サイの血族 23

49

「すごい一日だったなぁ・・・」

 ふかふかのベッドに座って隼人は心底疲れたように言った。

 蒲郡にあるテーマパークに併設されたホテルに三人はチェックインした。いや、チェックインという言葉は正確じゃない。フロントで亜実が呪文を唱えたらホテルマンが黙って絵実にキーを渡したのだ。

 歩き通しだったので、さすがに亜実と絵実も疲れたらしく、口もきかずにベッドに倒れ込んだ。

 しばらくすると、ふたりはホテルのメモ帳になにかを書いて部屋のあちこちに貼りはじめた。

「なにそれ?」

「お札」

「えっ?」

「これで結界を作ってるの。こうすれば、あたしたちがここにいることは誰にもわからないし、入ってもこれないから」

「ふ~ん」

 お札といえば由緒ありげな和紙に筆で書くものだと思っていた隼人は、亜実の答えに頼りないものを感じた。なにしろメモ用紙にボールペンで書いているのだ。

「あっ、疑ってるでしょ?」

「だって・・・」

「隼人様といるとエッチな気分になって結界が緩んじゃうの。だからお札で結界を作るの」

「でもさ・・・亜実・・・」

 なにかに気づいたように絵実が言う。

「なによ?」

「生贄どうするの? あたし、やだよ。もう、隼人様以外の男となんてエッチしたくない」

「あっ・・・」

 亜実の手が止まる。

「なに? 生贄って?」

「あのね。結界を完成させるには関係ない人をイかせなきゃならないの。術を使って」

 絵実が隼人の質問に答える。亜実はなにかを考え込んでいる。

「あたしたち九の一は術で男をたぶらかせるの。さっきだって、フロントで術を使ったからこの部屋にタダでは入れたんだよ」

「そっか。僕が『サイ』を使ってごはんを食べたり、どこかに泊まったりするのと一緒だね」

「で・・・お札を使った結界を作るには術を使って気絶するまで男をイかせなきゃならないんだ」

「僕じゃダメなの?」

「ばかぁ・・・隼人様といっぱいしたいから結界作るんじゃない。隼人様が気絶しちゃったら・・・」

「ふ~ん・・・」

 どの道、結果はおんなじなんじゃないかと隼人は思った。

「隼人様、そんな趣味あったの?」

「趣味って?」

「術で身動きできなくされて、無理矢理イかされちゃうんだよ。気絶するまで。もしかして隼人様ってM?」

「いや・・・違うけど・・・」

「男じゃなきゃダメなのかな?」

 亜実が会話に割り込んできた。

「えっ?」

 絵実が驚いたように聞き返す。

「生贄のこと。あたしだって、もう他の男に触るのも嫌。それに生贄は男じゃないといけないってわけじゃないし。お屋形様だって女を使って結界作ってたし」

「だって、あたしたちの術は男にしか使えないんだよ」

「そっか・・・」

 亜実がため息をつく。

 ピンポ~ン♪

 そのときドアのチャイムが鳴った。

「誰っ?」

 亜実が身構える。

「あっ、ごめん。あたし。ルームサービスでコーヒー頼んだんだ」

 絵実はそう答えてドアミラーで外を確認してから鍵を開けた。

 やっぱり一族はコーヒーが好きなんだと隼人は思った。でも、ポットから漂う香りを嗅ぐと、隼人自身も猛烈にそれを欲していることに気がつく。

「こちらのテーブルでよろしいですか?」

 ウエイトレスがワゴンを押して部屋の中に入ってきた。

「隼人様!」

 絵実が叫んだ。

「えっ?」

「この女に『サイ』をかけて!」

「えっ?」

「早くっ!」

 絵実の切羽詰まった口調に、隼人は反射的に手をかざして「サイ」を唱えていた。もしかして新手の敵が責めてきたのかもしれないと思ったのだ。

 トランス状態になったウエイトレスは呆然と立ちつくしている。

「手足は動かせないようにして、意識だけを戻して」

「えっ? ええっ? それって・・・」

「いいから、早く」

 絵実の口調は有無を言わさぬ迫力があった。

「わ、わかった・・・」

 隼人は絵実の言うとおりに指示を出す。

 立ったまま焦点の合わない目を前に向けているウエイトレスは二十歳そこそこだろうか。三つ編みにした髪を左右に垂らしメイドっぽい紺の制服を着ている。おとなしげな顔立ちに赤いセルフレームのメガネがよく似合っていた。

 隼人に目を覚ますように言われると大きな瞳に光が戻った。

「わ・・・わたし・・・」

 怯えで声が震えている。無理もない。手足が金縛りにあったように動かせないのだから。

「わぁ、ラッキー。けっこう、かわいいじゃない。これなら、やりがいがあるかも」

 そう言う絵実の笑顔には、ゾッとするほどの凄味があった。

「名前は?」

「えっ・・・?」

「あんたの名前を聞いてるの」

「あ・・・あの・・・あ、秋野・・・です・・・」

「秋野、なに?」

「えっ?」

「下の名前」

「はい・・・保奈美・・・です・・・」

「ふ~ん、ホナミちゃんか。おっぱい大きいね」

「えっ・・・」

 保奈美と名乗ったウエイトレスの声に怯えが走る。

「怖がらなくてもいいよ。おとなしくしてれば気持ちいいだけなんだから」

 そう言いながら絵実はブラウスのボタンを外しはじめた。

「あっ! いや! なにを・・・」

 自分より若く見える小娘の行為に保奈美は驚き抵抗する。しかし、悲しいことに手足がまったく動かないのだ。

「亜実も手伝って」

 そう言われて、亜実は初めて気がついたように保奈美の服に手をかける。

「やっ! やめてっ!」

 抗う言葉も虚しく保奈美はあっという間に全裸にさせられてしまった。

 絵実の言うとおり保奈美の胸は大きかった。お椀を伏せたような半球の頂には小ぶりで赤味の強い乳首、そして下の茂みが燃え上がるように上を向いて生えている。

「あんっ! いやっ! どして・・・」

 素早く背後にまわり込んだ絵実が手をまわして両方の乳首をつまんで愛撫していた。

「やめてぇっ! おねがいします・・・いやっ! ああんっ!」

 前に立った亜実の右手が股間に差し込まれていた。

「いやっ! やめてぇ・・・やめて・・・ください・・・」

 大きく動いている感じはしないのに、保奈美の声はどんどん甘さを増していく。よほど巧みな指使いをしているのだろうと隼人は思った。

「い・・・や・・・ああんっ!」

 保奈美の肌が上気して桜色に染まりはじめ声も喘ぎへと変わっていく。

 反対に亜実と絵実の目は真剣そのものだ。

「うあっ!!」

 叫びとともに保奈美の身体が大きく震える。

 隼人の位置からははっきりと見えないが亜実が指を蜜壺へ挿入したらしい。ピチャピチャと肉と蜜がからみ合う音で指が激しく動いているのがわかる。蜜の匂いが漂ってきていた。

 なにもわからぬまま保奈美は官能の渦の中へ放り込まれてしまっていた。それは才蔵をひと言もしゃべらせずに倒したときの先取攻撃を彷彿とさせる手際のよさだった。

 いつの間にか亜実はしゃがんで顔を保奈美の股間に埋めていた。

 絵実も舌を首筋から背中へと這わせながら両手で愛撫を続けている。

 二人のコンビネーションプレイに保奈美の喘ぎは高く断続的になっていく。

「いやぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 ついに保奈美が絶叫した。ビクンビクンと何度も痙攣を繰り返す。

 隼人はただその光景を眺めているしかできなかった。手出しをしてはならないと頭の中の声が告げていたのだ。そうでなくても亜実と絵実にとってこれは楽しみではなく戦いなのだということが見ているだけで理解できる。

「これからよ」

 絵実はそう言いながら保奈美を抱えてベッドへ横たえる。

 すぐに亜実が大きく脚を開かせて貪るように秘肉を口にふくんだ。

 絵実は保奈美に覆い被さって唇をふさぎ、両手を使っていたるところに愛撫をくわえた。

「んっ! んんんっ!」

 術なのか訓練された性技なのか、痙攣を繰り返す保奈美がさらなる高みへ押し上げられていくのが隼人にもわかった。

 ひざの裏側を持ち上げられ大きく開いた脚。その先にある足の甲が脛と一直線になり震えている。指がなにかをつかもうとするように曲がっていた。

 やがて保奈美の身体は波打つように痙攣し、ふたりを弾き飛ばすように跳ねた。

 いくら「サイ」をかけたとはいえ、手足の自由を奪っただけで保奈美の意識は普通のはずだ。にもかかわらず、短時間でこれだけ深い愉悦の淵へ落とし込んでしまう技に隼人は舌を巻いていた。

 それだけじゃない。我を忘れて官能に溺れる保奈美の姿態に隼人は激しい欲望を覚えていた。

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 痙攣を繰り返しながら保奈美は絶叫した。

 そして、何度か身体をバウンドさせた後、ぐったりと弛緩してしまう。

 流れ落ちた蜜がシーツを濡らしていた。

 亜実と絵実は呪文を書いたメモ用紙を濡れた秘肉に押し当ててドアと窓の上に貼った。

「オンチラチラヤソワカ」

 ふたりは印を結んで呪文を唱えた。

「これで、この部屋にはだれも入ってこれないし、あたしたちがいることはだれにもわからない・・・って・・・あ・・・あれっ・・・」

 隼人に向かって微笑みながら言った絵実が目を丸くする。

「な・・・なんだよ・・・」

 絵実の視線に気がついて隼人はうろたえる。

「やだぁ~。隼人様のえっちぃ~」

 絵実はジーンズの上からでもはっきりとわかる隼人の膨らんだ股間を見つめながら言った。

「だって、あんなところを見せつけられて興奮するなって言う方が無理だよ」

「で・・・」

「なんだよ・・・?」

「隼人様はこの娘とエッチしたいんでしょ~? あたしたちと、あんなにした後なのにぃ・・・もう・・・エッチなんだからぁ~」

 その口調は、ちっとも怒っているふうじゃなかったので隼人は少しだけ安心した。

「どうせ『サイ』をかけちゃったんだから、やっちゃえば」

 こんどは亜実が言った。

「えっ? だって・・・」

「生贄だもん。こんどは隼人様がその娘を悦ばせれば、結界はもっと強くなるはずだよ」

「うん・・・でも、さっき亜実ちゃんや絵実ちゃんが僕以外の男とエッチしたくないって言ったじゃない。その気持ちがうれしかったから・・・」

「あ~ん。隼人様ったら、うれしいこと言ってくれちゃうんだから。でも、それじゃ俗人みたいよ。あたしたちが隼人様以外とエッチしたくないのはしもべだから。だから隼人様はいいの。でも、そこまで言ってくれるんなら、お願いがあるんだけど・・・」

 亜実が媚びを含んだ声で言う。

「なに?」

「その娘の感覚を、あたしたちに転送して欲しいの。だって、すっごく感度いいんだもん。うらやましくなっちゃった」

 どうやら、まだ一族に馴染みきっていないのは自分なのだと隼人は思った。亜実が望むなら、徹底的に保奈美をよろこばせてみよう、ふたりが他人の感覚で悶えるのを見るのもおもしろそうだ。

「サイ」の本性が目覚めて隼人は心の中で舌なめずりをしていた。

「保奈美ちゃん、起きて」

 隼人は保奈美の身体を揺する。

「う・・・う~ん・・・」

 ゆっくりと目を開ける保奈美。その瞳はまだ余韻が残っているらしく潤んでいた。しかし、隼人の姿を認めた瞬間、驚愕で大きく見開かれて息を飲んだ。

「やっ! いやぁっ!」

 どうやら「サイ」が解けてしまったらしい。自分が一糸まとわぬ姿でいることに気がついてベッドの背もたれに後ずさり、膝を抱いて身体を隠した。

 隼人は手をかざして「サイ」を唱える。

 このまま襲ってしまうのも一興だろうし、そうしても潤みきっている保奈美の身体は自分を受け入れてしまう自身が隼人にはあった。しかし、「サイ」をかけないと感覚を亜実と絵実に転送できないことを思い出したのだ。

 しゃがんだまま保奈美の両手がだらんと垂れ下がる。

「保奈美ちゃん、よく聞いて。僕がみっつ数えると意識は戻る。でも、いままで起こったことは忘れないし、僕からは逃げることができない。自分の感覚に素直になって僕を受け入れるんだ。そうすれば、いままで体験したことがない世界に行けるからね。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」

 隼人が数を数えると保奈美の瞳に光が戻った。

「いい子だ」

 隼人は手のひらで頬を撫でる。同時に快感を送り込んだのは言うまでもない。

「あんっ・・・」

 甘い声を上げで保奈美の身体がヒクリと震えた。

「きれいな身体だね。それに、女の子ふたりにいじめられて、あんなに感じるなんて、すごくエッチな身体だ・・・」

 隼人はそう言いながら手の位置をずらし、大きなバストを両手で包み込んだ。

「やっ・・・ああっ・・・」

 親指の腹で乳首のまわりを撫でると保奈美はブルブルと震えだした。亜実が言うように、そうとう感度がいいらしい。それに、手のひらにしっとりと吸い付いてくるような感触と豊かな重量感が隼人を夢中にさせた。

「ふにふにだね」

 隼人はバストの感触を楽しみながら保奈美の感覚を亜実と絵実に転送した。

 ふたりの表情が蕩けたようになる。

「保奈美ちゃん、教えて。女の子ふたりからエッチなことされるの初めてだったでしょ?」

「は・・・い・・・」

「どんな感じだったの?」

「あ・・・驚いたし・・・怖かったけど・・・」

「けど?」

「途中から気持ちよくなって・・・自分が・・・わからなくなって・・・」

 保奈美は答える。答えながら思い出して感覚がフラッシュバックしていく。それが隼人の狙いだった。亜実と絵実に辱められた感覚をふたりに返してみたかったのだ。

「どこが一番感じたの?」

「ゆ、指が・・・中に入ってきて・・・あそこが、あんなに感じるなんて・・・知らなかったの・・・」

「ここかな?」

 隼人はまだ濡れきっている蜜壺へ中指を挿入した。そしてGスポットのあたりを指の腹でこする。その場所は梨花から教えてもらっていたし、個人差があっても経験的に探し当てる術を獲得していた。

「はうぅぅぅっ!」

 あっという間に保奈美は高みへ押し上げられてしまう。

 亜実と絵実も身体をよじらせている。

「敏感なんだね」

 隼人はそう言って指先からオーガズムを送り込んだ。

「やぁっ!」

 保奈美はひと声叫んで身体を硬直させる。

「あっ・・・だめ・・・この娘・・・ダメ・・・伝染っちゃうぅ・・・」

 横で亜実も叫んだ。

「どしたの?」

 隼人は軽い気持ちで亜実に聞いた。

「ダメ・・・なの。この娘・・・Mなの・・・やだ・・・Mが伝染っちゃうから・・・ああん・・・」

「そ・・・そうなの?」

「ああ・・・ダメですぅ・・・困るぅぅ・・・」

 こんどは絵実が答えた。

 しかし、ふたりとも保奈美の感覚に支配されて身動きが取れないらしい。

「保奈美ちゃん、いじめられると感じるんだね?」

「は・・・はい・・・」

「だから、さっきも、ふたりにいじめられて感じちゃったんだ?」

「そ・・・そうです・・・」

「サイ」にかかっているせいで保奈美は素直に答える。

「じゃあ、縛られたり、叩かれたりすると感じちゃうんだ?」

「ああっ・・・恥ずかしい・・・そう・・・です・・・」

 隼人は梨花と長谷川恭子のプレイを思い出して興奮した。そして、部屋にあった浴衣の帯を手にして保奈美の手首と足首を縛り上げてしまう。もちろん両方ともだ。

「やぁっ! なにこれ? ジンジンしちゃうぅ・・・」

 絵実が悶えはじめた。

「縛られただけで感じちゃうんだ」

「ああっ・・・そうです・・・恥ずかしい・・・」

 保奈美の声は蕩けそうだ。

「じゃあ、もっと恥ずかしくしてあげるよ」

「ああっ! そんな・・・ああんっ!」

 隼人は保奈美をうつ伏せにしてしまう。結果、あのときの長谷川恭子のように手足を拘束されて尻を突き出す恰好になった保奈美は喘いだ。

 菊の花を思わせる薄茶のアヌスがヒクヒクと震えている。

「ここに入れてあげようか?」

 隼人は指の腹でそのすぼまりを撫でる。

「ああっ! ゆるして・・・お仕置きしないで・・・」

 縛られたことで保奈美は妄想と現実の見分けがつかなくなってしまっていた。

「お仕置き?」

「叩かないで・・・叩かれると・・・わたし・・・」

 そう言って保奈美は妖しくヒップをうごめかせる。

 叩いて欲しいのは明らかだった。

 保奈美が望むならそうした方がいいと隼人は思った。

「縛られて感じる悪い娘はこうしてやる!」

 パチンッと肉を打つ音。隼人が手のひらで丸く柔らかな双丘を叩いたのだ。

「ひゃうぅんっ!」

 甘い声を上げたのは亜実だった。

「ああん・・・ゆるして・・・ゆるしてください・・・」

 そう言いながら保奈美はさらにヒップを突き出している。

 保奈美の言葉と姿態が隼人の理性を飛ばした。

「感じるくせに!」

 隼人は続けざまに保奈美の尻を叩いた。

「いやっ! ゆるして! あああっ!!」

 保奈美の秘所から蜜があふれる。

 いつの間にか亜実と絵実は自分の足首をつかんでヒップを突き出す恰好になって喘いでいた。

「いやらしい娘だな。こんどはこれだ!」

 ジーンズを下ろした隼人は屹立を蜜壺にあてがった。

「ああっ・・・ゆるして・・・いやぁぁぁっ!!!」

 禍々しささえ感じる隼人の屹立が挿入されると、保奈美は背中をのけ反らせてあらん限りの声で叫んだ。

 グイグイと隼人のものを締めつけてくる。

「これが欲しかったんだろ? 正直に言うんだ」

「そうです・・・ああっ・・・わたしは・・・いやらしい・・・女・・・」

「いつも、こうして縛られてエッチしてるんだ?」

「ち・・・違います・・・想像・・・してるだけ・・・ああっ・・・もっと」

「こう?」

 隼人は挿送の速度を速める。パンパンと肉を打つ音が部屋に響いた。

「ああんっ! すごい! こんなの・・・はじめて・・・あああっ!」

「まだまだだよ」

 隼人はオーガズムを屹立の先から送り込んだ。

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

 縛られたまま保奈美の身体がバウンドする。

 それでも隼人の挿送は止まらない。

 興奮で屹立が限界まで硬くなっていた。

「ああっ! これ以上は・・・ダメッ・・・奥まで・・・熱いのが・・・あたって・・・あうぅぅっ!」

 叫びとともに大量の蜜がほとばしった。

 亜実と絵実も痙攣している。

 蜜壺の奥で硬い肉が屹立を飲み込もうとしているようだ。保奈美が奥まで当たっていると表現したのは、保奈美自身の子宮口が降りてきたからに違いない。その感触に隼人にも限界が訪れた。

「あうぅぅぅんっ!!!」

「気」のこもったマグマが保奈美の子宮を直撃した。隼人が括約筋を締めるたびに溶岩のように熱い精液がほとばしる。その感覚を隼人は三人に送り込んでいた。

 保奈美は硬直してブルブルと震えた。

 そして、そのままガックリと弛緩してしまう。

 保奈美のよろこびと隼人の絶頂を同時に送り込まれた亜実も絵実も意識を失ってしまった。

 隼人はブルブルッと身体を震わせると半ば萎えた屹立を引き抜いた。下半身の爽快感と獣が目覚めた後の罪悪感が入り混じった複雑な気持ちで意識を失っている保奈美を見下ろす。

 縛めを解くと、赤くなった帯の跡が痛々しかった。

「やばいもの覚えちゃった・・・」

 しばらくすると先に目を覚ました亜実がつぶやくように言った。

「隼人様がこの女の隠れた欲望を呼び起こしちゃったんだ。あたしたちにも、それが伝染っちゃった。こんな世界があるなんて知らなかった・・・」

 隼人の視線に気がついた亜実はそう続けた。

「僕も自分が自分じゃないみたいだった・・・」

 どこかで体験したようなデジャヴを感じながら隼人も答えた。

「どうするの?」

「なにを?」

「この女、後戻りできないよ。『サイ』で記憶を消しても、味わった快楽は身体に刻み込まれちゃってるから」

「そうなの?」

「うん。放っておけば見境なく求める淫乱女になっちゃうかも。もしかしたら『マ』になっちゃう・・・」

 その言葉を聞いて隼人は怖くなった。

「結界を作るための生贄になってもらっただけでよかったのに・・・どうすればいいんだろう・・・」

「別のパートナーを見つければいいんだ。『マ』になったら厄介だから」

 途方に暮れる隼人に、ちょっと前から目を覚ましていたらしい絵実が言った。

「絵実ちゃん・・・どうやって・・・」

「まずは、その娘を起こさなきゃ」

 絵実は保奈美の身体を揺する。

「あんた、縛られたり叩かれたりされるのを想像してるって言ってたでしょ。相手は誰なの? 誰にされるのを想像してたの?」

 目を開けた保奈美に絵実が聞いた。しかし、保奈美の視線は焦点を結んでおらず、絵実の問いにも答えない。

「だめだよ。『サイ』がかかっちゃってるから隼人様に聞いてもらわなきゃ」

 呆然としている保奈美を見て亜実が言う。

「そっか。隼人様、お願い」

「うん、わかった。保奈美ちゃん、誰に縛られること想像してたの?」

「GMです・・・」

 保奈美は抑揚なく答える。

「GMって?」

「あの・・・ここの支配人です・・・」

「支配人が好きだったんだ」

「はい・・・仕事で怒られても、あとでやさしく慰めてくれるんです。でも、わたしは・・・お仕置きして・・・欲しかった・・・」

「支配人と付き合ってるの?」

「いいえ・・・わたしの片思いです・・・」

「だったら、あたしたちが結びつけちゃえばいいんだ。どうせ、この娘が仕事中にいなくなったのを取り繕うために操作しなきゃならなかったんだから一石二鳥だよ」

 保奈美の言葉を聞いて絵実はそう言った。

「善は急げって言うじゃない。この娘に命令してGMを呼び出すように言って」

「どうやって?」

「お客に問題があるから来てって言わせればいいんだよ」

「うん。保奈美ちゃん、僕らが困っているからって内線で支配人を呼んで」

「はい・・・」

 保奈美はベッドサイドにある電話機を手にして隼人の言うとおりにした。

 数分後、部屋のチャイムが鳴る。ドアを開けたのは亜実だった。

「これは・・・秋野君・・・」

 まだ全裸でベッドに横たわる保奈美を見て支配人は息を飲んだ。

「オンシラバッタニリウンソワカ!」

 亜実と絵実が印を結んで呪文を唱えた。

 支配人は衝撃を受けたように震え、そのままの姿勢で固まってしまう。

「GMさん。名前はなんていうの?」

「藤堂・・・武彦・・・です・・・」

 亜実の問いにトランス状態になった支配人が答える。三十半ばくらいだろうか、仕立てのいいスーツに身を包んだ真面目そうな男だ。

「藤堂さんっていうんだ。ここに裸でいる娘を見てどう思う?」

「秋野君・・・どうして・・・」

「その秋野さんは藤堂さんが好きで、ここで裸で待ってたの。仕事でミスして怒られた後、慰められるよりお仕置きされたいんだって。今日も、ここでサボって、あたしたちと遊んでいたからお仕置きしてくれる」

 妖しすぎる笑みを浮かべて亜実が言った。

「あきの・・・くん・・・」

 藤堂の息が荒くなった。

「藤堂さんは保奈美ちゃんのこと好きなのよね?」

「すき・・・とか・・・では・・・」

「嫌いなの?」

「いや・・・」

「じゃあ、好きなんじゃない。男ならはっきりしなさいよ」

「は、はい・・・」

「あんたを好きな娘がお仕置きされたくて裸で待ってるのよ」

「どう・・・すれば・・・」

「そこにある浴衣の帯でこの娘を縛って、お尻を叩いて、あんたのものをお尻の穴に入れちゃえばいいの。わかった?」

「は・・・い・・・」

 藤堂の動作は出来損ないのロボットみたいにぎこちなかった。それでも、帯を持って保奈美を後ろ手に縛りはじめる。

「あんたも脱がなきゃダメじゃない」

「あ・・・はい・・・」

 藤堂は几帳面な性格らしく脱いだスーツをハンガーに掛け下着をたたんでクローゼットに収めた。

「ふん、紳士面しても身体は正直ね」

 亜実の言葉通り、藤堂は勃起していた。

「隼人様、あの娘に命令して。あいつが叩くとすごく感じるって」

 絵実が隼人にささやく。

「保奈美ちゃん、君が好きだった支配人だよ。これからお仕置きをしてくれるんだって。うれしいだろ。なにをされても、いままでよりずっと感じるよ。だから自分を解放するんだ」

 隼人の言葉を聞く保奈美は期待で頬を朱く染めた。

「イギリスの寄宿舎でやるみたいにその娘のお尻を叩くのよ!」

 隣では亜実が藤堂に命令を下していた。ホテルの利用規約を束ねたファイルを手渡している。

 藤堂の目の色が変わった。

「ここで、なにをしていた?」

 保奈美のアゴを持って聞く。

「ごめんなさい。わたし・・・この人たちに無理矢理・・・」

「人のせいにするんじゃない。ましてホテルマンなら、お客様を悪く言うなどもってのほかだ!」

 ファイルが保奈美のヒップに振り下ろされた。

 バチ~ンッ! 派手な音がして保奈美が悲鳴を上げる。

「ゆるして・・・ゆるしてください・・・」

「だめだ。お前のような悪い子はこうしてやる!」

 ふたたびファイルが振り下ろされる。

「ああん・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 許しを請う保奈美の声には甘さが宿っている。

「うるさい!」

 何度もファイルが振り下ろされ保奈美のヒップは真っ赤になっていく。

 それでもヒップを突き出す姿勢を崩そうとはしない。あふれる蜜で隼人の精液が押し出されて、ふとももに添って流れ落ちていく。

 藤堂の顔は興奮で紅潮していた。

 ついに我慢ができなくなってベッドに上がり保奈美の腰を抱える。

 亜実に言われたとおりアヌスへ屹立をあてがい、やみくもに腰を突き立てる。しかし、潤滑剤抜きでは入るものではない。

「あそこのお汁で濡らさないと入らないわよ」

 亜実が助言すると、藤堂は初めて気がついたように指先で蜜をすくい取ってアヌスに塗り拡げる。術がかかっている頭では命令に従うだけで思考が働かないらしい。

「ああっ! ああん!」

 洪水のようになった秘肉への刺激か、それとも後ろが感じるのか、保奈美は甘い声で喘ぐ。

「そうよ。もっと濡らして。おちんちんもね」

 亜実が命令すると、藤堂は蜜を自分のものにも塗りはじめた。

「きゃうっ!」

 保奈美が不思議な声を上げたとき藤堂の亀頭はアヌスへ埋没していた。

「や・・・やめてぇ・・・いたい・・・いたいの・・・」

 保奈美が痛みを訴える。

「当たり前だ。お仕置きだからな」

 そう言いながら藤堂は結合を深めていく。

「いや・・・ゆるして・・・ああっ! こんな・・・」

 保奈美の声は悲鳴に近い。

「秋野、俺にお仕置きして欲しかったんだろう?」

 藤堂が勝ち誇ったように言う。

「ああ・・・もう・・・堪忍・・・して・・・あぁぁっ!」

「だめだ!」

 ついに屹立が根本まで収まってしまう。

「あぅぅぅっ! ゆるしてぇぇっ!」

 興奮のせいか藤堂は汗びっしょりだ。額から頬に伝わった汗がアゴから流れ落ちて、許しを請う保奈美の背中を濡らす。

「俺のものをぶちまけてやる!」

「いやぁぁぁぁっ!」

「うおぉぉぉぉっ!」

 保奈美の悲鳴と藤堂の雄叫びが部屋中に響いた。

 そのまま藤堂は座り込んでしまい屹立が抜けた。痙攣する保奈美のアヌスは藤堂のものの太さのまま開ききって内部の粘膜を曝していた。しかし、次の瞬間には脱力して支えるものを失ったように横になって転がってしまう。

「これで、この娘はあなたの奴隷よ。でも、あなたもこの娘から離れられないの。もし、この娘が悲しむようなことをしたらお狐様が祟るからね。わかったら返事なさい」

「わかり・・・ました・・・」

 亜実の言葉に藤堂は抑揚のない声で答える。

「ほら、帯を解いて。この娘に服を着せてあげなさい。あなたもね」

「はい・・・」

 藤堂は命令に従い保奈美の服を着せると、自分の身なりも整えた。

「隼人様、この娘にもおんなじことを」

「あ・・・うん。保奈美ちゃん、君は支配人のものになったんだ。わかる?」

 保奈美がうなずく。

「僕が『サイ』って言うと現実に戻る。そのときには僕らとしたことは忘れてしまうけど、支配人とのことはずっと続くんだ。わかるね」

「は・・・い・・・」

 余韻のせいで荒い息をしながら保奈美が答えた。

「サイ!」

「オンシラバッタニリウンソワカ!」

 隼人と亜実、そして絵実が同時に呪文を唱える。

 藤堂と保奈美は一瞬震えてからお互いを見る。保奈美ははにかみ、藤堂も満足げな微笑みを浮かべていた。

「ねえ、支配人。この部屋、汚れちゃってるから、他の部屋に移りたいんだけど」

 亜実が言う。ベッドの惨状は、とても身体を休める場所ではなくなっていた。

「かしこまりました。皆さまのためにスイートルームをご用意させていただきます。お食事も、この秋野に用意させますので、ゆっくりとおくつろぎください」

 藤堂はホテルマン独特の慇懃な口調でそう言った。

「これで『マ』になる心配はなくなったわ」

 藤堂と保奈美が部屋を出ていった後、亜実はため息をつくように言った。

 三人はスイートルームへ移って食事をし、泥のように眠った。

 もちろん結界に使うお札も移動させたことは言うまでもない。

< 続く >

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