その日の収録も、当初スケジュールと比べて40分近く遅れていた。ADの新藤正樹は、頭の中でこの後の予定を思い描きながら設営を手伝う。
「今日のインタビュー相手の桑原さん、お越しになるようです。亡くなられた奥様との思い出が色々と絡んでいまして、ホノボノしつつも、ちょっとホロっとくる、感動的なインタビューになる、という流れです」
「はい。台本で確認させて頂きました」
 笑顔で頷く若園アナ。マサキのような下っ端のADに対しても、話を聞く時は真っ直ぐにこちらの目を見て、姿勢を正して聞いてくれる。一緒に仕事をするようになってもう半年だが、マサキはいまだに、これほどの美人に話をする時には、激しく緊張していた。

プリマ 第6話

<<フリーアナウンサーになった若園芳乃香の意外な再浮上がネットで話題沸騰>>  かつて全国ネット局のホープで、夜のニュース番組のキャスターも務めた美人女子アナが、フリーになって地方ケーブル&ネット配信番組でキワドイお宝シ

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プリマ 最終話

『若園芳乃香の、ふれあい人生ニューページ』は、3ヶ月後にリニューアルをした。若園芳乃香さんは一旦、卒業というかたちになったので、個人名が外れて、『ふれあい人生ニューページ』と番組タイトルが短くなったのだ。今は4人の新しい

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プリマ 第5話

 撮影の翌日、仮編集版をロケ班スタッフ皆で確認した。キューさんのセンスは皆良く理解しているので、通常この作業はほとんど形だけの追認作業になる。けれど今回は揉めた。珍しく、一番立場が下であるADのマサキが異議を唱えたからだ

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プリマ 第4話

 コン………コンコン。  マサキが若園芳乃香さんの控え部屋のドアをノックする。緊張して待っていると、1週間ぶりの芳乃香さんの顔は、少し曇っていた。AD新藤マサキの不安が増す。微妙な愛想笑いを浮かべている自分に気がついた。

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プリマ 第3話

 部屋の湿度とシャンプーの匂いで、芳乃香さんがまだシャワーから出てきたばかりだということがわかる。ドアを開けたまま立ち尽くす若園アナは白いバスローブ身にまとって、まだ湿っている髪を両肩の先へ広げていた。化粧台にはヘアドラ

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プリマ 第2話

 ロケバスでの移動中、マサキは限られた時間を使って、Youtubeの催眠術ショー動画を漁るように見ていた。少しでも多くの、愉快な画を撮るためのヒントが欲しかった。結局のところ、撮影が始まってしまえば、芳乃香さんの反応を見

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プリマ 第1話

 その日の収録も、当初スケジュールと比べて40分近く遅れていた。ADの新藤正樹は、頭の中でこの後の予定を思い描きながら設営を手伝う。今日のロケは泊りなので、機材やバスなどの返却時間は気にしなくて良い。この後のインタビュー

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