第四話
娘を守るために田中と子作りすると宣言した玲子だったが、田中は何故か気乗りしない様子だった。
「玲子さん、俺と子作りするつもりになったんですか。うーん、今頃言われてもな」
「ええ……」
さっき玲子に子作りしようと言ったのは田中ではないか。
なのに、なんでそんな態度なのだ。
「だって唯花ちゃんがしてくれるっぽいし、若いほうがいいかなって」
これは、玲子の心にぐさりとくる。
「それは、私はもうおばさんですけど……。田中さんだって、歳が近い私のほうがいいんじゃないですか?」
玲子はもう三十四歳だ。
外に出て仕事しているから、なるべく小綺麗にはしているが、女の盛りはとうに過ぎている。
若々しい唯花と比べれば、見劣りするのは否めない。
でも、それを四十過ぎのおじさんである田中さんが言うか?
そう思って、玲子は釈然としなかった。
「俺としては、どっちでもいいんだけどな」
「私と子作りしてください。唯花は乗り気じゃないみたいだし、私のほうが田中さんを気持ちよくしてあげられますよ」
「ほう、確かに玲子さんのご奉仕の方が気持ちよさそうだね」
玲子は、必死に自分の利点をアピールする。
「そうですよ。これまでずっと田中さんにご奉仕してきたのは私ですから。私の方が唯花よりずっといいでしょう?」
「玲子さんは、そんなに俺の子種が欲しいのか」
そう言われると、本当は欲しいわけがない。
しかし、万が一にも娘に手を出されないために、ここは強くアピールしておくべきだろう。
「はい。田中さんの赤ちゃんが欲しいです」
「そっか。玲子さんは、そんなに俺のことが好きなのか」
「は、はい。前から頼りがいのある素敵な男性だなと思ってました!」
我ながら心にもないこと言ってると、少し心が痛む。
しかし、これも田中から娘を守るためだ。
「そこまで求められたら男として応えないわけにもいかないね。俺も唯花ちゃんより玲子さんのほうが、おっぱい大きくていいなと思ってたから」
この人はおっぱいしか見てないのかと玲子はげんなりするが、それで自分を選んでくれるならそれでいいと思うことにした。
「ほんとは唯花ちゃんと結婚するのもいいなと思ってたんだけどね。そしたら、玲子さんは俺のママになるでしょ。玲子さんに、ママとして甘えるのもいいかなって」
この人はなんて気持ち悪いことを考えるんだと、玲子はゾッとした。
前から気持ち悪い人だとは思っていたが、想像を絶するレベルの気持ち悪さだ。
年上のおっさんに息子として甘えられるなんて絶対にゴメンだ。
それだけは阻止しなくてはならない。
「で、でも、田中さんは唯花じゃなくて私を選んでくれたんですよね」
精一杯媚びて見せた。
「うん。凄い美人だし、仕事もできるし、良妻賢母だもんね。玲子さんよりいい女ってなかなかいないよなあ。俺もそろそろ適齢期だし、玲子さんと結婚してもいいよなあ」
いつの間にか結婚するって話になっている。
それは困る!
「あの田中さん。私は、前の夫に操を立てているので……」
もう十年以上もずっと独り身でやってきたのだ。
今更、誰かと結婚しようなんて思わない。
ましてや、田中さんみたいな頼りないおっさんと結婚なんてまっぴらゴメンだ。
「えっ、俺と子作りするのに結婚はしないの?」
「そうですね」
本当は子作りもしたくないのだが、田中さんとの結婚だけはゴメンだとうなずく。
「玲子さんは、ドスケベだなあ」
「えっ、えっ? なんでそうなるんですか?」
「だって、この玲子さんはオマンコに無責任に中出しもらいたいってことなんでしょ。それで子供ができても、シングルマザーで育てたいってことだよね」
言い方が酷すぎる!
でも、ここで否定してへそを曲げられても困るので玲子は嫌々うなずく。
「そ、そうなりますね……」
「それで興奮するなんて、玲子さんはそうとうなドスケベなんだな」
「は、はは……」
引きつった笑いを浮かべる玲子。
「そこまで言われちゃしょうがない。じゃあ、玲子さんが孕むまで毎日中出ししてあげるよ」
「……よろしくおねがいします」
田中の言い方がいちいち酷すぎるが、現実にすることはそのとおりなのだ。
玲子は、田中が納得して娘に危害がおよばないならそうするしかないと思うことにした。
< 続く >
読ませていただきましたー!
押しに弱くて断りにくい性格に付け込んで催眠術をかけて言いなりに……!
なんて鬼畜なんだ!(誉め言葉)
でも、現実でもこうやってろくでもない男に居座られていい様に弄ばれ続ける人って、いそうですね……。
こういう状態になると助けを呼んだり冷静な判断とかできなさそうで、怖い……!
個人的にですが、
「断れない性格を軸に催眠術にかけた」
ここ! 1行で説明されてますけど、催眠小説的にすごく気になるのですが!
アプローチから、フェラチオしてもらえるほどになるまでの過程がちょっとでも書かれていると嬉しいと思いました。
続きもお待ちしています!
失礼しました! 上の感想で名前入れ忘れてました!
ティーカさん感想ありがとうございます!
催眠小説としては催眠にあまり凝ってないので、感想いただけるかなと思ってたのでいただけて嬉しいです。
ティーカさんの作品も読ませていただきましたが、催眠にこだわってますもんね。
自分の作風ではあくまで催眠は道具に過ぎなくて、現実にはありえないシチュエーションエロを実現させようというコンセプトに凝って書いているところがあります。
今回だと、ヒロインの玲子が見るからに理不尽な田中さんを良い人だと誤認しているとか、催眠術なんてあるわけないと言ってるとか、滲み出るように術中にハマっているのがわかるところに催眠的なエロさを出したいなと思って書いてます。
>「断れない性格を軸に催眠術にかけた」
>ここ! 1行で説明されてますけど、催眠小説的にすごく気になるのですが!
>アプローチから、フェラチオしてもらえるほどになるまでの過程がちょっとでも書かれていると嬉しいと思いました。
ただ感想いただけたのは嬉しかったので、もうちょっと催眠シチュ好きにもわかりやすく楽しんでいただけるポイントが出せたらなと考えてやっていこうと思います。
次回も来月頭にはすぐ更新するつもりですので、楽しんでいただければ幸いです。
読ませていただきましたでよ~。
なんというか、いつの間にか催眠術にかかってるからそもそもそう言う性格なのだと言われても納得してしまいそうなごまかされっぷりでぅね。
もともと断れない性格らしいでぅが、どこまで断れないのかもよくわからないでぅし。
ただ、娘の代わりに自分を差し出すとかは流石に操られてるなぁという感じがしてよかったのでぅ。(警察に通報するという選択肢が消されてる)
ティーカさんも言ってるけれど、もうちょっと催眠をかけてる描写が見たい所でぅ。
唯花ちゃんに期待でぅ。
であ、次回も楽しみにしていますでよ~。
みゃふさん、ご意見ありがとうございます
>なんというか、いつの間にか催眠術にかかってるからそもそもそう言う性格なのだと言われても納得してしまいそうなごまかされっぷりでぅね。
そこは、言われるだろうなと思ってましたがこれほど言われるとは(汗
いわゆるわかりやすい催眠っぽい描写は対応しようと思って9話に入れる予定です。
今月は8話で精一杯なので、申し訳ない。
>ただ、娘の代わりに自分を差し出すとかは流石に操られてるなぁという感じがしてよかったのでぅ。(警察に通報するという選択肢が消されてる)
ありがとうございます。
この辺りを書きたいのだと自分では思います。
>唯花ちゃんに期待でぅ。
母親メインにしようと思ってこういうタイトルにしたんですが、そちらもちょっと考えてみます。
気楽に書こうと思った作品なので、皆様のご意見をいただきつつ気楽に頑張ってみます。
ヤラナイカーさん
読ませて頂きましたー。
綺麗な母子の家庭に侵食していく、異物。
この侵入者、支配者の名前が、
「田中さん」という、ものすごく一般的な
名字なのが、不穏な感じを強化していると思います。
背後のストーリーを読み込ませることを拒絶するような無記名性。
刹那的な、他人の家族の使役と、欲望の充足だけ考えているような
不気味さを感じました。
唯花ちゃん、逃げてー。
ヤラナイカーさんの畳み掛ける支配感増加描写。今回も楽しませてもらっています。
永慶さん感想ありがとうございます!
>「田中さん」という、ものすごく一般的な
>名字なのが、不穏な感じを強化していると思います。
ここは偽名なんだと思いますね。
名無しの代わりに、そう適当に名乗っているだけだろうなと。
さすが永慶さんは深い見方をするなあと、微に入り細を穿つような感想をいただいて嬉しくなりました。
楽しんでいただけるように頑張って書いていきます。