霧と太陽のジュネス 生徒会室の章

“生徒会室の章”

 こうして僕は、無投票で生徒会長に当確した。

「そんな気はしてたけどな」
 キリヤは、今日から僕が主となった生徒会室で、最近お気に入りの1年生にしゃぶらせながら、大きなアクビした。
「……神聖な生徒会室で、そういうことするな」
「これはすみません、会長」
 キリヤは、わざとらしく慌てたフリして、1年の子の髪を掴んでジュルリと引き抜く。
「君、まずは就任祝いに、会長殿からフェラして差し上げて」
「はい」
「そうじゃないって!」
 僕はハイハイして近づいてくるその子を、キリヤの方へ押し戻した。
 
 先日、生徒会に提出した僕の立候補届は、何の問題もなく受理され、対立候補も現われないまま立候補期間が終了し、当確となった。
 考えてもみれば、先代会長だってそうだ。
 誰も好きこのんで面倒なだけの生徒会なんてやりたがらない。だから大抵、いかにも『真面目グループのリーダー』みたいのが教師推薦で立候補となり、無投票で当選する。
 そんな中で、僕みたいな物好きがわざわざ自分から出てきたら、当然、どうぞどうぞって空気にもなるんだ。
「つまんねーオチ」
「いいんだよ。それより、他の役員を見つけなきゃ」
 会長以外の役員は、会長指名で決めることになる。1年生も何人か混ぜなきゃならないが、担当教諭に言えば、適当なの見つけて声をかけてくれるらしい。でもそのあたりの人選も、できれば僕が自分の目で見て決めておきたいところだ。
「俺、副会長やってもいいぞ」
 フェラを再開しながら、キリヤはありがたい申し出をしてくれた。持つべき者は心優しい友人だと思った。
「だが断わる」
「マジ?」
「僕に芽生えた自立心はまだこの程度じゃ満足してない。キリヤ抜きでもちゃんと生徒会をやってみせる。僕の戦いはまだまだ始まったばかりだ」
「いい年してジャンプネタとか、うぜーんだけど」
「ありがたいけど遠慮しておくよ。いつまでもキリヤに甘えてばっかりじゃ悪いし。自分でなんとかしてみる」
「別に、甘えてねーじゃん。一緒にやろーぜー」
 子供みたいに、唇を尖らせてキリヤは拗ねる。
 僕がキリヤの友人で母親で恋人だと言った女性のことを、なんとなく思い出す。
「ダメ。生徒会室は僕の部屋だ。たまになら遊びに来ていいけど、仕事の邪魔しちゃダメだぞ」
「ちぇー」
 八つ当たりするみたいに、1年の子の頭をガポガポさせている。「ぐぷ、じゅぷ」と、やらしい音が神聖なる僕の生徒会室にこだまする。
「生徒会室でのエッチも禁止だ」
「権力握ると、人って変わるなー」
「副会長は、コジマくんにお願いしようかな」
 いかにもっていう感じの優等生が、隣のクラスにいる。たぶん僕が立候補しなかったら、彼が会長に指名されていただろう。しゃべると面白いヤツだし、わりと僕と話も合うし、たぶん引き受けてくれる。
「書記は……マナでいいか」
 肉体関係のある女子は星の数ほどいるが、リアルでの女子友だちはマナ絡みの数人しかない。奴隷なら2人ほどいる。でも他の子に頼めばマナが焼き餅をやくし、あれでわりと教師ウケもいい子だから、私的人事と多少は言われても、それほど文句も出ないだろう。
「あとは下級生も使わないとなんないんだけど……」
 僕には1年生の知り合いはあまりいない。でもキリヤなら取り巻き多いから、よさそうなの知ってるかもしれない。
 尋ねる前に、キリヤは目の前でかしずいている子を指さした。
「だったら、コイツ使って」
 キリヤはフェラさせていた女の子の顔を上げる。「じゅぽん」と音を立てて、あごにヨダレをつけた女の子がこちらを見る。野暮ったいおかっぱ頭で、クリっとした目は愛嬌あるけど、ちょっと個性的な感じ。でも十分可愛いレベル。唇は少し厚ぼったく柔らかそうで、アヒルっぽく突きだしてるその表情は可愛い。
 幼く見えるわりに、胸が大きめなのもポイント。キリヤが気に入るだけあって、少し磨けば輝きだしそうな、隠れた魅力のある子だと思った。
「……その人がお薦めなの?」
「好きに使えよ。フェラとか、かなり仕込んであるぞ」
「役員として使いたいんだよ」
「どっちでもいいよ」
 口元の汚れをハンカチで拭う彼女。普通にしていれば純情そうに見えるし、生徒会って雰囲気に合ってるような気がした。
「名前は何て言うの?」
「なんとかカホ。何だっけ? おい、自己紹介しろ」
 女の子は目をぱちくりさせた。そして、僕を見て気弱そうにぺこりと頭を下げた。さっきまで男のアレを咥えてたなんて思えないほど、無垢な仕草で。
「1年D組。キノシタ カホです」

 鈴が鳴ったように細くキレイな声だった。
 カホという名前も、似合ってると思った。

 夏休みの近づく保健室は、窓を開ければ心地よい風も入ってるのに、放課後は閉ざされている。
 僕が告白することを、カシイ先生は全てファイルに書きとっていった。滑らかに動く彼女の指に見惚れながら、その高そうな万年筆は誰かからの贈り物だろうかとか、右手の指輪には何か特別な意味があるんだろうかとか、僕はそんなことばかりを考えていた。
「ここで、そんなことしたの?」
 誰もいない土日、僕たちは休日練習のテニス部の先輩たちをここで抱いていた。その話をすると、カシイ先生は露骨に眉をひそめた。
「……すみません」
「ん、あー、いいわよ、別に」
 よく考えたらワタシの部屋じゃないし、とカシイ先生は手をヒラヒラさせる。どうせならビデオに撮っておいてくれれば良かったのに、と続ける。
「あ、今のいいアイディアじゃない? 今度、ワタシのいないときにまたナツミ君と保健室使って。それで、一部始終をビデオに隠し撮りして欲しいの。研究のために」
「いやです!」
「だめ?」
 こうやって、嫌な顔をしたり、ウソか本気かわからないこと言ったり、初めて運転したベンツをボロボロにしたって話ではお腹を抱えて笑ったりとか、カシイ先生はカウンセラーとは思えないほど、素直な表情を見せてくれる。
 僕は彼女の笑った顔が好きだった。彼女と2人で過ごす時間を楽しみにしていた。
 先週からの出来事をだいたい語り終えて、カシイ先生がペンを走らせる音だけになる。もうかなりの厚さになったファイルをめくり、何度も確認しながら、彼女は目の前の作業に没頭していく。僕のこと忘れてるんじゃないかって、少し寂しくなる。

「フユキ君」
「はいっ」
 などと考えているときに、いきなり声をかけられて僕は上擦った返事をしてしまう。
「あなたたちって、相変わらず最低ね」
 嘲笑的な瞳を向けられ、僕の顔は熱くなる。そう。僕たちのやってることは最低だ。いきなりカシイ先生にそう言われると、恥ずかしくてドキドキする。
「今さらこんなこと言われても理解できないかもしれないけど、あなたが犯した先輩も婦警さんも、何の落ち度もなく自分の仕事をしていた人たちよ。どんな人にも彼女たちを辱める権利はない。わかる?」
 僕にだってそれぐらいわかってる。
 でも、キリヤと一緒にいれば、そんな感覚はマヒしてしまう。
 僕たちが奪ったものは数多くあるけれど、その傷痕はどこにも残っていない。キリヤは優しい強奪者だ。他人の苦しみも記憶ごと奪ってしまう。
「わかってないよね。自分たちのしてること」
 カシイ先生は僕に厳しい目を向ける。
 僕は大いに戸惑った。今までいろんな話をしてきたけど、彼女がこんな風に怒るのは初めてだった。
「…わかってます、けど…」
「わかってない。あなたはナツミ君のすることを楽しんでる。どうせみんな忘れるんだからって、不幸な記憶さえ残さなければいいんだってタカをくくってる。ワタシたちから怒る機会も傷つく正当性も、人としての尊厳すら奪って、神様気取りで笑ってるのよ。だから、あなたたちは最低だって言うの」
「僕は、そんな!」
 反論しようと立ち上がって、何も言えないことに気づいて下を向く。
「……ごめんなさい。言いすぎたわね」
 違う。カシイ先生は正しい。
 僕は最低なんだ。キリヤと一緒に楽しんでるだけだ。
 悪いことしてるって気持ちは、とっくになくなっていた。
「あなたに言っても仕方ないことだってわかってるの。座って」
 カシイ先生に促されるまま、僕は腰を下ろす。カシイ先生はファイルに何か書き込んで、手を頭の後ろに組んで椅子の背にもたれる。僕は下を向いている。

「……ワタシは、あなたのこと好きよ。素直で可愛いし、顔だってわりと好みだわ」
 突然、先生がそんなこと言い出すから、僕は驚いて顔を上げた。カシイ先生は、壁を見ながら「あなたに会えてラッキー」と、まるで珍しい動物を見つけたみたいに呟いてる。
「神の力を持つ子どもと、神の力も届かない子ども。マンガみたいで、バカげた話。このことを知ってるのはワタシだけなのよね?」
「え……はい」
 キリヤのことを話せるのは彼女だけだった。
 僕たちのこと話したのも、叱ってくれたのも彼女が初めてだった。
「フユキ君。あなたはとても重要な人物なのよ。自分でわかってる?」
「僕が?」
「そう。あなた。このバカげた物語の主人公はナツミ君ではなく、あなたなの」
 机の上の分厚いファイルを、バンとカシイ先生が叩く。
 何の話かわからない。僕は頷くだけにする。
「主人公の役割って、あなたは知ってる?」
「わ、わかりません」
「勝利。それと、長生きね」
「長生き?」
「そうよ。だって、途中で死んじゃったら物語が終わっちゃうでしょ?」
 そんな定義は初めて聞いたけど、まあ、確かにわからないでもないような。
 首を傾げる僕に、カシイ先生は色っぽく唇の端を上げる。
「……世界は俺のものだ。って、ナツミ君はそう言ってない?」
 芝居がかった口調で、カシイ先生が椅子を僕の方に向ける。組んだ足がスラリと伸びてて、短いスカートの隙間が目に入りそうになり、僕は思わず目を逸らす。
「言ってたことありませすけど、でも……」
「でも、そうじゃないことを彼は認めた。なぜなら、あなたがいたから。神様ボーイのナツミ君にも自由にできない人間が、世界には少なくとも1人はいる。だからこの世界はナツミ君1人のものじゃない」
 前にキリヤが言ってたことと、同じようなことをカシイ先生はそのまま言い当てる。大人はやっぱり頭がいい。
「フユキ君」
 キィ、と椅子が軋んで、僕を覗き込むように、カシイ先生の顔が近づく。
「もしも世界中の全てがたった1人の思い通りになるのなら、そんなものは世界って言わない。ただの妄想よ。そして私たちはナツミキリヤの妄想の産物。だと思わない?」
 僕の想像力では、そんなところまで描けてなかった。この世界は世界ではなくキリヤの妄想。じつはそうなのかもしれない。
「世界は、自分以外の誰かが存在しているから世界なの。そしてあなたが、ナツミキリヤにとってただ1人の他人。つまり、あなたがこの世界を作ってるといっても過言じゃない」
 それはいくら何でも大げさすぎる。でも、肩に重いモノを乗せられた気がした。その重さで体が震えた。
「フユキ君。ワタシが思うに、ナツミ君はすでに人生に飽きているわ。もしもあなたに出会うのがもう少し遅かったら、彼はリセットしてたかもしれない」
「リセット?」
「自分ごと世界を消してたかも」
「まさか」
 キリヤがそんなことするはずない。
 でも、キリヤならそれができるかもしれないと思うと、怖くなる。
「だってナツミ君は、あなたと出会ったとき、あなたを殺さなかったもの。ワタシがもしナツミ君と同じ力を持っていたら、たぶんあなたを殺して世界を独占してたと思う。今さら他人なんかいらないってね」
 図書室でキリヤに質問されたとき、僕も最初は同じことを考えた。確かに、キリヤなら僕なんか簡単に殺せるのは間違いない。
 もしもあのとき、僕なら殺すって答えてたらどうなってたんだろうって、今でも時々考える。
「でも彼はそうしなかった。いきなり現われた他人のあなたに、贈り物まで用意して近づいてきた」
 ハラダマナミのこともカシイ先生には話してある。カシイ先生は、僕の話を聞きながらキリヤの分析をしてたんだろうか。
「ナツミ君は子供なのよ。あなたが考えてるよりずっと幼い。生まれて初めて出会った他人に興味しんしんなんだけど、同時にすごく恐れてる。あなたに嫌われたくないから、懸命に機嫌をとっている。時々かんしゃく起こしてはあなたに甘えたり、あなたに認めて欲しくて、とんでもない無茶したりする。ナツミ君にとって、あなたは友人で母親で恋人なのね」
 赤い爪で、ツンと額を突かれる。甘い香水の匂いがした。
「フユキ君がこの世界をギリギリで守ってるのよ。とても危なっかしいヒーローだけど」
 そんなことを言われても、ピンとこない。僕はキリヤに流されてるだけの、ひ弱な中学1年生だ。
「だから、あなたはナツミ君よりも長生きしなきゃダメ。主人公がいなくなれば、物語の世界も終わるから」
「え?」
「あなた以外のことにナツミキリヤは関心がない。ナツミ君にとって世界とは、孤独で何もない部屋の中なの。あなたは彼にとってテレビとPCと本と音楽。友人で家族で恋人。つまり、自分以外の全ての関わり。それが全部なくなったとき、あなたならどうする? 死を考えない?」
「か、考えるかも、しれません」
「ナツミ君は、考えるまでもないわね。精神的に幼い彼は死に直行する。でもその前に、リセットを行う」
「それは、でも、キリヤには……」
 またも僕の反論は尻すぼみに消える。
 カシイ先生は、キリヤのそばにいる僕よりも、ずっとキリヤのことを観察して、よく知っている。
 胃が重い。喉が渇く。
「でも……そんな、消しちゃう理由はないです」
「そこがあなたのいない憎むべき世界だから。それとも単なる八つ当たり。あなたへの弔い。身辺整理。いろんな動機が考えられるわ。でも、かわいそうなあの子にはやることが1つしかないの。あの子の能力が神様と違うところはそこ。何も生まない。破壊だけ」 
 くるりとカシイ先生はペンを回す。
 僕はひとりぼっちになったキリヤの孤独を考える。彼のポケットには、山ほどの地球破壊爆弾が入ってる。気が遠くなりそうだ。
「あるいは、あなたたちはいつか好き勝手に遊ぶことにも飽きて、おもちゃを捨てるように、世の中を壊して2人で心中するかも。そういう可能性も十分ある」
 あまりにも飛躍した発想に「まさか」と僕は笑う。でもカシイ先生は真剣な顔でかぶりを振る。
「すでに兆候は見えてるわ。家族や他人、社会との適切な関わりも持たないあなたとナツミ君は、結局のところ2人だけの狭い世界で完結している。あなたたちは目の前の刹那的な享楽しか知らないし、興味がない。でもそれは死に向かっているのと同じよ。おそらくあなたたちは、自分たちではそれを止められない。続けていればいつか狂う。狂えば終わり。ナツミ君の能力は麻薬なのよ」
 足元が揺らぐ気がした。違う。全力で否定したい。
 なのに、胸が騒ぐ。
「ワタシが思うに、あなたたちの破滅はそう遠くない未来に起こる。でもそれは、ひょっとしたら世界の破滅という最悪の事態も巻き起こすかもしれない」
 でも僕たちは親友なんだ。ずっと一緒なんだ。
「だから、あなたたちは危険なの。あなたたちは世界の敵。ワタシたちの立場から見れば、そうなる」
 危険人物。世界の敵。狂っている僕ら。
「違う…違います! 僕たちは、そんなことしない。そんなんじゃない!」
 言った途端に、涙がポロポロ出てきた。
 先生の言うとおりかもしれないって怖さが、お腹のあたりを締め付けてきた。
 僕とキリヤは、もう止まれない。僕はキリヤの力がないと生きていけない。
 どちらかがいなくなれば、きっと僕らは生きていけない。
「あなたたちは、ただの子供なのよ。あなたたちは、自己中心的で、自制心が薄く、飽きっぽくて、罪悪の自覚がない、どこにでもいる子供。そんな子供に、危険なおもちゃを持たせればどうなるか、わかるよね?」
「でも、僕は、キリヤがいないと……ッ、僕は……」
 キリヤ。僕。カシイ先生。マナ。僕たちがめちゃくちゃした大勢の他人。
 頭が混乱していく。いっぱいになって何も考えられなくなる。
 怖くて膝が震えてる。カシイ先生にいっぱい怒られ、脅され、完全に折れていた。
 カシイ先生が、フッと息をついた。

「―――ほら、やっぱりガキね」

「……え?」
 最後に呟いた言葉を僕は聞き逃した。
「ううん、なんでもない」
 カシイ先生は、表情を和らげて僕の頬を撫でる。突然触れられて、僕はドキリとする。そのままずっと撫でられて、少しずつ落ち着いてくる。
「ねえ、フユキ君。ワタシたち、もっと協力すべきよね?」
「協力って……なにをですか?」
「ワタシは研究者として、純粋にナツミキリヤの謎を知りたいの」
「謎?」
「あなただって、知りたいでしょ?」
 確かに知りたい。
 でも僕はずっとその謎を避けてきていた。
 僕にとっても初めての親友であるキリヤに対する遠慮もあるし、僕なんかじゃ手に負えない気がしてた。
 でもカシイ先生だったら、あるいは。
「ワタシはナツミキリヤの謎を解いて、彼から世界を救いたい。それはワタシしかできない仕事だから」
「世界、を……?」
「協力してくれるよね?」
 どういう意味だろう。キリヤをどうするつもりなんだろう。
 世界を救う、なんて大げさな言葉を口にする先生はいつもよりも子供じみて見えて、そして、なんとなく怖い気がした。
 でも今の僕は、カシイ先生に頼るしかなかった。
 ただの子供だから、大人の言うとおりにしようと思っていた。
「そのためには、ワタシたちの関係をもっと強いものにしないとダメ。深い信頼関係を築いて、しっかりと協力し合うのよ」
 首の後ろに回ったカシイ先生の手が、僕を優しく撫でる。そして、彼女の唇が近づいてくる。
「先生、何を……?」
「わかってるでしょ。あなたはもう、大人なんだから」
 頭の先まで血液が沸騰する。先生の唇が僕の唇に重なる。ルージュの匂いと温かい感触。ぬるりと舌が僕の歯をなぞって、すぐに離れていく。唾液が2人の唇を繋いでいる。僕の心は震える。
「……ナツミ君の力を借りずに、女を抱いたことある?」
「あ、ありません」
「そう」
 蠱惑的にカシイ先生は微笑んだ。大人の女性だった。
「だったら、ワタシが本当の意味での、あなたの最初の女ね。いい?」
 心臓が、1個じゃ足りないくらいにドキドキしてる。
 体中の血管が騒いで破裂しそうだ。
「そんなに緊張しなくてもいいの。大丈夫よ。あなたならできる。ワタシに任せて」
 甘いため息。くすぐったい囁き。僕のボタンを外す指。僕はもう何も考えられない。

「一緒に世界を守りましょう」

 修学旅行といえば、行き先はお決まりの奈良・京都だ。
 春休みにエジプトでピラミッド見てきたばかりだったし、今さら日本の古都やお寺に興味ない。出発の3日前になっても、僕たちのテンションは全然上がらなかった。
「バス移動とか、たりーしな」
「うん」
 どうせならベンジャミン・シルバー・ナイツで長距離ドライブの方が楽しそうだ。それは今度キリヤと2人で行ってみよう。
「でもクラスのみんなと旅行するなんて、滅多にないことだし」
「そんなのより、タイヨウと遊ぶ方がいい」
 僕以外の人間は、キリヤにとっては誰でも同じだ。子供みたいなわがまま言って、キリヤは退屈そうにアクビをする。
「普通はもっと盛り上がるんだろうけど」
 教室の中を見渡しても、自由行動どこへ行くとか、何を買うとか、修学旅行の話題で持ちきりだった。
「そんなのサボって、またどっか外国行かね?」
 キリヤは窓の向こうを覗いてる。2年の女子が体操着でグラウンドに出てた。キリヤが手にしたリモコンのスイッチを入れる。数名の女の子がビクンと跳ねて、へたり込む。
「あれ、あの子たちのとこ行ってるの?」
「うん」
 こないだ2人で行った風俗店のチラシで、リモコン操作できる大人のおもちゃを見つけた僕らは、さっそくそれを購入したのだが、思ったほど面白いものでもなく、あっという間に飽きていた。
 やっぱり自分の使った方が気持ちいいし。
 それはキリヤのファンクラブ(そういうのがあるらしい)の間で適当に回されることになった。今ではキリヤがこうしてたまに遊ぶくらいである。
 僕は教室に視線を戻す。マナが友だちと京都案内を開いて盛り上がってる。教室全体が浮き足立ってる感じ。
 この中で、僕たちだけが冷めてるみたいだった。それはなんとなく寂しい気がする。
「いや、行こうよ修学旅行」
「えー?」
「面倒くさいのは確かだけどさ。でもこういう学校行事って一度しか体験できないし、それに卒業まであと1年もないし、このメンバーで想い出作っておこうよ」
 私立に進学する予定の僕らは、このクラスのほとんどのメンバーとお別れになる。小学校から一緒だった連中とも、おそらくこれっきり。
 そう考えると、今のうちにみんなと想い出を作っておいたほうが良いように思えるんだ。
「タイヨウって変なときに真面目だよな」
「いつも真面目だよ僕は」
「だりーなー」
 キリヤは「あー」と気の抜けた声を出して、ダランと椅子の背もたれに体を預けた。
 こんなにも天気のいい日に狭い教室に閉じこめられてると、僕らの若さも倦んでしまう。僕たちは誰よりも自由の味を知っている。
「そうだな……たまにはクラスの女に、接待旅行でもしてもらうか」
 やっぱりつまんなそうに、キリヤは窓の外を眺め、リモコンのスイッチを入れた。

 修学旅行1日目。
 ガイドさんが自己紹介を終えて、高速を降りるまでご自由にと案内を終えたところだ。
 バスの後ろ半分は僕たちのために使われていた。
 男子は前の方に押しやり、最後部席に座る僕とキリヤをクラスの女子全員が囲んでいる。接待旅行の始まりだった。
「余興といえば、歌と踊りだな」
 女子数名がバス備え付けのカラオケで歌って踊りだす。僕の隣でしなだれかかるマナに、クーラーからカクテルを出すように言って、キリヤと乾杯する。
「接待なんだから、もっと色っぽく踊れよ」
 キリヤの指示でカラオケの女子たちが服をはだけていく。
 最近の若い子は、ただ脱げば色っぽいと思ってるから困る。そう言いながらアルバム委員のキリヤは、デジカメのシャッターを切った。
 僕たち以外の男子禁制なので、前の方に座る男子たちはおとなしくモンハンとか談笑とかに地味に盛り上がってる。彼らはこの旅行中、僕らの周りで何が起こっても驚かないようにキリヤが言ってあるから大丈夫。
 何が起こるのかは、今のところ僕にもわからないけど。
「君たちも飲むかね?」
「いただきまーす!」
 偉そうにふんぞり返るキリヤに勧められるまま、何人かの女子がアルコールに手を出した。
「ね、タイヨウ。マナもいい?」
 僕の顔を覗き込むマナに、僕は飲みかけのビンを飲ませてあげた。くいっと美味しそうに一口飲んで、マナは僕の腕にしがみついてきた。
「楽しい旅行にしようね、タイヨウ!」
「そうだね」
 せめて記念文集に使えるような写真が残ればいいなと、僕は思った。

 京都を経由して奈良に到着。奈良公園で鹿にせんべいを食わせたり、女子を並べてスカート持ち上げさせて記念写真撮ったり、茂みに隠れてマナとセックスしたりした。そのせいでバスの中で飲み過ぎたアルコールが回って、あとの移動中はずっと寝てた。
 夜、僕はキリヤと分かれた。
 キリヤチームとタイヨウチームに女子の部屋が分かれているせいだ。
 元々うちのクラスの女子は、2年のときに僕とキリヤの好みで集められた子たちだから、全員レベルは高い。その中からそれぞれ5、6人を選んで、夜の接待係にしたんだ。
「いらっしゃーい」
 部屋に入ると、タイヨウチームのリーダー、マナが僕にしがみついてきた。他の女子たちもジャージに着替えて、リラックスした様子で僕を迎え入れてくれる。
「タイヨウ……ん」
 マナのキスが僕の唇をふさぐ。そのまま舌をにゅるりと差し入れてきて、甘い息と一緒に僕の口内を優しくくすぐる。しっかりと抱きしめられ、マナのキスと温かい鼓動が長旅の疲れを癒してくれる。
「ちょっと、マナってば独り占めしないの」
「そうよ。マナの旦那は、今日はみんなで接待するんだからね」
「やー! タイヨウはマナのー!」
 僕にしがみつくマナを、他の女子たちが無理やり剥がす。2人がかりでマナを押さえつけて、布団の上に転がす。
「やんっ! ちょっと、何してんの、やっ、待って」
 みるみるマナのジャージが脱がされていく。その光景に見とれてる間に、他の女子が僕のジャージをするすると脱がしていく。
「フユキ、みんなでエッチしようね」
「サービスするからね、私たち」
 他の女子たちも服を脱いで、みんな全裸になる。半べそになってるマナを起こして、5名の女子が並んで僕に三つ指をついた。
「ようこそフユキ君。私たちが精一杯ご奉仕いたします」
 僕の彼女、ハラダマナミ。
 陸上部のスレンダー少女、テラシマユカ。
 小学校から同じクラスの秀才、キヨタユキコ。
 吹奏楽部のDカップ、サクラモトミスズ。
 同じく吹奏楽部のロリっ子、カトウミキ。
 委員長のクツザワをキリヤに取られたのはちょっと痛いが、これが僕の選んだタイヨウチームのメンバーだ。
「タイヨウ、こっち来て」
 マナが布団をぽんぽん叩く。僕がそこに横になると、マナの顔がアップで迫ってくる。
「……他の子抱いてもいいけど、マナのことを一番愛してね?」
 真っ直ぐな気持ちを僕にぶつけるマナを、他の女子が囃し立てる。頭の両側で結んだマナの髪が僕の顔をくすぐる。マナの目は真剣だった。
「わかってるよ」
 僕がそういうと、マナの顔が降りてきて僕の唇と重なる。それを合図にしたみたいに、僕の体のあちこちに同時にキスが降りかかる。
「ん、ちゅく、んん……」
 マナの舌が僕の口内を撫でまわり、僕の胸や、お腹もアソコもいろんなところで柔らかい感触が這い回る。くすぐったい快感にゾクゾクする。
「れろ、れろ、れろ、れろ……」
 サクラモトとカトウの吹奏楽コンビが、僕のクラリネットを吹いていた。特にサクラモトのダブルタンギング奏法はフルート奏者にしておくには惜しいと思われるほど激しかった。
「ちゅぷ、ちゅっ、ちゅぷ、ちゅぷ……」
 そのサクラモトの長い髪に隠れるように、控えめに横咥えしているカトウは、もう少し大胆な舌使いを覚えさせる必要がある。
「ちゅう、ちゅっ、れろ、ちゅっ」
 テラシマは僕の胸やお腹にキスしたり舌を這わせたり、忙しなく顔を動かしていた。僕と目が合うと、ニコっと爽やかな笑みを見せてくれる。
「マナミ、ちょっとお尻どけてー。私もフユキの顔にキスしたいな」
「んー」
 マナの横に割り込むようにして、テラシマが顔を寄せてくる。そして僕のメガネを外してまぶたにチュッてキスをしてきた。
「耳、いい?」
 そう言って、僕の耳の中に熱い吐息と一緒にぬるっと舌を入れてくる。さりげなく僕の乳首を指でくりくりイジリながら。
 彼女は普段のエッチの最中も、スポーツ少女らしくいろいろと動いてくれる。マナとも仲が良いし、1年のときから僕のお気に入りの女子の1人だ。
「じゅぷっ、じゅっ、はぁ、美味しいよォ、じゅぷ、ずずっ」
 キヨタは僕の足の指を啜りながら、自分でアソコをいじっている。
 小学校の頃から背が高くて、勉強もできるクールな感じな子だったけど、じつは被虐性欲があるらしく、僕やキリヤにいろいろイジメられたせいもあって、今では完全にそっちに目覚めてしまっていた。
 一部の男子に『清楚キヨタ』と呼ばれる理知的な面影はそこにはない。キヨタは顔を真っ赤にして、僕の足がテロテロになるほど舌を絡ませている。僕に抱かれるときには、こうして自分からMっぽい行為に走るんだ。
「ねえ、もう、誰か入れさせてよ」
 クラスの美少女5人に一度に奉仕され、僕のはギンギンに猛っていた。早く誰かの中に収まりたい。
「マナ、いちばーん」
 さっそくマナが僕のお腹の上に跨った。それをテラシマが「ダメー」と引きずり下ろす。
「なんでー!」
「あんたら、奈良公園でエッチしてたでしょ。知ってるんだよ」
「え、マジ?」
 僕とマナの声がハモった。
「だってあんなところでシテたら、誰だってわかるしょ」
「あたしも見たー」
「私も見ました」
 無邪気に目撃報告していく彼女たちに、僕は青ざめた。
 一応、人目につかない場所を選んだつもりだったけど、どうやらクラスのほとんどが目撃してたらしい。僕はお酒を飲むとタチが悪い。自分でもわかってたはずなのに。
 でもこの修学旅行のメンバーは全員、僕たちの周りで何が起こっても驚かないように言い聞かせてある。
 僕とマナに肉体関係があることくらいはだいたい知ってるだろうけど、その現場を見たわりにみんな冷静なのはそのせいだ。
 そして、この旅行から帰れば、みんな僕らとこうやってエッチしたり目撃したことも忘れるはず。そのことを思い出して、僕はホッと胸を撫で下ろした。
 カトウがぽわぽわした声で言う。
「フユキ君が鹿をレイプしてるって、管理人さんを呼びに行こうと思ったらマナなんだもん。よかったよ」
 それはホント、よかったよ。
「それじゃ、私からいい?」
 テラシマがガバっと僕の目の前で足を広げて、僕の上に跨った。マナが「ユカずるいー」と頬を膨らませる。サクラモトやカトウが興味深そうに僕らの結合部を覗き込む。
「あっ……はぁ、あんっ」
「わ、入った入った」
「すごーい」
「ん……んっ、んっ、んっ、んっ、んっ!」
「ユカ、いきなり早くない?」
「エロエロだねー」
 テラシマは浅めに入れた状態で、小刻みに腰を上下させる。きつい膣をしている彼女は、奥を叩かれるより浅めに刻まれることを好む。
「んっ、ねえ、私のことは、いいからっ。みんなも、フユキにご奉仕しなよっ」
「あ、そうだった」
「タイヨウ、キスしよー」
 マナがまた僕の顔に覆い被さる。サクラモトの大きな胸を引き寄せて、両手で揉みしだく。カトウは僕のおへそを吸ってる。キヨタは僕の股の間に顔を埋めて、袋のあたりを舐めたり吸ったりしている。全身に快感が這い回り、息も苦しくなってくる。
「あ、あぁっ、あんっ、あっ、イク、イクっ、イクぅっ!」
 イッたときのテラシマの締め付けは、超強烈だ。
 僕は呻き声をあげて、彼女の中に大量の精液を出した。

「ねえ、タイヨウきて。次は私の番だよ?」
「私も欲しいー。フユキ、きてぇ」
「ダメダメ、フユキくーん。こっちだよー」
「お願いです……フユキ様のおチンポで、私の穴がめくれるくらい、突き回してください!」
 みんなが四つんばいになって僕にお尻を向けている。交互に挿入して、指を差し込んだり、手の空いた子にはオナニーさせたり、これじゃどっちが奉仕してるのかわからない。
 もう2時間くらい経っただろうか。初日からいきなりこんなことやってて、あと3日もある修学旅行の間、僕の体力は保つのだろうか。
 忙しく彼女たちのお尻の間を往復しながら、僕は今後の旅程を懸念する。
 そのとき、スラリと部屋の障子が開いた。
「お、やってるね」
 浴衣姿のキリヤが陽気にカメラを構えて、サクラモトを後ろから犯してる最中の僕の写真を撮った。
「これ、文集の表紙にするから」
 などと不穏なことを言って、逃げるように退場する。
 僕は、『修学旅行の想い出』のタイトルの下で6P決めてる自分の姿を思い浮かべて、鼻水を吹いた。

 2日目。
 昨日の反省をもとに、薬師寺、法隆寺でキヨタを見張りに立たせておいてから、見つからないようにサクラモトとカトウを順番に抱き、京都へ移動してから自由行動に移る間で、キヨタをホテルでレイプ気味に抱いてあげた。
 そして夜はキリヤと一緒に女子風呂に入った。
 タイヨウ組、キリヤ組の女子たちは、さっそく僕らの体を洗いに集まってくる。
「フユキ様、私の体を椅子にお使いくださいッ」
 昼間のレイプがよほど効いたのか、キヨタは頬を赤らめ、嬉しそうに四つんばいになって体を丸める。僕は「うむ」と横柄に答えてキヨタの上に腰掛ける。
 キリヤはムッと顔をしかめて、委員長に「椅子になれ」と命令した。負けず嫌いめ。僕の委員長がキリヤの椅子なんかになって、かわいそうに。
 残ったメンバーに体を洗ってもらう。もちろんタオルやスポンジなど使わず、体を使ってだ。
 サクラモトとマナのおっぱいは気持よかった。でもテラシマとカトウはちょっと残念な感じだった。
 なにより本人たちがそう感じていたらしく、テラシマは「そうだっ」と頭の上に電球を光らせて、お尻を石けん塗れにして、それで僕の背中をこすってくれた。カトウも「なるほど!」と手を叩いて、同じように2人でお尻を並べて背中を擦ってくれた。
「ごしごし、ごしごし♪」
 楽しそうなところ申し訳なかったけど、キレイになった気がしないと言って、やめさせた。
 流してもらった後は、湯船のへりに腰掛けて、交互にフェラをしてもらう。組のメンバーじゃない女子も集めて、みんなにフェラしてもらった。この時間はうちと2クラスの入浴時間。入ってない子もいるから、全部で40人くらい。もちろん、女の子は僕たちの好みで選んで、不公平に舐めてもらった。
「ところで、男子とか覗きに来ないのかな?」
 4名の女子に同時フェラをさせながら、ふと、修学旅行の定番を僕は思い出した。小学校のときも、男子はそれで盛り上がっていたっけ。
「あー、いるかな? いるかもな、そういうヤツ」
 テニス部のチダを後ろから抱き上げるように犯し、結合部をヤンキーのマキノに舐めさせながら、キリヤも笑う。
 あたりを見渡しても、覗けそうなところはなかった。このホテルはハードルが高そうだ。学校はそういうホテルを選ぶんだろうか?
「せっかくだし、いいもの見せてやろうぜ」
 キリヤは女子たちに洗い場に並ぶように言った。ぐるりと大きな円を描いて、360度に女子の裸体を揃える。
「しゃがめ」
 いっせいに女の子たちがしゃがむ。ぱっくりと開いた足の間に、それぞれのアソコが顔を出す。
「それじゃ、おしっこターイム。全員出すまで、がんばれー」
 キリヤのいきなりの命令に、みんなちょっと驚いたような顔をしたけど、すぐにみんなウンウンと力み始めた。
 我慢してた子もいたのか、早くもあちこちからビシャビシャと水音が立ち始め、アンモニアの匂いがツンと大浴場に広がった。
「あっ、出る! 出ちゃうよぉ!」
「あ、ああっ」
 さすがにタイヨウ、キリヤ組の女子たちはエッチモードでいい声を出してくれる。その声に触発されたのか、今回指名してない女子たちも「んんっ」と艶めかしく頬を染めて放尿していく。
「タイヨウ、出ちゃう! あん、やだっ。マナ、タイヨウの前でおしっこしちゃうっ。は、恥ずかしいよぉ!」
 マナが僕の名を呼びながら、切なそうな顔で放尿した。しゃがんでいられなくなったのか、ぺたんと尻もちをついて、でもそのせいでマナのおしっこは遠くまで飛んだ。結構溜っていたのか、高い放物線を描いて、キラキラと輝いていた。さすがに僕も彼女のおしっこ姿は初めてで、思わずボッキしてしまう。
「あん……はぁ」
「んっ、出る……」
 艶めかしい声と水音が大浴場に反響する。総勢40人の放尿浴場だ。
 もしもこれを覗きに来てる勇気ある男子が本当にいるなら、文字通り彼らは黄金の国を発見することになる。ぜひ僕と一緒に、このアンビリバボーな光景を目に焼き付けていって欲しい。
 女の子のおしっこ姿って、すごくエッチなんだ。
 新しい発見にドキドキしながら、僕たちは同級生たちの一斉放尿を眺めていた。

「ああっ、出ます! 私、おしっこ出ちゃいます! いっぱい、いっぱい出てます! 見ないで、フユキ様! 私のおしっこシャワー、見ないでぇ!」

 それにしてもこのキヨタ、ノリノリである。

 3日目。
 向いのホテルに台湾からの修学旅行生が泊まっているらしい。
 豊富な国際経験とグローバルな視野を持つ学生であることを自負する僕らは、今日が丸一日自由行動なのを利用して、さっそく彼らの旅程に随行することにした。
「ニッポン代表、ナツミキリヤ&フユキタイヨウ。みんな俺たちのこと大好きOK?」
 適当な自己紹介をする僕らを台湾の中学生たちは歓迎してくれた。なにやら親しげに話しかけてくるけど、言葉はわからないので、とりあえずニヤニヤしておいた。
「ワタシ、日本語、スコシ、ワカルよ」
 たどたどしい日本語で笑いかけてくれた女の子の隣に座った。髪が長く、スレンダーで可愛い子だった。
 レン、という名前らしい。僕がよろしく、というと顔がぱあっと赤くなった。周りの席の女子が台湾語(?)で彼女を囃し立てる。なんか歌い出してる。レンがわたわたと必死になって止めさせようとしてるけど、僕には全然意味がわからない。
 適当に選んで乗ったバスだけど、女子は結構可愛い子が多かった。ていうか台湾の女の子は可愛い。レンはうちの学校にもいないような、純朴な透明感のある子だった。目がすごくキレイだ。ヒマワリでも持たせてポートレートにしたいような女の子だった。
 バスは三十三間堂や清水寺あたりを廻る。
 キリヤはたくさんの女の子や男子にまで囲まれて、にぎやかにしている。僕はレンと彼女の友だちグループと一緒に、その後を付いていく。
 このあたりは昨日も回ったので、あまり見るところもないが、レンたちは珍しそうに写真を撮っていた。僕がみんなの写真を撮ったり、1人ずつ僕と並んで記念写真を撮ったり、言葉は通じなくても、なんとなく楽しかった。台湾の女の子は可愛い。
 お土産屋で、地元キャラのストラップをレンが「これ、カワイー」と言って見ていた。
 一応、修学旅行規定の範囲でしか小遣いは持ってきてないけど、キリヤと一緒にいると出費ゼロなので、財布の中はすごい余裕がある。バブってる。
 僕はレンにそれを買ってあげた。レンは目を丸くして喜んでた。
 それから僕はレンの友だちとそのへんをブラブラする。日本のアイドルとかアニメに詳しいらしく、知ってる名前をどんどん出してくるんだけど、僕はアイドルグループのメンバーなんて知らないし、彼女たちはよく知ってるなぁと感心した。
 そしてちょっと1人になったときに、レンが小走りで近づいてきて、僕のポケットに何かを入れ、逃げていった。見てみると、それはさっきのお土産屋さんの袋で、中には僕がレンに買ってあげたストラップの男の子カラーが入っていた。
 レンは恥ずかしそうに、ちょっと離れたところから僕の様子を伺っている。台湾の女の子は本当に可愛い。

 夜、彼らの泊まるホテルで一緒に食事をいただき、一緒の女子風呂に入った。
 さすが富裕層のご子息たちだけあって、僕たちの泊まってたホテルよりかなり広いし、食事も豪華でお風呂も広い。
 その風呂場でまず最初に、もちろん僕はレンを抱いた。
 キスから始めて、ゆっくりと時間をかけて、順序正しく愛撫していく。緊張していた処女の体が、少しずつ快感に蕩けていく姿は最高だと思う。僕はレンの中に慎重に入っていく。痛みに顔をしかめ、それでも彼女は我慢して僕を迎え入れ、奥まで進入を許してくれた。
 彼女の子宮口にまで達したモノを少し抜いて、浅く緩やかに僕たちは愛し合う。きつい締め付けと僕にしがみつく彼女の柔肌。細い腕が背中に巻き付き、足は僕の腰をしっかりと捕まえる。
「タイヨ、タイヨぅ……」
 キスをせがみ、僕の髪をくしゃくしゃにし、少しずつレンが女の感じ方を覚えていく。僕は動きを少し速くする。
 レンは「あ」の形に口を開けて、僕のピストンと同じリズムで短い呼吸を繰り返す。痛みはもうさほどでもないようだ。僕はさらにペースを上げる。慌てて深く突き入れたりしない。くちゅくちゅと僕たちの結合部でいやらしい音がする。石けんの泡に濡れる僕たちの体が互いの快感を高め合う。
「あっ、あっ、タイヨ、我愛、あっ、タイヨ、あっ、あぁっ、んっ、スキ、スキですッ、タイヨッ、あっ、あっ…ぅぐっ…あぁぁぁーーーッ!」
 ギリっと歯を鳴らし、直後に大声を上げてレンの体が弓のように仰け反った。その瞬間、彼女の膣もすごく僕のを締め付けてくる。僕はその情熱的な抱擁に甘え、彼女の中に大量の精液を吐き出す。
 ぐったりとした彼女の体を洗い場の床に横たえ、僕はせっせと女子生徒たちを抱くキリヤのところへ行った。
「なに盛り上がってんだよ、タイヨウ」
「いいだろ、別に」
 照れを隠して、僕は別の女の子を抱き寄せた。あちこち愛撫し合う間にまたボッキしてくる。僕は次から次へと女の子の中に挿入していった。
 だいぶキリヤに先を越されてたけど、処女率は高かった。一度にこんなに処女破りをしたのは、今年の入学式以来だ。僕は調子にのって次々と女の子たちを貫いていく。
 彼女たちは苦痛を堪えて、僕たちの乱暴なレイプを受け入れてくれる。洗い場でお尻を向けて整列する女の子たちに順番に挿入していき、僕の射精欲も徐々に高まっていく。何人目の子かわかんないけど、僕は小さなお尻の中で2度目の射精をした。
 床に座り込んで息を整える。少し体が冷えてきた気がする。
 レンが僕の隣に来て、頬にキスをしてきた。僕はレンの手を引いて、一緒に大きな湯船の中に浸かった。
 2人でキスをしたり互いを撫でたりしながら体を温める。優しく労りあっているうちに、またムクムクと僕たちの若い性欲がたぎってくる。
「こっちにおいで、レン」
「ハイ」
 僕らは浴槽の中で窓を背にして、へりに腰掛ける。そして僕の上に座るようにレンを促す。恥ずかしそうに僕にお尻を向け、腰を落としてくるレン。僕はその中にボッキした自分自身を埋め込んだ。
「んんっ、んー!」
 まだセックスが苦しそうなレンが落ち着くまで、体を撫でてあげる。そして息が整った頃合いで、ゆっくりとレンを突き上げる。
「んっ、あん、んっ、うぅ、タイヨ、タイヨー……」
 微妙な発音で僕の名を呼ぶ、レンの甘く高い声が愛しく思える。さっきより深く刺さるこの体勢は、処女を失ったばかりの彼女にはきついかもしれないけど、僕は陰茎にまとわりつく彼女の中の快感をもっと味わいたくて、焦らないように注意しながら、徐々に速度を上げていく。
 やがてレンも慣れてきたのか、お腹の上の僕の手に自分の手を重ね、僕の動きに合わせて少しずつ腰を浮かせる。熱っぽい目で僕を見上げて、確かめるように腰を揺らす。僕は健気な彼女に頷いてキスをした。速度を上げた。レンも上擦った声を出して腰の動きを速くする。互いの手を強く握りしめて、僕たちは2人だけの行為に没頭していく。舌を絡める。高まっていく。
「……それでは、あそこのバカップルをみんなで盛り上げるため、ただいまより放尿の儀を執り行いたいと思います」
 キリヤがまた何かバカ言ってる。
 顔を上げると、いつのまにそんなことになってたのか、僕たちが抱き合ってる浴槽の前に、逆ハの字の形に、2列に向かい合って女の子たちが並んでいた。
 みんな後ろに手をついてしゃがみ、ぱっくりと足を開いて腰を前に突き出し、まるでホースを空に向ける消防隊員みたいだった。
「全員、放尿!」
 キリヤの号令で、一斉に女の子たちの放尿が始まる。
 シャーっという発射音と床を叩く水音。女の子たちの開放感に満ちたタメ息。その向こうで腰タオル一枚のキリヤが僕たちに敬礼しながら、デジカメのシャッターを切った。
「あっ、ああっ、あっ!?」
 その瞬間、レンが体を震わせた。ギュッと膣が縮まった。
 それと同時に、シャアァァという音を立てて、レンのアソコから飛沫が飛んだ。やがてそれは一本の放物線となって、浴槽の中にジョボジョボと沈んだ。キラキラと照明を反射して、虹をかけたように黄色く輝く液体は、間違いなく彼女の放尿だった。
 僕のレンが、おしっこしてる。
 その衝撃的な光景に、僕の我慢があっというまに限界に達する。
「あぁっ!? やあ、あぁ、あぁぁ!」
 速度を上げる僕のピストンに突き上げられ、体を震わせながらレンは放尿を続ける。
 僕はレンの足を持ち上げ、全身で彼女の細い体を突き上げる。僕の乱暴な動きに合わせて、レンのおしっこはウェーブを作り、蛇のようにのたうち飛んで、お風呂にジョボジョボ着水していった。
 僕はもう、狂ったようにレンの体を揺さぶる。そして、彼女の中にありったけの精液を解き放った。
「ふぁああぁっ! タイヨ、タイヨォォ!」
 ジョボジョボ、ジュブジュブ、シャアシャアといやらしい音の洪水に包まれ、最高の射精感に、僕の頭は真っ白に溶けてしまった。
 荒い息をつく僕ら。チョロチョロとレンのあそこから垂れる最後の水流が、彼女と僕の太ももを生温かく伝う。
「……タイヨ……ケッコン、して?」
 涙に濡れた目で囁くレンに、僕は「真剣に考えておくよ」と答えた。

 4日目。
 寝ているうちに学校に着いてた。

 こうして僕たちの修学旅行は、つつがなく終わった。
「俺たち最高だったな」
「うん」
 大満足だった。僕たちは出発前の認識の誤りを正した。あれはじつに良いものだ。間違いなく3年間で最高の想い出になるだろう。
 余談だが、キリヤの撮った写真には使えそうなものは当然一枚もなく、気を利かせていた委員長のデジカメにより、僕たちの記念文集は綴られることになった。

 そして数日後。
 廊下の壁に貼られた各クラスの楽しそうな記念写真を見て、僕たちは愕然とする。
「京都まで行ったのに、俺ら舞妓さんとヤッてないじゃん!?」
「見てよキリヤ。隣のクラスのガイドさん、めちゃくちゃ可愛かったんだよ!」
 男子なら誰でも夢想する修学旅行の定番を、ことごとく見逃してきてしまったことに僕らは気づいた。そして、どこまでも意気消沈した。
「…もう1回行きてーなー、修学旅行…」
「毎月やればいいのにね……」
 教室のすみっこで、再来週に迫ったスポーツ祭の話題に盛り上がるクラスメートを眺めながら、僕たちだけが怠惰な空気を周囲に漂わせている。
「あ~! 京都行きて~~っ!」
 キリヤが大きなアクビしながら叫ぶ。
「……僕は、台湾がいいな」
 携帯に揺れるストラップを眺めながら、異国の彼女に想いを馳せた。
 退屈な午後が、雲と一緒に緩やかに過ぎていく。

「まだ緊張してるの?」
 カシイ先生にキスをされ、服を脱がされ、僕は破裂しそうな心臓を押さえるのに一生懸命だった。
「いつもこんなことばかりしてるクセに」
 クスッとカシイ先生が微笑む。
 全然違う。僕はこんなにキレイな人とエッチしたことはない。
「目を閉じて」
 僕は素直に目を閉じる。カシイ先生が僕の頬を撫でてくれる。
「キスするわよ」
 僕は唇に力を入れる。カシイ先生が笑う。
「だから、そんなに緊張しないの。ね?」
 チュッと軽くキスされた。なんだかほっとした。
「じっとしてて」
 チュッ、チュッ。
 何度も唇がついばまれる。くすぐったい。
「ン……」
 唇が押し当てられて、しばらくそのままにされる。ドキドキする。
「……もう一度」
 離れたと思った唇が帰ってくる。ただくっつけ合うだけのキスが、ルージュの香りと柔らかさで、蕩けるように甘くて切ない。
「ン、ン……」
 唇を挟まれ、舌でなぶられ、僕はゾクゾクと痺れて、へたってしまう。
 カシイ先生は、そのまま僕を長いすに連れて行って、横にする。僕のメガネを取り上げる。
「目を開けちゃダメ。そのままじっとしてて」
 手のひらが目にかぶさる。僕は言われたとおりに目を閉じる。
「ン……ン……」
 頬に、首に、鎖骨にカシイ先生のキスが降る。チュッと軽く音を立てられるだけで、僕は感動に震えてしまう。
「あなたは何もしなくていいの。ワタシに任せて」
 上着を脱がされる。ベルトを外される。僕はカシイ先生に全てを任せる。
「ワタシの言うとおりにして。あなたを気持ちよくしてあげる。本当のセックスを教えてあげるわ」
 カシイ先生の手が僕の体を這う。くすぐったいような、マッサージのような動きに、僕の全身から力が抜けていく。
「そう。リラックスして。ワタシに任せていればいいの。あなたは何もしなくていい。力を抜いて、何も考えなくていい。気持ちよくなることだけ考えて」
 気持ちいい。気持ちいい。
 僕はたまらなくなってカシイ先生を抱きしめる。
「ダメよ。手はここ。ワタシに任せてと言ったでしょ。手はここに置いて、動かさないで」
 カシイ先生が、僕の腕をだらんと床に落とす。肩を押さえて、グッ、グッと押さえつける。
「はい、これで動かない。あなたの腕は動かないわ」
 動かなくなった。持ち上げようとしても石のように重く、硬く、ビクともしなかった。
「大丈夫よ。これがワタシのセックスなの。あなたを気持よくしてあげるためだから、心配しないで」
 カシイ先生の優しい声に安心した。僕は彼女に全て任せる。
「あなたはワタシの素敵なナイト。だから、ワタシがいっぱいあなたにご奉仕してあげる」
 甘い囁きに蕩けてしまう。僕は今、最高に幸せだ。
「そのまま待ってて。いいものあげるから」
 カシイ先生が僕から離れて、少し寂しい思いをする。
 でも彼女はすぐに戻ってきて、僕の腕を優しくさすってくれる。
「そのままにしててね……」
 チクリ、と腕に痛みが走った。動かせない腕に何か入ってくる。
「お注射したわ。大丈夫。ワタシもするから。これはね、セックスが100倍気持ちよくなるクスリなの。ワタシたちだけの秘密よ」
 僕たちだけの秘密。その甘い響きに嬉しくなってる。カシイ先生が優しく胸を撫でてくれる。
「それじゃ、ゆっくり深呼吸して。リラックスして。ワタシの言葉が、体に染みていくのを意識して」
 力が抜けていく。カシイ先生の声が心地よい。
「今のあなたの体は、普段の100倍敏感になっているわ。とても敏感。すごく感じやすくなってるの。わかるでしょ?」
 先生の声が耳に入るだけで、射精しそうだった。僕のはすでにガチガチにボッキして、もう出してしまいそうだった。
「苦しいのね、かわいそうに。いいわ。出して。思いっきり出して」
 いやだ。カシイ先生と結ばれたい。僕は歯を食いしばる。
「ふふっ、焦らなくて大丈夫。時間はたっぷりあるんだから、2人でいっぱい楽しみましょう」
 ついっと、スジに沿って撫でられた。それだけで僕は声を出して射精してしまった。
「あははっ、可愛い。すごいいっぱい出たわ」
 恥ずかしい。カシイ先生が笑ってる。僕は泣きたくなってくる。
「どうしたの? 恥ずかしがることないじゃない。ワタシたちはセックスするんだもの。あなたにはいっぱい出して喜んで欲しいわ」
 でも、彼女に優しくされるだけで、僕の全身に性の喜びがのムクムク復活するんだ。
「いいわよ。その調子。今度は2人で楽しみましょう。ワタシの中に、入れてあげる」
 僕の体の上に、温かい重みが被さる。先生が乗っかったんだって思っただけで、また射精しそうになる。
「ダーメ。次に出すのは、ここ」
 くちゅりと、僕の先端に何か当たった。
「……入れたいでしょ?」
 僕は頷く。何度も頷く。
「ワタシたち、恋人同士になる?」
 なる。嬉しい。僕は絶対にカシイ先生の彼氏になる。

「それじゃ、今日からあなたの一番はワタシ。あなたの一番大切なのはワタシよ。いい?」

 首が折れるほど頷いた。
「いい子ね。それじゃワタシの中に入れさせてあげる」
 そのままグッと、温かい中に僕のペニスが潜っていく。
「あぁッ!」
 カシイ先生が叫んだ。僕はその瞬間、電流のような刺激が全身に走って、ドクドクと彼女の中に精液を注いでいた。
「……ふふっ、いいわよ。どんどん出して。もっともっと気持よくなって」
 僕のボッキはまだまだ収まらない。
 彼女の膣は艶めかしく僕のに絡みつき、奥へ奥へと誘い込むような蠕動で快感を与えてくれる。
 じっとしているだけでこんなにも気持ちいいのに、これ以上の刺激をもらったら、きっと僕は頭がおかしくなってしまう。
「安心して。まだ終わりじゃないわ。ワタシたちのセックスは、まだまだこれから」
 カシイ先生が腰を浮かせる。くちゅりと僕のがカシイ先生の中から半分ほど抜けて外気に晒される。
「これからが本番なのよ」
 僕は息を飲んだ。
 蠱惑的な微笑みを浮かべ、カシイ先生の膣がキュッと締まって、僕のをがっちりと捕らえる。
 まだ始まってもいない。これからが本番だって。
 ぞくぞくする。このまま死んでもいいとすら思えるくらい。

「……あなたを、天国へ連れてってあげる」

 ぐちゅっとカシイ先生の腰が沈んで、強烈に締め付けられたまま激しくピストンされた。
 僕は背中を仰け反らせ、止まらない射精感覚に、悲鳴を上げた。

 一時限目を居眠りで過ごして、引き続き休憩時間も伏せっていた僕を、マナが揺り起こす。
「カホちゃん来てるよ」
 我が生徒会室の2大看板娘の1人、会計のキノシタカホちゃんが扉の向こうでペコリと頭を下げていた。下級生の女子が教室まで来てるのが珍しいのか、数名の男子が彼女を指さして色めき立ってる。落ち着け男子。
「あぁ、どうしたの?」
 自分でも間抜けな声だと思った。保健室で3日間もダンス部の先輩と遊び続けたせいで、知らない間に結構疲れてたらしい。
 中学の頃なら、これくらいなんともなかったのに。体育会系の部活に入っておけばよかった。
「その、会長に折り入ってお話が」
 僕の後ろに立っているマナが、ピクリと反応するのがわかった。
「ごめん、マナ。ちょっとだけ出てるよ」
「むー」
 今朝から不機嫌なマナには当たらず障らず、僕はカホちゃんと廊下に出る。あとでマナは頭でも撫でてあげよう。
「何かあったの?」
 廊下の隅で、カホちゃんと2人きりになる。行き交う人はいるけど、小さな声で話せば誰かに聞かれる心配はない。
 カホちゃんは、何かに怯えるように肩を震わせていた。
「顔色悪いよ? 大丈夫?」
 触れようとした僕の手から、カホちゃんは飛び退く。激しい拒絶に戸惑う僕を、彼女は全身を縮こまらせ、困ったように僕を見上げる。

「私…あの、見たんです! 今朝の保健室で、会長が……その、ダンス部の先輩たちと、してるとこ」

 カシイ先生との逢瀬は続いてる。
 あれ以来、放課後の保健室は僕たちの逢い引きの場となっていた。

「ねえ、気持ちいい?」
「いい! すごくいいです、カシイ先生!」
「ワタシの膣、締まってる?」
「はい! 締まって、気持ちいいです、先生!」
 僕の上で先生の大きな胸が揺れる。
 キリヤのいない場所で、キリヤの知らない人を抱いている。僕の初めての秘密は、罪悪感と快感を教えてくれた。
「出してもいいわ。あなたの精液、ワタシの中にいっぱい出して」
「はい、先生!」
 放課後の保健室には、いつ誰が来るかわからない。カギを閉めた程度で、この淫靡な空気が漏れるのを防げているとは思えない。でも僕たちは止まらない。そのスリルですら僕たちを燃え上がらせた。
「出る! 先生、出る!」
 僕はカシイ先生の中に精液を吐き出した。先生の膣がギュウっと僕のを絞って、最後の一滴まで受け止めてくる。

 行為を終えた僕は、ベッドの上に体を投げ出して息を整える。カシイ先生とのエッチは、僕にセックスの本当の喜びを教えてくれた。彼女は僕の幼く性急な欲望を導き、セックスの天国へと連れてってくれた。
 カシイ先生は素敵な大人だ。頭が良くて、美人で、セックスだってすごく上手。
 僕はカシイ先生に夢中だった。
 でも彼女は、行為の後はさっさと白衣をまとい、普段の理知的な女性に戻ってしまう。ついさっきまで僕の上で乱れていたのは、演技なのかと悲しくなってしまうくらいに。
 僕は、快感の余韻に身動きすらできない。
「大丈夫。楽にして。今、とても気持ちいいでしょ。その気持ちに体を委ねて」
 カシイ先生の手が僕の額の上に乗って、軽く頭を揺する。それだけで僕は眠ってしまいそうなほどリラックスできる。彼女の手はまるで魔法のように気持よかった。
「もっと力を抜いて。眠くなったら眠ってもいいわ。でもワタシの声はあなたの心の中から聞こえる。あなたの正直な心に届いて、あなたは逆らえない。理解できる? できたら頷いて」
 僕は頷く。
「さて、あなたとナツミ君の話はだいたいわかったわ」
 事務的な口調は大人の距離感を感じて少し寂しいけど、それが先生の仕事だから僕は喜んで協力する。
「ナツミキリヤはあなたのお友だち。そうよね?」
 キリヤは僕の友だち。僕は頷く。
「そしてワタシはあなたの恋人。一番大事な恋人。そうでしょ?」
 カシイ先生は僕の恋人。彼女のことを思うと頬が思わず緩む。

「一番大事なのはワタシよね?」

 僕はブンと頷いた。
「それじゃ、昨日の続きをしましょうか。ワタシが質問をするから、正直に答えて。ワタシのお願い、聞いてくれるよね?」
 もちろん大事な恋人の頼みだったら何だって聞く。僕は唇を引き締め、頷く。
「よくできました。ちょっと腕がチクってするけど、すぐに痛くなくなるわ。これはさっきと同じ、あなたが気持よくなれるためのお注射よ。今日は特別に2本も打ってあげるから、我慢してね」
 腕にチクリと痛みが走るが、すぐに痛くなくなる。逆にだんだん気持ちよくなる。
 カシイ先生が、僕のためにしてくれる注射だ。気持ちいい。体がふわふわする。
「眠って。もっと深く。もっと深く……」
 深く眠る。
 深く眠る。
 カシイ先生の声しか聞こえない───。

「……聞こえる? あなたは今、どこにいますか? ワタシは誰?」
 遠くから、聞き慣れた先生のきれいな声がする。僕は自分が眠りかけていたことに気づく。
「どう? 聞こえていたら、質問に答えて」
 聞こえている。ここは保健室。あなたはカシイ先生。学校のカウンセラー。
 簡単な問いかけに僕はスラスラと答える。横でペンが走る音がした。
 いつものカシイ先生の音。
 聞いていると頭がトロトロになっていく。
「違うわ。そうじゃないわよね? よおく考えて、自分で思い出すのよ。こないだもワタシはそう言ったよね」
 なんで?
 どこが違うの?
 彼女の言ってることがわからない。
 僕は悲しくなる。シクシクと涙がこぼれて、脳みそもとろとろになっていく。水の上で揺れてるみたいな、沈んでるのに浮かんでくみたいな、不思議な感覚。
「思い出して。ワタシたちがどうしてここにいるのか。自分の力で思い出して、戻ってくるの」
 僕、何か忘れてる?
 わからない。悲しくなる。
 赤ん坊に戻ったみたいに僕の感情は脆くなってる。泣いちゃいたい。泣いてカシイ先生に甘えたい。

「息を深く吸って、ゆっくりと力を抜いて、聞いて。あなたは徐々に現在に戻ってくる。時間が元に戻っていく」

 深く息を吸う。力を抜く。頭の中がこじ開けられてく感じがする。カシイ先生の言葉が僕の頭をかき回している。目の前で波が揺れてる。真っ暗な海がある。

「戻ってくる。あなたは戻ってきたわ。さあ、思い出して」

 ゆらゆら。とろとろ。
 僕はその海を眺め、波に揺れ、流されていく。

「今のあなたは、中学生なんかじゃない。現在22才で、同棲中の恋人に養われる無職の男性。ワタシはあなたの恋人のご両親に依頼されて、あなたの治療をしてるのよ」

 揺れが止まった。急に体が重くなった。

< 続 >

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