と逢わせてもらえる手はずになりました。が、紀子は既に厳しい取り調べと称した拷問にかけられていたのです。
「さぁ、どうぞ・・・」
 篠宮探偵と池上警部が通された殺風景な部屋の中の光景に、思わず二人は息を飲みました。それはあまりにも残酷で、かついやらしい光景でした。裸にされた紀子は荒縄でその豊満な肉体をまるでSMショーの如く緊縛され、逆さに吊るされているではありませんか。帝都特高伍長、高野淳吉の命を受けた警官二人は竹刀で、その豊満な乳房をぐりぐりと形が変形するほどにえぐったり、恥ずかしさに耐え兼ねて気を失いかけた紀子を、床に置いた水槽の中に沈めたり・・・。軋む縄に喘ぎ声が混ざり合い禁断の雰囲気も漂います。
「あぁ、紀子は何も存じませんわッ、そうかお許しを・・・お許しを・・・わたくし、尊敬する篠宮先生をッ、帝都警察の方々を裏切ったりなど絶対に致しませんものッ・・・」
紀子は憐憫な表情で、柔肌に食い込む荒縄の痛みにその魅惑の肉体を震わせながら哀願します。その姿は、男であればなにか感ずるのは致し方のないほどに淫らな様子なのです。権力の犬に苛め抜かれる哀れな女の子。それも飛び切り可愛い自分の仲間とあれば、警戒心を抱いていた篠宮探偵も池上警部も同情心を抱くことは間違いありません。

「うぅ・・・先生・・・池上さん・・・きてくださったのね・・・」
 拷問が中断されると、紀子は美貌に哀れな色を湛え、二人を見遣ります。
「酷いでしょう、高野伍長。紀子さんはまだ容疑者ではないッ。それを裸にして拷問にかけるなんて、常軌を逸しています」
 池上警部は高野伍長に噛みつきます。
「ふん、それは言いがかりだ。この娘は五十面相にさらわれていたときの事を話そうとしない。それは、大怪盗と後ろめたい関係にあるからだ。我ら帝都特高としては、十分な潔白の証をするまではこの娘を取り調べなくてはならんのだ!!」
 高野伍長は紀子を緊縛した縄尻がかかる滑車をさらに回し、嫌疑のかかる探偵助手を責め立てます。なんともSMチックに股縄まで打たれた紀子の恥丘に、荒縄が食い込みました。

「ああッ、の、紀子は潔癖ですわ・・・。そうでしょう篠宮先生・・・? 先生と一緒に五十面相と闘って誘拐されてしまっただけ、ねぇ、そうですわよね?」
 紀子は苦痛で瞳を虚ろにしつつも、哀願するような瞳でみつめます。その瞳に裏切りの光が見え隠れしないことを観察する様にしばし無言で、その哀れな緊縛絵図を眺める名探偵氏です。
「せんせい・・・どうして何もおっしゃってくださらないの? わたくしをまだ疑ってらっしゃるの? ・・・それならいいわッ」
 紀子は急に拗ねたように逆さになった美貌を歪め、涙を地面に滴らせます。
「ここでもっと厳しい取り調べを受ければいいのでしょう。それで明日まで耐え忍べば、わたくしの潔白を信用してくださいますね、篠宮先生?」
 捨て鉢になったような可哀想な紀子の訴え通り、拷問を再開しようとする高野伍長。帝都特高においては18歳以上の容疑者には、いくら拷問を行っても許されるのです。少女である紀子ですが、その責め苦から逃れる理由は持ち合わせません。このままでは、さらなる過酷な取り調べを受けてしまうことは間違いありませんでした。その時です。
「いえ、これ以上の取り調べは必要ありますまい。この娘さんは私の助手だ。身元引受人になり、預かります。それならば、解放していただけますね?」
 さすがの帝都特高も、恩を売られた過去のある名探偵氏の願いを無下にはできませんでした。

 その夜の篠宮探偵事務所。スタンドの明かりを頼りに文面をしたためる名探偵氏は、部屋のドアをノックする音に立ち上がりました。
「先生、紀子です。よろしくって?」
「どうしたのだね、紀子君。こんな遅くに」
 深夜二時を指した時計の針を見遣りながら、ドアを開ける篠宮探偵は少し、動揺しました。なんと、そこにはシルク地のパンティひとつの助手、紀子が大きな乳房を両手で覆い隠しながら恥じらうように頬を染め、たたずんでいたのですから。
「先生、よろしいですよね?」
 紀子は消え入るような小さな声で、もう一度恥じらうように伏し目がちに問いました。
 
「紀子君、いけないよ。君の事は御尊父、服部辰彦氏から信用を戴いてお預かりしているんだ」
 紀子が何を求めているかくらい、世慣れて女性経験も豊富な篠宮氏が気が付かぬはずはありません。しかし、紀子は一途で純粋な恋心を持つ乙女です。情念だけで部屋に押し入ると、尊敬する先生の胸に飛び込んでむせび泣くのです。
「先生、紀子、とっても怖かった! 先生はすぐに助けに来て下さるって信じていたのに・・・。それに、警察でもわたくしのことを疑って、なかなか信用しても下さらなかったし・・・」
 嗚咽を堪える紀子を愛おしむように抱きしめる名探偵。
「すまなかったね、紀子君。これからは必ず君を信じるよ」
 篠宮氏の言葉に紀子は泣き止むと、微かに涙で潤んだ瞳を輝かせ、想い人にかねてからの願望を打ち明けます。
「先生は・・・わたくしのことお好きじゃなくて? 紀子、先生のお嫁さんになりたいのです! そして名探偵夫婦になってご一緒に事件を解決したいのです」
「おいおい、君はまだ助手だぞ。探偵にもなっていないのに、気が早くないかね?」
「はぐらかさないでくださいッ、紀子はもう子供じゃなくてよ。・・・それにもう、バージンでもなくて・・・。五十面相に・・・犯されました」
 衝撃の告白でした。ですが、そんな時言葉はいりません。無言の名探偵氏です。
「お願いです、紀子を抱いて・・・」
 名探偵氏と美少女助手は、今宵一つになったのです。

 紀子は先日まで生娘だったとは思えぬほど、淫らに燃え上がりました。
「せッ、先生ッ、の、紀子、嬉しいッ、いいわッ、いいッ!! ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・あッ、あッ、あッ、ああッ、ああぁぁッ・・・ひ、ひぃッ」
 清楚な表情をかなぐり捨て、一匹のメスになった紀子は名探偵氏の腰遣いに合わせ、ふしだらな嬌声を漏らします。
「ああッ、紀子はもう狂いそうッ、ああ、体が熱いわッ、先生に抱いていただけて・・・紀子は昇天しそうですうぅッ!!」
 男女の結合する下の御口からも卑猥な声を漏らしつつ、上の口からは、正気では漏らせない淫らなセリフをどれだけ天井に向けて吐き出したでしょう。英雄色を好むと言いますが、絶倫の名探偵氏の性戯によって紀子は今宵、四度も果てたのです。

 篠宮探偵は交わりの疲れからか、何時しか睡魔に襲われました。ふと気が付くと紀子が微笑んでのぞき込んでいます。
「紀子君・・・」
 その黒髪を撫でてあげようとした名探偵氏ですが、その身に自由が無いことにようやく気が付きました。ガチリとした金属の感触が、手首足首に走ったのです。そう名探偵氏は全裸のまま、大の字にベッドに拘束されるという痴態を晒していました。
「の、紀子君・・・、これはいったい!?」
 紀子は相変わらず微笑み続けていますが、それは笑みを浮かべているというよりは、小悪魔的に冷笑していると言った方が正確でしょう。
「フフフ、案外簡単に騙されるのね、隙が多いですよ、篠宮先生は・・・こんなに簡単に罠に嵌るなんて、紀子少しだけ幻滅だわ。五十面相様が本気を出したらとても勝つ見込みは無くってよ」
 紀子はさも痛快、と言った表情でせせら笑います。
「き、君は僕を騙したのか? やはり君は五十面相に洗脳されてしまったのか!? 何が目的なんだ、言い給え、紀子君!!」
 一糸纏わぬ四肢を悶えさせながら問い詰める名探偵氏ですが、後の祭りです。

「目的? 言ったでしょう、紀子は先生のお嫁さんになりたいのです。そして夫婦で名探偵ともよばれたいわ」
 紀子はここまでは無邪気に言います。しかし、声音を変えてこうも付け加えたのです。
「でもそれだけじゃあ、満足できません。紀子は帝都貴族になりたいのです。そう、先生のお嫁さんになって貴族夫人になり、皇族方ともお付き合いができるようになって、人々の羨望の眼差しももらいたいのです」
 日頃の謙虚な性格からは想像もできない、ある意味女らしい卑しさを感じるサガを平気で口にする紀子です。
「そのために、五十面相に魂を売ったというのかね」
「五十面相様にはいろんなことを教えていただきました。特に男女の事、をね。うふふ」
 紀子は思わせぶりに、全裸のカラダを見せつけるように、全裸で磔になった名探偵氏のベッドの周りを愉しげにスキップします。
「私をどうする気だ?」
「そうですねぇ、紀子をお嫁さんにしてくださるなら、危害を加えませんけど・・・一つだけ教えていただきたいことがありますの」
 紀子は小悪魔的な笑みを浮かべたまま、その美貌をぐっと名探偵氏に近寄せます。
「近衛之宮寧子嬢はどこにいらっしゃるかお聞きしたいわ。寧子様は五十面相様に奉げる大切な貢物ですもの」
「そ、そんなことを話せるものか」
 当然名探偵氏は紀子の要求を突っぱねます。
「あら残念だわ。でもいいんです。紀子は人から何かを聞き出す秘訣を大怪盗様からお教えいただきましたわ。人って苦痛より快楽を与えられることの方が、遥に辛いって、ね」
 紀子の表情は完全に悪女のそれでした。名探偵氏は紀子から魔の拷問を受けることとなったのです。

< 続く >

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