はじまりの頃 第3話

<<第3話>>

 和泉亨 27歳 会社員

「優芽ちゃーん、ほら、お歌うたってるよ。アーイアイ、アーイアイ」

 妻の智世が、歯磨きのあとでまだグズッている娘の優芽に、録画してある歌番組を見せてご機嫌を取る。智世は夕飯の後には食器を洗って、娘をお風呂に入れて、歯磨きをさせなければならない。その忙しさの中で、優芽の機嫌や亨が晩酌を終えて夕飯を食べ始めるタイミングまで気を遣ってくれる。本当によく働く妻だと思う。

「ほら、パパの方がおサルさんに似てるかな? ………見てみて、パパもやるよ。アーイアイって」

 智世が優芽の視線をこちらに誘導してくるので、亨もおどけたおサルの顔真似をしてみせる。優芽は笑った。

「パパはねー。おサルじゃなくて、ゴリラ」

「ぶっ。…………優芽ちゃんってば………」

 智世が噴き出す。日中にも娘に、「パパはゴリラに似てるね~」とか、言っているのかもしれない。娘の優芽は顔立ちは美人の母親に似ていて、親族一同をホッとさせたのだが、眉毛の濃さだけは父親譲りだ。そんな娘に「ゴリラ似」と指摘されて、怒れない、甘い父親がここにいる。

 それでも、亨も小さな仕返しを思いつく。娘へではなく、妻への悪戯の仕返しだ。

「じゃー優芽ちゃん。今度は『ママのヘンシンタイム』だよ。おサルさんになろう」

 言われた瞬間に、妻の智世が、両目を丸くして肩をすくめる。表情が一変した。

「……………ウッ…………キャキャキャッ」

「ヤハハハハッ。ママ、ほんとのおサルさんみた~い」

 2歳の優芽が手を叩いて喜ぶ。いつもは優しくて働き者で、しっかりしている自分のママが、急に本気でリアルなお猿の真似を始めたのを見て、笑っている。智世はソファーの背もたれのてっぺんに昇ると、つま先立ちのまましゃがみこんで、お尻をポリポリ掻く。サルに『変身』している間も、優芽のことは大切に思っているようで、優芽が喜ぶのを見るとさらに大げさに、両手でポリポリとお尻を掻いては、クルリと振り返って、優芽の反応を伺っている。

「今度はママ、『ダチョウさんにヘンシンタイム』だ。優芽を追いかけてくるぞ。逃げろー」

 亨は娘に話しかけているが、ママはきちんとその言葉にも反応する。ビクッと両肩をすくめた智世がソファーから床に飛び降りると、今度は少し中腰気味になって右手を高々とあげ、ダチョウの頭を真似るように手首を曲げると、ヒョコヒョコと歩き出す。なかなか迫真の形態模写だ。優芽はキャーキャー笑って逃げているが、それを追いかける智世の表情は、両目をパッチリ開けて無機質に左右を見回したり、一点を見つめたりと、人間の知性を感じさせない。亨から見るとちょっと怖さもあるくらいの挙動だが、娘は相変わらず笑っている。なぜなら、たまにママのこんな豹変ぶりを見ているから、慣れているのだ。

「パパ。優芽ね~。ママのアシカさんも見たい~」

「じゃぁ、次は『アシカさんにヘンシンタイム』だな」

「……………アウッ、アウッ、アウッ」

 うつ伏せになった智世が背筋の力を振り絞って体を仰け反らせる。ソファーに転がっていた紙風船を優芽が投げると、美人の母親は顔でキャッチ。器用に鼻やオデコで紙風船を突き上げて、空中で回転させる。2歳の娘は大喜びで両手を叩いた。

「ママ、じょうず~。えら~い」

「アウッ………アウッ、アウッ、アウッ」

 褒められた『アシカさん』は、懸命に紙風船を顔で突き上げながら、体を傾けて、上体に肘までつけた腕の先、手首から小さく手を振った。よく躾けられた『アシカさん』だった。手を振り終えると、ギコチない動きだけれど一生懸命、「あっかんべー」のポーズと表情。目を見開いて舌を出して。大人が見せる顔ではないかもしれないが、愛嬌はタップリ。優芽はケタケタと笑っている。

 そろそろ、最後の変身に移ってもらう。こちらも和泉家では定番だ。

「じゃ、最後にママは『青い小鳥さんにヘンシンタイム』だよ」

「わーっ。小鳥さん、好き~」

 はしゃぐ優芽の前に、愛くるしい『小鳥さん』が現れる。両腕で作った翼をパタパタさせながら、娘の間近に寄って来て、くちばしで優しく、チョンチョンと優芽の頬っぺたにキスをする。優芽がお願いすると、「ピーピー、チーチー」と可愛らしい歌を歌ってくれる。優芽のオネダリを受けると、『小鳥さんダンス』まで披露してくれる。右足と左足を交互に横に上げてバランスをとったり、両足を揃えてチョコチョコ跳ねた後でユーモラスにお尻を左右に振って見せてくれたり。そろそろ優芽の寝る時間だというのに、『小鳥さん』は時間も忘れての大サービスだ。こうした芸は、亨と優芽とで、ママに仕込んで来たものだ。無邪気に喜ぶ優芽の笑顔見たさに、亨はついついやりすぎそうになってしまう。亨の悪い癖だ。本当は娘の前では、催眠暗示をママの威厳を維持してあげるためにも、催眠暗示を使った悪戯はほどほどにしておくべきだ。保育園に通うようになって、友だちに言いふらすようになっては、智世が可哀想だ。それはわかっているのだが、こんなに簡単に娘が喜んでくれる仕掛けは、パパとしてはなかなか自制しきれない。

「はーい。そろそろ『ママのヘンシンタイム終了~』。ママはいつもの人間のママに戻りますよ~」

「えぇ~。ママ、もっと鳥さんやって~」

 我に返った智世は、少し顔を赤くして、優芽をあやしながら、亨の方を軽く睨む。

「優芽ちゃん。もうネンネのお時間だよ。絵本読んであげるから、好きなの選んで」

「…………おさるのジョージとうちゅうりょこうがいい……。それか、ぐりとぐら」

「どっちか、1つ選んでね」

 パジャマ姿で本棚から絵本を何冊か取り出しては1人でブツブツ呟いて、真剣に迷っている優芽をその場に置いて、そーっと智世が亨のいる食卓テーブルまでやってきた。

「ちょっと………。優芽の前で、変身させないでって、言ってるでしょ。あの子、お昼でもあれまたやってとか、ねだるのよ。………マー君たち来てる時とか、困ったんだから」

「ごめんごめん………。やっぱり智世が真剣に動物になりきってるのが面白くて、可愛くて。つい………な」

「もうっ調子に乗って…………」

 智世が亨の腕をギュッとつねる。本気でご立腹のようだ。

「今日………。優芽が寝たあとで…………。する?」

 亨が声を低くして聞いてみる。亨の暗示に全力で従って、パジャマ姿で懸命に動物になりきっていた美人妻の姿は、確かに可愛らしくて健気で、亨は仕事の疲れも忘れてムラムラしていたのだ。

「………………ん……………。亨さんが………したいなら…………。なんでもする………けど」

 智世が、まだプリプリと怒りながらも、躊躇いがちにコクリと頷く。一度、『青い小鳥さん』にならせた日は、特に智世は夜、セクシーに乱れる。いつもにまして、従順で献身的な、裸の天使のような存在になる。それは彼女が学生の頃から変わらない、体と心に沁みついて、ほとんど一体化してしまったような、彼女の習性。いや、体質のようなものになっていた。それも、かつての三雲亨が彼女に何気なく与えた、暗示のうちの一つだ。『アキミチ』は、あの時に自分が手探りで刷り込んだ暗示の一つ一つが、十数年後も智世を操っているということを、どれだけわかっているのだろうか?

。。。

 高辻智世 15歳 中学生

「きゃーっ。やっぱり無理無理無理っ! 落ちるってば~っ」

 智世が絶叫しながら乗っている馬のたてがみにしがみつく。智世が乗っているのは、かなり気の荒い馬だ。何度も直立するくらい前足を上げて体を起こしてしまう。振り落とされないように、智世は懸命にその首を抱きしめる。さっき、明道の部屋へ、トオル君に催眠術を教えるために訪れたはずなのに、どうしていきなり牧場にいるのか。きっと幼馴染の明道がしょうもない提案をして、トオル君と智世が付き合わされているのに違いない。前後の記憶を手繰り寄せる暇もないくらい、智世は必死の形相で馬の体にひっついていた。

『あれっ。お馬さんがお尻をスズメバチに刺されたみたいだ。痛がって、もっともっと暴れ出した。』

「ひぎゃーっ。絶対死ぬ~。降ろして~」

 声を振り絞って泣きわめく智世。そこで誰かが指を鳴らす音が聞こえた。

「はい、催眠解ける。もう大丈夫だよ。智世さん。………ここがどこかわかるでしょ?」

 急に霧が晴れるように、智世の意識が冷静になっていく。目の前にあったはずの景色が、カーテンを一枚開いたかのように鮮やかに変わると、智世は自分がまだ、明道の部屋にいることに気がついた。馬の首だと思って触れていたのは、彼女が跨っている長箒の柄の部分だった。彼女は自分が暴れ馬に乗馬中だと思って、まるで魔女のように、箒に跨りながら、一人で伸び上がったり跳び跳ねたりと、七転八倒していたのだった。股間が痛むのは、箒の柄がショーツのクロッチ部分に何度も食いこんでいたからだ。…………そう。よくよく見ると、智世はスカートを脱いで、ショーツ1枚、下半身にまとっただけの姿で、大立ち回りを見せていたのだった。いつのまにかシャツも無くなっていて、彼女は下着姿。手で確かめると、頭にだけはご丁寧に、カウボーイのようなテンガロンハットを被っていた。

「…………トオル君、またやったわね…………。きっとけしかけたのは、明道のバカスケベでしょ」

「でも、草原で自由に遊ぶイメージをあげたら、格好良く、馬に乗って、風を切って走りたいって、言ったのは、智世さんなんだよ。おぼえてないかもしれないけど」

 クスクス笑いながら、歌うようなトーンでトオル君が言う。明道のことを「バカスケベ」と呼んだことについては、含み笑いをしつつも、何も言わないでおいてくれた。明道がどんなにバカでも智世が彼のことを熱烈に愛していることはトオルにはバレバレだし、スケベについては最近ではむしろ智世がリードしているくらいという、「バカスケベ・カップル」の恥ずかしい内情も、全て知られているからだ。智世はそのことをどんなに恥ずかしいと思っても、みっともないと思っても、この3人の間に壁や秘密を作るということが、どうしても出来ないのだった。

「はぁ…………。なんか、もう良い………。疲れて、怒る気もなくなったよ」

 智世が大きな溜息をつく。

「そっか。…………でも智世さん、大きな声出して、喉でも乾いたんじゃない? お水飲む?」

「ん………。あ…………明道、サンキュ」

 トオル君が水のことを言うと、すかさず明道がグラスに入った水を差しだす。最近2人のコンビネーションは良くなるばかりだ。

「じゃ………飲むから、ちょっと待ってね」

 智世はそう言って、背中に両手を回してブラジャーのホックを外すと、大きめのサイズのブラを脱ぎ取る。腰に手を当てて指の腹でショーツのゴム部分をひっかけると、スルスルとショーツも脱いでいく。全裸になった智世は、脱いだばかりのショーツを自分の頭にかぶせた。別におかしなことではない。智世は明道の部屋で飲み物を飲もうとすると、口が緩んで胸元に零してしまうことが多いので、衣服は脱いで、ショーツは頭にかぶってから飲むようにしているのだ。これは確か、智世から言い出して、2人に気にしないようにお願いをしていることだ。以前、ヨーグルトジュースを口から胸元、お腹あたりまで、ボタボタと零してしまった時は、裸のまま、写真を撮られてしまった。「なんかアダルトっぽいから記念に」という明道たちの言い方を、智世はよく理解することは出来なかった。

「………ん………、やっぱり、お水が一番落ち着くよね。………あ………やっぱりちょっと………零しちゃった。………ゴメン」

 何滴か、口元から零れたお水が、オッパイに当たって跳ねたり、しずくになって、胸の谷間や彼女の曲線を強調するようにおヘソあたりまで、滑り落ちるように垂れていく。そこでまた、明道が喉をゴクリと鳴らす。これが最近のルーティーンだ。そしてルーティーンの最後も決まっている。

「智世さん…………、これこれ」

 トオルが慣れた手つきで、明道の机の上に置いてあった鏡を智世に向ける。それを見た瞬間、まだ水を飲んでいた智世はブーっと勢いよく、口にふくんでいた水を噴き出してしまう。鏡を見た瞬間に、正気に戻ったのだ。そこには裸で、パンツを頭にかぶせた、みっともない姿で水をグビグビ飲んでいる自分がいたのだ。優等生の中学生女子で、突然こんな姿の自分に気がついたら、飲んでいるものを噴き出さない子の方が少ないだろう。

「アンタたち、いつまでこんな、悪戯ばっか………」

 ティック。

 いきりたった智世の目の前でトオルが指を鳴らすと、一瞬で智世の表情は蕩けて、力の抜けた全身がヘナヘナと沈み込んでいく。その彼女の手から、まだ水が少し入っているグラスをトオルがキャッチ。倒れこむ智世の体を明道がガッシリとキャッチ。次は明道が何か、新しい暗示を刷り込むという順番になる。ここまでが、最近定番になっている、「下着姿で怒っている智世の怒りを鎮めながら裸にさせる」ルーティーンだった。

。。。

 和泉明道 15歳 中学生

 ベトベトにしてしまったベッドのシーツやトモヨと明道、トオルの服などを、トモヨが1階で洗濯している。もともと世話焼きな性格で、家でもよく母親の家事を手伝っているトモヨだが、今ではトオルと明道の母親兼メイドさんの役割までこなしてくれている。両親が共働きの、明道にとっては、ありがたいかぎりだった。当のトモヨも、「まるで新婚生活みたいだね」と悪戯っぽく笑いながら、掃除や炊事、お菓子作りや洗濯を、鼻歌交じりに、とても楽しそうに行っているようだ。

 彼女が1階で家事に励んでいる間、明道の部屋では彼と、トオルが暇つぶしのようにTVゲームをする。さっきまでは格闘ゲームの対戦モードを続けていたのだが、あまりの連戦連敗ぶりに、明道はギブアップ。今はトオルが1人でコンピュータと戦っていた。

「俺、実生活では柔道強いのに、ゲームだとまるでお前の相手にならないな………」

 明道がボヤくと、トオルは画面から目を離さずに答える。

「…………明道君って、僕のキャラクターと戦ってる時、キャラクターの動きしか、見てないよね。…………僕は明道君のキャラと戦いながらも、操作してる明道君本人の動きも意識してるよ。右腕に力が入っている時、左の親指に力が入る時、左の指をずらそうとしている時。それぞれ筋肉の張りに予兆があるし、呼吸も変わるでしょ?」

「…………お前、真横にいる俺の腕の力の入り具合とか、いちいち見てんの?」

「…………何回か、視界の片隅に入れて見たら、…………次からは気配でわかるよ。……………明道君だって、柔道で寝技とか組み合ってる時、いちいち相手の全身を視野に入れてないでしょ?」

「そんなもんかな………。じゃ、トオルは対戦ゲームは、人間同士の対決だと、すぐにボロ勝ちになっちゃうな。………飽きたりはしないのか?」

「うん…………飽きるよ………。でも、今までは友達がほとんどいなかったから、飽きるまで人と対戦したことはなかったね…………。コンピューターのキャラクターと対決して、プログラムした人の意図とか理解して、一通り、全部の技とか攻略法とか、理解出来るまで、1人で続けてた」

「それなら飽きないって訳だ」

「うんん…………。それも飽きる。…………小さい頃は新しいゲームとか、なかなか買ってもらえなかったから、飽きたらどうしようって、心配しながら、ずっと同じゲームやってたよ」

「……………ふーん」

 明道はトオルの言っていることがどれだけ理解出来たか、自分でも自信はなかったけれど、とりあえず相槌をうった後で、オレンジジュースを飲んだ。前よりも、トオルが自分のことを話すようになった。それだけで、まずは良しとしておこう。。。

。。

「催眠術も、1人や2人の同じ被験者を相手に、試せることは大体やりつくしたと思う。…………他の人たちにも試したい。集団催眠とか、初対面の相手への瞬間催眠誘導とか」

 トオルはいつものように、まるで歌うような節回しと高めの声で、こともなげに言った。明道の部屋で、トオルの前に、横に並んで座らされた明道と智世は、すこし怪訝な顔をして、幼馴染である恋人と視線を交わし合った。

「心配しなくても、そんな急に大規模に試そうとか思ってる訳じゃないよ。まだ智世さんや明道君で試させてもらってる、健忘暗示とか記憶の作り替えとか人格改造とかの効果期間も、検証が終わった訳じゃないんだし。急にあんまり大胆な実験とかしたりはしない。あくまでも自信が持てる範囲で、扱えそうな対象と人数から、始めてみるつもりだよ。そして、少しずつ挑戦のレベルを上げていく」

「トオル君の………家族やお友達にも、催眠術をかけて、色々と試すっていうこと?」

 智世が聞く。けれど彼女がトオルの回答を先に予想していることは、何となく明道にもわかった。

「僕、友達いないよ。明道さんと智世さん以外には………ね。だから、智世さんのお友達に、沢山、催眠術をかけさせてもらうっていうことになるね」

「………でも……………私たちは…………そんなことは………………。…………あくまでも、この3人の中だから、お互いを信頼して、トオル君の特技を伸ばすためも思って、催眠誘導法を………」

 智世が、言葉を選びながらも、正直に、正しいと思うことを伝えようとしている。明道も何か、助け舟を出すべきだ。そう思って口を開いた時、トオルはすでに、溜息をつきながら指を鳴らそうとする仕草をしていた。

「トオル、俺も………」

 ティック。

 トオルが指を鳴らす音。それを聞いた明道の心の芯が、シュルシュルと彼の意識から抜け落ちていくような感触をおぼえる。心は深くて暗いところに沈み込み、明道の意識の指令室のような場所は、空っぽになる。その空っぽの指令室に、トオルの声が響き渡るのだ。けれど明道の意識は、自分が何を言われているのかさえも、噛み砕いて理解することが出来なかった。

 ティック。

 もう一度、指が鳴らされる音………。そこでやっと明道が我に返る。隣を見ると、智世も少し戸惑うような様子を見せながら、さっきの話を続けていた。

「………だから、トオル君にもっともっと催眠術の世界を深く理解して、自由自在に使いこなしてもらえるようになるために、私と明道は家族でも友達でも誰でも、活用した方が良いと思うの。私たちは催眠術にかかることで、とっても幸せになった。だから私の大切な人たちにも、同じようになってもらいたい。それって自然なことでしょ?」

「…………うん。………智世さんの言いたいことはわかるよ。………明道君も同じ意見?」

「…………え? ………………あ………………あぁ………。そうだな」

 一瞬、面食らったような反応をした明道だったけれど、よくよく考えると、自分の言いたいことは、まさにそのことだったと、思い直す。智世が言ったことをもう一度、頭の中で考える。考えれば考えるほど、筋が通っている正論のように聞こえる。

「そうだな。うちの中学の柔道部とか、交流のある別の学校の柔道部とか、他の男連中。何人でも、トオルの催眠術の実験台になってもらいたいな」

「…………ありがとう。気持ちだけ、頂いておくね…………。でも、この部屋にそんなに沢山の筋肉男子はいなくても良いと思うから、主に智世さんのお友達を連れて来てもらおうか。招きやすさでいうと、智世さんの部屋に呼んでもらった方が、警戒されにくいかもしれない」

 両手のひらがパチンっと合わさる音。明道が見ると、智世が嬉しそうに手を打っていた音だった。

「ちょうど私も、それを考えていたのっ。どうせ実験台とか教材になってもらうのだったら、可愛い女の子とか綺麗なお姉さんの方が、催眠術をかける側のモチベーションも上がるし。術のかかり具合を確かめるには、そういう子たちが普段しないようなことをさせるのが手っ取り早い。十代の男の子のモチベーションっていったら、エッチが一番近道だよね」

 横でトモヨが、まるで誰かから言われた言葉を復唱でもしているかのように、スラスラと喋る。それも、普段の彼女だったら言わないようなことを…………。それでも、それは途方もない名案のような気がして、明道も深く頷かざるを得なかった。

「…………でも、うちはママが家にいるから、まず最初にママを自由に操れるようにならないと駄目だけどね」

「…………まずは親を催眠術で操るところから………か………」

 明道は腕を組んで考える。言われてみれば、その通り、絶対にそうした方が良いとしか、言いようがない。………むしろ、明道やトモヨの方から、トオルにこのことをお願いすべきだったかもしれない。明道とトモヨは、お互いの顔を見合わせる。トモヨが黒目をススっと動かして、トオルに何か言うべきだと、表情で明道に伝える。幼馴染で恋人同士の2人は、以心伝心でお互いの考え(それもぴったり一致した考え)を理解すると、トオルの前に息を合わせて正座した。

「トオル、頼む。俺の両親に催眠術をかけてくれ。俺に出来る協力は何でもするから」

「トオル君。お願いします。私たちの家族や友だちを催眠術で操ってください。私たち、本当に何でもします。一緒に作戦を立てて、3人で、周りの人たちをトオル君の催眠術の実験台にしましょう。エッチなことをしたり、悪戯して遊んだりもしましょうっ」

 どうにも抑えきれない胸の高鳴りと衝動に突き動かされるように、明道とトモヨは土下座して、オデコをカーペットにグリグリ押しつけて、年下の友だちにお願いをしていた。トオルはニコニコしながら、まだ返事をかえさないが、その表情からは、回答はもう、決まっているようだった。

。。。

 明道の両親に催眠術をかける時は、トオルが口火を切った。食卓テーブルの椅子に座る父と母に対して、改めて明道の紹介を受けたトオルが身の上話をする体で、催眠状態への導入を行う。そこからさらに催眠を深めることは、明道にやらせた。

 トモヨの両親に対しても同じ方法をとるのかと思いきや、高辻家の導入はトモヨにさせた。

「智世さんは明道君より理解と習得が早いから、自分でも出来るはずだよ。失敗しそうだったら、僕が手伝うから」

 目をキラキラさせて、トオルがトモヨを後押しする。純粋な好奇心と、作戦を立てるワクワク感に満ちた目だった。トモヨは、「何でもする」と言ってトオルにお願いした立場もあって、不安は感じつつも、従うことにしたようだ。緊張しながら、両親に悩みを相談すると言って、緩やかに催眠状態へと誘導した。トモヨが催眠深化のプロセスを急ごうとしたところだけ、トオルが割って入って、念入りにトモヨの両親へ暗示を刷り込んでいった。

 トオルを預かっている家族には、トオル自身が1ヶ月も前に、すでに完全な従属状態に落とし込んで安定化させているようだった。トオルはそのことを、昨日の天気についてでも話すかのように、何の感動も感慨も見せずに説明した。

 和泉家、高辻家、それぞれのダイニングの食卓テーブルの上で、トオルは明道とトモヨの両親にセックスをさせてみた。すでに深い催眠状態に何度も落ちていた2組の夫婦は、何の疑問も持たず、当たり前のように、我が子の前で服を脱ぎ、裸になると、抱き合い、愛し合った。それを見せられる、明道やトモヨにとっては、罰ゲームのような時間。性器で繋がって、喘ぎ悶える両親を見るに見かねて、トモヨや明道がヒーヒー言いながら、気まずさに悶絶する。その様子を、トオルは楽しんで見ながら、明道やトモヨの「普通の子供の反応」を観察している様子だった。

「2人とも、自分の両親がこういうことしてるって、思わなかったの? …………自分が今、いるのだって、お父さんとお母さんがこうしたからなのに…………」

 トオルは本気で不思議そうな顔をする。

「それはわかってるけど、………わかってるけど、自分の親を、そういう欲望とか持った存在っていう風に、見たくなかったのっ! 明日から、どんな顔して一緒にご飯食べれば良いの………。もう………」

 まだ顔を赤くしているトモヨは、両手のひらで自分の頬を包み込むようにして、紅潮した頬の温度を下げようとしている。

「父親と母親っていう組み合わせが気まずいなら、…………智世さんの両親と明道君の両親、相手を組み替えてヤラせてみる?」

 まるでゲームでコンビで戦うキャラクターの選択でもしているかのように、トオルが平然と言い放つ。トモヨと明道は猛烈に反対した…………はずだったのに、気がつくと、トオルの膝元にすがりついて、是非そうさせて欲しいとお願いしている自分たちがいた。そんな自分たちに顔をショックを受けて顔を見合わせるのだった。

 土曜の昼前に、インテリアが上品にコーディネイトされている高辻家で、スワッピングが行われた。昔から近所づきあいのある、常識的で善良な夫婦同士が、パートナーを入れ替えて、見せつけ合うようにして、セックスをした。リビングに喘ぎ声が響き渡る。途中で家のチャイムを鳴らした、宅配便のお姉さんも、応対したトオルの導きで、なぜか乱交パーティーに参加した。

。。。

 トモヨの親友、同級生、後輩、塾の知り合い。魅力的な女性は大体、トモヨの手引きとトオルのサポートの下で、催眠状態というものを経験することになった。外見がそこまで目立つ子ではなくても、クラスアルバムや携帯の写真を見たトオルが、何らかの理由でピンと来た場合には、催眠術をかけて、暗示を与え、その反応を観察した。1対1で催眠術をかけた相手もいれば、トオルが一度に8人もの相手を同時にトランス状態へ導いたこともあった。無防備な深い催眠状態でトオルの暗示を心に染みこませた女性の中には、トモヨがお世話になった中2の時の担任の水谷先生もいた。

 女子の集団を一度に操るという、集団催眠術について色々と試す時には、トオルは中学生女子たちのなかにこの、水谷先生や近所に住む彩乃さんという女子大生などを混ぜたがった。バリエーションがあった方が、色々な反応が見えて、学びも多いし、面白いらしい。確かに高辻家の広めの庭でトモヨも後輩の美少女たちも先生たちも全員、『カルガモの親子』になるという暗示を与え、裸で行列になって歩かせた時などは、背丈や胸などの発育の違いがあった方が見ていて楽しい感じがした。「グァグァ」と声を張りながら、先頭を張り切って歩く、全裸のトモヨは『お母さん』役。その後を年下の美少女や真面目なお嬢様タイプの後輩が『カルガモの子供』になりきってチョコチョコと追いかける。間にはトモヨのお母さんや女子大生のお姉さんが入り混じって、デコボコの行列を作って庭を練り歩く。一番最後、置いて行かれそうになりながらもチョコチョコとお尻をふりふり追いかけていく『末っ子』が、真面目で聡明そうな水谷先生というのが、また可愛らしかった。

 高辻家のリビングのソファーで6人も7人もトランス状態に導いて、ここがビーチリゾート、みんな、服の下に水着を着ている、とトオルが暗示を与えると、女子たちは嬉しそうに服を脱いで、下着姿になっていく。水谷先生はやはり、清純そうな水色と白の下着を身に着けていた。若い女性たちが5人以上、一つの部屋で服を脱ぐと、それだけでそこには甘い匂いが充満するような気がする。明道はその空気を吸っているだけで、頭がクラクラとするようだった。

「みんなは常夏のトロピカルリゾートへやってきて、最高に大胆な気持ちになってきたよ。すると目の前に、貴方たちの理想の恋人が現実になったような、カッコいい男の人が歩いていく。同じく旅行客で、日本語も喋れるみたい。人生一度きりのチャンスかもしれないから、思い切ってナンパしてみよう。恥ずかしさは全部捨てて、積極的に自分の魅力、セクシーさをアピールしよう。そうしないと、理想の男の人は歩き去ってしまいます。ほら、頑張って彼を振り向かせましょう」

 トオルが言うと、ソファーに深々と座っていた女の子たちが目を開けて、体を起こして、目の前にいるらしい、理想のタイプの男性に、勇気を振り絞ってナンパを始める。真正面から訥々と自分がいかに真面目で、恋人に尽くすタイプかを語り始める子もいれば、髪の毛を解いて色っぽく掻き分けながら、精一杯セクシーなポーズをとって大胆に迫ろうとしている子もいる。右端に座っている水谷先生は、緊張でガチガチになりながら、俯けた顔でチラチラと前を見るだけ。その様子に気がついたトオルは先生に近づいて、耳元で囁く。

「一生に一度の大チャンスが、………あぁ………行っちゃいますよ。僕が3つ数えると、先生の勇気が10倍になります。心のストッパーを全部外して良いんですよ。ほら、3、2、1」

 トオルが3つ数えて肩をポンと叩くと、美人の水谷先生はガチガチに緊張したままギコチなく立ち上がって、明道が想像したよりも大きな声を出す。

「あのっ。…………私っ。お付き合いすると、見た目よりも、積極的だって、言われるんですっ。夜とか、意外とエッチですっ。本当なんです」

 過呼吸になるのではないかと、明道が心配するくらい呼吸を荒げて、水谷先生がナンパをする。

「脱ぐと意外と凄いって、昔の恋人にも言われましたっ。オッパイがお餅みたいに柔らかくて、お尻が鞠みたいに真ん丸で。あ…………アソコが、カズノコ天井な感じで、とっても具合が良いって言われていましたっ。だから、あの、今夜もし、ご都合が宜しければ…………。私と………如何でしょうか?」

 大声で自分の体の、秘密の自慢ポイントを語る、真面目で美人な水谷先生。明道はとりあえず、彼女が前にお付き合いしていたのが、だいぶ年齢層高めの男性、ということだけ、理解した。

「はい、おめでとうございます。理想のタイプの男性をゲット出来ました。水着を脱いで砂浜に寝転びましょう。最高にカッコいい男性が、日焼けクリームを全身に塗ってくれますよ。それはもう、天国にいるみたいな気分です」

 無邪気にキャッキャと喜ぶ美少女たちは、スルスルと下着も脱いで、オッパイを腕で隠しながらフロアに寝そべる。うつ伏せになりながらも、チラチラと振り返っては、理想の男性の姿を見て、ウットリとする。本当に幸せそうだ。高辻家のスキンケア・ローションを借りて両手に塗りたくった明道とトオルが、彼女たちの体をヌルヌルになるまで両手で弄ぶ。円を描くようにしてローションを伸ばしたり、入念にオッパイを揉んだり、脇腹や脇の下をくすぐって笑わせる悪戯をしたり、お尻の谷間を広げて、直接ローションを垂らしたり、アンダーヘアを掻き分けてアソコの周りを指で余すことなく触りつくしたり。

「このローションはここの島だけで使われている特別なもので、塗るとお肌がエッチな快感にすっごく敏感になります。心はもっとリラックスして、正直に。自分の体にも正直になりますよ」

 トオルが言うと、これまでくぐもった鼻息にかかるように漏れ出ていた、押し殺されたような喘ぎ声が、次第に大きく、あけっぴろげになる。トオルと同じ年の美少女は、か細い裸を震わせて、身を捩って喘ぐ。明道のクラスメイトでトモヨの友だちであるアキハという可愛い子は、豊かな胸を揺らして、仰け反るようにして悶えた。弾力と柔らかさが絶妙な水谷先生のオッパイ。彼女と以前お付き合いしていたオジサマの観察力、審美眼は本物のようだった。

「カズノコ天井のアソコって、どんな感じなんですかね?」

 明道が聞くと、その時はうつ伏せの体勢になっていた水谷先生は、上気した顔を、床に埋めるようにして隠しながら、そーっと両方の太腿を開いていく。明道が指を入れることを許してくれた。彼女の認識では真昼の『砂浜で』、良く知らない男性の指を、大切な場所に受入れているのだ。その水谷先生の一世一代の大冒険を、明道は片手でお尻を鞠みたいにペチペチついて、もう片方の手の人差し指をアソコのなかで回転させながら、応援していた。

 お堅い水谷先生までが心と体を開いてくれたあと、裸の女子たちのなかで一番、ノリが悪かったのは、実は高辻智世だった。明道が良く知っている、裸のトモヨを転がしてローションを塗ってあげようとしても、トモヨは頑なに体をこわばらせて、出来るだけ自分の肌を触らせないようにと、後ずさりする。トオルの暗示のせいで、触られることを完全に拒むことは出来ずにいるが、明道がその、スベスベした白い肌に触れるたびに、唇を噛んで苦しそうな表情をする。

「どうした?」

 明道が、幼馴染で恋人であるトモヨに気軽に聞くと、トモヨは裸の状態で自分の体を触らせながらも、申し訳なさそうに眉をひそめて答える。

「………私………。彼氏、いるんです…………。裏切りたくないの…………。一生大切にしたい、大好きな人だから………。でも…………貴方は、すっごくカッコいいし、…………体が逆らえなくて………………。自分で自分が、情けないの…………」

 目に涙まで溜まっている。明道はなぜかその表情に、グッときてしまった。

「はい、今なら貴方と超カッコいい男性しか、ビーチにいませんから、大胆に開放的に、セックスまでしちゃいましょう。夢みたいに、空の上にいるみたいに、気持ちが良くなりますよ」

 トオルは明道とトモヨのやり取りに気づかないまま、あるいは気づいても知らない振りをしながら、女子たち全員に呼びかける。すぐに女の子たちの喘ぎ声が激しくなる。想像上の理想の男性に抱かれながら、可憐な美少女が、清純派の優等生が、良家のお嬢様が、真面目な美人教師が、身をくねらせて、オッパイを揺らして腰を振り始める。明道の腕の中で、深刻そうな顔で悩みを抱えていたトモヨが、両目をつむり、観念するかのように顔をクシャッとさせた。

「あの…………。私たち…………。お…………お尻の穴で……………エッチしてもらうこと………………。出来ませんか?」

 顔を真っ赤にしながら、『初対面の理想的男性』に、高辻智世が凄いお願いをする。

「え?」

 そういうエッチがあることは知っているけれど、実践したことはない明道は、さすがに面食らって、まともな反応を返せなかった。

「わたし…………。今………その、エッチまでしちゃわないと、いけないんですけど…………。ここは…………、恋人と…………あと、もう1人の大切な仲間にしか許しちゃ駄目って、決めてるんです…………。だから………ここしか………」

 小さくなって消えてしまいそうなほどに、恥ずかしさに苛まれている様子のトモヨが、明道に背中を向けながら、おずおずと四つん這いになる。膝を開いて、腰を高く突き出した。

「初めてだから…………。うまくできるかわからないけど…………。私のお尻の………穴で、…………エッチしてください………」

 白いお尻の谷間が開くと、普段は他人には見せない恥ずかしいすぼまりが、明道の目に晒される。トオルを見ると、彼は頷きもせず、頭を左右に振ったりもせず、ただ、両肩をすくめて、明道にニコット笑いかけるだけだった。

「…………お願いします…………。このまま、待っている方が…………。恥ずかしくて、死にそう…………」

 明道の恋人、トモヨが懇願する。彼女の心の中には今、『明道を愛し、恋人として尽くす』という暗示と、『ビーチで知り合った理想の男性と、大胆で開放的にエッチをする』という暗示がせめぎ合っているのだ。そのどちらも、トオルが植え付けた暗示。けれどその、心のせめぎあいの中で、やっと出てきた折り合いの場所が、お尻の穴だったというのは、明道の、そしてきっとトオルの予想も、超えてきたのだろう。明道は指先でそっと、上品にすぼまっている、排泄のための恥ずかしい場所に触れてみる。ビクッと彼女の背中が緊張する。ローションの助けがあっても、この場所にいきなり明道のモノを入れるのは、不可能に思えた。

 そこで指で優しく、その場所をほぐすようにマッサージをしていく。ローションがクチュクチュと音をたてる。トモヨは全身に張り詰めるようだった緊張を、ゆっくりと解して、心も体も蕩けていくようだった。

「…………こんな…………ところ…………………。触られてるのに………………。知らない…………人なのに…………………。夢みたい…………………。お空の……………上みたい……………。……………わたし………………変になっちゃった…………………。明道…………ゴメンね………」

 快感に打ち震えながら、また智世が泣きそうになっている。明道は少しずつ人差し指を穴の中に入れたり出したりしながら、彼女のお尻を撫でてあげた。部屋の端の方から、大きな歓喜の声が聞こえる。あるポイントから吹っ切れたかのように、水谷先生があられもない喘ぎ声を響かせて腰を振っていた。これがきっと、彼女の言っていた、「本当は意外とエッチな自分」なのかもしれない。今なら、彼女たちの声に紛れて、会話をトオルに聞かれずにすむかもしれない。明道はトモヨとの話を続けた。

「そんなに…………、大事な彼氏なんだ……………」

 明道が聞くと、トモヨは思い出すようにして微笑む。最愛の恋人のことを考えるだけで、心が華やぐようだ。嬉しそうに、はにかむように答える。

「………はい…………。大好きです……………。一生……………彼のために、生きていきたいです……………。…………ん…………そこ…………。気持ちいい……………。夢みたい…………………。お空の上にいるみたい………………。ピー、ピー、ピー、チチッ」

 トモヨがふやけた笑顔でさえずり始めた時は、完全に心を解放しきっている時だ。さらに聞いてみよう。

「その彼と…………結婚…………したいと思う?」

 明道が聞くと、トモヨは無言で微笑むと力強く頷いた。

「すると思う。…………もちろん、彼が決めることでもあるんですけど………。私たち、森の小さな教会で、結婚式を挙げるんです。それまでに、ケーキ作りとか、ファイアーダンスとか、色々と練習しないと…………。あ、もちろん、明道が私を一生そばに置いてくれるって思うくらいの、素敵な大人の女性になるのが先ですけどね」

 彼女には確信があるようだった。明道はトモヨの言った「彼が決めること」という言葉の「彼」が、自分のことだったら良いのだけど、と、秘かに思った。

 そしてもう1つ、明道は心に浮かんだ疑問があった。彼は念入りにトモヨのお尻の穴に入れる指を次々と変えて、彼女の穴がゆっくりと緩んでいくのを念入りに確認しながら、頭に浮かんだ疑問を、やはり口に出すことにした。

「俺って…………、貴方の思い描いた、理想の男性に凄く近いんだよね? ………………俺ってさ………、もしかして、貴方の通う中学校の…………生徒会長に似てたりする?」

「……………滝田君…………」

 トモヨは四つん這いになったまま、明道の指の動きに合わせるように下半身を前後させながら、そう呟いた。…………凄く長い、沈黙が流れた。彼女は頭と肩だけ振り返らせて、明道を見る。

「…………うん。滝田君に似てるかなって、最初、思ったんです…………。でも、すぐに気がつきました。貴方、筋肉ゴツゴツで、熊みたいに毛深くて、全然、今風じゃないけど可愛くて…………。私の恋人にソックリなんです。………だから、こんなところ、触らせてるんですよ。…………本当だったら、私の体は、髪の毛から足の爪まで、ぜんぶぜんぶ、恋人の明道のものなんです。…………でもあまりにも、その明道に、貴方がそっくりだから………………。ゴメンなさい。勝手なことばっかり…………」

 彼女のアナルを解してあげているつもりが、明道が気がついた時、彼は左手の薬指を智世のお尻の穴の中に入れていた。ローションの助けと、彼女のリラックスもあってか、薬指は根元まで、すんなりとお尻の穴に収まっている。トモヨの括約筋がキュッと締まると、まるで左手の薬指を、温かい指輪が締めつけたような感触になった。

。。。

 散々、女の子たちを『ビーチ』で弄んで、ベタベタになった体をお風呂でギュウギュウになって洗いあって、トオルは彼女たちに『ビーチでの出来事は夢』という暗示を与えて、家に帰した。明道はその後、夜の3時まで智世の家で、彼女と熱烈なセックスをした。疲れ果てて、彼女の家に泊った明道が、次の日、土曜の朝にリビング・ダイニングルームに降りてくると、トモヨは朝っぱらから、高級料理のオードブルを作って待っていた。

「ちょ………っと…………頑張りすぎちゃった。…………………明道、食べてよ。アンタ、食欲無限でしょ?」

 エプロンの下には、服も下着もつけていないトモヨ。目の下には薄っすらとクマが出来ていて、寝不足を物語っていた。それでも媚びた笑顔と、いつもとは違った女の子らしい、可愛げ前回のポーズで、明道を食卓につかせようとするトモヨ。微妙な表情で着席した明道の肩を後から両手で揉み始めるトモヨ。どうやら、ものすごく後ろめたいことでもあるような様子だった。

「…………あ……………。もしかしてトモヨ…………………。夢の中で浮気とかして、俺に申し訳ないとか思ってる? ………だったら、全然気にしないでいい………か………うぉっ」

 後から顔を回り込ませて、明道の口を自分の唇で塞ぐトモヨ。図星のようだった。

「明道……………。ほんっと、ゴメンなさい。…………………すごく変な夢だったの。私…………どうにもならなくて…………仕方ないから…………大事なところは守ったんだけど…………でも………………。もう、夢の中でも、浮気とか絶対しません。捨てないでくださいっ」

 キスの後は跪いて土下座するトモヨ。エプロンからは形の良い胸の谷間が覗く。本当に申し訳なさそうにペコペコしている、どこまでも素直な恋人の姿を見ていると、明道の方が胸が痛むのだった。

。。。

 和泉家に女の子やお姉さんを10人も連れ込んで、サバイバルゲームをしたこともあった。

「皆の銃はオッパイに装着されているんだよ。敵がいたら撃っちゃって良いんだ。撃たれて、弾が当たったと思った人は、その場で普段の何倍ものエクスタシーを浴びて失神しちゃうからね」

 トオルがそう言うのを聞くと、ショーツ1枚だけを身にまとった女性たちは、2チームに分かれて、急いで四散する。ドアの影やクローゼット、ベッドの下やキッチンカウンターの裏側などに身を隠す。赤やピンク系のショーツを穿いた女の子たちと青や水色系のショーツを穿いた子たち。敵チームのメンバーに遭遇すると、慌てて自分のオッパイを手で支えて、乳首を標的に向けて銃声を口で真似る。反動のせいか、オッパイが揺れる。けれどやっている女の子たちの表情は必死そのものだ。

「バキューン、バキューンッ」

「ダダダダダダダッ」

「ターンッ」

 口で可愛らしく銃声を真似ながら、女の子たちが物陰から裸の身を乗り出しては、オッパイを相手に向けて、撃つような仕草をして、また身を隠す。当人たちは真剣そのものといった表情でやっているのが、健気で微笑ましい。早撃ちで敵チームにダメージを与えていくのはトモヨ。ショーツ1枚の姿に、テンガロンハットをかぶっていた。そしてリビングの中央では、お餅のように白くて柔らかそうなオッパイを連続で揺すりながら、周囲にスプリンクラーのように『銃弾の雨を振り撒き散らしている』、水谷先生の姿があった。まるで百戦錬磨のベテラン戦士のようだった。

。。。

 明道が学校で廊下を歩いている時など、ふと見覚えのある下級生の女の子とすれ違うことがある。「あぁ、あの子か………。アンダーヘアの薄い………」とか、「オナニーが結構激しかった子だな」とか、裸の彼女たちを思い浮かべて、ようやく顔と記憶が一致する。明道の家やトモヨの家に招かれて、トオルやトモヨの催眠術に導かれて、全裸で走り回ったり、明道やトオルと体を重ねたことのある子たちだ。今では、全部でどれくらいいるのだろう? ………あるタイミングから、明道は数えるのを諦めてしまっていた。

。。。

 トオルの気まぐれで、明道やトモヨ、そして可愛い女の子たちが心と体に『オルガズム・ロック』をかけられてしまったことがある。イクことが出来なくなる鍵だ。その晩も明道とトモヨは、明道の部屋のベッドで抱き合って体を繋げる。腰を振っているうちに、イキそうになる。

「…………もう……そろそろ……だろ……」

「ん…………メールしないと………」

 トモヨが明道と結合したまま、枕元にあった携帯を手にしてトオルにメールをする。今どこで、どんなことをしていてイキそうかを伝えて、イっても良いかどうか、トオルにお伺いをたてるのだ。そしてトオルからの返信を待つ。許可をもらえるまで、2人は『イク寸前』の状態のまま、お預けを食らってしまっているのだ。あともう、ほんの僅かな刺激で簡単にイキそうという状態のまま、懸命に腰を振りながら、トオルの返信を待っている。その日は、どうやらトオルが自宅でゲームをやっていて寝落ちしてしまったらしく、深夜まで、明道とトモヨはおかしくなりそうな精神状態で性器を擦りつけ合って、『お許し』を待たなければならなかった。2時過ぎくらいだろうか? トオルの「ゴメンねメール」と許可が送られてきて、2人は爆ぜるようにイッた。そしてそのままベッドに倒れこみ。下半身が繋がったままの状態で、卒倒するように寝た。

 次の日、おぼつかない足取りで登校すると、学校にはちらほら、ルックスの良い女子が、ひどい寝不足の様子で校内を徘徊している。きっとトオルのオナニー暗示と、イケない鍵をかけられて、明道たち同様に放っておかれてしまったのだろう。さらには、休み時間に明道が廊下を歩いていると、やはり寝不足で夢うつつといった様子の、水谷先生がボーっと歩いていた。明道はふと、彼女の目を覚まさせてあげることを思いついた。

「先生。お正月が来たら、お餅とか、カズノコとか、目一杯食べて、鞠をついたりして遊びたいっすね」

「えっ! …………なんでっ? …………………………………あ……………あぁ……………。そう…………ね………」

 雷に打たれたかのように飛び上がった、真面目でお淑やかな美人教師は、我に返って、適当なあいづちをうちながらも、自分の胸と腰回りを守るかのように腕で抱く。立ち去る明道をまだ不安そうに見送っているけれど、彼女の目は、すっかり覚めたようだった。

。。。

「………そろそろかな………って思って、……………最初に明道君に伝えに来たんだ」

 明道の家を訪ねてきたトオルは、ずいぶんとサバサバした表情をしていた。少し高めに外れた、歌うようなトーンの喋り方は、いつも通りだ。

 明道が今も鮮明に覚えているその日は、唐突にやってきた。

「明道君。僕ね、家を出る。転校して、どこか君たちも知らない街に行こうと思うんだ」

「は? …………なんでまた、そんなこと急に…………。何か、ここで、気に食わないことでもあんのかよ」

 明道は怪訝な顔を隠さずに聞く。トオルの周りは今では大人も子供も、生徒も先生も大概は彼の催眠術の支配下にある。思ったことは何でも、トオルの思い通りに出来ている。少なくとも、明道からはそう見えていたからだ。

「まぁ………ここで出来ることは、大体、やりつくしたかなって。…………これ以上、あれこれ弄っても、目新しいことは、そんなにないかもって、思ってね」

 こともなげに、トオルは言ってのける。明道は悲しそうな顔を、そのまま見せた。

「飽きたってこと? …………俺やトモヨも含めて…………」

 明道にそう言われると、トオルも少しだけ微笑みを弱くして、真面目っぽい顔を作った。

「まだそうじゃない。………でも、飽きる予感みたいなものは、感じたんだよね…………。だから、本格的に飽きちゃうより前に、君たちと距離を取った方が良いと思う。お互いにね。……………壊す面白さくらいしか残んなくなるまで、遊んでても、………良いこと無いと思うし……………ね」

 椅子から立ち上がって、明道はトオルの前に立った。最初にあった頃よりも、背が伸びたように思える。年下の友だちだけど、確かに最初の印象よりも、成長していた。成長してしまっていた。ふざけたような態度と姿勢で立っているけれど、目に自信がこもっている。散々、催眠術の世界を調べ上げて、身にしてきたからだろう。

「………で、俺たちをただ置き去りにして、行っちゃうっていうのか? …………寂しいじゃないか。俺たち、結構良いチームだと思うんだけどな」

「………ん…………。そこは、僕もそう思う………。だから、申し訳ないんだけど、明道君には、もうちょっと迷惑をかけさせてもらおうと思う」

 パチパチと瞬きをしながら、トオルは明道の顔を覗きこむようにして見ている。

「なんだよ」

 こういう時の、トオルは、何か突拍子もないことを言ってきそうで、少し怖い。明道は小さく唾を飲み込んだ後で、トオルの答えを待った。

「僕は自分を作り替えて、本当に日本のどこでも、1人でも生きていける人間になりたい。催眠術のことをもっといろんな形で知りながら、必要に応じて周りを操って、大きな問題は起こさない程度に、ちょこちょこと場所を変えながら、自由に気ままに生きていきたい。だけど、僕という器の中にいる限りは、いつかそれが破綻しそうな気がしてるんだ。プログラム量とサーバー容量のミスマッチっていうところかな…………。だから僕は、別人になる。三雲亨っていう人間の器に刻みこまれてきた、読書障害とかコミュニケーション障害とかの特徴も、人格上の脆弱性も、器を一新する時に、大掛かりに変更する。ちっちゃなパッチを当てて応急処置をしていくんじゃなくて………。わかるかな?」

「わからん」

 明道は素直に答えた。

「…………それでこそ、明道君だよ。………だから、僕が、これから新しい、『和泉アキミチ』として、新しい街で生きていく」

「俺が2人になるっていうことか? 2人で試合に出たら、さすがに反則負けになりそうだな………」

「君は一旦、三雲亨になってよ。………もちろん、コミュニケーション障害を持ったひ弱な引きこもりになって欲しいっていう訳じゃない。新しいトオルとして、徐々に元の君になっていけばいいから」

「そんなこと、お前に決める権利があるのか?」

「…………んん。権利のことはわからないな。ただ、決める能力と技能があるっていうだけだよ。…………けど、僕はただ君のアイデンティティを盗んでいくだけじゃない。智世さんを残していくよ。君は一生、智世さんと添い遂げることが出来る。僕の催眠術がなかったら、得られなかったかもしれないものを、その手に握ったままにすることが出来るんだ。悪い取引じゃ、ないと思うんだけどな…………」

「悪いな」

「…………見解の相違かな…………。合意しなくても、別に良いんだけど」

 年下の友人が指を鳴らそうと手を上げるのを予測して、先に自分から手を上げた。

「2つ、質問がある。………それくらい、正直に答えてくれても良いだろ?」

 友人はウンともイヤとも言わずに、ただ肩をすくめて微笑んだ。

「なんで、俺の名前を奪っていくんだ? …………お前の技術だったら、別に自分で思いついた新しい名前とか、もっと格好いいヒーローとかから取った名前とか使って、なりたい自分になれるんじゃないのか?」

 しばらく沈黙した後で、彼は微笑んだ。

「一番最初に習ったんだ。『象徴性』ってすごく大事。イメージを喚起させて、心を惹きつける錨のようなもの。色んな意味を抱えて繋ぐもの。………『アキミチ』って、それが凄く強いんだ。…………僕だけにとってかもしれないけれど」

 それだけ言うと、彼はこちらに背中を向ける。

「最後にもう1個、答えろよ。お前は、特別で圧倒的で、絶対的な存在になろうとしているんだろうけど、本当にそんなことって、必要か? 俺たちと一緒にいて、ごく普通の兄ちゃんとして、普通を加速させていって、そのへんの真人間として生きることだって、今のお前には、出来ると思うぞ。そっちへの努力だったら、俺たちも、もっともっと、手助け出来ると思う。………本気だぞ」

 部屋を歩き去ろうとしていた、ヒョロッとした体格の年下の男は、本当に最後に1回、こちらを振り返った。珍しく、いくつもの相反する感情がゴッチャに入り混じったような、表情になっていた。

「短い間だったけれど、色んな観察をしたから、普通の男子女子のこの先は、もうさすがに見通せてるよ。ごく普通の男子、三雲亨は、ごく普通に仲間の和泉明道、高辻智世と三角関係になり、ごく普通に揉めたり疎遠になったりしながら、後から学生時代のことを美化しながら懐かしんだり、正当化したりする。…………そういうのは、僕はいいよ」

 そこまで言うと、こちらに後頭部を向けた。肩越しに指を鳴らす。

「…………それじゃぁ、智世さんの記憶を弄ってくるね。その後で、もう一回、君にも会うよ。冷静に色んな暗示の統合状態を確かめないと、色々バグも出そうだし………。家族や先生、部員と親友くらいは、僕が責任をもって記憶書き換えるから。悪いけど、その他のフォローはよろしくね。……………大丈夫。君たちはもう、一流の催眠術師と言って良いと思うよ。2人で協力すれば、住んでる世界くらいは書き換えられると思う」

 そう言った彼、自称『新アキミチ』が部屋から出て行った後には、その部屋には新『トオル』しか残されていなかった。『トオル』は、『アキミチ』がいなくなった後の部屋が、こんなに広かったことに、驚いていた。

。。。

 和泉明道は家出した。彼の両親はとても落胆して、その行方を追っていたようだが、その様子はどこか諦めとか悟りの境地にも似ていた。やがて半年後に、その夫婦は、いなくなってしまった息子の親友だった、三雲亨を養子に向かえる。亨の家庭にとても複雑な事情があって、彼が預けられている家でも馴染めていないことを知っていたからだ。関係者が全員アッサリと合意したので、『トオル』は和泉家の子供になった。もちろん、法的な裏付けが全て整ったのは、もっと後のことだったが、実態としては家族として一緒に暮らし始めた。その様子は、近所の人や高校の新しい友人が見る限り、どう見ても本当に血の繋がった家族の生活のようだった。

 和泉『トオル』は高辻智世と交際を続ける。大学を卒業して、就職してから2年後に、智世と結婚した。柄にもなく、デート中にサプライズでプロポーズしたトオルに、舞い上がった智世が抱きつき、キスをした。そのあと、本当の本当に舞い上がってしまった智世は、両手をパタパタと羽ばたかせながら、トオルの周りをグルグルまわり、嬉しそうにピーピーさえずり始めて、彼を慌てさせた。

 子供のころから夢だった心理カウンセラーの仕事に就いた智世は、予定よりも早い妊娠がわかって、休職する。けれど勤めている心療所は、育児が落ち着いたら彼女が復職できるようにと、手続きをしてくれる予定だ。

 子供には「優芽」という名前を付けた。智世が「夢かユングのどっちかにしよう」と言い出したので、「ゆめ」をトオルが選んだ。「夢」という字を使わなかったのは、朝になって急にいなくなったりしたら、大変だから………、とトオルが言うと、智世も納得した。ママ友たちはその話を聞くと笑うそうだけれど、智世はちゃんと、わかってくれているようだ。トオルにも智世にもかつて、学生時代に急に親友が一人、いなくなってしまったことがあったから。

 その『アキミチ』とは、会っていない。トオルと智世が結婚式を挙げた森の小さな教会に、名乗らずに来たヒョロッとした参列者がいたと聞いたのが、あれ以来得た『アキミチ』の唯一の痕跡かもしれない。その男は、そこそこのご祝儀を受付担当の友人に渡した後で、智世の手作りケーキを食べて、去っていったそうだ。受付の友人が困って教えてくれたものの、その時の新郎新婦は、ファイアーダンスに集中していて、うまく相談が繋がらなかったのだった。

 仕事はなかなか忙しくて、子育ても思った以上に大変で、今、トオルと智世は、正直なところ、しんどい状況を耐えている。智世が『アキミチ』という昔の友人のことを口にする時、それは結構彼女が落ち込んでいたり、空元気で突っ走っている時だ。トオルはそれを、古い友人からのサインのように受け取っている。

 それでも、家族3人での生活は、濃密な喜びも与えてくれる。だから『トオル』は、かつての年下の友人と、TVゲームで戦っているかのように、めげずに頑張ろうと思う。自分が智世の『愛』を得るようになった、中学校の時の経緯は変えることは出来ないが、いつか彼に、「お前の催眠術が無かったとしても、トモヨは俺に惚れていたはずだぜ」と言えるような、立派な夫、父親になれていたら………。『アキミチ』との戦いは、勝ちとまではいかなくても、引き分けで延長戦くらいまでには持ち込めるのではないだろうか、と、若干、都合良く、考えてもいる。

 娘を寝かしつけようとしたまま、妻も一緒に寝てしまったようなので、『トオル』はリビングの灯りも消すことにした。リビングのドアを開けて、玄関に繋がる廊下の電気も消す時に、ふと玄関のドアを見て、小さな溜息をつく。

 まったく『アキミチ』は今頃、どこで何をしているのだろうか。青い鳥は、はじまりの頃からずっと、ここにいてくれているというのに………。

<終わり>

2件のコメント

  1. 読ませていただきましたでよ~。
    なんというかしんみりとした読後感。

    二人から離れたのは亨くんのやさしさなのかもでぅけど、寂しいでぅね。
    27歳の二人の前に現れて智世さんを奪っていくなんて言う誰得展開もちょっとだけ心配していましたけど、そんなこともなく安心しましたでよw

    今回は智世ちゃんの部屋で女の子たちといろいろやってたのが素晴らしかったのでぅ。
    亨くんが一人になったあとで色んな女の子に催眠をかけて家を渡り歩いてる話を読みたいなー(なー、なー、なー)

    であ、今度こそ次は夏ということでぅね。
    楽しみにしていますでよ~。

  2. 아니 정말로 끝??? 다시 6개월을 기다려야하다니…..

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