せめてもの催眠術師 第五話

第五話「せめてもの子作り」

「それじゃあ、姉さんはベットに横たわってもらって……股を開いてください」
「いったい、私の身体のどこを使おうっていうのさ……口か、手か……またおっぱいかな」
 言われたとおりに寝そべりながら、そんなことをいうマユミ。
「股を開けって意味が分かりませんか、股の付け根を使わせてもらおうっていう話っすよ」
 そうトモノリが宣告すると、さっとマユミの顔が青ざめた。
「そんな……馬鹿なこと……」
「せっかくの濡れ濡れマンコを、使わないわけがないじゃないですか」
「まって、ちょっと待て」
「なあに、姉さんはじっとしていてくれたらいいんっす。俺が勝手に、このトロトロのマンコにこすり付けて射精するだけですから」
 腰を開かれて、亀頭を突き立てられると、トモノリのやる気を感じて、マユミの身体が硬く強張った。
「うわ……ほんとに。なあトモノリ、本気じゃないよな。本気だったら、ここにゴムならちゃんとあるからさ」
「なにいってるんですか、姉さん。ゴムなんて使ったら避妊になったちゃうでしょ」
「避妊の何がいけないのさっ! なあ、せめてするなら、ちゃんと」
 避妊具をつけろというマユミに、噛んで含めたようにトモノリが説明する。
「いいですか、姉さん。コンドームなんかつけたらセックスになっちゃうんすよ」
「ええっ、そうなの」
「マユミ姉さんが、俺とセックスしたいっていうのなら……ゴムつけてしてもいいっすけど、セックスは駄目なんっすよね」
「そうっ、うん、浮気は駄目だ。私には、ミツヒコがいるから」
 そういうマユミの決心を聞いて、楽しげにトモノリは笑う。
「だったら、俺に生で、ズポズポされて中出しされたらいっす……なに、すぐ終わるっすよ。俺、早いほうだから」

「そうじゃなくて、生で……しかも中で出されたら、妊娠しちゃうかもしれないし……」
「おや、姉さん危険日なんですか」
「えっと、そうだよ……だから、すごく困るんだけど」
 そのことをトモノリに知らせるのも躊躇したけど、いまのマユミには余裕がない。
 何とか妊娠は、避けなければ。
「俺は、別に困らないっすね」
「私が困るんだよっ……好きでもない男の子供を、妊娠したらさあ……」
 想像するだけでもぞっとする。ミツヒコになんといえばいいのか。いや知られないように、たった一人で内緒で堕ろすのだろうか。
 瞬時に思いつく暗黒の未来の可能性、ゾッとするけれども、同時にゾクッとする。
 マユミは、避妊を誤って妊娠した経験もちろんないし、男に中出しを許した経験すらないのだ。どんな感じだろうかと、中出しされる感覚に興味がないわけではなかったが。
 ああ、今日でなければ少しは違ったのに。マユミは悔やむしかない。
「もういい加減、諦めておとなしくしてくれないっすかね。危険日に一回ぐらい出されたからって、そうそう孕みませんって……」
「今日は、ほんとに、超駄目な日なんだって……ああっ、どうして……よりにもよって今日なんだよっ!」
 マユミは苦悩する。しっかりしたマユミは、自分の生理周期計算も完璧だった。
 今日は、排卵日であると自覚してしまっているのだ。
「そうなんだ、卵が出ちゃう日なんですね……嬉しいなあマユミさんの卵にぶっかけられるなんて」
 そんな酷いことをいうトモノリを叱る余裕すらない。
 マユミを焦らすように、カウパーを垂れ流す逸物を愛液でどろどろになったマンコに擦り付けてくる。
 本人の意思に逆らうように、マユミの秘部はパクパクと口を半開きにして、男をくわえ込もうと待っている。

「私はいいけど……そのおまえみたいな前途有望の社員が……上司を間違いで妊娠させたとか……困るだろうっ」
「俺は、それでも困りませんけどねっ」
 にこりと微笑むトモノリ。駄目社員の部下を捕まえて、前途有望も何もあったものではない。
 そんなわかりやすい阿りで、中出しは御免してもらえるほど、トモノリは甘くないようだ。
 そう気がついて、マユミは頬を引きつらせるけれど、単純に嫌だと断れる話でもないのだ。

 マユミの心は揺れている。いまのマユミにとって、トモノリのオナニーの道具になって膣内に射精されるぐらいのことは、たいしたことはなかった。
 だが、その結果もたらされるかもしれない不慮の妊娠という結果について、今のマユミは「たいしたことはない」などとは、到底思えない。
 生の挿入、中出しを拒むことも出来ず、認めることもできない。マユミは、進退窮まっている。
 嫌がるマユミに、中出ししてやりたいトモノリは、陰湿な罠にマユミをはめ込んだのだ。

「さあ、もう無益な話は止めましょう……マユミ姉さん本人はともかく、下のほうはお待ちかねみたいっすし、ほら……入っていくっすよ」
「ああっ……そんなの……いいんだけど……だめっ」
 マユミにのしかかるようにして挿入、濡れているマユミのマンコは待ってましたとばかりにゴムもつけない、男の生殖器を飲み込んでいく。
 あまりの気持ちよさに、即座に射精しそうになるのをぐっとこらえるトモノリ。あるいは、ほんの少し出してしまったかもしれない。
「駄目ですよ、腰を動かしたらセックスになってしまいますっ!」
「ええっ……ああっ、そんなのどうしろってっ!」
 奥に入れられたくなくて、腰が逃げようとしたのだ。トモノリは強引に、マユミの腰を掴んで引寄せる。
 ぐっと奥深くに挿入して、なかのトロトロの感触を楽しみながらマユミの耳元でささやく。
「さあ姉さんが自分で選ぶんです。このまま大人しく中だしされるか、避妊してセックスで浮気になるのかを」
「そんなっ……そんなっ……」
 ぎゅっと、ベットのシーツを握るマユミ。

「さあ、どうするんです。どっちにしても、俺はもう我慢できないっすけど……姉さんの身体が気持ちよすぎて……もうっ」
「浮気は駄目……勝手に、なさい……」
 そう、決然と選び取ってマユミは目をつぶって身体の力を抜いた。
 閉じた目から涙がこぼれる。
 平気なわけではなかった。
 この場は、浮気にして避妊してもらって適当に自分を騙すこともできたのに。
 身体を自由に蹂躙されても、心を守ることをマユミは選んだのだ。
「じゃあ、存分に楽しませてもらうっす……」
 毅然としたマユミの姿を見たくて、こんなことをしたのかもしれない。
 こういう美しい姿を見せてくれると、トモノリは信じていたのだ。

 トモノリが腰を使うと、マユミの膣は本人の意思に反して、キュッキュと締め付けてくる。
「うっ……いっ……いっ……」
 腰を引くなといわれたマユミは、もはや目をつぶってじっと快楽に耐えるしかない。
 あえぎそうになる、自分の声を意識して抑えた。自分の喉からでる声は、嫌なのだろうか、それとも良いなのだろうか。
 それはマユミ本人にすら、わからない。
「我慢してるんっすね……そうっすよね、気持ちよくなったら浮気になるもんね」
 せめて、トモノリにいかされないこと。快楽をなるべく感じないことが、恋人へのせめてもの言い訳になるのだとでも言うように、マユミは歯を食いしばって耐える。
「でも、マンコが締め付けてくるのは……これは浮気じゃないんっすか」
 トモノリはそんな意地悪なことを言う。
「そんなのっ……ううっ……無理だしっ」

 突き上げられる快楽、声は抑えられても生物的な反応である膣の収縮を、抑えることなんて不可能だ。
「いいんっすよ、姉さんは悪くない……姉さんのマンコが、はしたなく感じてるだけっすから」
 マユミの頭をなでながら、トモノリはそんなことを言う。こんな舐めた真似をされたら、普段のマユミなら張った押してるところだけれど。
 いまは、その髪を撫で擦る指の感触さえ、そわそわと気持ちよく感じてしまう。
「ううっ……わたし……は……わたしはっ!」
「姉さんじゃなくて、姉さんのマンコが俺のと浮気しているだけですから。姉さんは悪くないですよ」
 そういって、マユミの口を吸い上げるように深いキスをした。
 それを受け入れるしかないマユミは、軽く絶頂を感じながら、すでに自ら腰を使ってしまっている自分にも気がつく。

 マユミが悪いんじゃなくて、自分の女性器が悪い。
 トモノリが口走った、そんなおかしな理屈に、すがるしかないのだ。
「そうだっ……私が悪いんじゃないっ。これ違うっ……」
「そうです、気持ちよくなったらいいっすよ。マユミ姉さんじゃなくて、マンコが悪いんっすから」
「私のマンコが勝手に感じてるの……私はこんなの望んでないからっ……」
 マユミは誘導されて、マンコなんて言葉を口走らされている。それを恥辱に感じる余裕もなかった。
「悪いマンコだな、マユミ姉さんは思ってないのに、勝手に感じてるんっすね」
「そうっ……そうなのっ……私は悪くない」
 がんがんとトモノリが腰を突き上げる動きにあわせて、もうマユミの腰は動いてしまっている。
 こなれている成人女性なのだ、どうしても条件反射で受け入れてしまっている。
 マユミは自分は悪くないという免罪符を得た。
 あとは、快楽に身を落とすだけだった。
「俺のチンコと、マユミ姉さんのマンコが、浮気してるんっすよ」
「だめっ……そんなのっ」
 ジュボジュボッと、音を聞かせるようにゆっくり出し入れしてやる。
 それが深い突きとなって、マユミの身体を吹き飛ばすような快楽を感じさせる。
「こんな悪いマンコには、お仕置きしないといけないっすねっ!」
「ああっ、うんっ……」
 マユミは、ぐっと舌をかみ締めるようにして快楽に耐える。
 この期におよんでも、せめて好きでもない男に、イカされたくないと思うのだろう。
「悪いマンコに、お仕置きの中出しするっす!」
「ああっ……ああっ……」
 熱くなった塊を、トモノリは我慢せずに吐き出すことにした。
 もう、マユミは快楽の波に翻弄されて、息も絶え絶えで。
 そんなマユミをぎゅっと抱きしめて、トモノリは限界を迎えた。
「マユミ姉さんの中に出すっ!……出るっ!」
「いやぁああぁっ!」

 ドピュン! そうはじけるように股間がマユミのなかで脈打つ。
 ドピュドピュドクドクドクッ……。

 自分の中で四方八方に吐き出される精液を、マユミの濡れた膣は喜んで収縮して受け止めた。
 トモノリが欲望を吐き出してしまって、ぐったりとなっても、マユミのマンコは小刻みに震えて、残りの精液を吸いだそうとしているのだ。
 絶頂の波を超えて、その事実に気がついたとき。
「ふうっ……たっぷり出たっすよ」
「わたし……わたし……」

 すべて精液を自分の中に出された、そう悟ったとき。
 マユミは、初めて本当に落胆した、絶望の表情を見せた。
 それを舐めるように楽しみ、悲しみにわなわなと震える唇を吸い上げた。
 もういいだろう、トモノリはマユミを開放してやることにした。

「中に出したから、取り返しがつかないかもしれないっすよ。いっそのこと、ミツヒコなんかやめて、俺と付き合わないっすか」
「そんなこと……できるわけないだろ……」
 あまりにも、暗く、かぼそく。それでいて、はっきりとした拒絶の言葉。
 それが覚悟していても、胸に突き刺さるほど痛く感じるほどに。トモノリはマユミが好きだった。
 だが、トモノリは笑顔だ。
 もともと自分が、マユミに釣り合う男ではないと分かっている。だから、唇をかみ締めて、トモノリはヘラヘラと笑って、こう付け加える。

「じゃあ『せめて』俺と子供を作りましょうよ」
「えっ……ああっ……それぐらいなら」
 その瞬間に、マユミはトモノリに妊娠させられてもいいと感じる。
 だから、もうマユミは苦しむことはない。

「じゃあ、姉さん。ちゃんと妊娠するように、もっと一緒にがんばりましょうか」
「ああっ、そうだな。若いんだから、一回で終わりなんて言わせないよ……」
 明日は二人とも休みだ。マユミとトモノリの夜はまだ始まったばかりだった。

< 終 >

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