プロローグ
美波がいけないんだ。
そう思いながら俊は突っ立ったまま動かない、いや、動けなくなった美波を見ていた。
これからしなくちゃならないことを考えると身体がすこし震えた。
「服、脱がすよ」
俊がそう言うと美波の目に怯えが走った。
その目を見て躊躇しながらも、俊はやらなきゃならないと思い直し、チェックのリボンタイに指をかける。首の後ろに手をまわして金具を外そうとすると美波を抱くような恰好になり、荒くなった息づかいをシャツ越しに感じた。
シャツブラウスの第一ボタンを外すと胸元の透明感のある白い肌が目に飛び込んできた。
「ほ、ほんとに・・・ほんとなの?」
美波が怯えた声で俊を見上げる。
「うん。もう後戻りはできない。術をかけたら最後までやらなきゃならないんだ。情けをかけたら二人とも死んじゃうって父さんが言ってた」
俊はボタンを外しながら答える。
かわいらしい水色のブラジャーが露わになる。
「やっ! こんなの、いや・・・俊・・・やめて・・・」
胸元を見る俊の視線に気がついた美波は息を飲みながら言った。
そんな言葉を無視して、俊はプリーツスカートにたくし込んだシャツブラウスの裾を引っ張り出してボタンをすべて外した。
「いやっ! 恥ずかしい・・・」
「だって、やれって言ったのは美波じゃないか。それとも僕のことが嫌い?」
「そうじゃないけど・・・こんなの・・・ひどいよ・・・」
美波がそう言ったときにはスカートのホックを外していた。
ジッパーを下ろすとパサッと音を立てて足元にスカートが落ちる。
シャツブラウスの前をはだけ淡い水色のコンビのブラジャーとショーツが露わになる。幼いころからよく知っている美波が、ひとりの女として目の前に現れた感じだった。
◆
俊の人生が大きく変わったのは数日前のこと。占い師をしている父親が血を吐いて倒れた。そして、病床に付き添った俊に驚くべきことが告げられたのだ。
父親の上賀茂忠幸は占い師と言っても街角で客を待つような商売はしていなかった。政財界のお歴々がお伺いを立てるために訪ねてくるのだ。そんな忠幸を俊は尊敬もしていたし畏れもしていた。
俊には母親がいない。物心がついたとき忠幸にたずねたことがある。すると上賀茂家には女がいないのだと聞かされた。そのときから、俊は自分がまわりと違うのだとなんとなく自覚するようになった。
「俊・・・よく聞け・・・」
往診に来た医者が帰ると忠幸は俊に言った。
「お父さん、大きな病院で診てもらった方が・・・」
「いや、無駄だ。儂の命は二日ともたない」
「そんな・・・病院に行けば・・・」
「俊、お前に跡を継いでもらいたい」
「えっ? どういうこと?」
「上賀茂家は代々、占いを生業としてきた。これは小鬼としゃべる能力があるからだ」
「なにそれ?」
「お前がもうすこし成長したら話そうと思っていた。が、もう時間がないようだ。そう小鬼が教えてくれた」
「お父さん。しっかりしてよ」
俊は忠幸が病気で錯乱してしまったのだと思った。
「聞け。儂が死んだら能力はお前に伝わる。しかし、すべての能力を使えるようになるには通過儀礼が必要なんだ。処女の血がいる。破瓜の血がお前の中の小鬼を目覚めさせる」
「なにそれ? わけ、わかんないよ」
「上賀茂家の男には、ことさやぐものどもの声が聞こえる。それを我らは小鬼と呼んでおる。その声を聞けばすこし未来のことがわかるのだよ。確実にな。だから占いを生業にしてきた。上賀茂の祖は役小角とも言われておる」
「・・・」
あまりに突拍子もない話に俊は二の句が継げない。
「もうひとつの能力は金縛りの術だ」
「・・・」
「あまり役に立つ術ではないが、小鬼を目覚めさせるときには金縛りにあった処女の血が必要になる。印を結べば目の前にいる者を金縛りにできる」
「印って・・・?」
「こうだ。やってみろ」
忠幸は両手の指を組んで、人差し指だけを真っ直ぐに合わせたあと、指先をそのままに第二関節を曲げて四角を作った。
「こう?」
俊は忠幸の真似をする。
「うむ。そして『オン・ソラソバテイ・ソワカ』と唱える。これで目の前にいる女は金縛りにあう。男のときは『オン・バサラ』でいい」
「そんなの覚えられないよ」
「まだ呪文はたくさんある。儂の机の中に、そのすべてを書き留めたノートがあるから後で読めばよい。とにかく術をかけた処女と交わるのだ」
「でも、それって犯罪っぽいね。レイプとかで訴えられそうだ」
「心配ない。術を使う者の手と舌と摩羅には力が宿る。簡単に言ってしまえば普通の男には不可能な快感を与えられるのだ。その力に逆らえる女などこの世にはおらん。交わった女はお前のしもべとなるであろう」
「じゃあ僕のお母さんは・・・」
「上賀茂の家に女はいないが余所で囲うことはできる。お前の母親は不幸な事故で亡くしてしまったが、そういうわけだ」
「そうだったんだ・・・」
「とにかく、能力だけは覚醒させるんだ」
「うん。わかった」
現実感はなかったが、俊は忠幸を安心させるためにそう答えた。
「お前が占い師になるかならないかは自分で決めればよい。しかし能力を目覚めさせないと、お前の中の小鬼が暴れ出して死に至るか気が狂ってしまうから通過儀礼だけは済ませておくことだ。後のことは小鬼が教えてくれる。それから処女を奪うとき情に流されて途中でやめてはいかん。そうすれば術がお前に返り、これも二人とも死に至る。忘れるなよ」
それだけ言うと忠幸は目を閉じた。そして二度と目を覚ますことはなかった。
◆
「このたびはご愁傷様でした」
通夜が終わり式場に一人で残った俊に、いつの間にかやって来た男が声をかけた。
その顔を見て驚いた。テレビでよく見る次期首相と噂されている保守党の幹事長だったからだ。式場の出入り口付近にはSPらしき屈強のスーツ姿の男が四人ほど立っている。
「本当に惜しい方を亡くしました。それで、あなたは跡を継がれるんですか?」
「あ・・・あの・・・」
「あ、失礼。私は石渡玄三といって、生前、お父様のお世話になった者です」
「はい・・・お顔と名前は・・・父が言ってたことは本当だったんですね」
「よかった。話は通じていたんですね。安心しました。もし、あなたが跡を継がれるのであれば、わたしたちは全力であなたをバックアップします」
「でも、僕はまだ・・・能力があるかどうか・・・それに、いまは、そんなことを考えられないんです・・・」
「ごもっともです。落ち着いたら、ここへ電話をしてください。私の言ったことを忘れずに。必ずですよ」
男は念を押して内ポケットから取り出した名刺にボールペンで携帯の番号を記した。
去っていく男の後ろ姿を呆然と眺めていると、入れ替わるように初老の男がやってきて挨拶をした。差し出された名刺を見ると、誰もが知っている大企業の社長だった。その男も石渡と同じことを言って辞した。
その夜、俊は例えようのない疼きを覚えた。性欲はないのに痛いほど勃起している。いや、それどころではない。信じられないくらい大きく硬く膨れ上がっているのだ。「小鬼が暴れ出して死に至る」といった忠幸の言葉を思い出す。放っておけば屹立が破裂して身体中の血が噴き出してしまうように思えた。
自分の身体は普通の人間とは違うのだと思った。好むと好まざるに関わらず、自分の運命が大きく方向転換したのだと自覚せざるを得なかった。
◆
「俊、大丈夫?」
火葬場からの帰り、骨壺を抱いて家に入ろうとしたとき美波が声をかけた。
どうやら、門がある階段に座って俊の帰りを待っていたらしい。
安田美波。隣に住む幼なじみだ。年も同じ、幼稚園から、いま通っている高校まで一緒。俊にとっては気の休まる唯一の友人と言っていいだろう。どちらかというと俊は内向的な性格で、幼いころから積極的に友人を作って遊ぶようなタイプではなかった。それなのに、なぜか美波だけは気が合ってよく遊んだ。
子供のころから兄弟のように遊んで育ったからか、何でも話せる親友のような関係が続いている。
クリッとした大きな瞳とショートヘアーはボーイッシュで活発な印象だが、最近は身体つきが女らしくなり、制服のシャツブラウスを持ち上げるバストはクラスでも五指に入るくらい大きい。ミニのプリーツスカートに包まれたヒップはボールが入っているのではないかと思うくらいまんまるで、その下に伸びる脚はまっすぐで美しい。そんな美波のことを、俊はちょっとだけ女として意識するようになっていた。
「サンキュー。自分でも驚くくらいショックじゃないんだけど・・・これで、ひとりぼっちになっちゃった・・・」
俊は美波に笑顔を向ける。正直な話、悲しいことは悲しいのだが、落ち込むどころか違う世界に飛び込んでいくような期待感があって精神的には調子がいいくらいなのだ。
「そうなんだ・・・お葬式には誰も呼ばないっていうから・・・クラスのみんなも心配しているよ」
美波も俊の笑顔を見て安心したように言う。
近親者のみで弔いは行うようにという遺言が見つかり誰も呼ばずに葬式を済ませたのだ。
「うん。親戚もいないしね。明日からは学校に出るよ」
「ねえ」
「なに?」
「お線香、あげさせてくれないかな? おじさんには、ずいぶんお世話になったから」
「いいよ。入って」
俊は玄関の鍵を開けた。
俊の家には仏壇などなく、葬儀社の人が作った簡単な祭壇に骨壺の入った箱を置く。
美波はロウソクで線香に火をつけて、真新しい線香立てに立てて手を合わせる。
「ほんと、突然だったね」
「うん」
「ねえ」
「なに?」
「これからどうするの?」
「なにを?」
「だって・・・」
「家のことは、いままでどおりお手伝いさんが来てくれるし、お金だって当分は困らないくらいあるから」
「ふうん・・・」
美波の口調はなんとなく不満げだ。美波自身も、どうしてそんな気分になるのか理解できない。俊が落ち込んでいたら慰めたいと思っていたのに、肩すかしを食らって残念な感じもする。
「いざとなったら、お父さんの跡を継げばいいんだし」
「占いなんてできるの?」
「ああ。能力に目覚めればできるらしいんだ」
「なにそれ?」
「上賀茂家は役小角の末裔で、ある通過儀礼を済ませば占いの能力が身につくんだってさ」
「なんか神秘的ね」
興味を覚えたらしく美波は身を乗りだしてきた。
「そうでもないよ」
「どうして?」
「ちょっと言いたくない内容なんだ」
「そこまで話して、それ、ひどくない?」
「あんまり、いい話じゃないんだよ。古代の呪法だからね」
「生贄の心臓を神に捧げるとか?」
美波の眼がいたずらっ子のように光る。
「インカ帝国じゃあるまいし、そんなんじゃないよ」
「ねえ、聞かせて。誰にもしゃべらないから」
美波は言いだしたら聞かない意志の強いところがある。それに、普通の女の子のように噂をばらまくような娘ではない。幼なじみの気易さも手伝って、美波にだったら話してもいいのではないかと俊は思った。
「絶対にヒミツだぞ。守れる?」
「うん!」
美波の眼が輝く。
「金縛りの術を使って処女を奪うと能力が目覚めるんだって」
「なにそれ?」
「だから・・・能力を目覚めさせるには処女とエッチしなきゃならないらしいんだ」
「不潔!」
「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか。そう伝わってるんだもん」
機嫌を損ねたような美波の顔を見て俊は言い訳をした。
「じゃあ、俊は生活に困ったら誰かを金縛りにして、処女を奪って占い師になるんだ」
「なんだよ、その言い方。棘があるなぁ」
「だって・・・」
美波がむくれる。なぜだかわからないが、俊が他の女とセックスをすることを想像すると思うと猛烈に腹が立った。
「まあ、別になりたいわけじゃないし」
「ほんと?」
「うん。でも・・・いつかは能力を目覚めさせなきゃならないんだって」
「どうして?」
「僕の中には小鬼がいて儀式をしないと暴れ出して・・・もう、いいよ。こんな話、やめにしよう」
「そんなこと言って誤魔化そうとしてるでしょ」
「違ぇよ・・・」
「この前、テレビでやってたけど、金縛りなんてレム睡眠のときの錯覚だからないんだって。なんか怪しいなぁ」
美波が突っかかってくる。
「僕だって、まだ、ぜんぶは信じられないんだ。だから、やめにしようよ」
「そんなこと言って、誰かに試そうとしてるんだ。きっと」
「試すもなにも・・・」
「やだからね! あたし、俊が他の女とそんなことするの」
美波の眼がつり上がっている。
「だったら、お前が金縛りになるのかよ?」
美波の剣幕に押されて、つい、俊はそう言ってしまった。
「ふんっ。だから金縛りなんてないんだから。いいわよ。やれるものなら、やってみなさいよ」
売り言葉に買い言葉という感じで美波も答える。
「だって、かかったら・・・エッチしなきゃならないんだぜ。それに、お前、処女なの?」
「当たり前でしょ! やってみなさいよ!」
美波もムキになって答える。
「かかったら、後戻りはできないんだぞ。途中でやめたら二人とも死んじゃうんだって。それでもいいのかよ?」
「できないから脅してるんでしょ。俊の嘘つき!」
美波は立ち上がって叫ぶ。
俊は抑えがたい衝動を覚えた。簡単に言えば切れた。
「わかったよ。後悔しても知らないぞ」
忠幸から教わった印を結ぶと「オン・ソラソバテイ・ソワカ」と唱えた。
なぜだか呪文を覚えていたのだ。
その瞬間、轟と音がして部屋の温度が数度下がった気がした。
◆
気がつくと美波は塑像のように立ちつくして動く気配がない。
「美波・・・」
俊は美波の名前を呼んだ。
「や・・・やだ・・・戻して・・・お願い・・・」
「ほんとにかかっちゃったんだ・・・動けないの?」
「う、うん・・・」
そう答える美波はうなずくこともできないらしい。
「だめだよ・・・途中でやめたら二人とも死んじゃう・・・」
「うそ・・・嘘って言って・・・」
「嘘じゃない。僕にはわかる。もう、血が目覚めはじめている・・・」
美波が突っかかってくるから悪いんだと思ったが、そんなことは口にできない。やるしかない。そう血が告げていた。
「父さんが言ってた」
「なんて?」
「後悔役立たず・・・だって・・・」
「ば・・・ばかぁ・・・」
「後戻りはできないんだ・・・」
「や・・・やだよう・・・」
美波の眼から涙がこぼれる。
「ごめんね。もう、美波を抱くしかないんだ。でも、僕の初めての相手が美波でよかったっていう気持ちもあるんだ・・・」
俊は自分でなにを言っているのかわからなかった。
「や・・・こんなのは、いや・・・」
「服、脱がすよ」
俊はすこし震えながら言う。
そして気がつくと前をはだけ下着を晒す美波が目の前にいた。
ここまでは勢いでやってしまったが、ほんとうに美波を抱いてしまっていいのかと俊は心の中で自問した。もしやめてしまったら二人とも死んでしまうのか、美波が金縛りになったからには忠幸の言葉を信じるしかない。
俊は先に進むことを決意した。
肩に手を置いてシャツブラウスを滑らせるようにして脱がせる。
「俊・・・やめて・・・恥ずかしい・・・よう・・・」
ワンポイントが入った紺のハイソックスを脱がせると、美波が涙を流しながら懇願した。
「ごめんよ。美波を死なせたくないんだ」
俊はなにかに操られるようにブラジャーのホックを外す。
美波の白い肌と豊かなバストを見て、俊は初めて欲望を覚えた。
「美波って・・・こんなにきれいだったんだね・・・」
「いやっ! こんなふうにされて褒められても・・・うれしくないもん・・・」
「ごめん」
そう言いながら俊は一気にショーツを下ろしてしまう。
「いやぁ~っ!」
ついに最後の一枚を脱がされて、生まれたままの姿を晒してしまった美波は羞恥の叫びをあげる。
「ごめん。やさしくするから」
俊は何度も謝りながら美波を抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこだ。最初、立ったままの姿勢だったらどうしようと心配したが、外から力を加えれば身体は動くことがわかった。
俊はソファーに美波を横たえる。
「きれいだよ。美波」
そう言いながら右手で包み込むようにバストを揉む。
「だめぇ・・・」
美波の口調に甘さが宿る。
そんなことに気がつく暇もなく俊は吸い付いてくるような肌の柔らかさに夢中になってしまった。
「すごい・・・美波・・・気持ちいい・・・」
両手でバストを揉むと親指の腹にかかる薄茶色の乳首が硬くなっていくのがわかる。
「ああっ・・・だめぇ・・・どうして・・・ああんっ・・・」
美波の息づかいが甘く荒くなっていく。
「あふぅ・・・」
たまらず俊は唇を重ねる。ねっとりと柔らかい美波の唇は俊のなにかを弾けさせた。
「だめ・・・なのに・・・ああんっ・・・」
唇を首筋に移動させると、声の様子から美波が官能に支配されつつあるのがわかった。
俊は「普通の男には不可能な快感を与えられる」と言った忠幸の言葉を思い出した。ならば手と舌と摩羅に宿る力を試してみようと右手を下腹の方へ滑らせていく。
「はうぅぅぅっ!」
柔らかい陰毛、その先にある秘肉へ指先が届いたとき、美波は叫びとも喘ぎともとれる声を上げた。クニュリとした感触の秘肉には熱い蜜があふれている。
「美波・・・感じてるんだね・・・」
俊は指先で硬い肉を探りあてる。
「いやぁっ! こんなの・・・ゆる・・・許してぇっ・・・あうっ!」
さっきまで、あんなに嫌がっていた美波に変化が訪れた。忠幸が言ったように特別な力を得たことを確信した。美波の甘い声に気をよくして、俊は指で敏感な部分をまさぐる。
「ああっ! あんっ! あんっ!」
指の動きにシンクロして美波は喘ぐ。
その声を聞いていたら、感じている部分が見たくてたまらなくなった。
俊はものも言わずに立ち上がると美波の片足を背もたれにかけ大きく脚を開かせる。
「だめぇ! 見ないで! いやっ! いやぁっ!」
抵抗する言葉を無視するように俊は秘所へ顔を近づけていく。
「すげぇ・・・こんなだったんだ・・・」
美波の秘所は淡いピンクの肉が織りなすアラベスクだった。エロさを通り越した神秘すら感じて俊はため息をつく。
通過儀礼のことなど忘れて俊は欲望の虜になった。
「やっ! 俊のばかっ! エッチ! 見ないで!」
「いや・・・きれいだよ・・・」
俊は吸い込まれるように親指で拡げた秘所に唇を寄せる。
「はうっ!!」
その瞬間、美波は大きな声で喘いだ。
「やぁっ! それ・・・やばい! おかしくな・・・る!」
俊の舌先が肉芽を捕らえ転がすように舐められると、美波の声がさらに甘くなった。
「あっ! くぅ・・・こんなの・・・あぁぁぁぁっ!!!」
ついに絶頂を迎えてしまったらしく、長く甘い鳴き声がリビングに響いた。
我慢ができなくなった俊は立ち上がって服を脱ぎはじめる。
「なにそれ? やだ・・・やだよう・・・」
恐怖に見開いた眼が俊の股間から離れない。
そそり立った肉棒は持ち主でさえ戸惑いを覚えるほど禍々しいものだった。松の瘤のように血管が浮き出ていて指を回しても余るほど太く硬い。
「無理・・・そんなの無理だってば・・・」
近づく俊に怯える美波の声が震えている。
「やめて・・・お願いだから許して・・・」
「美波・・・もう、やめられない・・・」
それだけ言うと俊は美波に覆い被さった。
「やっ・・・ゆるして・・・こわいの・・・」
そんな言葉に耳を貸さず、俊は屹立に手を添えて秘肉にあてがう。
「やだ・・・俊・・・おねがい・・・あっ・・・熱い・・・いやっ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
初めて経験する感覚に美波は悲鳴にも似た声で叫んだ。
濡れきった蜜壺は俊の肉棒をたやすく受け入れてしまっていた。
俊は躊躇せずに結合を深めていく。
途中、かなりの抵抗があり、思いきり腰に力を込める。
「やあぁぁっ! きつい! お、奥まで・・・いっぱいに・・・ああんっ!」
なにかが裂けるような感覚があり肉棒が根元まで埋没する。
「みなみっ!」
俊がそう叫んだとき屹立の先端に変化が起こった。
「いやっ! いやぁぁぁっ!」
美波の身体がバウンドする。
亀頭の内部でなにかが暴れまわっているような感覚がある。
「血だ! 処女の血だ!」
頭の中でそんな声が聞こえるような気がした。
「みなみっ!」
俊は、もう一度叫んで挿送を開始する。
「しゅん! しゅ~んっ!」
美波もそれに応えて俊の背中に手をまわして引き寄せる。
「こんなに気持ちよかったなんて・・・」
俊は密着した肌の感触を楽しみながら腰を打ち付ける。
「ああんっ! 溶ける・・・溶けちゃう!」
「美波も気持ちいいのか?」
肉棒に絡みつく柔肉の感覚に陶然となりながら、俊は律動を繰り返す。
俊の力のせいで美波は破瓜の痛みなど感じることなく一気に官能の淵へ墜とされてしまった。
「いい! いいの! しゅん・・・しゅん・・・あああっ!」
抵抗する気持ちが消えたせいか、それとも俊の中に棲むという小鬼が目覚めたせいか、いつの間にか動くようになった身体で美波は俊を求めていた。
「また・・・またなの・・・ああんっ!」
跳ねるように痙攣する美波を俊は思いきり抱きしめた。
「いくぅぅぅぅぅぅっ!!!」
美波は背中をのけ反らせて硬直した。
まるで先端を食いちぎろうとしているような蜜壺の動きが引き金になって俊にも限界がやってきた。
「みなみ! みなみぃぃぃぃっ!!!」
俊は叫びながら放出した。
凄まじい奔流が美波の子宮に到達した。
「あひぃぃぃぃっ!!!」
その衝撃のせいで美波は白目をむいた。
エピローグ
「おいらを解放してくれて礼を言うぜ」
それはまさしく小鬼だった。気を失った美波のバストに立っている。背の高さは2センチもないだろう。身体は赤く、向こう側がうっすらと透けて見える。
「ほんとだったんだね」
「この期に及んで信じてなかったのかい?」
「だって・・・」
「まあ、無理ないな。おいらの姿はお前にしか見えないし、声もお前にしか聞こえないんだから」
「そうなんだ」
「俺たちがこうして話ができるのも、この女のおかげだ。うまかったぜ」
「もしかして僕の先っちょにいたの君?」
「そうさ。俺たちは一心同体でもあるんだ。処女の証をたっぷり飲ませてもらったぜ。この女の血は極上だった。なにしろ、お前に好意をもっていたからな。それがスパイスになって、たまらない味だった。おかげで目覚めも爽快、力も全開だぜ」
小鬼は弾むような声で言った。
「へえ・・・」
俊もなにやら楽しい気分になってきた。
「で、どうするんだい?」
「なにを?」
「占い師をやるのかって話」
「おもしろそうだね」
「やるんだったら、あの政治家、連絡しない方がいいぜ」
「そうなんだ」
「うん。もうすぐ失脚しちゃう」
「だったら、当分は能力に目覚めたことを秘密にしておくよ。まだ占い師なんて若すぎるし」
「それが賢明だな。じゃあ、女漁りをすればいい」
小鬼が楽しそうに笑う。
「えっ?」
「その女は特別だから無理だけど、忘却呪文を使えば女なんてよりどりみどり、言いなりだぜ。やりたいだけやって、後腐れなしさ」
「マジ?」
「ああ。いろんな女の蜜を吸えばおいらたちコンビの力も強くなるから、やりまくれよ。でも、まずはその女の相手をしてやんな。お前にとっちゃ大当たりの女だぜ。開発すれば力も強くなる」
「わかった」
小鬼が言うのだから間違いはないのだろう。それが理由というだけでなく、俊はもっと美波を味わってみたかった。
「おっと、そろそろ女が目を覚ますぜ。たっぷりと、かわいがってやれ。がんばれよ。またな」
俊には小鬼がウインクしたのがわかった。
小鬼は飛び上がって見えなくなった。俊は自分の身体と同化したのだと思った。
そのタイミングで美波が目を覚ました。
目を開けて、緩慢な動作で上半身を起こした美波は恐ろしく艶っぽい眼で俊を見つめた。
俊は、自分の術と小鬼が美波をしもべに変えてしまったことを直感的に理解した。
美波の肌の感触を思い出すと俊の欲望に火がついた。こんどは自分の意志で美波を抱きたかった。そして、滅茶苦茶に悶えさせてやりたかった。
それが生まれ変わった自分の姿だと気づくにはまだ時間がかかるだろう。
俊はゆっくりとした動作で美波に覆い被さり唇を重ねた。
< 終 >