世界を握れ 第三章 その2

第三章 その2

 3時間目と4時間目は、感覚や感情との『連動』を我尽は世良に見せるつもりのようだ。おそらく、本来はそれらが『連動』のもっとも基本的な使い方なのだろう。

 それを理解する事と3人の女生徒を選ぶ事が、この時間世良がやるべきことだ。
 我尽の目的を考えれば気前の良い話だと世良は思うのだが、我尽がただ自分にサービスしている訳では無いだろうという事には、察しが着いていた。

 理由の1つは、単純に労働力が足りないため。我尽の右腕としてあの地下秘密基地で充分に働くには、直属の部下が清美一人と言うのは、少なすぎる。
 もう1つの理由は、万が一にも世良が清美に入れあげないようにするためだろう。部下兼奴隷の女が何人か増えれば、その危険性はより低くなる。

 実際清美の事を世良は気に入っているし、その我尽の危惧は分からなくもない。なら、世良の機嫌も取れて労働力も補充でき、危険性をゼロに近くできるこのサービスは、双方にとって都合が良い。

『我尽さんが僕の事を評価してくれているって言うのも本当だろうけど・・・遊びながらこんな事を考えられる神経がすごいな』
 胸の内で、世良はそう呟いた。

「さて世良、たしか次来る教師たちの中は悪かったんだよな?」
「えっ・・・ああ、はい。大学時代の同期みたいですけど、性格が合わないみたいですよ」
 次は、我尽の都合により二人の教師による保険体育の合同授業と言う事になっている。もちろん教師は二人とも女性だ。

「じゃあ、今のうちから準備しておくか。
 千枝子、香苗とレズプレイをしろ」
 唐突に命令されて、二人は戸惑った様子だったが、元々カップルだったこの二人が拒否するはずは無い。

 二人は前座のつもりか、濃厚なキスをしながらお互いの乳房を愛撫しあう。我尽は二人の様子をしばらく観察していたが、すぐに視線を前に戻した。丁度教師二人が教室に入ってきたのだ。
「さぁー皆、大人の教える保険体育の時間よーっ」
「百瀬先生、そんな言い方をしないでください。教師が教えるんだから、嘘ではないですけど」

 最初に入ってきたのは、山岸胡桃。緩くウェーブが入った髪の美人で、黙っていればお淑やかそうに見える。しかし、実際はけっこう砕けた性格で、生徒の人気は高いが生徒指導の教師(清美)や生真面目な性格の教師とは、仲が悪い。
 続いて入ってきたのがその生真面目な性格の教師、村瀬良子。体育教師で、日頃からジャージの上下を着用しているがそれでも男子に人気が高いのは、バランスの取れたスタイルと美貌のおかげだろう。

 本来なら、良子が授業そっちのけで雑談や自分の恋愛経験を話して聞かせたり、それを胡桃が注意したりする授業風景が展開されるのかもしれないが、我尽の操作によって二人とも普通に授業を進めようとする。
 だが、我尽が今更普通の授業などさせるはずが無い。

「まずは、感情の連動だ。よく見て置けよ」
 我尽が教壇の前の良子と胡桃に手を向けた。その途端、良子の挙動に変化が現れた。それまでは二人の間にある種の緊張感が漂っていたが、今の良子は胡桃にちらちらと視線を向けて、慌てて逸らしたり、近づこうとして躊躇ったりと言う事を繰り返している。

「世良、清美に香苗を千枝子から引き離すように命令しろ。俺からの指示だと、決して香苗に言わないよう口止めしてからな」
「分かりました」
 我尽の耳打ちに小声で返し、世良は清美に言われた通りの命令を下す。我尽はその間に、幸に千枝子を香苗から引き剥がすよう命令していた。もちろん、それが我尽の命令だと千枝子に言わないように、口止めしてから。

「えっ? 何? 何で」
「ちょっと、何するのよっ!?」
 戸惑いながら、引き剥がされる二人。香苗は、邪魔をされて早くも怒りを滲ませている。
「ごめんなさい、でも仕方ないのよ」
「そうなの。邪魔しちゃってごめんね、お姉ちゃん」

「ごめんなさいって・・・これは我尽さまからの命令なのっ! あたしと千枝子が気持ち良くならなきゃいけないんだからっ!?」
「お願いっ、放してっ、放してよぉっ! まだ私、香苗と気持ち良くなりたいのっ!」
 何とか障害を振りほどこうと二人はするが、清美も幸もびくともしない。我尽が幸と清美の腕力を、強化しているからだろう。

 世良は撮影の指示を手で出しながら、首を傾げていた。2人のレズプレイを止めさせたいのなら、我尽が直接2人に命令すれば、すぐにあの2人は止めたはずなのにと。

 しかし、それがきっかけになったかのようなタイミングで、良子が行動を起こした。チョークで、黒板に教科書の内容を書き写していた胡桃の後ろから、胸に手を回したのだ。

「ちょっ、ちょっと何!? 何してんのよっ」
 やわやわと、胸を愛撫されて胡桃が戸惑いの声を上げる。仲の良い女友達なら、ふざけてこんな事もするかもしれない。しかし、生真面目で自分との仲は友好的ではない胡桃が突然、しかもこんな事をするなんて胡桃にとって想定の外だっただろう。

「良く分からないの・・・」
 驚きと戸惑いで抵抗することを忘れている胡桃に、赤く染まった頬と潤んだ瞳で、良子が口を開いた。
「突然あなたが愛おしくなって・・・それだけで胸が一杯だったんだけど、急にあなたの胸を触りたくてたまらなくなったのっ!」
 良子の愛撫が、だんだん激しくなっていく。傍から見ても乱暴だと気がつくくらいに。

「いっ、愛しいってあたしにその気は・・・やめっ・・・!」
 胡桃は尋常ではない良子の様子に、慌てて逃れようとする。しかし、後ろから抱きつかれている上元々体力でも胡桃は劣っているため、胡桃の腕から逃れられないでいる。

 その様子を見ながら、我尽が振り返らずに背後の香苗と千枝子に黙るよう、命令した。
「さては・・・百瀬先生の感情に、香苗さんか千枝子さんの感情と『連動』させたんでしょう?」
「正確には、感情だけじゃなくて欲求とも『連動』させた後、その欲求を向けるべき相手を良子だと『誤認』させたんだけどな。
 そしてこうすれば・・・」

 世良へ答えを教えながら、我尽が再び術をかける。その途端、良子の抵抗は力を失ってしまう。それどころか、胡桃の乱暴な愛撫を彼女は受け入れた。
「あたし、あたしも良子に触って欲しい・・・。でも、おっぱいだけなんて我慢できないっ! あそこもお尻も全部気持ち良くして欲しいっ、 あたしも胡桃の事気持ち良くするから、お願いっ!」
「嬉しいっ・・・ 私も胡桃に気持ちよくして欲しかったのっ!」

「即席のレズビアンカップルの出来上がりだ。まあ、普通にやったんじゃぁ、ここまで激しくは出来ないが」
「香苗さん達をその気にさせた後、引き剥がしたから元の欲求がましてああなった訳ですね。なるほど・・・」
 我尽と世良が話している間にも、即席で作られたレズカップルの行為はエスカレートしていった。授業そっちのけだが、これも保健体育の一環と2人は解釈したようだ。
 良子が胡桃のスカートを捲り上げ、ショーツの中に手を入れると、胡桃が小さく悲鳴を上げた。

「待ってっ。あたし・・・実は初めてで・・・お願い・・・優しくして」
「そうなのっ!? 散々遊んでるみたいに話して私の事『そんなだから男の一人も出来ないのよ』って、からかってたのに・・・」
 驚愕の告白に目を見開いたが、良子はすぐに『でも、可愛いから許してあげる』と囁くと、胡桃の唇にキスをしてゆっくりとショーツの中の手を動かし始めた。

「あの女、処女だったのか。これは驚きだな」
 口の端を歪めながら、我尽は言った。思いがけないサプライズは、彼を喜ばせたようだ。
「ええ・・・まったく驚きですよ。胡桃先生が処女だったなんて」
 それとは対照的に、世良は暗い声でため息をつきながら、失望をあらわにする。その奇妙な様子に我尽が目を向けると、世良は拳を振りながら熱弁を始めた。

「遊んでて『男なんて、いくらでも寄ってくるわ』って感じに男を見下している胡桃先生を、僕みたいな年下の、しかも生徒が散々陵辱して蹂躙するシチュエーションで撮影することを、三日に一度は思い描いてたのにっ!
 ・・・がっかりですよ。実は遊んでる振りをしていただけだったなんて」
「お前、実は俺より・・・いや、まあいい。
 とりあえず、あの胡桃はいらないんだな?」

「ええ、いりません。僕にくれるって言う3人は・・・木島さんだけでいいです。元々僕好みの人はいないですし。それに僕は、たまに前の穴を使いたい時のために何人かいれば充分ですし」
 世良の言葉を訳すと『僕は清美の事を前の穴も使っていいメスぐらいにしか、考えていないので心配しなくて良いですよ』と言う事になる。

「そうか、じゃあ他は全部俺が貰う事にしよう。とりあえずあの二人は、今の感情が正しいと『誤認』させてから『連動』を解いて・・・」
 この手順を踏んでから術を解けば、香苗や千枝子との『連動』を解いた後でも、二人は何故か突然、そしてほぼ同時に目覚めたレズカップルとして固定できる。

 それから、世良の選んだ1年の木島玲を指差すと、何か術をかけた。
「千枝子、香苗、二人共もういいぞ」
「え・・・はい」
「わかりました・・・」

 声を一切出さず静かに抵抗を続けていた2人は、戸惑いながらも我尽の命令には抵抗できず大人しくなった。
「さて、とりあえず木島玲を世良のものにしてやろう。どんなシチュエーションがお望みだ?」」
「そうですね・・・じゃあ即落ちでお願いします」

「なら、まずは清美にこう命令しろ」
 我尽に耳打ちされた命令の内容を、そのまま世良は清美に告げた。
「清美、僕に犯されることを想像しながら、膣に指を入れずクリトリスにも触れずにオナニーをしろ。今から僕が止めろというまで」

「はい、かしこまりました」
 恭しく一礼すると、清美はオナニーを始める。うっとりと目を閉じて、口からは喘ぎ声と小さく世良の名が漏れ始めた。今清美の脳内では、世良とのセックスが始まっているんだろう。

「そのまま、目を閉じてオナニーを続けるんだ。何が聞こえても、目を開けたりオナニーを止めたりしたらだめですよ。
 ・・・これで良いんですか?」
「上出来だ。後は、しばし待とう。そうだな・・・3分ぐらい」

 2人が待つ中で、清美のオナニーはだんだん激しさを増していった。しかし、すぐにエスカレートは止まってしまう。胸や小陰唇は弄れても、膣に指を挿入できずクリトリスにも触れられないために、なかなかイク事ができないからだ。頭の中でどれだけ激しく世良に犯されても、当たり前だが本当に犯されているわけではない。その上、指で挿入感も味わえない。

「ああぁっ! 欲しいですっ、世良さまのチンポほしぃぃぃっ!」
 そう何度も言いながら、オナニーを続ける清美を見て、我尽はやっと木島玲に術をかけ始めた。
 我尽が小声で術をかけたため、内容は世良には理解できながったが、我尽に術をかけられた途端、玲が席から立ち上がり、こちらに向かって来たことは分かった。

「世良君だったよね? あのね、私お願いがあるの」
「何ですか?」
「あの・・・私あなたに・・・ぉ」

 もじもじと羽虫の羽音のような聞き取りにくい小声で、玲がお願いをするがもちろん世良には聞き取れない。顔を真っ赤にして俯いている様子から、恥ずかしがっていることは理解できたが。

「もうちょっと大きな声で言ってくれませんか?」
「あなたに私を・・・して欲しいの」
「・・・大きな声で言ってくれないと、きいて上げられるものもきいてあげられませんよ?」

「あなたに私を・・・セックスして欲しいのっ!」
「どうしたんです? 突然僕に犯して欲しいだなんて」
 玲の大胆なお願いに、本当に即落ちだなぁと思いながら、すぐには玲のお願いを叶えようとはしなかった。それは我尽我どんな『連動』を使ったのか、調べないといけない。これは掌握術の授業でもあるのだから。

「何だか突然、頭の中があなたと・・・その・・・セックスすることで一杯になって、それでどうしても我慢できなくなったの。それで恥ずかしいけどどうしようもなくなって・・・授業は受けなきゃならないんだけど、それはあなたとセックスしながら受ければいいかなって、思って」
 一度大声を出したせいか、玲は顔を赤く染めながらも、今度ははっきりと答えた。はっきりと大きな声で答えなければ、お願いを聞いてもらえないと思っているのかもしれない。

 玲の答えから推測すると、我尽は清美の世良とのセックスをオカズにしたオナニーで高められた性的欲求と、それが満たされないことによる渇望を、玲と『連動』させたようだ。
 その推測を我尽に言って、合っているか聞こうと世良が我尽を探すと、我尽は清美の耳元で何事か囁いていた。

「さっきの・・・聞こえ・・・・犯す・・・残ら・・」
 切れ切れに聞こえてくる言葉から、多分『さっきの大声が聞こえたな? 世良はあの声の女を犯すことに決めたようだ。きっと、お前の分もあの女を犯すだろうから、お前には一滴のザーメンも残らないだろうな』と言っているんだろうと、世良は推測した。

「そんなっ、私も欲しいぃっ! 私の世良様のザーメンが欲しいのぉぉおっ!」
 その推測が外れていない証拠に、清美はそう言いながらより激しくオナニーを続行する。我尽が清美に目を閉じるよう世良に命令させたのは、そうした方が清美の欲求が高まると考えたからだろう。

 そう冷静に分析していながら、世良はそれが何を意味するのか、まだ正確に理解していなかった。
 気がついたのは、玲が何の躊躇も無くショーツを下げて、スカートをめくり上げてからだった。
「世良君っ、 私もう我慢できないのっ! お願いっ、早く私を犯してっ!」
 そう要求する玲には、先程まであった羞恥も何も無い。ただ世良に犯されたいという欲求と、その欲求を叶えたいという渇望の、2色しかない。

「えっ、いや、ちょっと・・・」
「お願いだから犯してっ! 今日危険日だけどコンドームなんて要らないし、処女だけど遠慮なんてしなくていいからっ! むしろ孕んじゃうくらい中でザーメン出してっ!」
 玲の勢いに圧倒されて初めて、世良はようやく清美の欲求や渇望が高まる=玲の欲求と渇望が高まるという図式に気がついた。

「あそこが嫌なら、お尻の穴でもいいからっ! それともただで犯してもらおうって言うのが気に食わないっ? 気に食わないのねっ!」
 勝手に質問して、勝手に答えを出して納得すると、玲はその場に跪いた。

「メス奴隷でもペットでも、精液処理機にでもなんにでもなるからっ、私を犯して種付けしてくださいっ! どんな恥ずかしい事も痛い事も世良君・・・ご主人様が望むならなんだって喜んでしますっ!」
 まるでマシンガンのように、玲の口から淫語が飛び出す。元々知っていたのか、我尽が清美と欲求や渇望以外にも連動させたからなのかは不明だが。

 ただ黙っているだけで、勝手に自分から落ちてくれるのは楽だが、これ以上玲を放って置くと逆レイプされかねないので、世良はようやく頷いた。
「わかりました。そんなに犯して欲しいんなら犯してあげますけど、その代わり玲さんは僕の奴隷になってもらうけど、いいですよね」

 質問ではなく確認の意味で訊くと、玲は一も二も無く頷いた。
「はいっ! どの穴でも良いですから、たくさん犯してくださいっ!」
「じゃあ・・・せっかく処女で危険日なんですから、前の穴を頂きましょうか。でも、僕は動きませんから自分で腰を振ってくださいね」

 世良のその言葉に玲は喜びに顔を輝かせると、世良が椅子を引きペニスをズボンから取り出すのを、涎を垂らしそうな様子で、見つめる。
「ああっ、これがご主人様のチンポ・・・もう、我慢できないっ!」
 すでに勃起しているペニスを見るや、玲は世良に断りも無しに腰に跨ると、そのまま腰を沈めていく。

「そんなに慌てなくても、僕は逃げないですから落ち着いて。そのまま、まっすぐ腰を降ろせば入りますからね」
 世良の誘導に従って玲が腰を降ろしていくと、ペニスの先端が膣口に触れ、潜り込んでいく。

「うっ! ・・・ぎぃぃぃっ!」
 先端が入った途端、玲は一気に腰を降ろしきった。今まで未通だった膣が、玲自身の手で乱暴に抉られる。当然快楽など一切無く、玲は激痛のみを味わっているはずだが、その顔には陶酔の色が濃い。

「チンポォ、ご主人様のチンポがぁ、私のオマンコ抉ってるぅ、痛いけどうれしいぃぃぃっ!」
 そう叫ぶと、処女の名残と遅ればせながら分泌され始めた愛液とでずちゅずちゅと水音を立てながら、玲は痛み以上の悦びに涙を流しながら、乱暴に腰を上下させ始める。

 ここでも世良には見落としがあった。自分は動かないということで、騎乗位に自然となったわけだが、その結果主導権を完全に失ってしまったのだ。これではどっちが犯しているのか、分からない。
 とにかく一度イッてもらって、満足してもらってから主導権を取り戻そう。そう考えると、世良は最近になって清美で覚えた方法で、玲の胸や尻に刺激を与えていく。この際、自分は動かないと言ったことは、棚上げだ。

 そして、それから数分と経たずにその時は来た。世良がビュクビュクと射精した精液が、自分の膣を登ってくるのを感じながら、玲は腰を軽く痙攣させてトロリとした白濁した愛液と精液の混合液を垂らした。
 玲が軽くだが絶頂に至った事を世良は確信して、主導権を取り戻そうと口を開いた。

「玲さ・・・ムグッ!?」
「もっとっ! もっとご主人様のチンポ欲しいのぉっ」
 世良が何か言おうとしていたのも無視して、玲は世良に抱きつくと腰の上下運動を再開させる。やや控えめだがたしかに柔らかい胸を顔面に押し付けられて、世良の口が塞がれる。

 顔には暖かで柔らかい胸の感触。そしてペニスはぬるぬるとした女性器に、ギュッと締められながら上下に動かれる。天国のような状況で、何とか頭を働かせてやっと玲が欠片も満足しなかった理由に、思い当たった。
 清美が満足していないからだ。

 玲が世良とのセックスと膣内射精を望むのは、玲本人の望みではなく、清美の望みだからだ。その清美が満足していないのに、玲が止まるはずがない。
 しかし、世良が清美を満足させることは、現状不可能だ。

 我尽が助けてくれることも無さそうなので仕方が無いと諦めて、しばらく世良は全自動の性欲処理機と化した玲のスタミナが尽きるまで、快楽を堪能することにした。

 ゆっくりと、緩慢な動きで玲が腰を上下させる。ぬちゃり・・・ぬちゃりと処女だった証と愛液、そして何度も膣内で射精された世良の精液の混合液が音を立てる。
「もっと・・・もっとぉっ・・・・・・」
「あのー、我尽さん。そろそろ玲が限界みたいですけど?」

 うわ言のように「もっと」を繰り返す玲を見ながら、世良が我尽に訴えた。その途端、糸が切れた様に玲の全身から力が抜ける。
「我尽さん、これはご褒美ですよね? 罰ゲームじゃなくて」
 ぐったりとして自分に覆いかぶさって、そのまま気を失ってしまった玲をどかしながら我尽に抗議すると、我尽は丁度携帯電話の通話を切っているところだった。

「当たり前だ。・・・少々予定外だったが、それはまだ俺が誰も受胎させていないのに、お前に危険日の女を与えてしまったことへの、八つ当たりの結果じゃない。待っていた連絡が来て、そっちに気を取られて忘れてたたからだ」
「どっちにしてもひどいような・・・それで待っていた連絡って、何ですか?」

「ああ、俺が以前女の選定を委託した奴からだ。終わったから、近日中に見に来て欲しいそうだ」
「見に来てって、届けてくれないんですか?」
「ああ、まずは・・・プレゼンテーションを見てから決めないとな。
 とりあえず、この話は放課後になってからしよう。もうすぐ昼休みだからな」
 丁度その瞬間、チャイムが鳴り響いた。

 昼休みは、我尽は特に術を使おうとはしなかった。何でも、今日は立て続けに術を使ったので、この時間はエネルギーの補給・・・つまりは食事に専念するつもりなのだとか。
「まぁ、まだ余裕はあるから何かやらせてもいいんだが、特に考えも無いからな」
 っと、何もしない理由を世良に尋ねられた我尽は、そう言って説明を締めくくった。

「そういえば、掌握術って無敵ですよね」
 説明を聞き終え、反芻した後世良は呟いた。
「どうしてそう思う?」
 地下秘密基地に待機させている薫に作らせておいた弁当を摘みながら、興味深そうに我尽葉聞き返した。

「まず、肉体を『強化』すれば猛獣とだって肉弾戦が出来るし、反射神経を『強化』すれば銃弾だって避けられますよね? 記憶力を強化すしたり、知識を『転写』すれば難解な学術だってあっさりものにできる。
 さらに、怪我は治癒力を、病気は免疫力を『強化』すればすぐ治るし、老いだって年齢を『低下』させればいつまでも若いまま。完全無欠じゃないですか?」

 思いつくまま理由を上げていくが、我尽は人の悪い笑みを浮かべながら、エビフライを齧り続けるだけだ。
「まぁ、たしかにその通りだが・・・弱点は幾つもある。教えてやろうか?
 まず、核ミサイルに弱い。特に直撃なんて食らったら、イチコロだ」
「そんなの・・・」
 当たり前じゃないですかと続けようとした世良の言葉を遮って、我尽は掌握術の弱点を挙げていく。

「遠距離からの狙撃で頭を打ち抜かれるのにも弱いし、大量の青酸カリを飲まされるのにも弱い。爆薬で吹っ飛ばされたり、寝ている間に心臓を一突きにされるのにも弱いな。
 総じて言うと・・・術でなんとかする余地も無く即死するような事をされるのに弱い。掌握術は、人体や精神を支配して変化させる事が出来るが、結局は人間だからな。限界はあるってことだ」

「なるほど。だから我尽さんのお父さんは地下にあんなアジトを作って、我尽さんは目立たないように動いている訳ですか」
 もし、我尽がアメコミのヒーローのような無敵の超人なら、たった1人でもっと迅速に世界を支配しているだろう。世良のような右腕や、京子達のような配下は必要ない。薫1人で充分すぎるぐらいだ。
 そうならないのは、やはり限界があるからだった。

「まぁ、普通に生きていくだけなら充分無敵だけどな。今現在も、まだ狙撃やら毒殺を企む奴はいないだろうから心配ないが・・・何年か後はそうも行かないだろうから、今のうちに楽しんでおくとしようか」
 そう言いながら、我尽は幸に告がせたお茶を口に含んだ。旨そうに。

 特別クラス最後の授業は、レクリエーションの時間だ。と言っても、遊ぶのは我尽と世良の二人だけだが。教室には3・4時間目の授業を担当した胡桃と良子も含めて、28人の女がいるが、『我尽、又は世良に話しかけられるまで喋ることも動くこともしてはならない』と言う『誤認』によって、人形のように椅子に座っているだけで、静かなものだ。

 もちろん千枝子達と撮影スタッフと、すでに世良の物になっている玲は除いてだが。

「さて、じゃあ『変容』の実験といこうか」
 我尽の手にあるのは、名詞程の大きさのカード数十枚。そのうち半分は白紙だが、残り半分には様々な言葉がペンで書かれている。

「色々書いてありますね。『淫乱』『メス奴隷』『巨乳』『犬』『猫』『名器』・・・この、『教官』とか『訓練生』って何です? 他にも時々訳の分からないものが混じっているみたいですけど?」
 我尽の出したカードに書いてあるのは、ただ淫猥な言葉だけではなく、世良にはよく分からない物まであった。

「まぁ、これからやるのは実験だからな。とりあえず、思いつくままに色々書いたみたんだよ」
 つまり、我尽本人もどんな効果が出るのか分からないということだ。・・・ひどい人体実験もあったものである。

「開始の前に命令を聞くように術をかけて・・・よし。まずは、三島絵梨。起立」
 我尽が選んだのは、2年の三島絵梨。寮生の中で例外的に素行の悪い娘だ。ロングの髪は茶色に染め、焼いた肌は普段はメイクで誤魔化すのだろうが、今はメイクを術で禁じられているため荒れ気味なのがすぐ見て取れる。それでも彼女がこの特別クラスにいるのは、元が良いからだ。

「服を脱ぎながら質問に答えろ。男性経験とオナニーの頻度は?」
「男は・・・今まで5人くらい。エッチはもう18回くらい? オナニーは寮じゃルームメイトがいるから、我慢できないときはベッドでこっそりしてんの。三日に一度くらい」
 命令通りに服を脱ぎながら、質問に答える絵梨。全体的にスレンダーで、遊んでいる分気を配っているせいかバランスが良い。・・・その半分でもスキンケアにも気を配れば完璧なのだが。

「とりあえず、この女の欠点は何だと思う?」
「もちろん肌荒れですね。あとは・・・処女じゃない事には我尽さんは拘らないから、身体より性格ですかね? 僕の調べたところによると、けっこう自分本位で我侭な人みたいですから」
 客観的に自分の欠点を言われ、何かい言いたげに口元が引きつったが、質問されたわけではないので絵梨は険のある視線を世良に叩きつける事しか出来ない。

「じゃあ、その欠点を補ってみるか」
 我尽は2枚のカードを絵梨に向けて掲げた。『美肌』と書かれたカードがまず輝き、『メス奴隷』と書かれた2枚目が次いで輝いた。

 すると、絵梨の荒れ気味だった肌に輝かんばかりの艶と、触れれば指が吸い付いてしまいそうな肌理の細かさが両立された美肌に変化した。
「どうやら、『変容』は身体にもちゃんと影響が出るんだな」
「・・・そこからもう解ってなかったんですか? やっぱりネズミと人じゃ違うんですかね」

 呆れた様子の世良には構わず、我尽はもう1枚のカード『メス奴隷』と書かれた方の効果を確かめることにした。
「絵梨、お前は何だ?」
「なんだって・・・もちろんメス奴隷に決まってるじゃない」
「じゃぁ、お前のご主人様は誰だ? 奴隷なら主人がいるはずだろ」

 そう続けて質問されると絵梨は、今度は即答せずに小首を傾げた。
「あたしのご主人様は・・・誰だっけ? 思い出せない・・・」
 その答えに我尽は片眉を吊り上げると、『メス奴隷』のカードをもう一度見直した。

「そうか。誰が主人なのかまで、カードに書いてなかったからな。これで『変容』をかけても、自分はメス奴隷だと自覚するようにはなっても、俺を主人だとは認識はできないのか」
「じゃあ、この『犬』とか『おもちゃ』とか、その他のカードを使ってもすぐに我尽さんの物になる訳じゃないんですね。
 カードの文面をもう少し長く、詳しく書けないんですか?」

「書けなくは無いんだが・・・長い文面を書いたカードをネズミで試してみたら、何だがエグイ事になってな。術に無理があるのか、俺の力量の問題か、それとも文法が間違っていたのかは解らないが」
 今試したら、今度は絵梨がエグイ事になる可能性がある上に、修正不可能だったら取り返しがつかないので我尽は試したくないようだ。

 一方、絵梨はしばらく自分の主人について考えていたが、当たり前だが心当たりがまったく思い出せず、不安そうにおろおろとしている。
「どうした、不安そうだな?」
「だって、あたしメス奴隷なんだよ。ご主人様にエッチな事をおねだりしたり、彼氏にも許してないアナルセックスとかさせろって命令されたり、それを嫌がって鞭とかローソクとかでSMみたいな事お仕置きだってやられて、結局お尻にもチンポ突っ込まれて、その上『奴隷の自覚が足りない』って中出しとかされちゃったりしないといけないんだよっ! なのに、そのご主人様がいないんじゃ、あたしにどうしろって言うのよっ!?」

 そこまで一気に口走ってから、初めて自分が何を言ったのか気づいたらしく、頬を染めて絵梨は押し黙った。
「・・・やるんですか? そう言う事」
「似たようなことはやると思うし、危険日の中出しはむしろ必須だが・・・どうやら、カードの内容の効果の現れ方には、個人の認識や持っているイメージによって違いが出るみたいだな。きっと、性知識ゼロの女に絵梨と同じカードを使ったら、ピラミッドを作るために岩のブロックを運んでいる奴隷をイメージしたりするんだろうな」

 面白いが、この『変容』は遊び以外で使うためには、もう少し研究と研鑽を積む必要があるようだと、我尽は認識を改めた。
「だが、とりあえず絵梨をどうにかするか。
 絵梨、お前のご主人様はこの俺、門倉我尽だ」
 使い慣れた『誤認』で、絵梨にゆっくり刷り込んでいく。・・・一気にしてへんな副作用が出ないようにと、我尽も慎重だ。

「そうだっけ・・・そうだったような気がするけど、あたしあんたに・・・」
「こうやって、俺の命令通りに服を脱いでるのがその証拠だろ? そうは思わないか」
「そう言われれば、そうかもしれないけど・・・」
 思ったよりも、絵梨は『誤認』に抵抗した。そこで我尽は控えている自分の奴隷3人に、視線を送りながら小さく顎をしゃくった。

 その意味がとっさに解ったのは、千枝子だった。彼女は我尽のもって来ていたバックから鞭を幾つか取り出すと、まとめて我尽に手渡した。
「これですね、我尽様」
「正解だ。以心伝心のご褒美に、今日はいつもより多めに種を付けてやろう」

 嬉しそうに瞳を潤ませる千枝子と、それを羨ましそうに見つめる幸と香苗。それを見ながら、我尽は渡された鞭の中から、一本を選んで軽く素振りした後、それを絵梨の背中に振り下ろした。
「ぎゃぁ!?」
 バチィィィインと言う派手な音が響き、絵梨が悲鳴を上げながらビクンと背を仰け反らす。

「なっ、何すんのよっ!?」
「何って、我尽さんは不出来な奴隷に罰を与えてるだけじゃないですか。ねぇ、我尽さん」
「罰って・・・ひぎゃっ!?」
 再び鞭が振り下ろされ、絵梨が悲鳴を上げる。

 派手な音と悲鳴から、絵梨の背中の惨状を察することが出来るだろう。しかし、絵梨の背中は鞭が当たった所が多少赤くなってはいるが、蚯蚓腫れも出来てはいなかった。せっかく美肌にした長後なので、傷つけるのに我尽も抵抗があったのか使用したのは、音が派手だが痛みは薄いSM初心者用の鞭だったからだ。

 だが、生まれてから鞭で打たれた事など皆無だった絵梨には、音だけで充分な刺激だ。
「ごめんなさいご主人様っ! 疑ったりしてごめんなさいっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃっ!」
「やっと解ったか。まったく、主人を忘れるなんて不出来にも程があるな」
 程があるも何も、絵梨のメス奴隷のイメージを利用し『誤認』に鞭を利用しただけなのだが。

「千枝子、香苗、この主人を忘れるようなバカメスに、奴隷としての躾をしておいてくれ。上手くやったら幸同様に種付けの回数を増やしてやる。逆だったら・・・解ってるな?」
「はいっ! 任せて置いてください」
「じゃぁ、まず奴隷の心得と素晴らしさから教えておきますね」
 香苗は自信たっぷりに胸を叩き、千枝子は微笑みを浮かべた。

 千枝子の微笑を見て、絵梨が不安そうに顔を引きつらせたがそれには構わず、我尽は残りのカードを見ながら、次は何を試すか考える事に集中した。・・・レクリエーションは、真剣にやるから面白い。

 特別クラスが解散した翌日の放課後。千枝子と香苗は通称、開かずの理事長室に向かっていた。我尽が理事長を継いでからは開くようになったのから、その通称もすぐ使われなくなるだろう。・・・相変わらず理事長は表に出ないので、幽霊理事長と言う通称は使われ続けるだろうが。

 何故その場所に二人が向かっているかと言うと、部活動のためだった。
 『江戸文化研究部』と言うのが、二人が今日から所属する部活の名前だ。・・・もちろん、突然江戸文化に興味を覚えたから入部したわけではない。そもそも、この研究部も昨日発足したばかりの部だった。

「皆来るかしら? 特に絵梨がサボらないか心配だわ」
「大丈夫じゃないかな。我尽様も絵梨は校則とかはともかく、自分の決めた事には忠実だって言ってたし」
 そう千枝子に答えながら、香苗が理事長室のドアに手を伸ばそうとしたら、突然そのドアが内側から勢い良く開いて、香苗は危うくドアにぶつかる所だった。

「遅いじゃないですか先輩っ! 皆もう来てますよっ!」
 開いたドアから顔を出したのは、話題の絵梨だった。どうやら我尽の言ったとおり、心配は無用なようだった。
「先輩って・・・あたし達同学年のはずだけど?」
「学年じゃなくて、メス奴隷の先輩って意味ですよっ」
 そのメス奴隷としての経験の差も、香苗達と絵梨とは一週間もないはずだが・・・。

「それより皆来てるって・・・」
「文字通りの意味よ、二人とも」
 理事長室から答えたのは、江戸文化研究会の顧問の百瀬良子だ。千枝子が部屋の中に入ると、絵梨の言ったとおり自分達2人を除いた部員の全員が・・・昨日の特別クラスのメンバー全員が集まっていた。

「たしかに皆集まってるみたいね。じゃぁ・・・早速準備しましょうか」
「さっ、速く始めるわよ。我尽様はいろいろ忙しいんだから」
 部長の千枝子と副部長の号令の元、江戸文化研究部は活動を開始した。

 まずドアに鍵をかけ、窓がないこの理事長室を密室にする。その後は個々の決められた格好に着替えるのだ。正確に言うなら、脱ぐというべきかも知れない。

「今日はあたしの処女奪ってくれるかなぁ」
 志保が頬を染めながら、夢見るような調子で言うと、光がそれに応える。
「うーん、難しいんじゃない? あたし達まだ安全日だし、だったら危険日の子の種付けとか、性欲処理以外の仕事の仕事を教えることに時間を割く方が、合理的だと思うけど」

 回りの生徒や教師が服を脱ぎ始める中、志保と光を含めた数人は服を脱がずに待機している。彼女達は『性欲処理機』と『事務員』のカードで『変容』され調整された、『性欲処理も業務に含まれる事務員』なので、我尽に身体を要求されない限り、脱ぐ必要はないのだ。・・・スカートの丈が短かったり、下着がセクシーな物を身につけていたりするが。

 良子と胡桃の二人の教師と数名の生徒は、下着も全て脱ぐと首輪を付け始めた。チョーカーのようなアクセサリーではなく、ペットショップで売っている犬用の物だ。中には、首輪に鈴がついているものも半分ほどいる。
「いやー、やっぱり人間のふりって疲れるものねぇ。速く一日中ペットのままでいられる世の中になって欲しいもんだわ」
 猫耳のついたカチューシャを付けながら、胡桃が言う。

「ペットって言っても、それはそれで仕事はあるのよ? ご主人様にただただ愛玩されていれば良いってものじゃないんだから」
 そう言って胡桃を嗜める良子は、犬耳のカチューシャを付けている。
彼女達は『犬』や『猫』といったカードで『変容』された、『ペット』なのだ。もちろん、ごく普通の犬や猫のように愛玩されるペットではなく、性的な意味合いがほとんどだ。

 『ペット』でも『事務員』でもないグループは、下着まで脱ぐと今度は逆に着飾り始めた。っと言ってもアクセサリーを付けたり、メイクアップやドレスアップするわけではない。TバックやTフロント、レースをふんだんに使って透けそうなショーツやブラ、ガーターベルトとタイツをつける者もいる。美しさではなく、扇情的になる事だけを考えた格好だ。・・・一部、何故かブルマーや学園指定のスクール水着に着替えている者もいるが。

「ねぇ、智恵理先生、あたしこんな格好でよかったんでしょうか?」
 ガーターベルトとストッキングのみ付けた昨日同様Dカップの智恵理に、心細げに質問したのは、CからDカップへ胸の大きくなった佐代子だ。彼女が何故かブルマーを着ているのが、彼女だ。

「その格好はないんじゃない? 我尽様はオヤジじゃないんだからさ」
「そう? あたしはいいと思うわよ」
 そう言って口を挟んだのは、亜子と沙織の二人だ。昨日Fカップの亜子は大きい胸を強調するハーフカップのブラに、紐タイプのショーツ。一日でAからGカップになった沙織は・・・スクール水着を着ていた。さすがに水着のサイズは以前から持っていた物と同様のため、胸が水着からこぼれそうになっているし、お尻も食い込みぎみだ。

「そうかなぁ、何だか怒られちゃいそうだけど。『俺を何だと思ってるんだ』って」
「いいじゃない。『罰だ』って、長く構ってくださるかもしれないわよ」
 口を挟んだくせに、佐代子を置いてきぼりに二人は論争を始めてしまう。その二人の間でおろおろとしている佐代子に、智恵理は少し考えた後、アドバイスを与えた。

「私は、気にしなくていいと思うわよ。だって、その格好はあなたなりに我尽様の気を惹こうと工夫した結果なんでしょう? だったら、大丈夫よ」
「工夫って言うか・・・そのぅ・・・」
「もってないのよね、勝負下着」

 BからFカップになった明日香が、口ごもるルームメイトの肩を慰めるように優しく叩いた。そう言う明日香の格好も、スポーツブラに無地のショーツと言う、この集団の中では極めて地味な物だった。
「うん・・・。このごろバイトしてなかったから、お金もあんまりないし」
 安くても可愛い下着もあるだろうが、だからと言って買うとも限らない。特に、見せる相手がいない場合は。

「でも大丈夫だって。そのブルマーも中学の時のだから、すぐはみパンしちゃうって言ってたじゃない? もしかしたら、下手な下着よりもエロいかもよ?」
「そ、そうかな」
 ルームメイトの慰めに、不安を払拭されかけている佐代子も、慰めている明日香も、『玩具』だ。

 『玩具』は、性的な意味だけでなく文字通りの意味でも『玩具』だ。
 佐代子や沙織の胸のサイズがたった一日で大きくなっているのは、我尽が『巨乳』と書かれたカードで全員に『変容』をかけたからだ。実験の結果は、どれくらいの大きさが、『大きい』と感じるのか、どれくらい『大きく』なりたいのか、そして現在の自分の胸へのコンプレックスによって効果が左右されることが判明した。

 逆に『貧乳』と書かれたカードでも試したが・・・これは受けが悪く、すぐに戻した。

 こうした実験を行われるのが、『玩具』だ。

 ちなみに昨日はこうした設定を刷り込んだり実験に夢中になったりして、いよいよ本番と言う時に放課後になってしまい、我尽は彼女等にほとんど手を出せなかった。
 昨日の段階では、放課後まで手を回していなかったのだ。

「じゃあ、そろそろ準備は出来たわね? 部活動を始めるわよ」
 我尽ではなく世良の奴隷であるため、公平に皆を仕切れる玲の号令の下、江戸文化研究部の活動は開始させた。

 その頃地下アジトでは、我尽が一通の電子メールを眺めていた。そのメールは、昨日受け取ったものだ。
 宛名は『総合人材派遣会社 エスキュー』内容は薫から聞いた内容そのままだ。
「さて、こっちには予定通り出るとして・・・このイベントも見逃せないな」
 そう言いながら、他のモニターに視線を移す。そこには、芸能プロダクションの新人オーディションの広告が映し出されていた。グラビアモデル、タレント、アーティストの3部門開かれるようだ。

 問題は、募集している芸能プロダクションがクリームパフェの3人が所属しているところだと言う事だ。
「人気がなくなればお払い箱で、すぐに代わりを探す・・・そういうのは、俺以外がしているのを見るのは不愉快なんだよな」
 我尽はそう呟きながら、どうやったらこのイベントを自分主催の物に出来るのか、計略を巡らせていた。

< つづく >

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