催眠塾 第十話

連鎖反応

 チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン……。
 私が大学から帰ってき来ると、そのタイミングを待っていたかのように携帯が鳴った。
 一色ビオラ……私が家庭教師をしているすみれちゃんのお母さんだ。

「はい、もしもし。いつもお世話になっています」
「椿先生。大変申し上げにくい事なのですが……」
「なんでしょう?」
「あの、家庭教師の方、今月で終わりにしていただけないでしょうか?」
 突然の事に急に目の前が真っ暗になる。後頭部をハンマーで殴られたようにくらくらする。
「な、なんででしょう?私、何か悪い事でもしましたか?」
「いえ、そう言うわけではありませんが……娘がどうしても勉強は塾でしたいと言い出しまして」
「そ、そうですか……。それで、どちらの塾なんですか?」
「小花学習塾と言う所で……急なことで大変申し訳ありません」
「い、いえいえ、お気になさらずに……それでは」

 ぴっ。
 私は携帯を切る。
 私は個人契約で家庭教師をしている。このアパートの家賃の為に。駅もコンビニも近くてけっこう広い。その代わり、仕送りだけでは全然足りない。今では学業よりもバイトのほうがメインになっている。
 悪い事は重なるもので、私が教える生徒はいなくなってしまった。
 一人目は父親の仕事の都合で転校となった。二人目は離婚騒動。家庭内でごたごたがあって、母親と共に実家に帰っていった。
 そして、三人目は塾に取られた。
 今月だけで、一気に仕事が無くなってしまった。

 ぼふっ……。
 私はベッドに突っ伏した。新しい生徒を探すか、新しいバイトを探すか……。どっちが良いのだろう?
 個人家庭教師の派遣会社でも、どうもこの辺りの応募人数が減っているみたいだし……。その小花学習塾とやらが何か関係しているのかな?考えすぎか。

 私は今日買ってきたばかりの雑誌をぺらぺらと読み始めた。
 学習塾の求人広告?小花学習塾!?
 ここって、すみれちゃんがどうしても行きたいって言ってた所……。大学生のバイトも可だし、行ってみるか。すみれちゃんがどうしても行きたいと言っていた理由もわかるかもしれないし。

 とぅるるるるるるるるる……。
 求人広告に書いてある電話番号にコールしてみた。
「はい、小花学習塾です」
 若い男の人の声。
「あの、求人広告を見てお電話させていただいたのですけど」
「あ、はい、わかりました。失礼ですけど、お名前と年齢と現在の職業をお願いします」
「はい、椿可憐と言います。現在二十一歳で大学三年生です」
「それでは、明日は都合良いですか?」
「はい、えーと……午後三時以降なら大丈夫です」
「それでは、写真付きの履歴書と身分証明書、印鑑と筆記用具を持って四時にこちらまでいらしてください。場所はわかりますか?」
「はい、大丈夫です」
「それでは、お待ちしています」

 私は急いでコンビニで履歴書を買い、外においてある自動写真機で証明写真を撮った。
 履歴書に書き込み、写真を貼って、準備完了。採用されると、良いんだけど……。

 学校から直接、時間を合わせて面接の場所に向かった。
 小花学習塾……。駅から近くてビルそのものが塾で非常にわかりやすい。と言うか、これだけ大きな塾、いつ出来たんだろう……。もしかすると、生徒を全部取られているんじゃないかな?
 自動ドアを抜け、私は塾の中に入った。
「あの、どちら様でしょう?」
 受付の女性が声をかけてくる。美しい人だ。ネームプレートには『春日小百合』とある。
「あ、申し訳ありません。本日アルバイトの面接に来ました椿可憐といいます」
「はい、伺っております。こちらで少々お待ちください」

 通された部屋には空か海をイメージするような薄い青の壁紙がはられ、白いテーブルが1個真ん中においてあり、大きめのテレビとDVDレコーダーが置いてあった。
 私が部屋を見まわしていると、ノックの音が飛びこんできた。
 がちゃ。
 扉が開き、若い男の人が中に入ってきた。面接官だろうか?
「はじめまして、私はこの塾の塾長で小花切雄と言います。それでは面接をはじめさせていただきます。履歴書、いいですか?」
「あ、はい」
 私はバッグから履歴書を取り出した。こんなに若いのにこん何大きい塾の塾長だなんて、相当できる人なんだろう。
「まず最初に、この塾について説明させていただきます。椅子をもって、テレビの前に移動してください」
 私は椅子をもってテレビの前に移動する。
 塾長がテレビの電源を入れ、DVDを再生した。
 塾の施設、ポリシー、教育方針……。良い塾じゃない。これは負けちゃうわ……。家庭教師の依頼が減るわけだ。
 一通りの説明が終わると、画面が暗くなりカラフルな線が画面を這い回る。
 終わったのかな……。あ、あれ?目が離せない……。
 ボールが跳ねるごとに、目の前がだんだんと暗くなっていく……身体から力が抜けていく……。何か変……だ……。

「椿さん、私の声が聞こえますか?」
 き……こえる……。私は声を出そうとしたけれど、ものすごく面倒くさくなって小さく頷いた。
「椿さん、私の質問にはきちんと答えてくださいね。この塾を選んだ理由は何ですか?」
 私はなんとか声を絞り出すようにして答えた。
「ひ……とに教えるのが好きで……偶然求人広告を見かけたのと……私が家庭教師をやっていたときの生徒が……どうしてもこの塾に行きたいと言い出したから……理由が知りたくて……」
「そうですか……ところで、就職は決まっているの?どこか行きたい所はあるの?」
「いえ……まだです。特に行きたい会社も見つかっていません……」
「それでは、ここに就職したいと思いますか?」
 私は少し考えた。設備も良い、自分の好きな事も出来る。でも……。
「まだ、よくわかりません」
 そう簡単に決められる事じゃない。けど、ここなら悪くないかなって思う。
 小花塾長が履歴書に目を通している。何か気になるところでもあるのかな?
「椿さんは子供は好きかい?」
「好き、です……かわいいですし……」
 そうじゃなかったら、応募なんてしない。
「ところで椿さんは会計はできます?」
「……会計学の基礎の単位は取りました。あとはまだ、です……」
「そうですか……。では、彼氏はいますか?」
 何でこんな事を聞くのだろう?関係の無い事だと思うのに……。でも……。
「いま……せん……」
「それじゃあ、セックスはした事ない?」
「ない……です」
「オナニーは何回位するの?」
 何でそんな事を……。
「月に……三回か四回くらい……です……」
「そんなにしないんだね」
「そう……なんですか?」
「まぁ、私は女性のオナニーの回数については詳しくないけどね。でもこの仕事は処女じゃつとまらないからね」
 え?処女じゃだめって、なんで?
「処女喪失に、はじめてのセックスにしたいシチュエーションとかってある?」
 恥ずかしい……。けど、答えないと……。
「彼氏と……彼氏の家でも、私の家でも……ホテルじゃなくって……えっちしたい、です……彼氏、いないですけど」
「それじゃあ、まずは彼氏を作らないとね……家にDVDプレイヤーはある?ビデオカメラは?」
「えぇと……。DVDプレイヤーはありません。けど、ノートパソコンならあります。DVDも一応見られます。カメラはありません……」
「う~ん、テレビはあるよね。一応、DVDプレイヤーとカメラを買って、それから……」
 えっ、それって……でもそれだと……。
「はい、わかりました……」
「あ、購入にかかったお金は後で出してあげるから。できるだけ高画質で取れるのを選んだほうがいいよ」
「はい……」
「それじゃあ、三つ数えると目を覚まします。ここであった出来事はすべて忘れます。椿さんは面接に来ただけです。それと、他のバイトは探さないように。それとこのDVDを貸しますので毎日見るように」
 私は頷く。
「それじゃあ、1……2……」
 頭の中のもやもやが晴れていく……。暗く沈んでいた場所から徐々に浮き上がっていくようなそんな感覚。
「3!!」
 あ、あれ?私、どうしてたんだろう?
「椿さん、履歴書の方、お預かりします。詳細は追って報告いたします」
「あ、はい。よろしくお願いします」
 私は塾の面接を終えた帰り道、電気屋に寄ってカメラとDVDプレイヤーを物色していた。

 テレビ画面には七色の線が蠢き、ボールが飛び跳ねている。
 くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ……。
 私は塾に面接にいったあの日から毎日ビデオを見ながらオナニーをしている。ビデオを見ているとふわっとして、ボーっとして、すごくきもちいい。
-塾へのバイトが決まるまでこれから毎日、ビデオを見ながらオナニーをする事-
 そんな言葉が頭をリフレインする。面接に行ってからもう二ヶ月。毎日ビデオが再生終了するまで続ける。大体、2、3回イくまで止まらないかな?
「んっ、あ……」
 もう自然に声が出る。今までやっていたオナニーより格段にきもちいい。
 DVDが止まる。私は手を止める。
「はぁ、はぁ……」
 DVDを取りだしてケースにしまう。白いレーベルにVer3.4とだけ書かれている。
 私は下着を正して服を着る。今日は『彼氏』が家に遊びに来るの。はじめてのえっちをする事になっているの。今から凄くどきどきする。早く来てくれないかなぁ。
 『彼氏』とは写真で一目見てホレちゃって私から誘っちゃったの。恥ずかしかったけど、頼んでみたらOKもらえたの。
 今日のために買った下着と服。身だしなみをチェックして、お化粧もする。ああ、早く来ないかなぁ。お茶を飲んで落ち着く。
 ぴんぽーん。
 来た!?
「宅配便でーす。ハンコかサインお願いします」
「あ、はいー。ちょっと待ってください」
 さらさらさら……。
 私はサインをして荷物を受け取る。
「ありがとうございました」
「お疲れ様です」
 やっと来た。待ってたよー。
 私は部屋に戻って梱包を解いた。
 中からはピンク色の子供の腕くらいの太さがあるバイブが出てきた。
「あぁ……待っていたの。早く……あなたとセックスしたいの……」
 『彼氏』がやっと来てくれた。えっちする前に準備をしておいたカメラの確認をする。
 ベッドに向けたカメラがちゃんと私達を写してくれるかどうかの確認をする。うん、大丈夫。私達のはじめてだからね、ちゃんときれいに撮って残しておかないと、ね。
 この日のためにわざわざビデオカメラを買ったんだから。奮発して高画質のハードディスク内蔵のカメラを買ったの。十万近くかかったけどね。

 私はカメラの録画スイッチを入れる。一応バッテリーは満タンに充電してあるけど、コードをつないでハードディスクが尽きるまで七時間撮りつづける事が可能。
 はじめてのえっち、ドキドキする。
「はっ、はじめまして……。今日ははじめてえっちします。みっ、見ててください……」
 んっ、はぁ……。
 ぴちゃ、ぴちゅ、くちゅ……。
 上着をはだけて自分のおっぱいを揉みながら『彼自身』をフェラチオする。
 バナナやキュウリ、ソーセージでフェラチオの練習してきたんだ。気持ち良くなってもらうんだって。
「んっ、あぁっ……」
 まだ、下は触ってもいないのに気持ち良くなってきた。愛があると触れ合っているだけできもちいいんだ……。
「見て……私のおっぱい……」
 胸をはだけて『彼自身』を胸に挟んでカメラに向かってにっこりと微笑んでみる。
「あんっ、んっ……」
 私は唾液で『彼自身』をとろとろにして、スカートをめくってパンツに押し当てた。
「ひ、う……う、動いて……」
 私は『彼』の突起を軽く扱いた。
「ひ、あ、あぁ……」
 ぶーん……。
 低い振動音と共に私に快感が走る。まだ……『彼』はゆっくり、弱くしか動いていない。
「あ、あ、あ……。もっと、もっと激しくぅ……」
 私は『彼のモノ』をもう少し扱く。『彼』スピードが少し早くなる。
「あひぃ!!いいのぉ!!早く、膣に挿れてほしいのぉ!!」
 私は待ちきれなくなって服に手をかける。それでも、記録に残るものだから、残り少ない理性でカメラのほうを向きながら脱いだ。
「あ……あ……。私、これから『彼』にはじめてを捧げます」
 今日のために私はピルを飲みつづけてきた。『彼』との赤ちゃんを作るのはまだ早いから。
 私は『彼』に手で触れる。『彼』の動きが止まる。私は『彼』をヴァギナにあてがうと、ゆっくりと挿入した。
「ひっ、い……おおきぃ……きつぅい……いぃったぃ……」
 ぷちんっ、と言う音が頭の中で響いた気がした。
 『彼』に処女を捧げられたんだ、嬉しい……。痛みよりも気持ちよさと幸福感がある。幸せ……。
 私の股から処女だった証の赤い血がうっすらと滴り落ちる。
「ふっ、あぁ……奥まで挿ったよ……うっごいって……」
 『彼』を強く扱く。
 ぶいいいいいぃぃぃん……!!
「っはああああ!!はげっしいい!!いいよぉ!!あっ、ああっ!!もっと、強くしてぇ!!」
 私は『彼』を強く握りしめる。
 ぶいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃい……!!
「はっああああぁ……いいよぉ、嬉しい……」
 ぽろりと涙が零れ落ちる。
 痛みのせいじゃない、喜びの涙だ。
 私は色々とポーズを変え、彼とのはじめてのえっちを満喫した。
 最後に『彼自身』を舐めてきれいにしてあげる。
「最後まで、付き合ってくれてありがとう」
 私は『彼』にお礼を言うと、カメラのスイッチを切った。
 『彼』を箱の中にしまうと、服を着なおして、ビデオカメラを持って塾へ向かった。
 明日からは正式に塾でお仕事もあるし、打ち合わせも兼ねて、だけどね。
 私と『彼』との初えっちを編集して知らない人でもみんなに見てもらえる様にしてくれるんだって。ちょっと恥ずかしいけど、みんなが見てくれるなんて嬉しいかも。

< 続く >

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