最終章 ・・・ざ・・・ざん・・・。 ・・・ざざ・・・ざん・・・。 波の音が、寄せては返し、返しては寄せ、飽きる事無く続けている。まるで、心音にも似たそのリズムが、瀬蓮の心を癒して行くようだった。 瀬蓮はもう、泣い
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「愛してる……だから、”あの子たちのためにも……生きて”……」
涙が止まらない。 声に押されたように青年は、女性に背を向けると走り出した。
セイレーン 5章
5章 - 1 - ざ・・・ざん・・・。 ざ・・・ざざ・・・。 寄せては返す波の音が、夜の空気に浸透するように、繰り返し響いている。 それはこの場所で、悠久の彼方より連綿と続けられてきた営み。 その波の音に唱和す
もっと読むセイレーン 4章
4章 - 1 - 「はい、砂糖無しでミルク多めのコーヒーです。どうぞ」 そこは瀬蓮の部屋。どことなく居心地悪そうな悟に、瀬蓮はコーヒーを出した。もう、コーヒーというより砂糖抜きのカフェオレに近いそれは、不思議と美味しそ
もっと読むセイレーン 3章
3章 - 1 - 呼吸を止めて、ライフルを構える。今までクレー射撃で使っていたものよりも、重い。 達哉は地下室に設置された射撃場で、試射をしていた。威力重視の大口径なので、とてもでは無いが、試射無しでは扱う気にならな
もっと読むセイレーン 2章
2章 - 1 - 潮崎家の朝は、父親の達哉が作る料理の匂いで始まる。瀬蓮と夕緋を小さい頃から一人で育ててきたせいか、達哉の炊事・洗濯・掃除の腕前はかなりのものだった。特に料理は、見た目や味だけでなく、栄養のバランスの取
もっと読むセイレーン 1章
1章 - 1 - 県立光陵高校は、街の外れに佇む歴史ある高校で、いじめや犯罪の無い、世間とは流れる時が異なっているかのように穏やかな校風だった。街の中に高校を建設しなかったのは、初代校長が自然の中で学生が育まれる事を願
もっと読むセイレーン 序章
序章 - 1 - ───13年前、秋 星空に、月が輝いている。美しい夜空から降り注ぐ月光が、北海道の雄大な大地を照らしている。この辺りには人家も無く、野生動物達だけのテリトリーだ。恐らくは、日本でもっとも”自然”が溢れ
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