第三話 MISSION1 初恋の彼から、搾り取っちゃおう!
翌日、九音、の身体に現在入り込んでいるインクは、九音に状況を説明してもらいつつ図書館に向かっていた。
「なるほど……じゃあその京介君とデートをすればいいわけね」
(……変なことしないでよ)
「しないわよ。昨日も説明したけど、私の仕事はあくまでも怪盗。狙ったものしか奪わないから安心して。その京介君って男の子は『今のところ』私の狙いじゃないから」
少し茶化したように言うインクに対し、
(今のところって何よ)
と、九音は不満そうに告げた。
昨晩、シャワーから上がった後、九音はインクから様々な話を聞いた。
「私はこことは違う世界で怪盗をしていたのよ。あ、怪盗って言っても、別にめっちゃ悪人じゃないわよ。人の心に入り込んで怪物にしてしまう『怪物の種』とその種を生み出す『邪石』っていうのを盗んでたわけ」
(怪物の種? 邪石?)
「そう。この世界にはそういう魔具とかないみたいだけど、私の世界では邪石は人を怪物に変えるまぁ、病巣みたいなもので、怪物の種はその病巣が他の人間に転移したみたいなものかな」
(で、どうしてそんな怪盗がこのペンダントに?)
「さぁ、それはよくわからない……でも一つだけはっきりしてることがあるわ」
(何?)
「私とあなたの意識が入れ替わる方法よ。それは」
(それは?)
「エッチなことをする」
歩いていたインクが突然そんなことを言い出した。
(な、なにを急に)
「え? いや、その京介君に今日告白したいんでしょ。だったらいっそ、今日中にエッチなことしちゃえばいいんじゃないかなって」
(そ、そんなことできるわけないでしょ!)
「でも、そうすればあなたもこの身体に戻ってこられるし、好きな男の子とも結ばれて良いことづくしじゃない。まぁ、そこまではしなくても、もし元の身体に戻りたいときはいつでも言ってね。私、オナニーするの、結構好きだから」
(わ、私の身体なんだから、好き勝手しないで! それに、こんな公共の道でそんな話をしないで!)
しばらくそんなやり取りをしながら歩いていると、ようやく市営の図書館が見えてきた。その入り口付近に、文庫本を片手に立つ京介の姿が見えた。
そんな京介を見たインクは、
「あれが京介君? あら、なかなかいい男じゃないの」
と、じゅるりと唇を舐めながら言う。
(こら! そういうのはしないって約束でしょ)
京介もどうやら九音の存在に気づいたらしく、向こうから九音の方に走ってきた。
「やぁ、二階堂さん。朝早くから来てくれてありがとう」
さわやかに挨拶をしてくる京介にインクは、
「ううん。今日は誘ってくれてありがとね、京介君」
と、何の前触れもなく京介のことを名前で呼んだ。突然名前を呼ばれて驚いたのか、京介は目をぱちくりとさせる。九音も、
(ちょ、いきなり名前を呼ぶなんて)
と、頭の中でインクを叱責しようとしたが、
「……名前で呼ぶの、嫌だった?」
「ううん。別に構わないよ」
「ほんと? じゃあ、私も名前で呼んでいいよ」
「うん。じゃあ、行こうか、九音さん」
インクはあれよあれよという間に、お互いに名前を呼びあってもよいという関係に持ち込んでしまった。あまりのことに九音は何も言えなくなってしまう。
京介について図書館に入っていく途中で、
「……どう? このコミュ力。怪盗たるもの、短い会話でも一気に友好関係を構築させられないとね」
京介に聞こえないくらいの小声でインクが九音に告げる。
(か、勝手なことしないでよ、インクさん)
「えぇ、良いじゃん。向こうも名前で呼んでくれるようになったんだし。どうせ彼氏になったら名前で呼び合うんだから」
(いや、でも)
「あ、そういえば、昨日、今日は何か大事な話があるって言っていたよね」
歩きながらふいに京介が声をかけてきた。九音との会話を中断し、インクは京介との会話に切り替える。
「あ、うん……でも、ちょっとここじゃ。あ、京介君っていつも本読んでるよね。もしおすすめとかあったら教えてほしいかも」
「ん? 僕のおすすめ本でいいの? 僕、結構マニアックな本読むけど」
「うん。知りたいな」
「わかった。じゃあ、ちょっと席に座って待ってて」
インクをテーブルに座らせると、京介はおすすめの本を取りに行ってくると、本棚の奥へと消えていった。京介がいなくなったのを確認したインクは、
「ねぇ、今日の告白はやめにした方が良くない?」
と、九音に提案してきた。
(どうして?)
「だって今は私がこの身体にいるわけで、私の告白は九音の告白じゃないでしょ。だったら一度オナニーして、九音がこっちの身体になってから告白した方が良くない?」
(……でも)
九音はインクのその提案に素直に「うん」と言うことができなかった。
さっきのインクのスムーズなやり取りと、自分にはないコミュニケーション能力。どう考えても、インクにやってもらった方がいいのではないか。そう考えていたからだ。
九音が何も言わずにいることを不審に思ったのか、インクが何か言いかけようとしたのだが、
「おまたせ。はい。これ」
京介が数冊の本を抱えて戻ってきたので、インクはその言葉を飲み込んだ。
「これが京介君のおすすめの本? ルブラン、ルルー、カーに、ホッグ?」
京介が持ってきた本の表紙を一冊ずつ見て、インクはその作者を読み上げる。
「そう。どれも外国の小説ばかりだけど、すごく面白いんだ。だからもしよければ夏休みに読んでみて」
「うん。ありがとう。全部読んでみる。ええと、私は、ここの本を借りられる、のかな?」
京介に尋ねるように見せかけつつ、インクは九音に尋ねる。
(あ、うん。私もここの図書館の貸し出しのカード持ってるから)
「借りられると思うよ。もし借りられなかったら僕が代わりに借りるよ」
自分に尋ねられたと思った京介は、そう言いながら手帳を取り出し、そこに挟まっていた貸し出し用のカードを取り出してインクに見せる。だが、インクは差し出されたその貸し出しカードではなく、京介の持っているその手帳の方に視線を向けた。
「……京介君、その手帳って」
「え、あぁ、昨日も言ったけど、父さんからもらったもので」
「京介君のお父さんって、お仕事、何してる人?」
京介が言い終える前に、インクはさらに質問を重ねた。
「え? あぁ、貿易関係なのかな。海外に行って珍しい雑貨を見つけてきては、それを国内に輸入するみたいなことをしているかな。」
「ふうん」
と、インクは何やら考え始める。
(ちょ、ちょっとインクさん?)
九音の声も無視し、しばらく何かを考えていたインクは、
「ねぇねぇ、京介君。もしよかったらさ、京介君の家、これから行っても良い?」
いきなり京介にそう言った。
(な、なにを言って!)
「ダメかな。京介君の部屋の本棚、見せてもらいたいな」
九音が文句を述べるよりも早インククは京介にそう提案した。すると先ほどまで少し困った様子を見せていた京介は、
「あ、本棚? うん、いいよ。僕の家、ここから近いし。ぜひ来て」
先ほどまでの様子を一変させ、ぜひ来てくれと提案してきた。
「ありがとう。あ、じゃあこの本を先に借りてきちゃうから、図書館の入口で待ってて」
インクは京介が持ってきた本を抱え、貸出カウンターへと向かった。その途中、
(ね、ねぇ。どうして京介君の部屋に本棚があるって知ってるの? てか、なんで京介君の家に行くことにしたのよ)
九音がインクに尋ねる。
「京介君はかなりの読書家だよ。そんな読書家の部屋に、本棚がないわけがないでしょ。それに読書家っていうのは自分の本棚の本をコレクションみたいに考えているから、誰かに見せたくて仕方ないものなのよ。これはどこの世界も一緒ね」
(でも、何で急に家に行こうなんて)
「んー? まぁ、良いじゃない。気になるでしょ。京介君の部屋」
気にならないと言ったら嘘になる。九音は素直に「うん」と言うしかなかった。本を借り、京介と合流したインクはそのまま真っ直ぐ京介の家に向かった。
図書館から歩いて十分ほどの京介の家は、豪華なタワーマンションで、そこの最上階が自分の家とのことだった。その説明を聞いたインクだったが、タワーマンションの最上階と言う言葉の凄さがわからなかったので、
「へぇ! 京介君ってめっちお金持ちだったんだねぇ!」
と、九音が頭の中で呟いたことをそのまま言葉にした。
「そんなことはないけど」
まんざらでもなさそうに苦笑する京介は、手帳から取り出したカードキーをエレベーターに差す。数秒後、エレベーターが到着し、そこに乗り込んで最上階へ向かう。
「最上階に行くにはこのエレベーターで行くしかないの?」
エレベーターの中をきょろきょろと見渡しながらインクが尋ねる。
「いや、階段もあるけど、僕の部屋のある最上階までは流石に階段じゃキツイかな」
「そっか。ここに住んでいる人は、みんなさっきみたいなカードを持ってるの?」
「うん。うちは僕と父さんがそれぞれ持ってるよ。これがないとエレベーターには乗れないからね。もし忘れたりしたらそれこそ地獄の階段ルート行きだよ」
エレベーターが最上階につく。扉が空くとはすぐそこは玄関になっていた。
「ここが僕の家だよ」
玄関を抜けるとダイニングとキッチンがあった。ダイニングから見える階下の眺望は、まさにタワーマンションの醍醐味を体現化したようなものだった。
インクは窓の外から下を眺めた後、部屋の中をひと回りすると、
「ここに二人で住んでるの? お父さんと」
京介にそう尋ねた。
「うん。まぁ、とは言っても父さんはいつも会社に行くからさ。今日もこの後一度帰ってくるけど、また仕事に行っちゃうんだ。だから大体、僕一人でいることが多いよ」
「じゃあ、ご飯は京介君が自分で作るの?」
「いや、だいたいは宅配してもらうか、近くのコンビニで買ってきちゃうかな」
「へぇ。料理男子というのが流行っているらしいから、いっそ作ってみればいいのに」「
「いやいや、僕には料理のセンスがなくて」
そんな会話をしながら部屋を案内され、最後に京介の部屋に案内された。
京介の部屋は十畳ほどの広さがあり、ベッドと本棚。そして様々な器具の置かれた作業台のようなものがあった。その作業台を見ながら、
「京介君って、もしかして発明好き?」
と、インクが尋ねる。京介は恥ずかしそうに頭を掻きながら、
「あぁ、うん。機械を作ったり、基盤を組み立てたり、いろいろやってる」
作業台の上に載っていた小型の機械を取ってインクに見せた。
「これは小型のトランシーバーでね。耳にはめると、無線で通信できるんだ」
「へぇ……ドクみたい」
受け取った機械を眺めながらインクが何か小声で呟く。その声を聞いた京介は、
「え? あぁ、うん。あの映画を見て、こういうのにはまったんだ」
と、何か勘違いしたのかそう言ってきた。
「他にもいろいろ作ってるんだ。あ、でも今日は本棚を見に来たんだったね。あ、こっちが本棚だよ」
京介に案内されたインクは大きな本棚の前に立ち、ずらっと並んだ蔵書を見る。だがその目は本棚を見ているが、頭では別のことを考えているようだった。
「ねぇ、京介君。最近、体調に変化はない?」
突然、インクがそう尋ねる。京介は首をかしげながら、
「いや、特にこれといって……」
そう述べた。その答えにインクは何度もうんうんと頷いた。
「そっか。なら、良かった」
それからしばらくの間、インクは京介の蔵書の話や発明品の話を聞いていたが、
「今日はいろいろありがとうね。ごめんね、突然お邪魔しちゃって」
あまり長居しては申し訳ないと「そろそろ帰るね」と切り出した。
「ううん。こんなに自分のことを話したのは初めてだよ。あの、また来てくれないかな」
「うん。近いうちに、また来るよ」
京介とそんな約束を交わしたのち、インクは一人マンションを後にした。マンションから離れてすぐ、
(で、どういうことなの? 急にマンションに来るわ、急に帰るわ。ちゃんと説明して)
九音がインクを問いただす。
インクは何やら神妙な面持ちで、
「ちょっとまずいことになったわ、九音。まさかこの世界にもあるとは、思ってなかったわ」
そう述べる。九音はその言葉に、嫌な予感がして思わず聞き返す。
(あるって……何が?)
「九音、謝らないといけないかも」
インクは先ほどまでいたタワーマンションを見上げながら、
「京介君、私の狙いになっちゃったみたい」
……。
予告状が京介の家に届いたのは、その日の夕方四時を迎えたころだった。
『今宵、十九時ちょうどに、京介様の手帳をいただきに参上します 怪盗インク』
帰宅した京介の父が郵便受けに入っていたのに気づき、部屋まで持ってきたのだった。それを見た京介の父は、
「くだらない。どうせこのマンションの子どもいたずらだ」
と言って相手にしようとしなかったが、
「……怪盗の予告状だ」
ルブランやホッグといった作者の小説が大好きな京介にとって、怪盗からの予告状というだけで胸が高鳴ってしまっていた。父親に気づかれないよう、そっとその予告状をポケットにしまう。
「京介、今日も俺は遅くなるからな、先に寝ていろ」
「あ、うん。夕飯は?」
「近くのコンビニで買うから、いらん……一応、戸締りはしとけよ」
京介にそう告げると、そそくさと仕事に戻ってしまった。
不器用ながらも一応心配はしてくれているんだなと思いながら、京介はエレベーターに乗り込む父親の背中を苦笑気味に見送った。
「さて、犯行予告時間には僕だけしかいないわけだけど」
この家には京介だけしかいない。
しかも狙いは自分の手帳だ。でもなんであんな手帳を狙うんだ? あの表紙についているのは、ただの硝子なのに。
念のため戸締りだけはしておこうと、京介は家の戸締りを開始する。
戸締りをする、と言っても京介の住むこの部屋は地上五十階。窓からの侵入は不可能だし、唯一の侵入経路であるエレベーターは、そもそもこのマンションの住人の持っている電子キーでしか動かない。
エレベーター内は常に監視カメラで撮影されており、万が一不審者が入ってきても、証拠がばっちりと録画される。
唯一の弱点は非常階段だが、ここまで登ってくるのは相当な体力が必要だし、
ガチャリ。
非常階段へと続く入り口の鍵は、京介自身の手によって閉じられた。
これで問題ないはず。
京介は部屋の時計を確認する。時刻は夕方の五時。
「犯行予告時間まで、あと二時間か……」
京介は手帳を自室に置き、夕飯を購入するために近くのコンビニに向かった。いつも利用するコンビニはタワーマンションから歩いて五分ほどの場所で、夜遅くまで仕事をする京介の父親も出勤前に良く利用しているらしい。
「ありがとうございましたぁ」
レジの女性から温めてもらった弁当と飲み物、あと好物のプリンを受け取った京介は、少しばかり早歩きで帰宅する。
エレベーターを待っている間「そろそろポイントカードのポイント使わないと、有効期限が切れちゃうな」なんてレシートを見ながら思っていると、
「こんにちは」
「あ、えと、こんにちは」
地上階に降りてきたエレベーターから出てきた長髪の女性に声をかけられた。いきなりあいさつをされて少ししどろ戻りになりつつもとりあえず返事を返した京介は、エレベーターに誰ものっていないのを確認してから、最上階のボタンを押す。
部屋に戻る前に、念のため非常階段の鍵を確認する。
ちゃんとしまっていた。
それから夕食を済ませ、京介が自室のベッドに腰かけて本を読みながら過ごしていると、ボーンと大広間にある時計が十九時を知らせる音が聞こえてきた。
あ、予告時間だ、なんて京介が思った瞬間、
「こんばんは、京介君」
背後から声をかけられた。
慌てて振り向いたそこに、黒いレオタードに黒いマントと目の部分だけを隠す仮面をつけた女、怪盗インクが立っていた。
「か、か、かか」
言葉を上手く出せない京介に代わり、インクが答える。
「そう。私が怪盗インクだよ」
「ど、ど、どど」
「どうやってここにって? うん。いい質問ね。まず、君のお父さんは地獄の階段ルートを明日の朝、経験することになると思うわ。そして、私は人生で初めてアルバイトというものをやった。なかなか大変ね、この世界の労働は……はい、このヒントだけで聡明な君なら私がどうやってここに来たかわかるんじゃないかしら」
そう言うと、インクは電子カードキーを京介に投げてよこした。
「……さっきのコンビニの店員」
ようやく落ちついて会話できるようになった京介は、インクにそう述べる。
「大正解」
インクはパチパチと、小さく拍手する。
「あとでお父さんに言っておいて、スマホで話しながらレジしちゃだめだよって。注意力が散漫になって、ポイントカードと電子カードキーを間違えて渡したことに気づかないうえに、私が返したカードが図書館の貸し出しカードだってことにも気づかない。うん、実に危ない」
「……僕の手帳なんか盗んでどうするのさ」
「ん。あ、これ?」
インクの手にはいつの間にか京介の手帳が握られていた。
「この手帳そのものじゃなくて、私が欲しいのはこっち」
インクは手帳の表紙についている青い宝石を指さす。
「それはただのガラスで」
「うん。知ってる。だけど、これは非常に危険なんだよ。京介君、これはもう君の身体にも害を及ぼし始めているかも」
「僕に、害を……?」
「うん。とりあえず、これは」
インクは手帳の表紙についていた青いガラスを無理やり引き抜くと、
「処分するわね」
手の平でぎゅっとつかんだ。
その瞬間、仮面の下のインクの瞳がピンク色に光る。インクが手を開くと、そこからさらさらと砂になった青いガラスが落ちてきて、やがて煙のように消滅した。
「さて、ここからは楽しい楽しい極楽タイムなわけなんだけど……」
インクは困ったような表情を浮かべ、
「今回の私は、ちょっとばかり難しい課題を抱えていてね。私もあなたをどうすべきかすごく迷うところなの。でも、これをしないわけにはいかないのよねぇ。あぁ、これぞ二律背反ってやつなのかしら」
意味の分からないことを口走る。
「な、なにを言って」
「ま、とりあえず対処療法だけはしとこうっと。効果はあるかはわからないけど。ごめんね、九音」
「く、九音?」
インクはベッドに腰かけている京介の前にひざまずき、おもむろにズボンを引きずり下ろした。
「う、うわぁぁぁっ!」
突然のことに慌てふためく京介は、思わずベッドから立ち上がろうとするが、
「ダメ。『動いちゃだめよ』京介君」
桃色に光る瞳のインクにそう告げられた瞬間、京介はベッドから立ち上がることができなくなってしまった。
「え、こ、これ、どういう……」
「まぁまぁ、悪いようにはしないからさ。ほら、君のここは正直だぞ」
ズボンを引きずり降ろされ、露出した京介の肉棒はすでに天井に向かってそそり立っていた。
「な、やめ」
「んん? 身動き取れずに恥ずかしい恰好させられて、それでもおちんちん大きくさせるなんて……もしかして君、マゾ?」
上目遣いのインクにそう言われた京介の肉棒が、ぴくんと反応する。そんな反応に、インクはにたりと淫靡な笑みを浮かべる。
「ふふっ。正直な男の子、お姉さんは好きよ。さ、これからとっても気持ちの良いことしましょうねぇ」
そう言うとインクはレオタードの下に隠されていた巨大な二つの胸を取り出し、その間に京介の肉棒を挟み込んだ。
「うおぅっ」
まるでつきたての餅のような柔らかくて暖かい感触に、京介の口から思わず声が漏れる。
「ふふっ……とりあえず、一回出しちゃいましょうね、京介、くん……んっ」
胸で挟み込んだ京介の肉棒を、インクはゆっくりとこすり上げる。胸を上に持ち上げると、京介の肉棒はすっぽりとその谷間に隠れてしまうが、胸が下がった瞬間、京介の肉棒の先端部が顔を出す。
インクはその先端部に、舌を這わせる。
「んちゅ、んちゅ……ちゅ」
「くっ、あああっ!」
初めての快感に、京介は声を上げる。気持ちよさそうな声をあげ、蕩けた表情を見せる京介を上目遣いに見やりつつ、
「んじゅ……にゅじゅ……京介君のおちんちん、熱くなってきたよ……ひもちぃ?」
「き、もちぃぃ」
「良かった……にゅちゅ……える……おちんちんの先から、熱い、お汁……んじゅる……れてる」
京介が興奮するのをわかって、あえて卑猥な言葉を使っているのだろう。そう言いながらインクは京介の鈴口からあふれ出る先走り液を舐めとっていく。そんな光景を見させられつつ百戦錬磨のインクの舌技を受ける童貞の京介が、我慢をできるわけもなく、京介の射精感はすぐにピークに達してしまう。
「くっ……あぁ、で、る……でちゃう……」
必死に我慢する京介を見つめながら、
「いいよ、京介君。私の顔に、いっぱいかけて……れるれる……いいよ……じゅる……京介君の濃い精液、私の顔にたっぷりとかけて……じゅるるるっ!」
インクが伸ばした舌先が京介のどろどろになった鈴口をべろりと一舐めしたその瞬間、
「あああっ! で、でる、でるぅぅぅっ!」
我慢の限界を迎えた京介がすぐさま絶頂を迎えた。
「ふあああっ!」
インクの顔目掛け、京介の肉棒から白い精液が放たれる。どろっとした濃い精液が一気に飛び出し、インクの顔全体を白く汚していく。
「あああっ! あつうぅいい!」
京介の精液を顔中に浴びながら、インクは恍惚の表情を浮かべている。
「あぁ……京介君の熱い精液がぁ、私の顔に、いっぱぁいかかってるぅぅっ」
「あふっ」
欲望の全てを出し終えた京介の肉棒を、インクはゆっくりと胸から引き抜く。精液と唾液の混じったねっとりとした白い橋がインクの胸と京介の肉棒の間をだらりとつないでいた。
「ふふっ。いっぱい出たわね、京介君」
そう言いながら、インクは自分の顔にかかった精液を指ですくいとり、その指をぱくりと口に入れた。そのままその指を口の中でゆっくりと味わうようにしゃぶるインク。
「んぐ、んぐっ……ぷあ……あぁ……京介君の精液、どろっとしててぇ、濃くてぇぇ、すっごくおいしぃよぉ……」
顔についた精液を、その後も二度、三度と口に運ぶインクのいやらしいその表情に、京介の肉棒は再び硬度を取り戻していく。
その様子を見たインクは、
「ふふっ、まだまだ元気ね、京介君……さて、ここからどうするかはあなた次第よ。頑張ってね、九音」
そう言うと、がっくりとうなだれた。
しばらくうなだれたままのインクが、急に意識を取り戻したかのように顔を上げる。
「あ、え、ええと、あれ」
先ほどの淫靡なオーラを全く感じさせない。
さっきとはまるで別人のようなおどおどとした態度のインクは、きょろきょろと周囲を見渡しながら、
「えと、どうしよ、え。インクさん、ちょっと、困るんだけど!」
そうぶつぶつと呟く。と、そのとき、あまりにも慌てていたせいなのか、インクのつけていた仮面がポロリと落ちてしまった。
「あ!」
インクは慌てて落ちた仮面を拾って顔につけようとするが、すでにとき遅し、
「……九音、さん」
仮面を外したその顔、九音の顔が京介の前にばっちりとさらけ出されてしまった。
<続く>
読ませていただきましたでよ~。
ま、まさかこっちの世界にも邪石がアッタナンテー!
まあ、物語の構造的に当然なんでぅけどw
女の子に迫られたら思春期の男の子ならMじゃなくてもちんちんを立ててしまうと思いますでよw
そして正体バレ(ちょっと違う)をしてしまった九音ちゃんはマジ災難w
次回も楽しみにしていますでよ~。
痴女だー!
しかし、自分の体を奪われた状態で好きな人とエッチなことをさせられてしまった上に、
最後には正体がバレてしまうなんて、とんだ災難ですねー……。
しかも今後もエッチなことをするたびに入れ替わってしまうのか……