「魔法使いに会いたい」とエリは言った。 夕焼けが塗りつぶすあの日の空を僕は忘れたことがない。 それは彼女の怒りと無念の色だ。雲は毛氈のように真っ直ぐな道を作り、一番星が瞬いて宇宙の真理を垣間見せていた。 魔法使いは
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魔法使いに会いたいと、エリは言った。
さよならウィザード 11話
第11話 深い眠りの底から、ゆっくりと引き上げられる。海底のような体の重さだ。 空っぽの教室。机が一つ。僕はその机の前に座っている。体はまだ重くて口が開かない。湿布くさいなと思ったけど、それは僕の体から匂っていた。
もっと読むさよならウィザード 10話
第10話 「あっ、あうっ、あんっ、ご主人様!」 図書室で古い卒業アルバムをめくっていく。 そのテーブルの上で、モエミをうつ伏せにしてパンツを脱がせ、覆いかぶさるようにして挿入している。 「ご主人様、あぁっ、みんなが、
もっと読むさよならウィザード 第9話
第9話 この世の魔法を全て手中にしたと僕は過信していた。 だから高校生活もきっと退屈なものであるに違いないと、疑いようもなく、毎日決まった登校ルートを歩くのと同じくらい当たり前に思っていた。 その道に花が咲いていた
もっと読むさよならウィザード 第8話
第8話 放課後になっても教室に残る生徒はわりと多い。 高校生にもなると堂々と遊びに入れるエリアは増えるわけだが、自由になるお金まで急に増えるというわけじゃない。楽しみは週末まで残しておいて、平日はお金のかからない教室
もっと読むさよならウィザード 第7話
第7話 「あなたはだんだん眠くな~る……眠くな~る……眠くな~る……」 ゆらり、ゆらりと、目の前をコインが泳ぐ。 『五円』の文字とたなびく稲穂がピンク色の糸に厳重に括られ、右に、左にとふらふらと頼りなげに往復していっ
もっと読むさよならウィザード 第6話
第6話 「こ、琴原モエミさん! 俺と付き合ってください!」 いきなりモエミに告白してきたのは、同じクラスの神田という奴だ。 出身中学が違うし、まだそんなに親しくはないのでよく知らないけど、爽やかなジャニ系っぽい童顔で
もっと読むさよならウィザード 第5話
第5話 中学最後の1年は矢のように過ぎていった。 しかし、やることは基本的には何も変わらない。 勉強だって真面目にしたし、セックスもたくさんした。 夏には毎日プールでエッチしたし、秋にはキャンプに行ってみんなで野
もっと読むさよならウィザード 第4話
第4話 「トーマ起きろー」 ルナの細い指が僕のペニスに絡んで、ぷるぷると振り回された。 ぼんやりとした頭がゆっくり覚醒していく。さらに彼女はべとっと僕の耳に舌で触れて、チュウと耳たぶに吸い付いてくる。 うとうとして
もっと読むさよならウィザード 第3話
第3話 5月の連休も明けて、僕らを乗せたバスは西へ向けて出発する。 たかだか3泊4日の修学旅行だというのに、しかも早朝出発だというのに関わらず、一部の保護者は可愛い我が子の見送りに列をなしていた。 うちのクラスの女
もっと読むさよならウィザード 第2話
第2話 佐藤ルナは、中学生になってから更に人気を増しているようで、教室でもいつも中心にいた。 今日も自慢の黒髪を面倒くさそうにかき上げ、周りに集まる女子の楽しげなトークを、つまらなそうに聞き流している。 そういう気
もっと読むさよならウィザード 第1話
第1話 魔法使いに会いたいと、エリは言った。 僕らはマンションの屋上で、固い床に背中を痛めつけられながら、見つけたばかりの一番星を仰いでいる。 魔法使い、と僕は口の中で繰り返す。 彼女が見たアニメでは、魔法使いは
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