僕らの発信基地 2話

 次の日の日曜日、シュントはツトムの家に、画板と紐で作った、首掛けタイプの自作「操縦機台」を持っていった。昔の映画やアニメに出て来る、駅のホームで駅弁を売っている人が運んでいる首掛けの駅弁箱(「ばんじゅう」と言うらしい)をイメージして、画板と麻紐を使って作ったものだ。シュントはツトムのように、この「生物操縦機」の構造や機構、機能を調べることは出来ない。だからせめて、持ち運びの利便性を上げるような準備をすることで、3人組での「操縦機」実験にちょっとした貢献がしたかったのだ。

 ミツルも似たようなことを考えたのかもしれない。この機械に関連する貢献が低ければ、この実験に関わるなかでの発言権が低下する。そう考えたのかどうなのか、ミツルは自分に出来ることを見直した結果、この操縦機に名前をつけようということで、ネーミング提案を持ってきたのだった。

「俺が深夜まで悩んで、やっと思いついた名前はな、『コックピット・S』というんだ。コックピットというと、当然みんな戦闘機とかの操縦室を思い浮かべると思うけど、英語でコックにはオチンチンという意味もあるし、ピットには穴という意味がある。久しぶりに英和辞典をめくってて、ブルったね………。だからこの操縦機で、3人メデタク童貞卒業しようっていう合同作戦の主力ツールとしては、最高のネーミングだと思うんだ。ちなみに、Sは何か、わかるかな? ………ヒントは、童貞卒業するするためには必須の行為のことです。さぁっ、わかるかな? ………早いもん勝ちだぞっ」

 自信満々で問いかけるミツルを、半分無視するように、ツトムがシュントに話しかける。

「操縦機って言えばこの機械のことだって、わかると思うけど、………呼び名が必要だったら、普通に『双シン壱号』じゃ駄目かな? ここのロゴも筐体の流用だとは思うんだけど、アンテナの形状もさ、………何となく、フタバっぽくない?」

 シュントの作った首掛け方の操縦機台のサイズを確かめながら、ツトムは機械に貼り付けられた『双葉工作機械』という銀色のメーカーロゴと、上部先端がリボン型に展開しているアンテナを指さした。確かに、アンテナの先端が回転している姿は、草の葉が双葉になって芽を伸ばしていく、植物の生長を学習する早送り映像のようにも見えた。

「他の案で言ったら………。あとは、筐体は『双葉工作機械』でも、中身は『シンニー・コーポレーション』の機械だから………。くっつけて、『双シン壱号』じゃ駄目かな? ソーシンっていう響きが、命令の送信とかかってて、いいんじゃないかと思うんだけど」

「いいじゃんっ。………で、その肝心の、『双シン壱号』の今日の調子はどうなの?」

 シュントの質問に、ツトムは笑顔を見せる。主電源のスイッチをバチンッとONに切り替えると、半透明っぽい白のプラスチックのスイッチ部分がオレンジ色に点灯する。同時に操縦機全体が、ブーンと小さく低い音で震える。ツトム曰く、内部で送風ファンが回っている音だそうだ。真空管の前にある豆電球が1個ずつ店頭して、表示計の針が触れ始める。先端がリボン形状のアンテナが50センチくらい、電動で伸びてくる。オシロスコープとレーダーが作動し始めた。

「充電もしっかりしてあるし、動作もバッチリ安定してると思うよ。今日はとことん、実験で働いてもらう。………頼むぞ、双シン壱号」

 計器類を見ながら、スイッチ操作、ツマミ型のノブハンドル操作をして機械の様子を確かめるミツルの横に立つと、この機械の操作盤に以前貼ってあった、「熊」、「猪」といったシールが剥がされていて、綺麗に拭き掃除がされていることに気がつく。

「頼んだぞ。双シン壱号」

 シュントも、(機械に振動を与えないように気をつけながら)そっと双シン壱号を撫でてみた。

「おい、『コックピット・S』じゃないのかよっ。人が何か月ぶりに辞典を捲って調べたと思ってんだよ」

 ミツルの文句を聞き流しながら、3人の実験が始まる。

。。。

 元々は、日曜日の葛城サヤカの予定は、早朝にバスケの練習をしたカナエと昼過ぎに待ち合わせして、新しく出来た喫茶店でお茶をするつもりだった。ヒトミは今日はバイオリンのレッスンの後は図書館で過ごす予定だったそうだ。それが、昨日一緒に見た映画の感想を話しこむうちに、日曜もサヤカの家でノンビリするというスケジュールに変更となっていた。せっかくの良い天気の日曜日だったので、しばらくお部屋でまったりダベッたあとは、散歩がてら駅前にウィンドウショッピングにでも行こうか………。あれこれ提案しようか考えながら、サヤカは、ヒトミが上手に淹れてくれたくれたハーブティーを飲んでいた。

 そんな、気の置けない同性の親友だけと過ごす、リラックスした日曜の午後、ふとサヤカはキュィーーーーン………という耳鳴りを、頭の奥で聞いたような気がした。

(…………また…………。最近、この感じ、………急に来るんだよな…………。偏頭痛とかじゃ、無いと思うんだけど………。)

 飛行機に乗っていて、気圧が急に変わったことを体で感じるような、ほんのわずかな耳鳴りと、肌に静電気が走るような微妙な感触。それは、やり過ごそうと思えば気にもならないような、本当に微細な感触だった。

 ヒトミがこちらを見ているので、サヤカも視線を合わせる。この、隣の部屋で電化製品がつけっぱなしになっているのに気づくような、微妙で繊細な感覚を、ヒトミもサヤカと同じように感じたのだろうか? 質問してみようとしたところで、ヒトミが先に口を開いた。

「ね……………、サヤちゃん…………」

「なぁに? ………もしかして、ヒトミも今ちょっと、耳鳴りみたいな………」

「サヤちゃんって、どんなお尻してたっけ?」

「………ハァッ? ………なんじゃ、その質問」

 サヤカの言葉を遮ってまで、ヒトミが出してきた質問は、余りにも想定をぶっとんでいた。サヤカは思わず、大きめの声で返してしまった。ヒトミの顔をマジマジと見てみると、深沢ヒトミは顔を赤くしながら、言い訳めいた言葉をボソボソと呟く。

「いや………その…………。変なこと聞いてる………とは、思うけど、…………その、気になって………ふと、どんな感じかな~って………」

「え………普通と思うけど…………。何? …………ヒトミは、私のお尻を見たいの? …………今? …………ここで?」

 普段だったら、カナエがたまに仕掛ける下ネタ混じりの恋バナとかオヤジギャグにも、顔を真っ赤にして拒否反応を示すお嬢様のヒトミ。その彼女が今日に限って、唐突に、脈絡もなくサヤカのお尻について聞いてくるというのが、違和感が半端ない。サヤカまで顔が赤くなって、お尻がムズムズしてくるような気がした。

「あの…………別に、変な意味じゃなくて………………。あの、サヤちゃんだけだとイヤなら……………、私も、お尻見せるから、……………ちょっとだけ……………見せあったりしない?」

 口元を恥ずかしそうにモゾモゾさせながら、キャラに合わないことを言い出すヒトミを見て、困った顔を作ったサヤカが、ベッドに腰かけて雑誌を読んでいるカナエを振り返る。カナエは雑誌から目を離さないままで、サヤカに親指を立ててみせた。「何でもトラーイ」というカナエのサインだ。サヤカは唇を突き出して、文句を言いたそうな不満顔を作りながらも、無言で小さく敬礼をカナエ隊長に返す。仕方なくスカートのホックに手をかけた。チャックを下ろして、タータンチェックのスカートを下ろすと、淡い水色のショーツが見えてしまう。女友達相手であっても、更衣室でもないところで下着を見せるのは、少し抵抗があった。けれど、そそくさとスカートを下ろして、ショーツも下ろそうとしている、目の前のお嬢様を見ると何も言えなくなってしまう。サヤカは仕方なく、大きめの溜息をついたあとで、自分のショーツも脱いでいく。

(あのヒトミが、なんで急にこんなこと………。好きな人でも出来たのかな? …………お尻気になるって………。やっぱ、胸には自信があるからかな?)

 サヤカは服を脱いでいくヒトミをチラチラと見る。胸はやっぱりバーンとおっきいし、そのせいで太く見えると愚痴っているプロポーションも、実は全然悪くない。運動こそあんまりしていないヒトミだけれど、食が細いからか、腰回りはキュッと締まっていて、綺麗な体つきだ。そして待望のお尻がチラッと見えると、サヤカは思わず生唾を飲み込む。白くて柔らかいヒトミの肌に包まれた、ムッチリとしたお尻だ。

(…………ん? ………待望の? ……………今、私、唾飲んだ? ……………なんで私が、ヒトミのお尻を見たがってるの?)

 サヤカは自分の心の動きが謎の迷走をし始めているような気がして、ふと我に返って赤くなる。右手で頭の後ろをポリポリと? きながら、左手で白いシャツの裾を伸ばして、アンダーヘアーが丸出しにならないように立った。

「………じゃ………、先にヒトミが私のお尻、見る? ………………こんな感じだと………どうかな、見える?」

 サヤカはヒトミのお願いを叶えてあげるため、しぶしぶ下半身裸になって、ヒトミにお尻を向けると、膝と両手を床について、四つん這いになってみせた。………こんなお願い、何度も聞かされるのはゴメンなので、一回で、ヒトミが充分満足するまで見せてあげるしかないと思ったからだ。

「わぁーーーっ。サヤカちゃんのお尻、綺麗っ。可愛いっ。…………柔らか~いっ」

「こらっ。触るんでないっ。…………もう、先に言ってよ………。ビックリするから」

 サヤカが振り返ってヒトミを見上げる。もうちょっと強い口調で叱っても良かったが、目を垂れ目にして大喜びしているヒトミを見ると、溜息をついて許してしまう。

(もう…………、私がヒトミのお尻チェックする番になったら、もっとイジメちゃうから、おぼえてなさいよ…………。)

 しばらくサヤカのお尻をナデナデしたり、揉んで見せたり、指で突っついたりして、はしゃいでいたヒトミだったが、そのうち、何かの思いが溢れ出したのか、急にお尻をパチーンと叩いてきた。

「イッターイッ。何すんの? ヒトミッ。調子のんなっ」

「ゴ………ゴメンなさいっ。サヤちゃん………。なんか…………、このお尻が柔らかすぎて、ラブリーすぎて、………急に、イーッてなっちゃった………。今日の私、変かも………」

 自分の右手のひらをマジマジと見つめながら、不思議そうに首を傾げるヒトミ。

「いや、さっきから、だいぶん変だよ。急にお尻見たいとか………。ヒトミは優しい子なのに急に叩いてきたりとか………」

「………そうだよね………。本当にゴメンなさい。………もう、やめよっか」

「えぇっ? ………ここでやめるの? …………今度は私の番でしょ? …………叩き逃げは許されないでしょう、さすがに………」

 サヤカが急に焦りを覚えて、四つん這いのまま、首から上だけ振り返ってヒトミを見上げる。

「も………もう何回か叩いても良いから…………、私にも、叩かせてよ。ヒトミのお尻………」

 自分で言っていて、顔から火が出そうなくらい恥ずかしいセリフだと思ったけれど、口から出てしまったのだから、仕方がない。

「…………じゃ…………。失礼します」

 ヒトミの遠慮がちな声ほどには、手は遠慮してくれなかった。パチーンッ、パチーンと、しっかり振りかぶってサヤカのお尻を叩く。お尻の肉がビリビリと痺れたけれど、サヤカは歯を食いしばって耐えた。

「………はい………。次は私だよね? …………ヒトミのお尻を、好きにしていいんだよね? ………ちゃんと四つん這いになって、………もうちょっとお尻を上に上げてみて……………。………はぁっ……………可愛い…………」

 サヤカがヒトミのお尻を服や下着に覆われていない状態でこんなにジックリ見るのは初めてのことだと思う。白くて柔らかそうでプニプニしていて、まるで蕩ける前の生クリームのようだと思った。思わず手に触れて、弾力を楽しんで、気がつくと頬擦りまでしていた。ウットリとした表情で、友達のお尻に顔を押しつけていたサヤカは、ふと視界に、微妙な顔をしてこちらを見ている、もう一人の友達の顔を見つけて、ハッとした。

「ゴホンッ。………これは……あの、ヒトミが変なことしてくるから、どんなに変なことか、し返しして、教えていただけだからね………」

 慌てて顔を離したサヤカは、気まずさを押し返すように、手のひらでヒトミのお尻をべチッと叩いた。そしてその、手応えにまた、感動する。シットリとしていながらモチモチしていて、手が止まらなくなる、気持ち良さ………。気がつくと、サヤカは躍起になってヒトミのお尻を5発も叩いていた。泣き虫のヒトミは床に顔をつけてシクシクとベソをかいている。

(やってしまった………。なんで私が急にこんなこと?)

 サヤカはふと、我に返って、呆然としてしまった。その、やらかした表情のサヤカとお尻丸出しのヒトミを、カナエが悪戯っぽい笑い顔を浮かべながら、携帯で写真に収めた。パシャっと音がすると、サヤカもヒトミも、反射的に裸の下半身を隠そうとする。

「ちょっと、カナエっ。何してんの? やめてよ」

「やだっ。カナちゃんのエッチ!」

 カナエは意地悪な笑顔を見せながら、もう2枚くらい、逃げ惑うサヤカたちの写真を撮った。

「どっちも、アタシのセリフだってば。2人とも一体、さっきから何してんの? ………急にエッチな遊びに目覚めたの? ………超変なんだけど………」

 ベッドから立ち上がったカナエに、サヤカが反論する。

「そう言う、カナエだって、ズボンどうしたの? 下、裸じゃんっ」

「え? …………おわっ…………。なんで私も?」

 親友2人が突然見せた、情けない姿を上から笑っていたカナエが、自分もジーンズとショーツを脱いでいたことに気がついて、飛び上がる。普段は余裕たっぷりのサバケた姐御キャラでいるカナエが、意外なほど赤面して、ベッドに飛び戻ると、内股気味に身を隠した。

「そうじゃん………カナちゃんも、お尻見せあっこ、したかったんでしょ? ………恥ずかしがらずに、参加したいって言えば良いのに…………。ねぇ? サヤちゃん」

 そういうヒトミの言葉に素直にウンとは言えなかったけれど、サヤカはちょっとだけ元気を取り戻していた。さっきはカナエに完全に上からマウントを取られたと思った。そうされて、仕方が無いような状態に、なぜか自分からハマっていたと思った。けれど、恥をかくのが3人一緒だったら、怖いものなどないではないか。

「私は、ヒトミがどうしてもっていうから、お尻見せてあげて、ちょっと叩きあっこというか………ふざけてただけだよ。でも、カナエは一人でなんで脱いでたの? ヒトミが言うみたいに、仲間に入れて欲しかったんじゃないの?」

「私は…………その、………ただ2人に恥かかせるのは可哀想だと思って、………ちょっとその、付き合いで……というか………。うん………」

 それを聞いたヒトミの顔がパァーっと輝く。

「じゃぁ………、サヤちゃん………。カナちゃんのお尻は、2人で見てあげよっか?」

「え? ……いや、そんなつもりじゃ………ワーッ。なんなんだよ、もう」

 カナエがベッドに座ってシーツで下半身を隠そうとしていたのを良いことに、サヤカとヒトミは無言で頷き合うと、同時にカナエを押し倒した。体をひっくり返して、そのキュッと引き締まった、鍛えられたお尻を吟味・鑑賞する。女性の理想を体現するような、贅肉の少ない、カッコいいお尻。それをヒトミとサヤカが、スパンスパンと、かわるがわる叩いた。

「やめろーっ。痛いってばーっ」

 脚をバタバタさせて抵抗しようとしたカナエだったが、ある時点から、観念したのか、一気に大人しくなる。四つん這いになって、ヒトミにペチンペチンお尻を叩かれているうちに、呼吸が激しくなってきた。

「どーだ? ………カナちゃん、まいった?」

 本当に珍しく、ヒトミがカナエに勝ち誇っている。カナエが顔を上げると、息が荒いだけではなくて顔が真っ赤に上気して、目が完全に潤んでいた。

「もう………まいったで良いから………やめてよ………なんか、………変な感じがする………」

 カナエの言葉を聞いて、ヒトミも少しギョッとしたように手を止めた。3人でお互いの体を見合って、今になって恥ずかしくなって俯く………。何といって良いのか、迷っていたサヤカだったが、不意に良いアイディアを思いついて、顔を上げた。

「あの…………さっき、カナエが携帯で写真撮ってたけど…………。ツトムの…………。うちの弟の部屋には、もっとちゃんとした、おっきなデジカメがあるんだけど、………それ使って、撮ってみる? …………その…………どうせならって、思って」

 自分で言いながらも、やはり変な提案かもとも思って、迷いながらサヤカは質問する。それに、ヒトミとカナエは、しばらく沈黙をしていた。やがて、カナエが顔を上げてサヤカと視線を合わせる。

「今、この家、サヤカの弟クンも、サヤパパ・サヤママもいないんだっけ? ………ちょっとだけ、良いカメラで撮ってみる? ………うちら、こんな馬鹿なことで盛り上がったりとかって、滅多にないじゃん? ………その、珍しいことは、記録に残しておいても、後から笑えるかもだし………」

 カナエの提案に、意外なことに一番反応が薄かったのが、ヒトミだった。サヤカの部屋を出るとなると急に恥ずかしがり屋の自分を取り戻したのか、耳まで赤くなってモジモジし始める。そのヒトミのシャイさがうつってしまったのか、サヤカやカナエまで中腰、内股のモジモジとした足取りで、サヤカの部屋から廊下を通って、隣のツトムの部屋へと入った。

「えっと………あ、あった。なんか、本格的っぽい、カメラでしょ? ツトムってオタクなんだよね」

 本棚に飾ってある、ツトムの趣味の陳列。フルアーマーダブルゼータ・ガンダムと自作真空管ラジオの間にあった、ミラーレスカメラを手に取ったサヤカは、難しそうな顔をしながら、大きめのボタンを押すと、電源が入ってファインダーが伸びる。「うぉっ」と小さな声を上げたサヤカだったが、ファインダーと反対側のモニターにカメラ前方の景色が映ると、振り返ってカナエに向けて親指を立てた。カナエもサヤカのことが誇らしいとばかりに、親指を立てて返す。2人とも、腰から下は完全に裸の状態で、小さなポーズを取っていた。

「はい、撮るよー。カシャッ。………さすがに立派なカメラ。画素数も凄いわ」

 撮ったばかりの写真をモニターで確認して、カナエが独り言を言う。本来は高画質=大画素数という単純な図式な訳でも無はずなのだが、女子高校生たちのカメラの知識というのはそれくらいが平均値だった。四つん這いに並んで、2つのお尻を横でくっつけるようにしてカメラに向けていたサヤカとヒトミは、カナエが画質を褒めている写真が見たくて、立ち上がって、カナエの両脇へ行く。

「やっぱり、赤いじゃん………。ヒトミの手の後が、紅葉みたいになってる………。………ったく、どうしてくれるのよ。嫁入り前の体に」

「私だって…………、ママにもお尻ぶたれたこととか、ほとんどないのに………。こんなに。サヤちゃんのせい………」

「ヒトミのお尻は、桃みたいに、ピンク色に腫れてるでしょ? まだ可愛い感じじゃん。ほら、お尻も桃みたいだし。………私の方が、なんか痛々しいよ」

 サヤカとヒトミが、今度は頬を寄せ合って、デジカメのモニターを覗きこむ。2人とも、かわるがわるモニターを触って、自分たちのお尻をかわるがわる拡大して見ている。恥ずかしいとも思っても、はしたないと思っても、どうしてもお尻から興味を離すことが出来ない。やがてカナエも加わって、3人でお尻を並べて写真を撮ってもらっていた(誰に撮ってもらったのかは、思い出せない。きっとカナエがうまくセルフタイマーの機能を探し当てたのだろう。)

 3人は自分でも手がつけられないくらいテンションが上がって爆発してしまって、腰から上しか服を着ていない姿も気にせず、はしゃぎまわって飛び跳ねた。横一列にならんで、最初は右を向いて右隣りの友達のお尻を、太鼓の達人のように乱れ打ちした。次は体の向きを変えて、左隣りの友達のお尻を連打。満面の笑顔で楽しみながらも、サヤカは真ん中に立ったことを少し後悔していた。気がつくと、あとの2人の倍の量、お尻をべチベチ叩かれているではないか。自分のお尻を確認すると、もうおサルのお尻のように赤くなってしまっている。それすらも、楽しかったから、笑いが止められなかった。

「はーぁっ。暑いよ~っ」

 キャーキャーはしゃいでいたヒトミが、不意にニットの上着に手をかけて一気にめくり上げる。やはりヒトミの巨乳には、その瞬間に目がいってしまう。Eカップだそうだ。立派なものだとサヤカは思う。今日もフリルの入った可愛らしい花柄ブラを着けていた。

「え? ヒトミ、上も脱ぐの? ………ヤバくない?」

 サヤカが声をかけている途中で、自分の腕にまとわりついているものに気がつく。初夏らしい、黄緑色のカットソー。よく見ると、自分も脱いでいた。ヒトミの動きに反射的に合わせてしまったのかもしれない。けれど、ここまで来ると、また着直すというのが面倒くさい気もする。

(もう………いっか…………。…………こんだけお尻叩かれてて、恥かしいも変も無いし…………ね……………。……………だよね? …………)

 サヤカが自分で自分に言い聞かせるようにして、何度か頷きながら淡い水色のブラの外す。もう一人の親友の目を気にして、後ろを振り向くと、すでにカナエは全裸で腕組みをして、サヤカに頷き返していた。サヤカも無意識のうちに腕で無防備な胸を覆いながら、両肩をすくめて、首を傾げてみせる。やがて、何か頭の奥で聞こえたような気がして、両手をまっすぐ体の横につけると、「気をつけ」の姿勢をとった。なんだか、同い年の女友達が3人、同じ部屋で裸になっている時に、自分だけ胸を隠そうとしたり、恥かしがる行動をとるというのも、かえって良くないような気がしたのだ。

「せっかくだから、うちら、おバカ女子3人で、記念写真を撮ろ~」

 ヒトミの提案が、とても素晴らしいアイディアに思えてくる。ちょうど、サヤカもそう言って2人を誘おうと、思っていたところだったのだ。一番背の高いカナエが大きなカメラを片手で持って、3人で自撮りをする。最初の内は裸で写真を撮るのが照れくさくて、ピースサインも笑顔も固かったサヤカたちだったが、次第に慣れてくると、モデルのように大胆なポーズを取って、胸を強調したり、赤いお尻を突き出したり、体をセクシーにくねらせたりしてみせた。こんな写真、絶対に自分とここにいる親友2人以外には見せられない………。そんな共有する秘密を持ったことで、3人の結びつきがさらに強まったような気がして、嬉しかったし、馬鹿馬鹿しくも楽しかった。

 楽しくてリラックスした気分は、サヤカだけが持っていたものではなかったらしい。気がつくと、カナエはカメラのモニターに映る、自分たちのあられもない姿を一枚ずつめくりながら、そのスワイプした手で、モゾモゾと、自分の体を触り始める。その様子がとてもナチュラルで気持ち良さそうだな………と思っているうちに、サヤカは自分の両手も自分の胸や首筋のあたりをサワサワと撫でていることに気がついて、また少し赤面する。ヒトミはというと、もうハッキリと、両手で自分の立派なオッパイを、ギュウギュウと揉んでいる。指先で乳首を摘まんで擦ってさえいる。他の2人に見られながら、自分は今、裸で自分の体を触っている………。そう思うと、頭から湯気が出るほど恥ずかしい気持ちになったが、だからといって、止めようとは思えなかった。とにかく今は、最後までイクところまでいかないと、自分の体が許してくれないのではないかと思うくらい、サヤカたちの頭はエッチな衝動で溢れかえっていた。

「………ちょっと………その、…………それぞれで、…………集中したほうがいいと思うから………、お互い、背中向けてしない? …………」

 そういうとカナエはツトムのベッドにうつ伏せに寝そべるようにして、腰の部分をシーツに押しつけながら、なんだか独創的なオナニーを始めた。サヤカも、そんなカナエの姿を凝視しないように、背中を向けてあげながら、左手で自分のオッパイを、右手で自分の股間の大切な場所を優しく刺激し始めた。サヤカにとって、そんなに慣れた行動ではないのだが、これまでにも自分の部屋に一人でしたことは何度かあった行為だ。女友達の前で昼間からすることになるとは、考えもしなかったことだが。

 ヒトミは床の上に両足を大きく開くかたちで座り込んで、両手で股間をイジクる。そして立ち上がっている乳首を、上体をくねらせるようにして、股間を触っている二の腕に触れさせて、その感触を楽しんでいる。上品でオットリとお嬢様が、どうも一番手慣れたようなオナニーに興じていた。

 サヤカはある程度、自分のアソコが湿ってきたのを確かめると、それ以上手で刺激するのを止める。いつも、ここで怖くなってストップをかけてしまうのだ。その後は、ベッドに立てかけてある、正方形のクッション(自分の部屋にも色違いのものがある)を見つけて、そのクッションに跨るように、太腿で挟み込むようにしてアソコとクリトリスのあたりをクッションに擦りつける。自分の部屋でやる時は、1枚、ハンドタオルを自分の肌とクッションの間に挟むのがサヤカ流なのだが、今はタオルを探している余裕がなかった。

「…………んっ……………あんっ……………」

「ふぁあっ…………あああん……………」

「やんっ…………ふぅうっ…………。……」

 最初に声を出したのは誰だっただろうか? その声が堰を切ったように3人全員が、まるで競い合うように声を出して、エッチな刺激を堪能する声を漏らした。一度声を出すと、快感がさらに増したような気がして、もう声を止めることは出来なくなる。自分の声に煽られるように、手や腰の動きも激しくなる。サヤカが興味に勝てなくなって友達たちの様子を伺うと、ヒトミはさらに激しく、イヤらしく両手を動かしていた。左手で股間の割れ目部分を開くようにして、指をグッと奥まで突っ込んでいる。髪の毛を振り乱して、アゴを上げていた。カナエはというと、うつ伏せになったままベッドマットの角の部分に、股間から胸の谷間まで押しつけるようにして、体を上下させて擦りつけている。なんだか動物か昆虫が交尾するような体勢と動きで、とてもエッチだった。

 サヤカはヒトミやカナエの動きに煽り立てられるように、いっそう激しく自分の腰を振って、クッションに強く股間を擦りつける。その激しさに負けないように、ヒトミやカナエもヒートアップさせてくるから、部屋の中には3人の喘ぎ声とクチュクチュとなるヤラシイ音がどんどん大きく響きあう。

「んんーーーーーーーんッ、もうっ……………もうっ………」

 サヤカは激しく腰を振りながら、両手で自分のオッパイを掴んで、乳首をギュッとつねる。これまで経験したことのない、激しい一人エッチだった。最初は、「普段一人きりの時にするように」自分の好きなオナニーを自分のペースでリアルに再現していたのだけれど、途中から、他の2人に煽られたせいか、それとも何か他のものに突き動かされたのか、普段の自分よりもずっと激しく、はしたない、まるで動物のようなオナニーを繰り広げてしまっていた。自分が自分でなくなったように体を弄りまわし、イジメて、エッチな快感を貪る。そんな自分を止められず、没頭しているうちに、搾り出された快感が体中を巡って熱くなる。頭が蕩けるように酔わされる。サヤカたちの喘ぎ声は、悲鳴のように高くなっていた。そして、もうすぐ体が弾けるくらいの、エクスタシーがやってくる予感がある。少し怖いけれど、サヤカはここで抑えることなど出来ないとわかっていた。

「あああああっ…………やあああああんっ……………………ふぁあああああぁぁぁぁぁ」

 頭が弾けたように真っ白になるのと同時に、全身がビクビクっと痙攣する。快楽を愉悦を、限界まで搾り出すような力みの後で、体中の関節が解けていくような弛緩があった。サヤカは人生でこんな激しくて甘美な絶頂を味わったことがなかった。裸の胸を揺らしながら深く呼吸をして、バラバラになってしまったような体の感覚を集める。まだ頭が寝起きのような鈍痛に近い気持ち良さに漂っていた。

「お姉ちゃんたち、何してんの?」

 ツトムの声を間近で聞いて、まだ快感の余韻に浸っていたサヤカが、冷水をかけられたかのように正気を取り戻す。友達と一緒に、遊びに出かけていたはずの弟。そのツトムが、よく見るお友達2人と一緒に、なぜか部屋にいた。ツトムはよりによって、さっきまでサヤカたちが悪ふざけに使っていたはずの大きなカメラを持っている。ツトムの隣にいる友達、眞知田シュント君という子は、首掛にかける紐付きの台に載せた、分厚いレコードプレーヤーくらいの大きさの機械を触っている。そしてシュント君の隣にいる、小太りの中学生男子(たしかミツル君と言ったはずだ)は、手ぶらのように見えたが、よく見ると別のモノを握っていたのでサヤカはすぐに目を逸らした。

「やだっ……………なんでアンタたちっ…………」

「いやーっ。入ってきちゃ駄目っ」

 カナエがベッドのシーツに包まれるように転がり込んで体を隠す。ヒトミはその場にうずくまるようにして体を小さくするけれど、胸は両手でも隠しきれていない。サヤカは反射的にツトムを押しのけて、足の間に挟まれていたクッションで体を隠そうとした。ほとんど隠しきれていなかったけれど、それすら持たずに、完全な全裸で弟たちの前に立つ勇気はなかった。

「入ってきちゃ駄目って言われても、………ここ、僕の部屋だし………」

「さっきから、お姉さんたちに、声をかけてたんだけど、全然反応してくれなかったんだよ。すっごい集中してたから」

「ま、具合悪そうだったら、止めようと思ったんだけどね、でも、なかなかお楽しみのようだったから」

 最後の、ミツル君という子のコメントが特に気持ち悪かったのだけれど、サヤカは完全に逃げ場がないことに気がついた。シュント君の視線が、サヤカの持っているクッションに集中していることに気がついて見下ろす。クッションの、特に角のあたりが黒い染みになるほどぐっしょり濡れていることに気がついて、サヤカの顔がさらに赤くなる。クッションを隠したら自分の裸が丸出しになってしまうので、仕方なくクッションの角度を変えて、染みを隠そうとした。

「うわ~ぁぁ…………。これ、お姉ちゃんたち、相当、はっちゃけちゃってねぇ。………お酒でも飲んでたの? ………ちょっと正気と思えないんだけど………」

 ツトムの恩情でバスタオルを3枚もらって、なんとか体を隠させてもらった高校生3人は、3歳も年下の男の子たちの前で、横一列に正座させられていた。ツトムとシュント、ミツルがカメラに残されたサヤカたちの醜態を、モニターで確認しながら、しかめっ面を作る。サヤカは弟のお説教を受けながら、消え入りたいほどの気持ちで小さくなっていた。本当に、こっそりお酒を飲んだ上での痴態だったら、どんなに言い訳が楽だっただろうと、現実逃避しそうな気持だった。でも現実は違う。サヤカとカナエとヒトミは、サヤカの部屋でマッタリしていたはずが、急にお尻を出して見せあっこしたくなり、お互いにふざけてお尻を叩いているうちに、ツトムのカメラで撮りたくなって勝手に部屋に忍びこみ、勢い余って裸になってオナニーを始めてしまったのだ。そして派手にイッたところを思春期の弟たちに見られてしまった。なぜこんなことになったのか、今となってはサヤカは何一つ自分でまともに説明が出来ないのだが、ことの一部始終がカメラに収められているようで、何一つ言い逃れや誤魔化しが出来ない。

「ほんっっっっっとうにゴメン。………私たちも、何がなんだか、わからないの。………気がついたら、こうなってて………。自分で自分が止められなくて…………。お願い、お姉ちゃんたちを許して。………何も見なかったことにして、忘れてっ」

 サヤカは両手を合わせて拝むようにしてツトムたちにお願いする。シュントの視線が前傾姿勢になったサヤカの胸元、バスタオルからはみ出た、胸の谷間あたりを彷徨うのがわかるが、それを拒絶出来るような立場にもいなかった。なんとかして、拝み倒してツトムたちに秘密にしてもらうしかないと、わかっていた。今日のことがパパやママにバレたら、どんなに叱られるか、わかったものではない。ましてや、おうちが厳しいヒトミのパパママの耳に入ったりしたら、しばらく3人で遊ぶことも禁止されてしまうかもしれない。

「何でもしますっ。言うこと聞くから、このことは内緒にしてっ」

 ヒトミの声により切迫感が感じられるのも、仕方がないことだった。

「アイス買ってあげるから、今回だけ、大目に見てよ。この通り。………来週もアイス買ってあげても良いんだよっ」

 カナエには弟がいないし、年下の従兄弟もずいぶん年が離れているみたいで、中学生男子が喜ぶことの想像力がかなり乏しいようだった。アイス2つずつでは、中2の男の子たちは釣られないだろう………。

「僕の部屋でこんなことしておいて、簡単な罰では許されないでしょ? 普通。…………他の人に一切今日のことを話されたくないっていうなら、僕たちが充分納得するような、ペナルティーをちゃんと受け入れてよ」

 普段は優しくて、どちらかというと気の弱い弟なのに、今のツトムの言葉は結構、厳しく、冷徹に響く。サヤカを見下ろすツトムの目を見ていると、もしかしたらウブな弟は、はしたなく乱れたお姉ちゃんを見て、かなり幻滅してしまったのかもしれない。そう思うと、サヤカは情けない気持ちで俯くしかなかった。

「じゃぁ、…………こういうの、シュントはどう思う?」

 後ろに立っていた天然パーマで小太りのミツルが、大きめの機械に触っているシュントに話しかける。

「お尻をペチペチ叩き合ったり、裸ではっちゃけちゃったりする、エッチ姉ちゃんたちには、反省を促すためにも、きちんと俺たち男子をカメラマンに据えて、ヌード写真を撮らせるっていうこと。これなら、俺たちの…………主に俺のメリットにも多少はなるし、姉ちゃんたちも、どうせカメラに裸写真が残されてるんだから、受け入れられないほどの新しいデメリットはないでしょ?」

「はぁ? ……………それは、絶対駄目。…………だいたい、アンタたちはまだ中学生でしょっ。それはお姉ちゃんたちが友達同士でふざけて撮り合ってたのとは、全然違います。絶対に無理っ」

 サヤカが我に返ったように毅然と断った。こういうところはキッパリとはねのけておかなければ、中学生男子たちはどこまでも調子に乗ってしまうかもしれない。ましてやツトムたちはまだ13歳、14歳というところだ。ここでおかしな体験をさせてしまったら、彼らの将来にも良くない影響が………。

 ビィィィィィーーーーーーーーィッ

 大きなブザー音のようなものが、サヤカの頭の中に鳴り響いて、彼女の怒りも焦りも、困った感情も押し流してしまう。両手で頭を抱えたくなるような大きな音だったのだが、手を耳元まで持っていくことも出来ず、サヤカの思考はそこで停止してしまった。

 パチン。

 誰かがボタンを弾いたような音が聞こえて、サヤカは我に返る。見ると、男の子たちの立っていた場所が、僅かに瞬間移動したような気もするが、まだ事態が飲み込めず、瞬きしながら左右を見回す。

「それで………お姉ちゃんの話の続きは何だったっけ?」

 ツトムの言葉で、サヤカはまだ、自分が話の途中だったことを思い出す。

「…………そ………そう。………うん…………。ヌード写真のこと。…………どうやって撮っていくつもり? ………この立派なカメラは1つでしょ? 撮られる私たちは3人いるし、カメラマンの貴方たちも3人でしょ? ………ペアになって別れるとしても、1個のカメラをどうやってみんなで使うの?」

「そうだよ。撮られる側にも、準備ってものがあるし………。どうせなら、いい加減な写真は残したくないし」

 カナエが言う。サヤカも、もっともなことだと頷いた。いくら6人の秘密に留めて置くためのプライベートヌード写真だとしても、撮られる側の女性には、それなりの準備もいるのだ。

「あの………私、カメラマンさんと全然スキンシップが取れていない状態だと、………あんまり素の自分を曝け出せないと思います………。せめて、私の肌質とか体質とか、きちんと手触りとか匂い、味まで理解してもらった上で、撮影に臨んでもらいたいです………。どうせなら、カメラマンさんが、セクシーだって思うポイントとか、ツボとかも、わかりあえてた方が、お写真にも良い効果があると思うし………」

 最後に恐る恐る手を挙げたヒトミが、一番大胆な提案をしたような気がするけれど、サヤカも同意するしかなかった。仲が良くて一緒にいる時間が長いからか、こんな状況でもサヤカとカナエとヒトミは全く同じようなことを考えていた。

「ふーん。………じゃぁ、ペア作って別れて、それぞれ準備とか、試し撮りとかやっておこうか? それで順番決めて、このミラーレス一眼を順番に回して、本番を撮ればいいじゃん」

 シュントがスルっと、答えを出す。その答えのよどみなさが、余りにもスムーズだったので、まるで彼が準備していた答えのような気もしたが、まさにそれこそがサヤカの考えていたことだったので、頷くしかなかった。

。。

 シュントは、物事があまりにもうまくいきすぎていて、どこかでドンデン返しがあるんじゃないかと心配になるほどだった。ツトムに手ほどきしてもらいながら、『双シン壱号』の使い方を1つずつ、実践しながら覚えていくのだ。

 そもそも、昨日はなかなか眠れなくて、画板と紐を引っ張り出して、台を作り始めたほどだ。昨日の昼に見た、そしてドキドキしながら触れた、サヤカさんの裸が忘れられなかった。布団の中で何回も思い出して、体を熱くした。それは細部までハッキリとした記憶だったけれど、もし写真を残して持ち帰ることが出来たら、どんなに自宅でもゆっくりと楽しめただろうかと、悔しい気分にもなった。だから今日は必ず、デジタルデータを持ち帰る。そう決めて、父親のUSBメモリースティックまで持ってきたのだった。

 始めのうち、シュントは双シン壱号の電波調整のツマミのなかで、強度の調整に苦労した。「表示計の抵抗がレッドゾーンの右端に振れると相手が指令を拒絶出来るレベルになるから、電波の強度を上げる。但し電波の強度が大きすぎると、抵抗は上がらないけれど、対象の精神力も体力も奪っていくから、注意が必要」と言われた。この、強度と抵抗の絶妙な調整というのが、慣れないうちは苦労させられるのだ。そもそも、ハンドマイクを使って、何か指令を出すこと自体に緊張する。指令を出したら出したで、今度は相手の反応を伺いたい。それなのに表示計やツマミと睨めっこしなければならのには、始めのうちはイライラさせられた。

「慣れれば、視線を相手に向けたままで、絶妙な調整が出来るようになるよ。極端な操作をしてる時以外は、表示計は時々チェックする程度でいいし。………そもそもこの針が示しているのは、範囲内の操作対象の抵抗度の平均だからね。現物の相手には、色々個人差が出ているはずなんだ」

 ツトムの説明を聞いて、頑張って辛抱する。サヤカさんたちに自分たちが覗きこんでいるところを認識出来なくさせて、リラックスしている彼女たちの様子をじっくりと観察させてもらう。「お尻を見せあいっこする」とか、「お尻を叩き合いたくなる。叩き合いの邪魔をしない」とか、「ツトムの部屋で写真を撮りたくなる」とか、指示を入れていくうちに、少しずつ、強度の調整というものがわかってくる。対象が全員、同じ反応を示すように調整しようとすると、指令の強度を高めに保たなければいけないが、反応にある程度の個人差を許容して、3人の対象者なら3人が集団として指令に従うように仕向けようとすれば、強度を上げすぎる必要はないようだ。

「服を全部脱いで、普段、一人の時にするようなオナニーをここでする」、「イクまで止めない」という指令にはさすがに抵抗が上がった。それでも、慌てず、抵抗値の上昇に合せるように強度を目盛り3つ分くらい上げてやると、綺麗なお姉さんたちはツトムの部屋で裸になった。昨日に続いて、シュントは年上の女性の裸を、心ゆくまで観察することが出来た。しかも、今回は人形のように動かなくなった裸ではない。目の前で動き、色づき、汗をかき、激しく動いたり、乱れたりする、生き生きとしたお姉さんたちの裸だった。

「僕たちにヌード写真を撮らせてくれ」と頼んでみた時には、ハンドマイクを通じた指令に対してではなかったけれど、抵抗値を示す針が右端のレッドゾーンまで一気に振れた。それを見たシュントは、とっさにブザーを作動させたのだった。

 ブラックアウトしたサヤカさんたちに次の行動を伝えて正気に戻すと、さも自分で考えたことだという表情で、シュントのシナリオ通りに提案して、決意を固めてくれるサヤカさんたち。あまりにも物事がスムーズに運ぶので、シュントが逆に不安になるほどだった。

 ツトムとヒトミさん、そしてミツルとカナエさんとが組むことになった。シュントは、憧れのサヤカお姉さんとペアを組む。バスタオル一枚を体に巻いた、彼よりも背の高い、綺麗なお姉さんは、「撮影の準備に入る」と自分で言う。ミラーレス一眼のデジカメはツトムとヒトミさんが持って、ツトムの部屋に残った。ミツルは1階のリビングかダイニングで試し撮りを自分の携帯でするのだそうだ。シュントにとっては、他の人たちの動きはあまり頭に入ってこない。何しろ、曲がりなりにも『正気を保っている』サヤカさんが、タオル一枚体に巻いただけの姿でシュントを自分の部屋へ招き入れてくれたからだ。昨日から、何度か勝手にドアを開けたり入らせてもらった、高2のお姉さんの部屋だったが、招待してもらって部屋で2人きりになると、その特別感で改めて緊張してしまった。

「シュント君は………その………、ちょっとの間、むこう向いて、雑誌でも読んでてくれないかな? ………写真に撮られたら、困るところとかあるかもしれないから、自分で、チェックくらいさせて欲しいの」

 サヤカさんは恥ずかしそうに、というか居心地悪そうに話した。こうして彼女の反応を見ていると、不思議な感慨を覚える。葛城サヤカさんには、今もレディーの嗜みというかマナーというか、羞恥心がしっかり残っている。けれど自分がこの、ただの弟の友達である中学生男子にヌード写真を撮らせるのだ、ということについては、既に受け入れているとうに見える。恥かしくはあるけれど、仕方がないこととして、心の整理はつけているような様子なのだ。シュントが『双シン壱号』でサヤカさんを操縦して、指令を与えていなければ、彼女は絶対にこんな行動をとっていない。けれど、そのなかにも、どこか彼女らしい反応とか判断というのは残っている。その混ざり合ったり混ざらずに残っている心の模様が、シュントをさらにドキドキとさせた。まるでシュントの言葉が葛城サヤカさんという美人女子高生の頭の中に混ざりこんで、彼女を別の色に染めていくようではないか。

 シュントがファッション雑誌や洋画の雑誌など、あまり興味のない本をペラペラと捲っている間、サヤカさんは姿見の前に立ち、バスタオルを下ろす。手鏡とハサミやウェットティッシュ、その他、こまごまとした化粧道具やスプレーをつかって、10分くらいゴソゴソとと身だしなみを整えていた。そんな彼女の後姿を、雑誌で顔を隠すようにしてチラチラと覗き見しているだけでも、幸せな時間ではあった。時々、姿見に映った彼女と目線が合ってしまう。シュントはそのたびに慌てて目線を逸らすのだが、サヤカさんも一瞬だけ腕で胸を隠そうとしたり、内股になって股間を腿で隠そうとするような動きを見せるのだが、やがておずおずと元の姿勢に戻って、お手入れを続ける。

(「ヌード写真を撮らせる」っていう指令は拒否できないから受け入れて、今はそのために、男の目線に慣れようと思って我慢してるんだ)

 シュントはサヤカさんの行動が理解できると、グッと気持ちが盛り上がると同時に、この3歳年上の、友達のお姉さんのことを、可愛らしいと感じてしまった。

「あ………あの………、そろそろ、試し撮りだけでも始めよっか? ………途中で気に入らないショットとか部分とかあったら、それを確かめながら直せば良いし」

「そ…………そだね………。そうしないと、………いつまでも終わんないしね………。シュント君は大丈夫? 緊張してない?」

 振り返って口にしたサヤカさんの言葉には、震えが入っていた。それでもあえて年下の、弟の友達を前にして、余裕っぽい態度を作って見せている。そんなサヤカさんを、少し可愛いと思ってしまった。

 息をグッと飲み込むようにして、思い切ってバスタオルを体から床に落とすサヤカさん。昨日一度見せてもらった綺麗な裸。けれど昨日見たサヤカさんの裸は、均整の取れたプロポーションのせいもあって、マネキンかフィギュアが柔らかくなったもののようにも思えた。今日、シュントが見つめているのは、生気があって、恥かしいという感情や、少し肌寒いような反応も見せる、生き生きとした肌。これこそ本当の、お姉さんの体という感じがして、しっくりきた。シュントが携帯のカメラを構えてみる。まだ何度か首を傾げながら、恥かしそうなお姉さんが、モジモジと、ポーズを取る。股間のアンダーヘアーを隠すように両手を重ねて、右足を左足の前にクロスさせる。腕で乳首を隠せているか確認しながら、カメラのファインダーを覗きこんで、少しだけギコチない笑顔を見せる。

「仕方なく」というのが丸わかりの、固いポーズだったが、その初々しさも、なんだかシュントの心を刺激した。困りながらも迷いながらも、葛城サヤカさんは、シュントの視線を意識しながら、裸を見られること、記録に残されることを許して、それに協力している。本当はそんなことしたくないはずなのに、そうしなければならないと思って、頑張ってヌード写真の被写体を演じている。その葛藤がハッキリと見えるぶん、これがシュントの考えたシナリオのせいだということを、より強く意識させられた。

 ターンして背中を見せながら、こちらを振り向くサヤカさん。床に寝そべるようにして体をおずおずとくねらせて、体の曲線を強調してくれるサヤカさん。恥ずかしさに目を閉じながら、両手でオッパイを寄せて上げるようにして、谷間を強調するサヤカさん。それはわりとソフトな、青年漫画誌に載るようなグラビアのポーズをなぞるような、彼女なりの頑張りだった。

「これ………。試し撮りの結果だけど、どうかな?」

 緊張と気疲れとで、呆けたような表情で休憩しているサヤカさんに、シュントは携帯の写真を見せた。最初は「うっ」という声を出して、見たくないものを突き出されたように顔を背けたサヤカさんだったけれど、次第に怖いもの見たさのような真剣な表情で、写真を自分の指でスクロールしたり、拡大したりして、確かめていく。

『弟の友達たちが満足いくような、エッチで大胆なヌード写真を完成させないと、罰を受けたことにならないからね』と、さっきブラックアウトした彼女たちに指令を与えた。その指令に対しての反応の仕方は、人によって個人差があるはずだと、ツトムは言っていた。そして今、サヤカお姉さんは、バスタオルを脇で挟んで自分の体を隠そうとしながらも、少しふくれっ面になって、自分のヌード写真と向き合っている。そこには『エッチで大胆なヌード写真』にまでは達していないと、自分で判断して、納得がいっていない自分がいるようだ。そうなると、次の指令が効果をあらわすはずだった………。

「あの………、シュント君…………。これあの、君のカメラマンとしての腕が悪いとかって言うんじゃないんだけど………、その………。これじゃ、ちゃんと私、ペナルティを果たしたことにならないと思うな…………。その………、ちょっと、セクシーさというか、タブー感が足りたいっていうか………。………私、色気が足りないのかな?」

 自分で、申し訳なさそうに話すサヤカさん。シュントも、自分で仕組んだシナリオだということを一瞬忘れて、思わずフォローに入っていた。

「いや、やっぱり、僕の技術の問題だと思うよ。僕も緊張したし、その、ちょっとサヤカお姉ちゃんに悪いなって思ってもいたから、ちょっと、生ヌルい撮り方になってたのかな?」

 ほんの少し、誘い水を送る………。しばらく黙って考えながら、チラチラとシュントのことを見ていたサヤカさんは、自分を説得するように一度頷くと、やっと口を開いてくれた。

「あの………、この写真からは、私の肌感とか、私の内面とか、自分も知らないような剥き出しの私みたいなものが伝わってこないから、ヌード写真として、ヌルいんだと思う。………カメラマンのシュント君に、もっと私のことわかってもらわないと、技術もない私たちが『エッチで大胆なヌード写真』を撮ることなんて、出来ないんじゃないかな?」

 シュントが伝えた通りの言葉を、サヤカさんは葛藤の末に辿り着いた、自分だけの答えとして、シュントに伝えてくれる。そのやりとりが、まどろっこしいようでも、楽しかった。

「………それって………、どういう意味?」

「………ん………と…………。シュント君は、クラスの女の子とかに、ちょっと勘が鈍いかもって、言われたりしない? ………あ………あの、…………こういう意味だよ…………」

 シュントと向き合ったサヤカさんが、小さな溜息をついたあとで、バスタオルをまた床に落とす。裸の美人なお姉さんはシュントの右手を手首から掴むと、自分の胸へと持っていって、そっと触らせた。

「私べつに、自分の体にそんなに自信があるわけじゃないんだけど、………その……、ちょっとは自信があるところも、……ほんとは絶対に見せたくないところも………。全部一度、シュント君には見てもらって、納得いくまで触ったり、甘噛みしたり、色々と弄ってもらうしか、ないんだと思うの。ほら、これ、罰なわけだし………。ね?」

 右手の感触に全身の神経をもっていかれたかのように、集中してサヤカさんのオッパイを、サヤカさん公認で揉ませてもらっているシュント。その手を挟み込むように、サヤカさんが体を寄せて、シュントに抱きつく。胸を揉ませながらそのまま顔を近づけて、シュントにキスをした。シュントが舌を入れようとすると、唇を開いてそれを受け入れたサヤカさんは、自分の口の中へシュントの粘膜を受け入れて、自分からも舌を絡めた。空いているシュントの左手を、手に取って自分のお尻へと導く。胸とお尻を触らせながら、全裸の体を密着させて抱き合いながら大人のキスをするサヤカさん。シュントはその柔らかくて温かい感触と甘い匂いに翻弄されながらも、キスとタッチに夢中でがっついた。

「……ん…………………。んん…………」

 シュントが左手をお尻から、腰骨を撫でるようにして両足の間に回り込ませ、滑り込ませようとすると、一瞬、太腿に力を入れてそれを拒もうとするような素振りをしたサヤカさん。また小さくため息を鼻から漏らすようにして、体の力をフッと抜いた。左手でオドオドと、シュントがお姉さんの股の割れ目を探り当てると、そこは温かく、湿っているというか、濡れてきていた。このことを悟られるのが嫌で、一瞬だけサヤカさんは拒もうとしたのだろうか。けれどその割れ目に沿って指をなぞらせて、クリトリス付近を撫でさすっているうちに、彼女の大切な部分は自分の粘膜が擦り合わさるだけでクチュクチュと音を立て始めた。

「ちゃんと、2人で深くわかり合えないと、良い作品にならないと思うから、サヤカさん、正直に教えてね。今、気持ちいいの?」

 キスを中断したシュントが、ベテランのエロ写真家のような言い訳をしながら、サヤカさんに効くと、顔を赤くした彼女が、目を閉じてコクリと頷いた。

「自分でして、気持ち良くなったりもする?」

「…………すごく………時々………、だけ………」

 サヤカさんはシュントよりも年上なのに、お母さんに悪戯を見つけられた女の子のように、しおらしい、ションボリとした表情で俯いた。

「いつも、自分でする時みたいに、してみてよ」

 シュントが言うと、途端にサヤカさんが両眼をパチっと開いて、周りをキョロキョロと見まわす。操縦機の効果が切れたのかと、シュントは一瞬、心臓が飛び出るような思いをした。

「………クッション…………使う…………」

 サヤカさんの普段のオナニーは、ほんとうにクッションが大事なパートナーのようだ。シュントはさっきの彼女の様子を思い出して、やっと彼女の心の動きを理解出来た。安心の息を長くはきすぎて、酸欠になりそうな気がした。ホッとしすぎてめまいがするというやつだ。

「クッションは、今はいいよ………。えっと………、僕の膝をクッション代わりにしてみて」

 サヤカさんは素直にコクリと頷いた。そういえば、『ヌードモデルはカメラマンの演出指示に素直に従おう』とも言ったような気がする。自分が出した指令を一字一句覚えている訳ではないが、今後はもっと冷静に、出した指示は覚えておかなければいけないなと、自分に言い聞かせた。シュントがサヤカさんのベッドに深く腰を下ろして、ベッドの縁にかかとをつけるように膝を建てると、その膝を左右から太腿で挟み込むようにしてサヤカさんの内腿が密着する。膝小僧に温かい粘液と、筆のように濡れている彼女のアンダーヘアーとが押しつけられた。彼女が腰を前後させると、膝小僧がくすぐられるように擦られる。彼女が鼻にかかった息を漏らす。下から見ていると、とても良い光景だった。小刻みに腰を前後させる彼女。その腰の動きに少し遅れて揺れる丸いオッパイ。頬に掌底を押しつけるようにしている右手に時々、力が入る。左手は右側の腰骨を掴んでいる。まるで考え事をするようなポーズで、腰をモゾモゾさせているサヤカさん。その表情は、何か、思い出そうとしているような、体の奥深くの痒い部分を見つけ出そうとしているような、眉をひそめて瞼をほとんど閉じた状態で、時々「んっ」っと声を出してアゴをあげる。これが、サヤカさんの、本当だったら誰にも見せない、素のオナニー。一人だけのプライベートで秘密の遊び。そう思うと、今、携帯で写真を撮っておくのが良いような気がした。

 カシャッ。

 携帯がシャッター音を出すと、サヤカさんの両肩がすくむ。腰の動きが止まって、瞼をよりつよく瞑る。サヤカさんの恥ずかしい完全プライベートショットが撮れなくなることに焦って、シュントが思わず彼女のオッパイを右手でムギュっと掴んでしまった。

「止めちゃ駄目っ。カメラを意識しないで、オナニーに集中してっ」

「キャッ……………は…………はいっ」

 シュントの膝を挟み込むように膝立ちになっているサヤカさんが、背筋を伸ばして、反射的にシュントに従順な返事を返した。その後はまた、ひそやかな彼女の一人Hが再開される。シュントの膝小僧に擦りつけられる、ヌルヌルした彼女の粘膜。少しずつ早くなる、鼻にかかった息。そしてあるところで、彼女が身を縮めるようにして、ブルブルっと体を震わせた。どうやら終わったようだ。シュントが想像していたような、甲高い喘ぎ声も、白目をむくような昇天も、泡を吹くような絶頂もない。何となく実務的な、それでいてリアリティに満ち溢れた、サヤカさんの秘密の一人遊びの一部始終を、シュントは携帯のカメラに収めた。

。。

「…………これで、全部………なんだよね?」

 携帯のスクリーンを指で捲りながら、サヤカさんが聞く。今はまた、バスタオルを体に巻いている。タオルに隠れたり、放りだしたり、色々と忙しい。シュントは無表情で頷いた。サヤカさんの裸でのオナニー姿を、そのまま撮影しただけなのだが、それをサヤカさんに確認されている時には、まるでカメラマンとしての自分の腕を値踏みされているようで、妙に緊張する。

「そうだけど…………。…………変?」

 シュントが聞く。サヤカさんはバスタオル一枚を体に巻いた、無防備な姿で、シュントの携帯を日に透かし見るかのように上に掲げて見上げたりしながら確かめる。こちらを見ずに、声だけで答えた。

「いや………変じゃないよ………。さっきの試し撮りより、ずっと、こっちの方が良いと思う。……………うん…………」

 シュントがホッとする。これではまるで、こちらが評価されているようだが………。

「あのさ…………。シュント君…………」

 サヤカさんが、シュントの方に顔を向けないまま、話しかける。

「うん………何?」

「あの…………ここまで、撮れるんだったら……………。いっそ…………私たち…………。エッチする? ……………その方が、いいのかも…………」

「……………………………」

 シュントは何も返せずに、黙りこくる。

「いや…………そこは…………、止まらないでよ…………。私が恥ずかしいじゃん………」

 サヤカさんの顔がやっと、シュントの方を向く。恥ずかしそうに笑っていた。

「シュント君って、こういうの、初めて? ……………実は………私もなんだよね………」

 サヤカさんはそう言った後、ベッドの縁に座っているシュントの横まで来て、並ぶように座って、また顔を近づけてきた。その後は、特に何も言わずに、サヤカさんが顔を寄せて瞼をそっと閉じる。唇をシュントに重ねる。その動作とほとんど一緒に、またバスタオルの結び目を解くようにして裸になった。シュントも会話を諦めて、サヤカさんとの今日2度目のキスに集中する。この一連の流れはほとんどがシュントが3人に伝えたシナリオ通りだったけれど、実際にそのシチュエーションが現実化すると、意外とシュントはサヤカさんのリードに流される一方だったように思う。

 自分がまだヴァージンなんだとシュントに伝えたあとのサヤカさんは、さっきまでよりも少し気分が解れているように見えた。表情が柔らかくなって、シュントの愛撫に笑顔を見せたり、心地よさそうな鼻息を漏らす。自分たちのギコチないペッティングをクスクス笑ったり、急に恥ずかしさが蘇ったように、ベッドの上をゴロゴロと寝転がったりもした。2人で、手探りとおぼつかない知識でお互いの性器を撫でて、キスをしたりして、何度も上手く入らなかったり苦労しながらも、やがて無事に、インサートをすることが出来た。シュントのペニスが先まで入ったところで、粘膜の抵抗を感じる。これがサヤカさんが初めてだということのシルシとわかったシュントは、綺麗なお姉さんと目を合わせる。

「…………ん………うん………………。……お願い………」

 緊張気味の声を出したサヤカさん。両手を繋ぎあった状態で、彼女の体に馬乗りになったシュントがグッと腰に力を入れる。

「……あぁっ……………痛いぃぃ…………。……優しく………して………」

 今聞いた言葉を、もう一度シュントの頭の中で繰り返す。「優しく」よりも、「して」の方に力がこもっていたと、自分の中で確認して体重を乗せるように腰を入れて、一気にサヤカさんの抵抗を押し裂いた。サヤカさんが、歯を食いしばって痛みに耐える。頬をベッドにつけるように横を向いて、我慢している。その表情が、特別なものだということに気がついたシュントは、慌てて手を伸ばして、自分の携帯を持ち上げた。

「サヤカお姉ちゃん。こっち向いて。今の表情、こっちにちょうだいっ」

「………は……、はいっ」

 シュントが有無も言わせずに、携帯カメラの撮影ボタンを押していく。最初は顔を背けるようにして嫌がったサヤカさんだったけれど、シュントが本気だとわかると、思ったより素直に従順に、彼の言葉に従っていく。潤んだ目に涙を溜めて、痛みと恥ずかしさに耐えながら、カメラに収まっていく彼女の表情は、生々しくて、やらしかった。少し表情が落ち着いてくると、シュントがもっと腰を振って、まだ痛いはずの彼女のナカでペニスを前後させる。背筋を弓なりにして、形のいいオッパイを突き出すようにして悶えるサヤカさん。シュントはもっと何枚も写真を撮りながら彼女と繋がっていたかったけれど、自分の想定していたよりも早く、射精の時は来た。出る………と思った時には、もう出してしまっていた。シュントの初体験は、上手くインサートすることと、写真を撮ることに気を取られているうちに、あっという間に完結してしまっていた。

「…………痛かった? …………ゴメンね………」

 シュントがサヤカさんの横に寝そべって、2人で寝ながら抱き合う体勢になる。サヤカさんが頬っぺたまで伝っていた涙を腕で拭いながら、顔を左右に振ってシュントの体をギュッと抱きしめた。シュントの頭に自分の顔を埋めるかたちになった。憧れのサヤカお姉さんが今、首を振ったのは、「痛かったか」という質問に対してだったのか、シュントが謝ったことに対してだったのかは、わからなかったけれど、確認するのも変な感じがしたので、腕に力を入れて、彼女の柔らかい体を抱きしめ返した。挿入から射精までの初体験は、「試し撮り」のこともあって、気疲れが多かったけれど、こうやって裸で抱き合いながら寝ていると、2人でエッチをしたのだという実感がジワジワと沸いてきて、嬉しかった。

「ツトムのカメラ………空いたら、……写真、撮りなおす?」

 シュントがニマニマしながら初エッチの余韻に浸っている間に、サヤカさんが生真面目に聞いてくる。『罰だから、弟の友達たちが満足いくような、エッチで大胆なヌード写真を完成させないといけない』ということが、サヤカさんにとってすごく大事な任務として刻みこまれているのだということが、彼女の大マジな表情からも伝わってきた。

「いや、携帯の写真で充分だと思うよ。……………ほら…………、これ見てよ。………すっごいエッチじゃない?」

 シュントが2人、仰向けに並んで寝ている真ん中に、左手で携帯を掲げて、右手の指でスクロールして見せる。シュントの膝を内股に挟み込んで、オナニーに励むサヤカさんの真剣な表情や、ロストバージンの痛みで顔をクシャクシャにしながら、ほんのり上気したような表情のアップが、次々と捲られていく。形の良いオッパイが上下左右に揺れているブレた写真や、アンダーヘアーから覗く赤い粘膜など、不謹慎な写真が次々と現れる。

「やだ…………やらしぃ……………。………………わたし………………やらしぃ…………なぁ…………。もうやだ………」

 いまさらながら、サヤカお姉ちゃんが恥ずかしがって顔をシーツに突っ伏する。スベスベの肌を撫でたあとで、チョッカイをかけるように脇腹を摘まむ。くすぐったかったのか、お腹の肉を摘ままれるのが恥ずかしいのか、「ふぎゃっ」とサヤカさんが声を出した。

 シュントの憧れのお姉さん、美人で大人っぽい葛城サヤカさんのイメージは、今日でかなり変わった。そしてシュントは彼女のことをもっと好きになったと、実感した。

 ティッシュをたくさん使って、サヤカさんとシュントの体を綺麗にする。シュントのモノは何回か拭いたら綺麗になったと思えたが、サヤカさんのアソコからはしばらくの間、ティッシュに血が滲んだ。サヤカさんは最後、諦めたかのようにティッシュごとショーツを穿く。服を着て髪の毛を整えている間、彼女もシュントも無言だった。こういう時にも気の利いたことが言えたらいいのに、と思ったものの、ここで無理に余裕を見せようとしても無駄だということは、これまでの流れで大体想像出来た。

 ツトムの部屋に戻ると、ヒトミさんとツトムが、服を着ている途中だった。ツトムのベッドの真ん中に赤いシミが出来ていたので、シュントたちと大体同じようなことが起きていたのだと、想像出来た。部屋に入ったサヤカさんはヒトミさんをギュッと抱きしめる。そこで緊張の糸が切れたようにポロポロ泣き出したヒトミさんの頭をサヤカさんが優しく何度も撫でていた。

「お疲れー、お疲れー。やぁやぁ、みんなお疲れさん」

 意気揚々と帰ってきたのは、小太りで天然パーマのミツル。後ろに、ムクレた顔をしているモデル系美女のカナエさんを従えて、エロ写真家の凱旋といった雰囲気だった。全員がツトムの部屋に戻ったところで、シュントはツトムの机の上に置いてあった操縦機、『双シン壱号』を手に取る。ヘッドホンを耳に付けると、誰かに何かを言われる隙を与えずに、『ブラックアウトボタン』を押した。

 ブザー音が鳴って、シュント以外、部屋にいる皆の動きが止まり、生気が消え、人形の集まりのような存在感の人たちが立ち尽くす。そこでシュントは全員に話しかけた。

「今日あったことは僕たち以外の人には伝えないで。僕たちの間だけの秘密。けれどこれは嫌な思い出じゃないよ。とても気持ち良かったし、面白かった。貴方たちは、楽しんだんです。だから一人でいる時とか、他の人たちといる時には、気にしたりしない。なんなら、思い出すこともない。僕たちが一緒にいる間だけ思い出したり、話したり出来るけど、その時にも、ちょっとした悪い遊びを自分も楽しんだっていう程度の思い出として受けとめよう。じゃ、手を叩くと、正気に戻る。僕がこのボタンを押した時から手を叩く時までのことは、思い出さなくて良いからね」

 シュントがわざわざこんな念押しをしたのは、ヒトミさんがまだサヤカさんに抱かれて、泣き止んでいなかったからだ。優しくて清楚なお嬢様がシクシク泣いているのを放っておいて、エロい実験が成功したと喜ぶのも、少し後味が悪くなる気がしたのだ。

 シュントが手を叩くと、ヒトミさんはケロッとした顔で、まだ腫れた瞼をパチパチとしばたかせた。サヤカさんがヒトミさんの脇腹を、肘でツンツンと突くと、ヒトミさんは顔を少し赤くして、笑いを漏らす。

「なによ………、サヤちゃんだって……………。……………イイことしたんでしょ? おあいこじゃん…………」

 ヒトミさんの内緒話は意外と声が大きくて、シュントに丸聞こえだ。けれど二人の美女が赤い顔を近づけて、コソコソと話し合ったり、クスクス笑い合ったりしながら同じ日のロストバージンについてお互いの思いを交わし合っている姿は、妙にグッときた。

「はぁ~っ。どうせアンタたちは初めてだからって、優しいビギナーコースだったんでしょ? ………私なんか、カメラマンが超変で、いきなり超ハードだったんだけど………」

 カナエさんが2人の親友に割って入る。ヒトミさんが心配そうに目を丸くした。

「カナちゃん…………。やだった?」

 真面目でウブなお嬢様に真っ直ぐ聞かれて、カナエさんは頭を掻きながら考える、思い出したのか、顔が赤くなった。

「いや…………、やだった、ってほどでも…………ないんだけど………。とにかく、変態だった」

「………じゃ、変態で………、でも、やじゃなかったの?」

 ヒトミさんはキョトンとした表情で、カナエさんにグイグイ聞いていく。

「いや………もうっ。私のことは良いからっ!」

 変態的な撮影をさせられたけど、イヤじゃなかったという答えを出したくなくて、カナエさんは恥ずかしそうに話を切った。それでも、今日のことが3人にとって辛い思い出にはなっていないということを確かめられたので、シュントは改めてこの操縦機の力に感心した。

 6人で、「秘密のヌード写真鑑賞会」を開いた。シュントがメールでツトムの携帯に、そしてミツルが一眼レフからSDカードを出して渡すと、ツトムがPCに順番に映していく。自分が被写体になっている写真がPCのモニターに映ると、綺麗なお姉さんたちは順番に恥ずかしさで悶絶して悲鳴を上げる。けれど残りの2人は興味津々でPCを覗きこむ。親友の意外なオンナの顔と裸の綺麗さ、エッチさをまじまじと見つめては顔を見合わせる。3人とも、これはこれで、楽しんでいるような様子だった(真っ赤な顔で悲鳴を上げているけれど。。。)

 サヤカさんが全裸でギコチないポーズを撮っている写真が出ると、カナエさんとヒトミさんは爆笑した。床に顔を埋めて、足をバタバタさせて悶えるサヤカさんの両側で、優等生のサヤカさんが無心にオナニーしている写真を見たカナエさんは手を叩いて喜んだ。一番唖然とした顔をしていたのはツトムだったかもしれない。そして次第にクロースショットが増えていく。目に涙を溜めながらアゴをあげる、ロストバージンの瞬間のサヤカさんの写真を見る頃には、皆、笑いを忘れて、思わず真剣に見入っていた。吐息がこちらまで届いてきそうなくらいのアップで撮られているサヤカさんの表情は、痛そうだけれど色っぽかった。

 ヒトミさんの写真はオッパイが9割五分。残りの五分がお尻のアップだった。その工夫のなさに、ツトムはミツルに頭をはたかれていた。けれどシュントは、次々出て来るオッパイ写真に、「またかよ」とかコメントしながらも、目を離すことが出来ない自分に気がついていた。一枚一枚、オッパイに表情があるような気さえしてくる。日の当たる角度、乳首を写す角度が少しずれるだけで、ヒトミさんの巨乳は、違ったメッセージを送ってきているような気がした。どうして富士山ばかり撮り続ける写真家がいるのか、シュントはこの時に少し理解したような気がした。サヤカさんとカナエさんは、ちょっと嫉妬が入ったような目で、ジトーっと写真を見る。ヒトミさんは今さらながら、服の上から腕で自分の胸を隠してイヤイヤと首を振る。けれどパソコンの画面には、これでもかとばかりに、彼女の揺れるダイナマイトバストのアップ写真が続くのだった。

 そして、キッチンでのカナエさんを撮ったミツルの写真が出てきた時には、ミツル以外の5人で引いた。全裸の上にエプロンだけ来ているカナエさんのしどけないポーズ。床に跪いて、ミツルのモノを根元まで咥えている顔写真。四つん這いになってキュウリを咥えている写真は、アソコから反対方向へもキュウリが突き出ているせいで、まるで一本のとんでもなく長いキュウリが、カナエさんの体を貫通しているようにも見えた。そういう演出だったそうだ。サヤカさんとヒトミさんはお互いの顔を見合わせて、口をパクパクさせながら青ざめていた。何も言うことが思い浮かばなかったようだ。そしてケーキやお菓子作りのための引き出しからカナエさんが煽情的な表情をしながらロウソクを取り出した写真が写ったところで、ツトムが咳ばらいをしながら画面を閉じた。

「全部は見ていないけれど、きっと、………ていうか絶対、ヌード写真というカテゴリーを超えている」という満場一致の判定で、鑑賞会はお開きになった。なぜかミツルと一緒に横でカナエさんも正座してシュンと縮こまっているのが、印象的だった。

 シュントは予定よりも早めに、ツトムの家を後にする。携帯の中には容量一杯まで、お姉様たちの全裸写真、エロ写真が詰まっていた。明日から急に自宅がゾンビに囲まれたとしても、1年くらいは部屋にこもってやり過ごせるだけのストックを手に入れたような気がした。

 それでも………。初体験も済ませて、昨日の夜に欲しいと思っていた彼女たちの裸の記録を手に入れても、シュントのしたいことは無くなっていなかった。それどころか困ったことに、操縦機を使ってやりたいことが、次から次へと頭の中に溢れてきてしまうのだった。

<第3話につづく>

3件のコメント

  1. 読みましたー!
    いかに抵抗されないように、かつ思い通りに操るかの駆け引きがいいですね!
    個人的に、操っている女の子自身に自ら考えて結論を出したと思わせることで暗示の内容を受け入れやすくさせたりする工夫が大好きです。
    ミツル色々と危なっかしいけど、どうなることやら。

    さて、まだまだ装置を使ってどんどん研究を進める展開になると思うので、楽しみにしています。
    ここいらで、そろそろ外で使って欲しいところ!

  2. 読ませていただきましたでよ~。

    やばい、サヤカさんがかわいい。
    まあ、描写がサヤカさんに集中してるからでもあるんでぅけど。
    まさかもう本番に行くとは思わなかったのでぅ。いいぞもっとやれ。

    手探りで双シン機の性能を確認していくのはいいでぅね。
    ミツルにブレーキかけてあるので少々危なっかしいものの安心できますし。
    もっと色んな人を操っていい感じにエロエロして欲しいでぅ。
    サヤカさんたちだけでなくもっといろんな人達を。

    であ、次回も楽しみにしていますでよ~。

  3. >ティーカさん

    毎度ありがとうございます!
    このアナログ機械でうまくチューニングが合った時の喜びは、
    デジタルのプリセットで見聞きするモノよりも、ぐっと記憶に残ると思っています(オッサンの言い分)!
    ミツルのチューニングも外せませんので、引き続き注視してまいります(笑)

    >みゃふさん

    サヤカさん。というか、友達の優しく綺麗なお姉さん。ひと夏の思い出として、
    操りつくしたいと思います。仰って頂いている「手探り」感を大切に、
    ちょっとずつ拡大させて参ります。(つまり緩やかに、みゃふさんの好みと乖離していく?)
    笑って許して頂ければ幸いです!いつもありがとうございます。

    永慶

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