それまでと、祭りの後 面之五 亮太(天狐の面) 初めて見たときから、このお面を気に入っていた。 この里の神社の家に生まれた僕が、古くから伝わる祭りの準備を最初に手伝ったのは中学2年の時だった。 面引きの神事のための
もっと読む「奇祭」
仮装行列綺談 本祭 弐
本祭 弐 面之四 唯(尾裂の面) チン、トン……と鉦と太鼓の音が鳴り始めて、祭りに参加するために集まった人たちが動き始める。 夜中の10時過ぎに、それぞれにお面を被って時代劇みたいな衣装に身を包んだ大勢の人が蠢いてい
もっと読む仮装行列綺談 本祭 壱
本祭 壱 そして、いよいよお祭りの当日がやってきた。 「みな様、着付けのお手伝いをしますね」 晩ご飯の後で、私たちの部屋に帯刀の息子さんの奥さんが入ってきた。 「……あ、お願いします」 お祭りに行く準備をしようとし
もっと読む仮装行列綺談 祭りの宵
祭りの宵 「社長、本当にこの道で合ってるんですかぁ?」 「心配しないで、大丈夫なはずよ」 「いや、はずって……しゃちょお~」 ハンドルを握りながら、私は思わず情けない声を上げていた。 ただでさえ初めて走る道なうえ、さ
もっと読む秘仏御開帳
わたしが、その村にやってきたのは、春先のことだった。 奇妙なお祭りがある。 そのお祭りには、お寺にある秘仏が関係しているそうだ。 そんなうわさを(ネットで)聞き付けたわたしは、現地に直行した。 そういうことをす
もっと読む件の里 第03話
第03話 はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。はあぁぁっ。 カラダ中が熱く脈打ち、歓喜の涙が止まりません。 (ああ……ああ……あああ……) 生まれて初めて知る喜びが私を魂の底まで震わせます。 んっ! んんっ! ぢ
もっと読む件の里 第02話
第02話 「脱ぐ……って、一体どうして?」 唖然として尋ねる私に、麻紀子ちゃんはもの分かりの悪い子を諭すように、やれやれといった表情で答えます。 「だって服が汚れちゃうでしょ? 知らないの? お洋服に付いたミルクって放
もっと読む件の里 第01話
第01話 「とにかく私は、帰らないったら帰りません!」 インターホン越しに響く義姉の声はヒステリックで取り付く島もありません。 「……で、でも、京子義姉さん、麻紀子ちゃんはどうするの? ここで暮らすのがあの子のためにな
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